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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】合わせガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20220607BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20220607BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
C03C27/12 C
B32B17/10
B32B27/30 102
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018517662
(86)(22)【出願日】2018-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2018014009
(87)【国際公開番号】W WO2018198678
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2020-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2017090386
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 章吾
(72)【発明者】
【氏名】松本 学
(72)【発明者】
【氏名】中山 和彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 潤
(72)【発明者】
【氏名】岡野 萌
【審査官】大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/147302(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/046587(WO,A1)
【文献】特表2012-519646(JP,A)
【文献】国際公開第2003/018502(WO,A1)
【文献】特開2009-035444(JP,A)
【文献】国際公開第2016/039476(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
B32B 17/10
B32B 27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、熱可塑性樹脂を含む中間膜とを備える合わせガラスであり、
前記熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂を含み、
前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に、前記中間膜が配置されており、
下記の光の照射試験後の前記合わせガラスの端部において、光が照射された中間膜に変色が生じないか、又は、下記の光の照射試験後の前記合わせガラスの端部において、光が照射された中間膜に該端部から内側に向かって距離1mm以下で変色が生じ
下記の光の照射試験後の前記合わせガラスの端部から内側に向かって距離2mmの位置での前記中間膜の前記合わせガラス部材に接する層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率の、前記光の照射試験後の前記合わせガラスの端部から内側に向かって距離70mmの位置での前記中間膜の前記合わせガラス部材に接する層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率に対する比が、1.1以下である、合わせガラス。
光の照射試験:前記合わせガラスに、キセノン光を、ブラックパネル温度83℃、槽内温度50℃及び湿度50%RHで2000時間照射する。キセノン光の照射時に、放射照度は180W/mであり、放射照度測定波長は300~400nmであり、インナーフィルタは石英、及びアウターフィルタは石英:#275(カットオフ275nm)である。前記第1の合わせガラス部材及び前記第2の合わせガラス部材の可視光線透過率が同じである場合に、前記第1の合わせガラス部材側からキセノン光を照射する。前記第1の合わせガラス部材及び前記第2の合わせガラス部材のうち可視光線透過率が異なる場合に、可視光線透過率が高い方の合わせガラス部材側からキセノン光を照射する。
【請求項2】
前記ポリビニルアセタール樹脂が、ポリビニルブチラール樹脂である、請求項に記載の合わせガラス。
【請求項3】
前記合わせガラスの端部において、前記中間膜の側面が露出している部分が存在する、請求項1又は2に記載の合わせガラス。
【請求項4】
前記中間膜が、ガラス転移温度が10℃以下でありかつ熱可塑性樹脂を含む層を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の合わせガラス。
【請求項5】
前記中間膜が、着色しておりかつ熱可塑性樹脂を含む層を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の合わせガラス。
【請求項6】
前記中間膜が、熱可塑性樹脂を含む第1の層と、熱可塑性樹脂を含む第2の層とを備え、
前記第2の層が、前記第1の層の第1の表面側に配置されている、請求項1~のいずれか1項に記載の合わせガラス。
【請求項7】
前記中間膜が、熱可塑性樹脂を含む第3の層を備え、
前記第3の層が、前記第1の層の前記第1の表面と反対の第2の表面側に配置されてい
る、請求項に記載の合わせガラス。
【請求項8】
前記中間膜の可視光線透過率が、70%以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の合わせガラス。
【請求項9】
自動車において、ウインドシールド用ガラスとして用いられる合わせガラスであり、前記中間膜と車外側の合わせガラス部材との接着面に黒色塗装が施されていない、請求項1~のいずれか1項に記載の合わせガラス。
【請求項10】
自動車において、サイドガラス、ルーフガラス又はバックライト用ガラスとして用いられる、請求項1~のいずれか1項に記載の合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂を含む中間膜を備える合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片の飛散量が少なく、安全性に優れている。このため、上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に広く使用されている。上記合わせガラスは、一対のガラス板の間に中間膜を挟み込むことにより、製造されている。
【0003】
上記合わせガラスの一例として、下記の特許文献1には、ポリビニルアセタール樹脂、紫外線吸収剤、可塑剤、接着力調整剤、及び、酸化防止剤を含有する中間膜を備える合わせガラスが開示されている。この中間膜で用いられている上記紫外線吸収剤は、マロン酸エステル系化合物及び/又はシュウ酸アニリド系化合物である。
【0004】
下記の特許文献2には、黄変傾向が低く、UV-A線及び可視光に対して高い透過率を有し、UV-B線に対して低い透過率を有する中間膜を備える合わせガラスが開示されている。この中間膜は、ポリビニルアセタールと、可塑剤と、UV吸収剤であるオキサニリド型化合物とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-327454号公報
【文献】US2012/0052310A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の合わせガラスでは、該合わせガラスの端部で中間膜に、変色が生じることがある。特に、合わせガラスの端部で、黄色に変色しやすい。この変色は、合わせガラスに光及び熱等が付与されたときに特に生じやすい。
【0007】
合わせガラスの端部において中間膜に変色が生じると、合わせガラスの外観が悪くなる。なお、上記中間膜が多層である場合に、上記変色は、上記中間膜のガラス板に接する層に起因して生じやすい。
【0008】
また、従来の中間膜において、紫外線吸収剤等の添加量を増やして上記課題を解決することも考えられるが、そのような中間膜を用いて合わせガラスを作製すると、合わせガラスの透明性が低下することがある。
【0009】
本発明の目的は、合わせガラスの端部で中間膜における変色の発生を抑制し、合わせガラスの外観を良好に保つことができる合わせガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の広い局面によれば、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、熱可塑性樹脂を含む中間膜とを備える合わせガラスであり、前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に、前記中間膜が配置されており、下記の光の照射試験後の前記合わせガラスの端部において、光が照射された中間膜に変色が生じないか、又は、下記の光の照射試験後の前記合わせガラスの端部において、光が照射された中間膜に該端部から内側に向かって距離1mm以下で変色が生じる、合わせガラスが提供される。
【0011】
光の照射試験:前記合わせガラスに、キセノン光を、ブラックパネル温度83℃、槽内温度50℃及び湿度50%RHで2000時間照射する。キセノン光の照射時に、放射照度は180W/mであり、放射照度測定波長は300~400nmであり、インナーフィルタは石英、及びアウターフィルタは石英:#275(カットオフ275nm)である。前記第1の合わせガラス部材及び前記第2の合わせガラス部材の可視光線透過率が同じである場合に、前記第1の合わせガラス部材側からキセノン光を照射する。前記第1の合わせガラス部材及び前記第2の合わせガラス部材のうち可視光線透過率が異なる場合に、可視光線透過率が高い方の合わせガラス部材側からキセノン光を照射する。
【0012】
本発明に係る合わせガラスのある特定の局面では、前記熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂を含む。
【0013】
本発明に係る合わせガラスのある特定の局面では、前記光の照射試験後の前記合わせガラスの端部から内側に向かって距離2mmの位置での前記中間膜の前記合わせガラス部材に接する層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率の、前記光の照射試験後の前記合わせガラスの端部から内側に向かって距離70mmの位置での前記中間膜の前記合わせガラス部材に接する層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率に対する比が、1.2以下である。
【0014】
本発明に係る合わせガラスのある特定の局面では、前記光の照射試験後の前記合わせガラスの端部から内側に向かって距離2mmの位置での前記中間膜の前記合わせガラス部材に接する層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が30モル%以下である。
【0015】
本発明に係る合わせガラスのある特定の局面では、前記ポリビニルアセタール樹脂が、ポリビニルブチラール樹脂である。
【0016】
本発明に係る合わせガラスのある特定の局面では、前記合わせガラスの端部において、前記中間膜の側面が露出している部分が存在する。
【0017】
本発明に係る合わせガラスのある特定の局面では、前記中間膜が、ガラス転移温度が10℃以下でありかつ熱可塑性樹脂を含む層を有するか、又は、着色しておりかつ熱可塑性樹脂を含む層を有する。
【0018】
本発明に係る合わせガラスのある特定の局面では、前記中間膜が、熱可塑性樹脂を含む第1の層と、熱可塑性樹脂を含む第2の層とを備え、前記第2の層が、前記第1の層の第1の表面側に配置されている。
【0019】
本発明に係る合わせガラスのある特定の局面では、前記中間膜が、熱可塑性樹脂を含む第3の層を備え、前記第3の層が、前記第1の層の前記第1の表面と反対の第2の表面側に配置されている。
【0020】
本発明に係る合わせガラスのある特定の局面では、前記中間膜の可視光線透過率が、70%以上である。
【0021】
本発明に係る合わせガラスのある特定の局面では、前記合わせガラスは、自動車において、ウインドシールド用ガラスとして用いられる合わせガラスであり、前記中間膜と車外側の合わせガラス部材との接着面に黒色塗装が施されていない。
【0022】
