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特許7084175土質の安定強化止水用注入薬液組成物およびこれを用いた安定強化止水工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】土質の安定強化止水用注入薬液組成物およびこれを用いた安定強化止水工法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/14 20060101AFI20220607BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20220607BHJP
   C09K 17/30 20060101ALI20220607BHJP
   C09K 103/00 20060101ALN20220607BHJP
【FI】
C09K17/14 P
E02D3/12 101
C09K17/30 P
C09K103:00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018061248
(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2019172777
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹末 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】山田 亨
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-011364(JP,A)
【文献】特開2015-117304(JP,A)
【文献】特開2016-041822(JP,A)
【文献】特開平04-102615(JP,A)
【文献】特開平07-048997(JP,A)
【文献】特開平07-026263(JP,A)
【文献】特開2006-265436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 17/00-17/52
C09K 101/00-201/00
E02D 3/12
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミン化合物およびポリオールを含有する(A)成分とイソシアネート化合物を含有する(B)成分とから構成される土質の安定強化止水用注入薬液組成物であって、
前記(A)成分における前記アミン化合物として、少なくとも(A1)芳香族アミン化合物が用いられ、
前記(A)成分における前記ポリオールとして、少なくとも(A2)アミンポリオールおよび(A3)ポリエーテルポリオールが用いられ
前記(A2)アミンポリオールは、分子中に複数の水酸基を有する三級アミンであり、
前記(A1)芳香族アミン化合物の含有量は、前記(A)成分100質量部に対して2.5~10質量部の範囲内であるとともに、
前記(A2)アミンポリオールの含有量は、前記(A)成分100質量部に対して5~30質量部の範囲内であることを特徴とする、
土質の安定強化止水用注入薬液組成物。
【請求項2】
前記(A)成分は、さらに、当該(A)成分100質量部に対して0.1~3.0質量部の範囲内となるように水を含有することを特徴とする、
請求項1に記載の土質の安定強化止水用注入薬液組成物。
【請求項3】
前記(A1)芳香族アミン化合物が、N-メチルベンジルアミン、ジベンジルアミン、ベンジルアミン、p-メチルベンジルアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、ジエチルジアミノトルエン、ジエチルチオジアミノトルエン、および1,3,5-トリス(アミノメチル)ベンゼンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする、
請求項1または2に記載の土質の安定強化止水用注入薬液組成物。
【請求項4】
前記(A2)アミンポリオールが、少なくとも1種のアンモニアまたはアミンに、少なくとも1種のアルキレンオキシドを付加重合して得られる化合物であることを特徴とする、
請求項1からのいずれか1項に記載の土質の安定強化止水用注入薬液組成物。
【請求項5】
ポリオールを含有する(A)成分とイソシアネート化合物を含有する(B)成分とから構成される土質の安定強化止水用注入薬液組成物において、前記(A)成分として用いられ、
前記ポリオールとして、少なくとも(A2)アミンポリオールおよび(A3)ポリエーテルポリオールを含有するとともに、さらに、(A1)芳香族アミン化合物を含有し、
前記(A2)アミンポリオールは、分子中に複数の水酸基を有する三級アミンであり、
前記(A1)芳香族アミン化合物の含有量は、前記(A)成分100質量部に対して2.5~10質量部の範囲内であるとともに、
前記(A2)アミンポリオールの含有量は、前記(A)成分100質量部に対して5~30質量部の範囲内であることを特徴とする、
ポリオール含有組成物。
【請求項6】
前記(A)成分は、さらに、当該(A)成分100質量部に対して0.1~3.0質量部の範囲内となるように水を含有することを特徴とする、
請求項5に記載のポリオール含有組成物。
【請求項7】
土質の安定強化止水用注入薬液組成物を構成する、アミン化合物およびポリオールを含有する(A)成分とイソシアネート化合物を含有する(B)成分とを反応させることにより得られるポリウレタン樹脂組成物であって、
前記(A)成分における前記アミン化合物として、少なくとも(A1)芳香族アミン化合物が用いられ、
前記(A)成分における前記ポリオールとして、少なくとも(A2)アミンポリオールおよび(A3)ポリエーテルポリオールが用いられるとともに、
前記(A2)アミンポリオールは、分子中に複数の水酸基を有する三級アミンであり、
前記(A)成分100質量部における前記(A1)芳香族アミン化合物の含有量は、2.5~10質量部の範囲内であるとともに、
前記(A)成分100質量部における前記(A2)アミンポリオールの含有量は、5~30質量部の範囲内であることを特徴とする、
ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項8】
岩盤または地盤に所定間隔で複数個の孔を形成する工程、
前記孔内に中空のボルトを挿入する工程、および、
前記ボルトの開口部より、請求項1からのいずれか1項に記載の土質の安定強化止水用注入薬液組成物、もしくは、請求項5または6に記載のポリオール含有組成物を前記(A)成分として用いる土質の安定強化止水用注入薬液組成物を、岩盤ないし地盤に注入し、発泡硬化させる工程、
を含むことを特徴とする、
