(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20220607BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20220607BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
A61B6/03 360Q
A61B6/03 360D
A61B5/00 G ZDM
A61B6/03 375
A61B5/055 382
(21)【出願番号】P 2018075474
(22)【出願日】2018-04-10
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】500109320
【氏名又は名称】ザイオソフト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】泉谷 暁彦
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 信一郎
【審査官】宮川 数正
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-097241(JP,A)
【文献】特開2010-119831(JP,A)
【文献】特開2010-068958(JP,A)
【文献】特開2009-153966(JP,A)
【文献】特表2016-503707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
A61B 5/00-5/01
A61B 5/055
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取得部と処理部とを備える医用画像処理装置であって、
前記取得部は、同一の被検体を時系列上で少なくとも2回撮像し、第1の医用画像及び第2の医用画像を取得し、
前記処理部は、
前記第1の医用画像と前記第2の医用画像との時系列上の動きを示す動き情報を作成し、
前記第1の医用画像、前記第2の医用画像、及び前記動き情報を用いて、空間座標が異なる前記第1の医用画像上と前記第2の医用画像上との同一の組織における画素の輝度の推移をマップした第1のパラメトリックマップを作成し、
前記第1の医用画像において、前記第1のパラメトリックマップを重畳して、前記第1の医用画像を可視化し、
前記
動き情報を用いて前記第1のパラメトリックマップを変形した第2のパラメトリックマップを作成し、
前記第2の医用画像において、前記第2のパラメトリックマップを重畳して、前記第2の医用画像を可視化する、
医用画像処理装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記被検体が時系列上で撮像された第3の医用画像を取得し、
前記処理部は、
前記第1の医用画像と前記第2の医用画像と前記第3の医用画像との時系列上の動きを示す前記動き情報を作成し、
前記第1の医用画像、前記第2の医用画像、前記第3の医用画像、前記動き情報を用いて、空間座標が異なる前記第1の医用画像上と前記第2の医用画像上と前記第3の医用画像上との同一の組織における画素の輝度の推移をマップした第3のパラメトリックマップを作成し、
前記第1の医用画像において、前記第3のパラメトリックマップを重畳して、前記第1の医用画像を可視化し、
前記動き情報を用いて前記第3のパラメトリックマップを変形した第4のパラメトリックマップを作成し、
前記第3の医用画像において、前記第4のパラメトリックマップを重畳して、前記第3の医用画像を可視化する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記第1の医用画像における第1の関心領域の設置を受け付ける操作部、を更に備え、
前記処理部は、前記操作部により前記第1の関心領域の設置を受け付けた場合、前記第2の医用画像において、前記第1の関心領域に存在する組織と同一の組織を含み且つ前記第1の関心領域と空間座標が異なる第2の関心領域を設置する、
請求項
1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記第1のパラメトリックマップ及び前記第2のパラメトリックマップにおいて、病変が疑われる値を有するパラメトリック値の部分を重畳表示させ、病変が疑われない値を有するパラメトリック値の部分を重畳表示させない、
請求項
1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
医用画像処理装置における医用画像処理方法であって、
同一の被検体を時系列上で少なくとも2回撮像し、第1の医用画像及び第2の医用画像を取得し、
前記第1の医用画像と前記第2の医用画像との動きを示す動き情報を作成し、
前記第1の医用画像、前記第2の医用画像、及び前記動き情報を用いて、空間座標が異なる前記第1の医用画像上と前記第2の医用画像上との同一の組織における画素の輝度の推移をマップした第1のパラメトリックマップを作成し、
前記第1の医用画像において、前記第1のパラメトリックマップを重畳して、前記第1の医用画像を可視化し、
前記
動き情報を用いて前記第1のパラメトリックマップを変形した第2のパラメトリックマップを作成し、
前記第2の医用画像において、前記第2のパラメトリックマップを重畳して、前記第2の医用画像を可視化する、
医用画像処理方法。
【請求項6】
請求項
5に記載の医用画像処理方法をコンピュータに実行させるための医用画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、造影剤を被検体に注入してダイナミックスキャンを行い、このスキャンにより得られた時系列データに基づいて血流動態(パーフュージョン:perfusion )を反映したファンクショナル・パラメータを演算し、その演算結果を数値やイメージとして表示する医用画像処理装置が知られている(特許文献1及び非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Intensity-modulated Parametric Mapping for Simultaneous Display of Rapid Dynamic and High-Spatial-Resolution Breast MR Imaging Data
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び非特許文献1では、スキャンにより得られた時系列データに基づいて血流動態を得るので、スキャン時に被検体に動きがある場合には、時系列データにおける被検体の位置が変化し、被検体の動きが加味された血流動態となり、本来の血流動態とは差異が生じる可能性がある。
【0006】
時系列データにおける被検体の位置の変化を回避するために、あらかじめ時系列データに対して位置合わせを行うレジストレーション処理を行うことが考えられる。この場合、パーフュージョンとしての血流を観察することはできるが、被検体全体の実際の動きは抑制されてほぼ静止した状態となる。したがって、被検体全体の実際の動きと血流との双方を同時に観察することができなかった。また、レジストレーション処理は発展途上の技術であるので、位置合わせに失敗することがある。この場合、血流動態を誤って可視化してしまうことになるが、そのことを直ちに把握することが必ずしもできなかった。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、被検体の動きと被検体内の流体の動きとの双方を観察できる医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、取得部と処理部とを備える医用画像処理装置であって、前記取得部は、同一の被検体を時系列上で少なくとも2回撮像し、第1の医用画像及び第2の医用画像を取得し、前記処理部は、前記第1の医用画像と前記第2の医用画像との動きを示す動き情報を作成し、前記第1の医用画像、前記第2の医用画像、及び前記動き情報を用いて、空間座標が異なる前記第1の医用画像上と前記第2の医用画像上との同一の組織における画素の輝度の推移をマップした第1のパラメトリックマップを作成し、前記第1の医用画像において、前記第1のパラメトリックマップを重畳して、前記第1の医用画像を可視化し、前記動き情報を用いて前記第1のパラメトリックマップを変形した第2のパラメトリックマップを作成し、前記第2の医用画像において、前記第2のパラメトリックマップを重畳して、前記第2の医用画像を可視化する、医用画像処理装置、である。
【0009】
