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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】画像処理装置および車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/60 20170101AFI20220607BHJP
   B60Q 1/14 20060101ALI20220607BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20220607BHJP
【FI】
G06T7/60 150S
B60Q1/14 A
G06T7/00 650Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018115522
(22)【出願日】2018-06-18
(65)【公開番号】P2019219816
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】小倉 亮太
(72)【発明者】
【氏名】眞野 光治
【審査官】真木 健彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-132053(JP,A)
【文献】特開平7-141588(JP,A)
【文献】特開2014-41460(JP,A)
【文献】特開平3-260814(JP,A)
【文献】特開2013-257876(JP,A)
【文献】田岡 武司,自動車用白線認識アルゴリズムの一実現,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.106 No.318,日本,社団法人電子情報通信学会,2006年10月19日,SIP2006-94, ICD2006-120, IE2006-72,P.63-68
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G06T 1/00
G06V 10/00
G06V 20/56
B60R 1/00
G08G 1/00
B60Q 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方を撮像した撮像画像から車道外側線を内包する領域を定め、該領域の形状に基づいて道路形状を推定する道路形状推定部と、
前記領域の対角線を延長した直線と、撮像画像における水平線との交点に基づいて遠方基準点を算出する基準点算出部と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記道路形状推定部は、前記領域として矩形領域を定め、該矩形領域のアスペクト比と相関のある情報に基づいて道路形状を推定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記遠方基準点を用いて車両前方の状況を判別する判別部を更に備え、
前記判別部は、前記遠方基準点から斜め下方に移動する光点を対向車であると判別することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記遠方基準点を用いて車両前方の状況を判別する判別部を更に備え、
前記判別部は、前記遠方基準点と自車両との間に留まる光点を先行車であると判別することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の画像処理装置と、
車両前方を照射する前照灯ユニットと、
前記画像処理装置で判別された光点の属性に応じて前記前照灯ユニットの配光を制御する配光制御部と、
備えることを特徴とする車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などに用いられる画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に搭載されたカメラやセンサにより取得された周囲の情報に基づいて周囲の環境や物体を判別し、その環境や物体に応じた車両制御を行うことが種々試みられている。車両制御としては、制動制御、駆動制御、操作制御、配光制御等の種々の制御が挙げられる。
【0003】