土質の安定強化止水工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱な地盤または不安定な岩盤等の土質を安定強化するとともに止水性を向上するために用いられる、土質の安定強化止水用注入薬液組成物と、この薬液組成物を用いた安定強化止水工法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟弱な地盤または不安定な岩盤等を安定強化する方法の一つとして薬液注入工法が知られている。薬液注入工法では、安定強化の対象となる地盤または岩盤に薬液組成物を注入する。このような薬液組成物は、地盤を構成する土粒子または岩盤を構成する造岩鉱物粒子等の間隙に浸透して、これら間隙に存在していた水または空気等と置き換わって固化する。これにより、地盤の組織または岩盤の構造を維持した状態で当該地盤または岩盤を安定強化することが可能であるとともに、その透水性も低下するため止水性(遮水性)を向上することも可能となる。
【0003】
薬液注入工法に用いられる薬液組成物としては、対象の地盤または岩盤(地盤等)の状況あるいは施工現場での要求等といった諸条件に応じて、さまざまな物性を有するものが存在する。例えば、対象の地盤等において大量の湧水、漏水または浸入水等(湧水等)が発生する場合には、薬液組成物に対しては、このような湧水等を止水するための物性が求められる。
【0004】
例えば、特許文献1には、大量の湧水等を止水できる強度等の物性を実現することが可能な、土質の安定強化止水用注入薬液組成物が開示されている。この薬液組成物は、ポリオールおよびアミン化合物を含んでなる(A)成分とイソシアネート化合物を含んでなる(B)成分とから構成されているウレタン系組成物であり、ポリオールとしてポリエーテルポリオールを含有し、アミン化合物として一級または二級アミノ基を有するアミン化合物を含有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-041822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ウレタン系の薬液組成物は、水と接触することにより発泡するが、接触する水の量によって発泡倍率または透水率が変化する。一般的なウレタン系の薬液組成物では、発泡倍率または透水率に影響するような量の水が施工現場の周辺に存在しない前提で、期待される効果が得られるように注入量が設計される。
【0007】
しかしながら、諸条件によっては、施工現場の周辺には、発泡倍率を高くしたり透水量を多くしたりするような量の水が存在し得る可能性がある。この場合、期待される効果を得るためには、例えば、設計量以上に薬液組成物を注入する必要性が生じる。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、周辺に存在する水による発泡倍率または透水率への影響を有効に抑制することができる、ウレタン系の土質の安定強化止水用注入薬液組成物と、これを用いた安定強化止水工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る土質の安定強化止水用注入薬液組成物は、前記の課題を解決するために、アミン化合物およびポリオールを含有する(A)成分とイソシアネート化合物を含有する(B)成分とから構成される土質の安定強化止水用注入薬液組成物であって、前記(A)成分における前記アミン化合物として、少なくとも(A1)芳香族アミン化合物が用いられ、前記(A)成分における前記ポリオールとして、少なくとも(A2)アミンポリオールおよび(A3)ポリエーテルポリオールが用いられる構成である。
【0010】
前記構成によれば、(A)成分および(B)成分で構成されるウレタン系の土質の安定強化止水用注入薬液組成物において、(A)成分に、(A1)芳香族アミン化合物、(A2)アミンポリオール、および(A3)ポリエーテルポリオールが少なくとも含有されている。これにより、当該薬液組成物の発泡硬化に際して水に接触しても、水に接触しない場合と概ね同程度の発泡硬化性を実現することができるとともに、硬化物の透水量についても、水に接触した場合と水に接触しない場合とで大きな差が生じることを有効に抑制することができる。これにより、注入された薬液組成物の周辺に存在する水による発泡倍率または透水率への影響を有効に抑制することができる。また、(A)成分および(B)成分の混合性を良好なものにできるとともに耐水拡散性も良好なものとすることができる。
【0011】
前記構成の土質の安定強化止水用注入薬液組成物においては、前記(A)成分は、さらに、当該(A)成分100質量部に対して0.1~3.0質量部の範囲内となるように水を含有する構成であってもよい。
【0012】
また、前記構成の土質の安定強化止水用注入薬液組成物においては、前記(A1)芳香族アミン化合物の含有量は、前記(A)成分100質量部に対して2.5~10質量部の範囲内である構成であってもよい。
【0013】
また、前記構成の土質の安定強化止水用注入薬液組成物においては、前記(A2)アミンポリオールの含有量は、前記(A)成分100質量部に対して5~30質量部の範囲内である構成であってもよい。
【0014】
また、前記構成の土質の安定強化止水用注入薬液組成物においては、前記(A1)芳香族アミン化合物が、N-メチルベンジルアミン、ジベンジルアミン、ベンジルアミン、p-メチルベンジルアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、ジエチルジアミノトルエン、ジエチルチオジアミノトルエン、および1,3,5-トリス(アミノメチル)ベンゼンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である構成であってもよい。
【0015】
また、前記構成の土質の安定強化止水用注入薬液組成物においては、前記(A2)アミンポリオールが、少なくとも1種のアンモニアまたはアミンに、少なくとも1種のアルキレンオキシドを付加重合して得られる化合物である構成であってもよい。
【0016】
また、本発明に係るポリウレタン樹脂組成物は、土質の安定強化止水用注入薬液組成物を構成する、アミン化合物およびポリオールを含有する(A)成分とイソシアネート化合物を含有する(B)成分とを反応させることにより得られるポリウレタン樹脂組成物であって、前記(A)成分における前記アミン化合物として、少なくとも(A1)芳香族アミン化合物が用いられ、前記(A)成分における前記ポリオールとして、少なくとも(A2)アミンポリオールおよび(A3)ポリエーテルポリオールが用いられる構成である。
【0017】
また、本発明に係るポリオール含有組成物は、ポリオールを含有する(A)成分とイソシアネート化合物を含有する(B)成分とから構成される土質の安定強化止水用注入薬液組成物において、前記(A)成分として用いられ、前記ポリオールとして、少なくとも(A2)アミンポリオールおよび(A3)ポリエーテルポリオールを含有するとともに、さらに、(A1)芳香族アミン化合物を含有する構成である。
【0018】
