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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】エアゾール生成器
(51)【国際特許分類】
   A61M 11/00 20060101AFI20220607BHJP
   A61M 15/00 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
A61M11/00 300A
A61M15/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018540850
(86)(22)【出願日】2017-01-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2017051453
(87)【国際公開番号】W WO2017137252
(87)【国際公開日】2017-08-17
【審査請求日】2020-01-22
(31)【優先権主張番号】16154653.6
(32)【優先日】2016-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ヘイルケマ,マルキュス
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0178847(US,A1)
【文献】特表2015-510989(JP,A)
【文献】特開平06-084565(JP,A)
【文献】特開2004-257834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 11/00
A61M 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴霧化によって液滴を生成するエアゾール生成器であって、
- 液滴をもたらす複数の開口を含む開口部材と、
- 該開口部材の振動を生成するように構成される振動要素と、
- 該振動要素の一部をカプセル化するように構成されるカプセル化要素と
- 前記振動要素と前記カプセル化要素との間に設けられる界面領域と、
- 前記界面領域に設けられる接着剤層と、を含み、
前記界面領域は、封止部分を含み、該封止部分は、前記振動要素の面内に形成される第1の不連続部を含み、該第1の不連続部は、10~50ミクロンの範囲内の深さを有し、前記第1の不連続部は、前記振動要素内の溝又は複数の溝を含み、
前記カプセル化要素は、前記封止部分で前記振動要素の前記第1の不連続部と相補的なインターロック構造を形成するように構成される、第2の不連続部を更に含む
エアゾール生成器。
【請求項2】
前記振動要素は、開口部材支持構造と機械的に接触して構成される圧電要素を更に含み、
前記開口部材支持構造は、前記開口部材を支持するように構成され、
前記界面領域は、前記開口部材支持構造の一部に設けられる、
請求項に記載のエアゾール生成器。
【請求項3】
前記振動要素は、第1の側面及び第2の側面を有し、前記封止部分は、前記振動要素の前記第1の側面及び前記第2の側面に配置される、第1の封止部分及び第2の封止部分をそれぞれ含む、請求項に記載のエアゾール生成器。
【請求項4】
前記溝又は前記複数の溝のうちの溝は、1のアスペクト比を有する、請求項1に記載のエアゾール生成器。
【請求項5】
前記複数の溝は、前記振動要素の第1及び第2の反対側の側面に配置され、前記第1の反対側の側面の溝は、前記第2の反対側の側面の溝に対してオフセットさせられる、請求項1又はに記載のエアゾール生成器。
【請求項6】
請求項1乃至のうちのいずれか1項に記載のエアゾール生成器を含む、ネブライザ。
【請求項7】
エアゾール生成器を製造する方法であって、
a)前記エアゾール生成器の使用において開口部材の振動を生成するように構成される振動要素を提供するステップと、
b)10~50ミクロンの範囲内の深さを有する第1の不連続部を提供するステップであって、該第1の不連続部は、前記振動要素の面に溝又は複数の溝を含む、ステップと、

c)前記振動要素の一部と接触し且つカプセル化するように構成されるカプセル化要素を提供して、封止部分を含む界面領域を形成するステップであって、前記封止部分は、前記第1の不連続部を含む、ステップと、
