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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】3次元造形装置および3次元造形方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/28 20210101AFI20220607BHJP
   B22F 10/37 20210101ALI20220607BHJP
   B22F 10/38 20210101ALI20220607BHJP
   B22F 12/90 20210101ALI20220607BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220607BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220607BHJP
【FI】
B22F10/28
B22F10/37
B22F10/38
B22F12/90
B33Y10/00
B33Y30/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018116750
(22)【出願日】2018-06-20
(65)【公開番号】P2019218600
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000152675
【氏名又は名称】コマツNTC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】前花 英一
(72)【発明者】
【氏名】野田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】厨川 常元
(72)【発明者】
【氏名】水谷 正義
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-190086(JP,A)
【文献】国際公開第2017/157648(WO,A1)
【文献】特開2001-047520(JP,A)
【文献】国際公開第2016/075803(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/00-12/90
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形対象物の、曲面を呈する表面に向けて粉末を落下させて供給する粉末供給装置と、
前記粉末供給装置によって供給されて堆積した前記粉末の層の表面形状を計測する表面形状計測装置と、
前記表面形状計測装置によって計測された表面形状の、前記粉末の供給前後における変化に基づいて、前記粉末の層の厚さを演算する演算部と、
演算された前記粉末の層の厚さが、予め設定された一層の厚さの許容範囲内にある場合に、前記粉末供給装置によって供給されて堆積した前記粉末の層にエネルギービームを照射するエネルギービーム照射装置と、
を備えることを特徴とする3次元造形装置。
【請求項2】
前記造形対象物を移動させる移動装置を備えることを特徴とする請求項1に記載の3次元造形装置。
【請求項3】
エネルギービームが照射された前記粉末の層の表面を撮影するカメラ装置と、
前記カメラ装置によって撮影された画像に基づいて造形領域を判別する画像処理部と、
を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の3次元造形装置。
【請求項4】
前記粉末供給装置によって供給される前記粉末を前記造形対象物の表面上において保持する壁部を備え
前記壁部は、前記造形対象物の表面に対して近接離反移動させられることで、前記造形対象物の表面上に配置され得るものであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の3次元造形装置。
【請求項5】
前記粉末は、金属の粉末であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の3次元造形装置。
【請求項6】
造形対象物の曲面を呈する表面に向けて粉末を落下させて供給する粉末供給工程と、
前記粉末供給工程において供給されて堆積した前記粉末の層の表面形状を計測する表面形状計測工程と、
前記表面形状計測工程において計測された表面形状の、前記粉末の供給前後における変化に基づいて、前記粉末の層の厚さを演算する演算工程と、
演算された前記粉末の層の厚さが、予め設定された一層の厚さの許容範囲内にある場合に、前記粉末供給工程において供給されて堆積した前記粉末の層にエネルギービームを照射するエネルギービーム照射工程と、
を含むことを特徴とする3次元造形方法。
【請求項7】
