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特許7084323モータ用ロータ、モータ及びモータ用ロータの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】モータ用ロータ、モータ及びモータ用ロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/278 20220101AFI20220607BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
H02K1/278
H02K15/03 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018567344
(86)(22)【出願日】2018-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2018001665
(87)【国際公開番号】W WO2018147052
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2019-10-09
(31)【優先権主張番号】P 2017023480
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】西野 浩威
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-246238(JP,A)
【文献】実開平01-150469(JP,U)
【文献】特開平06-098489(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208031(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/009902(WO,A1)
【文献】特開2014-195356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
回転軸方向における一方の面と他方の面と、当該一方の面から回転軸方向に突出する突出部と、外周面と、を有する環状の磁性体と、
前記突出部を囲む金属部材と、
前記磁性体を囲む環状のマグネットと、を備え、
前記突出部は前記回転軸を囲んでおり、
前記突出部の平面形状は、環状に形成されており、
前記突出部は、頭部と、当該頭部と前記磁性体の前記一方の面との間にある、筒部を備え、
前記マグネットは、回転軸方向における一方の面と他方の面を備え、
前記マグネットの一方の面に前記金属部材が配置されており、
前記金属部材は、前記部と前記磁性体の一方の面とに挟まれており、
前記磁性体の外周面には、湾曲した複数の湾曲面と、平面状となる平面部と、が設けられており、
前記平面部は、前記複数の湾曲面の間に形成され、前記複数の湾曲面それぞれの端部を接続し、
前記平面部と前記マグネットの内周面との間に形成された隙間には接着剤がある、モータ用ロータ。
【請求項2】
前記磁性体の2つの面はそれぞれ上面、下面であり、
前記マグネットの2つの面はそれぞれ上面、下面であり、
回転軸方向において、前記マグネットの前記磁性体に対する位置は前記金属部材により規制されている、請求項1に記載のモータ用ロータ。
【請求項3】
前記金属部材の平面形状は、環状である、請求項1又は2に記載のモータ用ロータ。
【請求項4】
前記頭部の平面形状は、環状に形成されている、請求項1から3のいずれかに記載のモータ用ロータ。
【請求項5】
前記突出部は、前記頭部と前記一方の面との間に前記回転軸に向けて凹んだ凹みを有し、
前記凹みに、前記金属部材の一部が収容されている、請求項1から4のいずれかに記載のモータ用ロータ。
【請求項6】
前記マグネットは、被嵌合部を有し、
前記金属部材及び前記磁性体の少なくとも一方は、前記被嵌合部に嵌合する嵌合部を有する、請求項1からのいずれかに記載のモータ用ロータ。
【請求項7】
前記嵌合部は、径方向において、前記マグネットの内周面に向かって凸となる凸部である、請求項に記載のモータ用ロータ。
【請求項8】
前記被嵌合部は、径方向において、前記マグネットの内周面から外周面に向かって凹む凹部である、請求項又はに記載のモータ用ロータ。
【請求項9】
前記磁性体の他方の面は、径方向において、外側に向かって延びた環状のフランジ部を備え、
前記フランジ部は、前記マグネットの他の面を支持している、請求項からのいずれかに記載のモータ用ロータ。
