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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】車両の外装開閉部用の弾性ストッパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 7/00 20060101AFI20220607BHJP
   B62D 25/12 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
F16F7/00 B
B62D25/12 M
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018104253
(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公開番号】P2019210939
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(73)【特許権者】
【識別番号】512304076
【氏名又は名称】富士ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180747
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】勝山 博之
(72)【発明者】
【氏名】八木澤 正規
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-096473(JP,U)
【文献】実開平01-179003(JP,U)
【文献】特開昭61-142276(JP,A)
【文献】実開平01-019780(JP,U)
【文献】特開平08-326819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 7/00
B62D 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外装開閉部とともに用いられ、前記外装開閉部を開く際に車体と接触して挟まれる弾性ストッパであって、
中空の円筒形状を有し、前記外装開閉部の側に取り付けられる基底部と、
中空の円筒形状を有し、前記車体と接触する先端部と、
基底部と先端部との間に位置し、前記基底部および前記先端部より小さい外周を有する中間部と、
前記基底部と前記中間部とを連結する基底側連結部と、
前記先端部と前記中間部とを連結する先端側連結部と、
を有する、
車両の外装開閉部用の弾性ストッパ。
【請求項2】
前記基底部と前記先端部とは、基底側連結部から先端側連結部までの部分が圧縮変形することにより、圧縮方向で重なる、
請求項1記載の、車両の外装開閉部用の弾性ストッパ。
【請求項3】
中空の円筒形状の前記基底部と中空の円筒形状の前記先端部とは、内径及び外径の両方が同径に形成される、
請求項1または2記載の、車両の外装開閉部用の弾性ストッパ。
【請求項4】
前記基底側連結部および前記先端側連結部は、傾斜面を有する、
請求項1から3のいずれか一項記載の、車両の外装開閉部用の弾性ストッパ。
【請求項5】
前記中間部は、前記基底部の内径および前記先端部の内径以下の外径に形成される、
請求項1から4のいずれか一項記載の、車両の外装開閉部用の弾性ストッパ。
【請求項6】
前記中間部は、前記基底部または前記先端部より薄く形成される、
請求項1から5のいずれか一項記載の、車両の外装開閉部用の弾性ストッパ。
【請求項7】
前記中間部は、前記基底部または前記先端部より厚く形成される、
請求項1から5のいずれか一項記載の、車両の外装開閉部用の弾性ストッパ。
【請求項8】
前記基底部、先端部、または中間部には、エア抜き孔が形成される、
請求項1から7のいずれか一項記載の、車両の外装開閉部用の弾性ストッパ。
【請求項9】
前記基底部は、底面を有し、
前記底面から前記先端部とは逆向きに突出して前記外装開閉部の貫通孔に係合される係合部、を有する、
請求項1から8のいずれか一項記載の、車両の外装開閉部用の弾性ストッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の外装開閉部用の弾性ストッパに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車といった車両は、たとえばトランクカバー、ドア、エンジンフードといった外装開閉部を有する。
たとえばトランクカバーは、特許文献1にあるように、車体に対して回動可能に取り付けられたトランクアームにより、車体に取り付けられる。
トランクカバーは、トランクアームを回動させるようにして開くことができる。
トランクアームは、一定以上に回転すると、車体とあたる。