本開示の一態様は、医用画像処理装置における医用画像処理方法であって、同一の被検体を時系列上で少なくとも2回撮像し、前記第1の医用画像と前記第2の医用画像との動きを示す動き情報を作成し、前記第1の医用画像、前記第2の医用画像、及び前記動き情報を用いて、空間座標が異なる前記第1の医用画像上と前記第2の医用画像上との同一の組織における画素の輝度の推移をマップした第1のパラメトリックマップを作成し、前記第1の医用画像において、前記第1のパラメトリックマップを重畳して、前記第1の医用画像を可視化し、前記動き情報を用いて前記第1のパラメトリックマップを変形した第2のパラメトリックマップを作成し、前記第2の医用画像において、前記第2のパラメトリックマップを重畳して、前記第2の医用画像を可視化する、医用画像処理方法、である。
【0010】
本開示の一態様は、上記医用画像処理方法の各ステップをコンピュータに実行させるための医用画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、被検体の動きと被検体内の流体の動きとの双方を観察できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態における医用画像処理装置のハードウェア構成例を示すブロック図
【
図2】医用画像処理装置の機能構成例を示すブロック図
【
図3】乳腺を含む観察部位を非造影状態、造影早期状態、造影後期状態で撮像されたボリュームデータに基づく医用画像を時系列に示す図
【
図4】胸部を含む観察部位におけるパラメトリックマップの一例を示す図
【
図5】胸部を含む観察部位におけるパラメトリックマップを、観察部位の非造影画像に重畳した重畳画像の一例を示す図
【
図6】胸部を含む観察部位におけるパラメトリックマップにおけるパラメトリック値を閾値でカットし、観察部位の非造影画像に重畳した重畳画像の一例を示す図
【
図8】関心領域の位置におけるTIC(Time Intensity Curve)の一例を示す図
【
図9】第1の実施形態における医用画像処理装置の動作手順の一例を示すフローチャート
【
図10】第1の実施形態における位置合わせを加味した時系列データに基づくパラメトリックマップの生成を補足説明するための図
【
図11】第1の実施形態における位置合わせを加味した時系列データに基づくパラメトリックマップの生成を補足説明するための図(
図10の続き)
【
図12】比較例の位置合わせを加味した時系列データに基づくパラメトリックマップの生成を説明するための図
【
図13】比較例の位置合わせを加味した時系列データに基づくパラメトリックマップの生成を説明するための図(
図12の続き)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における医用画像処理装置100の構成例を示すブロック図である。医用画像処理装置100は、ポート110、ユーザインタフェース(UI:User Interface)120、ディスプレイ130、プロセッサ140、及びメモリ150を備える。
【0015】
医用画像処理装置100には、CT装置200が接続される。医用画像処理装置100は、CT装置200からボリュームデータを取得し、取得されたボリュームデータに対して処理を行う。医用画像処理装置100は、PC(Personal Computer)とPCに搭載されたソフトウェアにより構成されてもよい。
【0016】
CT装置200は、生体へX線を照射し、体内の組織によるX線の吸収の違いを利用して、画像(CT画像)を撮像する。生体としては人体等が挙げられる。生体は、被検体の一例である。
【0017】
CT画像は、時系列に複数撮像されてもよい。CT装置200は、生体内部の任意の箇所の情報を含むボリュームデータを生成する。生体内部の任意の箇所は、各種臓器(例えば脳、心臓、腎臓、大腸、小腸、肺、胸部、乳腺、前立腺、肺)を含んでもよい。CT画像が撮像されることにより、CT画像における各画素(ボクセル)の画素値(CT値、ボクセル値)が得られる。CT装置200は、CT画像としてのボリュームデータを医用画像処理装置100へ、有線回線又は無線回線を介して送信する。
【0018】
具体的に、CT装置200は、ガントリ(図示せず)及びコンソール(図示せず)を備える。ガントリは、X線発生器(図示せず)やX線検出器(図示せず)を含み、コンソールにより指示された所定のタイミングで撮像することで、人体を透過したX線を検出し、X線検出データを得る。X線発生器は、X線管(図示せず)を含む。コンソールは、医用画像処理装置100に接続される。コンソールは、ガントリからX線検出データを複数取得し、X線検出データに基づいてボリュームデータを生成する。コンソールは、生成されたボリュームデータを、医用画像処理装置100へ送信する。コンソールは、患者情報、CT撮像に関する撮像条件、造影剤の投与に関する造影条件、その他の情報を入力するための操作部(図示せず)を備えてよい。この操作部は、キーボードやマウスなどの入力デバイスを含んでよい。
【0019】
CT装置200は、連続的に撮像することで3次元のボリュームデータを複数取得し、動画を生成することも可能である。複数の3次元のボリュームデータによる動画のデータは、4D(4次元)データとも称される。
【0020】
CT装置200は、複数のタイミングの各々でCT画像を撮像してよい。CT装置200は、被検体が造影された状態で、CT画像を撮像してよい。CT装置200は、被検体が造影されていない状態で、CT画像を撮像してよい。
【0021】
医用画像処理装置100内のポート110は、通信ポートや外部装置接続ポートを含み、CT画像から得られたボリュームデータを取得する。取得されたボリュームデータは、直ぐにプロセッサ140に送られて各種処理されてもよいし、メモリ150において保管された後、必要時にプロセッサ140へ送られて各種処理されてもよい。また、ボリュームデータは、記録媒体や記録メディアを介して取得されてもよい。
【0022】
CT装置200により撮像されたボリュームデータは、CT装置200から画像データサーバ(PACS:Picture Archiving and Communication Systems)(不図示)に送られ、保存されてよい。ポート110は、CT装置200から取得する代わりに、この画像データサーバからボリュームデータを取得してよい。このように、ポート110は、ボリュームデータ等の各種データを取得する取得部として機能する。
【0023】
UI120は、タッチパネル、ポインティングデバイス、キーボード、又はマイクロホンを含んでよい。UI120は、医用画像処理装置100のユーザから、任意の入力操作を受け付ける。ユーザは、医師、放射線技師、又はその他医療従事者(Paramedic Staff)を含んでよい。
【0024】
UI120は、ボリュームデータにおける関心領域(ROI:Region of Interest)の指定や輝度条件の設定等の操作を受け付ける。関心領域は、各種組織(例えば、血管、気管支、臓器、骨、脳、心臓、足、首、血流)の領域を含んでよい。組織は、病変組織、正常組織、臓器、器官、など生体の組織を広く含んでよい。また、UI120は、ボリュームデータやボリュームデータに基づく画像(例えば後述する3次元画像、2次元画像)における関心領域の指定や輝度条件の設定等の操作を受け付けてもよい。
【0025】
ディスプレイ130は、LCD(Liquid Crystal Display)を含んでもよく、各種情報を表示する。各種情報は、ボリュームデータから得られる3次元画像や2次元画像を含んでよい。3次元画像は、ボリュームレンダリング画像、サーフェスレンダリング画像、仮想内視鏡画像(VE画像)、CPR(Curved Planar Reconstruction)画像、等を含んでもよい。ボリュームレンダリング画像は、レイサム(RaySum)画像(単に「SUM画像」とも称する)、MIP(Maximum Intensity Projection)画像、MinIP(Minimum Intensity Projection)画像、平均値(Average)画像、又はレイキャスト(Raycast)画像を含んでもよい。2次元画像は、アキシャル(Axial)画像、サジタル(Sagittal)画像、コロナル(Coronal)画像、MPR(Multi Planer Reconstruction)画像、等を含んでよい。3次元画像及び2次元画像は、カラーフュージョン画像を含んでよい。
【0026】
