(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】車両用リッドロック装置
(51)【国際特許分類】
E05B 83/34 20140101AFI20220607BHJP
E05B 81/36 20140101ALI20220607BHJP
E05B 81/28 20140101ALI20220607BHJP
E05C 1/12 20060101ALI20220607BHJP
B60K 15/05 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
E05B83/34
E05B81/36
E05B81/28
E05C1/12
B60K15/05 B
(21)【出願番号】P 2018168009
(22)【出願日】2018-09-07
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000146434
【氏名又は名称】株式会社城南製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】桜井 雄太
(72)【発明者】
【氏名】小林 真由
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-065215(JP,A)
【文献】特開2016-056590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 -85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に形成された開口部を開閉するリッドを、モータの正回転及び逆回転によってロック及びアンロックする車両用リッドロック装置であって、
ロック位置とアンロック位置との間を移動し、前記ロック位置において前記リッドをロックし、前記アンロック位置で前記リッドの開動作を可能とするロック部材と、
前記ロック部材を前記アンロック位置に保持して前記ロック部材の前記ロック位置方向への移動を規制する規制位置と、前記ロック部材の移動を規制しない非規制位置との間を前記モータの作動に伴って回動するセクタギヤと、
前記ロック部材を前記アンロック位置から前記ロック位置の方向に弾性力を付与する弾性部材と、
前記ロック部材を前記アンロック位置に保持する保持機構と、を備え、
前記セクタギヤが前記非規制位置にあり、かつ、前記ロック部材が
前記ロック位置にある状態で前記リッドを閉じた場合に、前記リッドの閉動作によって前記アンロック位置側に押し込まれた前記ロック部材を前記弾性力によって前記ロック位置側に移動さ
せ、
前記保持機構は、前記モータが作動していないときに、前記弾性力によって前記規制位置の前記セクタギヤが前記アンロック位置の前記ロック部材を係止した係止状態を保持する、
車両用リッドロック装置。
【請求項2】
車体に形成された開口部を開閉するリッドを、モータの正回転及び逆回転によってロック及びアンロックする車両用リッドロック装置であって、
ロック位置とアンロック位置との間を移動し、前記ロック位置において前記リッドをロックし、前記アンロック位置で前記リッドの開動作を可能とするロック部材と、
前記ロック部材を前記アンロック位置に保持して前記ロック部材の前記ロック位置方向への移動を規制する規制位置と、前記ロック部材の移動を規制しない非規制位置との間を前記モータの作動に伴って回動するセクタギヤと、
前記ロック部材を前記アンロック位置から前記ロック位置の方向に弾性力を付与する弾性部材と、を備え、
前記セクタギヤが前記非規制位置にあり、かつ、前記ロック部材が前記ロック位置にある状態で前記リッドを閉じた場合に、前記リッドの閉動作によって前記アンロック位置側に押し込まれた前記ロック部材を前記弾性力によって前記ロック位置側に移動させ、
前記ロック部材の前記アンロック位置は、前記ロック部材の移動範囲における前記アンロック位置側の移動端から前記ロック位置側に所定の距離だけ隔てた位置である、
車両用リッドロック装置。
【請求項3】
車体に形成された開口部を開閉するリッドを、モータの正回転及び逆回転によってロック及びアンロックする車両用リッドロック装置であって、
ロック位置とアンロック位置との間を移動し、前記ロック位置において前記リッドをロックし、前記アンロック位置で前記リッドの開動作を可能とするロック部材と、
前記ロック部材を前記アンロック位置に保持して前記ロック部材の前記ロック位置方向への移動を規制する規制位置と、前記ロック部材の移動を規制しない非規制位置との間を前記モータの作動に伴って回動するセクタギヤと、
前記ロック部材を前記アンロック位置から前記ロック位置の方向に弾性力を付与する弾性部材と、を備え、
前記セクタギヤが前記非規制位置にあり、かつ、前記ロック部材が前記ロック位置にある状態で前記リッドを閉じた場合に、前記リッドの閉動作によって前記アンロック位置側に押し込まれた前記ロック部材を前記弾性力によって前記ロック位置側に移動させ、
前記ロック部材には、前記セクタギヤ側に延びた腕部が前記セクタギヤに係止される被係止部として形成され、
前記セクタギヤには、前記ロック部材の前記被係止部を係止する係止部が前記セクタギヤの回転中心から径方向に沿って延在している、
車両用リッドロック装置。
【請求項4】
前記ロック部材は、前記アンロック位置と前記ロック位置との間を直線的に移動する軸状であり、
前記セクタギヤの前記規制位置における前記係止部と前記ロック部材の前記アンロック位置における前記被係止部とが接触する接触部が、少なくとも、前記ロック部材の中心軸線と平行でかつ、前記セクタギヤの前記回転中心を通る仮想線上に位置しない、
請求項3に記載の車両用リッドロック装置。
【請求項5】
前記接触部が、前記仮想線よりも上方に位置する、
請求項4に記載の車両用リッドロック装置。
【請求項6】
前記接触部が、前記仮想線よりも下方に位置する、
請求項4に記載の車両用リッドロック装置。
【請求項7】
車体に形成された開口部を開閉するリッドを、モータの正回転及び逆回転によってロック及びアンロックする車両用リッドロック装置であって、
ロック位置とアンロック位置との間を移動し、前記ロック位置において前記リッドをロックし、前記アンロック位置で前記リッドの開動作を可能とするロック部材と、
前記ロック部材を前記アンロック位置に保持して前記ロック部材の前記ロック位置方向への移動を規制する規制位置と、前記ロック部材の移動を規制しない非規制位置との間を前記モータの作動に伴って回動するセクタギヤと、
前記ロック部材を前記アンロック位置から前記ロック位置の方向に弾性力を付与する弾性部材と、
前記モータ及び前記セクタギヤを収容する収容部材