b1)前記振動要素の前記面の界面領域に接着剤を提供するステップと、
b2)前記封止部分で前記振動要素の前記第1の不連続部とインターロックするように構成される相補的な第2の不連続部を前記カプセル化要素の面に提供するステップと、を含む、
方法。
【請求項8】
前記第1の不連続部及び/又は第2の不連続部は、レーザ彫刻技法を使用して、前記振動要素又は前記カプセル化要素にそれぞれ形成される、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、噴霧化(nebulization)によって液滴を生成するエアゾール生成器(aerosol generator)、ネブライザ(噴霧器)(nebulizer)、及びエアゾール生成器を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴を生成するエアゾール生成器は、様々な産業において使用されている。典型的な用途は、患者による吸入のために、液滴形態で医薬品を送達するネブライザにある。良い衛生状態を維持することは、ネブライザ部品を設計するときの1つの設計上の考慮事項である。典型的には、患者は、相当な時間をかけてネブライザを洗浄し、ネブライザを消毒する。典型的な消毒手順は、約10分に亘ってネブライザを沸騰させることを含む。典型的なネブライザは、多数の煮沸処理に耐える必要がある。
【0003】
一般的な種類のネブライザは、振動メッシュネブライザ20である。図1は、典型的な振動メッシュネブライザの概略図を示している。(典型的にはリング状の)金属ワッシャ14の上にある(同様に典型的にはリング状の)圧電素子12を含む振動要素がメッシュ10を支持する。液体貯槽23がメッシュ10の下に設けられる。メッシュ10は、金属ワッシャ14を通じる圧電素子12の作用によって振動させられることがある。メッシュ10が振動しているときに、液滴21が(例えば、重力によって)導入され、エアゾールミストが生成される。残留物が液体貯槽23の開放頂部によって収集される。振動要素が空気流に近接して配置されるならば、そのように生成されるエアゾールは、空気流と同伴させられる(entrained)。典型的には、振動要素はカプセル化要素16(encapsulation element)(典型的には、オーバーモールド)内にカプセル化され、保護カプセル化18(encapsulation)が提供されることがある。
【0004】
典型的な圧電素子12は、セラミック製である。水分子がセラミックに浸透するならば、圧電素子12は、典型的には、機能性を失う。カプセル化要素16及びカプセル化18は、不完全なシールをもたらし、反復的な厳しい沸騰手順の存在の下での圧電素子12内への水の浸入は、依然として問題を提示することがある。
【0005】
国際公開第2015/091564号は、上記で議論した一般的な種類の耐水性ネブライザを開示している。しかしながら、この一般的な種類のそのようなネブライザは、更に改良されてよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水の侵入に対するエアゾール生成器の振動要素を封止するための改良された技法を有することは有利である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的に向かって、本発明の第1の態様は、噴霧化によって液滴を生成するエアゾール生成器を提供し、エアゾール生成器は、
- 液滴をもたらす複数の開口を含む開口部材と、
- 開口部材の振動を生成するように構成される振動要素と、
- 振動要素の一部をカプセル化するように構成されるカプセル化要素とを含む。
【0008】
界面領域が、振動要素と前記カプセル化要素との間に設けられ、界面領域は、振動要素及び/又はカプセル化要素の面に形成される第1の不連続部として提供される、液体抵抗シールを含む封止部分を含む。
【0009】
従って、エアゾール生成器は、流体進入に対する改良された抵抗を備える。これは、何故ならば、伝統的に、金属エアゾール生成器の部品と接触する、オーバーモールドされたエラストマが、通常は化学結合で金属と結合せず、金属の細粒への機械的「ロッキング(locking)」を介してのみ金属と結合するからである。よって、流体のゆるやかな動き(creepage)を可能にする隙間が、金属とエラストマとの間にある。
