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  • 特許-ベビーカー用カバー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】ベビーカー用カバー
(51)【国際特許分類】
   B62B 9/14 20060101AFI20220607BHJP
   B62B 9/20 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
B62B9/14
B62B9/20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018010265
(22)【出願日】2018-01-25
(65)【公開番号】P2019127166
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000112288
【氏名又は名称】ピジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】西蔵 みゆき
(72)【発明者】
【氏名】大沼 利夫
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-213788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 9/14
B62B 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベビーカー後方の背面押し位置と前方の対面押し位置との間を回動可能なハンドルを備えたベビーカーを覆うベビーカー用カバーにおいて、
前記ベビーカーを上方から覆うカバー本体と、
前記カバー本体の側方において、下端部から上方に向かって延び、上下に延びる前方側縁部と後方側縁部とが離間した開口部と、
基端部と先端部とを備え、前記基端部が前記カバー本体に取り付けられ、前記基端部と前記先端部との間で前記開口部を閉塞する閉塞部と、
前記閉塞部が前記開口部を開閉可能な状態で閉塞した状態に維持する固定部であって、前記先端部を前記カバー本体又は前記ベビーカーに対して固定する前記固定部とを備え
前記基端部は、前記開口部の前方側縁部または後方側縁部のうちの何れかの一方の側縁部から離れて取り付けられ、前記閉塞部の先端部は、他方の側縁部から離れた位置で開閉可能に前記固定部により固定される
ベビーカー用カバー。
【請求項2】
前記開口部は、前記カバー本体の下端部に位置する開口端が前記開口部の中で最も広い幅である
請求項に記載のベビーカー用カバー。
【請求項3】
前記ベビーカーは、前記ハンドルを前記背面押し位置にロックする後方ロック部を備え、
前記開口部における前記カバー本体の下端部に位置する開口端と反対側の最奥部は、前記ハンドルが前記背面押し位置にあるとき、前記後方ロック部が前記ハンドルと係合した係合位置に当接し、前記ベビーカーに対して前記カバー本体を支持する
請求項1または2に記載のベビーカー用カバー。
【請求項4】
前記ベビーカーは、前記ハンドルを前記対面押し位置に支持する前方ロック部を備え、
前記カバー本体は、前記側方において、前記前方ロック部を露出させる露出孔を備える
請求項1ないしのうち何れか1項に記載のベビーカー用カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルが背面押し位置と対面押し位置との間を移動するベビーカーを覆うベビーカー用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
ベビーカー用カバーは、ベビーカーに乗車している乳幼児を風雨や塵埃や排出ガスから保護するため、ベビーカーを上側から覆うように取り付けられる。ところで、ベビーカーには、ハンドルがベビーカー後方の背面押し位置とベビーカー前方の対面押し位置とに移動するものがある。このようなベビーカーにカバーが取り付けられている場合、ハンドルの位置を切り替えるには、一度、カバーをベビーカーから取り外してから、ハンドルの位置の切り替え、再度、カバーをベビーカーに取り付ける必要があり、その作業が面倒である。そこで、特許文献1には、ベビーカーにカバーを取り付けた状態で、ハンドルの位置を切り替えることができるようにしたカバーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4739839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなベビーカー用カバーにあっては、天候などが悪いときに使用されるものであるから、ベビーカーに対する着脱作業が容易なものが望まれる。
