IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 和田 功実の特許一覧

<>
  • 特許-投薬用容器 図1
  • 特許-投薬用容器 図2
  • 特許-投薬用容器 図3
  • 特許-投薬用容器 図4
  • 特許-投薬用容器 図5
  • 特許-投薬用容器 図6
  • 特許-投薬用容器 図7
  • 特許-投薬用容器 図8
  • 特許-投薬用容器 図9
  • 特許-投薬用容器 図10
  • 特許-投薬用容器 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】投薬用容器
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/10 20060101AFI20220607BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
A61J1/10 335C
A61J1/05 313J
A61J1/10 333C
A61J1/10 335D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018148787
(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公開番号】P2020022640
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】319006586
【氏名又は名称】和田 功実
(74)【代理人】
【識別番号】100100170
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 厚司
(74)【代理人】
【識別番号】100121924
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】和田 功実
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-66246(JP,A)
【文献】特開2008-67848(JP,A)
【文献】国際公開第2006/067880(WO,A1)
【文献】特開2015-159896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/10
A61J 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な入口部と、
医薬品と液体とを混合した薬液を収容可能な薬液収容部と、
前記薬液収容部に収容された薬液を排出可能な排出部と、
前記排出部に設けられたノズルと、
前記薬液収容部と前記排出部の間の境界部分を閉塞し、前記薬液を収容している前記薬液収容部が所定の大きさ以上の力を受けると前記境界部分を開く薬液閉塞部とを備え、
前記ノズルに接続されるチューブを介して患者の胃や腸に前記薬液を投与する投薬用容器であって、
洗浄液を収容して前記排出部に導入可能な洗浄部が前記排出部に連通するように設けられていることを特徴とする投薬用容器。
【請求項2】
前記洗浄部は、
開閉可能な洗浄液入口部と、
洗浄液を収容可能な洗浄液収容部と、
前記洗浄液収容部に収容された洗浄液を前記排出部に導入可能な洗浄液導入部と、
前記洗浄液収容部と前記洗浄液導入部の間の境界部分を閉塞し、前記洗浄液を収容している前記洗浄液収容部が所定の大きさ以上の力を受けると前記境界部分を開く洗浄液閉塞部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の投薬用容器。
【請求項3】
第1シートと、該第1シートと対向する第2シートと、前記第1シートと前記第2シートに間に設けられた中間シートとからなり、
前記入口部と前記薬液収容部と前記排出部は、前記第1シートと前記中間シートの間に形成され、
前記洗浄部は、前記中間シートと前記第2シートの間に形成され、
前記中間シートの下端は、前記ノズルより上流側に位置し、前記排出部と前記洗浄液導入部を連通するように形成され、
前記薬液閉塞部は、前記洗浄液閉塞部よりも前記ノズルから遠い位置にあることを特徴とする請求項2に記載の投薬用容器。
【請求項4】
第1シートと、該第1シートと対向する第2シートと、前記第1シートと前記第2シートに間に設けられ前記第1シートに隣接する第3シートと、前記第1シートと前記第2シートに間に設けられ前記第3シートに隣接する第4シートとからなり、