【請求項10】
前記マグネットの他の面に対向する前記フランジ部の面は、前記嵌合部を備え、
前記フランジ部に対向する前記マグネットの他の面は、前記被嵌合部を備えている、請求項に記載のモータ用ロータ。
【請求項11】
ハウジングと、
請求項1から10のいずれかに記載のモータ用ロータと、
前記モータ用ロータを囲むステータと、を備える、モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータ用ロータ、モータ及びモータ用ロータの製造方法に関し、特に、環状のマグネットを有するモータ用ロータ、モータ及びモータ用ロータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ用ロータとしては、環状のマグネットを有するものが用いられている。環状のマグネットは、例えば、モータ用ロータの他の部材に、接着により取り付けられる。
【0003】
なお、下記特許文献1には、貫通穴を有するロータマグネットを成形金型内に押入し、しかる後に高分子材料を金型内に流し込みロータカナ部を有するロータ真部を成形したロータにおいて、ロータマグネットの外表面に回転防止部を設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭55-002313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、マグネットが接着のみによる方法で取り付けられている構造を有するロータには、接着剤の耐熱性や熱老化の問題がある。すなわち、そのようなロータについては、例えばモータが使用される環境が、高温となる環境であったり、高温や低温のサイクルが繰り返されるような厳しい環境である場合には、ロータの信頼性を維持することが困難になる場合がある。
【0006】
この発明は、そのような課題を一例とするものであり、例えば厳しい環境において使用可能なマグネットの取り付け構造を有するモータ用ロータ、モータ用ロータを備えるモータ及びモータ用ロータの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、モータ用ロータは、回転軸と、回転軸方向における一方の面と他方の面と、当該一方の面から回転軸方向に突出する突出部と、外周面と、を有する環状の磁性体と、突出部を囲む金属部材と、磁性体を囲む環状のマグネットと、を備え、突出部は回転軸を囲んでおり、マグネットは、回転軸方向における一方の面と他方の面を備え、マグネットの一方の面に金属部材が配置されており、金属部材は、突出部と磁性体の一方の面とに挟まれており、磁性体の外周面には、湾曲した湾曲面と、平面状となる平面部と、が設けられており、平面部は、複数の湾曲面の間に形成され、複数の湾曲面それぞれの端部を接続し、平面部とマグネットの内周面との間に形成された隙間には接着剤がある。
【0008】
好ましくは、磁性体の2つの面はそれぞれ上面、下面であり、マグネットの2つの面はそれぞれ上面、下面であり、回転軸方向において、マグネットの磁性体に対する位置は金属部材により規制されている。
【0009】
好ましくは、金属部材の平面形状は、環状である。
【0010】
好ましくは、突出部の平面形状は、環状に形成されており、突出部は、頭部と、当該頭部と一方の面との間にある、筒部を備える。
【0011】
好ましくは、頭部の平面形状は、環状に形成されている。
【0012】
好ましくは、突出部は、頭部と一方の面との間に回転軸に向けて凹んだ凹みを有し、凹みに、金属部材の一部が収容されている。
【0013】
好ましくは、マグネットは、被嵌合部を有し、金属部材及び磁性体の少なくとも一方は、被嵌合部に嵌合する嵌合部を有する。
【0014】
好ましくは、嵌合部は、径方向において、マグネットの内周面に向かって凸となる凸部である。
【0015】
好ましくは、被嵌合部は、径方向において、マグネットの内周面から外周面に向かって凹む凹部である。
【0016】
好ましくは、磁性体の他方の面は、径方向において、外側に向かって延びた環状のフランジ部を備え、フランジ部は、マグネットの他の面を支持している。
【0017】
好ましくは、マグネットの他の面に対向するフランジ部の面は、嵌合部を備え、フランジ部に対向するマグネットの他の面は、被嵌合部を備えている。
【0018】
