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特許7084321繊維状物質、多段ポリマー及び(メタ)アクリルポリマーを含む組成物、その調製方法、その使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】繊維状物質、多段ポリマー及び(メタ)アクリルポリマーを含む組成物、その調製方法、その使用
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20220607BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20220607BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20220607BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20220607BHJP
   C08F 279/02 20060101ALI20220607BHJP
   C08F 283/12 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L33/06
C08K7/02
C08F265/06
C08F279/02
C08F283/12
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018567255
(86)(22)【出願日】2017-06-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-04
(86)【国際出願番号】 EP2017065566
(87)【国際公開番号】W WO2017220791
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-06-15
(31)【優先権主張番号】1655832
(32)【優先日】2016-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】エスカーレ, ピエール
(72)【発明者】
【氏名】イヌブリ, ラベール
(72)【発明者】
【氏名】ジェラール, ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ハッジ, フィリップ
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/011804(WO,A1)
【文献】特表2010-529248(JP,A)
【文献】特表2014-513194(JP,A)
【文献】特表2015-531015(JP,A)
【文献】特開2004-107472(JP,A)
【文献】特開2005-112907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08F 265/06、279/02、283/12
C08J 5/04-5/10、5/24
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 少なくとも1000のアスペクト比を有する繊維、繊維質マット又は不織布補強材又はロービング織物又は繊維束を含む繊維状物質
b) 多段ポリマー、及び
c) (メタ)アクリルポリマー(P1)
を含む組成物であって、
多段ポリマーの量が組成物の3重量%から50重量%の間であり、(メタ)アクリルポリマー(P1)が100000g/mol未満の質量平均分子量Mwを有する、組成物であって、
多段ポリマーが、
a) 0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1つの段(A)、及び
b) 少なくとも30℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む1つの段(B)
を含むことを特徴とする、組成物。
【請求項2】
(メタ)アクリルポリマー(P1)が5000g/molから70000g/molの間の質量平均分子量Mwを有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(メタ)アクリルポリマー(P1)の量が0.15重量%から47.5重量%の間であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
プリフォームの形態であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
多段ポリマーが、20nmから800nmの間の重量平均粒径を有する球状ポリマー粒子の形態であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
多段ポリマーの量が、3つの化合物a)、b)及びc)の合計に基づいて、7重量%から25重量%の間であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
多段ポリマーが、
a) -5℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1つの段(A)、及び
b) 30℃から150℃の間のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む1つの段(B)
を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
ポリマー(A1)及び(B1)がアクリル又はメタクリルポリマーであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
ポリマー(A1)がシリコーンゴム系ポリマーであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
ポリマー(A1)が、イソプレン又はブタジエンに由来する高分子単位を少なくとも50重量%含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
段(A)が第1の段であり、ポリマー(B1)を含む段(B)が、ポリマー(A1)を含む段(A)にグラフトされていることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
a) 繊維状物質、多段ポリマー及び(メタ)アクリルポリマー(P1)を接触させる工程
を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物を製造するための方法。
【請求項13】
工程a)が、多段ポリマーと(メタ)アクリルポリマー(P1)とを含む水性分散体を繊維状物質に浸漬、注入又は含浸することよって行われることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程a)の生成物を乾燥させる追加の工程b)を含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
工程a)が、多段ポリマーと(メタ)アクリルポリマー(P1)とを含む粉末を用いて、繊維状物質を粉末化することによって行われることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
組成物を加熱する追加の工程c)を含むことを特徴とする、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
高分子複合材料又は高分子複合材料を含む機械的若しくは構造化部品又は物品を製造するための、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物又は請求項12から16のいずれか一項に記載の方法によって得られる組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維状物質、多段ポリマー及び(メタ)アクリルポリマーを含む組成物に関する。この組成物は、プリプレグ、プリフォーム又はラミネートの形態でありうる。
【0002】
特に、本発明は、繊維状物質、多段ポリマー及び(メタ)アクリルポリマーを含む組成物を製造するための方法、並びにコンポジット製造におけるその使用に関する。