と、を備え、
前記セクタギヤが前記非規制位置にあり、かつ、前記ロック部材が前記ロック位置にある状態で前記リッドを閉じた場合に、前記リッドの閉動作によって前記アンロック位置側に押し込まれた前記ロック部材を前記弾性力によって前記ロック位置側に移動させ、
前記ロック部材は、その一部が前記収容部材に収容され、かつ、前記収容部材に軸支された回転体であり、
前記回転体は、前記収容部材の外側に配置されて前記リッドと係合する係合部が設けられた第1回転部材と、前記収容部材の内側に配置されて前記セクタギヤに係止される被係止部が設けられ、前記第1回転部材と一体回転する第2回転部材と、を含んでいる、
車両用リッドロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用リッドロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に設けられたリッドをロック及びアンロックする車両用リッドロック装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の車両用リッドロック装置は、軸方向にロック位置とアンロック位置との間を移動可能に配置されたロック部材と、モータの作動に伴って回動することによりロック部材と係合して、ロック部材をロック位置とアンロック位置に移動させるセクタギヤと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このドアロック連動式の車両用リッドロック装置では、例えば、リッドを開いた状態において、ドアロックを行った後にリッドを閉じると、ロッドがアンロック位置に引き込んだ状態でリッドを閉じられるので、リッドが閉状態であるにもかかわらず、リッドがアンロック状態のまま放置されるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ドアロック連動式の車両用リッドロック装置において、リッドの閉動作に伴って自動的にリッドをロックすることができる車両用リッドロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、車体に形成された開口部を開閉するリッドを、モータの正回転及び逆回転によってロック及びアンロックする車両用リッドロック装置であって、ロック位置とアンロック位置との間を移動し、前記ロック位置において前記リッドをロックし、前記アンロック位置で前記リッドの開動作を可能とするロック部材と、前記ロック部材を前記アンロック位置に保持して前記ロック部材の前記ロック位置方向への移動を規制する規制位置と、前記ロック部材の移動を規制しない非規制位置との間を前記モータの作動に伴って回動するセクタギヤと、前記ロック部材を前記アンロック位置から前記ロック位置の方向に弾性力を付与する弾性部材と、前記ロック部材を前記アンロック位置に保持する保持機構と、を備え、前記セクタギヤが前記非規制位置にあり、かつ、前記ロック部材が前記ロック位置にある状態で前記リッドを閉じた場合に、前記リッドの閉動作によって前記アンロック位置側に押し込まれた前記ロック部材を前記弾性力によって前記ロック位置側に移動させ、前記保持機構は、前記モータが作動していないときに、前記弾性力によって前記規制位置の前記セクタギヤが前記アンロック位置の前記ロック部材を係止した係止状態を保持する、車両用リッドロック装置を提供する。
また、本発明は、上記課題を解決するため、車体に形成された開口部を開閉するリッドを、モータの正回転及び逆回転によってロック及びアンロックする車両用リッドロック装置であって、ロック位置とアンロック位置との間を移動し、前記ロック位置において前記リッドをロックし、前記アンロック位置で前記リッドの開動作を可能とするロック部材と、前記ロック部材を前記アンロック位置に保持して前記ロック部材の前記ロック位置方向への移動を規制する規制位置と、前記ロック部材の移動を規制しない非規制位置との間を前記モータの作動に伴って回動するセクタギヤと、前記ロック部材を前記アンロック位置から前記ロック位置の方向に弾性力を付与する弾性部材と、を備え、前記セクタギヤが前記非規制位置にあり、かつ、前記ロック部材が前記ロック位置にある状態で前記リッドを閉じた場合に、前記リッドの閉動作によって前記アンロック位置側に押し込まれた前記ロック部材を前記弾性力によって前記ロック位置側に移動させ、前記ロック部材の前記アンロック位置は、前記ロック部材の移動範囲における前記アンロック位置側の移動端から前記ロック位置側に所定の距離だけ隔てた位置である、車両用リッドロック装置を提供する。
また、本発明は、上記課題を解決するため、車体に形成された開口部を開閉するリッドを、モータの正回転及び逆回転によってロック及びアンロックする車両用リッドロック装置であって、ロック位置とアンロック位置との間を移動し、前記ロック位置において前記リッドをロックし、前記アンロック位置で前記リッドの開動作を可能とするロック部材と、前記ロック部材を前記アンロック位置に保持して前記ロック部材の前記ロック位置方向への移動を規制する規制位置と、前記ロック部材の移動を規制しない非規制位置との間を前記モータの作動に伴って回動するセクタギヤと、前記ロック部材を前記アンロック位置から前記ロック位置の方向に弾性力を付与する弾性部材と、を備え、前記セクタギヤが前記非規制位置にあり、かつ、前記ロック部材が前記ロック位置にある状態で前記リッドを閉じた場合に、前記リッドの閉動作によって前記アンロック位置側に押し込まれた前記ロック部材を前記弾性力によって前記ロック位置側に移動させ、前記ロック部材には、前記セクタギヤ側に延びた腕部が前記セクタギヤに係止される被係止部として形成され、前記セクタギヤには、前記ロック部材の前記被係止部を係止する係止部が前記セクタギヤの回転中心から径方向に沿って延在している、車両用リッドロック装置を提供する。
