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特許7084158情報処理方法、プログラム、情報処理装置、及び情報処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】情報処理方法、プログラム、情報処理装置、及び情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 16/90 20190101AFI20220607BHJP
   G06F 16/903 20190101ALI20220607BHJP
【FI】
G06F16/90
G06F16/90 100
G06F16/903
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018030697
(22)【出願日】2018-02-23
(65)【公開番号】P2019145002
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】398011446
【氏名又は名称】株式会社シーイーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100187078
【弁理士】
【氏名又は名称】甲原 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】土屋 道一郎
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-128608(JP,A)
【文献】国際公開第2017/199433(WO,A1)
【文献】特開2004-355108(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0037398(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00-16/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバによって実行される情報処理方法であって、
車両に関する質問文を含むユーザの入力情報を受信するステップと、
前記質問文の特性値に基づいて、文章の詳細さの指標である詳細度を決定するステップと、
前記詳細度に応じて回答文の特性値の範囲を決定するステップと、
回答文の候補となる候補文を、前記候補文の特性値が前記範囲に収まるまで修正するステップと、
修正後の候補文を回答文として送信するステップと、
を含む、情報処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理方法であって、
文章の特性値は、前記文章に含まれる文字数、単語数、内容語の数、又は係り受けの数であり、
前記質問文の性値が大きいほど、決定される前記詳細度が高くなる、情報処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の情報処理方法であって、
前記詳細度が高いほど、決定される前記範囲が高くなる、情報処理方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の情報処理方法であって、
取得された前記質問文に基づいて、前記ユーザの質問内容が判明したか否かを判定するステップと、
質問内容が判明していないと判定された場合、前記ユーザに対する聞き返し文を決定して送信する送信ステップと、
前記聞き返し文に対する前記ユーザの追加の入力情報を受信する受信ステップと、
を更に含み、
前記ユーザの質問内容が判明したと判定されるまで、前記送信ステップ及び前記受信ステップが繰り返し実行される、情報処理方法。
【請求項5】
サーバに、
車両に関する質問文を含むユーザの入力情報を受信するステップと、
前記質問文の特性値に基づいて、文章の詳細さの指標である詳細度を決定するステップと、
前記詳細度に応じて回答文の特性値の範囲を決定するステップと、
回答文の候補となる候補文を、前記候補文の特性値が前記範囲に収まるまで修正するステップと、
修正後の候補文を回答文として送信するステップと、
を実行させる、プログラム。
【請求項6】
サーバであって、
車両に関する質問文を含むユーザの入力情報を受信し、前記質問文の特性値に基づいて、文章の詳細さの指標である詳細度を決定し、前記詳細度に応じて回答文の特性値の範囲を決定し、回答文の候補となる候補文を、前記候補文の特性値が前記範囲に収まるまで修正し、修正後の候補文を回答文として送信する制御部