前記入口部と前記薬液収容部と前記排出部前記入口部とは、前記第1シートと前記第3シートの間に形成され、
前記洗浄部は、前記第2シートと前記第4シートの間に形成され、
前記第3シートの下端と前記第4シートの下端は、前記ノズルより上流側に位置し、前記排出部と前記洗浄液導入部を連通するように形成され、
前記第3シートの下縁部と前記第4シートの下縁部は互いに接合されていることを特徴とする請求項2に記載の投薬用容器。
【請求項5】
第1シートと、該第1シートと対向する第2シートと、前記第1シート又は前記第2シートに隣接する外側シートとからなり、
前記入口部と前記薬液収容部と前記排出部と前記入口部は、前記第1シートと前記第2シートの間に形成され、
前記洗浄部は、前記外側シートと該外側シートに隣接する前記第1シート又は前記第2シートとの間に形成され、
前記外側シートに隣接する前記第1シート又は前記第2シートに、前記排出部に連通する連通口が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の投薬用容器。
【請求項6】
前記洗浄部を形成する外側シートの入口部は開口していることを特徴とする請求項5に記載の投薬用容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は投薬用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
嚥下障害等により口から栄養が取れない患者の場合、経鼻胃管、胃瘻、腸瘻等の経管栄養補給法が行われている。このような経管栄養補給法では、ボトルやバッグ(以下、「投薬用容器」という)に栄養剤等の薬液を入れ、チューブを介して胃や腸に投与する。
【0003】
従来、投薬用容器として、特許文献1には、投薬用容器に収容部とノズルからなる排出部とを備え、収容部と排出部との境界部分を閉塞する閉塞部をさらに備え、収容部に医薬品と液体を収容して、医薬品を崩壊、懸濁させて、収容部に力を加えて閉塞部を開き、収容部内の医薬品と液体の混合物を排出部のノズルを経てチューブに流出することができる投薬用容器が記載されている。
【0004】
投薬用容器を使用して栄養剤等の薬液を投与した後、投薬用容器は廃棄するが、患者の体内に長期間留置させたチューブは毎回抜いてその状態を確認することができないため、チューブ内の詰まりを防止するべく洗浄したいという看護師などからの要望がある。チューブ内を洗浄するためには、投薬用容器の入口部を開けて湯を入れ、水・お湯や酢などをチューブに通して胃や腸に流し込んだりする必要がある。なお、短期間留置しているのみのチューブについては投薬用容器からチューブを外して注射器でお湯をチューブに注入することができる。しかし、投薬後に投薬用容器を開いたり、チューブを外して注射器を接続するなど、洗浄のための作業が煩わしい。
【0005】
特許文献2には、バッグ内をすすいで残留試薬を除去するために導管を供給バッグの端部に設けた供給バッグが記載されている。しかし、この供給バッグは、所要量の洗浄液を溜める部分がないため、導管を洗浄液の供給源に接続しなければならないし、洗浄液の貯留タンク等を用意しなければならない等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5873483号明細書
【文献】特許第5467154号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記従来の問題点に鑑みてなされたもので、投薬用容器に接続するチューブを容易に洗浄することができる投薬用容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、
開閉可能な入口部と、
医薬品と液体とを混合した薬液を収容可能な薬液収容部と、
前記薬液収容部に収容された薬液を排出可能な排出部と、
前記排出部に設けられたノズルと、
前記薬液収容部と前記排出部の間の境界部分を閉塞し、前記薬液を収容している前記薬液収容部が所定の大きさ以上の力を受けると前記境界部分を開く薬液閉塞部とを備え、
前記ノズルに接続されるチューブを介して患者の胃や腸に前記薬液を投与する投薬用容器であって、
洗浄液を収容して前記排出部に導入可能な洗浄部が前記排出部に連通するように設けられている。
【0009】
本発明では、投薬用容器の薬液収容部に医薬品と液体を収容し、医薬品を圧潰して薬液とした後、薬液閉塞部を開いて薬液収容部の薬液を排出部から、ノズルに接続したチューブを介して患者の胃又は腸に投与する。薬液の投与を終えると、洗浄部に洗浄液を収容し、該洗浄液を排出部に導入し、排出部のノズルからチューブに流通させて胃又は腸に流し込むことにより、チューブ内を洗浄する。