本発明に係る合わせガラスのある特定の局面では、前記合わせガラスは、自動車において、サイドガラス、ルーフガラス又はバックライト用ガラスとして用いられる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る合わせガラスは、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、熱可塑性樹脂を含む中間膜とを備える合わせガラスであり、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に、上記中間膜が配置されている。本発明に係る合わせガラスでは、上記光の照射試験後の上記合わせガラスの端部において、光が照射された中間膜に変色が生じないか、又は、上記光の照射試験後の上記合わせガラスの端部において、光が照射された中間膜に該端部から内側に向かって距離1mm以下で変色が生じる。本発明に係る合わせガラスでは、上記の構成が備えられているので、本発明に係る合わせガラスの端部で中間膜における変色の発生を抑制し、合わせガラスの外観を良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る合わせガラスを模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の第2の実施形態に係る合わせガラスを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
本発明に係る合わせガラスは、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、中間膜とを備える。上記中間膜は、上記第1の合わせガラス部材と、上記第2の合わせガラス部材との間に配置されている。本発明に係る合わせガラスでは、上記中間膜が、熱可塑性樹脂を含む。
【0027】
本発明に係る合わせガラスにおいて、下記の光の照射試験を行ったときに、上記合わせガラスの端部において、光が照射された中間膜中間膜に変色が生じないか、又は、上記合わせガラスの端部において、光が照射された中間膜に該端部から内側に向かって距離1mm以下で変色が生じる。本発明では、下記の光の照射試験において中間膜の端部に変色が生じないことが好ましい。本発明では、下記の光の照射試験において、中間膜に変色が生じてもよい。但し、本発明では、中間膜の端部に変色が生じる場合に、該変色が生じる距離は小さい。
【0028】
光の照射試験:上記合わせガラスに、キセノン光を、ブラックパネル温度83℃、槽内温度50℃及び湿度50%RHで2000時間照射する。キセノン光の照射時に、放射照度は180W/mであり、放射照度測定波長は300~400nmであり、インナーフィルタは石英、及びアウターフィルタは石英:#275(カットオフ275nm)である。上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材の可視光線透過率が同じである場合に、上記第1の合わせガラス部材側からキセノン光を照射する。上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材のうち可視光線透過率が異なる場合に、可視光線透過率が高い方の合わせガラス部材側からキセノン光を照射する。
【0029】
本発明では、上記の構成が備えられているので、合わせガラスの端部で中間膜における変色の発生を抑制し、合わせガラスの外観を良好に保つことができる。本発明では、合わせガラスの透明性の低下も抑えることができる。
【0030】
上記変色が生じている距離は、上記変色が生じている箇所の中間膜における最も内側に位置する部分から、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間の上記中間膜の端部までの最短距離(直線上の距離)である。上記変色が生じている距離は、中間膜における変色が生じている深さを示す。複数の箇所で変色が生じている場合に、複数の変色箇所のそれぞれの最短距離を測定し、最短距離の最大値を変色が生じている距離とする。
【0031】
なお、合わせガラスの端部とは、上記第1の合わせガラス部材と上記中間膜と上記第2の合わせガラス部材とが積層されている部分の合わせガラスの端部を意味する。上記第1の合わせガラス部材と上記中間膜と上記第2の合わせガラス部材とが積層されている部分よりも側方にはみ出した中間膜部分が存在する場合に、該はみ出した中間膜部分の内側が、合わせガラスの端部である。上記第1の合わせガラス部材と上記中間膜と上記第2の合わせガラス部材とが積層されている部分の側方に、上記中間膜を覆う被覆部が形成されている場合に、該被覆部の内側が、合わせガラスの端部である。
【0032】
上記光の照射試験後の上記合わせガラスの端部から内側に向かって距離2mmの位置での上記中間膜の上記合わせガラス部材に接する層中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率を、距離2mmの位置での水酸基の含有率とする。上記光の照射試験後の上記合わせガラスの端部から内側に向かって距離70mmの位置での上記中間膜の上記合わせガラス部材に接する層中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率を、距離70mmの位置での水酸基の含有率とする。上記距離2mmの位置での水酸基の含有率の上記距離70mmの位置での水酸基の含有率に対する比(距離2mmの位置での水酸基の含有率/距離70mmの位置での水酸基の含有率)は、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.15以下、更に好ましくは1.1以下である。上記比(距離2mmの位置での水酸基の含有率/距離70mmの位置での水酸基の含有率)を満足すると、合わせガラスの端部における変色の発生を効果的に抑制し、合わせガラスの外観を良好に保つことができる。
【0033】
なお、上記中間膜が単層(第1の層)構造を有する場合には、上記合わせガラスに接する層は、中間膜(第1の層)である。上記中間膜が第1の層と第2の層との2層構造を有する場合には、上記合わせガラスに接する層は、第1の層及び第2の層であり、即ち第1の合わせガラス部材に接する第1の層と、第2の合わせガラス部材に接する第2の層とである。上記中間膜が第2の層と第1の層と第3の層の3層構造を有する場合には、上記合わせガラスに接する層は、第2の層及び第3の層であり、即ち第1の合わせガラス部材に接する第2の層と、第2の合わせガラス部材に接する第3の層とである。
【0034】
合わせガラスの端部における変色の発生を効果的に抑制し、合わせガラスの外観を良好に保つ観点からは、上記光の照射試験後の上記合わせガラスの端部から内側に向かって距離2mmの位置での上記中間膜の上記合わせガラス部材に接する層中の上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、好ましくは30モル%以下である。
【0035】
合わせガラスの端部から内側に向かって距離2mmの位置の中間膜の上記水酸基の含有率を測定する際には、合わせガラスの端部から内側に向かって距離2mmの位置を中央線とする幅1mmの短冊片が用いられる。合わせガラスの端部から内側に向かって距離70mmの位置の中間膜の上記水酸基の含有率を測定する際には、合わせガラスの端部から内側に向かって距離70mmの位置を中央線とする幅1mmの短冊片が用いられる。
【0036】
上記合わせガラスの端部において、上記中間膜の側面が露出している部分が存在していてもよい。中間膜の側面が露出していても、本発明では、合わせガラスの端部における変色の発生を抑制し、合わせガラスの外観を良好に保つことができる。なお、上記合わせガラスの端部において、上記中間膜の側面が露出していない部分が存在していてもよい。
【0037】
上記中間膜が、ガラス転移温度が10℃以下でありかつ熱可塑性樹脂を含む層を有するか、又は、着色しておりかつ熱可塑性樹脂を含む層を有することが好ましく、ガラス転移温度が10℃以下でありかつ熱可塑性樹脂を含む層を有することがより好ましい。これらの層は、通常、変色が生じやすい傾向があるものの、例えば熱可塑性樹脂の選択や中間膜の端部の状態の制御により本発明の構成を満足することによって、変色を生じ難くし、合わせガラスの端部における変色の発生を抑制し、合わせガラスの外観を良好に保つことができる。
【0038】
上記ガラス転移温度は以下のようにして測定される。
【0039】
得られた中間膜を温度23℃、湿度30%で1ヶ月以上保管した後に、中間膜が多層の場合は第1の層及び第3の層を剥がすことによって単離し、プレス成型機でプレス成型した測定対象物について、TAINSTRUMENTS社製「ARES-G2」を用いて測定を行う。なお、中間膜が単層の場合は直径8mmに切断し、測定を行う。治具として、直径8mmのパラレルプレートを用い、3℃/分の降温速度で100℃から-10℃まで温度を低下させる条件、及び周波数1Hz及び歪1%の条件で測定を行う。得られた測定結果において、損失正接のピーク温度をガラス転移温度Tg(℃)とする。
【0040】
上記着色している層は、例えば着色剤を含む。上記着色している層の可視光線透過率は、例えば、80%以下であり、70%未満であってもよい。
【0041】
合わせガラスの透明性を高める観点からは、上記中間膜の可視光線透過率は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。
【0042】
上記可視光線透過率は、分光光度計(日立ハイテク社製「U-4100」)を用いて、JIS R3211:1998に準拠して、波長380~780nmにて測定される。上記中間膜の可視光線透過率は、2枚のクリアガラスの間に中間膜を配置して測定されてもよい。
【0043】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0044】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る合わせガラスを模式的に示す断面図である。
【0045】
図1に示す合わせガラス11は、第1の合わせガラス部材21と、第2の合わせガラス部材22と、中間膜1とを備える。中間膜1は、第1の合わせガラス部材21と第2の合わせガラス部材22との間に配置されており、挟み込まれている。
【0046】
中間膜1の第1の表面1aに、第1の合わせガラス部材21が積層されている。中間膜1の第1の表面1aとは反対の第2の表面1bに、第2の合わせガラス部材22が積層されている。中間膜1の第2の層3の外側の表面3aに第1の合わせガラス部材21が積層されている。中間膜1の第3の層4の外側の表面4aに第2の合わせガラス部材22が積層されている。
【0047】
中間膜1は、2層以上の構造を有する多層の中間膜である。中間膜1は、第1の層2と、第1の層2の第1の表面2a側に配置された第2の層3と、第1の層2の第1の表面2aとは反対の第2の表面2b側に配置された第3の層4とを備える。第2の層3は、第1の層2の第1の表面2aに積層されている。第3の層4は、第1の層2の第2の表面2bに積層されている。第1の層2は、中間層である。第2の層3及び第3の層4は、例えば、保護層であり、本実施形態では表面層である。第1の層2は、第2の層3と第3の層4との間に配置されており、挟み込まれている。従って、中間膜1は、第2の層3と第1の層2と第3の層4とがこの順で並んで配置された多層構造を有する。中間膜1では、第2の層3と第1の層2と第3の層4とがこの順で並んで積層されている。
【0048】
第2の層3の第1の層2側とは反対側の外側の表面3aは、合わせガラス部材が積層される表面であることが好ましい。第3の層4の第1の層2側とは反対側の外側の表面4aは、合わせガラス部材が積層される表面であることが好ましい。
【0049】
なお、第1の層2と第2の層3との間、及び、第1の層2と第3の層4との間にはそれぞれ、他の層が配置されていてもよい。第1の層2と第2の層3、及び、第1の層2と第3の層4とはそれぞれ、直接積層されていることが好ましい。他の層として、ポリビニルアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂を含む層、及びポリエチレンテレフタレート等を含む層が挙げられる。
【0050】
中間膜1は、熱可塑性樹脂を含む。第1の層2は、熱可塑性樹脂を含む。第2の層3は、熱可塑性樹脂を含む。第3の層4は、熱可塑性樹脂を含む。
【0051】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る合わせガラスを模式的に示す断面図である。
【0052】