この発明の他の局面に従うと、モータ用ロータは、回転軸と、回転軸に固定され、回転軸方向における一方の面と他方の面と、当該一方の面から回転軸方向に突出する突出部と、外周面と、を有する環状の磁性体と、磁性体を囲む環状のマグネットと、を備え、磁性体の外周面には、湾曲した複数の湾曲面と、平面状となる平面部と、が設けられており、平面部は、複数の湾曲面の間に形成され、複数の湾曲面それぞれの端部を平面状に連結し、平面部とマグネットの内周面との間に形成された隙間には、接着剤がある
【0019】
この発明のさらに他の局面に従うと、モータは、ハウジングと、上述のいずれかに記載のモータ用ロータと、モータ用ロータを囲むステータと、を備える。
【0020】
この発明のさらに他の局面に従うと、モータ用ロータの製造方法において、モータ用ロータは、回転軸と、回転軸方向に対向する2つの面と、当該2つの面のうち一方の面から回転軸方向に突出する突出部と、を有する環状の磁性体と、突出部を囲む金属部材と、磁性体を囲む環状のマグネットと、を備え、マグネットは、回転軸方向に対向する2つの面を備え、モータ用ロータの製造方法は、金属部材を磁性体の一方の面及びマグネットの一方の面に設ける第1の工程と、突出部と磁性体の一方の面とで金属部材を挟む第2の工程と、を有する。
【0021】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、モータ用ロータは、回転軸と、回転軸方向において対向する2つの面と、当該2つの面のうち他方の面から回転軸方向に突出する他方側突出部と、を有する環状の磁性体と、他方側突出部を囲むリング状部材と、磁性体を囲む環状のマグネットと、を備え、他方側突出部は回転軸を囲んでおり、マグネットは、回転軸方向において対向する2つの面を備え、マグネットの他方の面にリング状部材が配置されており、リング状部材は、他方側突出部と係合している。
【0022】
好ましくは、磁性体には、フランジ部が設けられており、フランジ部は、回転軸方向においてリング状部材と前記環状のマグネットとの間にあり、回転軸方向において対向する2つの面を備え、フランジ部の2つの面のうち他方の面、及び、リング状部材の内周面の一方には第1係合部が設けられ、他方には第1係合部と係合する被第1係合部が設けられている。
【0023】
好ましくは、磁性体には、フランジ部が設けられており、フランジ部は、回転軸方向においてリング状部材と前記環状のマグネットとの間にあり、回転軸方向において対向する2つの面を備え、フランジ部の2つの面のうち一方の面、及び、環状のマグネットの内周面の一方には第2係合部が設けられ、他方には第2係合部と係合する被第2係合部が設けられている。
【0024】
この発明のさらに他の局面に従うと、モータは、ハウジングと、上述のいずれかに記載のモータ用ロータと、モータ用ロータを囲むステータと、回転軸方向においてリング状部材と対向する位置に設けられたセンサと、を備え、リング状部材は、マグネットである。
【0025】
これらの発明に従うと、例えば厳しい環境において使用可能なマグネットの取り付け構造を有するモータ用ロータ、モータ及びモータ用ロータの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1の実施の形態の1つにおけるモータを示す斜視図である。
図2】モータの側面図である。
図3】モータのロータを示す側面図である。
図4】ロータの平面図である。
図5】ロータの底面図である。
図6図3のD-D線断面図である。
図7】ロータの分解斜視図である。
図8図7とは異なる方向から見たロータの分解斜視図である。
図9】ロータの分解側面図である。
図10】ロータの分解側断面図である。
図11図5のE-E線における拡大断面図である。
図12】リングの固定構造を説明する断面図である。
図13】本発明の第2の実施の形態の1つにおけるモータを示す断面図である。
図14】ロータの斜視図である。
図15図14のロータの分解斜視図である。
図16図14のF-F線における断面図である。
図17図14のG-G線における断面図である。
図18】本発明の第2の実施の形態に係るロータの第1の変形例及び第2の変形例を示す拡大断面図である。
図19】本発明の第2の実施の形態に係るロータの第3の変形例及び第4の変形例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態におけるモータについて説明する。
【0028】
以下の説明において、モータのシャフトに平行な方向を、軸方向(回転軸方向)ということがある。また、軸方向を、上下方向ということがある(モータのハウジングから見てシャフトが突出している方向が上方向)。ここでいう「上下」、「上」、「下」等は、モータのみに着目したときに便宜上採用する示し方であって、このモータが搭載される機器における方向や、このモータが使用される姿勢について何ら限定するものではない。