また、本発明は、上記課題を解決するため、車体に形成された開口部を開閉するリッドを、モータの正回転及び逆回転によってロック及びアンロックする車両用リッドロック装置であって、ロック位置とアンロック位置との間を移動し、前記ロック位置において前記リッドをロックし、前記アンロック位置で前記リッドの開動作を可能とするロック部材と、前記ロック部材を前記アンロック位置に保持して前記ロック部材の前記ロック位置方向への移動を規制する規制位置と、前記ロック部材の移動を規制しない非規制位置との間を前記モータの作動に伴って回動するセクタギヤと、前記ロック部材を前記アンロック位置から前記ロック位置の方向に弾性力を付与する弾性部材と、前記モータ及び前記セクタギヤを収容する収容部材と、を備え、前記セクタギヤが前記非規制位置にあり、かつ、前記ロック部材が前記ロック位置にある状態で前記リッドを閉じた場合に、前記リッドの閉動作によって前記アンロック位置側に押し込まれた前記ロック部材を前記弾性力によって前記ロック位置側に移動させ、前記ロック部材は、その一部が前記収容部材に収容され、かつ、前記収容部材に軸支された回転体であり、前記回転体は、前記収容部材の外側に配置されて前記リッドと係合する係合部が設けられた第1回転部材と、前記収容部材の内側に配置されて前記セクタギヤに係止される被係止部が設けられ、前記第1回転部材と一体回転する第2回転部材と、を含んでいる、車両用リッドロック装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両用リッドロック装置によれば、ドアロック連動式の車両用リッドロック装置において、リッドの閉状態に伴って自動的にリッドをロックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明における第1の実施の形態に係る車両用リッドロック装置が適用された車体に設けられた給油用開口部及びその周辺部を示す斜視図である。
【
図2】車両用リッドロック装置のロック状態におけるフューエルリッド及びその周辺部の構造を示す断面図である。
【
図3】車両用リッドロック装置の構成例を示す平面図である。
【
図4】車両用リッドロック装置の構成例を示す分解斜視図である。
【
図5】(a)は、車両用リッドロック装置のアンロック状態を示す説明図であり、(b)は車両用リッドロック装置のロック状態を示す説明図である。
【
図6】(a)は、車両用リッドロック装置のロック部材がリッド閉動作に伴ってアンロック位置側に押し込まれた状態を示す説明図であり、(b)は、ロック部材がコイルばねの弾性力によってロック位置まで移動した状態を示す説明図である。
【
図7】第1の実施の形態に係る車両用リッドロック装置の変形例の構成を示す分解斜視図である。
【
図8】(a)~(c)は、変形例に係る車両用リッドロック装置の動作を説明する説明図である。
【
図9】第2の実施の形態に係る車両用リッドロック装置の構成例を示す平面図である。
【
図10】第2の実施の形態に係る車両用リッドロック装置の構成例を示す分解斜視図である。
【
図11】(a)は、第2の実施の形態に係る車両用リッドロック装置のロック状態における内部構造を示す説明図であり、(b)は、アンロック状態における内部構造を示す説明図である。
【
図12】(a)は、第2の実施の形態に係る車両用リッドロック装置のロック状態における外観を示す説明図であり、(b)は、アンロック状態における外観を示す説明図である。
【
図13】(a)は、第2の実施の形態に係る車両用リッドロック装置のロック状態における内部構造を示す説明図であり、(b)はロック状態におけるロック部材がリッド閉動作に伴ってアンロック位置側にある状態を示す説明図である。
【
図14】(a)~(c)は、車両用リッドロック装置のロック状態でリッドを閉めた場合の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態の要約)
車両用リッドロック装置(100)は、ロック位置(Y)とアンロック位置(X)との間を移動し、ロック位置(Y)においてリッド(91)をロックし、アンロック位置(X)でリッド(91)の開動作を可能とするロック部材(5)と、ロック部材(5)をアンロック位置(X)に保持してロック部材(5)のロック位置(Y)方向への移動を規制する規制位置(A)と、ロック部材(5)の移動を規制しない非規制位置(B)との間をモータ(3)の作動に伴って回動するセクタギヤ(4)と、ロック部材(5)をアンロック位置(X)からロック位置(Y)の方向に弾性力を付与する弾性部材(6)と、を備え、セクタギヤ(4)が非規制位置(B)にあり、かつ、ロック部材(5)がロック位置(Y)にある状態でリッド(91)を閉じた場合に、リッド(91)の閉動作によってアンロック位置(X)側に押し込まれたロック部材(5)を弾性力によってロック位置(Y)側に移動させる。
【0011】
この車両用リッドロック装置(100)によれば、例えばリッド(91)を開いた状態でドアロックを行った際においてロック部材(5)がロック位置(Y)にある状態でリッド(91)を閉めた場合に、リッド(91)の閉動作に伴ってロック部材(5)がアンロック位置(X)側に押し込まれても、ロック部材(5)が弾性部材(6)の弾性力によってロック位置(Y)まで移動させることができるので、リッド(91)をロックすることが可能である。つまり、リッド(91)の閉状態に伴って自動的にリッド(91)をロックすることができる。
【0012】
[第1の実施の形態]
(車両用リッドロック装置の概要)
図1は、本実施の形態に係る車両用リッドロック装置100が搭載された車体の給油用開口部9a及びフューエルリッド91を示す斜視図である。
図2は、車両用リッドロック装置100のロック状態におけるフューエルリッド91及びその周辺部の構造を示す断面図である。この車両用リッドロック装置100は、車両のドアロックと連動して作動するモータ3の正回転及び逆回転によってロック及びアンロックを切り替え可能な、いわゆるドアロック連動式の車両用リッドロック装置である。
【0013】
図1に示すように、フューエルリッド91は、車体9にヒンジ92を介して開閉可能に取り付けられ、車体9に形成された給油用開口部9aを開閉する。フューエルリッド91の内側に設けられた取付座面910には、車両用リッドロック装置100に係合するロック板911が取り付けられている。ロック板911には、後述する車両用リッドロック装置100のロック部材5の先端部に係止される凹部911aが形成されている。なお、フューエルリッド91は、本発明における「リッド」の一例である。
【0014】
図2に示すように、ロック板911は、例えば樹脂からなる部材であり、フューエルリッド91の取付座面910にボルト101によって固定されている。車両用リッドロック装置100は、車体9のアウタパネル93よりも内側に設けられたインナパネル94に車体取付部材90を介して固定されている。
【0015】
フューエルリッド91の閉状態においては、フューエルリッド91のロック板911における凹部911aに車両用リッドロック装置100のロック部材5の先端部が係止することにより、フューエルリッド91が閉状態でロックされている。
【0016】