本発明は、着脱作業を容易に行うことを可能としたベビーカー用カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上のような課題を解決するベビーカー用カバーは、ベビーカー後方の背面押し位置と前方の対面押し位置との間を回動可能なハンドルを備えたベビーカーを覆うベビーカー用カバーにおいて、前記ベビーカーを上方から覆うカバー本体と、前記カバー本体の側方において、下端部から上方に向かって延び、上下に延びる前方側縁部と後方側縁部とが離間した開口部と、基端部と先端部とを備え、前記基端部が前記カバー本体に取り付けられ、前記基端部と前記先端部との間で前記開口部を閉塞する閉塞部と、前記閉塞部が前記開口部を開閉可能な状態で閉塞した状態に維持する固定部であって、前記先端部を前記カバー本体又は前記ベビーカーに対して固定する前記固定部とを備える。
【0006】
上記構成によれば、開口部の前方側縁部と後方側縁部とが離間しているので、ハンドルとアームレストとの間などに位置するハンドルの回動支点部を開口部に容易に挿入して、閉塞部で、開口部を閉塞することができる。
【0007】
上記ベビーカー用カバーにおいて、前記基端部は、前記開口部の前方側縁部または後方側縁部のうちの何れかの一方の側縁部から離れて取り付けられ、前記閉塞部の先端部は、他方の側縁部から離れた位置で開閉可能に前記固定部により固定される構成としてもよい。
【0008】
上記構成によれば、閉塞部は、基端部が後方側縁部から後方隙間を介して固定され、先端部が前方隙間を介して固定部により固定される構成なので、開口部より大きい。したがって、閉塞部は、しっかりと開口部を塞ぐことができる。
【0009】
上記ベビーカー用カバーにおいて、前記開口部は、前記カバー本体の下端部に位置する開口端が前記開口部の中で最も広い幅である構成としてもよい。
上記構成によれば、開口部が下側の開口端が幅広であることで、ハンドルとアームレストの間にカバー本体の側方部分を入れやすくなる。
【0010】
上記ベビーカー用カバーにおいて、前記ベビーカーは、前記ハンドルを前記背面押し位置にロックする後方ロック部を備え、前記開口部における前記カバー本体の下端部に位置する開口端と反対側の最奥部は、前記ハンドルが前記背面押し位置にあるとき、前記後方ロック部が前記ハンドルと係合した係合位置に当接し、前記ベビーカーに対して前記カバー本体を支持する構成としてもよい。
【0011】
上記構成によれば、最奥部が、ハンドルが後方ロック部に係合した係合位置と当接することで、カバー本体をベビーカーに対して支持する支持部となり、ベビーカーの最外部分を構成する他の部材とともにカバーを支持することができる。
【0012】
上記ベビーカー用カバーにおいて、前記ベビーカーは、前記ハンドルを前記対面押し位置に支持する前方ロック部を備え、前記カバー本体は、前記側方において、前記前方ロック部を露出される露出孔を備える構成としてもよい。
【0013】
上記構成によれば、カバーが装着された状態でも、ハンドルを背面押し位置から対面押し位置に回動し、ハンドルを前方ロック部に直接係合させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、着脱作業を容易に行うことを可能としたベビーカー用カバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】カバーを装着したベビーカーを前方から見た斜視図。
図2】カバーの開口部と閉塞部の周辺を示す要部斜視図。
図3】カバーを装着したベビーカーの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1図3を参照して、ベビーカー用カバーについて説明する。