メモリ150は、各種ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)の一次記憶装置を含む。メモリ150は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)の二次記憶装置を含んでもよい。メモリ150は、USBメモリやSDカードの三次記憶装置を含んでもよい。メモリ150は、各種情報やプログラムを記憶する。各種情報は、ポート110により取得されたボリュームデータ、プロセッサ140により生成された画像、プロセッサ140により設定された設定情報、各種プログラムを含んでもよい。メモリ150は、プログラムが記録される非一過性の記録媒体の一例である。
【0027】
プロセッサ140は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、又はGPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよい。プロセッサ140は、メモリ150に記憶された医用画像処理プログラムを実行することにより、各種処理や制御を行う処理部160として機能する。
【0028】
図2は、処理部160の機能構成例を示すブロック図である。
【0029】
処理部160は、領域抽出部161、画像生成部162、パラメトリックマップ生成部163、レジストレーション処理部164、及び表示制御部166を備える。
【0030】
処理部160は、医用画像処理装置100の各部を統括する。なお、処理部160に含まれる各部は、1つのハードウェアにより異なる機能として実現されてもよいし、複数のハードウェアにより異なる機能として実現されてもよい。また、処理部160に含まれる各部は、専用のハードウェア部品により実現されてもよい。
【0031】
領域抽出部161は、ボリュームデータにおいて、セグメンテーション処理を行ってよい。この場合、UI120がユーザからの指示を受け付け、指示の情報が領域抽出部161に送られる。領域抽出部161は、指示の情報に基づいて、公知の方法により、ボリュームデータから、セグメンテーション処理を行い、関心領域を抽出(segment)してもよい。また、ユーザからの詳細な指示により、手動で関心領域を設定(set)してもよい。また、観察対象が予め定められている場合、領域抽出部161は、ユーザ指示なしでボリュームデータから、セグメンテーション処理を行い、観察対象を含む関心領域を抽出してもよい。抽出される領域には、各種組織(例えば、血管、気管支、臓器、骨、脳、心臓、足、首、血流、乳腺、胸部、腫瘍)の領域を含んでよい。
【0032】
画像生成部162は、ポート110により取得されたボリュームデータに基づいて、3次元画像や2次元画像を生成してよい。画像生成部162は、ポート110により取得されたボリュームデータから、指定された領域や領域抽出部161により抽出された領域に基づいて、3次元画像2次元画像を生成してよい。
【0033】
レジストレーション処理部164は、時系列で得られた複数のボリュームデータ(CT画像)を基に、ボリュームデータに含まれる各部の動きを検出し、動き情報を生成する。この場合、レジストレーション処理部164は、複数のフェーズのCT画像を基に、複数フェーズ間でのCT画像の変形に対して動き解析を行い、CT画像における動き情報を取得する。動き解析の具体的手法は、例えば参考特許文献1、参考特許文献2に記載されている。これらは、非剛体レジストレーションの例になるが、剛体レジストレーションであってもよい。
(参考特許文献1:米国特許8311300号明細書)
(参考特許文献2:日本国特許第5408493号公報)
【0034】
レジストレーション処理部164は、動き情報として、CT画像の任意の点の移動量に係る情報や速度に係る情報を取得してよい。レジストレーション処理部164は、参考特許文献1の手法を適用すると、CT画像を2次元格子node(k,l)に区切り、2次元格子のフェーズtの格子node(k,l,t)における2次元座標を(x,y)とした場合、フェーズtの値を変更して得られる複数のnode(k,l,t)の差分を基に、node(k,l)の格子点に係る移動量の情報を算出してよい。また、レジストレーション処理部164は、移動量の情報を時間微分することで、速度の情報を算出してよい。移動量や速度の情報は、ベクトルで示されてよい。
【0035】
レジストレーション処理部164がこの2次元格子の動き情報をCT画像全体の各点に対して補間すると、CT画像の各点の動き情報が得られる。この所定の点の動き情報を、観察部位を含む領域の各点に対して適用すると、観察部位を含む領域の各点の動き情報が得られる。
【0036】
また、レジストレーション処理部164は、参考特許文献2の手法を適用すると、時系列に並ぶボリュームデータのうち、ボリュームデータtk-1及びその時刻情報tk-1、並びにボリュームデータtk及びその時刻情報tkを基に、動き情報を生成してよい。動き情報は、複数のボリュームデータ上の対応する位置もしくは対応する物体の対応関係の情報、位置及び物体が移動変化する過程の情報を指してよい。各ボリュームデータの画素が、時刻k-1と時刻kとの間の任意の時刻での位置を示す指標となる。
【0037】
なお、レジストレーション処理部164は、参考特許文献1の手法に限られず、その他の公知のレジストレーション手法を用いて動き解析を行ってもよい。医用画像処理装置100は、動き情報を用いた各点や観察部位の動き解析により、被検体内の任意の位置がどの位置に移動したかを把握可能である。
【0038】
パラメトリックマップ生成部163は、時系列のボリュームデータ又は時系列のボリュームデータに基づく3次元画像若しくは2次元画像、及び動き情報、に基づいて、パラメトリック値を生成する。時系列のボリュームデータは、動き情報に基づいて物体の同一点が関連付けられることによって、物体の同一点の輝度の推移が得られ、これによってパラメトリック値が生成される。物体の同一点は、例えば同一の組織の点を示す対応する点であり、被検体における空間座標は異なり得る。パラメトリック値は、ボリュームデータの画素(ボクセル)毎に又は3次元画像若しくは2次元画像の画素(ピクセル)毎に算出される。パラメトリックマップ生成部163は、各画素のパラメトリック値を、ボリュームデータ又は3次元画像若しくは2次元画像の全体や観察部位に対応して集積し、ボリュームデータ又は3次元画像若しくは2次元画像のパラメトリックマップを生成してよい。
【0039】
レジストレーション処理部164は、動き情報に基づいて、生成されたパラメトリックマップを変形する。つまり、パラメトリック値が得られた、ボリュームデータ又は3次元画像若しくは2次元画像に対応する位置は、被検体の体動によりCT装置200による撮像時間において動き得る。レジストレーション処理部164は、この動きに合わせて、パラメトリックマップを変形してよく、パラメトリック値に対応するボリュームデータ又は3次元画像若しくは2次元画像における位置を変更してよい。この場合、パラメトリックマップ生成部163は、例えば、ボリュームデータの動きを示す動き情報に基づいて、ボリュームデータの動きに追従して、パラメトリック値が示す位置やパラメトリックマップの形状を変形してよい。
【0040】
画像生成部162は、時系列のボリュームデータのうちの少なくとも1つのボリュームデータに、ボリュームデータを基に生成されたパラメトリックマップを重畳し、重畳ボリュームデータを生成してよい。画像生成部162は、時系列の3次元画像のうちの少なくとも1つの3次元画像に、3次元画像を基に生成されたパラメトリックマップを重畳し、重畳画像を生成してよい。画像生成部162は、時系列の2次元画像のうちの少なくとも1つの2次元画像に、2次元画像を基に生成されたパラメトリックマップを重畳し、重畳画像を生成してよい。
【0041】
表示制御部166は、各種データ、情報、画像をディスプレイ130に表示させる。表示制御部166は、2次元平面で示される3次元画像又は2次元画像にパラメトリック値が重畳された重畳画像を表示させることで、重畳画像を可視化してよい。表示制御部166は、3次元空間で示されるボリュームデータにパラメトリック値が重畳された重畳ボリュームデータを可視化してよい。この場合、画像生成部162が、重畳ボリュームデータを基に、パラメトリック値が重畳された3次元画像や2次元画像を生成してよい。表示制御部166は、生成された、パラメトリック値が重畳された3次元画像や2次元画像を表示させることで、重畳ボリュームデータを可視化してよい。
【0042】
なお、ボリュームデータ、3次元画像、2次元画像は、医用画像の一例である。つまり、医用画像に、パラメトリック値やパラメトリックマップが重畳されて可視化される。以下では、主にボリュームデータや3次元画像にパラメトリック値やパラメトリックマップが重畳されて可視化されることを主に例示するが、他の医用画像に対しても適用可能である。
【0043】