【0003】
特に、本発明は、繊維状物質、多段ポリマー及び(メタ)アクリルポリマーを含む組成物を調製するための方法、並びに繊維強化耐衝撃性改質コンポジットの製造のためのその使用に関する。
【0004】
[技術的問題]
使用中、高い応力に耐えなければならない機械的部品は、複合材料から広く製造される。複合材料は、2以上の非混和性の材料の巨視的な組み合わせである。複合材料は、マトリックスを形成する少なくとも1つの材料、すなわち構造体の結合を確実にする連続相と、補強材料とから成る。
【0005】
複合材料を使用することの目的は、複合材料の個々の構成要素を単独で使用しても得られない、複合材料の性能を得ることである。したがって、複合材料は、いくつかの産業分野、例えば建築、自動車、航空宇宙、運送、レジャー、エレクトロニクス及びスポーツにおいて、特に、高均質性材料と比較した複合材料のより良い機械的性能(より高い引張強度、より高い引張弾性率、及びより高い破壊靱性)及び低密度のため、広く使用されている。
【0006】
商業的工業的規模における量の見地から最も重要な種類は、有機マトリックスを用いた複合物であり、当該マトリックス材料は、一般にポリマーである。高分子複合材料の主要なマトリックス又は連続相は、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーのいずれかである。
【0007】
熱硬化性ポリマーは、架橋結合された三次元構造体から成る。架橋結合は、いわゆるプレポリマーの内部で反応性基を硬化させることによって得られる。硬化は、例えば、材料を永久的に架橋結合し、硬化させるために、ポリマー鎖を加熱することにより達成される。
【0008】
高分子複合材料を調製するには、プレポリマーは、例えばガラスビーズ若しくは繊維(補強材料)などの他の成分、又は濡れているか若しくはプレポリマーを含浸させた他の成分と混ぜ合わされ、その後に硬化される。熱硬化性ポリマーのためのプレポリマー又はマトリックス材料の例は、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ又はフェノールのものである。硬化後、熱硬化性複合物は再形成することができず、その所定の形状にとどまる。
【0009】
熱可塑性ポリマーは、直鎖又は分岐ポリマーから成り、それらは架橋結合されない。複合材料を製造するために必要な構成要素を混合するため、及び硬化のために冷却させるために、熱可塑性ポリマーは、加熱される。複合材料の製造のための熱可塑性ポリマーの使用における限界は、例えば繊維質基材に均一に含浸させるために、溶融状態でのその高い粘度である。熱可塑性ポリマーによる繊維の湿潤又は正確な含浸は、熱可塑性樹脂が十分に流動性である場合にのみ達成することができる。
【0010】
繊維質基材に含浸させるための別の方法は、有機溶媒に熱可塑性ポリマーを溶解させることである。その溶液は含浸に使用し、溶媒は蒸発させる。
【0011】
熱可塑性複合物を調製するためのさらなる他の方法は、モノマーを含む液体シロップを繊維質基材に含浸させること、及び前記モノマーの重合である。
【0012】
それでも、複合材料の調製に使用されるポリマーの多くは非常に脆いままであり、良好な機械的特性、例えば衝撃強度を有しない。繊維質基材は衝撃によるエネルギーを吸収することによって材料の機械的特性を強化することを可能にするが、熱可塑性ポリマーをベースとするマトリックスは壊れやすいため亀裂伝播を防ぐことはできず、そのため最終複合材料は、非常に脆いままである。
【0013】
ポリマーの衝撃強度を改善するために、エラストマー相又はゴムを含む、衝撃強度を改良する衝撃添加剤を添加することが知られている。このようなゴムは、ゴム又はエラストマー相である1つの段を有する、コアシェル粒子の形態の多段ポリマーの一部でありうる。これらの粒子は、乳化重合により調製されて分散体を形成し、例えば粉末形態で回収することができる。それらは一般に、一連の「硬い」層と「柔らかい」層を含む。したがって、二層(柔-硬)又は三層(硬-柔-硬)の粒子が見出されうる。粒径は、一般に1μm未満、より具体的には50nmから500nmの間である。
【0014】
コアシェル粒子の形態の多段ポリマーは、凝集乾燥粉末として入手可能であり、後者は、初期コアシェル粒子の均一な分布を得るためにマトリックス中に分散されている。特定の熱硬化性ポリマー又は樹脂、特にエポキシ樹脂、及び熱可塑性ポリマーについて、これらの多段ポリマー粒子を正確に分散させることは非常に困難又はほとんど不可能である。
【0015】
繊維強化材に含浸させるために、これらの通常弱く架橋されている分離コアシェル粒子を液体シロップ又はプレポリマーに分散させることは、含浸工程中に問題を引き起こす。実際、粒子はシロップ中で膨潤し、それがシロップのゲル化をもたらす。その場合粘度が高すぎ、欠陥が現れることなく繊維質基材に含浸することはもはや不可能である。このゲル化現象を回避するためには、樹脂中のこれらの粒子の含有量を非常に低い含有量に制限しなければならない。しかし、そのような含有量は低すぎ、特に衝撃強度に関しては、期待される機械的性質を発揮しない。
【0016】
本発明の目的は、高分子複合材料に使用するのに適した繊維状物質、多段ポリマー及び(メタ)アクリルポリマーを含む組成物を得ることである。
【0017】
本発明の目的はまた、耐衝撃性改良高分子複合物を製造するために使用できる、繊維状物質、多段ポリマー及び(メタ)アクリルポリマーを含む安定な組成物を得ることでもある。
【0018】
本発明のさらなる目的は、繊維状物質、多段ポリマー及び(メタ)アクリルポリマーを含む安定なプリフォームを得ることである。
【0019】
本発明の別のさらなる目的は、繊維状物質、多段ポリマー及び(メタ)アクリルポリマーを含む組成物を調製するための方法である。
【0020】
本発明の別の目的は、高分子複合材料又は高分子複合材料を含む機械的若しくは構造化部品又は物品に多段ポリマーを導入する方法を見出すことである。
【0021】
本発明のさらなる別の目的は、繊維状物質、多段ポリマー及び(メタ)アクリルポリマーを含む安定なプリフォームを得る方法である。
【0022】
さらなる別の目的は、耐衝撃性改良高分子複合材料又は耐衝撃性改良高分子複合材料を含む機械的若しくは構造化部品又は物品を製造するための方法を有することである。
【背景技術】
【0023】
文献 EP第1085968号は、プリプレグ、プリフォーム、ラミネート及びサンドイッチ成形品を含む複合品並びにそれらの製造方法を開示している。特に、ポリマー粒子でコーティングされた複数の繊維のストランドが開示されている。ポリマー粒子は、熱可塑性ポリマー又は架橋熱可塑性ポリマーである。
【0024】
文献 EP第1312453号は、プリプレグ、プリフォーム、ラミネート及びサンドイッチ成形品を含む複合品並びにそれらの製造方法を開示している。特に、平均粒径5μm未満のポリマー粒子でコーティングされた複数の繊維のストランドが開示されている。ポリマー粒子は、熱可塑性ポリマー又は架橋熱可塑性ポリマーである。少なくとも10000g/molの高分子量を有する0.1μmから0.25μmの間の小粒径ポリマー粒子について記載されている。
【0025】
これらの先行技術文献のいずれも、本発明による組成物、方法又は使用を開示していない。
【発明の概要】
【0026】
驚くべきことに、
a) 繊維状物質
b) 多段ポリマー
c) (メタ)アクリルポリマー(P1)
を含む組成物であって、
組成物中の多段ポリマーの量が3重量%から50重量%の間であり、かつ、(メタ)アクリルポリマー(P1)が100000g/mol未満の質量平均分子量Mwを有する組成物が高分子複合材料に使用するのに適していることが見出された。
【0027】
驚くべきことに、
a) 繊維状物質
b) 多段ポリマー
c) (メタ)アクリルポリマー(P1)
を含むプリフォオームであって、
プリフォオーム中の多段ポリマーの量が3重量%から50重量%の間であり、かつ、(メタ)アクリルポリマー(P1)が100000g/mol未満の質量平均分子量Mwを有するプリフォオームがその形状を維持することが見出された。
【0028】
また、驚くべきことに、
a) 繊維状物質
