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特許7084229電子部品の保持具およびその装着方法、並びに保持機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】電子部品の保持具およびその装着方法、並びに保持機構
(51)【国際特許分類】
   H01G 2/02 20060101AFI20220607BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20220607BHJP
【FI】
H01G2/02 101C
H01G13/00 351A
H01G2/02 101E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018120746
(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公開番号】P2020004790
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】特許業務法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】根橋 聡智
【審査官】上谷 奈那
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/047751(WO,A1)
【文献】実開平02-137021(JP,U)
【文献】特開平06-089832(JP,A)
【文献】実開昭55-105996(JP,U)
【文献】特開2012-156402(JP,A)
【文献】実開昭58-120636(JP,U)
【文献】中国実用新案第207124124(CN,U)
【文献】特開2011-151184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 2/02
H01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状の電子部品の外周を全周にわたって保持する円環状または前記電子部品の外周の一部を部分的に保持する円弧状の周縁部材からなる保持具であって、
前記周縁部材の内周が前記電子部品の外周と同心円状に、かつ前記周縁部材の内周が前記電子部品の外周よりも小径に形成される一方、前記周縁部材の軸方向両端の端縁部に対して軸方向に外力が加えられることにより前記周縁部材の内周を前記電子部品の外周よりも大径に拡張するとともに、前記周縁部材の内周を前記電子部品の外周に対して弾性的に付勢するように構成され、
前記周縁部材の軸方向両端の端縁部の少なくとも一方に前記外力を加えるための治具と係合するための凹部が形成されている電子部品の保持具。
【請求項2】
前記凹部には、軸方向外方に向かって前記周縁部材の内周面から離れるように傾斜した傾斜面が形成された請求項に記載の電子部品の保持具。
【請求項3】
円柱状の電子部品の外周を全周にわたって保持する円環状または前記電子部品の外周の一部を部分的に保持する円弧状の周縁部材からなる保持具の装着方法であって、
前記周縁部材の内周が前記電子部品の外周と同心円状に、かつ前記周縁部材の内周が前記電子部品の外周よりも小径に形成された前記保持具を前記電子部品に装着するために準備する第1工程と、
前記周縁部材の軸方向両端の端縁部に対して軸方向に外力を加えることで前記周縁部材の内周を前記電子部品の外周よりも大径に拡張する第2工程と、
前記第2工程の間に前記周縁部材の内周に前記電子部品を配置する第3工程と、
前記外力の印加を除き、前記周縁部材の内周を前記電子部品の外周に対して弾性的に付勢させることによって前記電子部品を前記保持具により保持する第4工程と、
を備えた保持具の装着方法。
【請求項4】
円柱状の電子部品を保持する保持具と当該電子部品に当該保持具を装着する治具とからなる電子部品の保持機構であって、
前記保持具は、その内周面が前記電子部品の外周面の曲率と同じ曲率を有し、前記電子部品の外周に対して弾性的に付勢する周縁部材を有し、
前記周縁部材の端縁部に前記電子部品の軸方向に対して傾斜したテーパ状の第1凹部が形成され、
前記治具は、前記第1凹部に係合可能なテーパ状の第1エッジを有する第1挟持部と、
前記第1挟持部と協働して前記保持具を軸方向に挟み込む第2挟持部とから構成されている
ことを特徴とする電子部品の保持機構。
【請求項5】
前記保持は、前記第1凹部が形成された前記周縁部材の端縁部と軸方向反対側の端縁部に軸方向に対して傾斜したテーパ状の第2凹部が形成され、
