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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】パークロック装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 63/34 20060101AFI20220607BHJP
【FI】
F16H63/34
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018157026
(22)【出願日】2018-08-24
(65)【公開番号】P2020029930
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】517175611
【氏名又は名称】ジーケーエヌ オートモーティブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】松本 尚之
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-12499(JP,A)
【文献】特開2003-104083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 63/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの分割ケースからなるケーシングと、このケーシングの内部に回転可能に配置された回転軸と、この回転軸の回転により前記回転軸の軸心周りを回動する回動部材と、この回動部材の回動により移動操作される移動機構と、前記ケーシング内に配置され回転駆動される駆動軸と、前記移動機構の移動により前記駆動軸の回転を阻止するロック部材とを備えたパークロック装置であって、
前記回動部材は、前記ロック部材が前記駆動軸の回転を阻止するロック位置側と、前記ロック部材による前記駆動軸の回転の阻止を解除するロック解除位置側との間を回動され、
隣り合う前記分割ケースのうち一方には、前記回動部材が前記ロック位置側及び前記ロック解除位置側に回動したときに前記回動部材と当接して前記回動部材の回動を規制する規制面が設けられ、
前記規制面は、隣り合う前記分割ケースの合わせ面と同一平面上に配置されていることを特徴とするパークロック装置。
【請求項2】
請求項1記載のパークロック装置であって、
隣り合う前記分割ケースのうち他方には、前記回転軸が支持されていることを特徴とするパークロック装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のパークロック装置であって、
前記規制面は、隣り合う前記分割ケースの合わせ面との間に隙間が形成されていることを特徴とするパークロック装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載のパークロック装置であって、
前記規制面は、隣り合う前記分割ケースの合わせ面と連続して形成されていることを特徴とするパークロック装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のパークロック装置であって、
前記回動部材には、前記回動部材の回動に対して段階的に付勢力を付与する付勢部材が係合される係合部が設けられ、
前記規制面は、前記回転軸を挟んで前記係合部と反対側に配置されていることを特徴とするパークロック装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のパークロック装置であって、
前記回転軸は、軸心方向が隣り合う前記分割ケースの合わせ面と平行に配置されていることを特徴とするパークロック装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のパークロック装置であって、
前記回動部材には、前記ロック位置側及び前記ロック解除位置側に回動したときに前記規制面と当接する2つの当接部が設けられ、
2つの前記当接部の中間の延長上には、前記回動部材の回動中心が位置されていることを特徴とするパークロック装置。
【請求項8】
請求項7記載のパークロック装置であって、
前記回動部材には、前記回動部材の回動に対して段階的に付勢力を付与する付勢部材が係合される係合部が設けられ、