【0010】
本発明の好ましい形態では、
前記洗浄部は、
開閉可能な洗浄液入口部と、
洗浄液を収容可能な洗浄液収容部と、
前記洗浄液収容部に収容された洗浄液を前記排出部に導入可能な洗浄液導入部と、
前記洗浄液収容部と前記洗浄液導入部の間の境界部分を閉塞し、前記洗浄液を収容している前記洗浄液収容部が所定の大きさ以上の力を受けると前記境界部分を開く洗浄液閉塞部とを備える。
この形態では、薬液収容部に薬液を収容し、洗浄液収容部に洗浄液を収容しておき、まず薬液閉塞部を開いて薬液収容部の薬液の投与を終えた後、洗浄部の洗浄液閉塞部を開いて洗浄液収容部の洗浄液を洗浄液導入部から排出部に導入し、排出部のノズルからチューブに流通させて、チューブ内を洗浄することができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、
第1シートと、該第1シートと対向する第2シートと、前記第1シートと前記第2シートに間に設けられた中間シートとからなり、
前記入口部と前記薬液収容部と前記排出部は、前記第1シートと前記中間シートの間に形成され、
前記洗浄部は、前記中間シートと前記第2シートの間に形成され、
前記中間シートの下端は、前記ノズルより上流側に位置し、前記排出部と前記洗浄液導入部を連通するように形成され、
前記薬液閉塞部は、前記洗浄液閉塞部よりも前記ノズルから遠い位置にある。
この形態では、薬液閉塞部が洗浄液閉塞部よりもノズルから遠い位置にあるので、薬液収容部のほうが洗浄液収容部より容量が小さい。このため、投薬用容器の入口部側を折り曲げる等して薬液収容部と洗浄液収容部に同時に外力を加えたとしても、容量の小さい薬液収容部の薬液閉塞部が洗浄液収容部の洗浄液閉塞部より先に破断して開くので、薬液収容部の薬液を先に投与することができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、
第1シートと、該第1シートと対向する第2シートと、前記第1シートと前記第2シートに間に設けられ前記第1シートに隣接する第3シートと、前記第1シートと前記第2シートに間に設けられ前記第3シートに隣接する第4シートとからなり、
前記入口部と前記薬液収容部と前記排出部前記入口部とは、前記第1シートと前記第3シートの間に形成され、
前記洗浄部は、前記第2シートと前記第4シートの間に形成され、
前記第3シートの下端と前記第4シートの下端は、前記ノズルより上流側に位置し、前記排出部と前記洗浄液導入部を連通するように形成され、
前記第3シートの下縁部と前記第4シートの下縁部は互いに接合されている
この形態では、薬液収容部は第1シートと第3シートの間にあり、洗浄液収容部は第2シートと第4シートの間にあるので、薬液収容部と洗浄液収容部に対して別個に外力を加えることができる。このため、薬液収容部の薬液閉塞部を先に破断して開いて、薬液収容部の薬液投与した後、洗浄液収容部の洗浄液閉塞部を破断して開いて、洗浄液収容部の洗浄液を排出部に導入することができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、
第1シートと、該第1シートと対向する第2シートと、前記第1シート又は前記第2シートに隣接する外側シートとからなり、
前記入口部と前記薬液収容部と前記排出部と前記入口部は、前記第1シートと前記第2シートの間に形成され、
前記洗浄部は、前記外側シートと該外側シートに隣接する前記第1シート又は前記第2シートとの間に形成され、
前記外側シートに隣接する前記第1シート又は前記第2シートに、前記排出部に連通する連通口が形成されている。
前記洗浄部を形成する外側シートの入口部は開口していてもよい。
この形態では、薬液収容部に薬液を収容し、薬液閉塞部を開いて薬液収容部の薬液の投与を終えた後、洗浄部に洗浄液を入れて、連通孔から排出部に導入し、排出部から洗浄液をチューブに流通させて胃又は腸に流し込むことにより、チューブ内を洗浄することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、投薬用容器の薬液収容部に医薬品と液体を収容し、医薬品を圧潰して薬液とした後、薬液閉塞部を開いて薬液収容部の薬液を排出部から、ノズルに接続したチューブを介して患者の胃又は腸に投与することができる。薬液の投与を終えると、洗浄部に洗浄液を収容し、該洗浄液を排出部に導入し、排出部のノズルからチューブに流通させて胃又は腸に流し込むことにより、チューブ内を容易に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態による投薬用容器の部分破断斜視図。