前記粉末供給工程において、前記造形対象物を一定速度で水平方向に移動させながら前記造形対象物の表面に向けて前記粉末を落下させることを特徴とする請求項に記載の3次元造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元造形装置および3次元造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元造形技術として、次の2つの手法が用いられることが多い。すなわち、一つは、粉末床溶融結合法(以下、「PBF(Powder Bed Fusion)法」という)である(例えば、特許文献1参照)。もう一つは、指向エネルギ堆積法(以下、「DED(Direct Energy Deposition)法」という)である(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
PBF法は、粉末をローラやブレードを用いて水平に敷き詰めたのちに、プログラムされたレーザ光を走査させることで粉末が溶融・結合し、その軌跡によって目的の形状を持った造形層を作る。その後、造形層を繰り返し積層することで、立体的な複雑形状が作られる。この手法では、粉末が溶融し製品の一部として塊となった部分と、その間を埋めている未溶融の粉末とが、下層部分に充墳されたままの状態で、順に新たな粉末が積層されていく。そして、最終的な立体製品が完成されるまで、未溶融の粉末が取り除かれることはない。この充填された未溶融の粉末が、その上層の構造体となる粉末の足場となることで、梁部分と柱部分とが入り組んだ形状を有する構造(以下、「梁構造」という)を造形することができる。
【0004】
このように、PBF法は、除去加工では実現できない中空の複雑形状を作り出すことが可能である。特に、ラティス構造やポーラス構造等の梁構造は、PBF法によって製作可能となる。この梁構造を既存の部品の形状の一部に適用することで、例えば、高強度かつ軽量な部品の製作が期待できるなど、様々な恩恵が得られる。その他にも、梁構造の適用による様々な製品の開発に注目が集まっている。
【0005】
一方、DED法は、レーザ光の照射によって形成された溶融プールに、ノズルから噴射された粉末を供給することで、粉末が溶融して溶融プールの一部となり、それが凝固することで肉盛層を形成する手法である。DED法は、レーザ光および粉末が出射されるノズルトーチをロボットで制御することによって、任意の形状を持った部品の上に失った分の肉盛補修が可能である。また、DED法は、既存の部品の上に新たな形状を付与・造形することも可能である。さらに、DED法は、ベース部材とは別材質で構造を付与・造形することで、新たな機能を持った製品の可能性についても検討されている。
【0006】
このように、DED法は、既存の部品の捕修や、既存の部品の上に新たな構造を付け加えることが可能である。つまり、PBF法は、造形体のすべてを高価な粉末でまるごと作るのに対して、DED法は、既存の部品に構造を付け加えるものである。このため、DED法は、コストの低いバルク体をベースとし、必要な部分のみを造形するため、粉末の使用量は少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-124200号公報
【文献】特開2016-078205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、DED法で梁構造を作ることを考えた場合に、足場となる粉末を何らかの方法で用意したとしても、粉末の噴射による噴流によって足場となるはずの下層の未溶融の粉末は吹き飛ばされてしまう。このため、DED法では、梁構造を作ることは困難である。
【0009】
一方、PBF法では、造形の欠陥の発生を防止するために、造形前に粉末を目的の位置に確実に供給するとともに、供給される粉末の層の厚さのばらつきを抑える必要がある。つまり、PBF法では、高精度の粉末の供給および配置が必要である。このために、PBF法は、ローラやブレードによって粉末を水平に圧縮しながら敷き詰めている。しかしながら、PBF法は、平面上に―定厚の粉末層を作り出すことは可能であるが、自由曲面を持った部品の上に―定厚の粉末層を作り出すことは困難である。
【0010】
上述したように、DED法では、曲面上に造形することは可能であるが、梁構造を作ることはできない。一方、PBF法では、梁構造を作ることは可能であるが、曲面上に造形を行うことはできない。つまり、従来の3次元造形技術では、造形対象物としての既存の部品(ワーク)の曲面を呈する表面上に梁構造を造形することができない。
【0011】
本発明は、造形対象物の曲面を呈する表面上に―定厚の粉末層を作り出して3次元の造形体を製造することを実現できる3次元造形装置および3次元造形方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明に係る3次元造形装置は、造形対象物の、曲面を呈する表面に向けて粉末を落下させて供給する粉末供給装置と、前記粉末供給装置によって供給されて堆積した前記粉末の層の表面形状を計測する表面形状計測装置と、前記表面形状計測装置によって計測された表面形状の、前記粉末の供給前後における変化に基づいて、前記粉末の層の厚さを演算する演算部と、を備える。また、前記3次元造形装置は、演算された前記粉末の層の厚さが、予め設定された一層の厚さの許容範囲内にある場合に、前記粉末供給装置によって供給されて堆積した前記粉末の層にエネルギービームを照射するエネルギービーム照射装置を備える。