なお、CT装置200によりボリュームデータとしてのCT画像が取得されることを主に例示するが、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置200A(不図示)によりボリュームデータとしてのMRI画像が取得されてもよい。
【0044】
次に、パラメトリックマップの詳細について説明する。
【0045】
パラメトリックマップは、例えば、CT装置200やMRI装置200Aから、時系列上の複数の画像(images of time series)としてのボリュームデータを取得し、画像上の各点の輝度の推移から値が算出され、その値がマップされた画像である。パラメトリックマップは、3次元空間で示されるマップでもよいし、2次元平面示されるマップでもよい。パラメトリックマップは、灌流(パーフュージョン:perfusion)画像を含んでよい。灌流画像は、パラメトリックマップのうち、各点の輝度の推移から逆畳み込み演算が行われてパラメトリック値が導出されるものを指すことが多い。
【0046】
パラメトリックマップは、時系列上で各画素の輝度の変化を観察するために用いられてよい。したがって、パラメトリックマップは、例えば、血流の動態、造影剤の濃度の推移、肺の収縮、の観察に用いられてよい。肺は、例えば、収縮時には画素の輝度が大きくなり、拡張時には画素の輝度が小さくなる。
【0047】
パラメトリックマップは、病変の診断に用いられてよい。例えば、脳内の血流に係るパラメトリックマップにより、脳内に出血、梗塞、腫瘍がないかを診断可能である。この場合、脳CT/MR Perfusionが用いられてよい。また、例えば、乳腺を含む胸部の血流や造影剤の移動を各画素の輝度の変化により、乳癌、石灰化等がないかを診断可能である。例えば、患部に癌がある場合には、血流が活発により、輝度が大きくなる傾向がある。また患部に梗塞箇所がある場合には、梗塞箇所の周辺では流体が流れ難くなり、輝度が小さくなる傾向がある。医用画像処理装置100は、可視化によりパラメトリックマップを医師に提供することで、医師による的確な診断を支援できる。
【0048】
パラメトリックマップや灌流は、例えば、Wash In、Wash Out、time to peak、mean transit time(MTT)、blood flow(例えば脳ではcerebral blood flow)、blood volume (脳ではcerebral blood volume)、Maximun slope、MRIにおけるT1,T2, T2* (通常はT1強調、T2強調)、ADC(apparent diffusion coefficiennt)、を含んでよい。
【0049】
次に、3次元画像及びそのパラメトリックマップの具体例について説明する。ここでは、乳腺を含む胸部を観察部位とし、胸部に造影剤が投与され、造影剤が流れる様子を複数フェーズで得られた3次元画像及びパラメトリックマップにより観察することを想定している。ここでは、MRI装置200Aにより、撮像時間を5分程度として乳腺を含む観察部位を撮像することを想定する。
【0050】
図3は、乳腺を含む観察部位を非造影状態、造影早期状態、造影後期状態で撮像されたボリュームデータに基づく3次元画像の一例を時系列に示す図である。ポート110が、時系列データとして複数のフェーズのボリュームデータを取得する。画像生成部162が、各ボリュームデータに基づく3次元画像を生成する。
【0051】
図3の横軸は、被検体への造影剤の投与開始からの経過時間(単位:分(min))を示している。つまり、造影剤の投与から0分後には、造影剤が
図3に示す観察部位に到着しておらず、非造影状態となっている。造影剤の投与から1分後には、造影剤が観察部位に到達し流入し始めた造影早期状態となっており、例えば右胸部rp1の一部の輝度が高くなっている。造影剤の投与から5分後には、造影剤が観察部位に到達した後に流出し終える造影後期状態となっている。造影後期状態では、右胸部rp1の一部の輝度が高くなっており、その周辺の乳腺の輝度も造影早期に比べ高くなっている。
【0052】
図4は、胸部を含む観察部位におけるパラメトリックマップPMの一例を示す図である。
図4のパラメトリックマップPMでは、例えば、造影早期から造影後期にかけての輝度の推移(変化)が小さい方から順に、紫色、青色、水色、緑色、黄色、橙色、赤色、で段階的に示されている(Wash Out)。例えば、右胸部rp1における部位b1は、緑から水色の箇所となっており、比較的輝度の推移が小さい。これによって、医師は腫瘍を疑われる箇所について所見を下すことができる。パラメトリックマップ生成部163は、輝度の推移を基に分類し、分類結果に応じて各箇所を異なる表示態様(例えば色を分ける)で表示してよい。
【0053】
図5は、胸部を含む観察部位におけるパラメトリックマップPMを、観察部位の非造影画像G11にアルファブレンドによって重畳した重畳画像G12の一例を示す図である。
図5のパラメトリックマップPMは、
図4のパラメトリックマップPMと同様に、輝度変化の少ない画素を含めて、画素毎にパラメトリック値を有しており、画素毎にパラメトリック値が示されている。アルファブレンドの割合は任意に操作できる。
【0054】
図6は、胸部を含む観察部位におけるパラメトリックマップPMAを、観察部位の非造影画像G11に重畳した重畳画像G13の一例を示す図である。パラメトリックマップPMAは、パラメトリックマップPM(Wash Out)について、Wash Inにおけるパラメトリック値を閾値th1でカットされたマップである。
【0055】
図6では、例えば閾値th1を満たさない箇所のパラメトリック値の表現が省略されている。そのため、Wash In値(Wash Inを示す画素の輝度)の高い領域についてのみ、Wash Out値(Wash Outを示す画素の輝度)が表示されている。そのため、パラメトリックマップPMAは、パラメトリック値が表現されない画素を含んでおり、パラメトリックマップPMAに対応する非造影画像G11も一部視認可能である。したがって、特定の患部に限定して可視化したり、非造影画像G11によって被検体の輝度の状態も確認したりする場合には、
図6の可視化方法は有効である。
【0056】
次に、関心領域(ROI)及びTIC(Time Intensity Curve)の具体例について説明する。
【0057】
図7は、胸部における関心領域rの一例を示す図である。
図7では、関心領域rとして、関心領域r11,r12が、例えばUI120を介して設定されている。ディスプレイ130は、設定された関心領域r11,r12を、胸部含む3次元画像に重畳させて表示してよい。関心領域r11,r12は、UI120を介して関心領域r11,r12の輪郭が細かに表現されてもよいし、円形、矩形等、の単純な形状で表現されてもよい。
【0058】
図8は、関心領域rの位置におけるTIC(Time Intensity Curve)の一例を示す図である。TICは、ボリュームデータ又は3次元画像若しくは2次元画像の画像上の各点(画素)の輝度の推移を示すグラフである。
図8では、一例として、関心領域r11におけるTICが示されている。関心領域r12におけるTICも同時に示される場合、TICのグラフは2つとなる。また、関心領域r11のTICと関心領域r12のTICとが切り替えて1つずつ表示されてもよい。
【0059】
図8の横軸は、被検体への造影剤の投与開始からの経過時間(単位:分(min))を示している。
図8の縦軸は、関心領域rの輝度を示す。つまり、
図8では、造影剤の投与開始から0分後の非造影状態では、被検体における関心領域rの位置に存在する組織の輝度を示しており、輝度が比較的小さい。造影剤の投与開始から1分後の造影早期状態では、関心領域rの位置に造影剤が流入し、輝度が高い状態となっている。そして、造影剤の投与開始から1分後からは、造影後期状態に向かって、造影剤の濃度が低くなり、輝度が低くなっていく。
【0060】
図8では、このような造影剤の濃度の変化がTICにより示されている。パラメトリックマップ生成部163は、TICで表現される造影剤の濃度の変化を、パラメトリック値として算出する。パラメトリックマップ生成部163は、造影剤の濃度の変化を基に、様々な手法でパラメトリック値を算出してよい。パラメトリックマップ生成部163は、例えば、造影剤の濃度の変化の最大値と最小値との差分を基に、パラメトリック値を算出してよい。パラメトリックマップ生成部163は、例えば、造影剤の変化速度を基に、パラメトリック値を算出してよい。パラメトリックマップ生成部163は、例えば、造影剤の変化についての他の基準を基に、パラメトリック値を算出してよい。
【0061】
次に、関心領域rの詳細について説明する。
【0062】