まず、ベビーカー用カバーの説明に先立って、ベビーカーの構成を説明する。図1は、乳幼児などを乗せて使用するための一人乗りの折り畳み式のベビーカー1であり、展開状態において、乳幼児などを寝かせた姿勢や座らせた姿勢で使用する。図1に示すベビーカー1の状態は、ハンドルがベビーカー後方に位置し、後方からベビーカー1を操作する背面押しの状態を示している。以下の説明では、背面押しの状態を基準にして、進行方向を「前方」と定義し、進行方向に対して反対方向を後方(背面)と定義し、さらに進行方向に対して左右方向を左右(幅)方向と定義し、進行方向に対して上下方向を上下と定義する。
【0017】
図1に示すように、このベビーカー1は、一対の前脚フレーム11、一対の後脚フレーム12、乳幼児などを寝かせた姿勢や座らせた姿勢で乗車させる乗車部13、アームレスト14、ハンドル16などを備えている。各前脚フレーム11は、直線的な形状を有しており、その下端部には、キャスター付きの前輪11aが配置されている。各後脚フレーム12は、L字形状を有しており、その下端部には、キャスター付きの後輪12aが配置されている。一対の前脚フレーム11において、上端部は、アームレスト14が回動可能に支持されている。一対の後脚フレーム12もまた、上端部は、アームレスト14が回動可能に支持されている。一対の前脚フレーム11は、左右方向に横断する前ステー24によって連結されており、前ステー24には、着座している乳幼児等が足を掛けるステップ25が配置されている。
【0018】
アームレスト14の先端部には、フロントガード15が着脱可能に取り付けられる。アームレスト14の外側には、ベビーカー1を押して操作するハンドル16が配置されている。ハンドル16は、全体がU字形状を有しており、縦フレーム16aと横フレーム16bとを備えている。縦フレーム16aは、ベビーカー1の幅方向において、最も外側に位置している。ハンドル16の中で横に延びる横フレーム16bは、中央部に、操作者によって操作される開閉ロックレバー17が配置されている。ハンドル16の縦に延びる縦フレーム16aは、後脚フレーム12などと連携するフレームに、回動軸などで構成された回動支点部18によって回動可能に支持されている。ハンドル16は、ベビーカー1の後方である背面押し位置とベビーカー1の前方である対面押し位置の2つの位置の間を、回動支点部18を中心に回動する(矢印D方向および反矢印D方向)。ハンドル16の縦フレーム16aには、ハンドル16を背面押し位置および対面押し位置にロックする切替操作部材19を備えている。ベビーカー1は、後脚フレーム12、アームレスト14などと連携するフレームに後方ロック部20を備えている。後方ロック部20は、切替操作部材19が係合することでハンドル16を背面押し位置にロックする。また、前脚フレーム11は、ハンドル16の切替操作部材19が係合する前方ロック部21を備えている。前方ロック部21は、ハンドル16を対面押し位置にロックする。
【0019】
乗車部13は、座板部材や背当てフレームによって乗車している乳幼児に対する振動を緩和するクッション部13aなどが設けられている。乗車部13の上部には、幌22が配置されている。ベビーカー1の最も外側に位置するアームレスト14、フロントガード15、幌22などは、カバー31をベビーカー1の上側から被せた際に、カバー31を内側から支持し、乗車部13に乳幼児のための空間を確保する支持部となる。乗車部13の下側は、かごやネットによって、物品を収納する収納部23が構成されている。一例として、収納部23には、乳幼児に関連するおむつや玩具、あるいは、買い物をした商品などが収納される。
【0020】
このようなベビーカー1に用いられるカバー31は、ハンドル16を除くベビーカー1のほぼ全体を覆うにおけるカバー本体32を備えている。カバー本体32は、撥水性及び柔軟性を有する透明色の可撓性を有する合成樹脂シートにより構成されている。カバー本体32は、前方部分を構成する前方カバー部33と、側方部分を構成する側方カバー部34と、後方部分を構成する後方カバー部35と、上方部分を構成する上方カバー部36とを備えている。一例として、前方カバー部33、左右の側方カバー部34、後方カバー部35および上方カバー部36は、それぞれの部を構成するシート材を縫い合わせることにより構成することもできるし、展開したときに1枚のシート材を組み立てて構成することもできる。このようなカバー本体32は、下端部に下側開口部37が構成されており、下側開口部37からベビーカー1をカバー本体32の内側に入れることができる。