前記第2挟持部は、前記第2凹部に係合可能なテーパ状の第2エッジを有する
ことを特徴とする請求項に記載の電子部品の保持機構。
【請求項6】
前記周縁部材は、前記第1凹部および前記第2凹部が形成された端縁部の径方向外側に径方向外方向に突出した凸部を有し、前記凸部の両側には前記凸部を挟んで前記第1凹部および前記第2凹部と同一方向に傾斜した一対のテーパ状の第3凹部が形成され、
前記第1挟持部および前記第2挟持部は、それぞれ前記第3凹部に係合可能なテーパ状の第3エッジを有し、
前記第1エッジおよび前記第2エッジが、それぞれ前記第1凹部および前記第2凹部に係合するときに、前記第3エッジが前記第3凹部に係合する
ことを特徴とする請求項に記載の電子部品の保持機構。
【請求項7】
前記治具は、前記第1挟持部および前記第2挟持部を前記電子部品の軸心方向にスライドさせる支軸を備え、
前記第1挟持部および前記第2挟持部の少なくとも一方は、前記支軸周り枢動することによって開閉する一対の円弧状の周縁部材である
ことを特徴とする請求項ないし請求項のいずれかに記載の電子部品の保持機構。
【請求項8】
前記第1挟持部および前記第2挟持部の少なくとも一方は、複数個に分割可能な円弧状の周縁部材によって構成されている
ことを特徴とする請求項ないし請求項のいずれかに記載の電子部品の保持機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治具によって円柱状の電子部品に装着される保持具およびその装着方法、並びに保持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品は、固定基板へ接続するために金属からなる外部接続端子を有する。この外部接続端子は、固定基板に実装および半田接続されたとき、同時に電子部品本体を当該固定基板に固定する。しかしながら、電子部品であるリードタイプの電解コンデンサなどは、リード部で基板と接続されるので、電子部品本体が座板に固定された面実装タイプに比べて、衝撃による荷重負荷によって脱落や剥離が発生するおそれがある。
【0003】
そこで、当該問題を解決するために、保持具によってコンデンサを固定する構造が提案および実施されている。例えば、環状の台座に等間隔に配置された4個の嵌合爪の間にコンデンサを挿入することによって、当該コンデンサの外装ケースに形成された加締め部に嵌合爪を嵌合させ、台座を基板に固定している(特許文献1を参照)。
【0004】
また、他の形態は、貫通孔が形成された被固定部材(シャーシ)および固定カバーにコンデンサを貫通させ、シャーシに複数形成された固定孔に固定カバーの固定片を挿入して回転させることによって、固定カバーとシャーシの間に形成されたテーパ状の空間に予め閉じ込めた弾性体から成る環状体を締め付けている。すなわち、当該空間に圧縮状態で閉じ込められた環状体の復帰力によって生じる摩擦力を利用してコンデンサを被固定部材に固定している(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-283869号公報
【文献】特開平06-89832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の台座をコンデンサに装着するとき、コンデンサの中心向きに付勢する係合爪の付勢力に抗して複数の係合爪を同時かつ略均等に外方へと拡張させなければならない。すなわち、1本の係合爪に過度の外力が加われば係合爪を破損させる恐れがあり、外装ケースの加締め部に容易かつ円滑に係合爪を嵌合させることができない。また、特許文献1の台座は、係合爪の高さ方向の精度を均一に保つ必要がある。特許文献2に記載の構成は、環状体を圧縮させるために、被固定部材に透孔を形成するとともに、透孔に固定カバーの固定片を挿通して変形させる必要がある。したがって、両特許文献の構成の場合、保持具としての台座や固定カバーの構成が複雑であり、ひいては保持具のコンデンサへの装着作業が煩雑になるといった不都合が生じている。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、簡素な構成で簡易に電子部品に装着可能な電子部品の保持具およびその装着方法、並びに保持機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のような電子部品の保持具を提供する。
【0009】
すなわち、円柱状の電子部品の外周を全周にわたって保持する円環状または前記電子部品の外周の一部を部分的に保持する円弧状の周縁部材からなる保持具であって、