関心領域rは、動的に移動してよい。例えば、複数フェーズで得られるボリュームデータに基づく3次元画像において、同一の関心領域rが示す位置は、被検体の体動により移動し得る。動的に移動する関心領域rのことを、D-ROI(Dynamic ROI)とも称する。関心領域rの移動(動き)の情報は、レジストレーション処理部164により生成される動き情報に対応する。
【0063】
レジストレーション処理部164は、動き情報に基づいて、時系列上の複数のボリュームデータに基づく3次元画像における関心領域rの位置を、移動させてよい。これにより、医用画像処理装置100は、被検体の体動に追従して、関心領域rの位置を変更可能である。つまり、レジストレーション処理部164は、複数フェーズの3次元画像の少なくとも1つの関心領域rの位置を調整し、位置合わせしてよい。
【0064】
領域抽出部161は、複数のフェーズのうちの1つのフェーズに、UI120を介して関心領域rを設定する。関心領域rが設定される基準となるフェーズは、例えば、造影早期状態の画像が得られる造影早期相の画像(例えば造影剤の投与開始から1分後の画像)でよい。造影早期相で動脈が描出されるので多くの診断に有用な情報が含まれている。
【0065】
レジストレーション処理部164は、複数のフェーズのうちの他のフェーズに、動き情報に基づいて、関心領域rを設定してよい。つまり、基準フェーズでは、関心領域rが手動設定され、他のフェーズでは動き情報に基づいて自動設定されてよい。
【0066】
ユーザは、複数のフェーズ間で位置の移動する関心領域rに存在する部位の画像と、移動する関心領域rの動きとを見比べることによって、生成された動き情報が正確であるかどうかを判断することができる。このときに、ユーザはUI120を介して動き情報が正確でないと判断したフェーズにおいて、関心領域rをユーザが動かすことができる。
【0067】
関心領域rの位置合わせの機能が正しく動作していないと判定された場合、レジストレーション処理部164は、ユーザにUI120を介して動かされた関心領域rを利用して、動き情報を再生成してよい。これにより、より正確な動き情報が得られる。また、更にパラメトリックマップ生成部163は、再生成された動き情報を基にパラメトリック値を再計算し、新たなパラメトリックマップを生成してよい。
【0068】
例えば、パラメトリックマップ生成部163は、基準フェーズでの関心領域r11の輝度と基準フェーズ以外での関心領域r11に対応する関心領域r21(不図示)の輝度とに基づいて、関心領域r11のパラメトリック値が算出されていてよい。関心領域r11,r21は、同一の組織(例えば観察対象の腫瘍)を示してよい。ユーザは、関心領域r21の微調整を希望する場合、UI120を介して関心領域r21の位置(例えば座標)を変更し、微調整する。パラメトリックマップ生成部163は、基準フェーズでの関心領域r11の輝度と基準フェーズ以外での関心領域r21が変更された位置の輝度とに基づいて、関心領域r11のパラメトリック値が再算出してよい。これにより、現状の被検体の状態に合った動き情報が得られる。
【0069】
パラメトリックマップ生成部163は、関心領域rに含まれる画素の推移を集計し、集計結果を基にパラメトリック値を導出(例えば算出)してよい。例えば、パラメトリックマップ生成部163は、関心領域rに含まれる画素の推移を基に、TICを生成してよい。TICは、ディスプレイ130により表示されてよい。関心領域rにおけるパラメトリック値のみが必要な場合、このTICの表示で十分となり得る。TICは、パラメトリック値の一例となる。パラメトリックマップ生成部163は、関心領域rに含まれる画素の、各フェーズの平均値や最大値などの統計値を画素値として用いて、パラメトリック値を導出してよい。例えば、パラメトリックマップ生成部163は、関心領域rに含まれる各フェーズの平均値や最大値などの統計値を画素値として画素の推移を基に、TICを生成してよい。
【0070】
次に、本実施形態のパラメトリック値やパラメトリックマップPMのレジストレーション処理について説明する。
【0071】
レジストレーション処理部164は、動き情報に基づいて、生成されたパラメトリックマップPMに対して変形させる。観察対象の臓器における輝度の推移を観察する場合、被検体の体動等に伴い臓器が動いている場合には、パラメトリックマップPMを臓器の動きに追従できる。
【0072】
例えば、3次元画像における乳腺を含む胸部の輝度の推移を観察する場合、MRI装置200Aによる撮像時間は5分程度となる。そのため、撮像時間内に動く患者がいることが考えられる。この場合、複数のフェーズの3次元画像内では、胸部の位置が移動を含む変形をし得る。また、3次元画像における頭部の輝度の推移を観察する場合、患者が脳卒中を患っている場合には撮像時間中に痙攣により動くことがあり得る。この場合、複数のフェーズの3次元画像内では、頭部の位置が移動を含む変形をし得る。
【0073】
例えば、3次元画像における心臓部の輝度の推移を観察する場合、心臓部は拍動により収縮したり拡張したりするので、心臓部は変形したり移動したりする。また、3次元画像における肝臓部の輝度の推移を観察する場合、肝臓部は呼吸によって移動し得る。
【0074】
レジストレーション処理部164は、例えば、2つのフェーズの3次元画像やボリュームデータの間での組織の動きを算出し、この算出結果を基に動き情報を生成してよい。レジストレーション処理部164は、動き情報を基に、ボリュームデータや3次元画像の変形に追従して、パラメトリックマップPMを変形させてよい。なお、3つ以上のフェーズの3次元画像やボリュームデータの間での組織の動きを基に、動き情報が生成されてよい。
【0075】
次に、可視化の詳細について説明する。
【0076】
ボリュームデータの可視化では、ボリュームデータから二次元平面に対応する部分(2D部分)が抽出され、二次元平面にパラメトリックマップPMが重畳表示されてよい。つまり、表示制御部166は、二次元平面で表現される二次元画像(例えばMPR画像)にパラメトリックマップPMを重畳表示させてよい。
【0077】
また、ボリュームデータや二次元画像の全域においてパラメトリックマップPMを重畳表示すると、ボリュームデータの輝度の表示が視認し難くなることがある。表示制御部166は、パラメトリックマップPMにおいて、病変が疑われる値を有するパラメトリック値の部分を重畳表示させ、病変が疑われない値(つまり正常値)を有するパラメトリック値の部分を重畳表示させないようにしてもよい。病変が疑われる値は、組織等により異なる。また、表示制御部166は、病変以外の特定の注目すべき値を基に、重畳表示させるか否かを決定してよい。また、表示制御部166は、パラメトリックマップPMにおいて異なるパラメトリックマップのパラメトリック値を利用して、重畳表示の範囲を定めてもよい(
図6参照)。
【0078】
なお、表示制御部166は、ボリュームデータにパラメトリックマップPMを重畳表示させる場合、例えば既知の画像合成方法に基づいて重畳ボリュームデータや重畳画像を生成してよい。画像合成方法は、例えば、αブレンディングが含まれてよい。
【0079】
また、表示制御部166は、3次元画像としてのボリュームレンダリング画像にパラメトリックマップPMを重畳表示させてもよい。この場合、表示制御部166は、例えば、表面反射光の計算時にパラメトリック値を色情報として付加することで、ボリュームレンダリング画像にパラメトリックマップPMを重畳表示させてもよい。
【0080】
次に、医用画像処理装置100の動作について説明する。
図9は、医用画像処理装置100の動作例を示すフローチャートである。
【0081】
まず、ポート110は、時系列上に並んだ複数のフェーズのボリュームデータをCT装置200から取得する(S11)。レジストレーション処理部164は、取得された複数のフェーズのボリュームデータに基づいて、動き情報を生成する(S12)。
【0082】
パラメトリックマップ生成部163は、複数のフェーズのボリュームデータにおける各画素の輝度(画素値に係る輝度の成分)を取得する。パラメトリックマップ生成部163は、いずれかのフェーズの画素毎に、複数のフェーズのボリュームデータにおける、時系列上の動き情報を用いた対応点の画素の輝度の推移を導出(例えば算出)する(S13)。これによって、医用画像処理装置100は、動き情報から同一組織を時系列上で追跡して、同一組織の画素の輝度の推移を導出できる。
【0083】
パラメトリックマップ生成部163は、画素毎に、時系列上の対応点の画素の輝度の推移を基に、パラメトリック値を算出する(S14)。パラメトリックマップ生成部163は、各画素のパラトリック値をマッピングし、ボリュームデータの全体又は一部に対応するパラメトリックマップPMを生成する(S15)。
【0084】