また、本発明に係る土質の安定強化止水工法は、岩盤または地盤に所定間隔で複数個の孔を形成する工程、前記孔内に中空のボルトを挿入する工程、および、前記ボルトの開口部より、前記いずれかの構成の土質の安定強化止水用注入薬液組成物、もしくは、前記のポリオール含有組成物を前記(A)成分として用いる土質の安定強化止水用注入薬液組成物を、岩盤ないし地盤に注入し、発泡硬化させる工程、を含む構成である。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、以上の構成により、周辺に存在する水による発泡倍率または透水率への影響を有効に抑制することができる、ウレタン系の土質の安定強化止水用注入薬液組成物と、これを用いた安定強化止水工法を提供することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示に係る土質の安定強化止水用注入薬液組成物は、アミン化合物およびポリオールを含有する(A)成分とイソシアネート化合物を含有する(B)成分とから構成される。このうち、(A)成分においては、アミン化合物として、少なくとも(A1)芳香族アミン化合物が用いられるとともに、ポリオールとして、少なくとも(A2)アミンポリオールおよび(A3)ポリエーテルポリオールが用いられる。以下、本開示に係る土質の安定強化止水用注入薬液組成物の代表的な構成の一例について具体的に説明する。なお、以下の説明では、土質の安定強化止水用注入薬液組成物を適宜「薬液組成物」と略す。
【0021】
[(A)成分]
本開示に係る薬液組成物を構成する(A)成分は、前記の通りアミン化合物およびポリオールを含有する組成物であるが、アミン化合物としては、少なくとも(A1)芳香族アミン化合物が用いられるとともに、ポリオールとしては、少なくとも(A2)アミンポリオールおよび(A3)ポリエーテルポリオールが用いられる。もちろん(A)成分には、これら以外のアミン化合物またはポリオールが含有されてもよい。
【0022】
(A1)芳香族アミン化合物は、構造中に芳香環構造を有するアミンであればよく、その具体的な種類は特に限定されないが、例えば、N-メチルベンジルアミン、ジベンジルアミン、ベンジルアミン、p-メチルベンジルアミン等の芳香族モノアミン;ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、ジエチルジアミノトルエン、ジエチルチオジアミノトルエン、等の芳香族ジアミン;1,3,5-トリス(アミノメチル)ベンゼン等の芳香族トリアミン;等が挙げられる。
【0023】
これら化合物は1種類のみが(A1)芳香族アミン化合物として用いられてもよいし、2種類以上が適宜組み合わせられて(A1)芳香族アミン化合物として用いられてもよい。これらの中でも、ジエチルトルエンジアミン、メタキシレンジアミン、ジメチルチオジアミノトルエン等が好ましく用いられる。例えば、後述する実施例では、(A1)芳香族アミン化合物として、ジエチルトルエンジアミン(略号A11)、メタキシレンジアミン(略号A12)、エタキュア―(登録商標)300(商品名、アルベマール製、3,5-ジメチルチオ-2,4-ジアミノトルエンおよび3,5-ジメチルチオ-2,6-ジアミノトルエンの混合物)を用いている。
【0024】
(A2)アミンポリオールは、分子中に複数の水酸基を有する三級アミンであればよい。具体的には、少なくとも1種のアンモニアまたはアミンに、少なくとも1種のアルキレンオキシドを付加重合して得られる化合物であればよい。代表的には、アンモニアのアルキレンオキシド付加物、芳香族アミンポリオールまたは脂肪族アミンポリオールを挙げることができる。
【0025】
アンモニアのアルキレンオキシド付加物は、アンモニアに公知のアルキレンオキシドを付加したものであればよい。公知のアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素数2~4のアルキレンオキシド、あるいは、スチレンオキシド等を挙げることができるが特に限定されない。また、これらアルキレンオキシドの付加数も特に限定されない。また、アルキレンオキシドの付加方法も特に限定されず、公知の方法を好適に用いることができる。
【0026】
芳香族アミンポリオールとしては、アニリン、トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4'-ジアミノ-3、3'-ジエチルジフェニルメタン等の芳香族アミンに公知のアルキレンオキシドを付加したもの、およびマンニッヒ系ポリオール等を挙げることができるが、特に限定されない。脂肪族アミンポリオールとしては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の脂肪族アミンに公知のアルキレンオキシドを付加したものを挙げることができるが、特に限定されない。これら芳香族アミンポリオールまたは脂肪族アミンポリオールにおいても、アルキレンオキシドの種類およびその付加数、並びに、付加方法は前記の通り特に限定されない。
【0027】
また、前述したアミンポリオールを後述するイソシアネート化合物に反応させてなる水酸基末端ウレタンプレポリマーも(A2)アミンポリオールとして用いることができる。
【0028】
これら化合物は1種類のみが(A2)アミンポリオールとして用いられてもよいし、2種類以上が適宜組み合わせられて(A2)アミンポリオールとして用いられてもよい。これらの中でも、アニリン、エチレンジアミン、アンモニアにプロピレンオキシド等を付加したものが好ましく用いられる。例えば、後述する実施例では、(A2)アミンポリオールとして、アニリン3プロピレンオキシド(略号A21)、エチレンジアミン6プロピレンオキシド(略号A22)、アンモニア3プロピレンオキシド(略号A23)を用いている。
【0029】
(A3)ポリエーテルポリオールは、少なくとも1種の水酸基含有化合物あるいは活性水素含有化合物に、少なくとも1種のアルキレンオキシドを付加したものであればよい。
【0030】
水酸基含有化合物としては、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール、ラウリルアルコール等のモノオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等のポリオール;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;ソルビトール、蔗糖等の糖類;等を挙げることができるが、特に限定されない。また、アルキレンオキシドとしては、前述したエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド等を挙げることができるが、特に限定されない。
【0031】
また、前述した水酸基含有化合物(活性水素含有化合物)を後述するイソシアネート化合物に反応させてなる水酸基末端ウレタンプレポリマーも、(A3)ポリエーテルポリオールとして用いることができる。
【0032】
これら化合物は1種類のみが(A3)ポリエーテルポリオールとして用いられてもよいし、2種類以上が適宜組み合わせられて(A3)ポリエーテルポリオールとして用いられてもよい。これらの中でも、例えば、後述する実施例において略号A31~A36で示すように、DKポリオールシリーズ(商品名、第一工業製薬(株)製)、あるいは、エクセノールシリーズ(商品名、旭硝子(株)製)を好適に用いることができる。
【0033】
本開示に係る(A)成分は、前述した(A1)芳香族アミン化合物、(A2)アミンポリオールおよび(A3)ポリエーテルポリオールを少なくとも含有していればよいが、これら以外のポリオールまたはアミン化合物もしくはその他の化合物を含有してもよい。また、本開示に係る(A)成分は、後述するように、さらに発泡剤として水を予め含有してもよい。また、後述する実施例に例示するように、水以外にも硬化触媒、整泡剤等の公知の添加剤を含有してもよい。