前記周縁部材の内周が前記電子部品の外周と同心円状に、かつ前記周縁部材の内周が前記電子部品の外周よりも小径に形成される一方、前記周縁部材の軸方向両端の端縁部に対して軸方向に外力が加えられることにより前記周縁部材の内周を前記電子部品の外周よりも大径に拡張するとともに、前記周縁部材の内周を前記電子部品の外周に対して弾性的に付勢するように構成され、
前記周縁部材の軸方向両端の端縁部の少なくとも一方に前記外力を加えるための治具と係合するための凹部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、周縁部材の両端縁部に対して軸方向の外力を加えることにより、電子部品の外径よりも小径の当該周縁部材は、電子部品の外径よりも大きく拡張する。周縁部材から外力を除くとき、復帰力によって付勢力が周縁部材から電子部品の外周に対して作用する。このとき、復帰途上にある周縁部材の径方向に作用する内部応力は、円柱状の電子部品の径の中心へと向かう押圧に転向し、この保持具の押圧により電子部品が保持される。
【0011】
上述のように、電子部品の外周の一部を部分的に保持する円弧状または円環状の周縁部材からなる簡素な構成の保持具を電子部品に装着することによって、保持具を簡易に電子部品に装着することができる。また、凹部に治具を係合した状態で保持具の端縁部の両側を挟み込みながら外力を加えることにより、周縁部材の付勢力に抗する径方向の外力が保持具に作用する。その結果、保持具は、弾性変形しながら径方向に拡張される。したがって、上記構成を好適に実現することができる。
【0013】
この構成によれば、凹部に治具を係合した状態で保持具の端縁部の両側を挟み込みながら外力を加えることにより、周縁部材の付勢力に抗する径方向の外力が保持具に作用する。その結果、保持具は、弾性変形しながら径方向に拡張される。したがって、上記構成を好適に実現することができる。
【0014】
さらに、前記凹部には、軸方向外方に向かって前記周縁部材の内周面から離れるように傾斜した傾斜面が形成されていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、治具が凹部に食い込むにつれて、保持具は、弾性変形しながら径方向へと拡張し易くなる。
【0016】
また、本発明は、以下のような保持具の装着方法も提供する。
【0017】
円柱状の電子部品の外周を全周にわたって保持する円環状または前記電子部品の外周の一部を部分的に保持する円弧状の周縁部材からなる保持具の装着方法であって、
前記周縁部材の内周が前記電子部品の外周と同心円状に、かつ前記周縁部材の内周が前記電子部品の外周よりも小径に形成された前記保持具を前記電子部品に装着するために準備する第1工程と、
前記周縁部材の軸方向両端の端縁部に対して軸方向に外力を加えることで前記周縁部材の内周を前記電子部品の外周よりも大径に拡張する第2工程と、
前記第2工程の間に前記周縁部材の内周に前記電子部品を配置する第3工程と、
前記外力の印加を除き、前記周縁部材の内周を前記電子部品の外周に対して弾性的に付勢させることによって前記電子部品を前記保持具により保持する第4工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0018】
この方法によれば、電子部品の外径よりも大径に周縁部材を径方向に拡張するので、当該周縁部材の内側に電子部品を配置し易くなる。その後、周縁部材への外力を除くことにより、周縁部材が定常状態に復帰するのに伴い、電子部品の外周に対して付勢力が作用し、ひいては保持具によって電子部品を保持することができる。したがって、電子部品に保持具を簡易に装着することができる。
【0019】
また、本発明は、以下のような電子部品の保持機構も提供する。
【0020】
すなわち、円柱状の電子部品を保持する保持具と当該電子部品に当該保持具を装着する治具とからなる電子部品の保持機構であって、
前記保持具は、その内周面が前記電子部品の外周面の曲率と同じ曲率を有し、前記電子部品の外周に対して弾性的に付勢する周縁部材を有し、
前記周縁部材の端縁部に電子部品の軸方向に対して傾斜したテーパ状の第1凹部が形成され、
前記治具は、前記第1凹部に係合可能なテーパ状の第1エッジを有する第1挟持部と、
前記第1挟持部と協働して前記保持具を軸方向に挟み込む第2挟持部とから構成されている
ことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、保持具の第1凹部に第1挟持部の第1エッジを係合させた状態で当該保持具を第2挟持部と協働して挟み込むことにより、保持具の付勢力に抗する径方向の外力が保持具に作用する。その結果、保持具は、弾性変形しながら径方向に拡張される。この状態で、第1挟持部、第2挟持部および保持具を電子部品に挿通した後に、当該保持具から第1挟持部と第2挟持部による保持具の挟み込みを解除する。