フューエルリッド91の開動作においては、例えば運転者によるドアロック解除操作に連動して車両用リッドロック装置100が作動し、ロック部材5が収容部材2から突出したロック位置Yから収容部材2に引き込まれたアンロック位置X(二点鎖線)に移動する。これにより、フューエルリッド91に対するロックが解除される。一方、フューエルリッド91の閉動作においては、ロック部材5がアンロック位置Xにある状態でフューエルリッド91を閉状態にしてから、運転者によるドアロック操作に連動して車両用リッドロック装置100を作動し、ロック部材5がロック位置Yに移動する。これにより、フューエルリッド91がロックされる。
【0017】
(車両用リッドロック装置の構成)
【0018】
図3は、車両用リッドロック装置100の構成例を示す平面図である。
図4は、車両用リッドロック装置100の構成例を示す分解斜視図である。なお、
図3では、ロック部材5がアンロック位置Xに位置している車両用リッドロック装置100のアンロック状態を示している。
【0019】
車両用リッドロック装置100は、車体9に固定された収容部材2と、収容部材2に収容されたモータ3と、モータ3の回転によって所定の角度範囲で回動するセクタギヤ4と、ロック位置Yとアンロック位置Xより僅かにロック位置Yの反対側に位置する移動端との間を移動し、ロック位置Yにおいてフューエルリッド91をロックし、アンロック位置Xでフューエルリッド91の開動作を可能とするロック部材5と、ロック部材5をアンロック位置Xからロック位置Yの方向に弾性力を付与する弾性部材としてのコイルばね6と、を備えている。
【0020】
(収容部材)
収容部材2は、モータ3等を収容するケース部材21と、ケース部材21の開口を覆うカバー部材22とからなる。
【0021】
ケース部材21は、略直方形状に形成されたケース本体部210と、半円筒状に形成された第1ロッド支持部211と、を有している。
【0022】
ケース部材21には、モータ3を収容するモータ収容部210aと、ロック部材5の一部が収容されるロック収容部210bと、セクタギヤ4が収容されるセクタギヤ収容部210cと、が形成されている。
【0023】
モータ収容部210aとロック収容部210bとは、隔壁21dを介して区画されている。セクタギヤ収容部210cには、セクタギヤ4を軸支する軸部21aと、セクタギヤ4と接触してセクタギヤ4の回動を規制する第1及び第2ストッパ21b,21cと、が設けられている。軸部21a並びに第1及び第2ストッパ21b,21cは、ケース部材21の開口側に突出して設けられている。
【0024】
(モータ)
モータ3は、車両に搭載された図略のECUと電気的に接続され、例えば給油時に使用者がドアロック操作等を行うと、モータ3に対する通電及び通電の遮断が制御される。また、モータ3の出力軸3aにはウォーム30が連結され、このウォーム30がモータ3の作動に伴ってセクタギヤ4と噛み合いながら回転するように構成されている。ここで、以下の説明では、ドアロック解除時におけるモータ3の回転方向を正回転とし、ドアロック時におけるモータ3の回転方向を逆回転とする。
【0025】
カバー部材22は、ケース部材21のモータ収容部210a、ロック収容部210b、及びセクタギヤ収容部210cの開口を収容するカバー本体部220と、半円筒状に形成された第2ロッド支持部221と、を有している。ケース部材21の第1ロッド支持部211と、カバー部材22の第2ロッド支持部221とが重ね合わさって円筒状となり、この円筒状の部位がロック部材5の後述するロッド部52を支持し、かつ、収容している。
【0026】
(セクタギヤ)
セクタギヤ4は、ロック部材5をアンロック位置Xに保持してロック部材5のロック位置Y方向への移動を規制する規制位置Aと、ロック部材5の移動を規制しない非規制位置Bとの間をモータ3の作動に伴って回動する。
【0027】
セクタギヤ4は、扇形状に形成された扇形部40と、扇形部40の回転中心部から延在して形成された延在部41と、延在部41の先端部に設けられセクタギヤ4の回転中心O1方向に突出した係止ピン42と、を有している。扇形部40の外周面には、ウォーム30と噛み合う図略のギヤが形成されている。
【0028】
セクタギヤ4の扇形部40には、ケース部材21の軸部21aが挿通する挿通孔40aが形成されている。これにより、セクタギヤ4は、軸部21aの中心軸を回転中心O1として、ケース部材21に対して回動可能に配置される。また、扇形部40の回転中心O1方向における端面(ケース部材21と対面する側の端面)には、ケース部材21の第1及び第2ストッパ21b,21cと接触する図略の接触部が設けられている。接触部には作動時の異音を抑制するためにストッパーラバーを備えることも出来る。
【0029】
セクタギヤ4の係止ピン42は、後述するロック部材5の腕部510を係止する係止部として設けられ、セクタギヤ4の回転中心O1から径方向に沿って延在して設けられている。
【0030】
図3に示す車両用リッドロック装置100のアンロック状態においては、セクタギヤ4は、上述した図略の接触部がケース部材21の第2ストッパ21cに接触する規制位置Aに位置している。一方、車両用リッドロック装置100のロック状態においては、セクタギヤ4は、前記接触部がケース部材21の第1ストッパ21bに接触する非規制位置B(
図5(b)参照)に位置している。
【0031】
(ロック部材)
ロック部材5は、ロック位置Yとアンロック位置Xより僅かにロック位置Yの反対側に位置する移動端との間を直線的に移動する軸状である。また、ロック部材5は、略角型形状のロック本体部51と、円柱状のロッド部52と、ロッド部52の軸方向(以下、単に軸方向という)における後端側に設けられた被牽引部53と、を一体に有している。
【0032】
ロック部材5におけるロック本体部51の軸方向の後端側には、コイルばね6の他端6bを収容する不図示の収容部が設けられ、ロック本体部51の軸方向の前端側には、セクタギヤ4の係止ピン42を収容する凹部511が設けられている。また、ロック本体部51には、軸方向と直交する方向に下垂してセクタギヤ4の係止ピン42側に延びた腕部510が形成されている。この腕部510は、セクタギヤ4に係止される被係止部として形成されている。
【0033】
ロック部材5における腕部510がセクタギヤ4と対面する端面510aは、セクタギヤ4の係止ピン42と接触する接触面として形成されている。
図3に示す車両用リッドロック装置100のアンロック状態においては、ロック部材5は、ロック部材5の腕部510の下方側における接触点Pにおいて、セクタギヤ4の係止ピン42と接触する。一方、車両用リッドロック装置100のロック状態においては、ロック部材5は、ロック部材5の腕部510の上方側における接触点Qにおいて、セクタギヤ4の係止ピン42と接触する(
図5(b)参照)。
【0034】
(コイルばね)