【0034】
(A)成分における(A1)芳香族アミン化合物、(A2)アミンポリオール、および(A3)ポリエーテルポリオールの含有量は特に限定されないが、代表的には、(A1)芳香族アミン化合物が(A)成分100質量部に対して2.5~10質量部の範囲内であればよく、(A2)アミンポリオールが(A)成分100質量部に対して5~30質量部の範囲内であればよい。(A)成分が実質的に(A1)芳香族アミン化合物、(A2)アミンポリオール、および(A3)ポリエーテルポリオールの3成分のみで構成されている場合には、(A3)ポリエーテルポリオールの含有量は、(A)成分100質量部に対して、60~92.5質量部の範囲内であればよい。
【0035】
[(B)成分]
本開示に係る薬液組成物を構成する(B)成分は、前記の通りイソシアネート化合物を少なくとも含有するものであればよい。(B)成分が含有するイソシアネート化合物としては、分子中に複数のイソシアネート基を有する化合物であればよい。具体的には、前述した(A)成分と反応してポリウレタンを形成することが可能な化合物であれば特に限定されないが、代表的には、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0036】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート等を挙げることができるが、特に限定されない。
【0037】
脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができるが、特に限定されない。
【0038】
芳香族ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、クルードトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ジベンジルジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリメチレンキシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等を挙げることができるが、特に限定されない。
【0039】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができるが、特に限定されない。
【0040】
さらに、イソシアネート化合物としては、前述したポリイソシアネート(あるいは例示しない他のイソシアネート化合物)のカルボジイミド体、アロハネート体、ビューレット体、イソシアヌレート体、アダクト体等の変性体等を用いることもできる。
【0041】
また、前述したポリイソシアネートまたはその変性体を2量体または3量体等のオリゴマー化したものもイソシアネート化合物として用いることができる。あるいは、前述した(A2)アミンポリオールおよび/または(A3)ポリエーテルポリオールと反応させてなるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを、イソシアネート化合物として用いることができる。
【0042】
したがって、(B)成分が含有するイソシアネート化合物は、前述したポリイソシアネート(あるいは例示しない他のイソシアネート化合物)そのものであってもよいし、2量体または3量体等のオリゴマーであってもよいし、前述したポリイソシアネート等と任意のポリオールとをイソシアネート基過剰条件で反応させたもの(プレポリマー)であってもよい。
【0043】
(B)成分が含有するイソシアネート化合物としては、前述した化合物(あるいは例示しない他のイソシアネート化合物)の中から1種類のみを選択して用いてもよいし、2種類以上の化合物を適宜選択して組み合わせて用いてもよい。また、本開示においては、イソシアネート化合物に分類される化合物であっても、得られる硬化物(ポリウレタン)の物性等といった諸条件に応じて、反応時に用いられる全成分において特定の化合物の配合を排除することができる。
【0044】
[水およびその他の成分]
本開示に係る薬液組成物においては、(A)成分には、(A1)芳香族アミン化合物、(A2)アミンポリオール、および(A3)ポリエーテルポリオールが含有されていればよく、(B)成分には、イソシアネート化合物が含有されていればよいが、さらに、公知の他の成分が(A)成分または(B)成分のいずれかに含有されてもよい。代表的な他の成分としては、(A)成分に含有される水を挙げることができる。
【0045】
水は、(A)成分に含まれるポリオールと(B)成分に含まれるイソシアネート化合物の反応に際して、得られる硬化物(ポリウレタン)を発泡させる発泡剤として機能する。他の成分として水を用いる場合には、前記の通り、(A)成分に予め添加しておけばよい。水の添加量(配合量または含有量)は特に限定されないが、(A)成分100質量部に対して3.0質量部以下であればよく、好ましくは2,0質量部以下であればよい。
【0046】
水の添加量が3.0質量部を越えると、(A)成分と(B)成分とを混合して反応させる際に、(B)成分が含有するイソシアネート化合物が水との反応により消費されてしまい、硬化物(ポリウレタン)中の高分子の比率が低下し、ポリウレタンとしての機能が低下するおそれがある。なお、水の添加量の下限も特に限定されないが、0.1質量部以上であればよい。0.1質量部未満であれば、水を予め添加することによる発泡剤としての効果が十分得られなくなるおそれがある。
【0047】
水以外のその他の成分としては、具体的には、例えば、硬化触媒、整泡剤、希釈剤、難燃剤、着色剤、充填剤、架橋剤、カップリング剤、分散剤等の公知の添加剤を挙げることができるが、特に限定されない。これらの中でも、(A)成分に含有されるポリオールと(B)成分に含有されるイソシアネート化合物の反応を促進する観点では、硬化触媒を用いることが好ましい。
【0048】
硬化触媒の具体的な種類は特に限定されず、ポリウレタン樹脂の製造(ポリウレタンの合成)の分野で公知の各種の触媒を用いることができる。代表的には、アミン触媒を挙げることができる。具体的なアミン触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、N-メチルモルホリン、ジメチルエタノールアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、1,2-ジメチルイミダゾール等の3級アミンを挙げることができるが、特に限定されない。これらアミン触媒は1種類のみを用いてもよいし2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。また、アミン触媒以外の触媒を併用してもよい。
【0049】
硬化触媒は、予め(A)成分に添加しておけばよい。また、硬化触媒の添加量(使用量または配合量)は特に限定されず、薬液組成物の取扱性または硬化物の物性を損なわない程度の量(例えば公知の添加量の範囲内)であればよい。
【0050】
本開示に係る薬液組成物においては、(A)成分および(B)成分の混合時に相溶性を改善するとともに、混合液の表面張力を調整して気泡の安定化および均質化を向上させる観点では、整泡剤を用いることが好ましい。代表的な整泡剤としては、硬質発泡ウレタン樹脂に用いられるシロキサン系整泡剤、例えば、ポリオキシアルキレンジメチルポリシロキサンコポリマー等を挙げることができる。
