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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】ベビーカー
(51)【国際特許分類】
   B62B 9/12 20060101AFI20220607BHJP
   B62B 7/08 20060101ALI20220607BHJP
   B62B 9/20 20060101ALI20220607BHJP
   B62B 9/24 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
B62B9/12 Z
B62B7/08
B62B9/20
B62B9/24 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018014575
(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公開番号】P2019131025
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000112288
【氏名又は名称】ピジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】叶谷 大輔
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-145145(JP,A)
【文献】特開2017-081252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 9/12
B62B 7/08
B62B 9/20
B62B 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部にキャスター付き前輪を備えた前脚フレームと、ベビーカーが折畳状態と展開状態との間で切り替わる際に前記前脚フレームに対する位置が変化する後脚フレームであって、下端部にキャスター付き後輪を備えた前記後脚フレームと、前記前脚フレームの上端部および前記後脚フレームの上端部が回動可能に支持されるアームレストと、前記ベビーカー後方の背面押し位置と前方の対面押し位置とに移動するハンドルと、前記展開状態において、前記ベビーカーの進行方向となる前輪または後輪のキャスターをロックするキャスターロック機構とを備え、
前記キャスターロック機構は、前記アームレストに配置されるプーリであって、前記ハンドルに押される突起を備え、前記突起が前記ハンドルに押されて回動する前記プーリと、
前記前輪のキャスターをロックする前ロック部と前記プーリとを接続するとともに、前記後輪のキャスターをロックする後ロック部と前記プーリとを接続するワイヤとを備え、
前記ハンドルが前記背面押し位置のとき、前記前輪のキャスターのロックを解除しており、前記ハンドルが前記対面押し位置に移動されると、前記ハンドルが前記突起を押してプーリを回動し、前記ワイヤを介して前記前輪のキャスターをロックし、
前記前脚フレームの上端部および前記後脚フレームの上端部の前記アームレストに対する回動支点は、一致しており、当該回動支点は前記プーリの回動支点と一致しているベビーカー。
【請求項2】
前記前ロック部は、前記前輪のキャスターをロックする方向に付勢されており、
前記後ロック部は、前記後輪のキャスターをロックする方向に付勢されており、
前記プーリは、前記前輪のキャスターのロックを解除する方向に付勢されており、
前記ハンドルが前記背面押し位置のとき、前記プーリは、前記プーリの付勢力によって、前記前ロック部による前記前輪のキャスターのロックを解除し、前記後ロック部に前記後輪のキャスターを付勢力によりロックさせる
請求項1に記載のベビーカー。
【請求項3】
前記プーリは、前記アームレストに内蔵されており、
前記ハンドルは、前記ベビーカーの進行方向に対して直交する幅方向において、前記アームレストより外側に位置し、
前記突起は、前記アームレストより前記幅方向の外側に突出して、前記ハンドルの移動経路と交差している
請求項1または2に記載のベビーカー。
【請求項4】
前記ベビーカーは、前記対面押し位置を規定する前規定部を備え、
前記ハンドルが前記前規定部に当接したタイミングで前記突起を押してプーリを回動し、前記後輪のキャスターのロックを解除し前記前輪のキャスターのロックする