図2】ノズルの第1実施例(a)及び第2実施例(b)を示す断面図。
図3図1の投薬用容器の分解斜視図。
図4図1の投薬用容器の使用状況を順に示す断面図。
図5】本発明の投薬用容器を折り曲げて、薬液収容部を押圧することにより、薬液閉塞部を破断する状況(a)、及び洗浄液収容部を押圧することにより、洗浄液閉塞部を破断する状況(b)を示す断面図。
図6】本発明の第2実施形態による投薬用容器の部分破断斜視図。
図7図6の投薬用容器の分解斜視図。
図8図6の投薬用容器の使用状況を順に示す断面図。
図9】本発明の第3実施形態による投薬用容器の部分破断斜視図。
図10図9の投薬用容器の分解斜視図。
図11図9の投薬用容器の使用状況を順に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態を添付図面に従って説明する。以下の実施形態では、説明の便宜上、投薬用容器のノズル側を「下」、ノズルと反対側を「上」と言及する。
【0017】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態による投薬用容器1を示す。投薬用容器1は、図3に示すように、第1シート2と、該第1シート2と対向する第2シート3と、第1シート2と第2シート3に間に設けられた中間シート4とからなる。第1シート2と第2シート3は同じ矩形の形状を有している。中間シート4は、第1シート2と第2シート3と同じ幅であるが、第1シート2と第2シート3よりも長さが短い矩形の形状を有している。
【0018】
第1シート2は、両側の縁部2a,2bの上方の大半部分と上縁部2cが中間シート4の一方の面の両側の縁部4a,4bと上縁部4cにそれぞれ接着されている。同様に第2シート3は、両側の縁部3a,3bの上方の大半部分と上縁部3cが中間シート4の他方の面の両側の縁部4a,4bと上縁部4cにそれぞれ接着されている。第1シート2の両側の縁部2a,2bの下方の残部分と、第2シート3の両側の縁部3a,3bの下方の残部分とは、互いに接着されている。第1シート2の下縁部2dと第2シート3の下縁部3dとは、ノズル10を挟んで互いに接着されている。第1シート2と中間シート4の間には、薬液を収容する薬液収容部11と排出部12が形成されている。第2シート3と中間シート4の間には、洗浄液を収容する洗浄液収容部13と洗浄液導入部14が形成されている。
【0019】
3枚のシート2,3,4の外周縁部の接着部は、容易に剥がれないようしっかりと貼り合わせられ、所定の力がかかっても剥がれないようになっている。投薬用容器1の全長は100ミリメートル~170ミリメートル程度、幅は80ミリメートル程度である。
【0020】
3枚のシート2,3,4は、次に述べる要件を満たす素材でできている。第1の要件は、柔らかいという要件である。柔らかさを具体的に述べると、医薬品と温水との混合物が収容されているときその混合物中の医薬品に対して集中的に外力を加えることができる柔らかさである。第2の要件は、高温の温水を収容しても成分が温水の中に溶け出さないという要件である。第3の要件は、色つきの透明および無色透明のうち少なくとも一方に該当するという要件である。
【0021】
これらの要件を満たすため、本実施形態にかかるシート2,3,4は、3層からなる複合材料である。本実施形態においては、これらの層を、「溶着層」、「密閉層」、および、「強度層」と称する。溶着層は、シート2,3,4同士を貼り合わせる際に溶ける面である。溶着層が溶けることによりシート2,3,4は融着する。本実施形態の場合、この層はポリエチレンを素材としている。密閉層は、水分などの通過を防ぐ層である。本実施形態の場合、この層はポリエチレンテレフタレートを素材としている。強度層は、投薬用容器1にかかる荷重を受ける。本実施形態の場合、この層はナイロンを素材としている。もちろん、シート2,3,4の素材はこのようなものに限定されない。
【0022】