【0051】
整泡剤は、予め(A)成分に添加しておけばよい。また、整泡剤の添加量(使用量または配合量)は特に限定されず、薬液組成物の取扱性または硬化物の物性を損なわない程度の量(例えば公知の添加量の範囲内)であればよい。
【0052】
本開示に係る薬液組成物においては、得られる硬化物に難燃性を付与する観点では、難燃剤を用いることが好ましい。難燃剤の具体的な種類は特に限定されないが、代表的には、添加型、反応型を挙げることができる。
【0053】
添加型の難燃剤としては、具体的には、例えば、トリブチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリスモノクロロイソプロピルホスフェート、トリメチルトリクロロプロピルホスフェート等の含リン含ハロゲン系難燃剤;塩素化パラフィン、ペンタブロモエチルベンゼン、デカブロモジフェニルエーテル等の含ハロゲン系難燃剤;等を挙げることができる。これら添加型の難燃剤は1種類のみを用いてもよいし、種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0054】
反応型の難燃剤としては、具体的には、例えば、ジブロモネオペンチルグリコール、テトラブロモビスフェノールA、O,O-ジエチルN,N-ジヒドロキシエチルアミノメチルホスホテート、各種含リンポリオール等の水酸基またはアミノ基等を有する含ハロゲン含リン化合物等を挙げることができる。これら反応型の難燃剤は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0055】
難燃剤は、通常は、予め(B)成分に添加しておけばよいが、難燃剤の種類によっては(B)成分ではなく(A)成分に添加すればよい。例えば、含リンポリオールといった含ハロゲン含リン化合物等は、分子中に水酸基またはアミノ基等を含有するので、(B)成分に添加するとイソシアネート化合物と反応してしまうため、このような場合には(B)成分ではなく(A)成分に添加すればよい。また、難燃剤の添加量(使用量または配合量)は特に限定されず、薬液組成物の取扱性または硬化物の物性を損なわない程度の量(例えば公知の添加量の範囲内)であればよい。
【0056】
[薬液組成物]
本開示に係る薬液組成物は、前述した(A)成分および(B)成分から構成されるウレタン系の止水材である。(A)成分には、前記の通り(A1)芳香族アミン化合物、(A2)アミンポリオール、および(A3)ポリエーテルポリオールが少なくとも含有されている。これにより、当該薬液組成物の発泡硬化に際して水に接触しても、水に接触しない場合と概ね同程度の発泡硬化性を実現することができる。しかも、当該薬液組成物の硬化物(ポリウレタン)の透水量についても、水に接触した場合と水に接触しない場合とで大きな差が生じることを有効に抑制することができる。
【0057】
これにより、注入された薬液組成物の周辺に存在する水による発泡倍率または透水率への影響を有効に抑制することができる。また、(A)成分および(B)成分の混合性を良好なものにできるとともに耐水拡散性も良好なものとすることができる。その結果、地盤または岩盤から湧水、漏水または浸入水等が発生していても、本開示に係る薬液組成物を注入して反応させることにより、効率的に止水することが可能となる。
【0058】
本開示に係る薬液組成物においては、(A)成分および(B)成分の粘度は特に限定されないが、地盤または岩盤に注入する際の作業性の観点からこれら各成分の粘度を所定の範囲内に設定してもよい。(A)成分および(B)成分の粘度としては、25℃において、650mPa・s以下であることが好ましく、600mPa・s以下であることがより好ましく、450mPa・s以下であることがさらに好ましい。なお、粘度の測定方法は、後述する実施例で説明するように、JIS K-7117-1に準じた方法であればよい。
【0059】
本開示に係る薬液組成物においては、(A)成分および(B)成分の混合比は特に限定されないが、質量比であれば(A)成分/(B)成分が1/0.5~1/2の範囲内を挙げることができる。また、イソシアネートインデックス((B)成分のイソシアネート基当量/(A)成分の活性水素基当量×100)であれば、300~50の範囲内を挙げることができ、好ましくは70~150の範囲内を挙げることができる。(A)成分および(B)成分の混合比が上記の範囲内であれば、適度な強度の硬化物を適度な硬化時間で得ることができる。
【0060】
本開示に係る薬液組成物においては、水が存在している状態であっても水が存在していない状態と同程度の発泡硬化性を実現することができる。発泡硬化性の指標としては、後述する実施例で例示するように、発泡開始時間(CT)、ゲル化時間(樹脂化時間、GT)、および発泡終了時間(RT)、並びに発泡倍率を挙げることができる。
【0061】
発泡開始時間(CT)、ゲル化時間(GT)、および発泡終了時間(RT)の測定条件は特に限定されないが、本開示においては、(A)成分および(B)成分の液温をそれぞれ20℃に調整してからこれらを合わせて攪拌を開始した時点(混合開始時点)から、発泡が開始した時間、ゲル化するまでの時間、および発泡が終了した時間をそれぞれCT,GR,およびRTとして測定すればよい。
【0062】
本開示に係る薬液組成物は、(A)成分に発泡剤としての水を予め混合してもよいが、混合しなくてもよい。それゆえ、発泡硬化性の指標であるCT,GTおよびRTのうち、水を含有してもしなくてもGTのみ測定することができる。GTの具体的な範囲は特に限定されないが、本開示においては、GTは25~60秒の範囲内であること好ましい。GTがこの時間の範囲内であれば、適度な時間で薬液組成物が硬化するため、良好な作業性を実現することができる。なお、25秒未満であれば薬液組成物の硬化が早すぎて作業性に影響を及ぼすおそれがあり、60秒を超えれば硬化までの時間が長くなり過ぎて迅速な止水に影響を及ぼすおそれがある。
【0063】
また、(A)成分が水(発泡剤)を含有する場合に、CTおよびRTの具体的な範囲も特に限定されないが、本開示においては、CTは10~40秒の範囲内を挙げることができ、RTは50~90秒の範囲内を挙げることができる。CTおよびRTがこの範囲内であれば、適度な時間で発泡が開始して完了するので、良好な作業性を実現することができる。
【0064】
発泡硬化性の指標のうち発泡倍率は、相対的に低いことが好ましい。発泡倍率が高くなり過ぎると、(A)成分または(B)成分の具体的な組成、あるいは、発泡剤である水の含有量等の諸条件にもよるが、得られる硬化物の透水性が増大する可能性があるため、止水性が低下するおそれがある。一般的には、硬化物の発泡倍率の上限値は、特に限定されないものの、透水性への影響を考慮すれば15倍以下であればよく、好ましくは10倍以下であり、より好ましくは5倍以下であればよい。また、発泡倍率の下限値も特に限定されないものの、一般的には2倍以上である。なお、発泡倍率は、後述するように、(A)成分および(B)成分の混合液の体積V0に対する発泡終了後の硬化物の体積V1の比率(V1/V0)として算出すればよい。