このような事態を避けるために、たとえばトランクアームについての車体と当接する部分には、弾性ストッパが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-326819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トランクカバーは、通常は、車体と強く当たらないように軽く開閉される。
しかしながら、強風にあおられるなどして、トランクカバーが強い力で開いてしまうことがある。この場合、弾性ストッパは、強い力により、それ以上に変形できない程に大きく変形する。
このように弾性ストッパの変形が底付きすると、力が吸収されていないトランクカバーは跳ね返る。跳ね返ったトランクカバーは、跳ね返りを繰り返して振動したり、場合によっては再び閉じたりしてしまう。
【0005】
このような対策として、弾性ストッパの衝撃の吸収能力を上げるように、弾性ストッパを長くしたり、弾性ストッパにより硬質な弾性材料を使用したりすることが考えられる。
しかしながら、弾性ストッパを単に長くすることによりトランクカバーを開く際の力を吸収しようとすると、弾性ストッパが長くなりすぎてたとえば折れ曲がり易くなり、所望の衝撃吸収性能を発揮できなくなる可能性が高まる。
また、弾性ストッパにより硬質な弾性材料を使用した場合、通常の弱い力でトランクカバーを開いた際に、弾性ストッパが衝撃を吸収し難くなる。トランクカバーは、跳ね返りを繰り返して振動してしまう可能性がある。
このように、いずれの対策においても、通常の開閉での使用感や品質を損なう可能性がある。
【0006】
このように、車両のトランクカバーなどの外装開閉部とともに用いられる弾性ストッパでは、通常の開閉での使用感や品質を損なうことなく、強い力で開く場合でもトランクカバーの跳ね返りや車体への接触を抑制することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両の外装開閉部用の弾性ストッパは、車両の外装開閉部とともに用いられ、前記外装開閉部を開く際に車体と接触して挟まれる弾性ストッパであって、中空の円筒形状を有し、前記外装開閉部の側に取り付けられる基底部と、中空の円筒形状を有し、前記車体と接触する先端部と、基底部と先端部との間に位置し、前記基底部および前記先端部より小さい外周を有する中間部と、前記基底部と前記中間部とを連結する基底側連結部と、前記先端部と前記中間部とを連結する先端側連結部と、を有する。
【0008】
好適には、前記基底部と前記先端部とは、基底側連結部から先端側連結部までの部分が圧縮変形することにより、圧縮方向で重なる、とよい。
【0009】
好適には、中空の円筒形状の前記基底部と中空の円筒形状の前記先端部とは、内径及び外径の両方が同径に形成される、とよい。
【0010】
好適には、前記基底側連結部および前記先端側連結部は、傾斜面を有する、とよい。
【0011】
好適には、前記中間部は、前記基底部の内径および前記先端部の内径以下の外径に形成される、とよい。
【0012】
好適には、前記中間部は、前記基底部または前記先端部より薄く形成される、とよい。
【0013】
好適には、前記中間部は、前記基底部または前記先端部より厚く形成される、とよい。
【0014】
好適には、前記基底部、先端部、または中間部には、エア抜き孔が形成される、とよい。
【0015】
好適には、前記基底部は、底面を有し、前記底面から前記先端部とは逆向きに突出して前記外装開閉部の貫通孔に係合される係合部、を有する、とよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明において、車両の外装開閉部とともに用いられ、外装開閉部を開く際に車体と接触して挟まれる弾性ストッパは、前記外装開閉部の側に取り付けられる基底部と前記車体と接触する先端部とが中空の円筒形状を有し、基底部と先端部との間に前記基底部および前記先端部以下の外周の中間部が位置する。そして、前記基底部と前記中間部とは、基底側連結部により連結され、前記先端部と前記中間部とは、先端側連結部により連結される。