図2に示す合わせガラス41は、第1の合わせガラス部材21と、第2の合わせガラス部材22と、中間膜31とを備える。中間膜31は、第1の合わせガラス部材21と第2の合わせガラス部材22との間に配置されており、挟み込まれている。中間膜31の第1の表面31aに、第1の合わせガラス部材21が積層されている。中間膜31の第1の表面31aとは反対の第2の表面31bに、第2の合わせガラス部材22が積層されている。
【0053】
中間膜31は、1層の構造を有する単層の中間膜である。中間膜31は、第1の層である。中間膜31は、熱可塑性樹脂を含む。
【0054】
上記中間膜は、1層の構造又は2層以上の構造を有する。上記中間膜は、1層の構造を有していてもよく、2層以上の構造を有していてもよい。上記中間膜は、2層の構造を有していてもよく、3層以上の構造を有していてもよい。上記中間膜は、第1の層のみを備える1層の構造を有する中間膜(単層の中間膜)であってもよく、第1の層と他の層とを備える2層以上の構造を有する中間膜(多層の中間膜)であってもよい。
【0055】
以下、上記中間膜を構成する上記第1の層(単層の中間膜を含む)、上記第2の層及び上記第3の層の詳細、並びに上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層に含まれる各成分の詳細を説明する。
【0056】
(熱可塑性樹脂)
中間膜は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(0)と記載することがある)を含む。中間膜は、熱可塑性樹脂(0)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(0)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第1の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第1の層は、熱可塑性樹脂(1)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第2の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(2)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第2の層は、熱可塑性樹脂(2)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(2)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第3の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第3の層は、熱可塑性樹脂(3)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記熱可塑性樹脂(1)と上記熱可塑性樹脂(2)と上記熱可塑性樹脂(3)とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。遮音性がより一層高くなることから、上記熱可塑性樹脂(1)は、上記熱可塑性樹脂(2)及び上記熱可塑性樹脂(3)と異なっていることが好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)と上記ポリビニルアセタール樹脂(2)と上記ポリビニルアセタール樹脂(3)とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。遮音性がより一層高くなることから、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)と異なっていることが好ましい。上記熱可塑性樹脂(0)、上記熱可塑性樹脂(1)、上記熱可塑性樹脂(2)及び上記熱可塑性樹脂(3)はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記ポリビニルアセタール樹脂(0)、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0057】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びシクロオレフィン樹脂等が挙げられる。これら以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0058】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)をアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールのアセタール化物であることが好ましい。上記ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。上記ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に70~99.9モル%の範囲内である。
【0059】
合わせガラスの端部における変色の発生を効果的に抑制し、合わせガラスの外観を良好に保つ観点からは、上記中間膜は、ポリビニルブチラール樹脂又はアイオノマー樹脂を含むことが好ましい。合わせガラスの端部における変色の発生を効果的に抑制し、合わせガラスの外観を良好に保つ観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルブチラール樹脂であることが好ましい。合わせガラスの端部における変色の発生を効果的に抑制し、合わせガラスの外観を良好に保つ観点からは、上記アイオノマー樹脂は、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂であることが好ましい。
【0060】
上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂は、アイオノマー化されたポリビニルアセタール樹脂である。上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂は、酸基が導入されたポリビニルアセタールを含むことが好ましい。
【0061】
上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂は、例えば-CH-CH-基を主鎖に有する。上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂は、ポリビニルアセタール骨格を有する。上記ポリビニルアセタール骨格が、-CH-CH-基を主鎖に有する。-CH-CH-基における「-CH-」部分の炭素原子には、1つの他の基が結合している。上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂では、主鎖において、-CH-CH-基が連続していることが好ましい。
【0062】
上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂を得る際の中和には、金属が用いられる。低温での耐衝撃性及び自己修復性を効果的に高める観点からは、上記金属は、Na、Li、K、Mg、Zn、Cu、Co、Al、Fe、Ni、Cr又はMnであることが好ましい。上記金属は、特にNaを含有することが好ましい。
【0063】
上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂の製造方法としては、以下の方法等が挙げられる。ポリ酢酸ビニルと、イオン性官能基になり得る基を有するモノマーとを共重合させ、けん化し、アルデヒドによりアセタール化した後、アイオノマー化する方法。ポリビニルアルコール(PVA)を、イオン性官能基になり得る基を有するアルデヒドによりアセタール化した後、アイオノマー化する方法。ポリビニルアセタールを、イオン性官能基になり得る基を有するアルデヒドによりアセタール化した後、アイオノマー化する方法。
【0064】
アイオノマー化の方法としては、溶液中に、金属含有化合物を添加する方法、並びに、混練中に、金属含有化合物を添加する方法等が挙げられる。上記金属含有化合物は、溶液の状態で添加されてもよい。
【0065】
上記イオン性官能基は、カルボキシル基、カルボキシル基の塩基、スルホン酸基、スルホン酸基の塩基、スルフィン酸基、スルフィン酸基の塩基、スルフェン酸基、スルフェン酸基の塩基、リン酸基、リン酸基の塩基、ホスホン酸基、ホスホン酸基の塩基、アミノ基、又はアミノ基の塩基であることが好ましい。これらの基については、アイオノマー化の効果が効果的に発現し、本発明の効果が効果的に発現する。
【0066】
上記イオン性官能基の含有率は、樹脂中のイオン性官能基になり得る基、及び、イオン性官能基の金属塩を構成しているイオン性官能基の割合の和を意味する。上記イオン性官能基の含有率は、NMR等を用いて測定することができる。例えば、カーボンNMRでイオン性官能基に由来するピーク(カルボキシル基では45ppm付近に現れる)と、30ppm付近に現れる主鎖に由来するピークとの積分値から算出することができる。
【0067】
上記ポリビニルアルコール(PVA)の平均重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、より一層好ましくは1500以上、更に好ましくは1600以上、特に好ましくは2600以上、最も好ましくは2700以上、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3500以下である。上記平均重合度が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記平均重合度が上記上限以下であると、中間膜の成形が容易になる。
【0068】
上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0069】
上記ポリビニルアセタール樹脂に含まれるアセタール基の炭素数は特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂を製造する際に用いるアルデヒドは特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数は3~5であることが好ましく、3又は4であることがより好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数が3以上であると、中間膜のガラス転移温度が充分に低くなる。
【0070】
上記アルデヒドは特に限定されない。一般には、炭素数が1~10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1~10のアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド及びベンズアルデヒド等が挙げられる。プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド又はn-バレルアルデヒドが好ましく、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド又はイソブチルアルデヒドがより好ましく、n-ブチルアルデヒドが更に好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0071】
上記ポリビニルアセタール樹脂(0)の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは15モル%以上、より好ましくは18モル%以上、好ましくは40モル%以下、より好ましくは35モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の接着力がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
【0072】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは17モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは22モル%以上、好ましくは28モル%以下、より好ましくは27モル%以下、更に好ましくは25モル%以下、特に好ましくは24モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の機械強度がより一層高くなる。特に、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率が20モル%以上であると反応効率が高く生産性に優れ、また28モル%以下であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