【0013】
本発明に係る3次元造形方法は、造形対象物の曲面を呈する表面に向けて粉末を落下させて供給する粉末供給工程と、前記粉末供給工程において供給されて堆積した前記粉末の層の表面形状を計測する表面形状計測工程と、前記表面形状計測工程において計測された表面形状の、前記粉末の供給前後における変化に基づいて、前記粉末の層の厚さを演算する演算工程と、を含む。また、前記3次元造形方法は、演算された前記粉末の層の厚さが、予め設定された一層の厚さの許容範囲内にある場合に、前記粉末供給工程において供給されて堆積した前記粉末の層にエネルギービームを照射するエネルギービーム照射工程を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、造形対象物の曲面を呈する表面上に―定厚の粉末層を作り出して3次元の造形体を製造することを実現できる3次元造形装置および3次元造形方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る3次元造形装置の構成を示す図である。
図2図1に示される粉末供給装置を模式的に示す斜視図である。
図3図1に示される表面形状計測装置を模式的に示す斜視図である。
図4】本実施形態に係る3次元造形方法の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を適宜省略する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る3次元造形装置100の構成を示す図である。
本実施形態では、3次元造形装置100は、金属の粉末90の層にエネルギービームとしてのレーザ光25を照射することで3次元の造形体を作る3次元造形装置である。
【0018】
図1に示すように、3次元造形装置100は、粉末供給装置10と、エネルギービーム照射装置としてのレーザ光照射装置20と、移動装置30と、表面形状計測装置40と、カメラ装置50と、制御装置60とを備える。粉末供給装置10と移動装置30とは、チャンバ70内に収容されている。
【0019】
図2は、図1に示される粉末供給装置10を模式的に示す斜視図である。
図2に示すように、粉末供給装置10は、造形対象物としての既存の部品(完成した製品を含む)であるワーク80の表面81に向けて粉末90を落下させて供給する。ここでは、ワーク80は湾曲した板であり、ワーク80の表面81は、例えば円弧面等の曲面を呈している。粉末供給装置10は、高精度粉末計量機を利用して構成することができ、供給口11から粉末90の正確な量を安定して連続供給することが可能である。
【0020】
金属の粉末90としては、例えば、アルミ、鉄、ステンレス、チタン、および窒化金属等の合金が使用され得る。粉末90は、ワーク80の表面81上でかたまることなくより均一に堆積するためには、ある程度流動性の良い、すなわち安息角が比較的小さいことが好ましい。ここで、安息角とは、一定高さから落下した粉末90が崩れないで安定した山を形成する際に山の斜面が水平面に対して成す角度である。粉末90の粒径は、10~45μmが好ましい。粒径が小さすぎると粉末90の粒子の流動性が損なわれて均一な厚さの粉末90の層を形成しにくくなり、粒径が大きすぎると造形体の精密な形状を得にくくなるからである。
【0021】
3次元造形装置100(図1参照)は、本実施形態では、粉末供給装置10によって供給される粉末90をワーク80の表面81上において一時的に保持する壁部75を備えている。壁部75は、ワーク80の表面81上の造形領域を含む所定領域を他の領域と区画するために、ワーク80の表面81上に垂直に配置される板状部材である。壁部75は、ここでは前記所定領域を間に挟む平行な一対の板状部材であるが、これに限定されるものではなく、例えば、四角形の各辺に対応する4つの板状部材、あるいは1つの枠状部材であってもよい。
【0022】
壁部75は、例えば基台31に設けられた移動機構(図示せず)によってワーク80の表面81に対して近接離反移動させられることで、ワーク80の表面81上に配置され得る。ただし、これに限定されるものではなく、壁部75は、ロボット装置によって移動させられることで、ワーク80の表面81上に配置されてもよい。
【0023】
なお、壁部75は、必ずしも備えていなくてもよい。例えば、ワーク80の表面81が平面や、緩やかな傾斜の曲面である場合等には、粉末90が自身の保持力によってワーク80の表面81上において保持され得るため、壁部75は省略され得る。
【0024】
図3は、図1に示される表面形状計測装置40を模式的に示す斜視図である。
図3に示すように、表面形状計測装置40は、粉末供給装置10によって供給されて堆積した粉末90の層の表面形状を計測する。表面形状計測装置40として、例えば、帯状のレーザ光を計測対象物に照射し、その反射光を受光素子で受光して、三角測距の原理で計測対象物の形状プロファイルを生成するレーザ変位計が使用され得る。