よって、外装開閉部を開く際に車体と接触して挟まれる弾性ストッパは、通常の外装開閉部の開動作の際には、まず基底側連結部と先端側連結部とが圧縮変形する。これにより、基底部および先端部よりより小さい外周を有する中間部は、中空の円筒形状を有する基底部の内側と先端部の内側とに入り込む。中間部は、基底部と先端部とを連結するように機能する。中空の円筒形状を有する基底部と先端部とは、基底側連結部と先端側連結部とが圧縮変形した後は、圧縮方向において重なり合う。中空の円筒形状を有する基底部と先端部とは、あたかもその全体で1つの中空の長い円筒形状の弾性ストッパとして機能し得る。しかも、1つの中空の長い円筒形状の弾性ストッパの中央部分は、圧縮変形した基底側連結部および先端側連結部並びに中間部により、内側から補剛される。基底部および先端部は、内側へ向かって変形することができず、基本的に外側に向かって変形するようになる。このため、基底部および先端部の全体による中空の長い円筒形状の弾性ストッパは、上述した通常の力よりも強い力で外装開閉部が開かれる場合において、その強い力を好適に吸収することができる。その結果、本発明では、通常よりも強い力で外装開閉部が開かれる場合であっても、トランクカバーが繰り返し跳ね返ることが起き難くなる。また、強い力で開かれた外装開閉部は、車体に対して接触し難くなる。
【0017】
このように、本発明の弾性ストッパは、相対的に弱い力については一段目の圧縮変形により吸収し、相対的に強い力については二段目の圧縮変形により吸収できる。しかも、弾性ストッパの反力は、三段目において急激に高まるため、外装開閉部についての車体への接触を略確実に防止できる。本発明では、通常の開閉時での使用感を損なうことなく、強い力で開く場合においても外装開閉部の振動や車体への接触を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本実施形態の実施形態に係る自動車の外観図である。
図2図2は、図1のトランクカバーの開閉状態を説明する図である。
図3図3は、本実施形態の第一実施形態に係る弾性ストッパの説明図である。
図4図4は、図3の弾性ストッパが圧縮により変形する状態を説明する図である。
図5図5は、図3の弾性ストッパについての圧縮荷重と変形ストロークとの概略的な特性図である。
図6図6は、本実施形態の第一実施形態に係る弾性ストッパの第一変形例の説明図である。
図7図7は、本実施形態の第一実施形態に係る弾性ストッパの第二変形例の説明図である。
図8図8は、本実施形態の第二実施形態に係る弾性ストッパの説明図である。
図9図9は、本実施形態の第三実施形態に係る弾性ストッパの説明図である。
図10図10は、本実施形態の第四実施形態に係る弾性ストッパの説明図である。
図11図11は、本実施形態の実施形態に係る弾性ストッパのその他の変形例の概略的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0020】
[第一実施形態]
図1は、本実施形態の実施形態に係る自動車1の外観図である。
図1の自動車1は、車体2を有する。自動車1は、車両の一例である。
車体2には、外側に露出した状態で車体2に取り付ける外装開閉部として、乗員が車室に乗降する際に開閉されるドア3、前室を開くためのフード4、トランクルームとしての後室を開くためのトランクカバー5、を有する。
【0021】
図2は、図1のトランクカバー5の開閉状態を説明する図である。
図2のトランクカバー5は、トランクアーム6により、車体2の後室に回動可能に軸支される。
図2に点線で示す閉じた状態においてトランクカバー5のロックを解除すると、図示外のトーションバーの付勢力により、トランクアーム6およびトランクカバー5は、跳ね上がる。これにより、トランクカバー5は、上へ跳ね上がるように回動して開く。
また、開いたトランクカバー5を乗員が押し下げると、トーションバーの付勢力に抗して、トランクアーム6およびトランクカバー5は逆に回動し、トランクカバー5が閉じる。
ところで、トランクアーム6には、弾性ストッパ10が設けられる。
弾性ストッパ10は、トランクアーム6についての回動方向の下流側の面に取り付けられる。
そして、トランクカバー5を開くと、弾性ストッパ10は、後室において車体2の内面に当たる。
これにより、トランクカバー5およびトランクアーム6は、図2の実線の状態からさらに回動しなくなり、車体2に直接的に当たらなくなる。
【0022】
ところで、トランクカバー5は、通常は、車体2と強く当たることがないように、トーションバーの付勢力により、軽い力で開閉される。
しかしながら、車両の外装開閉部であるトランクカバー5は、開閉の際に強風にあおられることがある。
この場合、トランクカバー5は、強い力で開かれることになる。
これにより、弾性ストッパ10は、強い力によってそれ以上に変形できない程に大きく変形する。
弾性ストッパ10の変形が底付きすると、力が十分に吸収されないトランクカバー5は開いた状態から跳ね返る。
跳ね返ったトランクカバー5は、跳ね返りを繰り返して振動したり、場合によっては再び閉じたりしてしまう可能性がある。
このように、自動車1といった車両では、その外装開閉部であるたとえばトランクカバー5が強い力で開かれたとしても、車体2と接触したり、振動したりしないようにすることが求められている。
【0023】
図3は、本実施形態の第一実施形態に係る弾性ストッパ10の説明図である。
図3(A)は、側面図である。図3(B)は、断面図である。