【0022】
このとき、保持具の復帰力によって付勢力が周縁部材から電子部品の外周に作用する。保持具が電子部品の外周に接すると、復帰途上にある保持具の径方向の内部応力は円柱状の電子部品の径の中心へと向かう押圧に転向し、この保持具の押圧により電子部品が保持される。
【0023】
上述のように、第1挟持部と第2挟持部により保持具を挟持および当該挟持の解除動作のみで電子部品に保持具を容易に装着することができるので、ひいては保持具を電子部品に簡易に固定することができる。
【0024】
なお、上記構成において、前記保持は、前記第1凹部が形成された前記周縁部材の端縁部と軸方向反対側の端縁部に軸方向に対して傾斜したテーパ状の第2凹部が形成され、
前記第2挟持部は、前記第2凹部に係合可能なテーパ状の第2エッジを有することが好ましい。
【0025】
この構成によれば、第1挟持部の第1エッジが第1凹部に係合するとともに、第2挟持部の第2エッジが第2凹部に係合する。すなわち、テーパ状のエッジを有する一対の挟持部によって保持具を挟み込むので、保持具が径方向に均等に拡張される。したがって、保持具の開口部に電子部品を挿通し易くなる。
【0026】
また、上記構成において、前記周縁部材は、前記第1凹部および前記第2凹部が形成された端縁部の径方向外側に径方向外方向に突出した凸部を有し、前記凸部の両側には前記凸部を挟んで前記第1凹部および前記第2凹部と同一方向に傾斜した一対のテーパ状の第3凹部が形成され、
前記第1挟持部および前記第2挟持部は、それぞれ前記第3凹部に係合可能なテーパ状の第3エッジを有し、
前記第1エッジおよび前記第2エッジが、それぞれ前記第1凹部および前記第2凹部に係合するときに、前記第3エッジが前記第3凹部に係合することが好ましい。
【0027】
この構成によれば、第1挟持部および第2挟持部からの外力は、保持具の中央に比べて両挟持部が接触する第1凹部側および第2凹部側の両端縁部に大きく作用する。したがって、保持具の中央部分の径方向の拡張は、両凹部側に比べて小さくなる。しかしながら、保持具の中央部分に設けた第3凹部に第3エッジを係合させることにより、保持具の中央部分にも外力を直接に作用させることができるので、当該保持具全体を略均等に拡張することができる。
【0028】
なお、上記構成において、前記治具は、前記第1挟持部および前記第2挟持部を前記電子部品の軸心方向にスライドさせる支軸を備え、
前記第1挟持部および前記第2挟持部の少なくとも一方は、前記支軸周り枢動することによって開閉する一対の円弧状の周縁部材であることが好ましい。
【0029】
この構成によれば、第1挟持部および第2挟持部は、同軸にスライド可能に支持されているので、両挟持部および保持具に電子部品を挿通するための位置合わせが容易になる。また、第1挟持部および第2挟持部は、保持具の各凹部に各エッジを係合させるので、当該保持具の内径は、保持具の外径よりも小さく設定されている。それ故に、電子部品に環状の保持具を装着する場合、固定基板側の挟持部は、電子部品と固定基板によって保持具からの取り外しが妨げられる。しかしながら、本実施形態のように、固定基板側の挟持部を開閉可能な一対の円弧部材で構成することにより、保持具を電子部品に装着した後に、当該挟持部を電子部品から容易に取り外すことができる。
【0030】
また、上記構成において、前記第1挟持部および前記第2挟持部の少なくとも一方は、複数個に分割可能な円弧状の周縁部材によって構成してもよい。
【0031】
この構成によれば、上記構成と同様に、電子部品に保持具を装着した後に、当該固定基板側の挟持部を分割することによって、電子部品から挟持部を容易に取り外すことができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、簡素な構成で簡易に電子部品に装着可能な電子部品の保持具およびその装着方法、並びに保持機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明における保持具および治具の部分断面を示した斜視図である。
図2】保持具の装着動作を示す斜視図である。
図3】保持具の装着動作を示す図である。
図4】保持具の装着動作を示す図である。
図5】保持具の装着動作を示す図である。
図6】保持具に固定具を挿入する動作を示す図である。
図7】保持具を装着済みの電解コンデンサを固定基板に実装した状態を示す図である。
図8】変形例の保持機構を示す斜視図である。
図9】変形例の保持具を示す斜視図である。