薬液収容部11と排出部12の間の境界部分には、第1シート2と中間シート4を互いに接着することにより薬液閉塞部15が形成されている。薬液閉塞部15は、薬液を収容している薬液収容部11が所定の大きさ以上の力を受けると薬液収容部11と排出部12の間の境界部分を破断して開くように形成されている。同様に、洗浄液収容部13と洗浄液導入部14の間の境界部分には、第2シート3と中間シート4を互いに接着することにより洗浄液閉塞部16が形成されている。洗浄液閉塞部16は、洗浄液を収容している洗浄液収容部13が所定の大きさ以上の力を受けると洗浄液収容部14と洗浄液導入部15の間の境界部分を破断して開くように形成されている。薬液閉塞部15は、洗浄液閉塞部16よりもノズル10から遠い位置にある。
【0023】
薬液閉塞部15は、第1シート2と中間シート4を互いに接着することにより形成することが好ましいが、チャックテープでもよい。同様に、洗浄液閉塞部16は、第2シート3と中間シート4を互いに接着することにより形成することが好ましいが、チャックテープでもよい。シートの接着により薬液閉塞部15、洗浄液閉塞部16を形成する場合、第1シート2と中間シート4、第2シート3と中間シート4をそれぞれ公知の方法(例えば、特開2006-52013号公報、特開2007-222292号公報、特開平11-377号公報等参照)で熱融着させる。融着強度は、3枚のシートの外周縁部よりも剥離しやすいように設定する。薬液閉塞部15の融着強度は、洗浄液閉塞部16の融着強度より弱くすることで、投薬用容器1の薬液収容部11と洗浄液収容部13に同時に外力を加えた場合に、薬液閉塞部15のほうが洗浄液閉塞部16よりも先に開くようにしてもよい。
【0024】
ノズル10は、図2(a)示すように、先細りのテーパ状とし、チューブ17側のコネクタ18に差し込んで接続するようになっている。ノズル10は、図2(b)に示すように、雌コネクタ19とし、チューブ17側の雄コネクタ20をねじ込んで接続するようにしてもよい。雌コネクタ19と雄コネクタ20は、ISO80369-3に規定されるものである。
【0025】
第1シート2の上縁部2cには、スリットが形成されて入口部21となっている。同様に、第2シート3の上縁部3cには、スリットが形成されて洗浄液入口部22となっている。第1シート2の入口部21より下方の内側には溝と突条からなる周知のチャックテープ23が設けられ、薬液収容部11を開閉可能にしている。同様に、第2シート3の洗浄液入口部22より下方の内側にはチャックテープ24が設けられ、洗浄液収容部13を開閉可能にしている。排出部12の底はノズルに向かって傾斜している。投薬容器1の上縁部1aの中央には吊り孔25、底縁部1bの両側には吊り孔26が形成されている。
【0026】
本実施形態の場合、入口部21のチャックテープ23及び洗浄液入口部22のチャックテープ24は、薬液閉塞部15及び洗浄液閉塞部16を構成するチャックテープよりも漏れにくいものとなっている。このように、チャックテープ23,24は、入口側からは比較的小さい力で開き、収容部側からは比較的大きい力でないと開かないようになっている。これにより、入口からは容易に収容部に医薬品と液体の混合物を収容できるように、入口側からはチャックテープを開けやすく、一方、収容部に収容されている薬液が漏れにくいように、収容部側からはチャックテープを開けにくくできる。
【0027】
次に、前記構成の投薬用容器1を使用して簡易懸濁法により投薬を行う場合における投薬用容器1の作用を説明する。
【0028】
投薬用容器1の薬液閉塞部15及び洗浄液閉塞部16がチャックテープの場合、当該チャックテープが閉じていることを確認してから、図4(a)に示すように、薬液収容部11のチャックテープ23を開き、入口部21を広げ、図4(b)に示すように、薬液収容部11に患者の投薬に必要なカプセル剤や錠剤等の医薬品と、常温の水または55℃の温湯を入れて、チャックテープ23を閉じる。この状態で、投薬用容器1を所定時間放置し、医薬品を崩壊、懸濁させる。必要に応じて、投薬用容器1を振ったり、外側から外力を加えて医薬品を崩壊させてもよい。次に、洗浄液収容部13のチャックテープ24を開き、洗浄液入口部22を広げ、図4(c)に示すように、洗浄液収容部13に水、お湯、酢等の洗浄液を入れて、チャックテープ24を閉じる。
【0029】
薬液収容部11の薬液の懸濁中は、ノズル10を上にして、投薬用容器1をノズル10側の吊り孔25を図示しないスタンドのフックに掛けて吊るしてもよい。常温の水で懸濁した場合は、人の体温近くまで加温してもよい。
【0030】
投薬用容器1の薬液収容部11の薬液が体温に近い温度になると、図4(c)に示すように、投薬用容器1のノズル10にチューブ17のコネクタ18を接続する。チューブ17は、患者の経鼻胃管や、胃瘻、腸瘻等であり、胃や腸の中まで達している。
【0031】
