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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20220607BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20220607BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20220607BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220607BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
B32B27/18 Z
H01L23/36 M
H01L23/36 D
C08K3/04
C08L101/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018003498
(22)【出願日】2018-01-12
(65)【公開番号】P2018111817
(43)【公開日】2018-07-19
【審査請求日】2021-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2017003302
(32)【優先日】2017-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 拓
(72)【発明者】
【氏名】西澤 英人
【審査官】佐藤 玲奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-261505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00 - 5/02
5/12 - 5/22
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 -101/14
H01L 23/29
23/34 - 23/36
23/373- 23/427
23/44
23/467- 23/473
H05K 7/20
B32B 27/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物を介して発熱体と放熱体とが積層された積層体であって、
前記樹脂組成物は、ダイヤモンド粒子、及び、バインダー樹脂を含有し、前記ダイヤモンド粒子は、面数が10~18の多面体形状であり、
前記ダイヤモンド粒子の体積平均粒子径が、前記樹脂組成物の膜厚に対して70%以下である、積層体
【請求項2】
前記ダイヤモンド粒子は、六八面体形状であることを特徴とする請求項1記載の積層体
【請求項3】
前記樹脂組成物は、薄膜状にして用いられることを特徴とする請求項1又は2記載の積層体
【請求項4】
前記樹脂組成物における前記ダイヤモンド粒子の含有量が20~80体積%であることを特徴とする請求項1、2、又は3記載の積層体
【請求項5】
前記樹脂組成物における前記バインダー樹脂の含有量が20~80体積%であることを特徴とする請求項1、2、3、又は4記載の積層体
【請求項6】
前記ダイヤモンド粒子は、体積平均粒子径のCV値が25%以下である、請求項1、2、3、4、又は5記載の積層体。
【請求項7】
前記樹脂組成物は、他の熱伝導性フィラーを更に含み、
前記ダイヤモンド粒子の体積平均粒子径と前記他の熱伝導性フィラーの体積平均粒子径の比は、1/20以上50/1以下である、請求項1、2、3、4、5、又は6記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い熱伝導性と優れた接着性とを両立させることができる樹脂組成物に関する。また、該樹脂組成物を含む積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
CPU等の大規模集積回路(LSI)と言ったパワーデバイスに用いられる半導体素子や、液晶、LED、有機EL素子等の発光素子を有する電子部品、及び、それを備えた電子機器では、小型化や電子回路の高集積化により素子からの発熱量が増加しており、発熱による素子の劣化や性能の低下、更には電子機器の機能障害の発生が問題となっている。そこで、電子機器においては、半導体素子や電子回路において生じた熱を放熱し、電子機器等の温度上昇を抑えるために、半導体素子をセラミック等からなる基材等の放熱体と接合する技術が知られている。また、半導体素子と放熱体との接合材料としては、熱伝導性と絶縁性とを確保するため、樹脂材料中に熱伝導性を有し、且つ、絶縁性を有するフィラーを分散させた樹脂組成物が用いられる。
【0003】
このような樹脂組成物として、特許文献1には、オルガノポリシロキサンの基材に、特定量の熱伝導性フィラーを含有してなる絶縁シートが開示されている。
このような接合材料では、樹脂中で熱伝導性を有するフィラー同士が接触する構造をとっており、これらのフィラー間の接触を通じて発熱体から放熱体への熱伝導性が確保されている。