【0010】
第1の態様のエアゾール生成器の定義を満たすエアゾール生成器によれば、振動要素の面に形成される第1の不連続部は、障壁幾何学的形状として作用し、前進する流体のメニスカスの進行を阻むように機能する。このようにして、前進する流体は、振動要素と接触する前に、停止させられる。第1の不連続部は、前進する液体接触線に、第1の不連続部での液体接触線の表面積の増加によって引き起こされる増大した表面力(surface forces)を受けさせる。
【0011】
加えて、エアゾール生成器は、振動要素によって能動的に振動させられる。金属部品とオーバーモールドされたエラストマとの間の界面(インターフェース)は、振動中に界面で応力を引き起こす。これは、振動の結果として、オーバーモールドされたコンポーネントを金属から剥がして、流体で満たされ得る毛管空間を創り出し得る。
【0012】
第1の態様のエアゾール生成器の定義を満たすエアゾール生成器によれば、不連続部は、(例えば、金属製の)エアゾール生成器の部品への接着における「ロックイン(lock-in)」効果を増加させるようにも機能する。
【0013】
第1の態様のある実施形態によれば、界面領域に設けられる接着剤層を更に含む、エアゾール生成器が提供される。
【0014】
この実施形態によれば、接着剤層は、前進する流体に対する液体障壁を提示する不連続部も備える。
【0015】
第1の態様のある実施形態によれば、第1の態様に従ったエアゾール生成器が提供され、振動要素は、開口部材支持構造と機械的に接触するように構成される圧電要素(piezo-electric element)を更に含み、開口部材支持構造は、開口部材を支持するように構成され、界面領域は、開口部材支持構造の一部の上に設けられる
【0016】
この実施形態によれば、圧電要素は、開口部材支持構造に取り付けられるときに、流体進入から守られることがある。
【0017】
第1の態様のある実施形態によれば、第1の態様に従ったエアゾール生成器が提供され、振動要素は、第1の側面及び第2の側面を有し、封止部分は、振動要素の第1の側面及び第2の側面に配置される、第1の封止部分及び第2の封止部分をそれぞれ含む。
【0018】
この実施形態によれば、流体進入が幾つかの異なる方向から振動要素の動作に影響を及ぼすことが防止されることがある。
【0019】
第1の態様のある実施形態によれば、第1の態様に従ったエアゾール生成器が提供され、第1の不連続部は、10~50ミクロンの範囲内の深さを有する。
【0020】
この実施形態によれば、良好な流体遮断性能を有する好ましい範囲の不連続部の深さが提供される。
【0021】
第1の態様のある実施形態によれば、第1の態様に従ったエアゾール生成器が提供され、第1の不連続部は、溝又は複数の溝として設けられる。
【0022】
この実施形態によれば、第1の不連続部は、少なくとも2つの平行なエッジを有し、改良された流体遮断性能を可能にする。
【0023】
第1の態様のある実施形態によれば、第1の態様に従ったエアゾール生成器が提供され、溝又は複数の溝のうちの溝は、1のアスペクト比(aspect ratio)を有する。
【0024】
この実施形態によれば、第1の不連続部は、流体シールの製造をより実用的にする比率を有する。
【0025】
第1の態様のある実施形態によれば、エアゾール生成器が提供され、複数の溝は、振動要素の第1及び第2の反対側の側面に配置され、第1の反対側の側面の溝は、第2の反対側の側面の溝に対してオフセットさせられる。
【0026】
この実施形態によれば、改良された流体抵抗を有する流体シールが提供される。
【0027】
第1の態様のある実施形態によれば、エアゾール生成器が提供され、カプセル化要素は、封止部分で振動要素の第1の不連続部と相補的なインターロック構造(interlock structure)を形成するように構成される、第2の不連続部を更に含む。
【0028】
この実施形態によれば、接着剤層とカプセル化要素との間の流体進入を防止する流体シールが提供される。何故ならば、カプセル化要素自体が、毛管作用の機構によって前進する流体に対する抵抗を引き起こす不連続性を有するからである。
【0029】
本発明の第2の態様によれば、
- 第1の態様又は第1の態様の実施形態のうちの1つに従ったエアゾール生成器を含む、