請求項1ないしのうち、何れか1項に記載のベビーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルが背面押し位置と対面押し位置との間を移動することに連動して、前輪と後輪のキャスターを選択的にロックする折り畳み式のベビーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1などに示すように、ベビーカーには、ハンドルがベビーカー後方の背面押し位置とベビーカー前方の対面押し位置とに移動するものがある。この種のベビーカーでは、ハンドルが背面押し位置のとき、前輪キャスターのロックが解除され、後輪のキャスターがロックされる。また、ハンドルが対面押し位置のとき、前輪キャスターがロックされ、後輪のキャスターのロックが解除される。このようなキャスターのロックおよびロック解除の切り替えは、ハンドルの回動に連動して行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6126478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、キャスターのロックおよびロック解除の切り替えをハンドルの回動に連動して簡単に行うことを可能としたベビーカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上のような課題を解決するベビーカーは、下端部にキャスター付き前輪を備えた前脚フレームと、ベビーカーが折畳状態と展開状態との間で切り替わる際に前記前脚フレームに対する位置が変化する後脚フレームであって、下端部にキャスター付き後輪を備えた後脚フレームと、前記前脚フレームの上端部および前記後脚フレームの上端部が回動可能に支持されるアームレストと、前記ベビーカー後方の背面押し位置と前方の対面押し位置とに移動するハンドルと、前記ベビーカーの進行方向となる前輪または後輪のキャスターをロックするキャスターロック機構とを備える。この場合、前記キャスターロック機構は、前記アームレストに配置されるプーリであって、前記ハンドルに押される突起を備え、前記突起が前記ハンドルに押されて回動する前記プーリと、前記前輪のキャスターをロックする前ロック部と前記プーリとを接続するとともに、前記後輪のキャスターをロックする後ロック部と前記プーリとを接続するワイヤとを備え、前記ハンドルが前記背面押し位置のとき、前記前輪のキャスターのロックを解除しており、前記ハンドルが前記対面押し位置に移動されると、前記ハンドルが前記突起を押してプーリを回動し、前記ワイヤを介して前記前輪のキャスターをロックすることが好ましい。
【0006】
上記構成によれば、ハンドルが背面押し位置のときは、進行方向となる前輪のキャスターのロックが解除され、後輪のキャスターがロックされている。そして、ハンドルが対面押し位置に移動されると、ハンドルが突起を押してプーリを回動し、ワイヤを通じて前輪のキャスターをロックし、進行方向となる後輪のキャスターのロックが解除されることになる。このように、ハンドルを対面押し位置と背面押し位置との間で移動させたとき、ハンドルの移動に連動して前輪のキャスターと後輪のキャスターのロックとロック解除を選択的に切り替えることができ、キャスターのロック切り替えの作業が簡単なものとなる。
【0007】
上記ベビーカーにおいて、前記前ロック部は、前記前輪のキャスターをロックする方向に付勢されており、前記後ロック部は、前記後輪のキャスターをロックする方向に付勢された構成としてもよい。さらに、前記プーリは、前記前輪のキャスターをロックを解除する方向に付勢された構成としてもよい。この場合、前記ハンドルが前記背面押し位置のとき、前記プーリは、前記プーリの付勢力によって、前記前ロック部による前記前輪のキャスターのロックを解除し、前記後ロック部に前記後輪のキャスターを付勢力によりロックさせる構成とすることができる。
【0008】
上記構成によれば、背面押しに望ましい、進行方向のキャスター付き前輪が旋回可能で、キャスター付き後輪が旋回不能な状態を自ずと作り出すことができる。
【0009】
上記ベビーカーにおいて、前記前脚フレームの上端部および前記後脚フレームの上端部の前記アームレストに対する回動支点は、一致しており、当該回動支点は前記プーリの回動支点と一致している構成としてもよい。
【0010】
上記構成によれば、プーリの取付構造を簡素化することができる。
【0011】
上記ベビーカーにおいて、前記プーリは、前記アームレストに内蔵されており、前記ハンドルは、前記ベビーカーの進行方向に対して直交する幅方向において、前記アームレストより外側に位置し、前記突起は、前記アームレストより前記幅方向の外側に突出して、前記ハンドルの移動経路と交差している構成としてもよい。
【0012】
上記構成によれば、突起をハンドルの移動経路に位置させることができ、これにより、ハンドルの移動に連動させて、前輪のキャスターと後輪のキャスターのロックとロック解除を切り替えることができる。
【0013】
上記ベビーカーにおいて、前記ベビーカーは、前記対面押し位置を規定する前規定部を備え、前記ハンドルが前記前規定部に当接したタイミングで前記突起を押してプーリを回動し、前記後輪のキャスターのロックを解除し前記前輪のキャスターのロックする構成としてもよい。
【0014】