【0025】
図1に示すように、レーザ光照射装置20は、粉末供給装置10によって供給されて堆積した粉末90の層にレーザ光25を照射する。レーザ光照射装置20は、レーザ光源21と、ミラー(ガルバノミラー)22,23と、レンズ系24とを備えている。
【0026】
レーザ光源21は、レーザ光25を出射する。レーザ光源21としては、例えば、ファイバーレーザやCOレーザ等が使用され得る。また、レーザ光25は、パルス発振レーザであることが好ましい。パルス発振レーザの使用によって、より小さい出力で照射可能であるため、造形の母材となる造形対象物に与える熱影響を小さくでき、造形体の変形をより抑えることができる。ただし、レーザ光25は、パルス発振レーザに限定されるものではなく、CW(連続発振)レーザであってもよい。
【0027】
レンズ系24は、レーザ光25を収束させる。また、ミラー22,23の角度を駆動手段(図示せず)によって変化させることで、レーザ光25の照射方向を変化させる操作が行われる。つまり、ミラー22,23の回動によって、レーザ光25が照射される位置が調整される。
【0028】
カメラ装置50は、レーザ光25が照射された後の、粉末90の層の表面を撮影する。つまり、カメラ装置50は、レーザ光25が照射されて粉末90が溶融・結合して固化された造形領域と、レーザ光25が照射されなかった未溶融の粉末90が存在する領域とを含む粉末90の層の表面を撮影する。
【0029】
移動装置30は、ワーク80を移動させる装置である。本実施形態では、移動装置30は、ワーク80をセットする基台31と、基台31を移動させる駆動機構32とを備えている。駆動機構32は、基台31の移動をガイドするガイド装置と、基台31を移動させる駆動力を発生する駆動装置とを有している。駆動機構32は、基台31をX方向(図1における左右方向)、Y方向(図1における紙面に垂直な方向)、Z方向(上下方向)に移動させることができる。ただし、移動装置30は、前記した構成に限定されるものではなく、例えば、ワーク80を把持してその姿勢および位置を変化させるロボット装置であってもよい。
【0030】
チャンバ70は、例えばステンレス等の金属で形成された容器である。チャンバ70は、密閉可能に構成されており、排気機構(図示せず)によってチャンバ70内を排気することで減圧可能とされている。また、排気機構は、加工時にレーザによって溶融した粉末から発生する金属ヒューム(金属蒸気)を排出させるための排出口を兼ねている。真空引きすることによって酸素が除去されたチャンバ70内には、アルゴン、窒素等の不活性ガスが供給されるようになっている。また、チャンバ70には、図示しないレーザ光25の通過用の窓、表面形状計測用の窓、およびカメラ撮影用の窓が設けられている。
【0031】
制御装置60は、図示しないCPU(中央演算処理装置)、およびメモリ、ハードディスク等の記憶部を備えている。記憶部には、3次元造形したい構造の3次元形状データと、加工条件データとが保存される。3次元形状データおよび加工条件データは、制御装置60において作成されてもよいし、外部の装置で作成されて制御装置60に入力されてもよい。制御装置60は、加工条件データに基づいて、レーザ光源21、ミラー22,23、およびレンズ系24を制御して、レーザ光25の出力特性、走査速度、走査間隔、および照射位置を調整する。
【0032】
また、制御装置60は、移動装置30を制御して、ワーク80を移動させる。さらに、制御装置60は、表面形状計測装置40を制御して、粉末90の層の表面形状を計測させるとともに、カメラ装置50を制御して、粉末90の層の表面を撮影させる。
【0033】
制御装置60は、演算部61と、画像処理部62とを有している。演算部61および画像処理部62は、制御装置60の記憶部に記憶されたプログラムをメモリ上で実行することによって実現される。演算部61は、表面形状計測装置40によって計測された粉末90の層の表面形状の、粉末90の供給前後における変化に基づいて、粉末90の層の厚さを演算する。具体的には、粉末90の層の表面のZ方向(上下方向)の変位から、粉末90の層の厚さが演算される。また、画像処理部62は、カメラ装置50によって撮影された、レーザ光25が照射された粉末90の層の表面の画像に基づいて、造形領域を判別する。具体的には、粉末90の層の表面において、例えば未溶融の粉末90が存在する周辺領域とは色の異なる領域が、レーザ光25が照射されて粉末90が溶融・結合して固化された造形領域と判別され得る。
【0034】
制御装置60には、表示装置63と、入力装置64とが接続されている。表示装置63は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)等である。表示装置63は、表面形状計測装置40によって計測された粉末90の層の表面形状、カメラ装置50によって撮影された粉末90の層の表面の画像、操作画面、警告メッセージ等の各種情報を表示する。入力装置64は、例えばキーボードやマウス等であり、3次元形状データや加工条件データの作成または入力のためのユーザの操作の受付け、3次元造形作業の開始指示等の各種情報の入力を行う。