【0029】
[第1の実施の形態]
はじめに、本発明の第1の実施の形態に係るモータについて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態の1つにおけるモータ1を示す斜視図である。図2は、モータ1の側面図である。
【0030】
図1に示されるように、モータ1は、軸方向をモータ1の高さ方向として、外形が円柱状である部分と、円柱状の部分から突出したシャフト(回転軸の一例)2とを有している。シャフト2は、軸方向に2つの端部を備える。シャフト2の一部分は、軸方向において、モータ1の円柱状の部分の上面にあるブラケット12から、上方に向けて突出している。ブラケット12には、開口部12bが設けられており、シャフト2は、開口部12bを通過している。開口部12bから上方に突出したシャフト2の一部分から、モータ1の駆動力を取り出すことができる。
【0031】
本発明の第1の実施の形態においては、開口部12bから上方に突出したシャフト2の上端部近傍にウォーム2aが設けられている。このウォーム2aは歯車等とともにウォームギアを構成する。モータ1は、シャフト2を回転させることでウォーム2aに噛み合う歯車(図示せず)等を回転させるアクチュエータに用いることができる。モータ1は、例えば自動車や2輪車等に用いられる電動アクチュエータの用途に用いることができる。
【0032】
図1に示されるモータ1は、いわゆる、インナーロータ型のブラシレスモータである。モータ1は、大まかに、上端部が開口部となり、下端部が底面部となっている円筒形状のハウジング11と、ハウジング11の内部に後述するマグネット3等の各部材と、ハウジング11の開口部を塞ぐ板状のブラケット12と、を備えている。
【0033】
なお、モータ1のブラケット12には、例えば、モータ1を駆動するための電力を供給するための端子等や、開口部12bとは異なる開口部等が設けられていてもよい。図1においてはそれらの図示が省略されている。
【0034】
図3は、モータ1を構成する部材の1つであるロータ1aを示す側面図である。図4は、ロータ1aの平面図である。図5は、ロータ1aの底面図である。図6は、図3のD-D線断面図である。図7は、ロータ1aの分解斜視図である。図8は、図7とは異なる方向から見たロータ1aの分解斜視図である。図9は、ロータ1aの分解側面図である。図10は、ロータ1aの分解側断面図である。図11は、図5のE-E線における拡大断面図である。
【0035】
図3から図6に示されるように、ロータ(モータ用ロータ)1aは、シャフト2と、マグネット3と、コア(磁性体の一例)6と、リング(金属部材の一例)9とを備えている。ロータ1aのうち、マグネット3、コア6、リング9は、ハウジング11の内部に収容されている。またハウジング11の内部には、図示を省略した、ロータ1aを回転可能に支える軸受と、ステータが配置されており、このステータはコイルと、インシュレータ、ステータコア等とで構成されている。
【0036】
マグネット3は、例えば樹脂材料に磁性材料を混ぜて成形したボンドマグネットである。マグネット3は、円筒形状を有している。マグネット3は、コア6を囲むようにして配置されている。すなわち、マグネット3の平面形状は、シャフト2を囲む環状に形成されている。マグネット3は、回転軸方向において対向する(互いに背中合わせとなる、背向する)2つの面(上面3a、下面3b)を有する。マグネット3の内周面3iと上面3a、下面3bのそれぞれとの間には、面取り部としての傾斜面が設けられている。
【0037】
図8などに示されるように、マグネット3の上面3a、特に上側における内周端部には、被嵌合部3cが設けられている。被嵌合部3cは、径方向において、マグネット3の内周面3iから外周面3kに向かって凹む凹部である。被嵌合部3cは、軸方向において、マグネット3の上側の上面3aから下方に向かって凹む凹部である。被嵌合部3cは、4箇所に設けられている。4つの被嵌合部3cは、回転軸周りに所定の角度の間隔を空けるように、図示の例では90度の間隔を空けるようにして配置されている。
【0038】
図7などに示されるように、マグネット3の下側の端部には、被嵌合部3dが設けられている。被嵌合部3dは、径方向において、マグネット3の内周面3iから外周面3kに向かって凹む凹部である。被嵌合部3cは、軸方向において、マグネット3の下面3bから上方に向かって凹む凹部である。被嵌合部3dは、4箇所に設けられている。4つの被嵌合部3dは、所定の角度の間隔を空けるように、図示の例では回転軸周りに90度の間隔を空けるようにして配置されている。