【0073】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の各含有率は、好ましくは25モル%以上、より好ましくは28モル%以上、より好ましくは30モル%以上、より一層好ましくは31.5モル%以上、更に好ましくは32モル%以上、特に好ましくは33モル%以上である。上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の各含有率は、好ましくは38モル%以下、より好ましくは37モル%以下、更に好ましくは36.5モル%以下、特に好ましくは36モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の接着力がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
【0074】
遮音性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率よりも低いことが好ましい。遮音性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率よりも低いことが好ましい。遮音性を更に一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは9モル%以上、特に好ましくは10モル%以上、最も好ましくは12モル%以上である。遮音性を更に一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率との差の絶対値は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは9モル%以上、特に好ましくは10モル%以上、最も好ましくは12モル%以上である。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値は、好ましくは20モル%以下である。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率との差の絶対値は、好ましくは20モル%以下である。
【0075】
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0076】
上記ポリビニルアセタール樹脂(0)のアセチル化度(アセチル基量)は、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.3モル%以上、更に好ましくは0.5モル%以上、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、更に好ましくは20モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。
【0077】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度(アセチル基量)は、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.1モル%以上、より一層好ましくは7モル%以上、更に好ましくは9モル%以上、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、更に好ましくは24モル%以下、特に好ましくは20モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。特に、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度が0.1モル%以上、25モル%以下であると、耐貫通性に優れる。
【0078】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の各アセチル化度は、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、好ましくは10モル%以下、より好ましくは2モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。
【0079】
上記アセチル化度は、アセチル基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記アセチル基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0080】
上記ポリビニルアセタール樹脂(0)のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは60モル%以上、より好ましくは63モル%以上、好ましくは85モル%以下、より好ましくは75モル%以下、更に好ましくは70モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0081】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは47モル%以上、より好ましくは60モル%以上、好ましくは85モル%以下、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは75モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0082】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の各アセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは55モル%以上、より好ましくは60モル%以上、好ましくは75モル%以下、より好ましくは71モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0083】
上記アセタール化度は、以下のようにして求める。先ず、主鎖の全エチレン基量から、水酸基が結合しているエチレン基量と、アセチル基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を求める。得られた値を、主鎖の全エチレン基量で除算してモル分率を求める。このモル分率を百分率で示した値がアセタール化度である。
【0084】
なお、上記水酸基の含有率(水酸基量)、アセタール化度(ブチラール化度)及びアセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出することが好ましい。但し、ASTM D1396-92による測定を用いてもよい。ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルブチラール樹脂である場合は、上記水酸基の含有率(水酸基量)、上記アセタール化度(ブチラール化度)及び上記アセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出され得る。
【0085】
(可塑剤)
中間膜の接着力をより一層高める観点からは、本発明に係る中間膜は、可塑剤(以下、可塑剤(0)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第1の層は、可塑剤(以下、可塑剤(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第2の層は、可塑剤(以下、可塑剤(2)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第3の層は、可塑剤(以下、可塑剤(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。中間膜に含まれている熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂である場合に、中間膜(各層)は、可塑剤を含むことが特に好ましい。ポリビニルアセタール樹脂を含む層は、可塑剤を含むことが好ましい。
【0086】
上記可塑剤は特に限定されない。上記可塑剤として、従来公知の可塑剤を用いることができる。上記可塑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0087】
上記可塑剤としては、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などの有機リン酸可塑剤等が挙げられる。有機エステル可塑剤が好ましい。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0088】
上記一塩基性有機酸エステルとしては、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2-エチル酪酸、ヘプチル酸、n-オクチル酸、2-エチルヘキシル酸、n-ノニル酸及びデシル酸等が挙げられる。
【0089】
上記多塩基性有機酸エステルとしては、多塩基性有機酸と、炭素数4~8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物等が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
【0090】
上記有機エステル可塑剤としては、トリエチレングリコールジ-2-エチルプロパノエート、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ-n-オクタノエート、トリエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,3-プロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,4-ブチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリレート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、及びリン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。これら以外の有機エステル可塑剤を用いてもよい。上述のアジピン酸エステル以外の他のアジピン酸エステルを用いてもよい。
【0091】
上記有機リン酸可塑剤としては、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0092】
上記可塑剤は、下記式(1)で表されるジエステル可塑剤であることが好ましい。
【0093】
【化1】
【0094】
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数5~10の有機基を表し、R3は、エチレン基、イソプロピレン基又はn-プロピレン基を表し、pは3~10の整数を表す。上記式(1)中のR1及びR2はそれぞれ、炭素数6~10の有機基であることが好ましい。
【0095】
上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)又はトリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート(3GH)を含むことが好ましく、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエートを含むことがより好ましい。
【0096】
上記中間膜における上記熱可塑性樹脂(0)100重量部に対する上記可塑剤(0)の含有量を、含有量(0)とする。上記含有量(0)は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは25重量部以上、更に好ましくは30重量部以上、好ましくは100重量部以下、より好ましくは60重量部以下、更に好ましくは50重量部以下である。上記含有量(0)が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記含有量(0)が上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層高くなる。
【0097】
上記第1の層において、上記熱可塑性樹脂(1)100重量部に対する上記可塑剤(1)の含有量を、含有量(1)とする。上記含有量(1)は、好ましくは50重量部以上、より好ましくは55重量部以上、更に好ましくは60重量部以上、好ましくは100重量部以下、より好ましくは90重量部以下、更に好ましくは85重量部以下、特に好ましくは80重量部以下である。上記含有量(1)が上記下限以上であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。上記含有量(1)が上記上限以下であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。