ネブライザ(噴霧器)が提供される。
【0030】
従って、より信頼性の高いネブライザを提供することができる。上述のようなエアゾール生成器は、振動要素及びカプセル化要素の改良された封止特性の故に、より一層低い故障のリスクを有する。
【0031】
本発明の第3の態様によれば、エアゾール生成器を製造する方法が提供される。方法は、
a)コンポーネントの使用において開口部材の振動を生成するように構成される振動要素を提供するステップ(60)と、
b)前記振動要素の面に第1の不連続部を形成するステップ(62)と、
c)前記振動要素の一部と接触してカプセル化するように構成されるカプセル化要素を提供して、封止部分を前記第1の不連続部によって提供される液体抵抗シールと合体させる(incorporating)界面領域を形成するステップ(64)とを含む
【0032】
従って、流体滴に対する不連続部の毛管作用の故に、より効果的な振動要素と封止素子との間の流体抵抗を備えるエアゾール要素を製造することができる。
【0033】
第3の態様のある実施形態によれば、製造の方法は、
b1)振動要素の面の界面領域に接着剤を提供するステップを更に含む。
【0034】
第3の態様のある実施形態によれば、製造の方法は、
b2)封止部分で振動要素の第1の不連続部とインターロックするように構成される相補的な第2の不連続部をカプセル化要素の面に提供するステップを更に含む。
【0035】
この実施形態によれば、接着剤層とカプセル化要素との間の流体進入を防止する流体封止が提供される。何故ならば、カプセル化要素自体が、毛管作用の機構によって前進する流体に対する抵抗を引き起こす不連続部を有するからである。
【0036】
第3の態様のある実施形態によれば、製造の方法は、レーザ彫刻技法を使用して、振動要素又はカプセル化要素に第1の不連続部及び/又は第2の不連続部をそれぞれ形成するステップを含む。
【0037】
従って、不連続部が、簡単な方法で、振動要素及び/又はカプセル化要素に設けられることがある。加えて、レーザ彫刻技法は、不連続部の領域に追加的な粗さをもたらし、接着剤の効果の及び締まり嵌めの「ロックイン(lock-in)」効果を高める。
【0038】
以下の記述では、「液滴(liquid droplets)」という用語は、患者による経口吸入に適するものにさせる範囲の直径を有する液滴を含むことが理解されるべきである。液滴は、ミクロンのオーダで提供されるのが好ましい。
【0039】
以下の記述では、「開口部材(aperture member)」という用語は、振動要素によって振動作用に導かれることがあるメッシュ(mesh)を含むことが理解されるべきである。メッシュは、例えば、ミクロンのオーダにある液滴を生成するのに適した孔(holes)を有する。開口部材が重力給送構成からの滴に対して或いは液面に対して振動すると、小さな滴が創り出される。
【0040】
従って、エアゾール生成器に障壁幾何学的形状を追加することが本発明の基本的な着想であると見ることができる。障壁幾何学的形状は、圧電素子に損傷を与え得る流体の進入を防止する。障壁幾何学的形状は、流体滴が不連続性を受けるときに存在する毛管効果を利用する。
【0041】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、以下に記載する実施形態から明らかになり、それらを参照して解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】従来技術において知られているようなエアゾール生成器の側面図を示している。
図2】従来技術において知られているようなエアゾール生成器の拡大側面図を示している。
図3】第1の態様に従ったエアゾール生成器を示す図3の側面図を示している。
図4a】第1の態様の実施形態に従ったエアゾール生成器の部分の側面図を示している。
図4b】第1の態様の変形実施形態に従ったエアゾール生成器の部分の側面図を示している。
図5a】第1の態様の実施形態に従ったエアゾール生成器の部分の側面図を示している。
図5b】第1の態様の実施形態に従ったエアゾール生成器の部分の側面図を示している。
図6】第1の態様の実施形態に従ったエアゾール生成器の部分の側面図を示している。
図7】第1の態様の実施形態に従った不連続性の様々な実施態様の側面図を示している。