上記構成によれば、ハンドルが前規定部に当接したタイミングで、後輪のキャスターのロックを解除し前輪のキャスターのロックすることができる。すなわち、ハンドルが対面押し位置に確実に位置するまでは、キャスター付き後輪が旋回してしまうことを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、キャスターのロックおよびロック解除の切り替えをハンドルの回動に連動して簡単に行うことを可能としたベビーカーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ベビーカーを前方から見た斜視図。
図2】ベビーカーを後方から見た斜視図。
図3】ハンドルが背面押し位置にあるときのロック機構の状態を示す側面図。
図4】ハンドルが対面押し位置にあるときのロック機構の状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1図4を参照して、本発明の第1実施形態としてのベビーカーを説明する。
図1は、乳幼児などを乗せて使用するための一人乗りの折り畳み式のベビーカー1であり、展開状態において、乳幼児などを寝かせた姿勢や座らせた姿勢で使用する。図1に示すベビーカー1の状態は、ハンドルがベビーカー後方に位置し、後方からベビーカー1を操作する背面押しの状態を示している。以下の説明では、背面押しの状態を基準にして、進行方向を「前方」と定義し、進行方向に対して反対方向を後方(背面)と定義し、さらに進行方向に対して左右方向を左右(幅)方向と定義し、進行方向に対して上下方向を上下と定義する。なお、図1図4では、クッション材等からなるシート部材や幌を割愛している。
【0018】
図1および図2に示すように、このベビーカー1は、一対の前脚フレーム11と、一対の後脚フレーム12と、乳幼児などが着座する着座部を構成するシートフレーム13とを備えている。各前脚フレーム11は、全体がほぼ直線的な形状を有しており、下端部にキャスター付きの前輪11aが配置されている。各後脚フレーム12は、全体が前方に反るような弓型の形状を有しており、下端部には、キャスター付きの後輪12aが配置されている。一対の前脚フレーム11は、左右方向に横断する前ステー14によって連結されており、一対の後脚フレーム12も、左右方向に横断する後ステー15によって連結されている。前ステー14には、着座している乳幼児等が足を掛けるステップ16が配置されている。
【0019】
一対の前脚フレーム11の上端部は、アームレスト17の前方部分に回動可能に支持されている。一対の後脚フレーム12の上端部も、アームレスト17の前方部分に回動可能に支持されている。前脚フレーム11の上端部および後脚フレーム12の上端部は、一例として同じ軸20aによって支持されている。各後脚フレーム12の長さ方向における中程外側には、ブラケット18の下端部が回動軸20bによって回動可能に取り付けられている。
【0020】
また、シートフレーム13は、シートが取り付けられることによって、着座部が構成される。シートフレーム13の前方端部は、各前脚フレーム11の長さ方向における中程内側に前脚ブラケット13aを介して回動可能に取り付けられる。また、シートフレーム13の後端部は、連結フレーム19の下端部に支軸20cによって回動可能に取り付けられる。また、シートフレーム13の後端部は、リクライニングフレーム29が回動可能に取り付けられる。
【0021】
各ブラケット18の上端部には、その内側に、連結フレーム19の下端部が支軸20cによって回動可能に取り付けられている。各連結フレーム19は、直線状のパイプであって、ブラケット18とアームレスト17との間を連結する。連結フレーム19の上端部は、アームレスト17の後端部に軸体21によって回動可能に取り付けられる。アームレスト17の前端部には、フロントガード22が着脱可能に取り付けられる。
【0022】
各連結フレーム19の更に外側には、ベビーカー1を押して操作するハンドル23が配置されている。ハンドル23は、全体がU字形状を有しており、ベビーカー1の幅方向において、最も外側に配置される部材である。ハンドル23は、ブラケット18の外側に位置する一対の縦フレーム23aと、一対の縦フレーム23aを連結する操作フレーム23bとを備えている。操作フレーム23bは、中央部に、操作者によって操作される開閉操作部24が配置されている。開閉操作部24が操作されることによってベビーカー1は折畳状態と展開状態に切り替わる。
【0023】