前記係合部は、2つの前記当接部の間の延長上に形成されていることを特徴とするパークロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に適用されるパークロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パークロック装置としては、少なくとも2つの分割ケースからなるケーシングと、このケーシングの内部に回転可能に配置された回転軸と、この回転軸の回転により回転軸の軸心周りを回動する回動部材と、この回動部材の回動により移動操作される移動機構と、ケーシング内に配置され回転駆動される駆動軸と、移動機構の移動により駆動軸の回転を阻止するロック部材とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このパークロック装置では、回動部材が、ロック部材が駆動軸の回転を阻止するロック位置と、ロック部材による駆動軸の回転の阻止を解除するロック解除位置との間を回動される。
【0004】
この回動部材のロック位置及びロック解除位置における回動を規制するために、ケーシングには、回動部材のロック位置及びロック解除位置で、回動部材と当接が可能で回動位置を規制する規制部材としてのピンが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-102816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のようなパークロック装置では、回動部材の回動位置を規制するために、ケーシングにピンを設けているので、ケーシングに対するピンの組付精度、ピンを組付けるためのケーシングの加工精度などを高める必要があり、高コスト化していた。
【0007】
そこで、この発明は、低コスト化することができ、回動部材の回動位置を安定して規制することができるパークロック装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも2つの分割ケースからなるケーシングと、このケーシングの内部に回転可能に配置された回転軸と、この回転軸の回転により前記回転軸の軸心周りを回動する回動部材と、この回動部材の回動により移動操作される移動機構と、前記ケーシング内に配置され回転駆動される駆動軸と、前記移動機構の移動により前記駆動軸の回転を阻止するロック部材とを備えたパークロック装置であって、前記回動部材は、前記ロック部材が前記駆動軸の回転を阻止するロック位置側と、前記ロック部材による前記駆動軸の回転の阻止を解除するロック解除位置側との間を回動され、隣り合う前記分割ケースのうち一方には、前記回動部材が前記ロック位置側及び前記ロック解除位置側に回動したときに前記回動部材と当接して前記回動部材の回動を規制する規制面が設けられ、前記規制面は、隣り合う前記分割ケースの合わせ面と同一平面上に配置されていることを特徴とする。
【0009】
このパークロック装置では、隣り合う分割ケースのうち一方に、回動部材がロック位置側及びロック解除位置側に回動したときに回動部材と当接して回動部材の回動を規制する規制面が設けられているので、回動部材のロック位置側及びロック解除位置側での回動位置を安定して規制することができる。
【0010】
また、規制面は、隣り合う分割ケースの合わせ面と同一平面上に配置されているので、規制面を分割ケースの合わせ面の加工に合わせて精度よく容易に形成することができる。
【0011】
従って、このようなパークロック装置では、回動部材の回動位置を安定して規制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低コスト化することができ、回動部材の回動位置を安定して規制することができるパークロック装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係るパークロック装置の要部拡大断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るパークロック装置の第1分割ケースの側面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るパークロック装置の第2分割ケースの側面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るパークロック装置の第2分割ケースの断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係るパークロック装置の第1分割ケースの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1図5を用いて本発明の実施の形態に係るパークロック装置について説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1図4を用いて第1実施形態について説明する。
【0016】