【0039】
本発明の第1の実施の形態において、4つの被嵌合部3cのそれぞれは、4つの被嵌合部3dのそれぞれに平面視で見て重なる位置に配置されている。すなわち、各被嵌合部3cの周方向の位置と各被嵌合部3dの周方向の位置とは同じである。すなわち、マグネット3は、上面からの距離と下面からの距離とが等しい位置にある回転軸に垂直な平面に対して対称な形状を有し、上下方向の向きにかかわらずロータ1aに取り付けることができるようになっている。なお、被嵌合部3c,3dの数や配置されている位置は、上述に限られない。
【0040】
コア6は、例えば鉄等の磁性体で形成されている。コア6は、おおまかに、軸方向が高さ方向となる円柱形状を有している。コア6は、回転軸方向において対向する2つの面(上面6a、下面6b)を有する。コア6の平面形状は、シャフト2を囲むように、環状に形成されている。すなわち、シャフト2は、コア6を上下に貫通している。シャフト2は、コア6に圧入された状態で、コア6に対して固定されている。
【0041】
コア6は、突出部6eを有している。突出部6eは、コア6の下方の面(下面)6b側に設けられている。突出部6eは、コア6の下面6bから回転軸方向に突出している。すなわち、突出部6eは、コア6の下面6bから下方に突出している。突出部6eは、シャフト2を囲んでいる。
【0042】
コア6は、フランジ状に形成されたフランジ部6aを有する。フランジ部6aは、コア6の上方の面(上面6a)となっている。すなわち、回転軸方向において、コア6の下方の面(下面6b、一方の面)とは反対側の面(他方の面)は、フランジ部6aを備えている。フランジ部6aは周方向においてコア6の全周にわたって延びるとともに、径方向においてコア6の他の部分よりも外側に向かって延びている、コア6の一部分である。すなわち、フランジ部6aは、シャフト2の外周面を囲むように、環状に形成されている。なお、径方向における外側とは、図示の例では、シャフト2から離れる方向である。
【0043】
マグネット3は、コア6の外周面6kを囲むようにして配置されている。マグネット3の内径(内周面3iの径)は、コア6の外径(外周面6kの径)よりもわずかに大きくなっている。マグネット3の内周面3iとコア6の外周面6kとの間には、接着剤が配されており、マグネット3とコア6とは接着されている。
【0044】
図7等に示されるように、コア6の外周面6kには、湾曲した湾曲部と、平面状となる平面部6zとが設けられている。周方向において、平面部6zは、湾曲部の両端部の間に形成されている。この平面部6zは、回転軸方向に沿って直線状に延在している。本発明の第1の実施の形態では、4つの平面部6zが、回転軸周りに90度の間隔を空けるようにして配置されている。径方向において、平面部6zとマグネット3の内周面3iとの間には隙間が形成され、この隙間はコア6の外周面6kとマグネット3の内周面3iとの間よりも若干広い。これにより、ロータ1aの組立時において、マグネット3とコア6との間に塗布された接着剤のうち余分な接着剤が平面部6zと内周面3iとの間に留まる。そのため、十分な量の接着剤を塗布してマグネット3とコア6とが確実に接着されるようにしつつ、余分な接着剤が外側にはみ出ることを防止することができる。
【0045】
図6に示されるように、回転軸方向において、フランジ部6aの下側にはマグネット3の上面3aに対向する面が設けられている。マグネット3の上面3aは、フランジ部6aの下側の面に対向している。マグネット3は、上面3aがフランジ部6aに接触するように、配置されている。フランジ部6aは、マグネット3の上面3aを支持している。フランジ部6aは、回転軸方向において、マグネットの3の上側の面の位置を規制している。図示の例では、フランジ部6aはマグネット3の上面3aの位置を規制している。詳細には、フランジ部6aがマグネット3の上面3aに接触しているため、マグネット3の上面3aがフランジ部6aよりも上方に変位することを抑止できる。すなわち、回転軸方向において、コア6によってマグネット3は支持されているので、マグネット3がコア6より上方に変位することを抑止できる。
【0046】