ベビーカー1の幅方向において、外側から内側に向かって、ハンドル23の縦フレーム23a、ブラケット18、連結フレーム19、シートフレーム13の後端部の順に配置されている。ブラケット18の上端部、および、連結フレーム19の下端部は、同じ支軸20cによって回動可能に支持されている。ハンドル23の下端部は、連結フレーム19の中程に軸部材21aによって回動可能に支持されている。ハンドル23は、軸部材21aを中心にベビーカー1の後方である背面押し位置(実線で示すハンドル23の位置)とベビーカー1の前方である対面押し位置(二点鎖線で示すハンドル23の位置)の2つの位置の間を移動する。連結フレーム19には、背面押し位置にあるハンドル23がベビーカー1の後方に回動し過ぎることを規制する縦フレーム23aが係合する受け片で構成された後規定部26を備えている。また、アームレスト17は、対面押し位置にあるハンドル23がベビーカー1の前方に回動し過ぎることを規制する前規定部27を備えている。前規定部27は、アームレスト17の幅方向の外側の側面において、縦フレーム23aが係合する受け段部で構成されている。また、ベビーカー1は、相対的に、縦フレーム23a、ブラケット18、連結フレーム19、アームレスト17、前脚フレーム11、および、後脚フレーム12が回動することで、展開状態と折畳状態に遷移することができる。
【0024】
このベビーカー1では、キャスター付き前輪11aのキャスターおよび後輪12aのキャスターを選択的にロックするキャスターロック機構31を備えている。キャスターロック機構31は、ハンドル23が背面押し位置の状態にあるとき、進行方向となる前輪11aのキャスターのロックを解除し前輪11aを旋回可能とし、後輪12aのキャスターをロックし旋回不能な状態とする。また、ハンドル23が対面押しの状態にあるとき、前輪11aのキャスターをロックし旋回不能な状態とし、進行方向となる後輪12aのキャスターのロックを解除し後輪12aを旋回可能な状態とする。すなわち、キャスターロック機構31は、ベビーカー1の進行方向の車輪のキャスターを旋回可能とし、進行方向と反対側の車輪のキャスターを旋回不能にロックする。
【0025】
キャスターロック機構31は、このような前輪11aのキャスターおよび後輪12aのキャスターのロック/ロック解除の切り替えをハンドル23の移動に連動させて行う。図3に示すように、キャスターロック機構31の一部を構成する機構であって、前輪11aのキャスターの旋回をロックする機構は、前脚フレーム11の下端部に固定される前取付部11bと、前取付部11bに対して旋回する前旋回部11cとを備えている。そして、前取付部11bは、前旋回部11cの旋回をロックする前ロック部11dを備え、前旋回部11cは、前ロック部11dが係合される前被ロック部11eを備えている。前ロック部11dは、一例として、ロックピンなどのロック部材であり、前被ロック部11eは、一例として、前ロック部11dが係合されるロック孔である。前ロック部11dは、前付勢部材11fによって、常時、前被ロック部11eに係合するロック方向(矢印D1方向)に付勢されている。前付勢部材11fは、一例として、コイルバネや捻じりコイルバネなどである。一例として、前旋回部11cの前取付部11bの旋回中心に対してずれた位置に前被ロック部11eのロック孔を設け、この位置の前被ロック部11eに対して前ロック部11dのロックピンが係合することで、前旋回部11cの旋回を禁止することができる。
【0026】
なお、キャスターロック機構31の一部を構成する後輪12aのキャスターの旋回をロックする機構も、前輪11aのキャスターと同様な構成を有しており、後取付部12bと、後旋回部12cと、後ロック部12dと、後被ロック部12eとを備えている。そして、後ロック部12dは、後付勢部材12fによって、常時、後被ロック部12eに係合するロック方向(矢印D1方向)に付勢されている。
【0027】
キャスターロック機構31は、さらにアームレスト17の内部に配置されるプーリ32と、プーリ32と前ロック部11dとを接続する前ワイヤ11gと、プーリ32と後ロック部12dとを接続する後ワイヤ12gとを備えている。
【0028】
プーリ32は、アームレスト17の内部において、回動支点32aを有している。一例として、プーリ32は、前脚フレーム11の上端部および後脚フレーム12の上端部の回動支点である軸20aと一致した位置に回動支点32aを有している。この場合、一例として、プーリ32を軸20aに取り付けることで、構成を簡素化できる。プーリ32は、さらにベビーカー1の幅方向において外側を向く面に突起33を備えている。突起33は、アームレスト17の幅方向の外側の側面に設けられた貫通孔33aを介して外部に露出されている。そして、突起33は、ハンドル23の縦フレーム23aの移動経路34と交差し、移動する縦フレーム23aによって押圧可能な程度にアームレスト17の幅方向の外側面17aから突出している。
【0029】
また、アームレスト17の内部において、プーリ32が配置される位置は、縦フレーム23aが対面押し位置に至るタイミングで突起33が押圧される位置である。アームレスト17の内部には、さらに、プーリ32をベビーカー1の後方(矢印D2方向)に向けて付勢する付勢部材35を備えている。付勢部材35は、一例として、コイルバネや捻じりコイルバネなどである。付勢部材35は、前付勢部材11fの付勢力よりも大きい付勢力に設定されている。