本実施の形態に係るパークロック装置1は、少なくとも2つの分割ケースとしての第1分割ケース3と第2分割ケース5とからなるケーシング7と、このケーシング7の内部に回転可能に配置された回転軸9と、この回転軸9の回転により回転軸9の軸心周りを回動する回動部材11と、この回動部材11の回動により移動操作される移動機構13と、ケーシング7内に配置され回転駆動される駆動軸15と、移動機構13の移動により駆動軸15の回転を阻止するロック部材17とを備えている。
【0017】
また、回動部材11は、回転方向一方側の回動により、ロック部材17が駆動軸15の回転を阻止するロック位置側と、回転方向他方側の回動により、ロック部材17による駆動軸15の回転の阻止を解除するロック解除位置側との間を回動される。
【0018】
さらに、第1分割ケース3には、回動部材11がロック位置側及びロック解除位置側に回動したときに回動部材11と当接して回動部材11の回動を規制する規制面19,21が設けられている。
【0019】
そして、規制面19,21は、第1分割ケース3と第2分割ケース5との合わせ面23と同一平面上に配置されている。
【0020】
また、第2分割ケース5には、回転軸9が支持されている。
【0021】
さらに、規制面19,21は、第1分割ケース3と第2分割ケース5との合わせ面23との間に隙間が形成されている。
【0022】
また、回動部材11には、回動部材11の回動に対して段階的に付勢力を付与する付勢部材25の切欠き両端側の腕部28に固定された円柱ピン30の中間部に支持された円筒ローラ32の外周面が係合されるV字形の係合部27,29が設けられ、規制面19,21は、回転軸9を挟んで係合部27,29と反対側に配置されている。
【0023】
円筒ローラ32は、回動部材11の回転方向一方側或いは他方側への回動によって、係合部27又は係合部29のいずれかに係合し、付勢部材25の付勢力(本実施の形態ではバネ力)を受ける。
【0024】
これにより、円筒ローラ32が係合部27,29のV字形の両回転方向面と強固に係合し、ロック位置又はロック解除位置として位置決めされる。
【0025】
さらに、回転軸9は、軸心方向が第1分割ケース3と第2分割ケース5との合わせ面23と平行に配置されている。
【0026】
また、回動部材11には、ロック位置側及びロック解除位置側に回動したときに規制面19,21と当接する2つの当接部31,33が設けられ、2つの当接部31,33の中間の延長上には、回動部材11の回動中心が位置されている。
【0027】
さらに、係合部27,29は、2つの当接部31,33の間の延長上に形成されている。
【0028】
図1図4に示すように、ケーシング7は、2分割された2つの第1分割ケース3と、第2分割ケース5とからなる。
【0029】
この第1分割ケース3と第2分割ケース5とは、それぞれの対向面に形成された合わせ面23を合わせ、ボルトなどの固定手段によって固定することによって、各部材を収容する収容空間を形成する。
【0030】
なお、第1分割ケース3と第2分割ケース5との合わせ面23には、シール部材としての液状のガスケットが配置され、ケーシング7の内部が外部から区画される。
【0031】
このようなケーシング7の内部には、回転軸9と、回動部材11と、移動機構13と、駆動軸15と、ロック部材17と、付勢部材25などが収容されている。
【0032】
回転軸9は、ケーシング7の第2分割ケース5の側壁を挿通し、第2分割ケース5に回転可能に支持されている。
【0033】
この回転軸9のケーシング7の外部に配置される端部には、ケーシング7の外部に取り付けられる電動モータからなるアクチュエータ(不図示)が接続されている。
【0034】
このアクチュエータは、ドライバなどのユーザがシフトレンジを切り替えることによって作動され、回転軸9を回転駆動させる。
【0035】
さらに、この電動モータはステッピングモータが用いられ、回転方向一方側であるロック位置側と、回転方向他方側であるロック解除位置側とになるように所定角度回動することができる。
【0036】
回動制御は図示外の制御手段で行われ、その制御手段は、規制面19,21と2つの当接部31,33とが当接することで、電動モータの回転位置の状態を精度よくイニシャライジング(初期位置設定)することができる。
【0037】
このような回転軸9のケーシング7の内部に配置される端部側には、回動部材11が一体回転可能に設けられている。
【0038】
なお、回転軸9の端部には、回転軸9の外径側に突出するピンが設けられ、回動部材11の回転軸9からの抜け止めがなされている。
【0039】
回動部材11は、薄板状のプレートからなり、回転軸9の回転により回転軸9の軸心周りを回動する。
【0040】