このようなシートでは、アルミナ等のフィラーを高充填化してフィラー間の接触頻度を高めて熱伝導性を確保している。しかしながら、フィラーの高充填化に伴って、接着力が低下して、発熱体と放熱体との接合が不充分となるという問題があった。
【0004】
更に、窒化ホウ素のような異方形状を有するフィラーを用いることによってフィラー同士を面接触させて熱伝導性を確保する方法も提案されている。しかしながら、異方形状を有するフィラーを用いた場合、配向状態によって熱伝導性が大きく変化するが、配向状態を制御することは難しく、充分な熱伝導性が得られないという問題があった。
【0005】
また、例えば、ダイヤモンドの汎用的合成法である爆轟法によって形成されたナノサイズのダイヤモンドをフィラーとして樹脂中に複合化した放熱材料も提案されている。ダイヤモンドは熱伝導性が高いことが知られているが、このような方法では、フィラーが微細であるため、フィラー間の接触回数が非常に多くなり、熱伝導の効率が低下して、充分な熱伝導性を発揮させることが難しいという問題があった。また、フィラーの形状が不定形であり、多数の面を有する球状に近い形状であるため、フィラー同士の接触は点接触となり、接触点における熱伝導のロスが大きく充分な熱伝導性を発揮させることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-64291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、高い熱伝導性と優れた接着性とを両立させることができる樹脂組成物を提供することを目的とする。また、該樹脂組成物を含む積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ダイヤモンド粒子、及び、バインダー樹脂を含有し、前記ダイヤモンド粒子は、面数が10~18の多面体形状である樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、発熱体等の部材と放熱体等の部材との間に挟んで用いられる樹脂組成物において、熱伝導性フィラーとしてダイヤモンド粒子を用い、ダイヤモンド粒子を特定の形状とすることによって、熱伝導の効率の低下を抑制して、優れた熱伝導性を発揮させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の樹脂組成物は、ダイヤモンド粒子、及び、バインダー樹脂を含有する。
本発明の樹脂組成物は、熱伝導性及び接着性に優れるため、例えば、発熱体と放熱体との接着に用いられることで、発熱体が発した熱を効率よく放熱体に伝えることができる。
本発明の樹脂組成物を介して発熱体と放熱体とを積層した場合の一例を図1に示す。
本発明の樹脂組成物1は、発熱体4及び放熱体5との間に薄膜状として配置される。
本発明の樹脂組成物1は、ダイヤモンド粒子2及びバインダー樹脂3を含有する。上記ダイヤモンド粒子2は、面数が10~18の多面体形状である。
本発明の樹脂組成物1では、ダイヤモンド粒子2が所定の多面体形状を有していることにより、ダイヤモンド粒子の配向を制御しやすく、ダイヤモンド粒子同士が面接触することで、熱伝導効率を向上させることができる。
また、本発明の樹脂組成物1は、バインダー樹脂3を含有することで、発熱体と放熱体との接着性を高めることができ、剥離に伴う熱伝導性の低下を抑制することができる。
【0011】
本発明の樹脂組成物は、熱伝導性フィラーとして多面体形状であるダイヤモンド粒子を含有する。本発明の樹脂組成物は、ダイヤモンド粒子を含有することにより、熱伝導性に優れたものとなる。上記多面体形状は、六面体、八面体、六八面体等が好ましく、六八面体が特に好ましい。
なお、本発明において、多面体形状とは、表面を形成する面の半分以上が全て平らな多角形によって構成される立体形状を意味する。
【0012】
上記多面体形状であるダイヤモンド粒子において、多面体形状を形成する多角形は、三角形~六角形であることが好ましい。
【0013】
上記多面体形状のダイヤモンド粒子の面数は10~18である。
上記ダイヤモンド粒子の面数が10以上であることで、ダイヤモンド粒子の配向制御が容易となり、ダイヤモンド粒子同士を面接触させて、熱伝導効率を向上させることができる。また、上記ダイヤモンド粒子の面数が18以下であることで、ダイヤモンド粒子が充分に大きな面を有するものとなり、ダイヤモンド粒子同士の点接触の回数を減らして、熱伝導効率の低下を抑制することができる。
なお、上記ダイヤモンド粒子の面数は、例えば、電子顕微鏡写真を確認し、得られた像における粒子300個の粒子径の平均を算出することにより測定することができる。
【0014】
本発明の樹脂組成物は、上記面数が10~18であるダイヤモンド粒子以外のダイヤモンド粒子に加えて、破砕状のような規則的な形状を有さない非多面体状ダイヤモンド粒子や、面数が19以上であるダイヤモンド粒子を含んでいてもよい。本明細書中、上記面数が10~18であるダイヤモンド粒子以外のダイヤモンド粒子を「他のダイヤモンド粒子」ともいう。上記他のダイヤモンド粒子を含有することで、樹脂組成物中への細密充填化を図ることができる。