例えば、車両前方の状況に応じて配光制御する場合、車両が走行する環境の一つである道路形状がわからないと正確な配光制御を行うことは難しい。そのため、道路形状そのものを推定する手法は様々なものが考案されている。例えば、取得した画像から検出された一方の白線に基づいて、他方の白線を高精度に推定することのできる仕切線認識装置が考案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-44836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
配光制御において、取得した画像から自車両近傍の光点(車両や街灯等の発光体や、デリニエータや標識等の反射体)の属性を判別することは比較的容易である。しかしながら、取得した画像では遠方の光点が暗くなりがちであり、また、光点同士が近づくことが多いため、遠方の光点の属性を判別することは難しい。そのため、高精度なカメラや画像処理能力の高い演算装置を用いれば、遠方の光点の属性を判別することは比較的容易となるが、配光制御システム全体のコストを上昇させることになる。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両前方の状況を比較的簡易な方法で判別する新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の画像処理装置は、車両前方を撮像した撮像画像から車道外側線を内包する領域を定め、該領域の形状に基づいて道路形状を推定する道路形状推定部と、領域の対角線を延長した直線と、撮像画像における水平線との交点に基づいて遠方基準点を算出する基準点算出部と、を備える。
【0008】
この態様によると、道路形状を推定した領域の形状を利用して、遠方の基準点、例えば、消失点を算出できる。そのため、車両前方を撮像した撮像画像から車両前方の状況を比較的簡易な方法で判別できる。
【0009】
道路形状推定部は、領域として矩形領域を定め、該矩形領域のアスペクト比と相関のある情報に基づいて道路形状を推定してもよい。これにより、車道外側線を内包する矩形領域の形状に基づいて道路形状を推定できる。
【0010】
遠方基準点を用いて車両前方の状況を判別する判別部を更に備えてもよい。判別部は、遠方基準点から斜め下方に移動する光点を対向車であると判別してもよい。これにより、車両前方の対向車を簡易に判別できる。
【0011】
遠方基準点を用いて車両前方の状況を判別する判別部を更に備えてもよい。判別部は、遠方基準点と自車両との間に留まる光点を先行車であると判別してもよい。これにより、車両前方の先行車を簡易に判別できる。
【0012】
画像処理装置と、車両前方を照射する前照灯ユニットと、画像処理装置で判別された光点の属性に応じて前照灯ユニットの配光を制御する配光制御部と、備えてもよい。これにより、車両前方の対向車や先行車に対して適切な配光を実現できる。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車両前方の状況を比較的簡易な方法で判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施の形態に係る車両用灯具を適用した車両の外観を示す概略図である。
図2】本実施の形態に係る車両用灯具の概略構成を示すブロック図である。
図3】本実施の形態に係る車両前方の状況判別処理を含む配光制御方法を示すフローチャートである。
図4図3に示すステップS10の詳細を示すフローチャートである。
図5図5(a)は、車両前方の道路形状が直線の場合の画像データを模式的に示す図、図5(b)は、車両前方の道路形状が左カーブの場合の画像データを模式的に示す図、図5(c)は、車両前方の道路形状が右カーブの場合の画像データを模式的に示す図である。
図6】前方監視カメラから見た夜間の左カーブの道路において、多数の発光物体が存在する状況を示す模式図である。
図7図7(a)は、車両前方の道路形状が勾配のない直線の場合の画像データを模式的に示す図、図7(b)は、車両前方の道路形状が上り坂の直線の場合の画像データを模式的に示す図、図7(c)は、車両前方の道路形状が下り坂の場合の画像データを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述される全ての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0017】
(車両用灯具)