【0098】
上記第2の層において、上記熱可塑性樹脂(2)100重量部に対する上記可塑剤(2)の含有量を、含有量(2)とする。上記第3の層において、上記熱可塑性樹脂(3)100重量部に対する上記可塑剤(3)の含有量を、含有量(3)とする。上記含有量(2)及び上記含有量(3)はそれぞれ、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、より一層好ましくは15重量部以上、更に好ましくは20重量部以上、特に好ましくは24重量部以上、最も好ましくは25重量部以上である。上記含有量(2)及び上記含有量(3)はそれぞれ、好ましくは45重量部以下、より好ましくは40重量部以下、更に好ましくは35重量部以下、特に好ましくは32重量部以下、最も好ましくは30重量部以下である。上記含有量(2)及び上記含有量(3)が上記下限以上であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。上記含有量(2)及び上記含有量(3)が上記上限以下であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。
【0099】
合わせガラスの遮音性を高めるために、上記含有量(1)は上記含有量(2)よりも多いことが好ましく、上記含有量(1)は上記含有量(3)よりも多いことが好ましい。
【0100】
合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記含有量(2)と上記含有量(1)との差の絶対値、並びに上記含有量(3)と上記含有量(1)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上、更に好ましくは20重量部以上である。上記含有量(2)と上記含有量(1)との差の絶対値、並びに上記含有量(3)と上記含有量(1)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは80重量部以下、より好ましくは75重量部以下、更に好ましくは70重量部以下である。
【0101】
(遮熱性物質)
上記中間膜は、遮熱性物質(遮熱性化合物)を含むことが好ましい。上記第1の層は、遮熱性物質を含むことが好ましい。上記第2の層は、遮熱性物質を含むことが好ましい。上記第3の層は、遮熱性物質を含むことが好ましい。上記遮熱性物質は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0102】
上記遮熱性物質は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも1種の成分Xを含むか、又は遮熱粒子を含むことが好ましい。この場合に、上記成分Xと上記遮熱粒子との双方を含んでいてもよい。
【0103】
成分X:
上記中間膜は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも1種の成分Xを含むことが好ましい。上記第1の層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記第2の層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記第3の層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記成分Xは遮熱性物質である。上記成分Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0104】
上記成分Xは特に限定されない。成分Xとして、従来公知のフタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物を用いることができる。
【0105】
上記成分Xとしては、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン、ナフタロシアニンの誘導体、アントラシアニン及びアントラシアニンの誘導体等が挙げられる。上記フタロシアニン化合物及び上記フタロシアニンの誘導体はそれぞれ、フタロシアニン骨格を有することが好ましい。上記ナフタロシアニン化合物及び上記ナフタロシアニンの誘導体はそれぞれ、ナフタロシアニン骨格を有することが好ましい。上記アントラシアニン化合物及び上記アントラシアニンの誘導体はそれぞれ、アントラシアニン骨格を有することが好ましい。
【0106】
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、上記成分Xは、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン及びナフタロシアニンの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、フタロシアニン及びフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも1種であることがより好ましい。
【0107】
遮熱性を効果的に高め、かつ長期間にわたり可視光線透過率をより一層高いレベルで維持する観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有することが好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子を含有することが好ましく、銅原子を含有することも好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニン及びバナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも1種であることがより好ましい。中間膜及び合わせガラスの遮熱性を更に一層高くする観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子に酸素原子が結合した構造単位を有することが好ましい。
【0108】
上記中間膜100重量%中又は上記成分Xを含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記成分Xの含有量は、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.005重量%以上、更に好ましくは0.01重量%以上、特に好ましくは0.02重量%以上である。上記中間膜100重量%中又は上記成分Xを含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記成分Xの含有量は、好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、更に好ましくは0.05重量%以下、特に好ましくは0.04重量%以下である。上記成分Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性が充分に高くなり、かつ可視光線透過率が充分に高くなる。例えば、可視光線透過率を70%以上にすることが可能である。
【0109】
遮熱粒子:
上記中間膜は、遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第1の層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第2の層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第3の層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記遮熱粒子は遮熱性物質である。遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。上記遮熱粒子は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0110】
合わせガラスの遮熱性をより一層高める観点からは、上記遮熱粒子は、金属酸化物粒子であることがより好ましい。上記遮熱粒子は、金属の酸化物により形成された粒子(金属酸化物粒子)であることが好ましい。
【0111】
可視光よりも長い波長780nm以上の赤外線は、紫外線と比較して、エネルギー量が小さい。しかしながら、赤外線は熱的作用が大きく、赤外線が物質に吸収されると熱として放出される。このため、赤外線は一般に熱線と呼ばれている。上記遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。なお、遮熱粒子とは、赤外線を吸収可能な粒子を意味する。
【0112】
上記遮熱粒子の具体例としては、アルミニウムドープ酸化錫粒子、インジウムドープ酸化錫粒子、アンチモンドープ酸化錫粒子(ATO粒子)、ガリウムドープ酸化亜鉛粒子(GZO粒子)、インジウムドープ酸化亜鉛粒子(IZO粒子)、アルミニウムドープ酸化亜鉛粒子(AZO粒子)、ニオブドープ酸化チタン粒子、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子、ルビジウムドープ酸化タングステン粒子、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)、錫ドープ酸化亜鉛粒子、珪素ドープ酸化亜鉛粒子等の金属酸化物粒子や、六ホウ化ランタン(LaB)粒子等が挙げられる。これら以外の遮熱粒子を用いてもよい。熱線の遮蔽機能が高いため、金属酸化物粒子が好ましく、ATO粒子、GZO粒子、IZO粒子、ITO粒子又は酸化タングステン粒子がより好ましく、ITO粒子又は酸化タングステン粒子が特に好ましい。特に、熱線の遮蔽機能が高く、かつ入手が容易であるので、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)が好ましく、酸化タングステン粒子も好ましい。
【0113】
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、酸化タングステン粒子は、金属ドープ酸化タングステン粒子であることが好ましい。上記「酸化タングステン粒子」には、金属ドープ酸化タングステン粒子が含まれる。上記金属ドープ酸化タングステン粒子としては、具体的には、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子及びルビジウムドープ酸化タングステン粒子等が挙げられる。
【0114】
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、セシウムドープ酸化タングステン粒子が特に好ましい。中間膜及び合わせガラスの遮熱性を更に一層高くする観点からは、該セシウムドープ酸化タングステン粒子は、式:Cs0.33WOで表される酸化タングステン粒子であることが好ましい。
【0115】
上記遮熱粒子の平均粒子径は好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下である。平均粒子径が上記下限以上であると、熱線の遮蔽性が充分に高くなる。平均粒子径が上記上限以下であると、遮熱粒子の分散性が高くなる。
【0116】
上記「平均粒子径」は、体積平均粒子径を示す。平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装社製「UPA-EX150」)等を用いて測定できる。
【0117】
上記中間膜100重量%中又は上記遮熱粒子を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記遮熱粒子の各含有量(特に酸化タングステン粒子の含有量)は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、特に好ましくは1.5重量%以上である。上記中間膜100重量%中又は上記遮熱粒子を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記遮熱粒子の各含有量(特に酸化タングステン粒子の含有量)は、好ましくは6重量%以下、より好ましくは5.5重量%以下、更に好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3.5重量%以下、最も好ましくは3重量%以下である。上記遮熱粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性が充分に高くなり、かつ可視光線透過率が充分に高くなる。
【0118】
(金属塩)