b) 多段ポリマー
c) (メタ)アクリルポリマー(P1)
を含む組成物であって、
プリフォオーム中の多段ポリマーの量が3重量%から50重量%の間であり、かつ、(メタ)アクリルポリマー(P1)が100000g/mol未満の質量平均分子量Mwを有する組成物が、高分子複合材料又は高分子複合材料を含む機械的若しくは構造化部品又は物品を製造するために使用されうることが見出された。
【0029】
また、驚くべきことに、以下の工程:
a) 繊維状物質と、多段ポリマーと、100000g/mol未満の質量平均分子量Mwを有する(メタ)アクリルポリマー(P1)とを接触させる工程
を含む組成物を製造するための方法であって、
組成物中の多段ポリマーの量が3重量%から50重量%の間である組成物を製造するための方法が、高分子複合材料に使用されうる組成物を生じさせることも見出された。
【発明を実施するための形態】
【0030】
第1の態様によれば、本発明は、
a) 繊維状物質
b) 多段ポリマー
c) (メタ)アクリルポリマー(P1)
を含む組成物であって、
組成物中の多段ポリマーの量が3重量%から50重量%の間であり、かつ、(メタ)アクリルポリマー(P1)が100000g/mol未満の質量平均分子量Mwを有する組成物に関する。
【0031】
本発明の第2の態様によれば、本発明は、
a) 繊維状物質と、多段ポリマーと、100000g/mol未満の質量平均分子量Mwを有する(メタ)アクリルポリマー(P1)とを接触させる工程
を含むプリフォームを製造するための方法であって、
プリフォーム中の多段ポリマーの量が3重量%から50重量%の間である、プリフォームを製造するための方法に関する。
【0032】
第3の態様によれば、本発明は、
a) 繊維状物質
b) 多段ポリマー
c) (メタ)アクリルポリマー(P1)
を含むプリフォームであって、
プリフォーム中の多段ポリマーの量が3重量%から50重量%の間であり、かつ、(メタ)アクリルポリマー(P1)が100000g/mol未満の質量平均分子量Mwを有するプリフォームに関する。
【0033】
第4の態様において、本発明は、高分子複合材料又は高分子複合材料を含む機械的若しくは構造化部品又は物品を製造するための、
a) 繊維状物質
b) 多段ポリマー
c) (メタ)アクリルポリマー(P1)
を含むプリフォオームの使用であって、
プリフォオーム中の多段ポリマーの量が3重量%から50重量%の間であり、かつ、(メタ)アクリルポリマー(P1)が100000g/mol未満の質量平均分子量Mwを有する、プリフォオームの使用に関する。
【0034】
第5の態様において、本発明は、高分子複合材料又は高分子複合材料を含む機械的若しくは構造化部品又は物品を製造するための、
a) 繊維状物質
b) 多段ポリマー
c) (メタ)アクリルポリマー(P1)
を含む組成物の使用であって、
組成物中の多段ポリマーの量が3重量%から50重量%の間であり、かつ、(メタ)アクリルポリマー(P1)が100000g/mol未満の質量平均分子量Mwを有する、組成物の使用に関する。
【0035】
使用されている用語「ポリマー粉末」は、ナノメートル範囲の粒子を含む一次ポリマー又はポリマー又はオリゴマーの凝集により得られる、少なくとも1マイクロメートル(μm)の範囲の粉末粒子を含むポリマーを意味する。
【0036】
使用されている用語「一次粒子」は、ナノメートル範囲の粒子を含む球状ポリマーを表す。一次粒子は、好ましくは20nmから800nmの間の重量平均粒径を有する。
【0037】
使用されている用語「粒径」は、球状とみなされる粒子の体積平均直径を表す。
【0038】
使用されている用語「コポリマー」は、少なくとも2種の異なるモノマーからなるポリマーを表す。
【0039】
使用されている「多段ポリマー」は、多段重合法によって順次形成されるポリマーを表す。好ましいのは、第1のポリマーが第1段のポリマーであり、第2のポリマーが第2段のポリマーである、すなわち第2のポリマーが第1のエマルションポリマーの存在下で乳化重合により形成される、多段乳化重合法である。
【0040】
使用されている用語「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルモノマーのすべての種類を表す。
【0041】
使用されている用語「(メタ)アクリルポリマー」は、(メタ)アクリルポリマーの50重量%以上を構成する(メタ)アクリルモノマーを含むポリマーを本質的に含む(メタ)アクリルポリマーを表す。
【0042】
使用されている「耐衝撃性改良剤」という用語は、一旦高分子材料に組み込まれると、ゴム状材料又はゴムポリマーの相マイクロドメインによってその高分子材料の耐衝撃性及び靭性を増大させる材料と理解される。
【0043】
使用されている用語「ゴム」は、ポリマーの、そのガラス転移を超えた熱力学的状態を表す。
【0044】
使用されている用語「ゴムポリマー」は、0℃未満のガラス転移温度(Tg)を有するポリマーを表す。
【0045】
使用されている用語「プリフォーム」は、複合材製造においてよく知られている、予備成形した繊維強化材を表す。例えば、繊維強化材としての繊維質マットの初期の面は、それは柔軟であり、例えばポリマーによってある一定の既に固定された形状に保たれている。より複雑なプリフォームの形状は、個々の繊維配向が適切な結合剤によって層内に固定されている、後の部品形状に対応する。それは、必要な外側輪郭を本質的に既に有する繊維半製品、すなわちプリフォームであり、完全に自動化され、正確に配置されるには十分剛性である。プリフォームは、例えば樹脂を添加するか、又はプリフォームに樹脂を含浸させることによって完成され、完成した複合又は構造化物品を得るために重合される。
【0046】
使用されている「プリプレグ」という用語は、マット、織物、不織布材料又はロービングの樹脂との組み合わせを意味する。
【0047】
本発明においてxからyの範囲とは、この範囲の上限及び下限が含まれることを意味し、少なくともxからyまでと等しい。
【0048】
本発明においてxからyの間の範囲とは、この範囲の上限及び下限が除外されることを意味し、x超y未満と等しい。
【0049】
本発明による組成物は、繊維状物質と、多段ポリマーと、100000g/mol未満の質量平均分子量Mwを有する(メタ)アクリルポリマー(P1)とを含んでおり、3つの成分を含む組成物中の多段ポリマーの量は3重量%から50重量%の間である。
【0050】
組成物中の多段ポリマーの量は、3つの化合物a)、b)及びc)の合計に基づいて、好ましくは少なくとも4重量%、より好ましくは少なくとも5重量%、有利には少なくとも6重量%、最も有利には少なくとも7重量%である。
【0051】
組成物中の多段ポリマーの量は、3つの化合物a)、b)及びc)の合計に基づいて、好ましくは最大で40重量%、より好ましくは最大で30重量%、有利には最大で25重量%である。
【0052】
組成物中の多段ポリマーの量は、3つの化合物a)、b)及びc)の合計に基づいて、好ましくは4重量%から40重量%の間、より好ましくは5重量%から30重量%の間、有利には6重量%から25重量%の間、有利には7重量%から25重量%の間である。
【0053】
組成物中の(メタ)アクリルポリマー(P1)の量は、3つの化合物a)、b)及びc)の合計に基づいて、好ましくは0.15重量%から47.5重量%の間、好ましくは0.3重量%から45重量%の間である。
【0054】
本発明の組成物はまた、プリプレグ又はプリフォームの形態でありうる。
【0055】
第1の好ましい実施態様において、組成物はプリフォームの形態である。
【0056】
(メタ)アクリルポリマー(P1)に関しては、それは、100000g/mol未満、好ましくは90000g/mol未満、より好ましくは80000g/mol未満、さらにより好ましくは70000g/mol未満、有利には60000g/mol未満、より有利には50000g/mol未満、さらにより有利には40000g/mol未満の質量平均分子量Mwを有する。
【0057】
(メタ)アクリルポリマー(P1)は、2000g/mol超、好ましくは3000g/mol超、より好ましくは4000g/mol超、さらにより好ましくは5000g/mol超、有利には6000g/mol超、より有利には6500g/mol超、さらにいっそう有利には7000g/mol超、さらにより有利には10000g/mol超、最も有利には12000g/mol超の質量平均分子量Mwを有する。