【0024】
図3の弾性ストッパ10は、トランクアーム6に立設するように取り付けられ、トランクカバー5を開く際に車体2と接触して挟まれる。
弾性ストッパ10は、先端部11、先端側連結部12、中間部13、基底側連結部14、基底部15、係合部16、を有する。
弾性ストッパ10は、ゴムなどの弾性材を成型することにより形成される。弾性ストッパ10の基本的な硬さは、使用する弾性材の配合、成型後の気泡の有無、成型後の厚さなどにより調整できる。
【0025】
基底部15は、中空の略円柱形状の弾性ストッパ10においてトランクアーム6に固定される側の部分である。
基底部15は、中空の円筒形状を有する。また、中空の円筒形状の基底部15は、底面を有する。
【0026】
先端部11は、中空の略円柱形状の弾性ストッパ10において車体2と接触する側の部分である。
先端部11は、基底部15と同心および同径の中空の円筒形状を有する。
【0027】
中間部13は、中空の円筒形状を有する。中間部13は、基底部15と先端部11との間に位置する。
中間部13の外周は、基底部15の内周および先端部11の内周以下に形成される。
【0028】
基底側連結部14は、大径の基底部15と小径の中間部13とを連結する。
基底側連結部14は、図3の上側を絞り込むような傾斜面により、基底部15と中間部13と連結する。
【0029】
先端側連結部12は、大径の先端部11と小径の中間部13とを連結する。
先端側連結部12は、図3の下側を絞り込むような傾斜面により、先端部11と中間部13と連結する。
【0030】
そして、これらの先端部11、先端側連結部12、中間部13、基底側連結部14、および基底部15は、同心に積層したように一体的に形成される。
これにより、弾性ストッパ10は、その全体が中空の略円柱形状に形成される。
中間部13は、基底部15と先端部11との間で、それらよりも内側へくびれた部分となる。
また、先端部11、先端側連結部12、中間部13、基底側連結部14、および基底部15のそれぞれの厚さは、略均一である。
【0031】
係合部16は、基底部15の底面から、先端部11とは逆向きに突出する。
係合部16は、トランクアーム6の貫通孔に挿入されて係合する。
これにより、弾性ストッパ10は、トランクアーム6に立設される。
【0032】
図4は、図3の弾性ストッパ10が圧縮により変形する状態を説明する図である。
図4(A)は、弾性ストッパ10が車体2に接触し始めた状態である。この状態では、弾性ストッパ10は圧縮変形していない。弾性ストッパ10は、成型によるオリジナルの形状および高さにある。
図4(B)に示すように、弾性ストッパ10に対して圧縮する荷重が作用し始めると、弾性ストッパ10では、まず、主に先端側連結部12および基底側連結部14が変形し始める。
さらに強い圧縮荷重が作用すると、図4(C)に示すように、弾性ストッパ10は、先端側連結部12と基底側連結部14とが接触するように変形する。
この際、たとえば先端側連結部12の長さと基底側連結部14の長さとの和が中間部13の長さより短い場合、中間部13も、先端側連結部12および基底側連結部14の変形にしたがうように湾曲する。
また、中間部13は、中空の円筒形状を有する基底部15の内側と先端部11の内側とに入り込み、基底部15と先端部11とを連結するように機能し得る。
このように先端側連結部12と基底側連結部14とが接触するように基底側連結部14から先端側連結部12までの部分が圧縮変形すると、基底部15と先端部11とは、圧縮方向で重なるように積載されて互いに連結する。
さらに強い圧縮荷重が作用すると、図4(D)に示すように、弾性ストッパ10において積載された基底部15と先端部11とが変形を開始する。
この際、基底側連結部14から先端側連結部12までが既に圧縮変形しているため、基底部15および先端部11は、内側へ向かって変形することができず、基本的に外側に向かって変形する。
【0033】
図5は、図3の弾性ストッパ10についての圧縮荷重と変形ストロークとの概略的な特性図である。
図5の横軸に示す変形ストロークは、弾性ストッパ10の全体での変形量を示すものである。図5の右側へいくほど、弾性ストッパ10の圧縮変形量が大きくなる。
図5の縦軸に示す圧縮荷重は、弾性ストッパ10の全体に作用する力を示すものである。図5の上側へいくほど、弾性ストッパ10に作用する力が大きくなる。
【0034】
図5において実線で示す折線は、本実施形態の弾性ストッパ10の荷重応答曲線である。
そして、図5の第一段は、図4(B)の変形状態に対応する。本実施形態の弾性ストッパ10は、相対的に小さい加重(力)により変形が進む。
第二段は、図4(D)の変形状態に対応する。弾性ストッパ10は、相対的に大きな加重(力)により変形が進む。