【0030】
また、プーリ32は、前ワイヤ11gが取り付けられる前ワイヤ固定部36aと、後ワイヤ12gが取り付けられる後ワイヤ固定部36bとを備えている。前ワイヤ11gおよび後ワイヤ12gは、共に、一例としてミニロープで構成されている。すなわち、前ワイヤ11gおよび後ワイヤ12gは、金属細線と、金属細線が内部に挿通されるアウタチューブとを備えている。前ワイヤ固定部36aには、前ワイヤ11gの金属細線の一端部が固定され、後ワイヤ固定部36bには、後ワイヤ12gの金属細線の一端部が固定される。また、前ワイヤ11gの金属細線は、反対側の他端部が前ロック部11dに固定され、後ワイヤ12gの金属細線は、反対側の他端部が後ロック部12dに固定される。前ワイヤ11gは、前脚フレーム11内に挿通され、後ワイヤ12gは、後脚フレーム12内に挿通され、共に、外部から隠れるように配設されている。
【0031】
次に、以上のようなキャスターロック機構31を備えたベビーカー1の作用について説明する。
図3に示すように、ハンドル23が背面押し位置にあるとき、プーリ32は、付勢部材35の付勢力を受けて矢印D2方向に回動した状態にある。ここで、付勢部材35の付勢力は、前付勢部材11fの付勢力よりも大きい。したがって、プーリ32は、前ロック部11dを、前付勢部材11fの付勢力に抗して、前ワイヤ11gを通じて前被ロック部11eから引き上げ、前ロック部11dは、前被ロック部11eと係合していないロック解除状態となっている。したがって、キャスター付き前輪11aは、前取付部11bに対して前旋回部11cが旋回可能な状態となる。これに対して、後ロック部12dは、後ワイヤ12gが緩んでおり、後付勢部材12fの付勢力によって後被ロック部12eに係合したロック状態となっている。したがって、キャスター付き後輪12aは、後取付部12bに対して後旋回部12cが旋回不能な状態となる。
【0032】
かくして、ハンドル23が背面押し位置にあるとき、進行方向のキャスター付き前輪11aが旋回可能で、キャスター付き後輪12aが旋回不能な状態となり、円滑に、ベビーカー1を背面押しで走行させることができる。
【0033】
図4に示すように、ベビーカー1は、ハンドル23が背面押し位置から対面押し位置に回動させることができる。プーリ32の突起33は、ハンドル23が対面押し位置に移動したタイミングで縦フレーム23aに押圧される。一例として、ハンドル23は、突起33が係合する凹部形状を有した係合部37を備えている。係合部37は、縦フレーム23aにおけるアームレストの外側面17aと対向する面に備え、縦フレーム23aが背面押し位置から対面押し位置に移動するとき、突起33を向かい入れる側を開口端としている。プーリ32は、突起33が係合部37に係合することで、付勢部材35の付勢力に抗して反矢印D2方向に回動する。すると、前ロック部11dは、前ワイヤ11gが緩み、前付勢部材11fの付勢力によって前被ロック部11eに係合したロック状態となる。これに対して、後ロック部12dは、後ワイヤ12gを通じて後被ロック部12eから引き上げられ、後被ロック部12eと係合していないロック解除状態となる。したがって、キャスター付き後輪12aは、後取付部12bに対して後旋回部12cが旋回可能な状態となる。
【0034】
かくして、ハンドル23が対面押し位置にあるとき、進行方向のキャスター付き後輪12aが旋回可能で、キャスター付き前輪11aが旋回不能な状態となり、円滑に、ベビーカー1を対面押しで走行させることができる。
【0035】
なお、ハンドル23を対面押し位置から背面押し位置に戻したときには、図3の状態に戻ることになる。
【0036】
以上のようなベビーカー1によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)プーリ32をアームレスト17に配置することで、ハンドル23の移動に合わせて、プーリ32を回動させることができる。これにより、ハンドル23の移動に連動して、キャスター付き前輪11aのキャスターとキャスター付き後輪12aのキャスターのロックとロック解除を切り替えることができ、キャスターのロック切り替えの作業が簡単なものとなる。
【0037】
(2)キャスターロック機構31において、プーリ32をアームレスト17に配置することで、アームレスト17から延びる前脚フレーム11の内部に前ワイヤ11gを延在させることができ、後脚フレーム12の内部に後ワイヤ12gを延在させることができる。これにより、前ワイヤ11gや後ワイヤ12gが外方に露出することがなくなり、ベビーカー1の見栄えの悪化を防ぐことができる。
【0038】