図10】変形例の保持具を示す斜視図である。
図11図10のA-A矢視断面図を利用して保持具の装着動作を説明する図である。
図12図10の変形例の保持具を示す斜視図である。
図13図12の保持具に電解コンデンサを装着した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面に基づき詳細に説明する。なお、本実施形態では、円柱状の電子部品として電解コンデンサを保持するための保持具および当該保持具を電解コンデンサに装着する治具とからなる保持機構を例にとって説明する。
【0035】
保持機構1は、図1に示すように、保持具20および治具30とから構成されている。保持具20は、非導電性の弾性体から成る円環状の周縁部材である。保持具20の内径は、電解コンデンサの外径より小さく設定されている。すなわち、保持具20が電解コンデンサに装着されたとき、当該保持具20は、電解コンデンサの外周と当接し、径方向中心に向けて付勢する。
【0036】
また、保持具20は、上側縁部および下側縁部にテーパ状の凹部21aを有している。両凹部21aは、同じテーパ状であり、かつ、当該テーパ状の奥端が互いに対向するように両側の端縁部に形成されている。すなわち、凹部21aは、電解コンデンサの軸方向に沿って形成されている。なお、本実施形態において、凹部21aは、各端縁部に沿って連なった円環状である。ここで、テーパ状とは、軸方向外方に向かって保持具の内周面から離れる傾斜を意味し、図1の断面に示す尖頭部の斜面である。
【0037】
また、保持具20は、上側縁部の凹部21aから下側縁部の凹部21aに向けて貫通する3個の貫通孔24が所定間隔(本実施形態では等間隔)をおいて形成されている。貫通孔24には電解コンデンサ50(図3を参照)に保持具20を装着した後、当該電解コンデンサ50を固定基板40(図7を参照)に固定する固定具70が挿入される。したがって、貫通孔24の幅は、固定具70のうち、貫通孔24に挿入される部分で最大となる幅よりも僅かに大きく設定されている。
【0038】
固定具70は、図6に示すように、アルファベットの略「T」字形状であり、水平方向に延伸する頂部を上側縁部の凹部21aに沿って係合するように構成されている。したがって、固定具70は、保持具20の曲率と同じ曲率で軸回りに湾曲している。下側縁部の凹部21aから突き出る固定具70の先端部は、電解コンデンサ50を固定基板40に実装したときに、固定基板40に形成された貫通孔を通過して所定長さ突き出る長さに設定されている。すなわち、固定具70の先端部は、固定基板40にはんだ接続される。なお、本実施形態では、凹部21aに3個の固定具70が等間隔に設けられているが、3個に限定されるものではなく、固定基板40に安定かつ確りと固定できる個数であればよい。
【0039】
さらに、保持具20は、外周の中央に径方向外方に突出した円環状の凸部22を有している。凸部22の上側の端縁部および下側の端縁部は、凹部21aと同一方向に切り欠いて対向するよう形成したテーパ状の凹部21bを有する。両凹部21bは、断面が尖頭形の同じテーパ状あり、かつ、凸部22の端縁部に沿って連なった円環状である。
【0040】
凸部22および凹部21bの位置は、次のように設定されている。後述する治具30を構成する一対の挟持部31の第1エッジ31aのそれぞれが、上側の端縁部および下側の端縁部の両凹部21aに係合したとき、両挟持部31の第2エッジ31bが、凸部22に形成された両凹部21bに係合するように設定されている。換言すれば、一対の挟持部31によって保持具20を挟み込んだとき、各凹部21a、21bに同じ押圧がかかるように、上側の端縁部および下側の端縁部から各凹部21bの奥端までの距離が設定されている。
【0041】
なお、本実施形態において、保持具20自体が本発明の保持部として機能する周縁部材に相当し、保持具(周縁部材)20の一方の端縁部に形成された凹部21aが本発明の第1凹部に、他方の端縁部に形成された凹部21aが本発明の第2凹部に相当する。また、凸部22が本発明の凸部に相当し、凹部21bが本発明の第3凹部に相当する。
【0042】
治具30は、上下一対の挟持部31によって構成されている。本実施形態において、両挟持部31は、同じ大きさの円環状である。なお、一方の挟持部31が本発明の第1挟持部に相当し、他方の挟持部31が本発明の第2挟持部に相当する。
【0043】
挟持部31は、保持具20よりも硬質な金属または樹脂(例えば、フッ素樹脂)などによって形成されている。挟持部31の厚みは、保持具20の厚みと略同じであり、当該保持具20に非係合の端縁部は、平坦に加工されている。すなわち、当該端縁部は、押圧し易くなっている。