図1は、本実施の形態に係る車両用灯具を適用した車両の外観を示す概略図である。図1に示すように、本実施の形態に係る車両10は、車両前方を照射する前照灯ユニット12と、前照灯ユニット12による光の照射を制御する制御システム14と、車両10の走行状況を示す情報を検出してその検出信号を制御システム14へ出力する各種センサと、車両前方を監視する前方監視カメラ16と、GPS衛星からの軌道信号を受信して制御システム14へ出力するアンテナ18と、を備える。
【0018】
各種センサとしては、例えば、ステアリングホイール20の操舵角を検出するステアリングセンサ22と、車両10の車速を検出する車速センサ24と、自車両の周囲の照度を検出する照度センサ26とが設けられており、これらのセンサ22、24、26が前述の制御システム14に接続されている。
【0019】
前方監視カメラ16を、前照灯ユニット(ヘッドライト)の配光制御として用いるためには、夜間において車両前方の物体の識別が可能なことが要求される。しかしながら、車両前方に存在する物体は様々であり、対向車や先行車のようにグレアを考慮した配光制御が必要な物体や、道路照明やデリニエータ(視線誘導標識)のようにグレアを考慮せずに自車両にとって最適な配光制御を行えばよい物体もある。
【0020】
このような前照灯ユニットの配光制御を実現するためには、自車両の前方を走行する前走車(対向車や先行車)や道路照明のような発光体や、デリニエータのような光反射体を検知するカメラを用いることが好ましい。加えて、物体として検知した発光体や光反射体の属性や道路形状といった車両前方の状況を判別する機能があることがより好ましい。ここで、属性とは、例えば、前方の発光体や光反射体が前走車であるか道路附属施設等であるかを区別するものである。より詳細には、発光体等が車両であれば先行車であるか対向車であるか、発光体等が道路附属施設等であれば道路照明であるか、デリニエータであるか、その他の発光施設(例えば、店舗照明、広告等)であるか、交通信号であるかを区別するものである。道路形状については、直進か、右カーブか、左カーブか、上り坂か、下り坂かを判別するものである。また、カーブの曲率や坂道の勾配も何段階かの範囲で判別可能である。
【0021】
本実施の形態に適用できる前照灯ユニットとしては、照射する光の配光を前方に存在する物体の属性に応じて変化させることができる構成であれば特に限定されない。例えば、ハロゲンランプやガスディスチャージヘッドランプ、半導体発光素子(LED、LD、EL)を用いたヘッドランプを採用することができる。本実施の形態では、前走車にグレアを与えないように、配光パターンの一部の領域を非照射にできる構成の前照灯ユニットを例として説明する。なお、配光パターンの一部の領域を非照射にできる構成とは、シェードを駆動して光源の光を一部遮光する構成や、複数の発光部の一部を非点灯とする構成が含まれる。
【0022】
前照灯ユニット12は、左右一対の前照灯ユニット12R、12Lを有する。前照灯ユニット12R、12Lは、内部構造が左右対称であるほかは互いに同じ構成であり、右側のランプハウジング内にロービーム用灯具ユニット28Rおよびハイビーム用灯具ユニット30Rが、左側のランプハウジング内にロービーム用灯具ユニット28Lおよびハイビーム用灯具ユニット30Lがそれぞれ配置されている。
【0023】
制御システム14は、入力された各種センサの各出力に基づいて車両の前部の左右にそれぞれ装備された前照灯ユニット12R、12L、すなわち配光パターンの一部の領域を非照射とすることでその配光特性を変化することが可能な前照灯ユニット12を制御する。
【0024】
次に、本実施の形態に係る車両用灯具について説明する。図2は、本実施の形態に係る車両用灯具110の概略構成を示すブロック図である。車両用灯具110は、前照灯ユニット12R、12Lと、前照灯ユニット12R、12Lによる光の照射を制御する制御システム14とを備える。そして、車両用灯具110は、制御システム14において車両前方に存在する物体の属性や道路形状といった車両前方の状況を判別し、その状況に基づいて配光制御条件を決定し、決定された配光制御条件に基づいて前照灯ユニット12R、12Lによる光の照射を制御する。
【0025】
そこで、本実施の形態に係る制御システム14には、ドライバの視対象を含む車両前方の撮像画像を取得するための前方監視カメラ16が接続されている。また、車両の走行状態を判断する際に参照される、操舵情報や車速を検出するためのステアリングセンサ22や車速センサ24、照度センサ26が接続されている。