【0021】
図2に示すように、側方カバー部34は、前後方向におけるほぼ中央領域に、下側開口部37から上方に向かって延びる開口部38を備えている。開口部38は、縦フレーム16aの内側であって乗車部13の外側(一例としてアームレスト14の外側)に存在する回動支点部18が挿入される。カバー本体32がベビーカー1に装着された際、下側開口部37は、前輪11aや後輪12aと重なるか前輪11aや後輪12aより若干高い位置に位置することが好ましい。また、下側開口部37の位置は、乳幼児等の足が濡れないようにするためステップ25とほぼ同じ高さかステップ25より下側に位置することが好ましい。また、ハンドル16が背面押し位置にあるとき、縦フレーム16aの切替操作部材19は、後方ロック部20に係合している。したがって、カバー本体32がベビーカー1に被せられると、開口部38の下側開口部37と連続する開口端と反対側の最奥部38cは、切替操作部材19が後方ロック部20に係合した係合位置にまで至る。開口部38の高さHは、最奥部38cが係合位置に至ったときに、下側開口部37が前輪11aや後輪12aと重なるか前輪11aや後輪12aより若干高い位置に位置するように設定される。また、ステップ25とほぼ同じ高さかステップ25より下側に位置するように設定される。最奥部38cは、切替操作部材19が後方ロック部20に係合した係合位置と接触することで、カバー本体32をベビーカー1に対して支持する支持部ともなる。
【0022】
また、開口部38は、スリットのような細長い細線形状の開口ではなく、後方側縁部38aと前方側縁部38bとを備え、後方側縁部38aと前方側縁部38bとが所定間隔離間した構成を備えている。一例として、後方側縁部38aと前方側縁部38bとの間の幅Wは、10cmから20cm程度とされる。これにより、開口部38は、アームレスト14と縦フレーム16aとの間に入れやすい幅となっている。開口部38の形状は、長方形形状であってもよいし、上底を最奥部38cとした台形形状であってもよいし、最奥部38cを角部とした三角形状としてもよく、その形状は特に限定されるものではない。また、最奥部38cは、図示のように上方に膨らむ円弧形状であってもよい。さらに、開口部38は、下側の開口端を拡幅し、装着作業を容易にする拡幅部39を備えている。すなわち、開口部38は、拡幅部39によって、カバー本体32の下端部に位置する開口端が開口部38の中で最も広い幅となっている。
【0023】
側方カバー部34は、開口部38を開閉する閉塞部41を備えている。閉塞部41も、可撓性を有する合成樹脂シートで構成されており、ここでは、開口部38の全体を覆うことのできる大きさを有している。すなわち、閉塞部41は、高さH以上の高さ寸法を有し、幅W以上の寸法を有している。また、閉塞部41は、カバー本体32よりさらに可撓性を有する布などのシート材で構成することもできる。閉塞部41は、基端部が開口部38の後方側縁部38aから後方隙間42を介在させて、側方カバー部34に縫い合わされている。基端部と反対側の先端部は、開口部38の前方側縁部38bから前方隙間43を介在させて前輪11aの近くにまで延びている。
【0024】
閉塞部41の先端部は、固定部45によって側方カバー部34の前輪11aの近くに固定される。固定部45は、一例として、面ファスナで構成されており、雄型ファスナ45aが閉塞部41の内面に設けられ、雌型ファスナ45bが側方カバー部34の外面に設けられる。閉塞部41は、可撓性を有しているが、固定部45によって側方カバー部34に固定されることで、ベビーカー1の走行に支障がなくなり、また、開口部38を閉塞した状態に維持することで、収納部23などが飛び跳ねた雨水などによって汚損することを防ぐことができる。
【0025】
さらに、側方カバー部34は、前方に、ベビーカー1の前方ロック部21を外部に露出させる露出孔44を備えている。これにより、ハンドル16を対面押し位置に移動させたとき、縦フレーム16aの切替操作部材19を前方ロック部21に係合させることができる。
【0026】