を備える、情報処理装置。
【請求項7】
互いに通信可能な情報処理装置及びサーバを備える情報処理システムであって、
前記情報処理装置は、車両に関する質問文を含むユーザの入力情報を取得し、
前記情報処理装置又は前記サーバは、前記質問文の特性値を検出し、記質問文の特性値に基づいて、文章の詳細さの指標である詳細度を決定し、前記詳細度に応じて回答文の特性値の範囲を決定し、回答文の候補となる候補文を、前記候補文の特性値が前記範囲に収まるまで修正し、
前記情報処理装置は、修正後の前記候補文を回答文として出力する、
情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法、プログラム、情報処理装置、及び情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザによって入力された質問文に対して自動的に回答する情報処理技術が知られている。例えば、特許文献1には、学習された回答タイプモデルと、推定対象質問文の特徴量ベクトルとに基づいて、推定対象質問文の回答タイプを推定する技術が開示されている。また、特許文献2には、検索された事例質問回答文の質問文と新規質問文との類似度に基づいて、質問文同士が類似の内容に関する質問文であるかどうかを判定する技術が開示されている。また、特許文献3には、事前に用意された質問文のサンプルから質問タイプを特徴付ける素性を抽出し、各質問を素性ベクトルに変換し、素性ベクトルからSupport Vector Machineを用いて、未知の質問が入力されたときどの質問タイプかを識別する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-250925号公報
【文献】特開2006-244262号公報
【文献】特許第4008313号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、質問者が期待する回答文の詳細度は、状況に応じて異なり得る。例えば、装置に関する質問を行うユーザが、装置の仕組みには興味が無く、装置の状態が正常か否かのみを知りたいと考える場合がある。かかる場合、装置の仕組み及び状態の両方が回答されると、ユーザが回答に不満を感じる可能性がある。反対に、装置に関する質問を行うユーザが、装置の状態が正常か否かだけでなく、装置がその状態に至った原因まで知りたいと考える場合がある。かかる場合、装置の状態のみが回答されると、ユーザが回答に不満を感じる可能性がある。
【0005】
上述した事情から、質問者が期待する回答文の詳細度を考慮して自動的に回答する情報処理技術が望まれている。しかしながら、上述した従来技術は、質問者が期待する回答文の詳細度を考慮したものではないため、近年のニーズに必ずしも対応できない。
【0006】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、質問者が期待する回答文の詳細度を考慮して自動的に回答する情報処理方法、プログラム、情報処理装置、及び情報処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る情報処理方法は、
情報処理装置によって実行される情報処理方法であって、
車両に関する質問文を含むユーザの入力情報を取得するステップと、
前記質問文の特性値の検出結果に基づいて決定される、文章の詳細さの指標である詳細度に応じた回答文を出力するステップと、を含む。
【0008】
本発明の一実施形態に係るプログラムは、
情報処理装置に、
車両に関する質問文を含むユーザの入力情報を取得するステップと、
前記質問文の特性値の検出結果に基づいて決定される、文章の詳細さの指標である詳細度に応じた回答文を出力するステップと、を実行させる。
【0009】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置は、
情報処理装置であって、
車両に関する質問文を含むユーザの入力情報を取得し、前記質問文の特性値の検出結果に基づいて決定される、文章の詳細さの指標である詳細度に応じた回答文を出力する制御部を備える。
【0010】
発明の一実施形態に係る情報処理システムは、
互いに通信可能な情報処理装置及びサーバを備える情報処理システムであって、
前記情報処理装置は、車両に関する質問文を含むユーザの入力情報を取得し、
前記情報処理装置又は前記サーバは、前記質問文の特性値を検出し、
前記情報処理装置又は前記サーバは、前記質問文の前記特性値の検出結果に基づいて、文章の詳細さの指標である詳細度を決定し、