本発明の樹脂組成物において、上記面数が10~18であるダイヤモンド粒子と上記他のダイヤモンド粒子との合計に対する上記面数が10~18であるダイヤモンド粒子の割合は、50体積%以上であることが好ましく、100体積%であることが特に好ましい。
特に上記多面体形状を有するダイヤモンド粒子の割合を50体積%以上とすることで、熱伝導の効率をより向上させることができる。
本発明の樹脂組成物において、特に多面体形状であるダイヤモンド粒子と破砕状であるダイヤモンド粒子を用いた場合、ダイヤモンド粒子中の上記面数が10~18である多面体形状であるダイヤモンド粒子の割合は、20体積%以上であることが好ましく、100体積%であることが特に好ましい。
特に上記多面体形状を有するダイヤモンド粒子の割合を20体積%以上とすることで、熱伝導の効率をより向上させることができる 。
【0015】
本発明の樹脂組成物中の上記ダイヤモンド粒子の含有量は、好ましい下限が20体積%、好ましい上限が80体積%である。
上記ダイヤモンド粒子の含有量が20体積%以上であると、充分な熱伝導性を付与することができる。上記ダイヤモンド粒子の含有量が80体積%以下であると、接着性に優れたものとすることができる。
上記ダイヤモンド粒子の含有量は、より好ましい下限が25体積%、より好ましい上限が75体積%である。
なお、上記ダイヤモンド粒子の含有量は、熱重量測定(TG)などによる加熱時の残渣量測定などにより重量分率を測定し、更に比重より体積分率に換算することで測定することができる。
【0016】
上記ダイヤモンド粒子の体積平均粒子径は、本発明の樹脂組成物の膜厚に対して、好ましい上限が75%である。
上記ダイヤモンド粒子の体積平均粒子径が上記樹脂組成物の膜厚に対して75%以下であることで、ダイヤモンド粒子の充填量を充分なものとすることができる。
上記ダイヤモンド粒子の体積平均粒子径は、上記樹脂組成物の膜厚に対して、好ましい下限が20%、より好ましい下限が25%、より好ましい上限が70%である。
上記ダイヤモンド粒子の体積平均粒子径は、上記樹脂組成物の膜厚方向に対してクロスセクションポリッシャーなどを用いて断面を作成し、電子顕微鏡を用いて断面を観察し、得られた像における粒子300個の粒子径、及び体積を算出した後に体積割合での平均を算出することにより測定することができる。
なお、本発明において、樹脂組成物の膜厚とは、薄膜状とした樹脂組成物の厚みを意味し、薄膜状とした樹脂組成物とは、基材上に塗工することで得られるシート形状の樹脂組成物のみではなく、部材間に充填されることで得られる層状の樹脂組成物も含む。
【0017】
上記ダイヤモンド粒子の体積平均粒子径は、好ましい下限が0.1μm、より好ましい下限が0.5μm、好ましい上限が2000μm、より好ましい上限が1000μmである。
【0018】
上記ダイヤモンド粒子は、体積平均粒子径のCV値の好ましい上限が25%である。
上記CV値が25%以下であると、大きな粒子径を持ったダイヤモンド粒子が存在することがなく、接着性に優れたものとすることができる。また、小さな粒子径を持ったダイヤモンド粒子が存在することがなく、ダイヤモンド粒子同士の接触回数が過剰になりすぎることがなく、熱伝導の効率を向上させることができる。
なお、上記ダイヤモンド粒子の体積平均粒子径のCV値は、ダイヤモンド粒子の体積平均粒子径と標準偏差から算出することができる。
【0019】
上記ダイヤモンド粒子はグラファイト等の炭素からなる元素鉱物を原料として、例えば、爆轟法、フラックス法、静的高圧法、化学気相蒸着法、高温高圧法等により製造することができる。なかでも、粒子径の大きなダイヤモンド粒子を得られることから、高温高圧法により製造されたものが好ましく用いられる。
【0020】
本発明の樹脂組成物は、バインダー樹脂を含有する。
上記バインダー樹脂は、ダイヤモンド粒子を樹脂組成物に保持するものであり、樹脂組成物に要求される接着性、機械的強度、耐熱性、電気的特性等の特定に応じて選択される。上記バインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂が挙げられ、接着性、機械的強度をより向上させることができることから、熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。
【0021】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-αオレフィン共重合体(エチレン-プロピレン共重合体等)、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、フッ素系重合体(ポリフッ化ビニリデン及びポリテトラフルオロエチレン等)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリフェニレン-エーテル共重合体(PPE)樹脂、変性PPE樹脂、脂肪族ポリアミド類、芳香族ポリアミド類、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル類(ポリメタクリル酸メチル等)、ポリアクリル酸類、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルケトン、ポリケトン、液晶ポリマー、シリコーン樹脂、アイオノマー等が挙げられる。