図8】第2の態様に従ったネブライザを示している。
図9】第3の態様に従ったエアゾール生成器を製造する方法を示している。
【発明を実施するための形態】
【0043】
上記のように、図1は、振動メッシュエアゾール生成器(vibrating mesh aerosol generator)の知られている構成の側面図を示している。メッシュのような、開口部材10(aperture member)が振動要素によって振動させられ、振動要素は、図1では、例えば、環状であってよい、圧電素子12である。開口部材10は、液体の表面に対して振動させられ、或いは、メッシュが振動している間に、その表面に滴下される液滴(liquid droplets)を有し、流体滴(fluid droplets)を含むエアゾールミストが生成される。エアゾールミストは、気流に同伴されることができ、患者の肺への医薬品の送達を可能にする。上記で議論した典型的な構造は、ワッシャ14に支持される圧電素子12を含む。ワッシャ14は、普通は金属である。圧電素子12及びワッシャ14は、カプセル化要素16内に埋め込まれ、典型的には、ワッシャ14と、圧電素子12と、カプセル化要素16との間に、(エポキシ接着剤のような)接着剤層18を備える。エポキシ接着剤は、第1の流体バリアとして、並びにカプセル化要素16である第2バリアのためのプライマー層(primer layer)として機能することが意図されている。以下に議論するように、代替的に、圧電要素12及びワッシャ14、又は類似のコンポーネント(components)を、接着剤を用いずにカプセル化要素16内に埋め込むことが可能である。この場合、カプセル化要素16の表面は、任意的に、溶剤プライマー(solvent primer)を用いてアクティブ化(活性化)させられてよい。
【0044】
上記で議論したように、カプセル化要素16は、典型的には、圧電素子12及びワッシャ14の振動を隔離して、取付部(mounting)を提供することが意図されている。加えて、エアゾール生成要素の滅菌は、典型的には、沸騰水中で、エアゾール生成要素を含むネブライザの能動端(active end)を保持することによって行われる。よって、カプセル化要素16及び接着剤層18は、限定的な程度で流体密であるシール(封止)をもたらすことも意図されている。
【0045】
経験が示すことは、圧電素子12内に進入する水が、依然として上記で議論した従来技術のエアゾール生成器の主要な故障モードであることである。カプセル化要素16を水密にすることには相当な労力が必要である。エアゾール生成器は、頻繁に故障し、よって、エアゾール生成要素のより頻繁な交換を必要とし、或いは、エアゾール生成要素が一体化されて、取外し可能でないならば、場合によっては、ネブライザユニット全体の交換を必要とする。
【0046】
水の侵入は、ワッシャ14の境界、接着剤層18、及びカプセル化要素16の境界で生じる。
【0047】
図2は、関連する境界領域を示す拡大領域を伴って、図1の図を示している。ワッシャ14の境界、接着剤層18、及びカプセル化要素16の境界は、振動要素の頂部側及び底部側で拡大されて示されている。沸騰に起因する流体進入は、矢印22及び24によって示す経路を介して生じる。流体進入の原因は、接着剤層18のエポキシ接着剤とワッシャ14の(典型的には金属の)表面との間の接着の事実に主に存する。ワッシャ14の金属細粒(metal granules)は、ワッシャ14への化学結合を形成することによってよりもむしろ、金属細粒の周りの接着剤の機械的「ロックイン(locking-in)」の機構を介して、接着剤層18のエポキシへの接着を促進する。これは、流体が金属細粒間の空間を通じて伝播して、流体の各沸騰に伴って次第に前進する場合があることを意味する。最終的に、流体は圧電素子12まで移動し、圧電素子12を損傷させる。
【0048】
本発明の第1の態様によれば、噴霧化によって液滴を生成するエアゾール生成器が提供される。エアゾール生成器は、
- 液滴を提供する複数の開口を含む開口部材と、
- 開口部材の振動を生成するように構成される振動要素と、
- 振動要素の一部をカプセル化するように構成されるカプセル化要素とを含む。
【0049】