次に、以上のようなベビーカー1に用いられるカバー31の作用について図3を参照して説明する。先ず、ハンドルが背面押し位置にあるときに、カバー31を装着する手順を説明する。カバー31は、前方カバー部33をベビーカー1の前方に合わせ、後方カバー部35をベビーカー1の後方に合わせて、下端部の下側開口部37からベビーカー1を内部に入れ、上方から被せるように装着される。この際、後方カバー部35は、ハンドル16の横フレーム16bと幌22との間に挿入される。そして、側方カバー部34は、縦フレーム16aとアームレスト14との間に挿通され、開口部38には、縦フレーム16aとアームレスト14との間の隙間に跨って位置する回動支点部18が挿入される。次いで、最奥部38cが切替操作部材19と後方ロック部20とが係合した係合位置にまで至る。
【0027】
これにより、カバー本体32は、アームレスト14、フロントガード15、幌22、最奥部38cなどによって、ベビーカー1に支持される。この後、閉塞部41は、固定部45によって側方カバー部34の前方に固定される。そうすると、ハンドル16の縦フレーム16aは、係合位置に近い位置において、閉塞部41と開口部38の開口端との隙間から導出された状態となる。したがって、操作者は、カバー31の外側でハンドル16を持ってベビーカー1を操作することができる。一例として、ベビーカー1を背面押しできるし、ハンドルを背面押し位置から対面押し位置へと切り替えることができる。
【0028】
なお、カバー31は、カバー本体32に設けられた紐部材などをベビーカー1を構成するフレームに結び付けて、更に確実に位置決めをすることもできる。
ベビーカー1にカバー31が装着された状態において、ハンドル16をベビーカー1の後方の背面押し位置から前方の対面押し位置に回動(矢印D方向)させるには、切替操作部材19を操作して、後方ロック部20との係合を解除し、ハンドル16を対面押し位置に回動する。ところで、カバー31は、全体が撓みやすく、また、軽量であることから、ベビーカー1に対する装着位置がずれ易く、また、形状も定まりにくい。例えば、カバー31は、ベビーカー1を走行させているうちに、部分的に凹んだりして形状が変わり、また、装着位置が前後左右や上下に若干ずれてしまうことがある。このため、カバー31の変形や装着位置のずれに伴って、切替操作部材19は、閉塞部41の上から露出していることもあれば、閉塞部41によって覆われていることもある。したがって、切替操作部材19が露出しているときには、そのまま切替操作部材19を操作すればよいが、閉塞部41によって覆われているときには、閉塞部41をめくって切替操作部材19を露出させて操作することになる。
【0029】
ハンドル16は、カバー31の外側を、側方カバー部34や閉塞部41を撓ませながら切替操作部材19がカバー31から外側に露出している前方ロック部21に係合するまで回動されることになる。これにより、ベビーカー1は、カバー31を装着したままの状態で、ハンドル16を背面押し位置から対面押し位置に変更することができる。これにより、操作者は、カバー31の外側でハンドル16を持ってベビーカー1を対面押しの状態で操作することができる。また、ハンドル16を背面押し位置から対面押し位置へと切り替えることができる。
【0030】
なお、対面押し位置から背面押し位置に戻すには、切替操作部材19を操作して、前方ロック部21との係合を解除しハンドル16を背面押し位置に回動すればよい。
以上のようなベビーカー1によれば、以下に列挙する効果が得られる。
【0031】
(1)ハンドル16の縦フレーム16aは、係合位置に近い位置において、閉塞部41と開口部38の最奥部38cとの間から導出された状態となる。したがって、カバー31をベビーカー1から外すことなく、ハンドル16を背面押し位置と対面押し位置との間を移動させることができる。
【0032】
(2)開口部38は、後方側縁部38aと前方側縁部38bとが離間しており、前後方向の幅が細長い細線形状の開口などと比べて広いことから、縦フレーム16aとアームレスト14との間に側方カバー部34を挿入した際に、容易に回動支点部18を開口部38に挿入することができる。
【0033】