【0022】
上記光硬化性樹脂としては、感光性オニウム塩等の光カチオン触媒を含有するエポキシ樹脂や感光性ビニル基を有するアクリル樹脂等が挙げられる。
【0023】
上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル酸メチル又はアクリル酸ブチル等を主なモノマー単位とするポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂等のホットメルト型接着樹脂が挙げられ、なかでもエポキシ樹脂が好ましく用いられる。
【0024】
上記エポキシ樹脂としては特に限定されないが、多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂が好ましい。多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂を用いた場合、剛直となり、接着性や機械的強度が高められる。
【0025】
上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂としては、例えば、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(以下、「ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂」ともいう)、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(以下、「ナフタレン型エポキシ樹脂」ともいう)、テトラヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボネート等が挙げられる。上記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としては、例えば、ジシクロペンタジエンジオキシド、ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラックエポキシ樹脂等が挙げられる。上記ナフタレン型エポキシ樹脂としては、例えば、1-グリシジルナフタレン、2-グリシジルナフタレン、1,2-ジグリジジルナフタレン、1,5-ジグリシジルナフタレン、1,6-ジグリシジルナフタレン、1,7-ジグリシジルナフタレン、2,7-ジグリシジルナフタレン、トリグリシジルナフタレン、1,2,5,6-テトラグリシジルナフタレン等が挙げられる。なかでも、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂やナフタレン型エポキシ樹脂が好適に用いられる。
【0026】
これらの多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。また、上記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂は、それぞれ単独で用いられてもよいし、両者が併用されてもよい。
【0027】
本発明の樹脂組成物中の上記バインダー樹脂の含有量は、好ましい下限が20体積%、好ましい上限が80体積%である。
上記バインダー樹脂の含有量が、20体積%以上であると、得られる樹脂組成物の接着性を向上させることができる。上記バインダー樹脂の含有量が、80体積%以下であると、得られる樹脂組成物の熱伝導性を向上させることができる。
上記バインダー樹脂の含有量は、より好ましい下限が25体積%、より好ましい上限が75体積%である。
【0028】
上記バインダー樹脂の重量平均分子量は、好ましい下限が5000、好ましい上限が1000000である。上記バインダー樹脂の重量平均分子量が、5000以上であると、ダイヤモンド粒子の沈降を抑制することができる。上記バインダー樹脂の重量平均分子量が、1000000以上であると、ダイヤモンド粒子の分散時に均一に分散することができる。
なお、上記重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定を行い、ポリスチレン換算により算出することができる。
【0029】
本発明の樹脂組成物は、更に、熱硬化剤又は光重合開始剤を含んでいてもよい。
上記熱硬化剤としては、アミン化合物(アミン硬化剤)、イミダゾール化合物(イミダゾール硬化剤)、フェノール化合物(フェノール硬化剤)及び酸無水物(酸無水物硬化剤)等が挙げられる。上記熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤等が挙げられる。
【0030】
本発明の樹脂組成物中の上記熱硬化剤の含有量は、好ましい下限が0.5体積%、より好ましい下限が1.5体積%、更に好ましい下限が5体積%、更により好ましい下限が10体積%、好ましい上限が60体積%、より好ましい上限が50体積%である。