コイルばね6は、ケース部材21のロック収容部210bに収容され、その一端6aがケース部材21の壁に当接し、その他端6bがロック部材5におけるロック本体部51の不図示の収容部に収容され、圧縮された状態で配置されている。これにより、ロック部材5は、アンロック位置Xからロック位置Yの方向の付勢力を常時受けている。
【0035】
(車両用リッドロック装置の動作)
次に、車両用リッドロック装置100の動作について
図5を参照して説明する。
図5(a)は、車両用リッドロック装置100のアンロック状態を示す説明図であり、(b)は車両用リッドロック装置100のロック状態を示す説明図である。
【0036】
図5(a)に示すように、モータ3が作動していない車両用リッドロック装置100のアンロック状態においては、ロック部材5がコイルばね6から弾性力を受けると共に、ロック部材5の腕部510が規制位置にあるセクタギヤ4の係止ピン42と接触する。
【0037】
さらに、アンロック状態においては、セクタギヤ4の規制位置Aにおける係止ピン42とロック部材5のアンロック位置Xにおける腕部510とが接触する接触部として接触点Pが、ロック部材5の中心軸線C1と平行でかつ、セクタギヤ4の回転中心O1を通る仮想線C2よりも下方に位置している。
【0038】
なお、上記のアンロック状態では、ロック部材5は、セクタギヤ4の回動に伴って最もケース部材21側に押し込まれる位置(前記接触部が仮想線C2上にある位置)よりも、コイルばね6の弾性力を受けて僅かにロック位置Y側に移動した位置に配置される。つまり、ロック部材5のアンロック位置Xは、ロック部材5の移動範囲におけるアンロック位置X側の移動端からロック位置Y側に所定の距離だけ隔てた位置である。
【0039】
この構成により、セクタギヤ4が規制位置Aから非規制位置B方向に回動することが規制されると共に、ロック部材5のアンロック位置Xからロック位置Y方向への移動が規制される。
【0040】
なお、コイルばね6と、ロック部材5の腕部510と、セクタギヤ4の係止ピン42とが、本発明における保持機構を構成する。この保持機構により、モータ3が作動していないときに、コイルばね6の弾性力によって、規制位置Aのセクタギヤ4がアンロック位置Xのロック部材5を係止した係止状態が保持される。
【0041】
車両用リッドロック装置100のロック時においては、例えばフューエルリッド91の閉状態で運転者がドアロック操作を実行すると、モータ3が逆回転してセクタギヤ4が規制位置Aから非規制位置B方向(
図5における時計回り方向)に所定の角度範囲で回動する。そうすると、
図5(b)に示すように、ロック部材5がコイルばね6の弾性力によってケース部材21から突出してアンロック位置Xからロック位置Yに移動する。これにより、ロック部材5のロッド部52の先端部がフューエルリッド91の凹部911aに係合してフューエルリッド91がロックされる。
【0042】
一方、車両用リッドロック装置100のアンロック時においては、例えばフューエルリッド91の閉状態で運転者がドアロック解除操作を実行すると、モータ3が正回転してセクタギヤ4が非規制位置Bから規制位置A方向(
図5における反時計回り方向)に所定の角度範囲で回動する。そうすると、セクタギヤ4の係止ピン42がロッド部52の腕部510を押圧するので、ロック部材5がコイルばね5の弾性力に抗してロック位置Yからアンロック位置X方向に移動する。そして、セクタギヤ4が規制位置Aに到達すると、ロック部材5をセクタギヤ4が係止した係止状態となり、ロック部材5がアンロック位置Xに保持されるので、車両用リッドロック装置100のアンロック状態が維持される。これにより、フューエルリッド91がアンロックされて開閉自在となる。
【0043】
次に、本発明の作用及び効果について、
図6を参照して説明する。
図6(a)は、車両用リッドロック装置100のロック部材5がフューエルリッド91の閉動作に伴ってアンロック位置X側に押し込まれた状態を示す説明図であり、(b)は、ロック部材5がコイルばね6の弾性力によってロック位置Yまで移動した状態を示す説明図である。
【0044】
ここで、例えば燃料給油中に運転者が車両から離れたい際に、フューエルリッド91が開いた状態でドアロック操作を行うことがある。この場合、
図5(b)に示したように、フューエルリッド91が開いた状態で車両用リッドロック装置100がロック状態となる。なお、この状態ではセクタギヤ4は非規制位置Bに位置している。
【0045】
この際、燃料給油が完了して運転者がフューエルリッド91の閉動作を行うと、フューエルリッド91のロック板911がロック部材5のロッド部52を押し込むので、
図6(a)に示すように、ロック部材5がコイルばね6を弾圧しながらロック位置Yからアンロック位置X側に移動する。なお、このロック部材5の移動時においては、モータ3は作動しない状態であり、ロック部材5とセクタギヤ4とは係合しない非係合状態である。
【0046】
そして、
図6(b)に示すように、アンロック位置X側に押し込まれたロック部材5は、コイルばね6の弾性力によってアンロック位置X側からロック位置Yの方向に移動して、ロック部材5のロッド部52がフューエルリッド91の凹部911aに係止する。これにより、フューエルリッド91がロックされる。
【0047】
このように、本実施の形態では、セクタギヤ4が非規制位置Bにあり、かつ、ロック部材5がロック位置Yにある状態でフューエルリッド91を閉じた場合に、フューエルリッド91の閉動作によってアンロック位置X側に押し込まれたロック部材5を弾性力によって自動的にロック位置Y側に移動させることができる。
【0048】
(実施の形態の作用及び効果)
本実施の形態に係る車両用リッドロック装置100によれば、以下の作用及び効果を得ることができる。
【0049】
(1)車両用リッドロック装置100は、モータ3の正回転又は逆回転によってフューエルリッド91のロック及びアンロックを切り替え可能であり、フューエルリッド91の押し込み動作に伴って、ロック部材5がアンロック位置X側に押し込まれた場合でも、ロック部材5をコイルばね6の弾性力によって自動的にロック位置Yへ移動させることができる。つまり、ドアロック連動式の車両用リッドロック装置において、フューエルリッド91の閉状態に伴って自動的にフューエルリッド91をロックすることができる。これにより、例えば、ロック部材5が自動的にロック位置Yに移動しない場合にはフューエルリッド91がアンロック状態で放置されることがあり得るが、本実施の形態によれば、このような状態が未然に防止されるので防盗性を向上することが可能である。
【0050】
(2)車両用リッドロック装置100は、コイルばね6の弾性力によって規制位置Aのセクタギヤ4がアンロック位置Xのロック部材5を係止した係止状態を保持する保持機構を備えている。これにより、例えば、フューエルリッド91をアンロックする際にはロック部材5をアンロック位置Xに保持するための機構として別途部品を追加する必要がなく、簡素な方法でロック部材5をアンロック位置Xに保持することができる。