【0035】
図4は、本実施形態に係る3次元造形方法の内容を示すフローチャートである。
図4に示すように、まず、ワーク80が移動装置30の基台31にセットされて固定される(S1)。そして、チャンバ70内が真空引きされた後、チャンバ70内に不活性ガスが供給される。
【0036】
続いて、表面形状計測装置40によって、ワーク80の表面81の形状(表面形状)が計測される(S2)。ここで、制御装置60は、移動装置30を制御して、ワーク80を一定速度で水平方向(例えば図1の表面形状計測装置40の下方から粉末供給装置10の下方に向けて左方向)に移動させながら、表面形状計測装置40を制御して、ワーク80の表面81の形状を計測させる。
【0037】
次に、粉末供給装置10によって、ワーク80の例えば曲面を呈する表面81に向けて、粉末90が適量落下させられて供給される(S3)。ここで、制御装置60は、移動装置30を制御して、ワーク80を一定速度で水平方向(図1の右方向)に移動させながら、粉末供給装置10を制御して、ワーク80の表面81に向けて粉末90を一定量落下させる。これにより、ワーク80の表面81上に堆積した薄い粉末90の層が形成される。
【0038】
続いて、表面形状計測装置40によって、ワーク80の表面81上に堆積した粉末90の層の表面形状が計測される(S4)。ここで、制御装置60は、移動装置30を制御して、ワーク80を一定速度で水平方向(図1の右方向)に移動させながら、表面形状計測装置40を制御して、堆積した粉末90の層の表面形状を計測させる。
【0039】
ステップS5では、制御装置60は、粉末90の層の表面形状の、粉末90の供給前後における変化に基づいて、粉末90の層の厚さを演算する。ここで、最初に形成される最下層の厚さを演算する場合には、予め計測されたワーク80の表面81の形状(ステップS2参照)からの変化に基づいて演算される。そして、制御装置60は、演算された粉末90の層の厚さが、予め設定された一層の厚さの許容範囲内にあるか否かを判定する。
【0040】
粉末90の層の厚さが許容範囲内にない場合には(S5でNo)、制御装置60は、所定の警告処理を行ってから(S6)、3次元造形作業を終了させる。所定の警告処理は、例えば、粉末90の層の厚さが許容範囲外である旨の警告メッセージが表示装置63に表示されることによって行われる。
【0041】
粉末90の層の厚さが許容範囲内にある場合には(S5でYes)、レーザ光25の照射による加熱が行われる(S7)。すなわち、制御装置60は、移動装置30を制御して、ワーク80をレーザ光照射装置20の下方に移動させた後に、レーザ光照射装置20を制御して、粉末90の層にレーザ光を照射させる。これにより、粉末90が溶融・結合して固化された造形領域が形成される。
【0042】
続いて、カメラ装置50によって、レーザ光25が照射された後の、粉末90の層の表面が撮影される(S8)。ここで、制御装置60は、移動装置30を制御して、ワーク80を一定速度で水平方向(図1の左方向)に移動させながら、カメラ装置50を制御して、レーザ光25が照射された粉末90の層の表面を撮影させる。
【0043】
ステップS9では、制御装置60は、レーザ光25が照射された粉末90の層の表面の画像に基づいて、造形領域を判別する。そして、制御装置60は、判別された造形領域が、予め設定された造形領域の許容範囲内にあるか否かを判定する。
【0044】
造形領域が許容範囲内にない場合には(S9でNo)、制御装置60は、所定の警告処理を行ってから(S10)、3次元造形作業を終了させる。所定の警告処理は、例えば、造形領域が許容範囲外である旨の警告メッセージが表示装置63に表示されることによって行われる。
【0045】
造形領域が許容範囲内にある場合には(S9でYes)、表面形状計測装置40によって、レーザ光25が照射された粉末90の層の表面形状が計測される(S11)。ここで、制御装置60は、移動装置30を制御して、ワーク80を一定速度で水平方向(図1の左方向)に移動させながら、表面形状計測装置40を制御して、レーザ光25が照射された粉末90の層の表面形状を計測させる。この表面形状測定により、積層造形の高さが狙いの高さまで来たかが確認できる。また、2層目以降における粉末90の供給前での表面形状が計測されることになる。
【0046】
ステップS12では、3次元造形が最後の層まで終了したか否かが判断される。すなわち、制御装置60は、粉末90の層の所定領域にレーザ光25を照射することで固化された造形領域の層を一層ずつ積層して造形する3次元造形が最後の層(最上層)まで終了したか否かを判断する。
【0047】