【0031】
本発明の樹脂組成物は、上記ダイヤモンド粒子の他に、樹脂組成物に要求される機械的特性、熱的特性、電気的特性等の特性に応じて、他の熱伝導性フィラーを含有することが好ましい。
上記他の熱伝導性フィラーの材質は、熱伝導率が10W/m・K以上であれば特に限定されないが、例えば、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、アルミニウム、窒化ケイ素、ジルコニア、酸化マグネシウム等が挙げられる。
これらの他の熱伝導性フィラーを共に用いることで3次元的な熱伝導パスの形成、硬化物の強靭性の向上、塗工時におけるハンドリング性の向上、塗工対象物との密着性の向上、接着性の向上等の効果を得ることが出来る。
【0032】
本発明の樹脂組成物中の上記他の熱伝導性フィラーの含有量は、好ましい下限が1体積%、より好ましい下限が5体積%、好ましい上限が50体積%、より好ましい上限が25体積%である。上記他の熱伝導性フィラーの含有量が上記好ましい下限以上、且つ、上記好ましい上限以下であると、ダイヤモンド粒子の熱伝導性を阻害することなく3次元的な熱伝導パスを形成し、上記樹脂組成物としての熱伝導性を優れたものとすることができる。
【0033】
上記他の熱伝導性フィラーの体積平均粒子径は、上記樹脂組成物の膜厚に対して、好ましい下限が20%、好ましい上限が75%である。
上記他の熱伝導性フィラーの体積平均粒子径が上記好ましい下限以上、且つ、上記好ましい上限以下であると、上記他の熱伝導性フィラーの充填量を充分なものとして、熱伝導性に優れたものとすることができる。
上記他の熱伝導性フィラーの体積平均粒子径は、上記樹脂組成物の膜厚に対して、より好ましい下限が25%、より好ましい上限が70%である。
なお、上記他の熱伝導性フィラーの体積平均粒子径は、電子顕微鏡を用いて観察することにより測定することができる。
【0034】
上記他の熱伝導性フィラーの体積平均粒子径は、好ましい下限が0.1μm、より好ましい下限が0.5μm、好ましい上限が2000μm、より好ましい上限が1000μmである。
上記他の熱伝導性フィラーの体積平均粒子径が上記好ましい下限以上、且つ、上記好ましい上限以下であると、上記他の熱伝導性フィラーの充填量を充分なものとして、熱伝導性に優れたものとすることができる。
【0035】
本発明の樹脂組成物における上記ダイヤモンド粒子の含有量と上記他の熱伝導性フィラーの含有量との比(ダイヤモンド粒子の含有量/他の熱伝導性フィラーの含有量)は、体積比で、好ましい下限が1/20、より好ましい下限が1/10、好ましい上限が20/1、より好ましい上限が10/1である。
【0036】
上記ダイヤモンド粒子の体積平均粒子径と上記他の熱伝導性フィラーの体積平均粒子径の比(ダイヤモンド粒子の体積平均粒子径/他の熱伝導性フィラーの体積平均粒子径)は、好ましい下限が1/20、より好ましい下限が1/10、好ましい上限が50/1、より好ましい上限が25/1である。
【0037】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、更に、可塑剤、乳化剤、軟化剤、充填剤、顔料、染料、シランカップリング剤、酸化防止剤などの添加剤等を含んでいてもよい。
【0038】
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、ダイヤモンド粒子に、バインダー樹脂及び必要に応じて添加される他の熱伝導性フィラー、熱硬化剤、添加剤、及び、溶媒を混合し、攪拌して樹脂組成物溶液を調製し、続いて、溶媒を除去する方法等が挙げられる。
【0039】
上記溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール溶媒や、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン及びキシレン等が挙げられる。上記溶媒は有機溶媒であることが好ましく、トルエンであることがより好ましい。上記溶媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0040】
本発明の樹脂組成物の形状は特に限定されないが、薄膜状にして用いられることが好ましい。
本発明において、薄膜状の樹脂組成物とは、基材上に塗工することで得られるシート形状の樹脂組成物のみではなく、部材間に充填されることで得られる層状の樹脂組成物も含む。
【0041】
本発明の樹脂組成物は薄膜状である場合、膜厚の好ましい下限は10μm、より好ましい下限が15μm、好ましい上限が1mm、より好ましい上限が750μmである。
【0042】
本発明の樹脂組成物は、作動や稼働に際して高温となる物体であり、放熱を必要とするあらゆる分野において好適に用いることができる。例えば、CPU、画像処理チップ、メモリー等、大規模集積回路と言ったパワーデバイスに用いられる半導体素子、液晶、LED、有機EL素子等の発光素子を有する電子機器では、作動や稼働に際して素子から発熱することから、上記素子に本発明の樹脂組成物を接触させて用いることで、本発明による放熱機能が発揮される。