【0065】
前述した発泡硬化性の各指標は、本開示に係る薬液組成物が、発泡剤以外の外部(周辺または周囲)の水が存在する状態すなわち発泡剤以外の水に接触した状態で発泡硬化しても、発泡剤以外の水に接触しない状態で発泡硬化したときと同程度であればよい。具体的には、発泡剤以外の水を便宜上「外部水」とし、外部水との接触無しにおける値に対する外部水との接触有りにおける値の比率(倍率)を、便宜上「水接触時比率」とすれば、CT,GT,およびRTの水接触時比率は、0.85~1.20倍の範囲内であればよい。
【0066】
CT,GT,およびRTの水接触時比率がこの範囲内であれば、外部水に接触してもしなくても実質的に発泡硬化に関する時間に変化がないと見なすことができる。特に、GTの水接触比率については、0.90~1,10倍の範囲内であると好ましい。GTの水接触時比率がこの範囲内であれば、外部水に接触してもしなくても、(A)成分および(B)成分を混合してからゲル化(樹脂化)するまでの時間がほぼ同じであると見なすことができる。これにより、対象の地盤または岩盤等において大量の湧水、漏水または浸入水等が発生しても、本開示に係る薬液組成物は速やかに発泡硬化することが可能になるので、良好な止水性を発揮することができる。
【0067】
また、発泡倍率の水接触時比率は、1.20倍以下であればよく、1.15倍以下であるとより好ましい。発泡倍率の水接触時比率がこの上限値以下であれば、外部水が存在してもしなくても実質的に発泡倍率に変化がないと見なすことができる。これにより、対象の地盤または岩盤等において大量の湧水、漏水または浸入水等が発生しても、本開示に係る薬液組成物は発泡倍率に大きな変化が生じず、硬化物の透水性が大幅に低下することが無いので、良好な止水性を発揮することができる。
【0068】
本開示に係る薬液組成物における透水性は、良好な止水性を発揮する観点から低いことが望ましい。具体的には、後述する実施例でも説明するように、両端が開口した円筒の底面に硬化物を貼り付け、円筒内に水を入れて1時間静置したときに、水が硬化物を透過した量を、当該硬化物の「透水量」(単位mL/h)とした時に、この透水量は2500mL/h以下であればよく、1800mL/h以下であることが好ましく、1000mL/h以下であることがより好ましく、500mL/h以下であることがさらに好ましく、350mL/h以下であることが特に好ましい。透水量が2500mL/hを超えると、良好な止水性を発揮できなくなるおそれがある。
【0069】
また、この透水量についても、発泡硬化性の指標と同様に水接触時比率が小さい、すなわち、外部水との接触無しにおける透水量に対する外部水との接触有りにおける透水量の比率(倍率)が小さいことが好ましい。具体的には、透水量の水接触時比率は、5.0倍以下であればよく、4.0倍以下であることが好ましく、3.0倍未満であることが特に好ましい。透水量の水接触時比率が5.0倍を超えれば、外部水に対する反応性が高すぎて薬液組成物が過剰に発泡して透水性を増大させている(止水性を低下させている)と判断することができる。
【0070】
本開示に係る薬液組成物は、外部水が存在する状態でも良好に発泡硬化するとともに、外部水による大幅な影響を受けずに良好な止水性を発揮することができる。ここで、本開示に係る薬液組成物は、後述するように地盤または岩盤等に注入したときに、地盤を構成する土粒子または岩盤を構成する造岩鉱物粒子等の間隙に浸透して、これら間隙に存在していた水または空気等と置き換わって発泡硬化する必要がある。それゆえ、本開示に係る薬液組成物には、水が存在している状態でも良好な拡散性すなわち耐水拡散性を有することが好ましい。後述する実施例では、この耐水拡散性を、(A)成分および(B)成分の混合時に水の影響を受けるか否かを目視で判定して評価している。
【0071】
また、本開示に係る薬液組成物は、外部水が存在する状態でも速やかに発泡硬化することで、良好な止水性を発揮することができる。このような速やかな発泡硬化を実現する上では、前記の通り、発泡硬化性の指標であるゲル化時間(GT)、さらには発泡開始時間(CT)および発泡終了時間(RT)が所定の範囲内であることが望ましいが、さらには、(A)成分および(B)成分の混合性が良好であることが望ましい。(A)成分および(B)成分の混合性が良好でない、すなわち、これら成分が混合しにくい場合には、地盤または岩盤等に注入しても混合までに時間を要するため、発泡硬化反応の開始が遅くなるおそれがある。後述する実施例では、この混合性を、10秒という短時間で攪拌した後の混合液において(A)成分および(B)成分が十分均一に混合されているか否かを目視で判定して評価している。
【0072】
なお、本開示に係る薬液組成物の硬化物は、実質的にポリウレタン樹脂組成物であるため、本開示には、薬液組成物の硬化物、すなわち、前述した(A)成分および(B)成分を反応させることにより得られるポリウレタン樹脂組成物も含まれる。また、本開示に係る薬液組成物は、(A)成分(あるいはA液もしくはA剤)と(B)成分(あるいはB液もしくはB剤)との2液で構成されるウレタン系の止水材であるということができる。また、(A)成分は、ポリオールを含有しているため「ポリオール含有組成物」であり、(B)成分は、イソシアネート化合物を含有するため「イソシアネート含有組成物」である。
【0073】
ここで、本開示に係る薬液組成物では、前記の通り、(A)成分すなわちポリオール含有組成物が、少なくとも(A2)アミンポリオールおよび(A3)ポリエーテルポリオールを含有するとともに、さらに、(A1)芳香族アミン化合物を含有するものであればよい。それゆえ、(B)成分すなわちイソシアネート含有組成物の具体的な種類(組成等)は特に限定されない。したがって、本開示には、(A)成分および(B)成分で構成される薬液組成物だけでなく、(A)成分だけ、すなわち薬液組成物を構成するためのポリオール含有組成物も含まれる。
【0074】
[土質の安定強化止水工法]
本開示に係る薬液組成物は、軟弱な地盤または不安定な岩盤等を安定強化するとともに地盤および岩盤の止水性を向上する安定強化止水工法に好適に用いることができる。それゆえ、本開示には、前述した構成の土質の安定強化止水用注入薬液組成物だけでなく、この薬液組成物を用いた土質の安定強化止水工法も含まれる。
【0075】
本開示に係る安定強化止水工法としては、具体的には、例えば、トンネルまたは地下道等の掘削に際して、切羽天端の崩落防止または緩みの拡大防止を目的として行われるウレタン系注入式フォアポーリング工法または注入式長尺先受工法(AGF工法)等を挙げることができる。本開示に係る薬液組成物は、このような工法において、不安定な軟弱地盤あるいは破砕帯を有する岩盤の固結による安定化および強化;地山とコンクリートセグメントとの間の空隙等の充填による安定化および強化;土砂、岩石、レンガ、石炭等の空洞の封止による安定化および強化;コンクリート等の人工構造物のクラック等の補修、補強による安定化および強化;湧水、漏水または浸入水等(湧水等)が生じている地盤または岩盤への適用による止水;等に適用することができる。特に、湧水等が生じている地盤または岩盤に注入して発泡硬化(固結)させることで、当該湧水等を良好に止水することができる。
【0076】