第三段は、図4(D)の変形を終えた後の状態に対応する。弾性ストッパ10は、その形状の変形によりエネルギーを吸収し難いが、それ以上の変形をしないように機能して急激に高まる反力を発揮しえる。
トランクカバー5またはトランクアーム6は、車体2に当たるようにオーバランし難くなる。
このように、本実施形態の弾性ストッパ10は、相対的に小さい加重(力)により変形可能な第一段と、相対的に大きな加重(力)により変形可能な第二段とを含む荷重応答特性を示す。
【0035】
図5には、本実施形態の弾性ストッパ10の荷重応答曲線の他に、第一比較例の弾性ストッパ10の一点鎖線の荷重応答曲線と、第二比較例の弾性ストッパ10の破線の荷重応答曲線と、が図示されている。
第一比較例は、通常のトランクカバー5の開閉に対応する、中空の円筒形状の弾性ストッパ10である。第一比較例の荷重応答曲線は、本実施形態での荷重応答曲線についての第一段に近い特性を有する。
そして、第一比較例では、相対的に大きな加重(力)が作用すると、その衝撃を吸収することができず、この場合、強い力で開かれたトランクカバー5は、跳ね返ることになる。
第二比較例の弾性ストッパ10は、第一比較例よりも長尺にしたものである。この場合、第二比較例の弾性ストッパ10は、第二比較例の荷重応答曲線に示すように、本実施形態よりも大きな変形ができる。
これにより、第二比較例の弾性ストッパ10では、通常のトランクカバー5の開閉の際だけでなく、比較的強い力で開閉した場合においても、その衝撃を吸収できることが期待できる。
しかしながら、第二比較例のように長尺にしてしまうと、弾性ストッパ10は、トランクアーム6と車体2との間に常に安定的に挟まれ悪くなる。弾性ストッパ10は変形の途中において折れ曲がることもある。そして、弾性ストッパ10が折れ曲がってしまうと、それ以上の衝撃吸収ができず、トランクカバー5またはトランクアーム6が車体2に当たってしまうことになる。
【0036】
以上のように、本実施形態において、車両のトランクカバー5とともに用いられ、トランクカバー5を開く際に車体2と接触して挟まれる弾性ストッパ10は、トランクカバー5の側に取り付けられる基底部15と車体2と接触する先端部11とが同径の中空の円筒形状を有する。また、基底部15と先端部11との間には、基底部15および先端部11より小さい外周の中間部13が位置する。そして、基底部15と中間部13とは、基底側連結部14により連結され、先端部11と中間部13とは、先端側連結部12により連結される。
よって、トランクカバー5を開く際に車体2と接触して挟まれる弾性ストッパ10は、通常のトランクカバー5の開動作の際には、まず基底側連結部14と先端側連結部12とが圧縮変形する。これにより、基底部15および先端部11よりより小さい外周を有する中間部13は、中空の円筒形状を有する基底部15の内側と先端部11の内側とに入り込む。中間部13は、基底部15と先端部11とを連結するように機能する。中空の円筒形状を有する基底部15と先端部11とは、基底側連結部14と先端側連結部12とが圧縮変形した後は、互いに連結されるように圧縮方向において重なり合う。中空の円筒形状を有する基底部15と先端部11とは、あたかもその全体で1つの中空の長い円筒形状の弾性ストッパ10として機能し得る。しかも、1つの中空の長い円筒形状の弾性ストッパ10の中間部分は、圧縮変形した基底側連結部14および先端側連結部12並びに中間部13により、内側から補剛される。基底部15および先端部11は、内側へ向かって変形することができず、基本的に外側に向かって変形するようになる。
基底部15および先端部11の全体による中空の長い円筒形状の弾性ストッパ10は、たとえば基底側連結部14や先端側連結部12などと同じ素材で同じ厚さに形成されているとしても、基底側連結部14や先端側連結部12が変形する場合と比べて格段に強い力により変形する剛性を持ち得る。また、基底部15および先端部11の全体による中空の長い円筒形状の弾性ストッパ10は、中間部分が補剛されているので、長さがあるとしても二段に分かれて圧縮変形し、中折れを起こし難い。
このため、基底部15および先端部11の全体による中空の長い円筒形状の弾性ストッパ10は、上述した通常の力よりも強い力でトランクカバー5が開かれる場合において、その強い力を好適に吸収することができる。そして、そのような強い力を吸収した後に、中空の長い円筒形状の弾性ストッパ10の圧縮特性は、中実のゴム材と同じ傾向の特性になる。
【0037】
その結果、本実施形態の弾性ストッパ10は、通常よりも強い力でトランクカバー5が開かれる場合であっても、トランクカバー5が繰り返し跳ね返ることが起き難くなる。また、強い力で開かれたトランクカバー5は、車体2に対して接触し難くなる。
このように、本実施形態の弾性ストッパ10は、相対的に弱い力については一段目の圧縮変形により吸収し、相対的に強い力については二段目の圧縮変形により吸収できる。