【0051】
(3)セクタギヤ4の規制位置Aにおける係止ピン42とロック部材5のアンロック位置Xにおける腕部510とが接触する接触点Pが、ロック部材5の中心軸線C1と平行でかつ、セクタギヤ4の回転中心O1を通る仮想線C2よりも下方に位置している。この構成により、セクタギヤ4を規制位置Aに保持すると共に、ロック部材5をアンロック位置Xに保持することができる。つまり、別途部品を追加することなくロック部材5をアンロック位置Xに保持する保持機構を構成することができる。
【0052】
[変形例]
次に、第1の実施の形態に係る車両用リッドロック装置100の変形例について
図7及び
図8を参照して説明する。
図7は、変形例に係る車両用リッドロック装置100Bの構成例を示す分解斜視図である。
図8(a)~(c)は、変形例に係る車両用リッドロック装置100Bの動作を説明する説明図であり、(a)はアンロック状態を示し、(b)はロック状態を示し、(c)はロック状態でロック部材5が押し込まれた状態を示している。なお、
図7及び
図8において、上記第1の実施の形態について説明したものと共通する機能を有する構成要素については、同一の又は対応する符号及び名称を付してその説明を省略する。
【0053】
変形例に係る車両用リッドロック装置100Bは、そのセクタギヤ4Aの形状が第1の実施の形態に係る車両用リッドロック装置100と異なる。
【0054】
セクタギヤ4Aは、扇形部40Aと、扇形部40Aの回転中心O1から径方向に沿って延在して設けられた係止ピン42Aと、を有している。つまり、本変形例におけるセクタギヤ4Aは、第1の実施の形態に係るセクタギヤ4の腕部41に相当する形状を備えていない。また、セクタギヤ4Aの扇形部40Aには、ケース部材21の軸部21aが挿通する挿通孔400が形成されている。
【0055】
扇形部40Aは、ウォーム30と噛み合うギヤ(不図示)が形成された円弧状の噛合面40bと、回転中心O1から噛合面40bにおける周方向の両端側にそれぞれ延在している第1及び第2平坦面40c,40dを有している。係止ピン42Aは、回転中心O1を中心とした周方向における第1平坦面40c側に設けられている。
【0056】
図8(a)に示すように、モータ3が作動していない車両用リッドロック装置100Bのアンロック状態においては、ロック部材5がコイルばね6から弾性力を受けると共に、ロック部材5の腕部510が規制位置にあるセクタギヤ4Aの係止ピン42Aと接触する。
【0057】
さらに、アンロック状態においては、セクタギヤ4Aの規制位置Aにおける係止ピン42Aとロック部材5のアンロック位置Xにおける腕部510とが接触する接触部として接触点Pが、ロック部材5の中心軸線C1と平行でかつ、セクタギヤ4Aの回転中心O1を通る仮想線C2よりも上方に位置している。
【0058】
この構成により、セクタギヤ4Aが規制位置Aから非規制位置B方向に回動することが規制されると共に、ロック部材5のアンロック位置Xからロック位置Y方向への移動が規制される。
【0059】
車両用リッドロック装置100Bのロック時においては、例えばフューエルリッド91の閉状態で運転者がドアロック操作を実行すると、モータ3が逆回転してセクタギヤ4Aが規制位置Aから非規制位置B方向(
図8における反時計回り方向)に所定の角度範囲で回動する。そうすると、
図8(b)に示すように、ロック部材5がコイルばね6の弾性力によってケース部材21から突出してアンロック位置Xからロック位置Yに移動する。これにより、ロック部材5のロッド部52の先端部がフューエルリッド91の凹部911aに係合してフューエルリッド91がロックされて車両用リッドロック装置100Bがロック状態となる。
【0060】
さらに、フューエルリッド91が開いた状態でドアロック操作を行うことがある。この場合、
図8(b)に示したようにフューエルリッド91が開いた状態で車両用リッドロック装置100Bがロック状態となる。この状態において、フューエルリッド91が閉じられた場合には、フューエルリッド91のロック板911がロック部材5のロッド部52を押し込むので、ロック部材5がコイルばね6を弾圧しながらロック位置Yからアンロック位置X側に移動して、コイルばね6の弾性力によって再度ロック位置Yまで移動する。これにより、ロック部材5のロッド部52がフューエルリッド91の凹部911aに係止して、フューエルリッド91がロックされる。
【0061】
上記した本変形例によれば、セクタギヤ4Aが非規制位置Bにあり、かつ、ロック部材5がロック位置Yにある状態でフューエルリッド91を閉じた場合に、フューエルリッド91の閉動作によってアンロック位置X側に押し込まれたロック部材5を弾性力によって自動的にロック位置Y側に移動させることができる。つまり、第1の実施の形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0062】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態に係る車両用リッドロック装置100Aについて
図9乃至
図14を参照して説明する。
図9は、第2の実施の形態に係る車両用リッドロック装置100Aの構成例を示す平面図である。
図10は、第2の実施の形態に係る車両用リッドロック装置100Aの構成例を示す分解斜視図である。なお、
図9では、車両用リッドロック装置100Aのロック状態を示し、説明の便宜上、トーションバネの図示は省略している。
【0063】
図9及び
図10に示すように、車両用リッドロック装置100Aは、モータ3と、モータ3等を収容する収容部材としてのケース部材21A及びカバー部材22Aと、モータ3の作動に伴って回動するセクタギヤ8と、ロック位置Yとアンロック位置Xより僅かにロック位置Yの反対側に位置する移動端との間を移動し、ロック位置Yにおいてフューエルリッド91Aをロックし、アンロック位置Xでフューエルリッド91Aの開動作を可能とするロック部材としての第1及び第2ロック部材71,72と、第2ロック部材72をアンロック位置Xからロック位置Yの方向に弾性力を付与する弾性部材としてのトーションバネ14と、を備えている。
【0064】
(収容部材)
ケース部材21Aには、モータ3を収容するモータ収容部210dと、セクタギヤ8を収容するセクタギヤ収容部210eと、が形成されている。モータ収容部210dとセクタギヤ収容部210eとは、隔壁210fによって区画されている。また、カバー部材22Aには、後述するエマージェンシーレバー18を挿通するための貫通孔220aが形成されている。ケース部材21Aがカバー部材22Aと対面するのと反対側の外面には、フューエルリッド91Aの閉状態において、フューエルリッド91Aのロック板911Aを収容する収容孔213aが形成された収容部213が設けられている。