図9に示されるように、本発明の第1の実施の形態において、コア6は、嵌合部6cを有している。嵌合部6cは、径方向において、コア6の外周面6kからマグネット3の内周面3iに向かって凸となる凸部である。図示の例では、回転軸方向において、嵌合部6cは、マグネット3に対向するフランジ部6aの面に設けられている。図11に示されるように、嵌合部6cは、回転軸方向において、フランジ部6aのマグネット3に対向する面から下方に凸となっている。嵌合部6cは、マグネット3の上側の端部の被嵌合部3cに嵌合するように形成されている。なお、嵌合部6cは、コア6の外周面6kに設けられていても構わない。
【0047】
このように、嵌合部6cが被嵌合部3cに嵌合していることにより、周方向において、マグネット3のコア6に対する位置が規制されている。すなわち、マグネット3は、コア6に対して周方向に回転しないように、コア6に支持されている。
【0048】
リング9は、例えば、鉄やアルミニウム等の金属材料で形成された金属部材である。リング9は、平板状に形成されている。リング9の平面形状は、環状である。リング9は、例えば、鋼板を所定の形状で打抜き加工をすることにより製造できる。リング9は、比較的低コストで製造することができるものである。
【0049】
リング9は、帯状で円環状に形成された環状部9aと、2つの嵌合部9dとを有している。各嵌合部9dは、環状部9aの一部から径方向外側に向けて(回転軸から離れる方向に)突出する部位である。すなわち、嵌合部9dは、径方向において、マグネット3の内周面3iに向かって凸となる凸部である。2つの嵌合部9dは、一方がリング9の中央に対して他方の点対称となる位置に配置されている。すなわち、2つの嵌合部9dは、回転軸周りに180度の間隔を空けるようにして配置されている。
【0050】
リング9の環状部9aは、コア6の突出部6eを囲むように形成されている。リング9の環状部9aの内径は、突出部6eのうちリング9が配置される部位の外径よりも若干大きくなっている。
【0051】
図5に示されるように、本発明の第1の実施の形態において、環状部9aの外径は、コア6の外周面6kの径よりも若干小さくなっている。各嵌合部9dは、径方向において、コア6からマグネット3に向かって延在している。各嵌合部9dの先端(外側の端部)は、ロータ1aを底面側から見て、コア6の外周面6kよりも外側(マグネット3の外周面側)に位置している。各嵌合部9dは、マグネット3の下側の被嵌合部3dに嵌合するように形成されている。すなわち、各嵌合部9dは、周方向において、被嵌合部3dの凹部の幅よりも狭い幅を有し、かつ、回転軸方向において、回転軸から嵌合部9dの先端までの距離が、回転軸と被嵌合部3dの最も凹んだ部位との距離よりも短くなるように形成されている。
【0052】
図11に示されるように、リング9は、コア6の一方の面に配置されている。リング9は、コア6の下面6bに配置されている。リング9は、突出部6eを囲んでいる。リング9は、コア6に固定されている。また、マグネット3の一方の面にリング9が配置されている。リング9が有する2つの嵌合部9dは、4つの被嵌合部3dのうちいずれか2つに嵌合している。このように嵌合部9dが被嵌合部3dに嵌合することにより、マグネット3の下面3b近傍部位の位置が嵌合部9dにより規制されている状態になる。すなわち、軸方向において、マグネット3のコア6に対する位置は、リング9により規制されている。マグネット3は、回転軸方向において、リング9によりコア6に固定されている。
【0053】
また、リング9はコア6に固定されている。嵌合部9dは被嵌合部3dに嵌合している。このような構成により、周方向において、マグネット3のコア6に対する位置は、リング9により規制されている。すなわち、マグネット3は、周方向において、リング9によりコア6に固定されている。
【0054】
ここで、本発明の第1の実施の形態において、リング9は、環状部9aがコア6の突出部6eに係合した状態でコア6に固定されている。図11に示されるように、突出部6eの平面形状は、環状に形成されている。突出部6eは、頭部6hと、頭部6hとコア6の下面6bとの間に設けられた筒部6fとを有している。頭部6hの平面形状は、環状に形成されている。頭部6hは、筒部6f部分よりも回転軸から離れた位置にある。すなわち、突出部6eは、フランジ形状の頭部6hを有している。このように突出部6eにおいて頭部6hがフランジ形状を成していることにより、突出部6eには、頭部6hと下面6bとの間にシャフト2に向けて凹んだ凹み6gが形成されている。
【0055】