【0043】
本発明の樹脂組成物と発熱体とが積層された積層体も本発明の1つである。
本発明の積層体では、発熱体と本発明の樹脂組成物とが積層されていることにより、発熱体が発する熱を効率よく放熱することができる。
【0044】
上記発熱体は特に限定されないが、例えば、CPU、画像処理チップ、メモリー等、大規模集積回路(LSI)等のパワーデバイスの半導体素子基板、液晶、プラズマディスプレイ(PDP)、LED、有機EL表示装置等の表示装置に用いられる半導体素子基板、太陽電池セル、太陽電池モジュール等が挙げられる。
【0045】
本発明の積層体は、更に、放熱体を有し、本発明の樹脂組成物を介して上記発熱体と上記放熱体とが積層されたものであってもよい。
本発明の積層体が、放熱体を有することにより、発熱体が発する熱を放熱体に効率よく伝達して、放熱機能を向上させることができる。
【0046】
上記放熱体は特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銅等の金属、黒鉛、ダイヤモンド、窒化アルミニウム、窒化ほう素、窒化珪素、炭化珪素、酸化アルミニウム等の素材を利用したヒートスプレッダ、ヒートシンク、グラファイトシート、きょう体、電子基板、電気基板、放熱用配管等が挙げられる。
【0047】
本発明の積層体を製造する方法は、特に限定されない。例えば、発熱体に本発明の樹脂組成物を塗工する方法、本発明の樹脂組成物を離型処理されたPETフィルム上に塗工し、乾燥させて薄膜状の樹脂組成物を作製した後、薄膜状の樹脂組成物と発熱体とを接着する方法、発熱体と放熱体との間に本発明の樹脂組成物を充填して薄膜状の樹脂組成物を含む積層体とする方法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、高い熱伝導性と優れた接着性とを両立させることができる樹脂組成物を提供することができる。また、該樹脂組成物を含む積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明の樹脂組成物を介して発熱体と放熱体とを積層した場合の一例を示す模式図である。
図2】実施例6で用いたダイヤモンド粒子を撮影した電子顕微鏡写真である。
図3】実施例6で得られた積層体中のダイヤモンド粒子同士の接触状態を撮影した電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
体積平均粒子径70μm(CV値13.2%)のダイヤモンド粒子(トーメイダイヤ社製、TMSグレード、六八面体形状)、エポキシ樹脂及び熱硬化剤を、表1に示す割合となるように溶媒中でホモディスパー型撹拌機を用いて30分間攪拌して混合し、その後、溶媒を揮発させ、更に、真空脱泡を行うことによって樹脂組成物を調製した。なお、エポキシ樹脂としてエピコート828US(三菱化学社製)、熱硬化剤としてジシアンジアミド(東京化成工業社製)、溶媒としてメチルエチルケトン(和光純薬工業社製、試薬特級グレード)を用いた。得られた樹脂組成物を離型PETシート上に塗工し、90℃のオーブン内にて10分間乾燥させることでPETシート上に薄膜状の樹脂組成物が積層された積層シートを得た。その後、離型PETシートを剥離して、薄膜状の樹脂組成物を銅箔及びアルミニウム板によって挟み、温度140℃、圧力4MPaの条件で真空プレス成型を行うことで積層体を得た。なお、薄膜状の樹脂組成物の厚み(樹脂組成物層の厚み)が100μmとなるように塗工厚みを調整した。また、ダイヤモンド粒子の体積平均粒子径は、電子顕微鏡により観察して測定した。なお、ダイヤモンド粒子の含有量は、熱重量測定を用いて測定した。
【0052】
(実施例2)
体積平均粒子径55μm(CV値15.0%)のダイヤモンド粒子(トーメイダイヤ社製、TMSグレード、六八面体形状)を用いた以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。
【0053】
(実施例3)
体積平均粒子径38μm(CV値17.4%)のダイヤモンド粒子(トーメイダイヤ社製、TMSグレード、六八面体形状)を用いた以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。
【0054】
(実施例4)
体積平均粒子径70μm(CV値13.2%)のダイヤモンド粒子(トーメイダイヤ社製、TMSグレード、六八面体形状)を表1に示す割合となるように配合した以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。
【0055】
(実施例5)
体積平均粒子径70μm(CV値13.2%)のダイヤモンド粒子(トーメイダイヤ社製、TMSグレード、六八面体形状)を表1に示す割合となるように配合した以外は、実施例1と同様にして積層体を作製した。
【0056】
(実施例6)