【0058】
(メタ)アクリルポリマー(P1)の質量平均分子量Mwは、2000g/molから100 000g/molの間、好ましくは3000g/molから90000g/molの間、より好ましくは4000g/molから80000g/molの間、有利には5000g/molから70000g/molの間、より有利には6000g/molから50000g/molの間、最も有利には10000g/molから40000g/molの間である。
【0059】
好ましくは、(メタ)アクリルポリマー(P1)は、(メタ)アクリルモノマーを含むコポリマーである。より好ましくは、(メタ)アクリルポリマー(P1)は、(メタ)アクリルポリマーである。さらにより好ましくは、(メタ)アクリルポリマー(P1)は、C1‐C12アルキル(メタ)アクリレートから選択される、少なくとも50重量%のモノマーを含む。有利に好ましくは、(メタ)アクリルポリマー(P1)は、C1‐C4アルキルメタクリレート及びC1‐C8アルキルアクリレートモノマー、並びにこれらの混合物から選択されるモノマーを少なくとも50重量%含む。最も有利には、(メタ)アクリルポリマー(P1)は、少なくとも50重量%の重合メチルメタクリレートを含む。
【0060】
(メタ)アクリルポリマー(P1)のガラス転移温度Tgは、好ましくは30℃から150℃の間である。(メタ)アクリルポリマー(P1)のガラス転移温度は、さらに好ましくは40℃から150℃の間、有利には45℃から150℃の間、さらに有利には50℃から150℃の間である。
【0061】
好ましくは、(メタ)アクリルポリマー(P1)は、架橋されていない。
【0062】
好ましくは、(メタ)アクリルポリマー(P1)は、いかなる他のポリマーにもグラフトされていない。
【0063】
好ましくは、(メタ)アクリルポリマー(P1)は、少なくとも5g/10分、好ましくは少なくとも6g/10分、より好ましくは少なくとも7g/10分、最も好ましくは少なくとも8g/10分の、ISO 1133(230℃/3.8kg)に従うメルトフローインデックスを有する。
【0064】
より好ましくは、(メタ)アクリルポリマー(P1)は、5g/10分から100g/10分の間の、ISO 1133(230℃/3.8kg)に従うメルトフローインデックスを有し、メルトフローインデックスは好ましくは6g/10分から90g/10分の間、より好ましくは7g/10分から80g/10分の間、有利には8g/10分から70g/10分の間である。
【0065】
第1の好ましい実施態様では、(メタ)アクリルポリマー(P1)は、50重量%から100重量%のメチルメタクリレート、好ましくは80重量%から100重量%のメチルメタクリレート、さらにより好ましくは80重量%から99.8重量%のメチルメタクリレートと、0.2重量%から20重量%のC1‐C8アルキルアクリレートモノマーとを含む。有利には、C1‐C8アルキルアクリレートモノマーは、メチルアクリレート、エチルアクリレート又はブチルアクリレートから選択される。
【0066】
第2の好ましい実施態様では、(メタ)アクリルポリマー(P1)は、0重量%から50重量%の間の官能性モノマーを含む。(メタ)アクリルポリマー(P1)は、好ましくは0重量%から30重量%の間、より好ましくは1重量%から30重量%の間、さらにより好ましくは2重量%から30重量%の間、有利には3重量%から30重量%の間、より有利には5重量%から30重量%の間、最も有利には5重量%から30重量%の間の官能性モノマーを含む。
【0067】
第2の好ましい実施態様の官能性モノマーは、好ましくは(メタ)アクリルモノマーである。官能性モノマーは、以下の式(1)又は(2)を有する。
【0068】
ここで、(1)及び(2)の両式中、RはH又はCHから選択され;式(1)中、YはOであり、Rは、Hであるか又は、CでもHでもない少なくとも1個の原子を有する脂肪族若しくは芳香族基であり;式(2)中、YはNであり、R及び/又はRは、Hであるか又は脂肪族若しくは芳香族基である。
【0069】
好ましくは、官能性モノマー(1)又は(2)は、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリル酸又はメタクリル酸、これらの酸から誘導されたアミド、例えばジメチルアクリルアミド、2-メトキシエチルアクリレート若しくはメタクリレートなど、2-アミノエチルアクリレート又はメタクリレート、任意選択的に四級化された、ホスホネート又はホスフェート基を含むアクリレート又はメタクリレートモノマー、アルキルイミダゾリジノン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートから選択される。ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートのポリエチレングリコール基は、好ましくは400g/molから10000g/molの範囲の分子量を有する。
【0070】
本発明による多段ポリマーは、そのポリマー組成が異なる少なくとも2の段を有する。
【0071】
多段ポリマーは、好ましくは球状のポリマー粒子の形態である。このような粒子は、コアシェル粒子とも呼ばれる。第1の段はコアを、第2の又はそれに続くすべての段は各シェルを形成する。
【0072】
球状のポリマー粒子に関しては、20nmから800nmの間の重量平均粒子直径を有する。ポリマー粒子の重量平均粒子直径は、好ましくは25nmから600nmの間、より好ましくは30nmから550nmの間、さらにより好ましくは35nmから500nmの間、有利には40nmから400nmの間、より有利には50nmから400nmの間、さらにより有利には75nmから350nmの間、最も有利には80nmから300nmの間である。
【0073】
一次ポリマー粒子を凝集させて、多段ポリマー又は、(メタ)アクリルポリマー(P1)及び多段ポリマーのいずれかを含むポリマー粉末を得ることができる。
【0074】
該ポリマー粒子は、2、3又はそれ以上の段を含む多段工程により得られる。
【0075】
ポリマー粒子は、0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む少なくとも1つの層(A)と、30℃以上のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含むもう1つの層(B)とを含む多層構造を有する。
【0076】
第1の好ましい実施態様では、少なくとも30℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)は、多層構造を有するポリマー粒子の外層である。
【0077】
第2の好ましい実施態様では、少なくとも30℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)は、多層構造を有するポリマー粒子の中間層である。
【0078】
好ましくは、段(A)は第1の段であり、ポリマー(B1)を含む段(B)は、ポリマー(A1)を含む段(A)又は別の中間層にグラフトされている。第1の段とは、ポリマー(A1)を含む段(A)を意味し、ポリマー(B1)を含む段(B)の前に作られる。
【0079】
層(A)中で0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)は、多段工程の最終段中には決して作られない。これは、ポリマー(A1)が多層構造を有する粒子の外層には決して存在しないことを意味する。層(A)中の0℃を下回るガラス転移温度を有するポリマー(A1)は、ポリマー粒子のコア内にあるか、又は内層の1つである。
【0080】
好ましくは、層(A)中の0℃を下回るガラス転移温度を有するポリマー(A1)は、多層構造を有するポリマー粒子のためのコアを形成する多段工程の第1の段中に、及び/又は60℃以上のガラス転移温度を有するポリマー(B1)の前に作られる。好ましくは、ポリマー(A1)は-5℃未満、より好ましくは-15℃未満、有利には-25℃未満のガラス転移温度を有する。
【0081】