しかも、弾性ストッパ10の反力は、三段目において急激に高まるため、トランクカバー5またはトランクアーム6についての車体2への接触を略確実に防止できる。
その結果、本実施形態では、通常の開閉時での使用感を損なうことなく、強い力で開く場合においてもトランクカバー5の振動や車体2への接触を抑制できる。
【0038】
また、本実施形態のように、弾性ストッパ10はその全体が中空の略円筒形状に形成されているので、円柱形状または円筒形状の他の弾性ストッパ10と同様の製造工程により、容易に製造できる。しかも、本実施形態のように、弾性ストッパ10の全体を同一のゴム材により略均一な厚さに形成しても、上述した二段階の圧縮変形の特性を得ることができる。本実施形態では、成型の容易性を損なうことなく、二段階の圧縮変形の特性を得ることができる。
また、本実施形態のように、二段目の圧縮変形のための力を、一段目の圧縮変形のための力より格段に大きくすることで、これらと同等の衝撃吸収性能を一段目の圧縮変形により得ようとする場合よりも、弾性ストッパ10の全長を短くすることができる。本実施形態では、弾性ストッパ10の全長を抑えて、圧縮変形の最中に弾性ストッパ10が折れ曲がり難くなる。
【0039】
また、本実施形態では、基底側連結部14および先端側連結部12は、傾斜面を有する。よって、弾性ストッパ10に荷重かけた場合、中間部13より基底側連結部14および先端側連結部12が変形し易くなる。
また、本実施形態において、中間部13は、基底部15の内径および先端部11の内径以下の外径に形成される。その結果、中間部13は、基底部15および先端部11の内側へ入るように変形し易くなる。
【0040】
また、本実施形態には、基底部15の底面に係合部16が突出して設けられる。よって、弾性ストッパ10の変形に影響を与えないように、係合部16を設けることができる。その結果、本実施形態には、二段階の特性が得られるように、弾性ストッパ10をトランクアーム6に取り付けることができる。
【0041】
なお、本実施形態では、基底側連結部14および先端側連結部12は、傾斜面を有する。この他にもたとえば、基底側連結部14および先端側連結部12は、図3において水平となるように平らな面を有してもよい。ただし、中間部13の変形を抑制しつつ、第一段の特性を得るためには、基底側連結部14および先端側連結部12は、傾斜面とするのが望ましい。
【0042】
また、本実施形態では、基底部15と先端部11とは、同径に形成されている。この他にもたとえば、基底部15と先端部11とは、異径に形成されていてもよい。
図6は、本実施形態の第一実施形態に係る弾性ストッパ10の第一変形例の説明図である。図6において、弾性ストッパ10は、断面図で表されている。
図6において、基底部15の外径は、先端部11の外径より大径に形成されている。ただし、基底部15の内径は、先端部11の外径よりも小径に維持されている。
いずれにしても、中間部13を含む基底側連結部14から先端側連結部12までの範囲が圧縮変形した状態で、基底部15の上に先端部11が重なるように載れば第二段の特性が得られると考えられる
【0043】
図7は、本実施形態の第一実施形態に係る弾性ストッパ10の第二変形例の説明図である。図7において、弾性ストッパ10は、断面図で表されている。
図7において、中間部13の外径は、基底部15の内径および先端部11の内径より大径に形成されている。ただし、中間部13の内径は、基底部15の内径および先端部11の内径より小径に維持されている。
この場合でも、中間部13は、基底部15および先端部11の内側へ入るように変形することが可能である。図7の弾性ストッパ10では、二段階の特性を得られると考えられる。
【0044】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る弾性ストッパ10について説明する。以下の説明では、主に第一実施形態との相違点について説明し、第一実施形態と共通性を有する構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0045】
図8は、本実施形態の第二実施形態に係る弾性ストッパ10の説明図である。図8において、弾性ストッパ10は、断面図で表されている。
図8において、中間部13は、基底部15または先端部11より薄く形成されている。
【0046】
この場合、中間部13を含む基底側連結部14から先端側連結部12までの範囲の部分は、第一実施形態の場合より小さい力により圧縮変形するようになる。第一段での変形させる力は、第一実施形態の場合より小さくなる。
また、中間部13が基底部15または先端部11と比べて相対的に薄く形成されることにより、中間部13が基底部15と先端部11との接触を阻害し難くなる。基底部15と先端部11との接触を確実にして、第二段において所望の特性が確実に得られるようにできる。