前記情報処理装置は、決定された前記詳細度に応じた回答文を出力する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態に係る情報処理方法、プログラム、情報処理装置、及び情報処理システムによれば、質問者が期待する回答文の詳細度を考慮した自動回答が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】サーバ記憶部に記憶される情報の例を示す図である。
図3】情報処理システムの動作を示すシーケンス図である。
図4】質問文及び回答文の第1例を示す図である。
図5】質問文及び回答文の第2例を示す図である。
図6】質問文及び回答文の第3例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
(情報処理システムの構成)
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る情報処理システム1の概要について説明する。情報処理システム1は、情報処理装置10と、サーバ20と、を備える。情報処理装置10は、例えば自動車等の車両に搭載されるナビゲーション装置等の車載装置、スマートフォン、又はタブレット端末等の装置であるが、これらに限られず、ユーザによって使用される任意の装置であってもよい。サーバ20は、1つ又は互いに通信可能な複数のサーバ装置を含む。本実施形態では、説明の簡便のため、サーバ20が1つのサーバ装置であるものとして説明する。情報処理装置10及びサーバ20は、ネットワーク30を介して通信可能に接続される。ネットワーク30は、例えばインターネットを含むが、任意の他のネットワークを含んでもよい。
【0015】
情報処理システム1において、情報処理装置10とサーバ20とが協働して、例えば車両に関するユーザの質問に対する回答を行う。概要として、情報処理システム1は、車両に関する質問文を含むユーザの入力情報を取得する。質問文は、例えば自然言語で表現された文字列であってもよい。また、入力情報は、例えばユーザがキーボードを用いて入力した文字列であってもよく、或いはユーザがマイクを用いて入力した音声であってもよい。本明細書において「音声」は、言語的意味を有する一連の音を指す。情報処理システム1は、ユーザの質問内容を認識するとともに、質問文の特性値を検出する。本実施形態において、文章の「特性値」は、例えば、当該文章に含まれる文字数、単語数、内容語の数、又は係り受けの数等であるが、これらに限られず、当該文章の性質を示す任意のパラメータであってもよい。情報処理システム1は、質問文の特性値の検出結果に基づいて、文章の詳細さの指標である詳細度を決定する。そして、情報処理システム1は、決定された詳細度に応じた回答文を出力する。
【0016】
ここで、質問に対して詳細な回答を期待するユーザほど、質問文の特性値が大きくなる可能性が高い。例えば、ある事象の説明のみを求めるユーザは、「この事象は何?」といった比較的簡素で特性値の小さい質問文を入力する傾向がある。一方、事象の説明に加え、当該事象の発生原因の説明まで求めるユーザは、「いつもどおり車を運転していたのに発生したこの事象は何?」といった比較的複雑で特性値の大きい質問文を入力する傾向がある。このように、質問文の特性値及びユーザが期待する回答文の詳細度は、一定の相関関係を有するものと考えられる。これに対して、情報処理システム1の上述した動作によれば、回答文の詳細度が、ユーザの質問文の特性値の検出結果に応じて定まる。したがって、ユーザが期待する回答文の詳細度を考慮した自動回答が可能になる。
【0017】
次に、情報処理システム1の各構成について、詳細に説明する。
【0018】
(情報処理装置の構成)
図1に示すように、情報処理装置10は、表示部11と、入力部12と、音声再生部13と、通信部14と、記憶部15と、制御部16と、を備える。
【0019】
表示部11は、情報を表示するディスプレイを含む。ディスプレイは、例えば液晶パネル又は有機EL(Electro Luminescence)パネル等の表示パネルに情報を表示するパネルディスプレイを含んでもよい。本実施形態において、表示部11は、後述するように制御部16によって出力される聞き返し文及び回答文の文字列を表示してもよい。
【0020】
入力部12は、ユーザによる入力を受け付ける1つ以上の入力インタフェースを含む。例えば、入力インタフェースは、文字入力を受け付けるキーボード、及び表示部11と一体的に設けられたタッチパネル、並びに音声入力を受け付けるマイクを含んでもよい。以下、入力部12に入力される文字又は音声の情報を、入力情報ともいう。