第1の好ましい実施態様では、60℃以上のガラス転移温度を有するポリマー(B1)は、多層構造を有するポリマー粒子の外層を形成する、多段工程の最終段中に作られる。
【0082】
第2の好ましい実施態様では、少なくとも30℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)は、多層構造を有するポリマー粒子の中間層であり、多段工程の中の、ポリマー(A1)を形成するための段の後の段中に作られる。
【0083】
1つ又は複数の中間段により得られる追加の中間層(複数可)があってもよい。
【0084】
好ましくは、層(B)のポリマー(B1)の少なくとも一部は、前の層で作られたポリマーにグラフトされている。それぞれポリマー(A1)と(B1)を含む2つの段(A)及び(B)しかない場合、ポリマー(B1)の一部はポリマー(A1)にグラフトされている。より好ましくは、ポリマー(B1)の少なくとも50重量%は、グラフトされている。グラフト率は、ポリマー(B1)のための溶媒での抽出と、抽出前後の重量測定で非グラフト量を決定することとにより、決定することができる。
【0085】
各ポリマーのガラス転移温度Tgは、例えば熱機械分析などの力学的方法により推定することができる。
【0086】
各ポリマー(A1)及び(B1)の試料を得るには、各段の各ポリマーの個々のガラス転移温度Tgをより容易に推定及び測定するために、多段工程ではなく、ポリマー(A1)及び(B1)をそれぞれ単独で調製することができる。
【0087】
ポリマー(A1)に関しては、第1の実施態様においてそれは、アルキルアクリレートからのモノマーを少なくとも50重量%含む(メタ)アクリルポリマーである。
【0088】
より好ましくは、ポリマー(A1)は、それが0℃未満のガラス転移温度を有する限り、アルキルアクリレートと共重合可能なコモノマー(複数可)を含む。
【0089】
ポリマー(A1)中のコモノマー(複数可)は、好ましくは(メタ)アクリルモノマー及び/又はビニルモノマーから選択される。
【0090】
ポリマー(A1)中の(メタ)アクリルコモノマーは、C1‐C12アルキル(メタ)アクリレートから選択されるモノマーを含む。ポリマー(A1)中の(メタ)アクリルコモノマーは、さらに好ましくはC1‐C4アルキルメタクリレート及び/又はC1‐C8アルキルアクリレートモノマーを含む。
【0091】
最も好ましくは、ポリマー(A1)のアクリル又はメタクリルコモノマーは、ポリマー(A1)が0℃未満のガラス転移温度を有する限り、メチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、及びこれらの混合物から選択される。
【0092】
好ましくは、ポリマー(A1)は架橋されている。これは、架橋剤がその他のモノマー(複数可)に添加されることを意味する。架橋剤は、重合されうる少なくとも2つの基を含む。
【0093】
ある特定の実施態様において、ポリマー(A1)は、ブチルアクリレートのホモポリマーである。
【0094】
別の特定の実施態様において、ポリマー(A1)は、ブチルアクリレートと少なくとも1の架橋剤とのコポリマーである。架橋剤は、このコポリマーの5重量%未満である。
【0095】
第1の実施態様のポリマー(A1)のガラス転移温度Tgは、より好ましくは-100℃から0℃の間、さらにいっそう好ましくは-100℃から-5℃の間、有利には-90℃から-15℃の間、より有利には-90℃から-25℃の間である。
【0096】
ポリマー(A1)に関して、第2の実施態様では、ポリマー(A1)は、シリコーンゴム系ポリマーである。シリコーンゴムは、例えばポリジメチルシロキサンである。第2の実施態様のポリマー(A1)のガラス転移温度Tgは、より好ましくは-150℃から0℃の間、さらにいっそう好ましくは-145℃から-5℃の間、有利には-140℃から-15℃の間、より有利には-135℃から-25℃の間である。
【0097】
ポリマー(A1)に関して、第3の実施態様では、0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)は、イソプレン又はブタジエン由来の高分子単位を少なくとも50重量%含み、段(A)は、多層構造を有するポリマー粒子の最も内側の層である。言い換えれば、ポリマー(A1)を含む段(A)は、ポリマー粒子のコアである。
【0098】
第2の実施態様のコアのポリマー(A1)の例としては、イソプレンホモポリマー又はブタジエンホモポリマー、イソプレン-ブタジエンコポリマー、最大で98重量%のビニルモノマーとイソプレンとのコポリマー、及び最大で98重量%のビニルモノマーとブタジエンとのコポリマーが挙げられる。ビニルモノマーは、スチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリル、アルキル(メタ)アクリレート、又はブタジエン又はイソプレンとすることができる。一実施態様において、コアは、ブタジエンホモポリマーである。
【0099】
イソプレン又はブタジエン由来の高分子単位を少なくとも50重量%含む、第3の実施態様のポリマー(A1)のガラス転移温度Tgは、より好ましくは-100℃から0℃の間、さらにいっそう好ましくは-100℃から-5℃の間、有利には-90℃から-15℃の間、さらにいっそう有利には-90℃から-25℃の間である。
【0100】
ポリマー(B1)に関しては、ホモポリマーと、二重結合を有するモノマー及び/又はビニルモノマーを含むコポリマーとが挙げられる。ポリマー(B1)は、好ましくは(メタ)アクリルポリマーである。
【0101】
好ましくは、ポリマー(B1)は、C1‐C12アルキル(メタ)アクリレートから選択される、少なくとも70重量%のモノマーを含む。さらにより好ましくは、ポリマー(B1)は、少なくとも80重量%の、C1‐C4アルキルメタクリレート及び/又はC1‐C8アルキルアクリレートモノマーを含む。
【0102】
ポリマー(B1)は、架橋されていてもよい。
【0103】
最も好ましくは、ポリマー(B1)のアクリル又はメタクリルモノマーは、ポリマー(B1)が少なくとも30℃のガラス転移温度を有する限り、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、及びこれらの混合物から選択される。
【0104】
ポリマー(B1)は、メチルメタクリレート由来のモノマー単位を有利には少なくとも50重量%、より有利には少なくとも60重量%、さらにいっそう有利には少なくとも70重量%含む。
【0105】
ポリマー(B1)のガラス転移温度Tgは、好ましくは30℃から150℃の間である。ポリマー(B1)のガラス転移温度は、より好ましくは50℃から150℃の間、さらにより好ましくは70℃から150℃の間、有利には90℃から150℃の間、より有利には90℃から130℃の間である。
【0106】
別の実施態様において、前述の多段ポリマーは追加の段を有し、それは、(メタ)アクリルポリマー(P1)である。本発明のこの実施態様による一次ポリマー粒子は、0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む少なくとも1つの段(A)と、30℃以上のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む少なくとも1つの段(B)と、30℃から150℃の間のガラス転移温度を有する(メタ)アクリルポリマー(P1)を含む少なくとも1つの段(P)とを含む多層構造を有する。
【0107】
好ましくは、(メタ)アクリルポリマー(P1)は、ポリマー(A1)又は(B1)のいずれにもグラフトされていない。
【0108】
(メタ)アクリルポリマー(P1)とポリマー(B1)は、たとえ組成が非常に近かったり、特性のいくつかが重なっているとしても、同じポリマーではない。本質的相違は、ポリマー(B1)が常に多段ポリマーの一部であることである。
【0109】
これは、繊維状物質、(メタ)アクリルポリマー(P1)及び多段ポリマーを含む、本発明の組成物を調製するための方法においてさらに説明される。
【0110】
本発明による多段ポリマーを製造するための方法に関しては、それは、以下の工程:
a) モノマー又はモノマー混合物(A)を乳化重合により重合し、0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む少なくとも1つの層(A)を得る工程
b) モノマー又はモノマー混合物(B)の乳化重合により重合し、少なくとも30℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む層(B)を得る工程
を含み、
モノマー又はモノマー混合物(A)及びモノマー又はモノマー混合物(B)は、ポリマー(A1)及びポリマー(B1)の組成に従って前述のモノマーから選択される。
【0111】
好ましくは、工程a)は、工程b)の前に行われる。さらに好ましくは、工程b)は、工程a)で得られたポリマー(A1)の存在下で実施される。
【0112】
さらにより好ましくは、工程b)のポリマー(B1)の少なくとも一部を工程a)のポリマー(A1)にグラフトするために、グラフト結合化合物が使用される。
【0113】
有利には、本発明による多段ポリマー組成物を製造するための方法は、多工程の方法であり、
a) モノマー又はモノマー混合物(A)を乳化重合により重合し、0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1つの層(A)を得る工程
b) モノマー又はモノマー混合物(B)の乳化重合により重合し、少なくとも30℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む層(B)を得る工程
を順に含む。
【0114】
ポリマー(A1)、(B1)をそれぞれ含む層(A)、(B)を形成するための各モノマー又はモノマー混合物(A)、(B)、及び各ポリマー(A1)及び(B1)の特徴は、前述の通りである。
【0115】
さらにより有利には、工程b)のポリマー(B1)の少なくとも一部を工程a)のポリマー(A1)にグラフトするために、グラフト結合化合物が使用される。
【0116】
多段ポリマーを製造するための方法は、工程a)とb)の間に、追加の段のための追加の工程を含みうる。
【0117】
多段ポリマーを製造するための方法はまた工程a)とb)の前に、追加の段のための追加の工程を含みうる。モノマー又はモノマー混合物((A)を乳化重合によって重合して、0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む層(A)を得るために、シードが使用されうる。このシードは好ましくは、少なくとも20℃のガラス転移温度を有する熱可塑性ポリマーである。
【0118】
多段ポリマーは、ポリマー粒子の水性分散体として得られる。この分散体の固形分は、10重量%から65重量%の間である。
【0119】
本発明の(メタ)アクリルポリマー(P1)の製造方法は、それぞれの(メタ)アクリルモノマー(P1)を重合する工程を含む。各(メタ)アクリルモノマー(P1)は、(メタ)アクリルポリマー(P1)及び2つの好ましい実施態様の(メタ)アクリルポリマー(P1)について前述したものと同じである。
【0120】
(メタ)アクリルホモ又はコポリマー(P1)は、バッチ又は半連続法で製造することができ、
バッチ法の場合、1つ又は一部の開始剤系の導入の直前又は直後にモノマーの混合物をワンショットで導入し、
半連続法の場合、開始剤添加と並行して、30から500分の範囲の所定の添加時間の間、複数のショットで又は連続的にモノマー混合物が添加される(開始剤も複数のショットで又は連続的に添加される)。
【0121】
繊維状物質と(メタ)アクリルポリマー(P1)と多段ポリマーとを含む本発明の組成物を調製する方法は、2つの好ましい実施態様を有する。
【0122】
いずれの場合も、(メタ)アクリルポリマー(P1)及び多段ポリマーと繊維状物質とを接触させる。(メタ)アクリルポリマー(P1)と多段ポリマーは、高分子組成物(PC1)中に別々又は一緒に添加されうる。高分子組成物(PC1)は、2つの好ましい方法によって得ることができる。
【0123】
方法の第1の好ましい実施態様では、(メタ)アクリルポリマー(P1)は、多段ポリマーの存在下で重合される。(メタ)アクリルポリマー(P1)は、高分子組成物(PC1)を得るための多段ポリマーの追加の段として作られる。(メタ)アクリルポリマー(P1)は、多段ポリマー上の層であり、それが追加の層であるので、多段ポリマーの一番上の外層である。(メタ)アクリルポリマー(P1)は、多段ポリマーにグラフトされていない。
【0124】
方法の第2の好ましい実施態様では、(メタ)アクリルポリマー(P1)を別々に重合し、多段ポリマーと混合又はブレンドし、高分子組成物(PC1)を得る。
【0125】
(メタ)アクリルポリマー(P1)と多段ポリマーとを含む高分子組成物(PC1)を調製するための、第1の好ましい態様による方法の場合、それは、
a) モノマー又はモノマー混合物(A)を乳化重合により重合し、0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む段中の1つの層(A)を得る工程
b) モノマー又はモノマー混合物(B)の乳化重合により重合し、少なくとも30℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む段中の層(B)を得る工程
c) モノマー又はモノマー混合物(P1)の乳化重合により重合し、少なくとも30℃のガラス転移温度を有する(メタ)アクリルポリマー(P1)を含むこの追加の段中の層を得る工程
を含み、
(メタ)アクリルポリマー(P1)が100000g/mol未満の質量平均分子量Mwを有することを特徴とする。
【0126】
好ましくは、工程a)は、工程b)の前に行われる。
【0127】
さらに好ましくは、工程b)は、工程a)で得られたポリマー(A1)の存在下で実施される。さらにより好ましくは、工程b)のポリマー(B1)の少なくとも一部を工程a)のポリマー(A1)にグラフトするために、グラフト結合化合物が使用される。
【0128】
有利には、(メタ)アクリルポリマー(P1)と多段ポリマーとを含むポリマー組成物(PC1)を製造するための方法は、多工程であり、
a) モノマー又はモノマー混合物(A)を乳化重合により重合し、0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む段中の1つの層(A)を得る工程
b) モノマー又はモノマー混合物(B)の乳化重合により重合し、少なくとも30℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む段中の層(B)を得る工程
c) モノマー又はモノマー混合物(P1)の乳化重合により重合し、少なくとも30℃のガラス転移温度を有する(メタ)アクリルポリマー(P1)を含むこの追加の段中の層を得る工程
を順次含み、
(メタ)アクリルポリマー(P1)が100000g/mol未満の質量平均分子量Mwを有することを特徴とする。
【0129】
さらにより有利には、工程b)のポリマー(B1)の少なくとも一部を工程a)のポリマー(A1)にグラフトするために、グラフト結合化合物が使用される。
【0130】
ポリマー(A1)、(B1)、(P1)をそれぞれ含む層(A)、(B)、及び追加の段をそれぞれ形成するための各モノマー又はモノマー混合物(A)、(B)及び(P1)は、前述したものと同じである。(A1)、(B1)及び(P1)の特徴も、それぞれ前述したもの同じである。
【0131】
ポリマー組成物(PC1)は、ポリマー粒子の水性分散体として得られる。この分散体の固形分は、10重量%から65重量%の間である。
【0132】
任意選択的に、(メタ)アクリルポリマー(P1)と多段ポリマーとを含むポリマー組成物を製造するための方法は、このポリマー組成物を回収する追加の工程d)を含む。
【0133】
回収とは、水相と固相との間の部分的な分離又は分離を意味し、後者はポリマー組成物を含む。
【0134】
本発明によれば、より好ましくは、ポリマー組成物の回収は、凝固又は噴霧乾燥によって行われる。
【0135】
0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)が、アルキルアルキレート由来の高分子単位を少なくとも50重量%含み、かつ、段(A)が、多層構造を有するポリマー粒子の最も内側の層である場合、噴霧乾燥は、本発明のポリマー粉末組成物を製造する方法のための好ましい回収及び/又は乾燥方法である。