界面領域(インターフェース領域)が、振動要素とカプセル化要素との間に設けられ、界面領域は、振動及び/又はカプセル化要素の面に形成される第1の不連続部として設けられる、液体抵抗シール(liquid resisting seal)を含む封止部分を含む。
【0050】
従って、エアゾール生成器は、流体進入に対する改良された抵抗(resistance)を備える。振動要素の面に形成される第1の不連続部(first discontinuity)は、障壁幾何学的形状(barrier geometry)として作用し、前進する流体のメニスカスの進行を阻むように機能する。このようにして、前進する流体は、振動要素と接触する前に、停止させられる。第1の不連続部は、前進する液体接触線(liquid contact line)に、第1の不連続部での液体接触線の表面積の増加によって引き起こされる表面力の増加を受けさせる。
【0051】
図3は、第1の態様に従ったエアゾール生成器の基本的な実施形態の側面図を例示している。この図は「ワッシャ」型のエアゾール生成器の切断(カットスルー)(cut-through)の側面図を示しているが、エアゾール生成器の多くの他の種類及び形状が関連することが理解されるであろう。
【0052】
図3では、カプセル化要素26(典型的には、オーバーモールドされたシリコンゴム又は均等物)が、振動要素28を囲んでいる。振動要素28の一部が、カプセル化要素26から突出し、開口部材30が、突出する部分に取り付けられている。図3の例示において、界面領域は、カプセル化要素26と接触する振動要素28の任意の部分であると考えられる。界面領域は、後に議論するように、接着剤層を含んでよい。代替的に、界面領域は、振動要素28が、非常に密接な接触の効果を通じて、カプセル化要素26に取り付けられる、「締まり嵌め(interference fit)」であってよい。第1の不連続部32が、振動要素28の表面に設けられている。第1の不連続部が振動要素に設けられる場所は、エアゾール生成器の封止部分である。
【0053】
第1の不連続部は、多くの形態を取ってよい。第1の不連続部の目的は、界面領域に沿う流体滴の伝播を妨げる或いは停止させる障壁幾何学的形状を提供することである。第1の不連続部は界面領域の平面に沿って延びて、界面領域全体を水の浸入から封止することが理解されるであろう。
【0054】
図3において、第1の不連続部は、振動素子28の頂面の周囲の周りの環状経路に沿って延びる単一の長方形の「段」構成(“step” feature)として設けられている。境界領域に沿って伝搬する流体滴は、第1の不連続部32に達した後に、界面領域に沿って流体滴を引っ張る毛管力を妨げる平角(straight angle)に直面する。よって、流体滴は、界面領域に沿って更に伝搬することができない。第1の不連続部の異なる形態及び具体的な詳細は、後に提供される。
【0055】
任意的に、エアゾール生成器は、界面領域に設けられる接着剤層を備える。
【0056】
任意的に、振動要素28の一部は、金属から作られる。
【0057】
任意的に、振動要素28の一部は、圧電素子を保持する金属ワッシャである。
【0058】
任意的に、振動素子28とカプセル化要素26との間の界面領域は、フレキシブルな封止部材を取り囲む。封止部材は、例えば、連続気泡発泡体又は独立気泡発泡体のパッドを含んでよい。界面領域における不連続性が存在は、封止部材が存在するときに、流体の移動を停止する。何故ならば、振動要素28及び界面要素26が互いに固定されるときに、フレキシブルな封止部材は、不連続性の形状を取るからである。
【0059】
図4aは、第1の態様の実施形態に従ったエアゾール生成器の一部を示している。接着剤層34が、界面領域でカプセル化要素26を振動要素28から分離している。(ワッシャの側部のような)振動要素26の部分は、トレンチ(堀)のような構成の複数の不連続部36を含むが、後に議論するように、前進する流体に対する障壁幾何学的形状を提供する多くの種類の不連続部が設けられてよい。接着剤層34は、界面領域における不連続部の間の間隙を埋める。
【0060】
流体進入が主に(圧電素子を保持する環状金属ワッシャの区画のような)振動要素28の表面と接着剤層34との間で起こる場合(矢印38を参照)、振動要素28における不連続部36は、不連続部によって提示される障壁幾何学的形状の故に、流体滴の移動を防げる。