(3)プーリ32をアームレスト17に配置することで、前ワイヤ11gを前脚フレーム11の内部に延在させ、後ワイヤ12gを後脚フレーム12の内部に延在させることができ、前ワイヤ11gおよび後ワイヤ12gの長さを短く経路を簡素にすることができる。すなわち、前ワイヤ11gおよび後ワイヤ12gをブラケット18や連結フレーム19などを経由させる必要がなくなり、キャスターロック機構31を簡素化することができる。
【0039】
(4)プーリ32は、付勢部材35によって、ベビーカー1の後方(矢印D2方向)に向けて付勢されている。これにより、背面押しに望ましい、進行方向のキャスター付き前輪11aが旋回可能で、キャスター付き後輪12aが旋回不能な状態を自ずと作り出すことができる。そして、ハンドル23が背面押し位置から対面押し位置に回動させることで、自ずと、対面押しに望ましい進行方向のキャスター付き後輪12aが旋回可能で、キャスター付き前輪11aが旋回不能な状態作り出すことができる。
【0040】
(5)前脚フレーム11の上端部および後脚フレーム12の上端部のアームレスト17に対する回動支点にプーリ32の回動支点を一致させることで、プーリ32の取付構造を簡素化することができる。
【0041】
(6)プーリ32は、アームレスト17に内蔵されることで、ベビーカー1の見栄えの悪化を防ぐことができる。プーリ32が破損したり脱落したりしてキャスターロック機構31が故障することを防ぐことができる。
【0042】
(7)プーリ32にアームレスト17より外側面17aから突出する突起33を設けることで、突起33をハンドル23の移動経路34に位置させることができ、これにより、ハンドル23の移動に連動させて、キャスター付き前輪11aのキャスターとキャスター付き後輪12aのキャスターのロックとロック解除を切り替えることができる。
【0043】
(8)ハンドル23の移動範囲を、後規定部26と前規定部27とによって正確に規定することができる。そして、ハンドル23が前規定部27に当接したタイミングで、後輪12aのキャスターのロックを解除し前輪11aのキャスターのロックすることができる。これにより、ハンドル23が対面押し位置に確実に位置するまでは、キャスター付き後輪12aが旋回してしまうことを防ぐことができる。
【0044】
なお、上記ベビーカー1は、以下のように変更してもよい。
・ベビーカー1において、ハンドル23が背面押し位置から対面押し位置に移動する過程(途中)で、後輪12aのキャスターのロックを解除し、前輪11aのキャスターのロックするようにしてもよい。また、ハンドル23が対面押し位置から背面押し位置に移動する過程で、後輪12aのキャスターをロックし、前輪11aのキャスターのロックを解除するようにしてもよい。
【0045】
・プーリ32の回動支点32aと前脚フレーム11の上端部および後脚フレーム12の上端部のアームレスト17に対する軸20aの回動支点とは一致していなくてもよい。
・プーリ32をプーリ32は、付勢部材35によって、ベビーカー1の後方(矢印D2方向)に向けて付勢する付勢部材35は、省略してもよい。一例として、突起33を常時ハンドル23の縦フレーム23aに常に係合させて、プーリ32を縦フレーム23aの移動と連携して回動させるようにしてもよい。
【0046】
・前ワイヤ11gとプーリ32は、直接接続されているのではなく、連結具を介して接続されていてもよい。後ワイヤ12gとプーリ32も、直接接続されているのではなく、連結具を介して接続されていてもよい。さらに、前ワイヤ11gと後ワイヤ12gとは、2本ではなく一連の1本のワイヤで構成し、1本のワイヤの中間部において、プーリ32を固定するようにしてもよい。
【0047】
・プーリ32の突起33は、縦フレーム23aの係合部37に係合し押圧されるのではなく、縦フレーム23aの対面押し位置側の縁部で押されるようにしてもよい。これにより、縦フレーム23aから係合部37の構成を省略することができ、構造の簡素化を実現することができる。
【符号の説明】
【0048】
1…ベビーカー、11…前脚フレーム、11a…前輪、11b…前取付部、11c…前旋回部、11d…前ロック部、11e…前被ロック部、11f…前付勢部材、11g…前ワイヤ、12…後脚フレーム、12a…後輪、12b…後取付部、12c…後旋回部、12d…後ロック部、12e…後被ロック部、12f…後付勢部材、12g…後ワイヤ、13…シートフレーム、13a…ブラケット、14…前ステー、15…後ステー、16…ステップ、17…アームレスト、17a…外側面、18…ブラケット、19…連結フレーム、20a…軸、20b…回動軸、20c…支軸、21…軸体、21a…軸部材、22…フロントガード、23…ハンドル、23a…縦フレーム、23b…操作フレーム、24…開閉操作部、26…後規定部、27…前規定部、29…リクライニングフレーム、31…キャスターロック機構、32…プーリ、32a…回動支点、33…突起、33a…貫通孔、34…移動経路、35…付勢部材、36a…前ワイヤ固定部、36b…後ワイヤ固定部、37…係合部。
図1
図2
図3
図4