例えば、複数のフェーズのボリュームデータをボリュームデータvd1,vd2とする。ボリュームデータvd1上のボクセル(x1,y1,z1)の輝度値をvd1(x1,y1,z1)とする。ボリュームデータvd2上のボクセル(x2,y2,z2)の輝度値をvd2(x2,y2,z2)とする。なお、座標(x1,y1,z1)と座標(x2,y2,z2)は動いた組織の同一点を指す。この場合、パラメトリックマップ生成部163は、以下の(式1)に従って、パラメトリックマップPMやパラメトリック値vp(x,y,z)を生成してよい。なお、パラメトリックマップPMは、各位置でのパラメトリック値vpをマッピングしたものである。
【0085】
vp(x1,y1,z1)=(vd2(x2,y2,z2)-vd1(x1,y1,z1))/vd1(x1,y1,z1) ・・・(式1)
つまり、ここでは、基準とするボリュームデータvd1の輝度の変化率が、パラメトリック値vp(x1,y1,z1)として示されている。
【0086】
レジストレーション処理部164は、動き情報に基づいて、時系列上の各フェーズに対応するパラメトリックマップPMを変形する。(S16)。表示制御部166は、変形されたパラメトリックマップPMを、ボリュームデータに重畳して可視化する(S17)。この場合、表示制御部166は、パラメトリックマップPMの変形具合は、フェーズ毎に異なる。表示制御部166は、フェーズ毎に、変形されたパラメトリックマップPMをボリュームデータに重畳して表示させてよい。
【0087】
なお、可視化は、ボリュームデータの各画素に、パラメトリックマップPMに含まれる各パラメトリック値を重畳して重畳ボリュームデータを生成することを示してよい。また、可視化は、ボリュームデータに基づく3次元画像又は2次元画像の各画素に、パラメトリックマップPMに含まれる各パラメトリック値を重畳して重畳画像を生成することを示してもよい。重畳画像は、ディスプレイ130により表示される。
【0088】
図10及び
図11は、本実施形態の位置合わせを加味した時系列データに基づくパラメトリックマップPMの生成を補足説明するための図である。
【0089】
図10及び
図11では、ポート110は、ボリュームデータv1,v2,v3を時系列データとして取得する。ボリュームデータv1は、フェーズf1で得られ、ボリュームデータv2は、フェーズf2で得られ、ボリュームデータv3は、フェーズf3で得られる。フェーズf1~f3は、時系列上で連続する。ボリュームデータv1~v3では、被検体としての患者10の所定の断面や断層が可視化(表示)されている。患者10の領域には、病変とは無関係に動いている臓器11、病変が存在すると疑われる患部12,13が含まれている。
【0090】
各フェーズのボリュームデータv1~v3を比較すると、臓器11、患部13、及びそれらの周辺はあまり画素の輝度が変化しておらず、患部12及びその周辺は大きく画素の輝度が変化している。患部12を示す丸印が黒丸から点線に変化していることは、画素の輝度の変化を示している。
【0091】
レジストレーション処理部164は、ボリュームデータv1~v3を基に動き情報を生成する。
図10では、基準となるボリュームデータをボリュームデータv1とすると、例えばボリュームデータv1における領域a11,a12,a13は、それぞれ、ボリュームデータv2における領域a21,a22,a23、ボリュームデータv3における領域a31,a32,a33に対応する。領域a11は、臓器11を含む領域であり、領域a12は、患部12を含む領域であり、領域a13は、患部13を含む領域である。
【0092】
パラメトリックマップ生成部163は、ボリュームデータv1,v2,v3を基に、パラメトリックマップPMを生成する。パラメトリックマップPMは、患部12に対応するパラメトリック値12pmと、患部13に対応するパラメトリック値13pmと、を含む。例えば、
図11では、パラメトリック値12pm,13pmは異なる値であり、例えば異なる造影剤の濃度推移を示しており、表示態様が異なっている。なお、患部12と患部13とは、パラメトリック値が異なるので、パラメトリック値に対応する表示態様で、つまり異なる表示態様で表示されてよい。
【0093】
なお、パラメトリックマップPMでは、診断上意味のあるパラメトリック値(例えば患部12,13に対応するパラメトリック値12pm,13pm)は、強調して表示されてよく、診断上意味のあまりないパラメトリック値の箇所は、ボリュームデータv1~v3の輝度が強調して表示されてよい。例えば、表示制御部166は、パラメトリックマップPMがWash Outの場合に、Wash Inが閾値th1以上の時に強調表示させる。また、表示制御部166は、Wash Outパラメトリックマップのパラメトリック値が(PersistentやPlateauではなく)Wash Outを示したときに更に強調表示させる。
【0094】
パラメトリックマップ生成部163は、動き情報に基づいて、パラメトリックマップPMを変形する。この場合、
図11において基準となるボリュームデータv1に対応するパラメトリックマップPM1を基準とすると、パラメトリックマップPM1における領域a11p,a12p,a13pは、それぞれ、パラメトリックマップPM2における領域a21p,a22p,a23pとなり、パラメトリックマップPM3における領域a31p,a32p,a33pとなるように変形される。動き情報の基となるボリュームデータにおける領域の変形に対応するためである。
【0095】
なお、パラメトリックマップPM1~PM3では、臓器11に対応するパラメトリック値の算出等が省略されているが、臓器11に対応するパラメトリック値の算出等が患部12,13と同様に実施されてもよい。
【0096】
画像生成部162は、ボリュームデータv1~v3にパラメトリックマップPM1~3を重畳(合成)して、重畳ボリュームデータv1p,v1p,v3pを生成する。
図11では、重畳ボリュームデータv1pにおいて、臓器11、患部12に対応するパラメトリック値12pm1、及び患部13に対応するパラメトリック値13pm1が可視化されている。重畳ボリュームデータv2pにおいて、臓器11、患部12に対応するパラメトリック値12pm2、及び患部13に対応するパラメトリック値13pm2が可視化されている。重畳ボリュームデータv3pにおいて、臓器11、患部12に対応するパラメトリック値12pm3、及び患部13に対応するパラメトリック値13pm3が可視化されている。つまり、患部12,13の動きに追従してパラメトリック値12pm2,12pm3,13pm2,13pm3の位置が移動しており、パラメトリックマップPM2,PM3が変形されていることが理解できる。
【0097】
なお、ボリュームデータv1~v3に対応する重畳ボリュームデータv1p~v3pの全てが生成される必要はなく、重畳ボリュームデータv1p~v3pのうち少なくとも1つが生成されればよい。
【0098】
次に、比較例におけるパラメトリックマップPMxの生成について説明する。
図12及び
図13は、比較例の位置合わせを加味した時系列データに基づくパラメトリックマップPMxの生成を説明するための図である。
【0099】
なお、比較例における医用画像処理装置100xのハードウェア構成は、本実施形態の医用画像処理装置100のハードウェア構成と同様でよい。なお、比較例におけるハードウェア構成では、符号の末尾に「x」を付して説明する
【0100】
図12及び
図13では、医用画像処理装置100xでは、ポート110xは、ボリュームデータvx1,vx2,vx3が時系列データとして取得する。ボリュームデータvx1~vx3では、被検体としての患者10の所定の断面や断層が可視化(表示)されている。患者10の領域には、病変とは無関係に動いている臓器11、病変が存在すると疑われる患部12,13が含まれている。
【0101】
各フェーズのボリュームデータvx1~vx3を比較すると、
図10と同様に、臓器11、患部13、及びそれらの周辺はあまり画素の輝度が変化しておらず、患部12及びその周辺は大きく画素の輝度が変化している。
【0102】
レジストレーション処理部164xは、ボリュームデータvx1~vx3を基に動き情報を生成する。そして、レジストレーション処理部164xは、動き情報に基づいて、ボリュームデータvx1に対するボリュームデータvx2,vx3の動きとは反対方向に、ボリュームデータvx2,vx3を変形させ、ボリュームデータvx2’,vx3’を得る。つまり、患者における患部12,13の動きを相殺するように、ボリュームデータvx2,vx3を変形させる。これにより、患部12,13の実際の動きはボリュームデータvx2,vx3上で抑制され、動かなかったものと擬制される。
【0103】