投薬用容器10がチューブ17に接続されると、図5(a)に示すように、投薬用容器1の上部を折り曲げて握り、薬液収容部11に外力を加える。これにより、薬液収容部11内の薬液に圧力がかかり、該圧力により薬液閉塞部15が剥離して開く。薬液収容部11に外力を加えたとき、洗浄液収容部13にも外力が加わるが、薬液閉塞部15が洗浄液閉塞部16よりもノズル10から遠い位置にあって薬液収容部11のほうが洗浄液収容部13より容量が小さいため、容量の小さい薬液収容部11の薬液閉塞部15が洗浄液収容部13の洗浄液閉塞部16より先に破断して開く。この結果、薬液収容部11の薬液を先に投与することができる。薬液収容部11の薬液は、図4(d)に示すように、排出部12と、チューブ17とを経て、患者の体内の胃や腸に投与される。
【0032】
薬液の投与が終わると、図5(b)に示すように、再び投薬用容器1の上部を折り曲げて握り、洗浄液収容部13に外力を加える。これにより、洗浄液収容部13内の洗浄液に圧力がかかり、該圧力により洗浄液閉塞部16が剥離して開く。洗浄液収容部13の洗浄液は、図4(e)に示すように、洗浄液導入部14から排出部12を経て、チューブ17内を通り、チューブ17内を洗浄しながら患者の体内の胃や腸に流出する。
【0033】
薬液の投与、チューブの洗浄が終わると、投薬用容器1をチューブ17から取り外す。用済みの投薬用容器1は廃棄することができる。
【0034】
<第2実施形態>
図6は、本発明の第2実施形態による投薬用容器1Aを示す。第2実施形態の投薬用容器1Aは、以下に特記する以外は、第1実施形態の投薬用容器1と実質的に同一であり、対応する部分に同一符号を附して説明を省略する。
【0035】
投薬用容器1Aは、図7に示すように、第1シート2と、該第1シート2と対向する第2シート3と、第1シート2と第2シート3の間にあって第1シート2に隣接する第3シート5と、第1シート2と第2シート3の間にあって第2シート3に隣接する第4シート6とからなる。第1シート2と第2シート3は同じ矩形の形状を有している。第3シート5と第4シート6は、第1シート2と第2シート3と同じ幅であるが、第1シート2と第2シート3よりも長さが短い矩形の形状を有している。
【0036】
第1シート2は、両側の縁部2a,2bの上方の大半部分と上縁部2cが第3シート5の両側の縁部5a,5bと上縁部5cにそれぞれ接着されている。同様に第2シート3は、両側の縁部3a,3bの上方の大半部分と上縁部3cが第4シート6の両側の縁部6a,6bと上縁部6cにそれぞれ接着されている。第1シート2の両側の縁部2a,2bの下方の残部分と、第2シート3の両側の縁部3a,3bの下方の残部分とは、互いに接着されている。第1シート2の下縁部2dと第2シート3の下縁部3dとは、ノズル10を挟んで互いに接着されている。第3シート5の下縁部5dと第4シート6の下縁部6dとは、互いに接着されている。第1シート2と第3シート5の間に、薬液を収容する薬液収容部11と排出部12が形成されている。第2シート3と第4シート6の間に、洗浄液を収容する洗浄液収容部13と洗浄液導入部14が形成されている。
【0037】
薬液収容部11と排出部12の間の境界部分には、薬液閉塞部15が形成されている。同様に、洗浄液収容部13と洗浄液導入部14の間の境界部分には、洗浄液閉塞部16が形成されている。
【0038】
第1シート2の上縁部2cは、スリットが形成されて入口部21となっている。同様に、第2シート3の上縁部3cには、スリットが形成されて洗浄液入口部22となっている。第1シート2の入口部21より下方の内側にはチャックテープ23が設けられ、薬液収容部11を開閉可能にしている。同様に、第2シート3の洗浄液入口部22より下方の内側にはチャックテープ24が設けられ、洗浄液収容部13を開閉可能にしている。
【0039】
次に、前記構成の投薬用容器1Aを使用して簡易懸濁法により投薬を行う場合における投薬用容器1Aの作用を説明する。
【0040】
図8(a)に示すように、投薬用容器1Aの薬液収容部11のチャックテープ23を開き、入口部21を広げ、医薬品と常温の水または55℃の温湯を入れて、チャックテープ23を閉じる。次に、洗浄液収容部13のチャックテープ24を開き、洗浄液入口部22を広げ、図8(b)に示すように、洗浄液を入れて、チャックテープ24を閉じる。
【0041】
投薬用容器1Aの薬液収容部11の薬液が体温に近い温度になると、図8(c)に示すように、投薬用容器1Aのノズル10にチューブ17のコネクタ18を接続する。
【0042】