リング9は、突出部6eとコア6の一方の面との間に挟まれている。リング9の環状部9aは筒部6fの周囲を囲むように配置されており、環状部9aの一部が突出部6eの凹み6gに収容されている。すなわち、図11に示されるように、リング9の環状部9aは、頭部6hと、コア6の下面6bとに挟まれるようにして配置されている。リング9は、環状部9aの内側の部分が頭部6hと下面6bとに挟まれていることにより、コア6に機械的に固定されている。
【0056】
図12は、リング9の固定構造を説明する断面図である。
【0057】
ロータ1aの製造時において、リング9をコア6の一方の面及びマグネット3の一方の面に設ける第1の工程と、突出部6eとコア6の一方の面とでリング9を挟む第2の工程とが行われる。具体的には、例えば、リング9は、コア6の下面6bに配置された状態で、環状部9aの内側の部分が頭部6hと下面6bとで挟まれるように突出部6eを塑性変形させることにより、コア6に機械的に固定される。すなわち、リング9は、突出部6eをかしめることにより、コア6に固定される。
【0058】
図12に示されるように、本発明の第1の実施の形態において、かしめ工程が行われる前までは、突出部6eは、下面6bから下方に突出する円筒状の筒部6fを有している。筒部6fが円筒状である状態では、下方からリング9を、筒部6fの周囲を囲むように、下面6bに配置することができる。そして、リング9を下面6bに配置した状態で、突出部6eの頭部6hに径方向外側(径方向において、シャフト2から離れる方向)に向けた力が加わるように、治具100を頭部6hに当てる。治具100により突出部6eを変形させ、フランジ形状を成すように頭部6hを径方向外側に変位させることで、図11に示されるようにしてリング9をコア6に固定することができる。
【0059】
なお、治具100を頭部6hに当てながらロータ1aを回転軸周りに回転させたり、治具100を回転軸周りに回転させたりすることで、スピンかしめを行うことができる。かしめ方法はスピンかしめに限られない。例えばテーパ形状の上端部を有する治具を、頭部6hの内側に当てながら上方にプレスすることで、頭部6hを全周にわたって外側に押し出すことでかしめを行うようにしてもよい。
【0060】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態では、マグネット3は、フランジ部6aとリング9とに回転軸方向の位置が規制された状態で、コア6に固定されている。リング9は、コア6に機械的に固定されている。このような機械的な固定構造は、部材の収縮・膨張に大きく影響されず、様々な方向の多種類の振動に耐えられるものである。したがって、接着のみによる方法でマグネット3をコア6に固定する構造と比較して、ロータ1aの信頼性をより長く維持することができる。
【0061】
接着のみによる方法を用いてマグネット3を固定する場合には、生産の際に、接着剤の塗布量や塗布する位置を厳密に管理する必要があり、生産性が低くなる。しかしながら、本発明の第1の実施の形態では、接着による方法とリング9をかしめにより固定する方法とを併用することができるので、接着による方法への依存度を低くすることができる。したがって、製造工数を削減し、製造コストを抑制することができる。
【0062】
リング9は、突出部6eをかしめることによりコア6に固定されている。そのため、容易な方法で、リング9をコア6に強固に固定することができる。したがって、信頼性の高いロータ1aを、比較的低い製造コストで製造することができる。
【0063】
リング9の嵌合部9dが、マグネット3の被嵌合部3dに向けて径方向に突出して被嵌合部3dに嵌合している。また、コア6の嵌合部6cが、マグネット3の被嵌合部3cに向けて径方向に突出して被嵌合部3cに嵌合している。したがって、マグネット3にトルクが加わっても、嵌合部9d,9cが被嵌合部3d,3cに嵌合した状態が維持され、マグネット3がコア6に対して回転しないように保持されたままとなる。したがって、ロータ1aの信頼性をより長く維持することができる。
【0064】
このように、ロータ1aは、接着のみによる方法とは異なり、機械的な固定方法を利用した方法で組み立てられている。このため、例えば高温の環境、高温と低温のサイクルが繰り返される環境、大幅な温度変化が頻繁に発生するような環境下でモータ1が利用される場合や、様々な振動がモータ1に加わるような環境下でモータ1が利用される場合であっても、従来と比較して、モータ1の信頼性を向上させることができる。
【0065】