【0021】
音声再生部13は、1つ以上のスピーカを含む。本実施形態において、音声再生部13は、後述するように制御部16によって出力される聞き返し文及び回答文の音声を再生してもよい。
【0022】
通信部14は、任意の通信規格に対応する1つ以上の通信インタフェースを含む。例えば、通信部14は、4G(4th Generation)等のモバイル通信規格、有線LAN(Local Area Network)規格、無線LAN規格、及びUSB(Universal Serial Bus)規格等のそれぞれに対応する通信インタフェースを含んでもよい。本実施形態において、情報処理装置10は、通信部14及びネットワーク30を介して、サーバ20と通信可能である。
【0023】
記憶部15は、1つ以上のメモリを含む。本実施形態において、メモリは、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、及び光メモリ等を含んでもよい。記憶部15に含まれる各メモリは、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部15は、情報処理装置10の動作に用いられる任意の情報を記憶する。
【0024】
制御部16は、1つ以上のプロセッサを含む。本実施形態において、プロセッサは、例えば汎用のプロセッサ、及び特定の処理に特化した専用のプロセッサを含んでもよい。制御部16は、情報処理装置10全体の動作を制御する。
【0025】
例えば、制御部16は、車両に関する質問文を含む入力情報を入力部12から取得する。制御部16は、通信部14を介して入力情報をサーバ20へ送信する。制御部16は、後述するようにサーバ20から後述する聞き返し文又は回答文をサーバ20から受信すると、当該聞き返し文又は回答文を出力する。出力された聞き返し文又は回答文は、表示部11によって文字で表示されてもよく、或いは音声再生部13によって音声で再生されてもよい。
【0026】
(サーバの構成)
図1に示すように、サーバ20は、サーバ通信部21と、サーバ記憶部22と、サーバ制御部23と、を備える。
【0027】
サーバ通信部21は、任意の通信規格に対応する1つ以上の通信インタフェースを含む。例えば、サーバ通信部21は、有線LAN規格、無線LAN規格、及びUSB規格等のそれぞれに対応する通信インタフェースを含んでもよい。本実施形態において、サーバ20は、サーバ通信部21及びネットワーク30を介して、情報処理装置10と通信可能である。
【0028】
サーバ記憶部22は、1つ以上のメモリを含む。サーバ記憶部22に含まれる各メモリは、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。サーバ記憶部22は、サーバ20の動作に用いられる任意の情報を記憶する。
【0029】
例えば、サーバ記憶部22は、車両の取扱書データ及び画像コンテンツを記憶する。取扱書データ及び画像コンテンツは、ユーザの質問文に対する回答文の決定処理に用いられる。例えば、質問内容が車両の操作方法である場合、取扱書データに含まれる当該操作方法の説明文を引用して、回答文が決定されてもよい。また、当該操作方法の説明に関する画像コンテンツが、表示部11に表示されてもよい。
【0030】
また、サーバ記憶部22は、知識データベースを記憶する。例えば、知識データベースは、ユーザの質問文に使用され得る車両に関する所定の複数のキーワードを含む。例えば、車両に関するキーワードは、車両に搭載された機能及び装置の名称並びに「動かない」及び「開け方」等の、車両の取扱書データに記載された文言を含んでもよい。車両に関するキーワードは、質問内容の認識処理に用いられる。
【0031】
また、知識データベースは、ユーザの質問文に使用され得る所定の複数の質問フレーズを含む。例えば、質問フレーズは、「どうすればいい?」、「これは何?」、及び「どういう意味?」等の、質問文において使用され得る任意のフレーズを含んでもよい。質問フレーズは、質問内容の認識処理に用いられる。
【0032】
また、知識データベースは、回答文に使用可能な所定の複数の回答フレーズを含む。例えば、回答フレーズは、「直ちに停車してください。」、「異常ではありません。」、及び「原因は…です。」等の、回答文において使用され得る任意のフレーズを含んでもよい。回答フレーズは、車両の取扱書データに含まれる任意のフレーズを含んでもよい。後述するように、サーバ制御部23は、1つ以上の回答フレーズを用いて回答文を決定する。