【0065】
(モータ)
モータ3の出力軸3aには、ウォーム30が連結され、このウォーム30がモータ3の作動に伴ってセクタギヤ8と噛み合って回転する。また、モータ3には、ターミナル13が取り付けられており、このターミナル13を介して駆動源である電力の供給を受けている。
【0066】
(セクタギヤ)
セクタギヤ8は、第2ロック部材72をアンロック位置Xに保持して第2ロック部材72のロック位置Y方向への移動を規制する規制位置Aと、第2ロック部材72の移動を規制しない非規制位置Bとの間をモータ3の作動に伴って回動する。なお、
図9に示す車両用リッドロック装置100Aのロック状態では、セクタギヤ8は非規制位置Bに位置している。
【0067】
セクタギヤ8は、ウォーム30と噛み合って回転する本体部80と、セクタギヤ8の回転軸方向に沿って見た形状が円弧状の円弧部81と、を有している。本体部80の外周面には、ウォーム30と噛み合う図略のギヤが形成されている。円弧部81は、本体部80の回転軸方向における端面(カバー部材22Aと対面する側の端面)から回転軸方向に突出し、周方向に沿って延在して設けられている。
【0068】
セクタギヤ8の本体部80の周方向における第1及び第2の端面80a,80bは、ケース部材21Aに配置された弾性体からなる第1及び第2ストッパ161,162にそれぞれ接触する接触面として形成されている。第1ストッパ161はケース部材21Aに形成された第1ストッパ溝210hに取り付けられ、第2ストッパ162はケース部材21Aに形成された第2ストッパ溝210gに取り付けられている。
【0069】
セクタギヤ8の円弧部81の周方向における一端部には、第2ロック部材72の後述する腕部721の被係止部721aに係止する係止部81aが設けられている。セクタギヤ8の係止部81aは、略円柱状に形成されている。
【0070】
(ロック部材)
第1及び第2ロック部材71,72は、ねじ部材11を介してケース部材21Aに対して軸支された回転体であり、第1及び第2ロック部材71,72は相互に一体回転するように連結されている。
【0071】
第1ロック部材71は、ケース部材21A及びカバー部材22Aの外側であって、ねじ部材11の回転軸線O2方向において、第2ロック部材72との間にケース部材21Aを挟む位置に配置されている。また、第1ロック部材71は、ねじ部材11の回転軸線O2回りを中心として回転する回転部材であり、フューエルリッド91Aと係合する係合部としてのロック係合部710を有している。なお、第1ロック部材71は、本発明の「第1回転部材」の一例である。
【0072】
第1ロック部材71は、前述したロック係合部710と、ロック係合部710から回転軸線O
2方向に沿って延在する軸部711と、を一体に有している。ロック係合部710は、回転軸線O
2から径方向に延在して設けられており、フューエルリッド91Aの閉状態においてフューエルリッド91Aに裏面から突出して設けられたロック板911Aの凹部911Bに係合する(後述の
図12参照)。軸部711は、ケース部材21Aに形成された貫通孔210iを介して第2ロック部材72と相対回転不能に連結されている。
【0073】
第2ロック部材72は、ケース部材21A及びカバー部材22Aの内側であって、第1ロック部材71との間にケース部材21Aを挟む位置に配置されている。また、第2ロック部材72は、セクタギヤ8に係止される腕部721を有し、第1ロック部材71と一体回転する回転部材である。なお、第2ロック部材72は、本発明の「第2回転部材」の一例である。
【0074】
第2ロック部材72は、円筒状の本体部720と、本体部720の周方向の一端から径方向の外方に突出してセクタギヤ8の係止部81aに係止される腕部721と、本体部720の周方向の他端から径方向に延在してセンサ15のスイッチ部15aと係合するスイッチ係合部722と、を一体に有している。腕部721の先端部には、セクタギヤ8における円弧部81の係止部81aに係止される被係止部721aが設けられている。なお、
図9に示す車両用リッドロック装置100Aのロック状態では、第2ロック部材72は、ロック位置Yに位置している。
【0075】
第2ロック部材72の本体部720には、エマージェンシーレバー18の連結部182が挿入される挿入孔720aが形成されている。挿入孔720aの内面には、嵌合溝71aに係合する不図示の凸部が前記内面から突出して設けられている。また、本体部720には、トーションバネ14の一端14aが挿通するバネ挿通孔720cが形成されている。また、第2ロック部材72には、エマージェンシーレバー18が一体回転可能に連結されている。
【0076】
(トーションバネ)
トーションバネ14は、その一端14aが第2ロック部材72の本体部720におけるバネ挿通孔720cに挿通され、その他端14bがケース部材21A内に形成された図略のバネ係止部に係止して、第2ロック部材72に対してアンロック位置Xからロック位置Y方向(
図9における反時計回り方向)への弾性力を常時付与している。
【0077】
(エマージェンシーレバー)
エマージェンシーレバー18は、ケース部材21A及びカバー部材22Aの外側であって、回転軸線O2に沿った方向において第2ロック部材72との間にカバー部材22Aを挟む位置に配置されている。このエマージェンシーレバー18は、例えばモータ3が故障によって作動しない場合において車両用リッドロック装置100Aのロック状態を強制的に解除するために設けられた緊急時用のレバーである。
【0078】
また、エマージェンシーレバー18は、円筒部180と、円筒部180の周方向における一端から径方向の外方に延びた操作部181と、円筒部180のカバー部材22Aと対面する端面から軸方向に突出して第2ロック部材72と連結する連結部182と、を有している。また、エマージェンシーレバー18には、ねじ部材11が挿通する挿通孔180aが形成されている。エマージェンシーレバー18の連結部182には、第2ロック部材72の凸部720bが嵌合する嵌合溝182aが形成されている。これにより、エマージェンシーレバー18と第2ロック部材72とが相対回転不能に連結されている。
【0079】
(車両用リッドロック装置の動作)
次に、第2の実施の形態に係る車両用リッドロック装置100Aの動作について
図11及び
図12を参照して説明する。