【0026】
(制御システム)
制御システム14は、画像処理ECU32と、配光制御ECU34と、GPSナビゲーションECU36とを備える。各種ECUおよび各種車載センサは、車内LANバスにより接続されデータの送受信が可能になっている。画像処理ECU32は、前方監視カメラ16により取得された撮像画像のデータや各種車載センサに基づいて前方に存在する物体の属性を判別する。配光制御ECU34は、画像処理ECU32および各種車載センサの情報に基づいて、車両が置かれている走行環境に適した配光制御条件を決定し、その制御信号を前照灯ユニット12R,12Lに出力する。
【0027】
前照灯ユニット12R,12Lは、配光制御ECU34から出力された制御信号が光学部品の駆動装置や光源の点灯制御回路に入力されることで、配光が制御される。前方監視カメラ16は、CCDやCMOSなどの画像センサを備えた単眼ズームカメラであり、その画像データから運転に必要な道路線形情報、道路附属施設、対向車・先行車の存在状況や位置の情報などを取得する。
【0028】
(車両前方の状況判別処理)
夜間の画像の中から、車両の光点(ヘッドランプやテールランプライト)やそれ以外の光点(街路灯、反射板、広告表示、店舗照明など)を瞬時に判別するのは難しい。特に、遠方にある車両の光点は、輝度が暗く判別がより難しい。また、遠方における光点の未検知を低減するため、遠方検知を行う所定の遠方領域を検出し、その遠方領域に適した光点判別処理を別途行うことも一案である。そのためには、遠方領域を精度良く検出する必要がある。しかしながら、遠方領域の位置は道路形状(カーブか否か、坂道か否か)によって変わる。
【0029】
そこで、本願発明者らは、道路形状の推定および道路形状から遠方領域の基準点を算出する新たな画像処理装置を考案した。この画像処理装置は、以下に示す方法で遠方基準点および遠方基準点を含む遠方領域を算出するものであり、演算量が比較的少ない画像処理が可能である。本実施の形態に係る画像処理装置は、このような簡易な画像処理を用いて、光点の種別や道路形状といった車両前方の状況を判別することができる。
【0030】
はじめに、本実施の形態に係る画像処理ECUにおける車両前方の状況判別処理の概略について説明する。本実施の形態に係る車両前方の状況判別処理は、車両前方を撮像した撮像画像に含まれる車道外側線を内包する領域の形状に基づいて遠方基準点を算出し、その遠方基準点を用いて車両前方の状況を判別するものである。ここで、車道外側線とは、走行車線と歩道との境界を示すいわゆる白線であり、車両が左側通行の場合、走行車線の左側にある白線をいう。
【0031】
図3は、本実施の形態に係る車両前方の状況判別処理を含む配光制御方法を示すフローチャートである。図4は、図3に示すステップS10の詳細を示すフローチャートである。
【0032】
(道路形状の推定)
車両前方の状況の判別は、主に図2に示す画像処理ECU32で実行され、配光制御は、主に配光制御ECU34で実行される。本実施の形態に係る画像処理ECU32は、撮影した画像情報に含まれる車道外側線の形状や位置等の特徴情報に基づいて、その光点に対応する道路形状を推定する(図3のS10)。
【0033】
ステップS10に示す道路形状の推定は、例えば、図4に示す工程で行われる。はじめに、画像情報取得部38は、前方監視カメラ16で車両前方を撮像した撮像画像のデータを取得し(S100)、画像データを二値化する(S102)。図5(a)は、車両前方の道路形状が直線の場合の画像データを模式的に示す図、図5(b)は、車両前方の道路形状が左カーブの場合の画像データを模式的に示す図、図5(c)は、車両前方の道路形状が右カーブの場合の画像データを模式的に示す図である。以下の説明では、道路形状が直前の場合について説明する。
【0034】
次に、白線検知部40は、二値化された画像データの中から自車両の走行車線の左側に描画されている白線(以下、適宜「左白線」と称する。)があるか否かを検知する(S104)。この際、左白線を誤検知しないようにするために、左白線の大きさ、位置、幅等の情報を検知条件に使用する。左白線が検知されなかった場合(S104のNo)、処理を一端終了し、再度撮像画像データを取得する。
【0035】