【0033】
サーバ制御部23は、1つ以上のプロセッサを含む。サーバ制御部23は、サーバ20全体の動作を制御する。例えば、サーバ制御部23は、サーバ20又はサーバ20と通信可能なコンピュータに接続されたキーボード等の入力インタフェースを介するユーザ入力に応じて、サーバ記憶部22に記憶された知識データベースを更新する。具体的には、サーバ制御部23は、当該入力インタフェースを介して入力されたキーワード、質問フレーズ、又は回答フレーズを、知識データベースに追加してもよく、又は知識データベースから削除してもよい。かかる構成によれば、例えばサーバ20のオペレータは、知識データベースに包含させるキーワード等を編集可能である。
【0034】
また、サーバ制御部23は、情報処理装置10から、車両に関する質問文を含む入力情報を受信する。サーバ制御部23は、入力情報が音声である場合、当該音声を文字に変換する。サーバ制御部23は、入力情報に含まれる質問文の解析処理を行う。例えば、解析処理は、形態素解析、構文解析、意味解析、文脈解析、及び照応解析等の処理を含んでもよい。サーバ制御部23は、サーバ記憶部22に記憶された知識データベースを参照して、質問文に含まれる車両に関するキーワード及び質問フレーズを検出する。
【0035】
サーバ制御部23は、質問文の解析処理の処理結果と、検出した車両に関するキーワード及び質問フレーズと、に基づいて、ユーザの質問内容が判明したか否かを判定する。
【0036】
質問内容が判明していないと判定された場合、サーバ制御部23は、ユーザに対する聞き返し文を決定し、情報処理装置10へ送信する。聞き返し文は、質問内容が判明するために必要な追加の情報をユーザに聞き返すための文章を含む。聞き返し文の決定には、例えばスロットフィリング等、任意のアルゴリズムが採用可能である。サーバ制御部23は、聞き返し文の送信に応じて、追加の入力情報を情報処理装置10から受信し得る。サーバ制御部23は、例えば質問内容が判明したと判定されるまで、聞き返し文の決定及び送信、並びに追加の入力情報の受信を繰り返してもよい。
【0037】
一方、質問内容が判明したと判定された場合、サーバ制御部23は、質問文の特性値を検出する。上述したように、本実施形態において、文章の「特性値」は、例えば、当該文章に含まれる文字数、単語数、内容語の数、又は係り受けの数等であるが、これらに限られず、当該文章の性質を示す任意のパラメータであってもよい。
【0038】
サーバ制御部23は、質問文の特性値の検出結果に基づいて、文章の詳細さの指標である詳細度を決定する。例えば、詳細度が高いほど、文章が詳細であることを示す。例えば、サーバ制御部23は、質問文の特性値が高いほど、詳細度を高くしてもよい。ここで、サーバ記憶部22は、詳細度が取り得る値毎に、質問文の特性値の範囲を予め記憶してもよい。例えば、図2に示す例では、質問文の特性値の範囲「1以上50未満」には詳細度「1」が対応付けられ、質問文の特性値の範囲「50以上100未満」には詳細度「2」が対応付けられ、質問文の特性値の範囲「100以上」には詳細度「3」が対応付けられている。しかしながら、質問文の特性値の範囲と詳細度との対応関係は、図2に示す例に限られない。
【0039】
サーバ制御部23は、決定した詳細度に応じた回答文を、サーバ記憶部22に記憶された取扱書データ、画像コンテンツ、及び知識データベースを用いて決定する。具体的には、サーバ記憶部22は、詳細度が取り得る値毎に、回答文の特性値の範囲を予め記憶する。例えば、図2に示す例では、詳細度「1」には回答文の特性値の範囲「1以上30未満」が対応付けられ、詳細度「2」には回答文の特性値の範囲「30以上60未満」が対応付けられ、詳細度「3」には回答文の特性値の範囲「60以上」が対応付けられている。しかしながら、詳細度と回答文の特性値の範囲との対応関係は、図2に示す例に限られない。サーバ制御部23は、決定した詳細度に対応する特性値の範囲に回答文の特性値が収まるように、回答文を決定する。例えば、サーバ制御部23は、回答文の候補となる候補文を決定し、上述のように決定した詳細度に対応する範囲に当該候補文の特性値が収まるまで、当該候補文を修正する。候補文の決定及び修正には、例えば、ニューラルネットワーク等の任意のアルゴリズムが採用可能である。候補文の修正は、例えば、回答フレーズの追加、並びに当該候補文に含まれる回答フレーズの変形及び削除等を含んでもよい。候補文の特性値が当該範囲に収まった場合、サーバ制御部23は、当該候補文を回答文として決定する。したがって、決定される回答文の特性値が、詳細度に応じて異なることになる。例えば、詳細度が高いほど、回答文に含まれる文字数、単語数、内容語の数、又は係り受けの数(即ち、回答文の特性値)が大きくなってもよい。そして、サーバ制御部23は、決定した回答文を情報処理装置10へ送信する。