(3)縦フレーム16aが閉塞部41と最奥部38cとの間から導出される位置は、縦フレーム16aにおいて、回動支点部18に近い基端部側である。このような位置は、乗車部13のクッション部13aと同じような高さまたはそれより下側となる。したがって、縦フレーム16aを伝って雨水などがカバー31の内部に浸入したとしても、着座している乳幼児などが濡れてしまうことを抑えることができる。
【0034】
(4)開口部38は、前後方向の幅が細長い細線形状の開口などに対して幅広であることから、閉塞部41により閉塞されていない状態において、収納部23に対する物品を視認しやすく、出し入れを容易に行うことができる。
【0035】
(5)開口部38は、幅が広いが、閉塞部41で閉塞される。したがって、収納部23などが飛び跳ねた雨水などによって汚損することを防ぐことができる。
(6)閉塞部41は、線ファスナ(スライドファスナ)などを用いることなく、閉塞部41の先端部を、面ファスナなどの簡素で、廉価な部品で構成された固定部45で固定することができる。
【0036】
(7)閉塞部41は、基端部が後方側縁部38aから後方隙間42を介して固定され、先端部が前方隙間43を介して固定部45の雄型ファスナ45aが設けられており、開口部38より大きい。したがって、閉塞部41は、開口部38に対して十分に大きいことで、しっかりと開口部38を塞ぐことができる。
【0037】
(8)開口部38は、下側の開口端が拡幅部39となっていることで、回動支点部18を挿入する作業が容易となる。
(9)ハンドルが背面押し位置のとき、最奥部38cは、切替操作部材19が後方ロック部20に係合した係合位置と接触することで、カバー本体32をベビーカー1に対して支持する支持部ともなる。したがって、アームレスト14、フロントガード15、幌22などのベビーカー1の最外部分を構成する部材とともに、カバー31を支持し、ベビーカー1に対するカバー31の位置ズレを防ぐことができる。
【0038】
(10)カバー31が装着された状態でも、ハンドル16を背面押し位置から対面押し位置に回動し、縦フレーム16aの切替操作部材19を露出孔44から露出した前方ロック部21に直接係合させることができる。
【0039】
(11)カバー31が装着された状態において、下側開口部37が好ましくは前輪11aや後輪12aと重なるか前輪11aや後輪12aより若干高い位置と、ステップ25とほぼ同じ高さかステップ25より下側との間の何れかに位置する。これにより、乗車部13の乳幼児等の足が濡れないようにすることができるとともに、収納部23が飛び跳ねた雨水などによって汚損することを防ぐことができる。もちろん、下側開口部37は、ステップ25の上側に位置してしまうことがあってもよい。
【0040】
なお、上記ベビーカー1は、以下のように変更してもよい。
・前方ロック部21は、露出孔44から外方に露出していなくてもよい。この場合、前方ロック部21には、側方カバー部34の上側から切替操作部材19が係合されることになる。一例として、側方カバー部34が可撓性を有する合成樹脂シートよりさらに薄手で可撓性を有する布などの防水性シート材で構成されているときは、当該シート材が前方ロック部21に被さっていても、切替操作部材19と前方ロック部21とは確実に係合することができる。
【0041】
・ハンドルが背面押し位置のとき、最奥部38cは、切替操作部材19が後方ロック部20に係合した係合位置と接触していなくてもよい。
・カバー31の着脱に支障がないのであれば、開口部38は、拡幅部39を備えていなくてもよい。一例として、下側の開口端も開口部38の他の領域と同じ幅でもよい。また、開口端が開口部38の他の領域よりも狭くてもよい。
【0042】
・閉塞部41の基端部は、開口部38の後方側縁部38aに後方隙間42を介在させることなく、または、後方隙間42を極力小さくして取り付けられていてもよい。また、閉塞部41の先端部は、前方側縁部38bに前方隙間43を介在させることなく、または、前方隙間43を極力小さくして固定部45に固定されるようにしてもよい。
【0043】
・閉塞部41は、基端部が開口部38に対して前方に位置し、先端部が開口部38に対して後方に位置するように構成してもよい。
・ベビーカー1は、乗車部13の下に収納部23を備えていなくてもよい。
【0044】
・閉塞部41を側方カバー部34に固定する固定部45としては、面ファスナの他、ホック、スライドファスナ、スナップなどであってもよい。