パラメトリックマップ生成部163xは、変形されたボリュームデータvx1,vx2’,vx3’を基に、パラメトリックマップPMxを生成する。パラメトリックマップPMxは、患部12に対応するパラメトリック値12xpmと、患部13に対応するパラメトリック値13xpmと、を含む。
図13では、パラメトリック値12xpm,13xpmは、位置合わせされた各ボリュームデータvx1~vx3における患部12,13の位置に表示される。なお、
図13では、パラメトリック値12xpm,13xpmは異なる値であり、例えば異なる造影剤の濃度推移を示しており、表示態様が異なっている。
【0104】
表示制御部166xは、ボリュームデータvx1にパラメトリックマップPMxを重畳(合成)して、重畳ボリュームデータvx1pを生成する。重畳ボリュームデータvx1pにおいて、臓器11、患部12に対応するパラメトリック値12xpm、及び患部13に対応するパラメトリック値13xpmが可視化される。比較例では、本実施形態と異なり、各フェーズのボリュームデータにおける各患部12,13の位置が統一されるので、実際の患部12,13の動きは、表示からは読み取れず、不明となる。
【0105】
このように、本実施形態の医用画像処理装置100によれば、時系列のボリュームデータを変形することなく、動き情報に基づいて、複数のフェーズ間の組織の動きに合わせてパラメトリックマップPMを変形する。したがって、医用画像処理装置100は、複数のフェーズ間の組織の動きを抑制せずにパラメトリックマップPMをレジストレーションするので、ボリュームデータ等から組織の動きを容易に確認できる。また、医用画像処理装置100は、比較例のように、レジストレーション処理の終了後に時系列上のボリュームデータが静止したまま、例えば造影剤の注入によって同じ位置で濃淡推移するように見えるものではなく、ボリュームデータ内の動きに合わせて濃淡推移を表示する位置も変化する。したがって、医用画像処理装置100は、ボリュームデータ内の動きを動的に観察でき、濃淡推移も観察できる。
【0106】
また、医用画像処理装置100は、被検体としての患者の体動によりボリュームデータが変形した場合でも、変形前のボリュームデータを確認できる。つまり、医用画像処理装置100は、比較例のように基準ボリュームデータに合わせてボリュームデータの変形を抑制しないので、変形前のボリュームデータを可視化できる。よって、医用画像処理装置100は、変形し得る組織の患者内の組織の様子を観察し易くできる。
【0107】
また、医用画像処理装置100は、動的な関心領域rを使用できる。例えば、医用画像処理装置100は、ボリュームデータ又は3次元画像における部分的なパラメトリックマップPMを得たい場合、動的な関心領域rを用いてパラメトリックマップPMを生成し、ボリュームデータ又は3次元画像における一部にパラメトリックマップPMの一部を重畳して表示させてよい。動的な関心領域rは、任意のフェーズにおいて関心領域rを設定した場合、動き情報を基に、他のフェーズにおいて移動した組織に追従して移動する。したがって、ユーザは、動的な関心領域rの動きを観察することで、関心領域rに対応する患者の組織の動きを把握できる。また、患者の組織の動きと動的な関心領域rの動きとが異なる場合、ユーザは、ディスプレイ130に表示された患者10の組織の動きと関心領域rの動きとを確認することで、動き情報に誤りがあることを感知できる。
【0108】
また、レジストレーション処理部164は、UI120を介して任意のフェーズにおける関心領域rを移動させ、移動させた関心領域rの位置を基に動き情報を再生成することで、動き情報を修正してよい。そして、パラメトリックマップ生成部163は、修正された動き情報を基に、パラメトリックマップPMを再算出してよい。この場合、例えば、レジストレーション処理部164は、UI120を介して指定された関心領域rの動きを動き情報を算出するための境界条件として追加し、動き情報を再算出することで動き情報を再生成してよい。
【0109】
これにより、医用画像処理装置100は、実態に合わない動き情報を修正でき、意味のある動き情報を得ることができる。よって、動き情報に基づく関心領域rの移動精度やパラメトリックマップPMの変形精度を向上できる。
【0110】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0111】
第1の実施形態では、パラメトリックマップ生成部163は、ボリュームデータにおける画素(ボクセルv1(x,y,z))の代わりに、ボクセルv1の周辺に位置する周辺ボクセル(例えばボクセルv1とその周囲の8個のボクセル)のボクセル値を集計した値(例えば平均値、最大値、最小値、中央値、その他の値)を用いてよい。パラメトリックマップ生成部163は、各ボクセル値を集計した値を基に、ボクセルv1におけるパラメトリックマップPMを生成してもよい。
【0112】
第1の実施形態では、パラメトリックマップ生成部163は、ボリュームデータを基に導出されたデータを基に、パラメトリックマップPMを生成してもよい。例えば、パラメトリックマップ生成部163は、ボリュームデータの解像度を小さくし、小さくされた解像度のボリュームデータを基に、パラメトリックマップPMを生成してよい。この場合、パラメトリックマップPMの解像度も、ボリュームデータの解像度に合わせて小さくなってよい。ボリュームデータの解像度の変更は、UI120を介して手動で行われてもよいし、処理部160により自動的に行われてもよい。
【0113】
また、例えば
図10に示したボリュームデータv1,v2の双方の解像度が可変である場合、ボリュームデータv1とボリュームデータv2との解像度が異なってもよい。この場合、ボリュームデータv1に対応するパラメトリックマップPM1の解像度とボリュームデータv2に対応するパラメトリックマップPM2の解像度とが、異なってよい。
【0114】
例えば、パラメトリックマップ生成部163は、ボリュームデータからノイズを除去し、ノイズ除去されたボリュームデータを基に、パラメトリックマップPMを生成してよい。ノイズ除去は、例えば周波数が閾値th3以上の信号成分(高周波数成分)を遮断し、周波数が閾値th3未満の信号成分(高周波数成分以外)を通過させるフィルタ処理により行われてよい。
【0115】
第1の実施形態では、表示制御部166は、ボリュームデータv1,v2を基に生成されたパラメトリックマップPMを、ボリュームデータv3に重畳して表示させてよい。つまり、表示制御部166は、パラメトリックマップPMの生成に関与していないフェーズのボリュームデータに、生成されたパラメトリックマップを重畳表示させてよい。
【0116】
また、処理部160は、時系列データとして取得されたボリュームデータv1,v2,v3の撮像時刻の間の時刻のボリュームデータを補間して生成してよい。パラメトリックマップ生成部163は、補間されたボリュームデータに対応するパラメトリックマップPMを生成し、動き情報に基づいて変形し、可視化してよい。
【0117】
パラメトリックマップPMは、各フェーズ共通で1つ生成される。全てのフェーズのボリュームデータが、パラメトリック値の計算に用いられなくてよい。これにより、医用画像処理装置100は、例えば、ボリュームデータの撮像精度が低い場合に、パラメトリック値の計算の基となるボリュームデータから、撮像精度が低いボリュームデータを除外できる。よって、医用画像処理装置100は、パラメトリックマップPMの生成精度の低下を抑制できる。
【0118】
第1の実施形態では、撮像されたCT画像としてのボリュームデータは、CT装置200から医用画像処理装置100へ送信されることを例示した。この代わりに、ボリュームデータが一旦蓄積されるように、ネットワーク上のサーバ等へ送信され、サーバ等に保管されてもよい。この場合、必要時に医用画像処理装置100のポート110が、ボリュームデータを、有線回線又は無線回線を介してサーバ等から取得してもよいし、任意の記憶媒体(不図示)を介して取得してもよい。
【0119】
第1の実施形態では、撮像されたCT画像としてのボリュームデータは、CT装置200から医用画像処理装置100へポート110を経由して送信されることを例示した。これは、実質的にCT装置200と医用画像処理装置100とを併せて一製品として成立している場合も含まれるものとする。また、医用画像処理装置100がCT装置200のコンソールとして扱われている場合も含む。
【0120】
第1の実施形態では、CT装置200により画像を撮像し、生体内部の情報を含むボリュームデータを生成することを例示したが、他の装置により画像を撮像し、ボリュームデータを生成してもよい。他の装置は、MRI装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、血管造影装置(Angiography装置)、又はその他のモダリティ装置を含む。また、PET装置は、他のモダリティ装置と組み合わせて用いられてもよい。