【0040】
(情報処理システムの動作フロー)
図3を参照して、情報処理システム1の上述した動作のフローについて説明する。
【0041】
ステップS100:情報処理装置10は、車両に関する質問文を含むユーザの入力情報を取得する。
【0042】
ステップS101:情報処理装置10は、ステップS100の入力情報をサーバ20へ送信する。
【0043】
ステップS102:サーバ20は、情報処理装置10から受信した入力情報に含まれる質問文の解析処理を行う。入力情報が音声である場合、サーバ20は、当該音声を文字に変換してから、質問文の解析処理を行う。
【0044】
ステップS103:サーバ20は、サーバ記憶部22に記憶された知識データベースを参照して、質問文に含まれる車両に関するキーワードを検出する。
【0045】
ステップS104:サーバ20は、サーバ記憶部22に記憶された知識データベースを参照して、質問文に含まれる質問フレーズを検出する。
【0046】
ステップS105:サーバ20は、質問文の解析処理の処理結果と、検出した車両に関するキーワード及び質問フレーズと、に基づいて、ユーザの質問内容が判明したか否かを判定する。質問内容が判明していないと判定された場合(ステップS105-No)、プロセスはステップS106に進む。一方、質問内容が判明したと判定された場合(ステップS105-Yes)、プロセスはステップS108に進む。
【0047】
ステップS106:ステップS105で質問内容が判明していないと判定された場合(ステップS105-No)、サーバ20は、ユーザに対する聞き返し文を決定し、情報処理装置10へ送信する。
【0048】
ステップS107:情報処理装置10は、サーバ20から受信した聞き返し文を出力する。その後、プロセスはステップS100に戻る。
【0049】
ステップS108:ステップS105で質問内容が判明したと判定された場合(ステップS105-Yes)、サーバ20は、質問文の特性値を検出する。
【0050】
ステップS109:サーバ20は、質問文の特性値の検出結果に基づいて、詳細度を決定する。
【0051】
ステップS110:サーバ20は、決定した詳細度に応じた回答文を決定する。
【0052】
ステップS111:サーバ20は、決定した回答文を情報処理装置10へ送信する。
【0053】
ステップS112:情報処理装置10は、サーバ20から受信した回答文を出力する。
【0054】
(質問文及び回答文の具体例)
図4図6を参照して、情報処理システム1においてユーザの質問文に対して出力される回答文の具体例について説明する。
【0055】
図4は、ある事象が発生した場合に行われる、ユーザの質問文及びこれに対する回答文の具体例を示す。図4では、当該事象の説明を求める3つの質問文と、それぞれ当該事象の説明を少なくとも含む3つの回答文が図示されている。
【0056】
ここで、当該3つの質問文は、互いに特性値が異なる。具体的には、1行目の質問文は「この事象は何?」であり、特性値(例えば、文字数等)は比較的小さい。このため、1行目の質問文に対応する詳細度は「1」である。2行目の質問文は「操作Aをしたら発生したこの事象は何?」であり、特性値は1行目の質問文よりも大きい。このため、2行目の質問文に対応する詳細度は、1行目よりも高い「2」である。3行目の質問文は「操作Bをした後に操作Aをしたら発生したこの事象は何?」であり、特性値は2行目の質問文よりも更に大きい。このため、3行目の質問文に対応する詳細度は、2行目よりも更に高い「3」である。
【0057】
そして、詳細度「1」に対応する1行目の回答文は「それは事象Pです。」であり、特性値は比較的小さい。詳細度「2」に対応する2行目の回答文は「それは事象Pです。車両が状態Qになると発生します。」であり、特性値は1行目の回答文よりも大きい。詳細度「3」に対応する3行目の回答文は「それは事象Pです。車両が状態Qになると発生します。操作Rを行ってください。」であり、特性値は2行目の回答文よりも更に大きい。このように、質問文の特性値が大きいほど、出力される回答文の特性値も大きくなる。
【0058】
図5は、車両に備えられたイモビライザーが作動した場合に行われる、ユーザの質問文及びこれに対する回答文の具体例を示す。図5では、3組の質問文及び回答文が示されている。