・カバー本体32は、その一部に、通気性をよくするメッシュ部などを設けるようにしてもよい。
【0045】
・カバー31がベビーカー1に装着されたときに、ハンドル16の回動支点部18は、開口部38の最奥部38cに位置するようにし、後方ロック部20は、露出孔44と同様な露出孔によって、外部に露出させるようにしてもよい。この場合、開口部38の高さHは、上述の開口部38の高さHより低いものとなる。このように、開口部38を小さくした場合には、内側に雨水なども入りにくくなり、また、閉塞部41も小さくなり、開閉作業がし易くなる。
【0046】
・開口部38を図1図3の例より更に大きなものとし、開口部38の内側には、後方ロック部20および前方ロック部21が位置するようにしてもよい。これにより、前方ロック部21のための露出孔44を省略することができ、カバー本体32の構成を簡素化することができる。また、露出孔44が無くなることで、カバー本体32の内部に雨水などが浸入しにくくなる。
【0047】
・開口部38は、前方ロック部21が開口部38内側に位置するようにし、後方ロック部20は、開口部38とは別に設けた露出孔から露出させるようにしてもよい。
・開口部38とは別に、前方ロック部21のための露出孔44と後方ロック部20のための露出孔を設けるようにしてもよい。これにより、開口部38の大きさを小さくすることができる。これに伴い、カバー本体32に対して可動する閉塞部41も小さくすることができるので、カバー31の取り扱いがより容易なものとなる。
【0048】
・カバー本体32は、下側開口部37の開口面積を他より広い面積とし、ベビーカー1に装着し易いように、末広がり形状としてもよい。
・固定部45は、閉塞部41の先端部に紐などを設けて、前脚フレーム11に結ぶような構成としてもよい。
【0049】
・最奥部38cの位置からは、縦フレーム16aが導出されることから、最奥部38cの部分は、閉塞部41で閉塞されていなくてもよい。
・前方カバー部33と側方カバー部34との境界部分、側方カバー部34と上方カバー部36との境界部分、側方カバー部34と後方カバー部35との境界部分、上方カバー部36と後方カバー部35との境界部分などに、発光または蓄光性の帯体を縫着し、ステッチを形成するようにしてもよい。
【0050】
・閉塞部41は、開口部38の上方位置から垂下される構成としてもよい。このような場合、閉塞部41は、基端部が側方カバー部34における開口部38の上方かつ前方および後方部分のうちの一方の部分に縫着などによって固定される。そして、側方カバー部34における開口部38の上方かつ前方および後方部分のうちの他方の部分に先端部が固定部45によって着脱可能に固定される。閉塞部41が固定部45によって固定されるときには、最奥部38cから導出している縦フレーム16aを閉塞部41が外側から覆うとようにして、それから固定部45により側方カバー部34に固定される。このような構成によっても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、開口部38の下方かつ前方および後方部分のうち少なくとも一方も固定部45で側方カバー部34に対して着脱可能に固定するようにしてもよい。
・ベビーカー1の構成は、図1図3に示したものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0051】
1…ベビーカー、11…前脚フレーム、11a…前輪、12…後脚フレーム、12a…後輪、13…乗車部、13a…クッション部、14…アームレスト、15…フロントガード、16…ハンドル、16a…縦フレーム、16b…横フレーム、17…開閉ロックレバー、18…回動支点部、19…切替操作部材、20…後方ロック部、21…前方ロック部、22…幌、23…収納部、24…前ステー、25…ステップ、31…カバー、32…カバー本体、33…前方カバー部、34…側方カバー部、35…後方カバー部、36…上方カバー部、37…下側開口部、38…開口部、38a…後方側縁部、38b…前方側縁部、38c…最奥部、39…拡幅部、41…閉塞部、42…後方隙間、43…前方隙間、44…露出孔、45…固定部、45a…雄型ファスナ、45b…雌型ファスナ。
図1
図2
図3