本開示に係る薬液組成物の注入方法については特に限定されず、公知の方法を用いることができる。代表的には、地盤または岩盤に所定間隔で複数個の孔を形成する工程、形成した孔内に中空のボルトを挿入する工程、および、ボルトの開口部より本開示に係る薬液組成物を地盤または岩盤に注入し、これを発泡硬化させる工程を含む工法を挙げることができる。より具体的には、例えば、(A)成分および(B)成分の注入量、圧力および配合比等を制御することが可能な公知の比較配合式の圧送ポンプを用いる方法を挙げることができる。
【0077】
この方法では、圧送ポンプの(A)成分と(B)成分とを別々のタンクに貯蔵する。対象となる地盤または岩盤の所定箇所(例えば0.5~3m程度の間隔で穿設された複数個の孔)には、予め固定されたスタティックミキサーまたは逆止弁等を内装した有孔のロックボルトまたは注入ロッドを挿通しておく。これらロックボルトまたは注入ロッドの中にそれぞれのタンクから(A)成分および(B)成分を所定の注入圧(例えば0.05~25MPa)で注入する。これにより、スタティックミキサーまたは逆止弁を通して、所定量の(A)成分と(B)成分とを均一に混合することができる。この混合液は、地盤または岩盤に浸透して発泡硬化するので、当該地盤または岩盤を固結して安定化することができる。
【0078】
特に、本開示においては、薬液組成物が、水に接触した状態で反応しても、水に接触しない場合と同程度に良好な発泡硬化性を実現できるとともに、良好な耐水拡散性を発揮することができ、さらには、硬化物の透水量も、水に接触しない場合に比べて大幅に増加することが有効に抑制される。それゆえ、地盤または岩盤において湧水等が発生している箇所に、本開示に係る薬液組成物を注入して反応させることにより、湧水等を相対的に短時間で良好に止水することが可能になる。それゆえ、例えば、トンネル掘削または地下道掘削等の工事を中断させたり工事を遅延させたりすることを有効に回避することが可能になり、効率的な作業を進めることができる。
【実施例
【0079】
本発明について、実施例および比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。なお、以下の実施例における諸物性の測定または評価は次に示すようにして行った。
【0080】
(測定または評価方法)
[(A)成分および(B)成分の粘度]
各実施例または比較例に係る薬液組成物を構成する(A)成分および(B)成分の粘度[mPa・s]は、JIS K-7117-1に準じ、BL型粘度計(東機産業(株)製)にて、25℃の条件で測定した。
【0081】
[水接触無しの場合における硬化時の物性の測定または評価]
各実施例または比較例に係る薬液組成物を構成する(A)成分および(B)成分を所定の混合比(質量比、表3~表7参照)で合計50mLとなるように計量し、これらを20℃に調整した上で、φ50×100mmのサミットモールドに投入し、攪拌機により1000rpmで10秒間攪拌して混合液を調製した。その後、発泡硬化性として、攪拌開始からの発泡開始時間:CT[秒(s)]、ゲル化時間(樹脂化時間):GT[秒]、および発泡終了時間:RT[秒]を測定するとともに、混合液の体積V0(50mL)に対する発泡終了後の硬化物の体積V1の比率(V1/V0)を発泡倍率[倍]として算出した。
【0082】
[水接触有りの場合における硬化時の物性の測定または評価]
各実施例または比較例に係る薬液組成物を構成する(A)成分および(B)成分を所定の混合比(質量比、表3~表7参照)で合計50mLとなるように計量し、これらを20℃に調整した上で、φ50×100mmのサミットモールドに投入し、攪拌機により1000rpmで10秒間攪拌して混合液を調製した。この攪拌混合時に、応用物性として、(A)成分および(B)成分の混合性を目視により確認して評価した。攪拌後の混合液において(A)成分および(B)成分が十分均一に混合されている場合を「○」、(A)成分および(B)成分がほぼ均一に混合されている場合を「△」、(A)成分および(B)成分が均一に混合されていない場合を「×」として評価した。
【0083】
攪拌混合を開始してから30秒後に、混合液の上面から10cmの高さから5秒間かけてサミットモールドの縁に沿わせるように水を50mL投入した。この水の投入に伴って、応用物性として、耐水拡散性を目視により確認して評価した。投入した水が硬化物の上側に位置していれば、水による影響を受けないとして「○」と評価した。また、投入した水が硬化物の上側に位置するものの、水の投入により硬化物の表面に凹み等の変形が生じていれば、水による影響をやや受けるとして「△」と評価した。また、投入した水が硬化物の下側に位置していれば、水の影響を受けるとして「×」と評価した。
【0084】
また、攪拌混合後に、発泡硬化性として、水接触無しの場合と同様に、攪拌開始からのCT[秒]、GT[秒]、およびRT[秒]を測定するとともに、発泡倍率[倍]を算出した。
【0085】
[透水量の測定]
前述した水接触無しまたは水接触有りのそれぞれの条件で得られた硬化物から、φ50×20mmのサンプルを切り出し、内径44mm、高さ300mmの円筒の一方の端部に、当該端部の開口を封止するようにサンプルを貼り付けた。サンプルを貼り付けた端部を下側にして円筒を立設し、他方の端部(上端)の開口から円筒内に水を注入した。水の注入量は、円筒の下端から高さ250mmに達するまでとした。その後、1時間静置した後、円筒内における水位の変化(低下量)を確認し、1時間当たりの透水量[mL/h]を算出した。また、水接触無しの透水量T1mL/hに対する水接触有りの透水量T2mL/hの比率(T2/T1、水接触時比率)が3未満であれば「◎」、3~4の範囲内であれば「○」、4~5の範囲内であれば「△」、5を超えていれば「×」として評価した。
【0086】
((A)成分および(B)成分の原料)
各実施例または各比較例における薬液組成物では、(A)成分が含有する(A1)芳香族アミン化合物として表1に示す3種類の化合物のいずれかを用い、(A2)アミンポリオールとして表1に示す3種類の化合物のいずれかを用い、(A3)ポリエーテルポリオールとして表1に示す6種類の化合物を適宜組み合わせて用いた。比較例4では、(A1)芳香族アミン化合物に代えて表1に示す比較アミン化合物(A0)を用いた。また、(A)成分が含有する硬化触媒および整泡剤として、それぞれ表1に示す製品を用いた。
【0087】
【表1】
【0088】
(B)成分が含有するイソシアネート化合物としては、表2に示す2種類の化合物のいずれか用いた。また、(B)成分が含有する難燃剤として表2に示す化合物を用いた。
【0089】
【表2】
【0090】
なお、後述する各実施例または各比較例においては、(A)成分および(B)成分の調製(製造)に際しての各成分の組成を表3~表7にまとめているが、これら表においては、(A1)芳香族アミン化合物、(A2)アミンポリオール、(A3)ポリエーテルポリオール、およびイソシアネート化合物の具体的な種類は、表1または表2に示す略号で記載している。
【0091】
(実施例1)