【0044】
挟持部31は、図1に示す断面のように、一方の縁部から他方の縁部に向けて切り欠いて形成した長さの異なる2つの端縁部を有する。すなわち、両端縁部の内径は、異なっている。内側の端縁部の内径は、保持具20の内径より僅かに大きく設定されている。また、内側の端縁部には、挟持部の肉厚部分をV字状に切り欠いてテーパ状の第1エッジ31aが形成されている。
【0045】
外側の端縁部の内径は、保持具20の外径(凸部22を除く)より大きい。また、外側の端縁部は、周側壁の端縁部であり、その先端にテーパ状の第2エッジ31bを形成している。第1エッジ31aおよび第2エッジ31bの縦断面は、尖頭形状であり、垂直面および斜面が凹部21aおよび凹部21bと密着するように設定されている。
【0046】
したがって、内側の端縁部の内周面は、電解コンデンサの外周面と近接するように設定されている。外側の端縁部を含む周側壁の内周面は、保持具20の外周面と接触するように設定されている。さらに、縁部を分割するための切り欠きの奥端は、保持具20の外側の縁部と接触するように設定されている。
【0047】
次に、上記保持機構によって電解コンデンサに保持具20を装着し、固定基板に当該電解コンデンサを固定する一巡の処理について図2から図7に沿って説明する。
【0048】
先ず、保持具20を挟んで上下一対の挟持部31と当該保持具20の中心を図2に示す軸心Pに合わせる。中心合わせが完了した後に、図3に示すように、挟持部31によって保持具20を挟み込む。このとき、図4に示すように、両挟持部31の第1エッジ31aが、保持具20の上側の端縁部および下側の端縁部に形成された凹部21aに係合するとともに、両挟持部31の第2エッジ31bが保持具20の凸部22に形成された凹部21bに係合する。
【0049】
この状態で、両挟持部31の平坦な端縁部を把持し、保持具20の上下方向から押圧してゆく。このとき、各エッジ31a、31bとの接触によって保持具20の内外の両方向に分力が発生する。挟持部31は、保持具20に比べて高い硬度を有するので押圧に抗するが、弾性の高い保持具20は、各エッジ31a、31bの斜面を滑りながら弾性変形し、外側(径方向)に移動する。すなわち、この現象が三次元的に保持具20の全周に渡って一様に生じるので、保持具20は、径方向外側に拡張される。
【0050】
両挟持部31によって保持具20の内径を電解コンデンサ50の外径を超える所定の大きさまで拡張した状態で、図3および図4に示すように、電解コンデンサ50に両挟持部31および保持具20を挿通する。保持具20が所定の位置、例えば、電解コンデンサ50の高さ方向の半分以下の位置に達すると、図5に示すように、両挟持部31による保持具20の挟持を解除する。このとき、静止状態で電解コンデンサ50の胴体の外径よりも小さい保持具20に復帰力(縮小)が発生し、当該復帰力が電解コンデンサ50の外周に作用する。すなわち、保持具20は、電解コンデンサ50の外周を径方向中心向きに付勢する。
【0051】
このとき、復帰途上にある保持具20の径方向の内部応力は円柱状の電解コンデンサ50の径の中心へと向かう押圧に転向し、この保持具20の押圧により電解コンデンサ50が保持される。
【0052】
電解コンデンサ50への保持具20の装着が完了すると、保持具20に固定具70を装着する。すなわち、図6に示すように、保持具20の上側の凹部21aから固定具70が貫通孔24に挿入され、その頂部が凹部21aに係合する。この状態で固定具70が保持具20に固定される。
【0053】
固定具付きの保持具20の装着が完了した電解コンデンサ50は、図7に示すように、固定基板40に実装される。すなわち、固定基板40に形成された貫通孔に電解コンデンサ50の外部電極51および固定具70の先端部分のそれぞれが挿通され、突き出た各部分がはんだによって接続固定される。以上で電解コンデンサ50に保持具20を装着し、電解コンデンサ50を固定基板40に実装する一巡の処理が完了する。
【0054】
上記構成によれば、保持具20から両挟持部31を解除したとき、保持具20が電解コンデンサ50を把持するので、電解コンデンサ50は、衝撃による負荷および振動による負荷などによって保持具20の保持力が低下することもなければ、電子部品から保持具20が外れることもない。したがって、簡易かつ簡単な構成で保持具20を電子部品に装着することができる。その結果、電解コンデンサ50が固定基板40から脱落するのを簡易に抑制することができる。
【0055】
また、上記構成によれば、保持具20の径方向に固定具70がはみ出すことなく、厚みが比較的薄い保持具20に固定具70を挿入している。したがって、上記構成は、従来の金属製バンドのように固定基板に固定するためのビスまたは他の保持具のネジ部などが不要なので、固定基板上における占有面積を低減することができる。