体積平均粒子径70μm(CV値13.2%)のダイヤモンド粒子(トーメイダイヤ社製、TMSグレード、六八面体形状)及び体積平均粒子径72μmの窒化ホウ素粒子(MOMENTIVE社製、アスペクト比4.2、熱伝導性40W/m・K)を表1に示す割合となるように配合した以外は、実施例1と同様にして積層体を作製した。なお、窒化ホウ素粒子の体積平均粒子径は、長軸方向のサイズを測定することで算出した。
ダイヤモンド粒子及び得られた積層体中の樹脂組成物層を撮影した電子顕微鏡写真を図2及び図3に示す。
【0057】
(実施例7)
体積平均粒子径70μm(CV値13.2%)のダイヤモンド粒子(トーメイダイヤ社製、TMSグレード、六八面体形状)に加えて、非多面体状ダイヤモンド粒子を表1に示す割合となるように配合した以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。
なお、非多面体状ダイヤモンド粒子としては、体積平均粒子径25μm(CV値17.4%)の粒子(トーメイダイヤ社製、CMMグレード、破砕形状)を用いた。
【0058】
(実施例8)
体積平均粒子径70μm(CV値13.2%)のダイヤモンド粒子(トーメイダイヤ社製、TMSグレード、六八面体形状)に加えて、非多面体状ダイヤモンド粒子を表1に示す割合となるように配合した以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。
なお、非多面体状ダイヤモンド粒子としては、体積平均粒子径25μm(CV値17.4%)の粒子(トーメイダイヤ社製、CMMグレード、破砕形状)及び体積平均粒子径10μm(CV値19.8%)の粒子(トーメイダイヤ社製、CMMグレード、破砕形状)を用いた。
【0059】
(実施例9)
体積平均粒子径70μm(CV値13.2%)のダイヤモンド粒子(トーメイダイヤ社製、TMSグレード、六八面体形状)に加えて、非多面体状ダイヤモンド粒子及びアルミナ粒子を表1に示す割合となるように配合した以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。
なお、非多面体状ダイヤモンド粒子としては、体積平均粒子径25μm(CV値17.4%)の粒子(トーメイダイヤ社製、CMMグレード、破砕形状)を用い、アルミナ粒子としては、体積平均粒子径10μmのアルミナ粒子(昭和電工社製、ASグレード、球状)を用いた。
【0060】
(比較例1)
体積平均粒子径70μmの非多面体状ダイヤモンド粒子(トーメイダイヤ社製、IMMグレード、破砕粉末状)を表1に示す割合となるように配合した以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。
【0061】
(比較例2)
体積平均粒子径0.1μmの非多面体状ダイヤモンド粒子(エアブラウン社製、不定形状)を表1に示す割合となるように配合した以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。
【0062】
(比較例3)
体積平均粒子径68μmのアルミナ粒子(アズワン社製)を表1に示す割合となるように配合した以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。
【0063】
(比較例4)
体積平均粒子径72μmの窒化ホウ素粒子(MOMENTIVE社製、アスペクト比4.2)を表1に示す割合となるように配合した以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。なお、窒化ホウ素の体積平均粒子径は、長軸方向のサイズを測定することで算出した。
【0064】
(評価)
実施例及び比較例で得られた積層体について、下記の評価を行った。結果を表1に示した。
【0065】
(1)熱伝導性の評価
得られた積層体を10mm×10mmにカットした後、両面にカーボンブラックをスプレーして測定サンプルを作製した。得られた測定サンプルについて、レーザーフラッシュ法熱定数測定装置(アルバック理工社製、「TC-9000」)を用いて熱伝導率を測定した。なお、熱伝導率としては、積層体を3つ用意し、それぞれの積層体内の3箇所から切り出して得られた測定サンプル合計9つの平均値を用いた。また、熱伝導性としては、比較例1における熱伝導率を1.00とした際の相対値により評価した。
【0066】
(2)接着性評価
得られた積層体を20mm×50mmにカットし、85℃でアルミニウム板面から90°の方向に50gの荷重を掛け、アルミニウム板より剥離しきるまでの剥離時間を測定した。得られた剥離時間をもとに、比較例1における剥離時間を1.00とした際の相対値により評価した。
【0067】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、高い熱伝導性と優れた接着性とを両立させることができる樹脂組成物を提供することができる。また、該樹脂組成物を含む積層体を提供することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 樹脂組成物
2 ダイヤモンド粒子
3 バインダー樹脂
4 発熱体
5 放熱体
図1
図2
図3