【0061】
図4b)は、界面領域が「締まり嵌め」として設けられる第1の態様の変形実施形態を例示している。換言すれば、図4b)の実施形態において、振動要素28の表面は、接着剤を用いずに封入要素26と直接的に接触する。不連続部が界面領域に設けられている。不連続部は、段、溝、又は広範な不連続性であってよい。
【0062】
流体進入がカプセル化要素と接着剤層との間で生じる代替的又は追加的な場合、不連続部は、カプセル化要素に設けられてよい。
【0063】
図5a)は、エアゾール生成器のための他の流体進入防止構成を示している。この場合、カプセル化要素40は、封止部分で振動要素44の第1の不連続部と相補的なインターロック構造(連結構造)を形成するように構成される第2の不連続部42を更に含む。換言すれば、カプセル化要素40は、それ自体、接着剤層41の間の界面に沿って伝搬する流体滴のための障壁幾何学的形状として機能する不連続部42を備える。振動要素44は、上記で議論したように、第1の不連続部を有する。従って、図5に例示する構造は、(i)振動要素44と接着剤層41との間の及び(ii)接着剤層41とカプセル化要素40との間の流体移動を防止することができる。
【0064】
図6は、エアゾール生成器の流体進入防止構成の変形を示している。この場合には、カプセル化要素45が、振動要素48の一部をカプセル化する。振動要素は、不連続部を有さない。カプセル化要素45は、接着剤層46が形成される界面領域に不連続部を備える。従って、図6の変形は、流体進入が主に接着剤層46とカプセル化要素45との間で生じる場合にも適用可能である。
【0065】
第1の態様のある実施形態によれば、振動要素は、開口部材支持構造と機械的に接触して配置される圧電素子を更に含む。開口部材支持構造は、開口部材を支持するように構成され、界面領域は、開口部材支持構造の一部に設けられている。
【0066】
換言すれば、この実施形態によれば、振動要素28は、複合素子として設けられる。
【0067】
任意的に、振動要素28は、環状圧電素子と環状ワッシャとを含む、環状部材である。
【0068】
第1の態様のある実施形態によれば、振動要素は、第1の側面と、第2の側面とを有し、封止部分は、振動要素の第1及び第2の側面にそれぞれ配置される、第1の封止部分及び第2の封止部分を含む。
【0069】
従って、振動要素は、2つの方向からの流体進入から保護される。例えば、図4は、第1の側面と第2の側面とを有する振動要素を例示している。第1のセットの不連続部が振動要素の頂部側に設けられ、第2のセットの不連続部が振動要素の底部側に設けられるので、流体が振動要素28の底部の下を移動することは可能でない。
【0070】
第1の態様のある実施形態によれば、第1の不連続部は、1~500ミクロン、10~500ミクロン、10~100ミクロン、10~80ミクロン、10~60ミクロン、又は好ましくは10~50ミクロンの範囲の深さを有する。
【0071】
第1の態様のある実施形態によれば、第1の不連続部及び/又は第2の不連続部は、10~500ミクロン、10~100ミクロン、10~80ミクロン、10~60ミクロン、又は好ましくは10~50ミクロンの範囲の深さを有する、段状不連続部(step discontinuity)として提供される。
【0072】
第1の態様のある実施形態によれば、第1の不連続部及び/又は第2の不連続部は、溝又は複数の溝として提供される。
【0073】
第1の態様のある実施形態によれば、第1の不連続部及び/又は第2の不連続部は、平坦な底部付きトレンチ、尖ったトレンチ、又は逆台形のトレンチとして提供される。
【0074】
不連続部の経路は、特定のエアゾール生成器のフォームファクタに適合するよう、多くの異なる形態を取ってよいことが理解されるであろう。ワッシャ型のエアゾール生成器は、環状の形状を有し、従って、その場合には、環状の不連続部が関連する。しかしながら、圧電素子を含む領域の周りに完全なシールが設けられるならば、連続性のための多くの異なる経路(例えば、「くねくねした(squiggle)」パターン)を使用することができる。
【0075】