一方、例えば、図5(a)に示す画像データにおいて、左白線L1が検知された場合(S104のYes)、道路形状推定部42は、左白線の一部を内包する領域を定め(S106)、その領域の形状に基づいて道路形状を推定する(S108)。具体的には、左白線L1の一部を含む矩形領域R1を定め、縦Y/横Xで算出されるアスペクト比A(矩形領域R1の形状)に基づいて道路形状を推定する。例えば、道路形状推定部42は、アスペクト比Aが0.8以上1.2以下の場合、道路形状が直線であると推定する。
【0036】
また、道路形状推定部42は、図5(b)に示す画像データにおいて、左白線L2の一部を含む矩形領域R2を定め、縦Y/横Xで算出されるアスペクト比Aに基づいて道路形状を推定する。例えば、道路形状推定部42は、アスペクト比Aが1.2より大きい場合、道路形状が左カーブであると推定する。
【0037】
また、道路形状推定部42は、図5(c)に示す画像データにおいて、左白線L3の一部を含む矩形領域R3を定め、縦Y/横Xで算出されるアスペクト比Aに基づいて道路形状を推定する。例えば、道路形状推定部42は、アスペクト比Aが0.8より小さい場合、道路形状が右カーブであると推定する。
【0038】
このように、図4に示すフローチャートにより道路形状が推定された後、図3に示すステップS12が実行される。基準点算出部44は、道路形状が直線の場合、図5(a)で示した矩形領域R1の対角線を延長した直線L1’(左白線L1とほぼ一致)と、撮像画像P1における水平線H1との交点C1に基づいて遠方基準点(消失点V1)を算出する(図4のS12)。本実施の形態に係る水平線は、例えば、地面と空との境界であり、画像データにおいて濃淡や色が急激に変化する境界である。
【0039】
また、基準点算出部44は、道路形状が左カーブの場合、図5(b)で示した矩形領域R2の対角線を延長した直線L2’と、撮像画像P2における水平線H2との交点C2に基づいて遠方基準点を算出する。なお、直線L2’は、矩形領域R2の二つの対角線のうち、左白線L2と交差する方の対角線である。交点C2は、図5(b)に示す道路形状における消失点V2よりも画像中心側にずれているので、例えばカーブの曲率によって変化するアスペクト比Aを考慮して交点C2を補正し、消失点V2を算出してもよい。
【0040】
また、基準点算出部44は、道路形状が左カーブの場合、図5(c)で示した矩形領域R3の対角線を延長した直線L3’と、撮像画像P3における水平線H3との交点C3に基づいて遠方基準点を算出する。交点C3は、図5(c)に示す道路形状における消失点V3よりも画像中心側にずれているので、例えばカーブの曲率によって変化するアスペクト比Aを考慮して交点C3を補正して消失点V3を算出してもよい。
【0041】
このように、本実施の形態に係る画像処理ECU32は、道路形状を推定した領域の形状を利用して、遠方の基準点、例えば、消失点を算出できる。そのため、車両前方を撮像した撮像画像から車両前方の状況を比較的簡易な方法で判別できる。
【0042】
画像処理ECU32は、基準点算出部44により遠方基準点(または消失点)が算出されると、判別部48が遠方基準点を用いて車両前方の状況を判別する(図3のS14)。例えば、遠方基準点がほぼ画像の中央領域、画像の左領域、画像の右領域にある場合、自車両が走行する道路は直進、左カーブ、右カーブであると判別される。
【0043】
次に、自車両の前方を走行する先行車や対向車の判別について説明する。図6は、前方監視カメラから見た夜間の左カーブの道路において、多数の発光物体が存在する状況を示す模式図である。
【0044】
自車両が走行すると、図6に示す対向車50を示す光点L10やL11は、遠方基準点(消失点V2)から斜め下方に移動する。そこで、判別部48は、遠方基準点から斜め下方に移動する光点を対向車であると判別する。これにより、車両前方の対向車50を簡易に判別できる。その際、画像処理ECU32は、光点(ヘッドランプ)の輝度や面積、色等の条件を加味して対向車の判別を行ってもよい。
【0045】
また、自車両が走行すると、図6に示す先行車52を示す交点L12やL13は、遠方基準点と自車両との間で近づいたり遠ざかったりする。そこで、判別部48は、遠方基準点と自車両との間に留まる光点を先行車52であると判別する。これにより、車両前方の先行車を簡易に判別できる。その際、画像処理ECU32は、光点(テールランプ)の輝度や面積、色等の条件を加味して先行車の判別を行ってもよい。