投薬用容器1Aの薬液収容部11に外力を加えて、薬液閉塞部15を開く。薬液収容部11の薬液は、図8(d)に示すように、排出部12と、チューブ17とを経て、患者の体内の胃や腸に投与される。
【0043】
薬液の投与が終わると、投薬用容器1Aの洗浄液収容部13に外力を加えて、洗浄液閉塞部16を開く。洗浄液収容部13の洗浄液は、図8(e)に示すように、洗浄液導入部14から排出部12を経て、チューブ17内を通り、チューブ17内を洗浄しながら患者の体内の胃や腸に流出する。
【0044】
<第3実施形態>
図9は、本発明の第3実施形態による投薬用容器1Bを示す。第3実施形態の投薬用容器1Bは、以下に特記する以外は、第1実施形態の投薬用容器1と実質的に同一であり、対応する部分に同一符号を附して説明を省略する。
【0045】
投薬用容器1Bは、図10に示すように、第1シート2と、該第1シート2と対向する第2シート3と、第1シート2又は第2シート3に隣接する外側シート7とからなる。第1シート2と第2シート3は同じ矩形の形状を有している。外側シート7は、第1シート2と第2シート3と同じ幅であるが、第1シート2と第2シート3よりも長さが短い矩形の形状を有している。
【0046】
第1シート2は、両側の縁部2a,2bと上縁部2cが第2シート3の両側の縁部3a,3bと上縁部3cにそれぞれ接着されている。第1シート2の下縁部2dと第2シート3の下縁部3dとは、ノズル10を挟んで互いに接着されている。外側シート7の両側の縁部7a,7bは、第1シート2の両側の縁部2a,2bに接着され、外側シート7の下縁部7dは、第1シート2の下縁部2dと後述する薬液閉塞部15との間に接着されている。第1シート2と第2シート3の間に、薬液を収容する薬液収容部11と排出部12が形成されている。第1シート2と外側シート7の間に、洗浄液を収容する洗浄液収容部13が形成されている。
【0047】
薬液収容部11と排出部12の間の境界部分には、薬液閉塞部15が形成されている。薬液閉塞部15と外側シート7の下縁部7dとの間には、排出部12に連通する連通口27が形成されている。
【0048】
第1シート2の上縁部2aには、スリットが形成されて入口部21となっている。第1シート2の入口部21より下方の内側にはチャックテープ23が設けられ、薬液収容部11を開閉可能にしている。
【0049】
次に、前記構成の投薬用容器1Bを使用して簡易懸濁法により投薬を行う場合における投薬用容器1の作用を説明する。
【0050】
図11(a)に示すように、投薬用容器1Bのチャックテープ23を開き、入口部21を広げ、図11(b)に示すように、医薬品と常温の水または55℃の温湯を入れて、チャックテープ23を閉じる。
【0051】
投薬用容器1Bの薬液収容部11の薬液が体温に近い温度になると、投薬用容器1Bのノズル10にチューブ17のコネクタ18を接続する。
【0052】
投薬用容器1Bの薬液収容部11に外力を加えて、薬液閉塞部15を開く。薬液収容部11の薬液は、図11(c)に示すように、排出部12と、チューブ17とを経て、患者の体内の胃や腸に投与される。
【0053】
薬液の投与が終わると、図11(d)に示すように、洗浄液収容部13の洗浄液入口部22を広げ、洗浄液収容部13に洗浄液を入れる。洗浄液収容部13の洗浄液は、連通口27から排出部12を経て、チューブ17内を通り、チューブ17内を洗浄しながら患者の体内の胃や腸に流出する。
【0054】
本発明は以上の実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々変更することができる。例えば、第1実施形態の第1シートと第2シート、第2実施形態の第1シートと第3シート、第2シートと第4シート、第3実施形態の第1シートと第2シートは、1枚のシートを折って形成してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1,1A,1B…投薬用容器
2…第1シート
3…第2シート
4…中間シート
5…第3シート
6…第4シート
7…外側シート
10…ノズル
11…薬液収容部
12…排出部
13…洗浄液収容部(洗浄部)
14…洗浄液導入部(洗浄部)
15…薬液閉塞部
16…洗浄液閉塞部(洗浄部)
17…チューブ
18…コネクタ
19…雌コネクタ
20…雄コネクタ
21…入口部
22…洗浄液入口部
23…チャックテープ
24…チャックテープ
25…吊り孔
26…吊り孔
27…連通口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11