【0121】
第1の実施形態では、被検体として人体を例示したが、動物の体でもよい。
【0122】
本開示は、第1の実施形態の医用画像処理装置の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は各種記憶媒体を介して医用画像処理装置に供給し、医用画像処理装置内のコンピュータが読み出して実行するプログラムも適用範囲である。
【0123】
以上のように、上記実施形態の医用画像処理装置100では、取得部(例えばポート110)は、同一の被検体を時系列上で少なくとも2回撮像し、第1の医用画像(例えばボリュームデータv1)及び第2の医用画像(例えばボリュームデータv2)を取得する。処理部160は、第1の医用画像上の第1の点(例えば患部12l)の輝度と、第2の医用画像上の、第1の点の組織と同一の組織を示し且つ第1の点と空間座標が異なる第2の点(例えば患部12m)の輝度と、に基づいて、第1の点の輝度の推移を示す第1のパラメトリック値(例えばパラメトリック値12pm)を算出する。処理部160は、第1の医用画像上の第3の点(例えば患部13l)の輝度と、第2の医用画像上の、第3の組織と同一の組織を示し且つ第3の点と空間座標が異なる第4の点(例えば患部13m)の輝度と、に基づいて、第3の点の輝度の推移を示す第2のパラメトリック値(例えばパラメトリック値13pm)を算出してよい。処理部160は、第1の医用画像において、第1の点に第1のパラメトリック値を重畳し、第3の点に第2のパラメトリック値を重畳して、第1の医用画像を可視化してよい。処理部160は、第2の医用画像において、第2の点に第1のパラメトリック値を重畳し、第4の点に第2のパラメトリック値を重畳して、第2の医用画像を可視化してよい。
【0124】
これにより、医用画像処理装置100は、時系列上の複数の医用画像において、時系列で移動前後の同一の組織(例えば患部12l,12m)を関連付けて、この組織の移動に伴う輝度の推移を示すパラメトリック値(例えばパラメトリック値12pm)を算出できる。同一組織の移動前後の関連付けには、動き情報が用いられてよい。医用画像処理装置100は、医用画像にパラメトリック値を重畳して可視化することで、医用画像における被検体の任意の部位における輝度の推移と、被検体の任意の部位の移動を同時に確認でき、つまり任意の部位の流体の動きを観察できる。
【0125】
また、医用画像処理装置100は、時系列の医用画像の変形を抑制することなく、パラメトリック値を医用画像の変形に合わせて導出できる。この場合、医用画像処理装置100は、動き情報に基づいて、複数のフェーズ間の組織の動きに合わせてパラメトリックマップPMのパラメトリック値を位置合わせしてよい。したがって、医用画像処理装置100は、複数のフェーズ間の組織の動きを抑制せずに、組織の動きを容易に確認できる。また、医用画像処理装置100は、医用画像内の動きに合わせて濃淡推移を可視化する位置が異なるので、医用画像内の動きを動的に観察でき、濃淡推移も観察できる。
【0126】
また、医用画像処理装置100は、被検体の動きにより医用画像が変形した場合でも、変形前の医用画像を確認できる。よって、医用画像処理装置100は、変形し得る組織の被検体内での様子を観察し易くできる。
【0127】
このように、医用画像処理装置100は、被検体の動きと被検体内の流体の動きとの双方の観察を支援できる。
【0128】
また、取得部は、被検体が時系列上で撮像された第3の医用画像(例えばボリュームデータv3)を取得してよい。処理部160は、第3の医用画像上の、第1の点と同一の組織を示し且つ第1の点と空間座標が異なる第5の点(例えば患部12n)に、第1のパラメトリック値を重畳して、第3の医用画像を可視化してよい。
【0129】
第1のパラメトリック値は、第1の点の輝度及び第2の点の輝度を基に生成され、第5の点の輝度は考慮されていない。この場合でも、医用画像処理装置100は、パラメトリック値の算出に関与していない医用画像上に、パラメトリック値を重畳できる。パラメトリック値は、時系列上の医用画像における任意の位置の輝度の推移を示すものであり、各医用画像に共通でよい。したがって、医用画像処理装置100は、パラメトリック値が重畳される医用画像を用いて都度パラメトリック値を算出することを抑制でき、パラメトリック値の算出に係る医用画像処理装置100の処理負荷を低減でき、パラメトリック値の利用効率を向上できる。
【0130】
また、処理部160は、第5の点の輝度に基づいて、第1のパラメトリック値を算出してよい。
【0131】
これにより、パラメトリック値の生成に用いる医用画像上の点の数が増え、時系列上でパラメトリック値の生成に関与するフェーズ数も増える。そのため、医用画像処理装置100は、第1のパラメトリック値が示す輝度の推移の再現精度を向上できる。
【0132】
また、医用画像処理装置100は、第1の医用画像における第1の関心領域(例えば関心領域r11)の設置(例えば設定)を受け付ける操作部(例えばUI120)、を備えてよい。処理部160は、操作部により第1の関心領域の設置を受け付けた場合、第2の医用画像において、第1の関心領域に存在する組織と同一の組織を含み且つ第1の関心領域と空間座標が異なる第2の関心領域(例えば関心領域r21)を設置してよい。
【0133】
これにより、医用画像処理装置100は、時系列上の医用画像のいずれか1つにおいてUI120を介して手動で関心領域を設置することで、他の医用画像では関心領域を自動的に設置できる。この場合、医用画像処理装置100は、動き情報を用いてよい。関心領域が自動設定されることで、例えばそれぞれの医用画像において関心領域が可視化され、ユーザは、観察を希望する関心領域の動きを容易に把握できる。
【0134】
また、操作部は、第2の関心領域の座標の変更を受け付けてよい。処理部160は、第2の関心領域の座標が変更された場合、第1の関心領域の座標と変更された第2の関心領域の座標とが同一の組織を示すものとして、第3のパラメトリック値を計算してよい。処理部160は、第2の医用画像において、座標が変更された第2の関心領域に第3のパラメトリック値を重畳して、第2の医用画像を可視化してよい。
【0135】
これにより、医用画像処理装置100は、第2の関心領域がUI120を介して手動で位置変更された場合、位置変更後の第2の関心領域を基にパラメトリック値を再計算することで、医用画像におけるユーザ所望の位置でのパラメトリック値を導出できる。例えば、自動設定された第2の関心領域を手動設定する場合として、時系列上の医用画像における対応する点を関連付ける動き情報の精度が低いことが考えられる。この場合でも、医用画像処理装置100は、第2の関心領域の本来の位置を手動設定することで、対応する点の関連付けを改めて実施でき、パラメトリック値を再計算することで、パラメトリック値が表現する輝度の推移の導出精度を向上できる。
【0136】
第1の医用画像及び第2の医用画像の少なくとも1つは、被検体に造影剤が注入された状態で撮像された医用画像でよい。
【0137】
これにより、時系列に並ぶ医用画像には、被検体の部位に造影剤が流入したり流出したりすることに起因して輝度の変化が発生する。よって、医用画像処理装置100は、造影剤による輝度の推移や造影剤濃度を示すパラメトリック値を算出するので、各医用画像における被検体の動きを可視化しながら、造影剤の動きも可視化でき、非形態の動きも造影剤の動きも実態と似た状態で表現できる。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本開示は、被検体の動きと被検体内の流体の動きとの双方を観察できる医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラム等に有用である。
【符号の説明】
【0139】
100 医用画像処理装置
110 ポート
120 ユーザインタフェース(UI)
130 ディスプレイ
140 プロセッサ
150 メモリ
160 処理部
161 領域抽出部
162 画像生成部
163 パラメトリックマップ生成部
164 レジストレーション処理部
166 表示制御部
200 CT装置
10 患者
11 臓器
12,13 患部
12pm,12pm1,12pm2,12pm3,13pm,13pm1,13pm2,13pm3, パラメトリック値
PM,PMA,PM1,PM2,PM3 パラメトリックマップ
r,r11,r12 関心領域
v1,v2,v3 ボリュームデータ
v1p,v2p,v3p 重畳ボリュームデータ