【0046】
(配光制御)
本実施の形態に係る車両用灯具110は、画像処理ECU32と、画像処理ECU32で判別された光点の属性に応じて前照灯ユニット12の配光を制御する配光制御ECU34と、備えている。これにより、車両前方の対向車や先行車に対して適切な配光を実現できる。
【0047】
具体的には、画像処理ECU32は、撮影した画像情報に含まれる複数の光点の位置や動き、大きさ、明るさ、軌跡等の特徴情報に基づいて、その光点に対応する物体の属性を判別する。配光制御ECU34は、対向車や先行車のようにグレアを考慮した配光制御が必要な物体であると画像処理ECU32が判別した光点を前照灯ユニット12の配光制御の対象とし、グレアを考慮した配光制御が不要な、前走車以外の物体(道路照明、デリニエータ、店舗照明、広告といった道路附属発光体)であると画像処理ECU32が判別した光点を前照灯ユニット12の配光制御の対象から除外する(図3のS16)。
【0048】
つまり、配光制御ECU34は、グレアの影響を考慮する必要がある車両ではないと判別された光点を含む範囲を照射するように、前照灯ユニット12を制御することで、車両前方の視認性がより向上する配光制御が可能となる。このように、本実施の形態に係る車両用灯具110は、ドライバに特段の操作負担をかけることなく車両前方の物体の属性に応じた適切な配光制御が可能となる。
【0049】
(坂道の推定)
前述の画像処理ECU32は、道路形状がカーブか否かについて推定しているが、道路形状が坂道か否かを推定することもできる。
【0050】
図7(a)は、車両前方の道路形状が勾配のない直線の場合の画像データを模式的に示す図、図7(b)は、車両前方の道路形状が上り坂の直線の場合の画像データを模式的に示す図、図7(c)は、車両前方の道路形状が下り坂の場合の画像データを模式的に示す図である。
【0051】
画像処理ECU32は、道路形状がカーブか否かを推定した場合と同様に、検知した左白線を利用して坂道か否かを推定する。図7(a)に示す画像データにおいて、直線の左白線L4が検知された場合、左白線L4の一部を含む矩形領域R4を定め、縦Y/横Xで算出されるアスペクト比A(矩形領域R4の形状)に基づいて道路形状を推定する。例えば、道路形状推定部42は、左白線が直線であり、アスペクト比Aが0.8以上1.0以下の場合、道路形状が勾配なしの平坦なものであると推定する。
【0052】
また、道路形状推定部42は、図7(b)に示す画像データにおいて、直線の左白線L5の一部を含む矩形領域R5を定め、縦Y/横Xで算出されるアスペクト比Aに基づいて道路形状を推定する。例えば、道路形状推定部42は、アスペクト比Aが1.0より大きい場合、道路形状が上り坂であると推定する。
【0053】
また、道路形状推定部42は、図7(c)に示す画像データにおいて、直線の左白線L6の一部を含む矩形領域R6を定め、縦Y/横Xで算出されるアスペクト比Aに基づいて道路形状を推定する。例えば、道路形状推定部42は、アスペクト比Aが0.8より小さい場合、道路形状が下り坂であると推定する。
【0054】
従来も、ジャイロセンサを用いたヨーレートや加速度センサを用いた車両の傾きに基づいて、道路の曲率や坂道の勾配を推定することはできるが、いずれも、自車両がカーブや坂道に進入した後でなければ、正確な推定は不可能であった。しかしながら、本実施の形態に係る画像処理ECU32は、センサを用いずに、しかも車両の姿勢が変化していないカーブや坂道に進入する前の段階で、カーブか否か、坂道か否かを推定できる。
【0055】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0056】
C1 交点、 H1 水平線、 L1 左白線、 L1’ 直線、 R1 矩形領域、 C2 交点、 H2 水平線、 L2 左白線、 L2’ 直線、 R2 矩形領域、 C3 交点、 H3 水平線、 L3 左白線、 L3’ 直線、 R3 矩形領域、 10 車両、 12 前照灯ユニット、 14 制御システム、 16 前方監視カメラ、 32 画像処理ECU、 34 配光制御ECU、 38 画像情報取得部、 40 白線検知部、 42 道路形状推定部、 44 基準点算出部、 48 判別部、 50 対向車、 52 先行車、 110 車両用灯具。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7