上記中間膜は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びマグネシウム塩の内の少なくとも1種の金属塩(以下、金属塩Mと記載することがある)を含むことが好ましい。上記第1の層は、上記金属塩Mを含むことが好ましい。上記第2の層は、上記金属塩Mを含むことが好ましい。上記第3の層は、上記金属塩Mを含むことが好ましい。上記金属塩Mの使用により、中間膜とガラス板などの合わせガラス部材との接着性又は中間膜における各層間の接着性を制御することが容易になる。上記金属塩Mは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0119】
上記金属塩Mは、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択された少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。中間膜中に含まれている金属塩は、K及びMgの内の少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。
【0120】
また、上記金属塩Mは、炭素数2~16の有機酸のアルカリ金属塩、炭素数2~16の有機酸のアルカリ土類金属塩又は炭素数2~16の有機酸のマグネシウム塩であることがより好ましく、炭素数2~16のカルボン酸マグネシウム塩又は炭素数2~16のカルボン酸カリウム塩であることが更に好ましい。
【0121】
上記炭素数2~16のカルボン酸マグネシウム塩及び上記炭素数2~16のカルボン酸カリウム塩としては、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カリウム、2-エチル酪酸マグネシウム、2-エチルブタン酸カリウム、2-エチルヘキサン酸マグネシウム及び2-エチルヘキサン酸カリウム等が挙げられる。
【0122】
上記金属塩Mを含む中間膜、又は上記金属塩Mを含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)におけるMg及びKの含有量の合計は、好ましくは5ppm以上、より好ましくは10ppm以上、更に好ましくは20ppm以上、好ましくは300ppm以下、より好ましくは250ppm以下、更に好ましくは200ppm以下である。Mg及びKの含有量の合計が上記下限以上及び上記上限以下であると、中間膜とガラス板との接着性又は中間膜における各層間の接着性をより一層良好に制御できる。
【0123】
(紫外線遮蔽剤)
上記中間膜は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第1の層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第2の層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第3の層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。紫外線遮蔽剤の使用により、中間膜及び合わせガラスが長期間使用されても、可視光線透過率がより一層低下し難くなる。上記紫外線遮蔽剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0124】
上記紫外線遮蔽剤には、紫外線吸収剤が含まれる。上記紫外線遮蔽剤は、紫外線吸収剤であることが好ましい。
【0125】
上記紫外線遮蔽剤としては、例えば、金属原子を含む紫外線遮蔽剤、金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤、ベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤(ベンゾトリアゾール化合物)、ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤(ベンゾフェノン化合物)、トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤(トリアジン化合物)、マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤(マロン酸エステル化合物)、シュウ酸アニリド構造を有する紫外線遮蔽剤(シュウ酸アニリド化合物)及びベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤(ベンゾエート化合物)等が挙げられる。
【0126】
上記金属原子を含む紫外線遮蔽剤としては、例えば、白金粒子、白金粒子の表面をシリカで被覆した粒子、パラジウム粒子及びパラジウム粒子の表面をシリカで被覆した粒子等が挙げられる。紫外線遮蔽剤は、遮熱粒子ではないことが好ましい。
【0127】
上記紫外線遮蔽剤は、好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤、ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤、トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤又はベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤である。上記紫外線遮蔽剤は、より好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤又はベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤であり、更に好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤である。
【0128】
上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化セリウム等が挙げられる。さらに、上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤に関して、表面が被覆されていてもよい。上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤の表面の被覆材料としては、絶縁性金属酸化物、加水分解性有機ケイ素化合物及びシリコーン化合物等が挙げられる。
【0129】
上記絶縁性金属酸化物としては、シリカ、アルミナ及びジルコニア等が挙げられる。上記絶縁性金属酸化物は、例えば5.0eV以上のバンドギャップエネルギーを有する。
【0130】
上記ベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「TinuvinP」)、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin320」)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin326」)、及び2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin328」)等が挙げられる。紫外線を遮蔽する性能に優れることから、上記紫外線遮蔽剤は、ハロゲン原子を含むベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤であることが好ましく、塩素原子を含むベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤であることがより好ましい。
【0131】
上記ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、オクタベンゾン(BASF社製「Chimassorb81」)等が挙げられる。
【0132】
上記トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、ADEKA社製「LA-F70」及び2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール(BASF社製「Tinuvin1577FF」)等が挙げられる。
【0133】
上記マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤としては、2-(p-メトキシベンジリデン)マロン酸ジメチル、テトラエチル-2,2-(1,4-フェニレンジメチリデン)ビスマロネート、2-(p-メトキシベンジリデン)-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル4-ピペリジニル)マロネート等が挙げられる。
【0134】
上記マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤の市販品としては、Hostavin B-CAP、Hostavin PR-25、Hostavin PR-31(いずれもクラリアント社製)が挙げられる。
【0135】
上記シュウ酸アニリド構造を有する紫外線遮蔽剤としては、N-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシ-5-t-ブチルフェニル)シュウ酸ジアミド、N-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシ-フェニル)シュウ酸ジアミド、2-エチル-2’-エトキシ-オキシアニリド(クラリアント社製「SanduvorVSU」)などの窒素原子上に置換されたアリール基などを有するシュウ酸ジアミド類が挙げられる。
【0136】
上記ベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(BASF社製「Tinuvin120」)等が挙げられる。
【0137】
上記中間膜100重量%中又は上記紫外線遮蔽剤を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量及びベンゾトリアゾール化合物の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.3重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上である。上記中間膜100重量%中又は上記紫外線遮蔽剤を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量及びベントトリアゾール化合物の含有量は、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、更に好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.8重量%以下である。上記紫外線遮蔽剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、期間経過後の可視光線透過率の低下をより一層抑制することができる。特に、上記紫外線遮蔽剤を含む層100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量が0.2重量%以上であることにより、中間膜及び合わせガラスの期間経過後の可視光線透過率の低下を顕著に抑制できる。
【0138】
(酸化防止剤)
上記中間膜は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第1の層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第2の層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第3の層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記酸化防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0139】
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等が挙げられる。上記フェノール系酸化防止剤はフェノール骨格を有する酸化防止剤である。上記硫黄系酸化防止剤は硫黄原子を含有する酸化防止剤である。上記リン系酸化防止剤はリン原子を含有する酸化防止剤である。
【0140】
上記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤又はリン系酸化防止剤であることが好ましい。
【0141】