図11は、車両用リッドロック装置100Aをカバー部材22A側から軸方向に沿って見た場合の内部構造を示し、(a)はロック状態を示し、(b)はアンロック状態を示している。
図12は、車両用リッドロック装置100Aをケース部材21A及びカバー部材22Aの外側から軸方向に沿って見た外観を示し、(a)はロック状態を示し、(b)はアンロック状態を示している。
【0080】
図11(a)に示すように、車両用リッドロック装置100Aのロック状態においては、セクタギヤ8がウォーム30との噛み合い反力によって、非規制位置Bに保持されている。また、第2ロック部材72は、トーションバネ14の弾性力を受けてロック位置Yに位置している。
【0081】
図12(a)に示すように、フューエルリッド91Aの閉状態においては、第1ロック部材71のロック係合部710がフューエルリッド91Aのロック板911における凹部911Bに係合することで、フューエルリッド91Aの開方向への移動が規制されている。
【0082】
ここで、例えば運転者がドアロック解除操作を行うと、モータ3が正回転してセクタギヤ8が非規制位置Bから規制位置Aの方向(
図11における反時計回り方向)に回動する。そうすると、第2ロック部材72の腕部721がセクタギヤ8の係止部81aと接触して、トーションバネ14の弾性力に抗してアンロック位置X方向へ回転する。これに伴い、第1ロック部材71も回転して、第1ロック部材71のロック係合部710がフューエルリッド91Aのロック板911Aにおける凹部911Bから離脱する(
図12(b)参照)。さらに、センサ15のスイッチ部15aが、第2ロック部材72のスイッチ係合部722によって押圧され、センサ15が出力する信号状態が切り替わる。この際、センサ15が出力する信号を車両に搭載されるECU等の制御部に送信することで、車両用リッドロック装置100Aのアンロック状態を検知することが可能である。
【0083】
そして、
図11(b)に示すように、セクタギヤ8の係止部81aが第2ロック部材72の腕部721における被係止部721aを係止して、第2ロック部材72のロック位置Y方向への回動が規制される。これにより、車両用リッドロック装置100Aがアンロック状態となり、フューエルリッド91Aの開方向へ移動が可能となる。
【0084】
なお、上記の車両用リッドロック装置100Aのアンロック状態では、第2ロック部材72は、セクタギヤ8の回動に伴って最もアンロック位置X方向側に回動した位置よりも、トーションバネ14の弾性力を受けて僅かにロック位置Y側に移動した位置で、セクタギヤ8に係止されている。つまり、第2ロック部材72のアンロック位置は、第2ロック部材72の移動範囲におけるアンロック位置X側の移動端からロック位置Y側に所定の距離だけ隔てた位置である。
【0085】
次に、本発明の作用及び効果について
図13及び
図14を参照して説明する。
図13は、車両用リッドロック装置100Aをカバー部材22A側から軸方向に沿って見た場合の内部構造を示し、(a)は第2ロック部材72がロック位置Yにある状態を示し、(b)はロック状態におけるロック部材がリッド閉動作に伴ってアンロック位置側にある状態を示している。
図14は、車両用リッドロック装置100Aのロック状態でフューエルリッド91Aを閉めた場合の動作を説明する説明図として、ケース部材21A及びカバー部材22Aの外側から軸方向に沿って見た外観を示し、(a)はフューエルリッド91Aの開状態でロックされた状態を示し、(b)はフューエルリッド91Aの閉方向への移動中の状態を示し、(c)はフューエルリッド91Aが完全にロックされた状態を示している。
【0086】
ここで、例えば燃料給油中に運転者が車両から離れたい際に、フューエルリッド91Aが開いた状態でドアロック操作を行うことがある。この場合、
図13(a)及び
図14(a)に示すように、フューエルリッド91Aの開状態において、車両用リッドロック装置100Aがロック状態となる。この状態において、セクタギヤ8は非規制位置Bに位置し、かつ、第2ロック部材72はロック位置Yに位置している。
【0087】
そして、運転者がフューエルリッド91Aを閉める動作を行うと、
図14(b)に示すように、フューエルリッド91Aのロック板911Aが第1ロック部材71のロック係合部710を押し込みながら、第1及び第2ロック部材71,72をアンロック位置X方向に回動させる(
図13(b))。そして、フューエルリッド91Aが完全に閉状態になると、第2ロック部材72がトーションバネ14の弾性力によってアンロック位置X側からロック位置Y方向に回動されるので、第1ロック部材71のロック係合部710がフューエルリッド91Aのロック板911Aの凹部911Bに係合する。これにより、フューエルリッド91Aがロックされる。
【0088】
このように、本実施の形態によれば、フューエルリッド91Aが開状態で、かつ、車両用リッドロック装置100Aのロック状態の場合において、フューエルリッド91Aの押し込み動作に伴って第1及び第2ロック部材71,72がアンロック位置X側に押し込まれた場合でも、第2ロック部材72をトーションバネ14の弾性力によって自動的にロック位置Y方向へ移動させることができる。つまり、ドアロック連動式の車両用リッドロック装置において、フューエルリッド91Aの閉状態に伴って自動的にフューエルリッド91Aをロックすることができる。
【0089】
以上、本発明について実施の形態に基づいて説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。例えば、上記実施の形態では、車両用リッドロック装置100,100A,100Bが車体の給油用開口部9aを開閉するフューエルリッド91,91Aをロックする車両用リッドロック装置について説明したが、これに限定されず、例えば電気自動車に搭載されたバッテリーを充電するための充電口を開閉するリッドをロックする車両用リッドロック装置に本発明を適用することも可能である。
【0090】
また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0091】
2…収容部材
3…モータ
4,4A…セクタギヤ
5…ロック部材
6…コイルばね
8…セクタギヤ
9…車体
11…ねじ部材
13…ターミナル
14…トーションバネ
15…センサ
18…エマージェンシーレバー
21,21A…ケース部材
22,22A…カバー部材
42…係止ピン
51…ロック本体部
51a…当接部
52…ロッド部
53…被牽引部
71…第1ロック部材
72…第2ロック部材
80…本体部
81…円弧部
81a…係止部
90…車体取付部材
91,91A…フューエルリッド
92…ヒンジ
93…アウタパネル
94…インナパネル
100,100A,100B…車両用リッドロック装置