【0136】
0℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)が、イソプレン又はブタジエン由来の高分子単位を少なくとも50重量%含み、かつ、段(A)が、多層構造を有するポリマー粒子の最も内側の層である場合、凝固は、本発明のポリマー粉末組成物を製造する方法のための好ましい回収及び/又は乾燥方法である。
【0137】
本発明によるポリマー組成物を製造するための方法は、ポリマー組成物を乾燥させる追加の工程e)を任意選択的に含みうる。
【0138】
好ましくは、この乾燥工程e)は、ポリマー組成物の回収の工程d)が凝固により行われる場合に行われる。
【0139】
乾燥工程e)の後、ポリマー組成物は、好ましくは3重量%未満、より好ましくは1.5重量%未満、有利には1%未満の水分を含む。
【0140】
ポリマー組成物の水分は、熱天秤で測定することができる。
【0141】
ポリマーの乾燥は、オーブン又は真空オーブン内で、該組成物を50℃で48時間加熱しながら行うことができる。
【0142】
(メタ)アクリルポリマー(P1)と多段ポリマーとを含む高分子組成物(PC1)を調製するための、第2の好ましい態様による方法に関して、それは、
a) (メタ)アクリルポリマー(P1)と多段ポリマーを混合する工程
b) 任意選択的に、ポリマー粉末の形態の、前工程で得られた混合物を回収する工程
を含み、
ここで、工程a)における(メタ)アクリルポリマー(P1)と多段ポリマーは、水相中の分散体の形態である。
【0143】
(メタ)アクリルポリマー(P1)の水性分散体及び多段ポリマーの水性分散体の量は、得られた混合物中の固形分に基づく多段ポリマーの重量比が少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも20重量%、有利には少なくとも50重量%となるように選択される。
【0144】
(メタ)アクリルポリマー(P1)の水性分散体及び多段ポリマーの水性分散体の量は、得られた混合物中の固形分に基づく多段ポリマーの重量比が最大で99重量%、好ましくは最大で95重量%、より好ましくは最大で90重量%となるように選択される。
【0145】
(メタ)アクリルポリマー(P1)の水性分散体及び多段ポリマーの水性分散体の量は、得られた混合物中の固形分に基づく多段ポリマーの重量比が5重量%から99重量%の間、好ましくは10重量%から95重量%の間、より好ましくは20重量%から90重量%の間となるように選択される。
【0146】
回収工程b)が行われない場合、ポリマー組成物(PC1)は、ポリマー粒子の水性分散体として得られる。この分散体の固形分は、10重量%から65重量%の間である。
【0147】
一実施態様では、(メタ)アクリルポリマー(P1)と多段ポリマーとを含むポリマー組成物を製造するための方法の回収工程b)は、任意選択ではなく、好ましくは凝固又は噴霧乾燥によって行われる。
【0148】
(メタ)アクリルポリマー(P1)と多段ポリマーとを含むポリマー組成物を製造するための方法は、該ポリマー組成物を乾燥させるための追加の工程c)を含む。
【0149】
乾燥とは、本発明のポリマー組成物が3重量%未満の水分、好ましくは1.5重量%未満の水分、より好ましくは1.2重量%未満の水分を含むことを意味する。
【0150】
水分は、ポリマー組成物を加熱して、重量減少を測定する熱天秤によって測定することができる。
【0151】
(メタ)アクリルポリマー(P1)と多段ポリマーとを含むポリマー組成物を製造するための方法は、好ましくはポリマー粉末を得る。本発明のポリマー粉末は、粒子の形態である。ポリマー粉末粒子は、多段工程により作られた凝集一次ポリマー粒子と、(メタ)アクリルポリマー(P1)とを含む。
【0152】
調製方法の2つの実施態様による、(メタ)アクリルポリマー(P1)と多段ポリマーとを含むポリマー粉末に関して、それは、1μmから500μmの間の体積メジアン粒径D50を有する。ポリマー粉末の体積メジアン粒径は、好ましくは10μmから400μmの間、より好ましくは15μmから350μmの間、有利には20μmから300μmの間である。
【0153】
体積粒度分布D10は、少なくとも7μm、好ましくは10μmである。
【0154】
体積粒度分布D90は、最大で950μm、好ましくは500μm、より好ましくは最大で400μmである。
【0155】
多段ポリマーに対する(メタ)アクリルポリマー(P1)の重量比rは、少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも7重量%、さらにより好ましくは少なくとも10重量%である。
【0156】
本発明によれば、多段ポリマーに対する(メタ)アクリルポリマー(P1)の比率rは、最大で95重量%である。
【0157】
多段ポリマーに対する(メタ)アクリルポリマー(P1)の重量比は、好ましくは5重量%から95重量%の間、好ましくは10重量%から90重量%の間である。
【0158】
「繊維状物質」に関しては、ストリップ、ラップ、組紐、房又は小片の形態である織物、フェルト又は不織布を挙げることができる。繊維状物質は、一次元、二次元又は三次元のいずれかの様々な形状及び寸法を有しうる。繊維状物質は、1以上の繊維の集合体を含む。繊維が連続的である場合、これらの集合体は、織物を形成する。
【0159】
一次元形状は、糸状の長繊維である。繊維は、不連続又は連続でありうる。繊維は、ランダムに配置されても、互いに平行な連続フィラメントとして配置されてもよい。繊維は、繊維の長さと直径との比である、そのアスペクト比により定義される。本発明で用いられる繊維は、長繊維又は連続繊維である。繊維は、少なくとも1000、好ましくは少なくとも1500、より好ましくは少なくとも2000、有利には少なくとも3000、最も有利には少なくとも5000のアスペクト比を有する。
【0160】
二次元形状は、繊維質マット又は不織補強材又はロービング織物又は繊維束であり、これらは編組であってもよい。
【0161】
三次元形状は例えば、積み重ねられた若しくは折り畳まれた繊維質マット又は不織補強材又は繊維束又はこれらの混合物、三次元における二次元形状の集合体である。
【0162】
繊維状物質の素材は、天然のものでも合成のものでもよい。天然の素材として、植物繊維、木質繊維、動物繊維又は鉱物繊維を挙げることができる。
【0163】
天然繊維は例えば、サイザル麻、ジュート、麻、亜麻、木綿、ココナッツ繊維、及びバナナ繊維である。動物繊維は例えば、羊毛又は毛髪である。
【0164】
合成素材として、熱硬化性ポリマーの繊維、熱可塑性ポリマー又はこれらの混合物から選択される高分子繊維を挙げることができる。
【0165】
高分子繊維は、ポリアミド(脂肪族又は芳香族)、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、及びビニルエステルから作ることができる。
【0166】
また、鉱物繊維は、特にタイプE、R、又はS2のガラス繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、又はケイ素繊維から選ぶことができる。
【0167】
本発明の繊維状物質は、植物繊維、木質繊維、動物繊維、鉱物繊維、合成高分子繊維、ガラス繊維、炭素繊維、又はこれらの混合物から選択される。
【0168】
繊維状物質は、好ましくは二又は三次元である。
【0169】
本発明による組成物を製造するための方法に関しては、それは、
a) 繊維状物質と多段ポリマーと(メタ)アクリルポリマー(P1)とを接触させる工程
を含み、
多段ポリマーの量は、組成物の3重量%から50重量%の間であり、(メタ)アクリルポリマー(P1)は、100000g/mol未満の質量平均分子量Mwを有する。
【0170】
前記方法の工程a)は、多段ポリマーと(メタ)アクリルポリマー(P1)とを含む水性分散体を繊維状物質に浸漬、注入又は含浸することによって、又は多段ポリマーと(メタ)アクリルポリマー(P1)とを含む粉末により繊維状物質を粉末化することによって行うことができる。多段ポリマー及び(メタ)アクリルポリマー(P1)は好ましくは、前述の高分子組成物(PC1)の形態である。