【0056】
また、保持具20の装着のための操作である拡張は、一対の挟持部31からの外力によって僅かな変位(弾性変形)で実現できるので、電解コンデンサ50に保持具20を簡単かつ素早く装着することができる。また、両挟持部31による保持具20の拡張を解くことが装着の一連の操作に連動しているので、治具30の着脱操作の忘れも防止することができる。
【0057】
また、保持具20の装着時の内部応力は保持具自体の弾性力によって生じるので一様であり、ネジなど他の部材による余計な局所的外力が生じない。すなわち、保持具20の材料が持つ許容応力を十分に利用することが可能である。さらに、保持具20の装着に際しては一時的に高い内部応力を発生させる拡張の操作が必須であり、拡張操作によって潜在的な保持具20の強度の欠陥を全数について自動的に検査することが可能となる。また、この操作によって潜在的な保持具20の強度の欠陥に対する内部応力の安全率を従来よりも下げられるので、よりその材料が持つ許容応力を十分に利用することが可能となる。
【0058】
さらに、保持具20を接着剤などによって固定基板40に固定することなく、電解コンデンサ50を固定基板40にはんだ接続するときに固定具70を固定基板40に同時に固定できるので、接続工数を減らすことができるとともに、簡素な構成で簡易に電解コンデンサ50を固定基板40に固定することができる。
【0059】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されず、以下の構成も採用できる。
【0060】
(1)上記実施形態では、治具30を構成する挟持部31を分離した構成であったが、一体的に取り扱えるように構成してもよい。
【0061】
例えば、図8に示すように、両挟持部31、31Cの側面に貫通孔の形成された凸部32を設け、当該凸部32に支軸33を貫通させる。すなわち、両挟持部31、31Cは、支軸33に沿ってスライド可能である。なお、支軸の先端には、絶縁体からなるストッパ34が装着されている。
【0062】
また、下側に位置する挟持部31Cは、環状の部材を2分割した円弧状の周縁部材である。円弧状の周縁部材の一端を支軸33に挿通させて支軸回りに枢動可能に構成されている。円弧状の周縁部材の自由端は、開閉可能に構成されている。
【0063】
この構成によれば、電解コンデンサ50に装着された保持具20から挟持部31、31Cによる挟持を解除した後に、当該挟持部31Cを枢動させて自由端側を開くことによって、電解コンデンサ50から挟持部31Cを容易に取り外すことができる。
【0064】
(2)上記実施形態の挟持部31Cは、2個以上に分割された円弧状の周縁部材によって組み合わせた構成であってもよい。また、上側の挟持部31も円弧状に分割可能な構成であってもよい。
【0065】
(3)保持具20は、上記実施形態のように、環状に限定されず、次のような形態であってもよい。
【0066】
図9に示すように、角部60aを面取りされた弾性体から成る略四角形のフレーム60は、各4辺の内側に2個の内向き凸形状の肉盛り部61を有する。これら隣接する肉盛り部61の間の内壁を電解コンデンサ50と同じ曲率に凹入湾曲させることによって周縁部材に相当する保持部61aを形成している。対向する保持部間の距離は、電解コンデンサ50の直径よりも小さくなるように設定されている。
【0067】
フレーム60の各4辺は、角部60aの両側から中央に向けて僅かに内向きに傾斜するとともに、各4辺は中央で外向き円弧状に僅かに膨出している。この円弧状の部分は、保持部61aの中央の一部を構成している。
【0068】
保持部61aは、上下の対向する位置に挟持部31の第1エッジ31aと同じ曲率の凹部21aがそれぞれ形成されている。各保持部61aは、上側縁部の凹部21aの中央から下側縁部の凹部21aの中央に向けて貫通する貫通孔24が形成されている。当該貫通孔24には、固定具70が挿入される。
【0069】
角部60aの内側は、肉盛り部61によって囲われた凹入湾曲形状をしている。
【0070】
凸形状の肉盛り部61は、上下に貫通する貫通孔62が形成されている。保持部61は、貫通孔62によって弾性変形がし易くなるよう構成されている。
【0071】
弾性体から成るフレーム60の各辺を内向きに傾斜させ、かつ、貫通孔62を有する肉盛り部61によって角部60aの内側を凹入湾曲させることによって、フレーム60に形成した保持部61aを中心に向かわせる付勢力を生じさせている。すなわち、フレーム60が、ばねとして機能している。