図7a)は、深さdと幅wとを備える段状不連続部として設けられた、不連続部を示している。図7b)は、平坦な底部付きトレンチの形態の不連続部、又は互いに向かい合う2つの段状不連続部を示している。図7c)は、複数の平坦な底部付き溝の不連続部を示している。図7d)は、尖ったトレンチとして設けられた不連続部を示している。図7e)は、逆台形のトレンチとして設けられた不連続部を示している。
【0076】
第1の態様のある実施形態によれば、複数の溝が振動要素の第1及び第2の反対側に配置され、第1の反対側の溝が第2の反対側の溝に対してオフセットさせられている、エアゾール生成器が提供される。
【0077】
本発明の第2の態様によれば、
- 第1の態様又はその上述の実施形態に従ったエアゾール生成器を含む、
ネブライザが提供される。
【0078】
図8は、第2の態様に従ったネブライザを例示している。ネブライザは、生成されたエアゾールが空気流と混合することを可能にするようエアゾール生成器及び/又は混合チャンバを保持するように構成されることがある下方区画56を含む。マウスピース52が、下方区画56に保持された混合チャンバと流体接続しており、生成されたエアゾールが患者の吸入によって生成される空気流に同伴させられることを可能にする。ネブライザ50の上方区画54は、流体貯槽と、混合チャンバにエアゾールを提供するためのエアゾール生成器とを含んでよい。前述の記述は、例示的なネブライザを指しているが、第1の態様に従ったエアゾール生成器は、広範囲のネブライザにおける使用に適することが理解されるであろう。
【0079】
本発明の第3の態様によれば、エアゾール生成器を製造する方法が提供される。方法は、
a)コンポーネントの使用において、開口部材の振動を生成するように構成される振動要素を提供するステップ(60)と、
b)振動要素の面に第1の不連続部を形成するステップ(62)と、
c)振動要素の一部に接触してカプセル化するように構成されるカプセル化要素を提供して、封止部分を第1の不連続部によって提供される液体抵抗シールと合体させる界面領域を形成するステップ(64)とを含む。
【0080】
図9は、第3の態様に従った方法を例示している。
【0081】
第3の態様のある実施形態によれば、方法は、
b1)振動要素の面の界面領域に接着剤を提供するステップを更に含む。
【0082】
第3の態様のある実施形態によれば、方法は、
b2)封止部分で振動要素の第1の不連続部とインターロックするように構成される相補的な第2の不連続部をカプセル化要素の面に提供するステップを更に含む。
【0083】
第3の態様のある実施形態によれば、第1及び/又は第2の不連続部は、レーザ彫刻技法(laser engraving technique)を用いて振動要素又は封止素子の上にそれぞれ形成される。
【0084】
本発明の実施形態は異なる主題を参照して記載されていることが留意されるべきである。特に、幾つかの実施形態は、方法の種類の請求項を参照して記載されているのに対し、他の実施形態は、デバイスの種類の請求項を参照して記載されている。しかしながら、当業者は、特段の異なりのない限り、1つの種類の主題に属する構成の任意の組合せに加えて、異なる主題に関連する構成の間の他の組合せもこの出願で開示されていると考えられることを、上記の記述及び後続の記述から推測するであろう。
【0085】
全ての構成を組み合わせて、それらの構成の単純な合計以上の相乗効果をもたらすことができる。
【0086】
本発明を図面及び前述の記述に詳細に例示し且つ記載したが、そのような例示及び記述は、例示的又は説明的であると考えられるべきであり、限定的であると考えられてならない。本発明は、開示の実施形態に限定されない。
【0087】
請求する発明を実施する当業者は、図面、本開示、及び従属項の研究から、開示の実施形態に対する他の変更を理解し、実施することができる。
【0088】
請求項において、「含む」という単語は、他の要素又はステップを排除せず、単数嫌悪表現は、複数を排除しない。単一のプロセッサ又は他のユニットは、請求項に列挙される幾つかの品目の機能を充足することがある。特定の手段が相互に異なる従属項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用し得ないことを示さない。請求項内の如何なる参照符号も、その範囲を限定するものとして解釈されてはならない。
図1
図2
図3
図4a)】
図4b)】
図5a)】
図5b)】
図6
図7a
図7b
図7c
図7d
図7e
図8
図9