この回動部材11は、回転軸9、すなわちアクチュエータの一方側と他方側への回転により、ロック部材17が駆動軸15の回転を阻止するロック位置と、ロック部材17による駆動軸15の回転の阻止を解除するロック解除位置との間を回動される。
【0041】
このような回動部材11の回動は、移動機構13に伝達される。
【0042】
移動機構13は、移動部材35と、操作部材37とを備えている。
【0043】
移動部材35は、長尺状のロッドからなり、一端側が、回動部材11に連結部39を介して係合され、回動部材11の回動により移動部材35が軸方向移動される。
【0044】
この移動部材35の他端側には、操作部材37が設けられている。
【0045】
操作部材37は、先細りとなるように円錐状に形成され、移動部材35の他端側に移動部材35と軸方向に一体移動可能で移動部材35上を移動可能に設けられ、ケーシング7の第2分割ケース5に固定された保持部材41の内部に軸方向移動可能に収容されている。
【0046】
この操作部材37と移動部材35との間には、ロック部材17が駆動軸15の回転を阻止する際に、ロック部材17の待ち機構となるスプリング43が配置されている。
【0047】
このような操作部材37は、軸方向移動により、円錐状に形成された傾斜面がロック部材17と当接する、或いは当接を解除することによってロック部材17を操作し、駆動軸15の回転を阻止、或いは回転の阻止を解除する。
【0048】
駆動軸15は、駆動源としてのエンジン(不図示)や電動モータ(不図示)から車輪までの動力伝達経路上に設けられた伝達機構45の中間軸となっている。
【0049】
伝達機構45は、エンジンに接続されたエンジン軸47と、電動モータに接続されたモータ軸49と、デファレンシャル装置50を介して駆動力を車輪に分配するデフ軸51と、ジェネレータ(不図示)に接続されたジェネレータ軸53と、エンジン軸47とデフ軸51との間に配置された中間軸55と、モータ軸49とデフ軸51との間に配置された駆動軸15とを備えている。
【0050】
この伝達機構45では、エンジン軸47の回転により、中間軸55を介してエンジンの駆動力がデフ軸51に出力される。
【0051】
また、エンジン軸47の回転は、ジェネレータ軸53に伝達され、ジェネレータで発電される。
【0052】
一方、モータ軸49の回転は、駆動軸15を介して電動モータの駆動力がデフ軸51に出力される。
【0053】
このような伝達機構45において、駆動軸15には、一体回転可能にギヤ57が設けられている。
【0054】
このギヤ57は、ロック部材17と噛み合うと、駆動軸15の回転が阻止され、デフ軸51が回転することなく、駆動源から車輪への駆動力の伝達が阻止される。
【0055】
ロック部材17は、ケーシング7の第2分割ケース5に凹状に設けられたロック保持部59内で回動可能に軸支され、当接部61とロック部63とを備えている。
【0056】
当接部61は、ロック部材17の一端側に設けられ、回動部材11のロック解除位置で、操作部材37を収容する保持部材41の内部に配置されている。
【0057】
この当接部61は、回動部材11のロック位置で、操作部材37が当接され、ロック部材17のロック部63が駆動軸15のギヤ57と噛み合うように、ロック部材17を回動させる。
【0058】
ロック部63は、ロック部材17の他端側に設けられ、当接部61が操作部材37と当接してロック部材17が回動されたときに、駆動軸15のギヤ57と噛み合い、駆動軸15の回転を阻止する。
【0059】
このとき、ロック部63がギヤ57の歯面に位置してギヤ57と噛み合っていない場合には、待ち機構としてのスプリング43によってロック部63がギヤ57の歯底に向けて付勢されており、ロック部63がギヤ57との噛み合い位置に位置したときにギヤ57と噛み合う。
【0060】
このようなロック部材17には、ロック部材17をロック部63とギヤ57との噛み合い解除方向に回動させるように付勢するスプリング65が配置されている。
【0061】
このスプリング65は、付勢力が移動機構13に設けられた待ち機構としてのスプリング43よりも弱く設定されている。
【0062】
このようなスプリング65は、ロック部材17の当接部61と操作部材37との当接が解除されたときに、ロック部材17をロック部63とギヤ57との噛み合い解除方向に回動させ、ロック部63とギヤ57との噛み合いを解除させ、駆動軸15の回転の阻止を解除させる。
【0063】
このようなロック部材17の回動をその回動位置の変動によって行う回動部材11には、付勢部材25によって段階的に付勢力が付与されている。
【0064】
付勢部材25は、板バネからなり、一端側がケーシング7の第2分割ケース5にボルトで固定され、他端側に回動部材11の係合部27,29に係合される円筒ローラ32を備えている。