【0072】
この構成によれば、フレーム60の各辺上の肉盛り部61の間に凹部21aを分割形成し、凹部21aの欠如した各角部60aを外周のフレーム60によって補っている。すなわち、凹部21aが連なった環状の実施形態に比べてフレーム60によって保持具自体の全周の長さを延ばし、フレーム部分をばねとして応力を担持させることが可能になっている。したがって、保持部61aの許容可能な変形量(移動距離)を増加させることができる。
【0073】
(4)上記変形例の保持部61aは、フレーム60の各辺の内側に円弧状の凹部21aを設けた構成であったが、例えば、同一形状のフレームの各隅の内側に次のような形態で周縁部材としての保持部61aを設けた構成であってもよい。
【0074】
図10に示すように、フレーム60の角部60aの内側に三角形の台座65が設けられている。この台座65には、角部60aから中心に向かう弾性体のアーム66が、片持ち支持されている。このアーム66の先端に円弧状の保持部61aが設けられている。保持部61aは、電解コンデンサ50と同じ曲率の保持面を有している。また、保持部61aは、上側および下側の端縁部に凹部21aが形成されている。
【0075】
各アーム66は、図11に示すように、上下方向(軸方向)に湾曲している。すなわち、アーム66がばねとして機能する。したがって、上下一対の挟持部31によって保持部61aを挟持すると、図11の左側に示すように、保持部61aを径方向に拡張する引力によってアーム66が径方向に弾性変形する。その後、保持部61aから挟持部31を解除すると、アーム66の復帰力によってアーム先端に備わった保持部61aは、電解コンデンサ50の外周を径方向中心向きに付勢する。なお、当該付勢力は、アーム66の長さ、剛性などによって適宜に変更される。
【0076】
なお、保持具20は、図12に示すように、図10に示す保持具20を紙面の横方向に複数個(3個)を連結した多連続タイプであってもよい。本実施形態では、短辺側のフレーム60の2箇所に固定具70を挿入するための貫通孔68の形成されたフランジ67が設けられている。なお、フランジ67を設ける位置は、フレーム60の短辺側に限定されるものではなく、電解コンデンサ50を実装する固定基板40の実装密度に応じて他の実装部品と接触しない位置または高さに適宜に設定変更される。また、フランジ67の個数も同様に適宜に設定変更される。
【0077】
多連続タイプの保持具20に電解コンデンサ50を装着する場合、図1および図2に示すような、一組の挟持部31を利用して1個の保持部61aの間に電解コンデンサ50を順番に挿入してもよいし、或は、3個の挟持部31を保持具20のピッチに合わせて連結して一体形成したものを利用してもよい。当該構成の場合、挟持具31を利用し、図13に示すように、3個の電解コンデンサ50に保持具20を装着し、この状態で固定基板40に電解コンデンサ群を配置した後に、貫通孔68からネジなどの固定具70を挿入して固定基板40に固定する。
【0078】
(5)上記実施形態において、保持具20の外周面に凹部21bを有する凸部22を設けていたが、当該凸部22および凹部22bを有しない構成であってもよい。
【0079】
また、保持具20は凸部22および凹部21bを有しない場合、上側または下側のいずれか一方の縁部のみに凹部21aを形成した構成であってもよい。この構成において、凹部21aを有しない保持具20の縁部は、例えば平坦にする。当該平坦な縁部と当接する側の挟持部31の当接面も同様に平坦にする。すなわち、異なる形状の挟持部によって保持具20を挟持した場合であっても、平坦面で保持具20を挟持する挟持部は、エッジによる保持具20の押圧に抗するので、保持具20は、一方の端縁部のみに設けた第1エッジ31aによって径方向に拡張される。したがって、上記実施例と同様の作用および効果を奏する。
【0080】
(6)上記実施形態では、電解コンデンサを例にとって説明したが、電解コンデンサに限らず、例えば、電気二重層コンデンサ、リチウムイオンキャパシタなどの円柱状の電子部品に、上記各実施形態に記載の保持機構を適用することができるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0081】
1 保持機構
20 保持具(周縁部材)
21a 凹部(第1凹部、第2凹部)
21b 凹部(第3凹部)
22 凸部
30 治具
31 挟持部(第1挟持部、第2挟持部)
31a 第1エッジ(第1エッジ、第2エッジ)
31b 第2エッジ(第3エッジ)
32 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13