3次元造形が最後の層まで終了していないと判断される場合には(S12でNo)、制御装置60は、処理をステップS3に戻して、次の層についての3次元造形(S3~S12)を実施するように制御する。なお、前の層において造形に利用されなかった粉末90は除去されることなく、その上に再度、粉末90が適量落下により供給されて一定厚さの次の層が形成される(S3)。一方、3次元造形が最後の層まで終了したと判断される場合には(S12でYes)、制御装置60は、3次元造形作業を終了させる。
【0048】
前記したように、本実施形態に係る3次元造形装置100は、ワーク80の例えば曲面を呈する表面81に向けて、粉末90を落下させて供給する粉末供給装置10を備えている。
このような構成では、PBF法を使用した場合のようにローラやブレードによって粉末90を水平に敷き詰める作業が無いため、曲面を持ったワーク80の表面81上に―定厚の粉末90の層を作り出すことが可能である。しかも、DED法を使用した場合のように粉末90の噴射による噴流によって足場となるはずの下層の未溶融の粉末90が吹き飛ばされてしまうことが無いため、梁構造を作ることが可能である。
したがって本実施形態によれば、ワーク80の曲面を呈する表面81上に―定厚の粉末層を作り出して3次元の造形体を製造することを実現できる。
【0049】
また、本実施形態に係る3次元造形装置100は、ワーク80を移動させる移動装置30を備えている。
このような構成では、ワーク80を一定速度で移動させながらワーク80の表面81に向けて粉末90を落下させることができる。つまり、粉末供給装置10は粉末90の供給のために移動させられる必要がなく、固定して配置され得る。したがって、固定して配置された粉末供給装置10が粉末90の正確な量を安定して連続供給することで、ワーク80の表面81上に、より均一な厚さの粉末90の層を形成することができる。
また、粉末供給装置10とレーザ光照射装置20との間でワーク80を往復移動させることで、粉末90の層を形成と、レーザ光25の照射による固化された造形領域の層の形成とを交互に連続して容易に実施できる。
また、造形領域の層が順次積み重ねられるにしたがってワーク80を下降移動させることで、粉末90の層の上面を一定の高さに保つことができる。これにより、粉末90の層を形成と、レーザ光25の照射による固化された造形領域の層の形成とをより正確に実施できる。
【0050】
また、本実施形態では、表面形状計測装置40によって計測された粉末90の層の表面形状の変化に基づいて、粉末90の層の厚さが演算される。したがって、粉末90の層の厚さのばらつきをチェックすることで、造形の欠陥の発生を未然に防止することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態では、カメラ装置50によって撮影された画像に基づいて造形領域が判別される。したがって、判別された実際の造形領域が、予め設定された造形領域に合致しているか否かをチェックすることで、造形不良の発生を未然に防止することが可能となる。
【0052】
また、本実施形態では、粉末供給装置10によって供給される粉末90が壁部75によりワーク80の表面81上において保持される。したがって、ワーク80の表面81上に粉末90の層をより確実に形成することができる。
【0053】
また、本実施形態では、粉末90が金属の粉末であるため、高強度な金属製品を造形することが可能である。
【0054】
以上、本発明について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に記載した構成に限定されるものではない。本発明は、前記実施形態に記載した構成を適宜組み合わせ乃至選択することを含め、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。また、前記実施形態の構成の一部について、追加、削除、置換をすることができる。
【0055】
例えば、前記した実施形態では、粉末90は、金属の粉末であるが、これに限定されるものではなく、例えばセラミック材料の粉末であってもよい。
【0056】
また、前記した実施形態では、ワーク80の表面81は、湾曲した板の円弧面等の曲面であるが、これに限定されるものではなく、例えば円柱の側面や、球体の表面(球面)であってもよい。
【0057】
また、前記した実施形態では、造形対象物としての既存の部品(完成した製品を含む)であるワーク80上に造形されるが、これに限定されるものではなく、一般的な基材(プレート)等の母材上に造形されてもよい。つまり、造形対象物は、ワーク80に限定されるものではなく、任意の母材となるものであってもよい。
【0058】
また、前記した実施形態では、粉末90の層に照射するエネルギービームは、レーザ光25であるが、これに限定されるものではなく、例えば電子ビームであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 粉末供給装置
20 レーザ光照射装置(エネルギービーム照射装置)
25 レーザ光(エネルギービーム)
30 移動装置
40 表面形状計測装置
50 カメラ装置
60 制御装置
61 演算部
62 画像処理部
75 壁部
80 ワーク
81 表面
90 粉末
100 3次元造形装置
図1
図2
図3
図4