上記フェノール系酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス-(4-メチル-6-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス-(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス-(2-メチル-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェノール)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,3’-t-ブチルフェノール)ブチリックアッシドグリコールエステル及びビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン)等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0142】
上記リン系酸化防止剤としては、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチル-6-メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸、及び2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0143】
上記酸化防止剤の市販品としては、例えばBASF社製「IRGANOX 245」、BASF社製「IRGAFOS 168」、BASF社製「IRGAFOS 38」、住友化学工業社製「スミライザーBHT」、堺化学工業社製「H-BHT」、並びにBASF社製「IRGANOX 1010」等が挙げられる。
【0144】
中間膜及び合わせガラスの高い可視光線透過率を長期間に渡り維持するために、上記中間膜100重量%中又は酸化防止剤を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記酸化防止剤の含有量は0.03重量%以上であることが好ましく、0.1重量%以上であることがより好ましい。また、酸化防止剤の添加効果が飽和するので、上記中間膜100重量%中又は上記酸化防止剤を含む層100重量%中、上記酸化防止剤の含有量は2重量%以下であることが好ましい。
【0145】
(光安定剤)
上記中間膜は、光安定剤を含むことが好ましい。上記第1の層は、光安定剤を含むことが好ましい。上記第2の層は、光安定剤を含むことが好ましい。上記第3の層は、光安定剤を含むことが好ましい。光安定剤の使用により、中間膜が長期間使用されたり、太陽光に晒されたりしても、変色がより一層抑えられ、可視光線透過率がより一層低下し難くなる。上記光安定剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0146】
変色をより一層抑える観点からは、上記光安定剤は、ヒンダードアミン光安定剤であることが好ましい。
【0147】
上記ヒンダードアミン光安定剤としては、ピペリジン構造の窒素原子にアルキル基、アルコキシ基又は水素原子が結合しているヒンダードアミン光安定剤等が挙げられる。変色をより一層抑える観点からは、ピペリジン構造の窒素原子にアルキル基又はアルコキシ基が結合しているヒンダードアミン光安定剤が好ましい。上記ヒンダードアミン光安定剤は、ピペリジン構造の窒素原子にアルキル基が結合しているヒンダードアミン光安定剤であることが好ましく、ピペリジン構造の窒素原子にアルコキシ基が結合しているヒンダードアミン光安定剤であることも好ましい。
【0148】
上記ピペリジン構造の窒素原子にアルキル基が結合しているヒンダードアミン光安定剤としては、BASF社製「Tinuvin765」及び「Tinuvin622SF」、及びADEKA社製「アデカスタブ LA-52」等が挙げられる。
【0149】
上記ピペリジン構造の窒素原子にアルコキシ基が結合しているヒンダードアミン光安定剤としては、BASF社製「TinuvinXT-850FF」及び「TinuvinXT-855FF」、及びADEKA社製「アデカスタブ LA-81」等が挙げられる。
【0150】
上記ピペリジン構造の窒素原子に水素原子が結合しているヒンダードアミン光安定剤としては、BASF社製「Tinuvin770DF」、及びクラリアント社製「Hostavin N24」等が挙げられる。
【0151】
変色をより一層抑える観点からは、上記光安定剤の分子量は好ましくは2000以下、より好ましくは1000以下、更に好ましくは700以下である。
【0152】
上記中間膜100重量%中又は光安定剤を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記光安定剤の含有量は好ましくは0.0025重量%以上、より好ましくは0.025重量%以上、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.3重量%以下である。上記光安定剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、変色が効果的に抑えられる。
【0153】
(他の成分)
上記中間膜、上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層はそれぞれ、必要に応じて、カップリング剤、分散剤、界面活性剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料、金属塩以外の接着力調整剤、耐湿剤、蛍光増白剤及び赤外線吸収剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0154】
(中間膜の他の詳細)
上記中間膜の一端と他端との距離は、好ましくは0.5m以上、より好ましくは0.8m以上、特に好ましくは1m以上であり、好ましくは3m以下、より好ましくは2m以下、特に好ましくは1.5m以下である。中間膜が長さ方向と幅方向とを有する場合には、一端と他端との距離は、中間膜の長さ方向の距離である。中間膜が正方形の平面形状を有する場合には、一端と他端との距離は、対向し合う一端と他端との距離である。
【0155】
2層以上の構造又は3層以上の構造を有する中間膜である場合に、合わせガラスの遮音性能をより一層良好にする観点からは、上記第1の層のガラス転移温度は好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下、更に好ましくは10℃以下である。上記第1の層のガラス転移温度は、好ましくは-15℃以上である。
【0156】
上記中間膜の厚みは特に限定されない。実用面の観点、並びに遮熱性を充分に高める観点からは、中間膜の厚みは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.25mm以上、好ましくは3mm以下、より好ましくは1.5mm以下である。中間膜の厚みが上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性が高くなる。中間膜の厚みが上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層良好になる。
【0157】
中間膜の厚みをTとする。多層の中間膜の場合に、合わせガラスの端部において変色をより一層生じ難くし、かつ合わせガラスの透明性の低下をより一層抑える観点からは、上記第1の層の厚みは、好ましくは0.0625T以上、より好ましくは0.1T以上、好ましくは0.375T以下、より好ましくは0.25T以下である。
【0158】
合わせガラスの端部において変色をより一層生じ難くし、かつ合わせガラスの透明性の低下をより一層抑える観点からは、上記第2の層及び上記第3の層の各厚みは、好ましくは0.625T以上、より好ましくは0.75T以上、好ましくは0.9375T以下、より好ましくは0.9T以下である。また、上記第2の層及び上記第3の層の各厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、可塑剤のブリードアウトを抑制できる。
【0159】
合わせガラスの端部において変色をより一層生じ難くする観点からは、中間膜が上記第2の層と上記第3の層とを備える場合に、上記第2の層と上記第3の層との合計の厚みは、好ましくは0.625T以上、より好ましくは0.75T以上、好ましくは0.9375T以下、より好ましくは0.9T以下である。また、上記第2の層と上記第3の層との合計の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、可塑剤のブリードアウトを抑制できる。
【0160】
上記中間膜は、厚みが均一な中間膜であってもよく、厚みが変化している中間膜であってもよい。上記中間膜の断面形状は矩形であってもよく、楔形であってもよい。
【0161】
上記中間膜の製造方法は特に限定されない。上記中間膜の製造方法としては、単層の中間膜の場合に、樹脂組成物を押出機を用いて押出する方法が挙げられる。上記中間膜の製造方法としては、多層の中間膜の場合に、例えば、各層を形成するための各樹脂組成物を用いて各層をそれぞれ形成した後に、得られた各層を積層する方法、並びに各層を形成するための各樹脂組成物を押出機を用いて共押出することにより、各層を積層する方法等が挙げられる。連続的な生産に適しているため、押出成形する製造方法が好ましい。
【0162】
中間膜の製造効率が優れることから、上記第2の層と上記第3の層とに、同一のポリビニルアセタール樹脂が含まれていることが好ましい。中間膜の製造効率が優れることから、上記第2の層と上記第3の層とに、同一のポリビニルアセタール樹脂及び同一の可塑剤が含まれていることがより好ましい。中間膜の製造効率が優れることから、上記第2の層と上記第3の層とが同一の樹脂組成物により形成されていることが更に好ましい。
【0163】
上記中間膜は、両側の表面の内の少なくとも一方の表面に凹凸形状を有することが好ましい。上記中間膜は、両側の表面に凹凸形状を有することがより好ましい。上記の凹凸形状を形成する方法としては特に限定されず、例えば、リップエンボス法、エンボスロール法、カレンダーロール法、及び異形押出法等が挙げられる。定量的に一定の凹凸模様である多数の凹凸形状のエンボスを形成することができることから、エンボスロール法が好ましい。
【0164】
(合わせガラスの他の詳細)
上記合わせガラス部材としては、ガラス板及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が挙げられる。合わせガラスには、2枚のガラス板の間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスだけでなく、ガラス板とPETフィルム等との間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスも含まれる。上記合わせガラスは、ガラス板を備えた積層体であり、少なくとも1枚のガラス板が用いられていることが好ましい。上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材がそれぞれ、ガラス板又はPETフィルムであり、上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材の内の少なくとも一方が、ガラス板であることが好ましい。
【0165】
上記ガラス板としては、無機ガラス及び有機ガラスが挙げられる。上記無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、及び線入り板ガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代わる合成樹脂ガラスである。上記有機ガラスとしては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
【0166】
上記合わせガラス部材の厚みは、好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。また、上記合わせガラス部材がガラス板である場合に、該ガラス板の厚みは、好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。上記合わせガラス部材がPETフィルムである場合に、該PETフィルムの厚みは、好ましくは0.03mm以上、好ましくは0.5mm以下である。
【0167】
上記合わせガラスの製造方法は特に限定されない。先ず、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に、中間膜を挟んで、積層体を得る。次に、例えば、得られた積層体を押圧ロールに通したり又はゴムバッグに入れて減圧吸引したりすることにより、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材と中間膜との間に残留する空気を脱気する。その後、約70~110℃で予備接着して予備圧着された積層体を得る。次に、予備圧着された積層体をオートクレーブに入れたり、又はプレスしたりして、約120~150℃及び1~1.5MPaの圧力で圧着する。このようにして、合わせガラスを得ることができる。上記合わせガラスの製造時に、第1の層と第2の層と第3の層とを積層してもよい。