【0059】
図5の1行目において、質問文は「車に鍵のマークが点いた。」である。当該質問文は、鍵マークが点灯したという事象を単に伝えるものである。当該質問文の特性値(例えば、文字数等)は、比較的小さい。このため、当該質問文の特性値に基づいて決定される詳細度は、比較的低い「1」である。また、回答文は、「イモビライザーが作動中です。車から離れるときは、車内にキーを残さないで下さい。」である。当該回答文は、鍵マークの点灯がイモビライザーの作動を示しているという事象の説明と、イモビライザーに関する一般的な注意点と、を伝えるものである。当該回答文の特性値は、比較的小さい。
【0060】
図5の2行目において、質問文は「車に鍵のマークが点いているが、これは何?」である。当該質問文は、鍵マークが点灯したという事象を伝えるとともに、当該事象の説明を要求するものである。当該質問文の特性値は、1行目よりも大きい。このため、当該質問文の特性値に基づいて決定される詳細度は、1行目よりも高い「2」である。また、回答文は、「これはイモビライザーの作動インジケータです。予め登録されたキー以外ではエンジン始動できません。車から離れるときは、車内にキーを残さないで下さい。」である。当該回答文には、登録済みのキー以外ではエンジンの始動ができないという、イモビライザーに関する注意点が追加されている。当該回答文の特性値は、1行目よりも大きい。
【0061】
図5の3行目において、質問文は「車を停めたら車のメータに鍵のマークが表示された。これはどういうときに表示されるのか。」である。当該質問文は、鍵マークが点灯したという事象を伝えるとともに、鍵マークが点灯するまでの状況説明を含み、更に当該事象の発生要因の説明を要求するものである。当該質問文の特性値は、2行目よりも大きい。このため、当該質問文の特性値に基づいて決定される詳細度は、2行目よりも高い「3」である。また、回答文は、「これはイモビライザーの作動インジケータです。パワースイッチをOFFにすると、イモビライザーシステムの作動を知らせるためにインジケータが点滅します。」である。当該回答文には、インジケータが点滅した要因の説明が含まれる。当該回答文の特性値は、2行目のよりも更に大きい。
【0062】
図6は、車両に備えられた侵入検知のオートアラームが作動した場合に行われる、ユーザの質問文及びこれに対する回答文の具体例を示す。図6では、3組の質問文及び回答文が示されている。
【0063】
図6の1行目において、質問文は「車から凄い音。止めたい。」である。当該質問文は、車両から音が発生したという事象を伝えるとともに、当該音の発生を停止させる対処方法の説明を要求するものである。当該質問文の特性値(例えば、文字数等)は、比較的小さい。このため、当該質問文の特性値に基づいて決定される詳細度は、比較的低い「1」である。また、回答文は、「侵入検知のオートアラームが作動しています。ドアを解錠するか、車内にいる場合はパワースイッチをONにしてください。」である。当該回答文は、発生している音は侵入検知のオートアラームであるという事象の説明と、音の発生を停止させる対処方法と、を伝えるものである。当該回答文の特性値は、比較的小さい。
【0064】
図6の2行目において、質問文は「車から大きなアラームが鳴ったが、何が起きたのか?」である。当該質問文は、車両から音が発生したという事象を伝えるとともに、当該音の発生要因の説明を要求するものである。当該質問文の特性値は、1行目よりも大きい。このため、当該質問文の特性値に基づいて決定される詳細度は、1行目よりも高い「2」である。また、回答文は、「侵入検知のオートアラームが作動しています。車内に残った人やペット等に反応した可能性があります。」である。当該回答文は、発生している音は侵入検知のオートアラームであるという事象の説明に加えて、音の発生要因を伝えるものである。当該回答文の特性値は、1行目よりも大きい。
【0065】
図6の3行目において、質問文は「駐車後しばらく車内にいて、降りようとしたら凄いアラームが鳴った。おそらく侵入検知だと思うが、何故作動したのか?」である。当該質問文は、車両から音が発生したという事象を伝えるとともに、音が発生するまでの状況説明を含み、更に音が侵入検知であると推測したうえで当該事象の発生要因の説明を要求するものである。当該質問文の特性値は、2行目よりも大きい。このため、当該質問文の特性値に基づいて決定される詳細度は、2行目よりも高い「3」である。また、回答文は、「オートアラームは、車内に残った人が、ロックレバーで解錠したりボンネットやトランクを開けたりすると作動することがあります。また、車内に動くものを残した場合にも作動することがあります。」である。当該回答文には、音の発生要因の詳細な説明が含まれる。当該回答文の特性値は、2行目よりも更に大きい。