【0065】
この付勢部材25の他端の円筒ローラ32は、回動部材11の回動により、回動部材11の係合部27,29の間を変動していずれかのV字形の係合部27,29に係合され、係合された位置で、付勢部材25が回動部材11に付勢力を付与し、回動部材11の回動を規制する。
【0066】
ここで、回動部材11の係合部27は、回動部材11がロック位置側に位置したときに、付勢部材25の円筒ローラ32が係合するV字形のロック用の凹部となっている。
【0067】
一方、回動部材11の係合部29は、回動部材11がロック解除位置側に位置したときに、付勢部材25の円筒ローラ32が係合するV字形の解除用の凹部となっている。
【0068】
このため、付勢部材25は、回動部材11のロック位置側又はロック解除位置側の2段階で、回動部材11に付勢力を付与する。
【0069】
このような付勢部材25の付勢力によって回動部材11の回動位置が規定される。
【0070】
ここで、回動部材11の回動規制手段は、回動部材11の不測の過回転を防止する、或いは上述したように電動モータなどのアクチュエータのイニシャライジングをするために設けられるものである。
【0071】
従来では、回動部材11のロック位置側と、ロック解除位置側とで、回動部材11と当接して回動部材11の回動を規制する規制部材としてのピンを、ケーシング7に設けていた。
【0072】
しかしながら、ケーシング7に別体のピンを組付ける構造では、ケーシング7に対するピンの組付精度、ピンを組付けるためのケーシング7の加工精度などを高める必要があり、高コスト化していた。
【0073】
また、ケーシング7に一体のピンを設ける構造であっても、ピンの外周面に回動部材11を当接させているので、ケーシング7に対してピンを設ける位置の精度を高める必要があり、高コスト化してしまう懸念があった。
【0074】
そこで、ケーシング7の第1分割ケース3には、回動部材11がロック位置側及びロック解除位置側に回動したときに回動部材11と当接して回動部材11の回動を規制する規制面19,21が設けられ、規制面19,21は、第1分割ケース3と第2分割ケース5との合わせ面23と同一平面上に配置されている。
【0075】
規制面19,21は、ケーシング7の第1分割ケース3の底部から合わせ面23側に向けて突設された突部の突出方向の先端面となっている。
【0076】
この規制面19,21のうち規制面19は、回動部材11がロック位置側に位置したときに、回動部材11と当接するロック面となっている。
【0077】
一方、規制面21は、回動部材11がロック解除位置側に位置したときに、回動部材11と当接する解除面となっている。
【0078】
このような規制面19,21は、第1分割ケース3を成形した後、第1分割ケース3と第2分割ケース5との合わせ面23を研磨などの加工によって形成する際に、同時に、加工して形成され、合わせ面23と同一平面上に配置される。
【0079】
このように規制面19,21を第1分割ケース3と第2分割ケース5との合わせ面23と同一平面上に配置することにより、ピンのような別体の規制部材と比較して、ケーシング7に対するピンの組付精度、ピンを組付けるためのケーシング7の加工精度などを高める必要がなく、規制面19,21を低コストで設けることができる。
【0080】
また、規制面19,21を第1分割ケース3と第2分割ケース5との合わせ面23の加工に合わせて設けることができるので、規制面19,21をケーシング7に個別に設けるときのように、ケーシング7に対する規制面19,21の位置精度を高める必要がなく、規制面19,21を低コストで設けることができる。
【0081】
このような規制面19,21は、ケーシング7の第1分割ケース3に設けられており、規制面19,21に当接される回動部材11を回動させる回転軸9は、ケーシング7の第2分割ケース5に支持されている。
【0082】
加えて、第2分割ケース5には、回転軸9や回動部材11の他に、移動機構13、ロック部材17、付勢部材25などの部材も配置されている。
【0083】
このように規制面19,21が設けられた第1分割ケース3と反対側の第2分割ケース5に回転軸9などの他の部材を配置させることにより、第1分割ケース3の構造を簡易化することができ、第1分割ケース3に対する規制面19,21の位置精度を高めることができる。
【0084】
このような規制面19,21と第1分割ケース3と第2分割ケース5との合わせ面23との間には、隙間が形成されている。
【0085】
この隙間には、第1分割ケース3と第2分割ケース5との合わせ面23に配置されるシール部材としての液状のガスケットが流れ込み、規制面19,21にガスケットが配置されることを防止することができる。