【0168】
上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、これらの用途以外にも使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、車両用又は建築用の中間膜及び合わせガラスであることが好ましく、車両用の中間膜及び合わせガラスであることがより好ましい。上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス、ルーフガラス又はバックライト用ガラス等に使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車に好適に用いられる。上記中間膜は、自動車の合わせガラスを得るために用いられる。
【0169】
本発明では、合わせガラスの端部における変色の発生を抑制し、合わせガラスの外観を良好に保つことができるので、上記合わせガラスは、自動車において、サイドガラス、ルーフガラス又はバックライト用ガラスとして用いられる。サイドガラスは視認されやすい。ルーフガラスは太陽光等によって変質しやすい。バックライト用ガラスは、バックライトによって外観欠点が視認されやすい。本発明に係る合わせガラスをサイドガラス、ルーフガラス又はバックライト用ガラスとして用いることで、良好な外観を達成し、変質を抑えることができる。上記合わせガラスは、自動車において、ウインドシールド用ガラスとして用いられる合わせガラスであり、上記中間膜と車外側の合わせガラス部材との接着面に黒色塗装が施されていないことが好ましい。
【0170】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれらの実施例のみに限定されない。
【0171】
以下の実施例及び比較例で用いたポリビニルブチラール(PVB)樹脂に関しては、ブチラール化度(アセタール化度)、アセチル化度及び水酸基の含有率はJIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定した。なお、ASTM D1396-92により測定した場合も、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法と同様の数値を示した。
【0172】
(ポリビニルアセタール樹脂(1))
ブチラール化度68モル%、アセチル化度1モル%、水酸基の含有率31モル%、重量平均分子量150,000のポリビニルブチラール樹脂
【0173】
(ポリビニルアセタール樹脂(X))
ブチラール化度68モル%、アセチル化度1%、水酸基の含有率31モル%、重量平均分子量68,000のポリビニルブチラール樹脂
【0174】
(比較例1)
中間膜を形成するための組成物の作製:
【0175】
以下の成分を配合し、ミキシングロールで充分に混練し、中間膜を形成するための組成物を得た。
【0176】
ポリビニルアセタール樹脂(1)100重量部
可塑剤であるトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)40重量部
得られる中間膜中で0.2重量%となる量の紫外線遮蔽剤(2-(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール)
得られる中間膜中で0.2重量%となる量の酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール)
【0177】
中間膜の作製:
中間膜を形成するための組成物を、押出機を用いて押出することにより、単層の中間膜(厚み800μm)を作製した。
【0178】
合わせガラスの作製:
得られた中間膜を、縦8cm×横8cmに切り出した。次に、2枚のクリアガラス(縦8cm×横8cm×厚み2.5mm)の間に中間膜を挟み込み、真空ラミネーターにて90℃で30分間保持し、真空プレスし、積層体を得た。積層体において、クリアガラスからはみ出た中間膜部分を切り落とし、合わせガラスを得た。
【0179】
(実施例1)
端部にアルカリ液を含浸させた中間膜の例:
イソプロパノール及びメタノールの混合液に、アルカリ成分を含有させたアルカリ液を用意した。
【0180】
比較例1で得られた合わせガラスの端部を上記アルカリ液に浸漬させ、中間膜の端部にアルカリ液を含浸させて、合わせガラスを得た。
【0181】
(実施例2)
端部をシリカスパッタ処理した中間膜の例:
比較例1の合わせガラスの端部をシリカスパッタ処理して、合わせガラスを得た。
【0182】
(実施例3)
端部を金属スパッタ処理した中間膜の例:
比較例1の合わせガラスの端部を金属スパッタ処理して、合わせガラスを得た。
【0183】
(実施例4)
端部にポリビニルアセタール樹脂シートを用いた中間膜の例:
比較例1の合わせガラスの端部にポリビニルアセタール樹脂シートを貼り付けて、合わせガラスを得た。
【0184】
(実施例5)
端部に光安定剤含有シートを用いた中間膜の例:
比較例1の合わせガラスの端部に光安定剤含有シート(光安定剤(BASF社製「Tinuvin765」))を貼り付けて、合わせガラスを得た。
【0185】
(実施例6)
端部に光安定剤を含浸させた中間膜の例:
比較例1の合わせガラスの端部に光安定剤:BASF社製「Tinuvin765」を浸みこませて、合わせガラスを得た。
【0186】
(実施例7)
端部に封止シートを用いた中間膜の例:
比較例1の合わせガラスの端部に封止シートを貼り付けて、合わせガラスを得た。上記封止シートの気密性は高い。上記封止シートは、例えば、酸化防止剤の漏えいを防止する。
【0187】
(比較例2)
第1の層を形成するための組成物の作製:
【0188】
以下の成分を配合し、ミキシングロールで充分に混練し、第1の層を形成するための組成物を得た。
【0189】
ポリビニルアセタール樹脂(X)100重量部
可塑剤であるトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)60重量部
得られる中間膜中で0.2重量%となる量の紫外線遮蔽剤(2-(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール)
得られる中間膜中で0.2重量%となる量の酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール)
【0190】
第2の層及び第3の層を形成するための組成物の作製:
【0191】
以下の成分を配合し、ミキシングロールで充分に混練し、第2の層及び第3の層を形成するための組成物を形成するための組成物を得た。
【0192】
ポリビニルアセタール樹脂(1)100重量部
可塑剤であるトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)40重量部
得られる中間膜中で0.2重量%となる量の紫外線遮蔽剤(2-(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール)
得られる中間膜中で0.2重量%となる量の酸化防止剤(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール)
【0193】
中間膜の作製:
第1の層を形成するための組成物と、第2の層及び第3の層を形成するための組成物とを、共押出機を用いて共押出した。第2の層(厚み330μm)/第1の層(厚み100μm)/第3の層(厚み330μm)の積層構造を有する中間膜(厚み760μm)を作製した。
【0194】
合わせガラスの作製:
得られた中間膜を、縦8cm×横8cmに切り出した。次に、2枚のクリアガラス(縦8cm×横8cm×厚み2.5mm)の間に中間膜を挟み込み、真空ラミネーターにて90℃で30分間保持し、真空プレスし、積層体を得た。積層体において、クリアガラスからはみ出た中間膜部分を切り落とし、合わせガラスを得た。
【0195】
(実施例8)
端部にアルカリ液を含浸させた中間膜の例:
イソプロパノール及びメタノールの混合液に、アルカリ成分を含有させたアルカリ液を用意した。
【0196】
比較例2で得られた合わせガラスの端部を上記アルカリ液に浸漬させ、中間膜の端部にアルカリ液を浸みこませて、合わせガラスを得た。
【0197】
(実施例9)
端部をシリカスパッタ処理した中間膜の例:
比較例2の合わせガラスの端部をシリカスパッタ処理して、合わせガラスを得た。
【0198】
(実施例10)
端部を金属スパッタ処理した中間膜の例:
比較例2の合わせガラスの端部を金属スパッタ処理して、合わせガラスを得た。
【0199】
(実施例11)
端部にポリビニルアセタール樹脂シートを用いた中間膜の例:
比較例2の合わせガラスの端部にポリビニルアセタール樹脂シートを貼り付けて、合わせガラスを得た。
【0200】
(実施例12)
端部に光安定剤含有シートを用いた中間膜の例:
比較例2の合わせガラスの端部に光安定剤含有シート(光安定剤:BASF社製「Tinuvin765」)を貼り付けて、合わせガラスを得た。
【0201】
(実施例13)
端部に光安定剤を含浸させた中間膜の例:
比較例2の合わせガラスの端部に光安定剤:BASF社製「Tinuvin765」を含浸させて、合わせガラスを得た。
【0202】
(実施例14)
端部に封止シートを用いた中間膜の例:
比較例2の合わせガラスの端部に封止シートを貼り付けて、合わせガラスを得た。上記封止シートの気密性は高い。上記封止シートは、例えば、酸化防止剤の漏えいを防止する。
【0203】
(評価)
(1)光の照射試験後の合わせガラスの作製
光の照射試験はスガ試験機社製、SX-75を用いて行った。得られた合わせガラス(光の照射試験前の合わせガラス)は合わせガラスの一方の端部が露出するようにサンプル固定具に固定した。固定された合わせガラスの表面の一方から、放射照度180W/m(放射照度測定波長300~400nm)のキセノン光180W/mを、ブラックパネル温度83℃、槽内温度50℃及び湿度50%RHで2000時間照射した。光の照射試験後の合わせガラスを得た。
【0204】
(2)水酸基の含有率及びアセタール化度
上記(1)にて得られた光の照射試験後の合わせガラスを用意した。
【0205】
上記光の照射試験後の合わせガラスの端部から該端部を有する端辺に直交する方向に内側に向かって距離2mmの位置での上記中間膜のクリアガラスに接する層(第1の層、又は、第2,第3の層)中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率を測定した。また、上記光の照射試験後の合わせガラスの端部から該端部を有する端辺に直交する方向に内側に向かって距離70mmの位置での上記中間膜のクリアガラスに接する層(第1の層、又は、第2,第3の層)中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率を測定した。比(距離2mmの位置での水酸基の含有率/距離70mmの位置での水酸基の含有率)を求めた。ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度についても、同様の評価を行った。
【0206】
(3)光の照射試験後の合わせガラスの端部での中間膜における変色の状態
上記(1)にて得られた光の照射試験後の合わせガラスを用意した。
【0207】
上記光の照射試験後の合わせガラスの端部を観察し、合わせガラスの端部における変色の状態を評価した。変色の状態を下記の基準で判定した。
【0208】
[変色の状態の判定基準]
○:合わせガラスの端部において中間膜に変色が生じていないか、又は、合わせガラスの端部において中間膜に、該端部から内側に向かって距離1mm以下で変色が生じている(変色が生じている距離が1mm以下に留まっている)
×:合わせガラスの端部において中間膜に、該端部から内側に向かって距離1mmを超えて変色が生じている(変色が生じている距離が1mmを超えている)
【0209】
詳細及び結果を下記の表1,2に示す。
【0210】
【表1】
【0211】
【表2】
【符号の説明】
【0212】
1…中間膜
1a…第1の表面
1b…第2の表面
2…第1の層
2a…第1の表面
2b…第2の表面
3…第2の層
3a…外側の表面
4…第3の層
4a…外側の表面
11…合わせガラス
21…第1の合わせガラス部材
22…第2の合わせガラス部材
31…中間膜
31a…第1の表面
31b…第2の表面
41…合わせガラス
図1
図2