【0171】
高分子組成物(PC1)が水性分散体の形態である場合、本方法は、工程a)の生成物を乾燥させる追加の工程b)を含む。さらに、b)の乾燥生成物を加熱する工程c)を加えることができる。
【0172】
工程b)は、水相を蒸発させることによって、又はわずかに加熱することによって行われる。好ましくは、工程b)は、少なくとも45℃に加熱することにより行われる。
【0173】
高分子組成物(PC1)が乾燥粉末の形態である場合、本方法は、組成物を加熱する追加工程c)を含む。
【0174】
工程c)は、100℃から250℃の間の温度の金型の中で行われる。好ましくは125℃から225℃の間。金型に圧力を加えてもよい。
【0175】
特にプリフォームの形態の組成物を製造する方法はまた、プリフォームを変形する工程を含みうる。これは、工程c)中に、加熱が特定の形状を有する金型内で行われること、又はプリフォームが工程c)の後に再度加熱下で別の形状に変換されることのいずれかで行われうる。
【0176】
本発明の組成物又はプリフォームは、高分子複合材料又は高分子複合材料を含む機械的若しくは構造化部品又は物品を製造するために使用することができる。
【0177】
本発明の組成物又はプリフォームは、注入、減圧バッグ成形、加圧バッグ成形、オートクレーブ成形、樹脂トランスファ成形(RTM)、反応射出成形(RIM)、強化反応射出成形(R-RIM)及びこれらの変形、プレス成形又は圧縮成形等の方法において使用される。
【0178】
該方法は、好ましくは樹脂トランスファ成形である。
【0179】
このプロセス中に、マトリックス又は連続相が組成物又はプリフォームに添加され、耐衝撃性改良高分子複合材料又は高分子複合材料を含む機械的若しくは構造化部品又は物品が得られる。
【0180】
高分子複合材料のマトリックス又は連続相は、熱硬化性ポリマー又は熱可塑性ポリマーである。
【0181】
一例として、耐衝撃性改良高分子複合材料を製造するための方法は、成形工程によって行われる。この方法は一般に、金型の輪郭に合うようにプリフォームを成形する工程、成形したプリフォームを金型に入れる工程、未硬化若しくは溶融成形樹脂又は重合シロップを金型に注入する工程、及びその後成形樹脂を硬化又は冷却又は必要に応じて重合して、立体成形ポリマー複合物を形成する工程を必要とする。
【0182】
[評価方法]
粒径分析
多段重合後の一次粒子の粒径は、Zetasizer Nano S90で測定される。
【0183】
ポリマー粉末の粒径は、MALVERN社のMalvern Mastersizer 3000で測定される。体積メジアン粒径D50の推定のため、0,5~880μmの範囲を測定する、300mmレンズを備えたMalvern Mastersizer 3000装置が使用される。
【0184】
ガラス転移温度
多段ポリマーのガラス転移点(Tg)は、熱機械分析を実現することができる機器で測定される。Rheometrics社によるRDAII 「RHEOMETRICS DYNAMIC ANALYSER」が使用されている。この熱機械分析は、適用される温度、ひずみ又は変形の関数として試料の粘弾性変化を正確に測定する。この装置は、温度変化の制御プログラムの間中、ひずみを固定したまま、試料の変形を継続的に記録する。結果は、温度、弾性率(G’)、損失弾性率、及びタン・デルタの関数として、図面により得られる。Tgは、タン・デルタの導関数がゼロに等しい場合、タン・デルタ曲線から読み取られる、比較的高い温度値である。
【0185】
分子量
ポリマーの質量平均分子量(Mw)は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定される。
【実施例
【0186】
以下の材料を使用又は調製した。
【0187】
ガラス繊維織物の形態の繊維質基材であって、寸法が30cm x 20cmのガラスクロス(Hexcel社のガラスE 平織 HexForce(登録商標)01717 820 TF970、公称重量160g/m2)が使用される。
【0188】
多段ポリマーとして、米国特許第4278576号に記載の、標準的な乳化重合技術を用いる技術に従って高分子耐衝撃性改良剤を調製する。
【0189】
高分子耐衝撃性改良剤(IM1)として、89.2部のブチルアクリレート、0.4部のブチレングリコールジアクリレート、及び0.4部のジアリルマレエートをエラストマーコアとして用いる多段工程により、続いて10部のメチルメタクリレートの重合によって、コア/シェル型アクリル系ポリマー耐衝撃性改良剤を調製する。固形分は、(IM1)の水性分散体の40%である。
【0190】
コポリマーP1の合成:半連続法:1700gの脱イオン水、0.01gのFeSO4及び0.032gのエチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩(10gの脱イオン水に溶解)、110gの脱イオン水と21.33gの牛脂脂肪酸の乳化カリウム塩(139.44gの水に溶解)に溶解した3.15gのホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムを攪拌しながら反応器に入れ、混合物を完全に溶解するまで攪拌した。減圧窒素パージを三回連続で実施し、反応器をわずかな減圧下で放置した。次いで、反応器を加熱した。同時に、1066.7gのメチルメタクリレート及び10.67gのn-オクチルメルカプタンを含む混合物を30分間窒素脱気した。反応器を63℃に加熱し、その温度で維持した。次に、ポンプを使って、該混合物を180分間反応器に導入した。並行して、5.33gのtert-ブチルヒドロペルオキシド(100gの脱イオン水に溶解)の溶液を導入する(同じ添加時間)。ラインを、50g及び20gの水ですすいだ。その後反応混合物を80℃の温度に加熱し、モノマー添加の終了後60分間放置して重合を完了させた。反応器を30℃に冷却した。得られた固形分は34.2%であった。コポリマーP1の質量平均分子量は、M=28000g/molである。
【0191】
多段ポリマーとメタアクリルポリマー(P1)とを含む組成物は、(IM1)の水性分散体1000gと(P1)の水性分散体200gを混合することによって調製される。
【0192】
ガラス繊維織物を浸すために、(IM1)と(P1)の水性分散体の混合物に織物を数回漬ける。織物上の分散液から異なる量の多段ポリマー(IM1)と(P1)との混合物を得るために、浸漬工程の数は、変えられる。
【0193】
50℃のオーブン内で織物を乾燥させる。
【0194】
織物中の多段ポリマーとポリマー(P1)との混合物の量は、浸漬前及び乾燥後に織物を秤量することによって計算される。
【0195】
以下の生成物が得られる。
【0196】
実施例1:多段ポリマー(IM1)とメタアクリルポリマー(P1)との混合物は、織物中に6重量%である。
【0197】
実施例2:多段ポリマー(IM1)とメタアクリルポリマー(P1)との混合物は、織物中に8.5重量%である。
【0198】
実施例3:多段ポリマー(IM1)とメタアクリルポリマー(P1)との混合物は、織物中に15重量%である。
【0199】
比較実施例1:多段ポリマー(IM1)とメタアクリルポリマー(P1)との混合物は、織物中に3重量%である。
【0200】
比較実施例2:前述の実施例の方法は、織物を浸漬することを繰り返すが、混合物の代わりに(IM1)の水性分散体のみを使用する。多段ポリマー(IM1)は、織物中に3重量%である。
【0201】
約1mmの厚さを得るために、各織物又はプライの3層を積み重ねる。スタックを圧力下で金型に入れ、10分間で20℃から200℃まで温度を上昇させる。200℃を15分間保持し、その後金型を25分間で70℃に冷却し、プリフォームを金型から取り出す。
【0202】
プライ間の結合は、プリフォームを製造するのに十分である。実施例1、2及び3で製造されたプリフォームは、数週間その形状を維持してから、プリフォームとして使用することができる。
【0203】
比較例1及び2を用いて製造されたプリフォームは、安定性が低く、金型内で得られる形状が変化するが、これは比較例1よりも比較例2にとって重要である。