【0066】
以上述べたように、本実施形態に係る情報処理システム1によれば、車両に関する質問文の特性値の検出結果に基づいて、文章の詳細さの指標である詳細度が決定される。そして、決定された詳細度に応じた回答文が出力される。上述したように、質問文の特性値及びユーザが期待する回答文の詳細度は一定の相関関係を有するところ、情報処理システム1によれば、回答文の詳細度が、ユーザの質問文の特性値の検出結果に応じて定まる。したがって、ユーザが期待する回答文の詳細度を考慮した自動回答が可能になる。
【0067】
本発明を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段又は各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段又はステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0068】
例えば、上述した本実施形態において、サーバ20が実行する処理の少なくとも一部を、情報処理装置10が実行する構成であってもよい。例えば、図2に示すステップS102~S106及びS108~S111のうち1つ以上のステップを情報処理装置10が実行してもよい。また、情報処理装置10又はサーバ20が実行する処理の少なくとも一部を、情報処理装置10及びサーバ20が協働して実行する構成であってもよい。また、サーバ20が実行する全ての処理を、情報処理装置10が単独で実行する構成も可能である。
【0069】
また、上述した実施形態において、図2を参照して情報処理システム1の動作フローについて説明した。しかしながら、当該動作フローに含まれる一部のステップ、又は1つのステップに含まれる一部の動作が、省略されてもよい。論理的に矛盾しない範囲内において、複数のステップの順番が入替わってもよい。
【0070】
また、上述した実施形態において、情報処理装置10の構成及び機能の一部又は全部が、車両に実装されてもよい。かかる場合、例えば車両に搭載されたECU(Electronic Control Unit)が、制御部16と同様に機能してもよい。或いは、情報処理装置10の構成及び機能を、複数の装置に分散させた構成も可能である。
【0071】
また、上述した実施形態において、質問文の1つの特性値に基づいて詳細度が決定される構成について説明した。しかしながら、例えば、質問文の1つの特性値に替えて、質問文の複数の特性値(例えば、文字数及び単語数等)の合計値又は最大値に基づいて、詳細度が決定される構成も可能である。
【0072】
また、上述した実施形態において、文章の「特性値」が、当該文章に含まれる文字数、単語数、内容語の数、又は係り受けの数等である構成について説明した。しかしながら、文章の「特性値」は、当該文章に含まれる各単語及び/又は各フレーズに設定されたスコアの合計値又は最大値であってもよい。かかる場合、サーバ記憶部22は、単語毎及び/又はフレーズ毎に、対応するスコアを予め記憶してもよい。サーバ制御部23は、例えば質問文に含まれる各単語及び/又は各フレーズに設定されたスコアの合計値又は最大値を、当該質問文の特性値として決定してもよい。同様に、サーバ制御部23は、例えば回答文の候補文に含まれる各単語及び/又は各フレーズに設定されたスコアの合計値又は最大値を、当該候補文の特性値として決定してもよい。
【0073】
また、例えば汎用の電子機器に搭載されたプロセッサを、上述した実施形態に係る情報処理装置10の制御部16として機能させることができる。具体的には、実施形態に係る情報処理装置10の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを、電子機器のメモリに格納し、電子機器のプロセッサによって当該プログラムを読み出して実行させることによって実現可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 情報処理システム
10 情報処理装置
11 表示部
12 入力部
13 音声再生部
14 通信部
15 記憶部
16 制御部
20 サーバ
21 サーバ通信部
22 サーバ記憶部
23 サーバ制御部
30 ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6