(A1)芳香族アミン化合物、(A2)アミンポリオール、(A3)ポリエーテルポリオールとして表3に示す種類(略号)のものを用いるとともに、これら化合物、発泡剤としての水、硬化触媒、および整泡剤を表3に示す配合量で配合して混合することにより、実施例1に係る薬液組成物を構成する(A)成分(ポリオール含有組成物)を調製(製造)した。また、イソシアネート化合物として表3に示す種類のものを用いるとともに、このイソシアネート化合物と難燃剤とを表3に示す配合量で配合することにより、実施例1に係る薬液組成物を構成する(B)成分(イソシアネート含有組成物)を調製(製造)した。これにより、実施例1に係る薬液組成物を得た。なお、(A)成分および(B)成分のそれぞれ粘度を表3に示す。
【0092】
得られた(A)成分および(B)成分を表3に示す混合比(質量比)で混合した。このときのイソシアネートインデックスを表3に示す。そして、前述した測定または評価方法で説明したように(A)成分および(B)成分の混合液を発泡硬化させ、その発泡硬化性と、応用物性である透水量、耐水撹拌性、および混合性とを測定または評価した。その結果を表3に示す。
【0093】
なお、表3並びに表4~表7においては、発泡硬化性の指標であるCT,GT,RTおよび発泡倍率、並びに、応用物性の透水量については、それぞれ、水接触無しおよび水接触有りの結果を「水接触有りの結果/水接触無しの結果」という形式(すなわち水接触時比率)で併記している。
【0094】
(実施例2~5)
表3に示す種類の(A1)芳香族アミン化合物、(A2)アミンポリオール、(A3)ポリエーテルポリオール、水、硬化触媒、および整泡剤を表3に示す配合量で配合するとともに、表3に示す種類のイソシアネート化合物および難燃剤を表3に示す配合量で配合することにより、実施例2~5に係る薬液組成物を製造した。表3には、それぞれの薬液組成物における(A)成分の粘度および(B)成分の粘度を示す。
【0095】
そして、実施例1と同様にして、表3に示す混合比(およびこのときのイソシアネートインデックス)となるように、(A)成分および(B)成分を混合してその混合液を発泡硬化させ、実施例2~5に係る薬液組成物の発泡硬化性およびその応用物性を測定または評価した。その結果を表3に示す。
【0096】
【表3】
【0097】
(実施例6~10)
表4に示す種類の(A1)芳香族アミン化合物、(A2)アミンポリオール、(A3)ポリエーテルポリオール、水、硬化触媒、および整泡剤を表4に示す配合量で配合するとともに、表4に示す種類のイソシアネート化合物および難燃剤を表4に示す配合量で配合することにより、実施例6~10に係る薬液組成物を製造した。表4には、それぞれの薬液組成物における(A)成分の粘度および(B)成分の粘度を示す。
【0098】
そして、実施例1と同様にして、表4に示す混合比(およびこのときのイソシアネートインデックス)となるように、(A)成分および(B)成分を混合してその混合液を発泡硬化させ、実施例6~10に係る薬液組成物の発泡硬化性およびその応用物性を測定または評価した。その結果を表4に示す。
【0099】
【表4】
【0100】
(実施例11~15)
表5に示す種類の(A1)芳香族アミン化合物、(A2)アミンポリオール、(A3)ポリエーテルポリオール、水、硬化触媒、および整泡剤を表5に示す配合量で配合するとともに、表5に示す種類のイソシアネート化合物および難燃剤を表5に示す配合量で配合することにより、実施例11~15に係る薬液組成物を製造した。表5には、それぞれの薬液組成物における(A)成分の粘度および(B)成分の粘度を示す。
【0101】
そして、実施例1と同様にして、表5に示す混合比(およびこのときのイソシアネートインデックス)となるように、(A)成分および(B)成分を混合してその混合液を発泡硬化させ、実施例11~15に係る薬液組成物の発泡硬化性およびその応用物性を測定または評価した。その結果を表5に示す。
【0102】
【表5】
【0103】
(実施例16~19)
表6に示す種類の(A1)芳香族アミン化合物、(A2)アミンポリオール、(A3)ポリエーテルポリオール、水、硬化触媒、および整泡剤を表6に示す配合量で配合するとともに、表6に示す種類のイソシアネート化合物および難燃剤を表6に示す配合量で配合することにより、実施例16~19に係る薬液組成物を製造した。表6には、それぞれの薬液組成物における(A)成分の粘度および(B)成分の粘度を示す。
【0104】
そして、実施例1と同様にして、表6に示す混合比(およびこのときのイソシアネートインデックス)となるように、(A)成分および(B)成分を混合してその混合液を発泡硬化させ、実施例16~19に係る薬液組成物の発泡硬化性およびその応用物性を測定または評価した。その結果を表6に示す。
【0105】
【表6】
【0106】
(比較例1~4)
表7に示す種類の(A1)芳香族アミン化合物、(A2)アミンポリオール、(A3)ポリエーテルポリオール、比較アミン化合物、水、硬化触媒、および整泡剤を表7に示す配合量で配合するとともに、表7に示す種類のイソシアネート化合物および難燃剤を表7に示す配合量で配合することにより、比較例1~4に係る薬液組成物を製造した。表7には、それぞれの薬液組成物における(A)成分の粘度および(B)成分の粘度を示す。
【0107】
そして、実施例1と同様にして、表7に示す混合比(およびこのときのイソシアネートインデックス)となるように、(A)成分および(B)成分を混合してその混合液を発泡硬化させ、比較例1~4に係る薬液組成物の発泡硬化性およびその応用物性を測定または評価した。その結果を表7に示す。
【0108】
【表7】
【0109】
(実施例および比較例の対比)
実施例1~19に係る薬液組成物においては、いずれも良好な発泡硬化性、透水性、耐水拡散性、および混合性を発揮することができる。また、これら実施例においては、特に、発泡硬化性の各指標および透水性の指標(透水量)の水接触時比率は、所定倍率の範囲内もしくは所定倍率の上限値以下に入っている。そのため、本開示に係る薬液組成物であれば、外部水が存在する状態でも良好に発泡硬化するとともに、外部水による大幅な影響を受けずに良好な止水性を発揮することができる。
【0110】
一方、比較例1に係る薬液組成物のように、(A)成分が(A2)アミンポリオールを含有していない場合、透水量の水接触時比率が相対的に大きくなる傾向にある。また、比較例2,3に係る薬液組成物のように、(A)成分が(A1)芳香族アミン化合物を含有しない場合には、透水量が大幅に増大するとともに、透水量の水接触時比率も大幅に増大し、耐水拡散性も低下する。
【0111】
また、比較例4に係る薬液組成物のように、(A)成分が、(A1)芳香族アミン化合物の代わりに、構造中に芳香環構造を有さないアルカノールアミンを含有する場合にも、比較例2,3と同様に、透水量が大幅に増大するとともに、透水量の水接触時比率も大幅に増大し、耐水拡散性も低下する。また、比較例4に係る薬液組成物では、特に水接触有の場合には、発泡硬化性の指標のうちゲル化時間(GT)および発泡終了時間(RT)が長くなっている。
【0112】
なお、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、軟弱な地盤または不安定な岩盤等を安定強化するとともに止水性を付与可能とする地盤改良工事等の分野、さらにはこの分野に用いられる各種薬液組成物を製造するための分野に広く好適に用いることができる。