【0086】
このような規制面19,21は、回動部材11を回動させる回転軸9を挟んで、回動部材11の係合部27,29と反対側に配置されている。
【0087】
このように規制面19,21を配置することにより、回動部材11がロック位置側及びロック解除位置側で規制面19,21と当接したときに、付勢部材25の付勢力を回動部材11に安定して付与することができ、回動部材11の回動位置を安定して規定することができる。
【0088】
ここで、回動部材11を回動させる回転軸9は、軸心方向が第1分割ケース3と第2分割ケース5との合わせ面23と平行に配置されている。
【0089】
このように回転軸9を配置することにより、第1分割ケース3と第2分割ケース5との合わせ面23と同一平面上に配置された規制面19,21に対して、回動部材11が傾斜されて当接することがなく、回動部材11の回動位置を安定して規定することができる。
【0090】
このような規制面19,21には、回動部材11がロック位置側に位置したとき、或いは回動部材11がロック解除位置側に位置したときに、回動部材11に設けられた2つの当接部31,33がそれぞれ当接される。
【0091】
2つの当接部31,33は、回転軸9を挟んで、回動部材11の係合部27,29と反対側に設けられている。
【0092】
この2つの当接部31,33のうち当接部31は、回動部材11がロック位置側に位置したときに、ロック面としての規制面19と当接するロック突起となっている。
【0093】
一方、当接部33は、回動部材11がロック解除位置側に位置したときに、解除面としての規制面21と当接する解除突起となっている。
【0094】
このような2つの当接部31,33を結ぶ直線の中間の延長上には、回動部材11の回動中心、すなわち回転軸9が配置されている。
【0095】
詳細には、回動部材11を当接部31,33側から回動部材11の平面方向に見たときの投影面内において、回動部材11の回動中心(回転軸9)は、2つの当接部31,33を結ぶ直線の中間位置に配置されている。
【0096】
このように2つの当接部31,33を配置することにより、第1分割ケース3と第2分割ケース5との合わせ面23に向かう方向にスペースを取ることなく、回動中心と当接部31,33との距離を確保することができ、当接モーメントを大きくして、規制面19,21との当接面圧を低減することができる。
【0097】
ここで、回動部材11の係合部27,29は、2つの当接部31,33の中間の延長上に形成されている。
【0098】
詳細には、回動部材11を当接部31,33側から回動部材11の平面方向に見たときの投影面内において、係合部27,29は、2つの当接部31,33を結ぶ直線の間に配置されている。
【0099】
このように係合部27,29を配置することにより、係合部27,29が回動部材11の外径側に向けて張り出すことがなく、装置の大型化を抑制することができる。
【0100】
このように構成されたパークロック装置1は、アクチュエータの作動により回動部材11がロック位置側に回動したとき、移動部材35がロック部材17側に移動され、操作部材37がロック部材17の当接部61と当接する。
【0101】
この操作部材37と当接部61の当接により、操作部材37がロック部材17の当接部61を押圧し、ロック部材17の当接部61側をスプリング65の付勢力に抗して押下させ、ロック部材17を回動させる。
【0102】
このロック部材17の回動により、ロック部材17のロック部63が押し上げられ、ギヤ57と噛み合い、駆動軸15の回転が阻止される。
【0103】
このときの回動部材11の回動の最大位置は、回動部材11の当接部31が規制面19と当接することによって規定される。
【0104】
一方、ロック部材17のロック状態では、アクチュエータの作動により回動部材11がロック解除位置側に回動したとき、移動部材35が回動部材11側に移動され、操作部材37とロック部材17の当接部61との当接が解除される。
【0105】
この操作部材37と当接部61との当接解除により、スプリング65の付勢力によってロック部材17の当接部61側が上昇するように、ロック部材17が回動される。
【0106】
このロック部材17の回動により、ロック部材17のロック部63が下降し、ギヤ57との噛み合いが解除され、駆動軸15の回転の阻止が解除される。
【0107】
このときの回動部材11の回動の最大位置は、回動部材11の当接部33が規制面21と当接することによって規定される。
【0108】
このようなパークロック装置1では、第1分割ケース3に、回動部材11がロック位置側及びロック解除位置側に回動したときに回動部材11と当接して回動部材11の回動を規制する規制面19,21が設けられているので、回動部材11のロック位置側及びロック解除位置側に対する回動位置を安定して規制することができる。