また、第一段での変形させる力と、第二段での変形させる力との差を大きくすることができる。
【0047】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る弾性ストッパ10について説明する。以下の説明では、主に第一実施形態との相違点について説明し、第一実施形態と共通性を有する構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0048】
図9は、本実施形態の第三実施形態に係る弾性ストッパ10の説明図である。図9において、弾性ストッパ10は、断面図で表されている。
図9において、中間部13は、基底部15または先端部11より厚く形成されている。
【0049】
この場合、中間部13を含む基底側連結部14から先端側連結部12までの範囲の部分は、第一実施形態の場合より大きい力により圧縮変形するようになる。第一段での変形させる力は、第一実施形態の場合より大きくなる。
そして、第一段での変形させる力と、第二段での変形させる力との差を小さくすることができる。
このように第二実施形態および第三実施形態に示すように、中間部13の厚さを調整することにより、第一段での変形させる力と、第二段での変形させる力との差を変更することができる。
【0050】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態に係る弾性ストッパ10について説明する。以下の説明では、主に第一実施形態との相違点について説明し、第一実施形態と共通性を有する構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0051】
図10は、本実施形態の第四実施形態に係る弾性ストッパ10の説明図である。図10において、弾性ストッパ10は、断面図で表されている。
図10において、基底部15の底面の中央から、係合部16の中央にかけて、通気孔17が形成される。
【0052】
これにより、弾性ストッパ10が圧縮変形される際に、弾性ストッパ10の内部に存在する空気を、通気孔17から外へ排気することができる。
弾性ストッパ10の内部の空気が、弾性ストッパ10の変形を阻害し難くなる。内部の空気が高圧となって、弾性ストッパ10が所望のものとは異なる不安定な形状に変形し難くなる。
弾性ストッパ10は、その形状に基づく所望の形状に変形し易くなる。
なお、通気孔17は、弾性ストッパ10が取り付けられたトランクアーム6に電着塗装をする際に、弾性ストッパ10の中空内部に入った塗装液などの水抜き孔として利用することもできる。
【0053】
なお、通気孔17は、基底部15の底面ではなく、基底部15の側面に形成されてもよい。また、通気孔17は、基底部15の側面ではなく、先端部11の側面や中間部13の側面に形成してもよい。これらの側面部分に通気孔17を形成した場合、弾性ストッパ10が圧縮変形する際に内部の空気を通気孔17から抜くことができる。よって、本実施形態と同様の効果を期待できる。
【0054】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるのもではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0055】
図11は、本実施形態の実施形態に係る弾性ストッパ10のその他の変形例の概略的な説明図である。図11において、弾性ストッパ10は、模式的な断面図で表されている。
【0056】
図11(A)の弾性ストッパ10において、先端部11は、先端に向かって小径となるテーパ形状を有する。
【0057】
図11(B)の弾性ストッパ10において、基底部15は底面を持たない。この場合、弾性ストッパ10は係合部16を持たないので、トランクアーム6には、たとえば弾性ストッパ10の基底部15を挟む円環状の凸部を形成すればよい。
ただし、基底部15の下縁部分は、円環状の凸部に挟まれるため、変形し難くなる。
よって、弾性ストッパ10として上記実施形態と同等の特性を得るためには、弾性ストッパ10は、少なくとも円環状の凸部の高さの分だけ長くする必要がある。
また、基底部15は中間部13と底面とに挟まれていることにより外向きに安定的に変形し易くなるが、そのような変形の安定性が得られなく可能性がある。
【符号の説明】
【0058】
1…自動車(車両)、2…車体、5…トランクカバー、6…トランクアーム、10…弾性ストッパ、11…先端部、12…先端側連結部、13…中間部、14…基底側連結部、15…基底部、16…係合部、17…通気孔
図1
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図11