【0109】
また、規制面19,21は、第1分割ケース3と第2分割ケース5との合わせ面23と同一平面上に配置されているので、規制面19,21を分割ケース3,5の合わせ面23の加工に合わせて精度よく容易に形成することができ、低コスト化することができる。
【0110】
従って、このようなパークロック装置1では、低コスト化することができ、回動部材11の回動位置を安定して規制することができる。
【0111】
また、第2分割ケース5には、回転軸9が支持されているので、第1分割ケース3の構造を簡易化することができ、第1分割ケース3に対する規制面19,21の位置精度を高めることができる。
【0112】
さらに、規制面19,21は、第1分割ケース3と第2分割ケース5との合わせ面23との間に隙間が形成されているので、第1分割ケース3と第2分割ケース5との合わせ面23に配置されるシール部材が隙間に入り込むことで、規制面19,21にシール部材が配置されることを防止することができる。
【0113】
また、規制面19,21は、回転軸9を挟んで係合部27,29と反対側に配置されているので、回動部材11がロック位置側及びロック解除位置側で規制面19,21と当接したときに、付勢部材25の付勢力を回動部材11に安定して付与することができ、回動部材11の回動位置を安定して規定することができる。
【0114】
さらに、回転軸9は、軸心方向が第1分割ケース3と第2分割ケース5との合わせ面23と平行に配置されているので、規制面19,21に対して、回動部材11が傾斜されて当接することがなく、回動部材11の回動位置を安定して規定することができる。
【0115】
また、2つの当接部31,33の中間の延長上には、回動部材11の回動中心が位置されているので、第1分割ケース3と第2分割ケース5との合わせ面23に向かう方向にスペースを取ることなく、回動中心と当接部31,33との距離を確保することができ、当接モーメントを大きくして、規制面19,21との当接面圧を低減することができる。
【0116】
さらに、係合部27,29は、2つの当接部31,33の間の延長上に形成されているので、係合部27,29が回動部材11の外径側に向けて張り出すことがなく、装置の大型化を抑制することができる。
【0117】
(第2実施形態)
図5を用いて第2実施形態について説明する。
【0118】
本実施の形態に係るパークロック装置101は、規制面19,21が、第1分割ケース3と第2分割ケース5との合わせ面23と連続して形成されている。
【0119】
なお、第1実施形態と同一の構成には、同一の記号を記して説明を省略するが、第1実施形態と同一の構成であるので、構成及び機能説明は第1実施形態を参照するものとし省略するが、得られる効果は同一である。
【0120】
図5に示すように、規制面19,21は、ケーシング7の第1分割ケース3の側壁と連続する一部材で、第1分割ケース3の底部から合わせ面23側に向けて突設された突部の突出方向の先端面となっている。
【0121】
この規制面19,21は、第1分割ケース3と第2分割ケース5(図2参照)との合わせ面23と同一平面上に配置されており、合わせ面23と連続して形成されている。
【0122】
このように規制面19,21を合わせ面23と連続して形成することにより、第1分割ケース3の成形時における規制面19,21の形成を行い易く、合わせ面23の研磨などの加工と同時に規制面19,21を加工し易くすることができ、さらに低コスト化することができる。
【0123】
なお、規制面19,21と合わせ面23との間の距離は、合わせ面23に配置されるシール部材としての液状のガスケットが流動しても、ガスケットが規制面19,21に到達しない距離を持った位置に設定されている。
【0124】
このようなパークロック装置101では、規制面19,21が、第1分割ケース3と第2分割ケース5との合わせ面23と連続して形成されているので、規制面19,21の成形や加工を行い易く、低コスト化することができる。
【0125】
なお、本発明の実施の形態に係るパークロック装置では、ケーシングを2分割構造としているが、これに限らず、3分割以上の構造を有するケーシングの隣り合う分割ケースの合わせ面に規制面を設けてもよい。
【符号の説明】
【0126】
1,101…パークロック装置
3…第1分割ケース
5…第2分割ケース
7…ケーシング
9…回転軸
11…回動部材
13…移動機構
15…駆動軸
17…ロック部材
19,21…規制面
23…合わせ面
25…付勢部材
27,29…係合部
31,33…当接部
図1
図2
図3
図4
図5