例えば、エンジンを用いた車両等において、エンジンルーム内やエンジンに近い位置で用いられるアクチュエータにモータ1が用いられる場合には、モータ1は高温にさらされる。しかも、このような状況下において、モータ1が駆動される際に発熱すると、モータ1の温度がセ氏200度近くまで上昇してしまうことがある。また、このような車両では、エンジンの振動や車両の走行時に発生する振動が強く発生することがある。このような場合において、従来の一般的な接着剤を用いた接着のみによりマグネットが固定されているロータでは、熱老化や、各部材が膨張・収縮を繰り返すことにより、マグネットを固定する接着剤自身にクラックが入り、マグネットの保持力が大幅に低下する。高温の温度域まで性能を発揮するような耐熱接着剤を用いればそのような熱老化による問題は発生しにくいが、製造コストが高騰する。他方、本発明の第1の実施の形態のような機械的な方法でマグネット3が取り付けられているロータ1aを用いる場合には、軸方向にマグネット3が固定されており、嵌合部9d,9cが被嵌合部3d,3cに嵌合することで周方向にマグネット3が固定されているため、上記のような問題の発生を抑止できる。機械的な方法に加えて接着剤を用いてマグネット3をコア6に固定している場合において、仮に接着剤の性能が損なわれたとしても、機械的な方法により、マグネット3がコア6に保持される。
【0066】
[その他]
リングの嵌合部とマグネットの被嵌合部との嵌合構造と、コアの嵌合部とマグネットの被嵌合部との嵌合構造とは、いずれか一方のみが設けられていてもよい。このような場合でも、マグネットがコアに対して回転しないように確実に保持することができる。
【0067】
リング又はコアと、マグネットとの嵌合構造は、いずれも設けられていなくてもよい。このような場合であっても、リングによりコアに対するマグネットの軸方向の位置が規制されるようにすることで、接着のみによる方法を用いるよりもロータの信頼性を向上させることができる。
【0068】
コアの突出部は、回転軸を囲む筒状のものに限られない。例えば、複数の突出部が、コアの面に、回転軸を囲むように環状に点在していても構わない。この場合、各々の突出部とコアの端面との間にリングが挟まれて固定されているようにしてもよい。
【0069】
閉じた平面形状を有するリングに代えて、他の開いた平面形状の金属部材を用いてもよい。例えば、金属部材は、環状部の一部分が欠けた、「C」字状等の部材であってもよい。また、金属部材は、1つの部材に限られず、複数の部材が突出部の周囲を囲むように配置され、それら各々の金属部材によりマグネットの位置が規制されるようにしてもよい。
【0070】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係るモータについて説明する。図13は、本発明の第2の実施の形態におけるモータ101を示す斜視図である。
【0071】
本発明の第2の実施の形態に係るモータ101は、上述した本発明の第1の実施の形態に係るモータ1におけるマグネット3及びコア6の構成に改良を加えたものであり、その他の部分の構成は同様である。そこで以下では、上述のモータ1と同様の又は類似する構成については同一の符号を付してその説明を省略し、異なる構成について説明する。
【0072】
図13に示されるように、モータ101は、円筒形状のハウジング111と、ハウジング111内に軸支されたロータ100aと、ロータ100aを囲むステータ112と、ロータ100aの回転位置を検出するためのセンサ113と、を備えている。
【0073】
なお、以下では、説明の便宜上、図中、モータ101のハウジング111から見てシャフト2が突出している上方向を「他方」、下方向を「一方」とする。
【0074】
ハウジング111は、その内部に、ロータ100aの一方側を回転可能に支える軸受114aと、ロータ100aの他方側を回転可能に支える軸受114bと、センサ113が搭載された基板115と、基板115を保持する台座119とを有している。ハウジング111の上端部には、ハウジング111の開口部111aを塞ぐブラケット117が設けられている。
【0075】
ロータ(モータ用ロータ)100aは、シャフト2と、コア106と、マグネット(リング状部材の一例であり、以下ではセンサマグネットと呼称する。)107と、マグネット108と、を備えている。このロータ100aの詳細については後述する。
【0076】
センサ113は、シャフト2の回転軸方向において、ロータ100aのセンサマグネット107と対向する基板115上の位置に設けられている。センサ113は、センサマグネット107が発する磁界を電気信号に変換して図示しないコントロールユニット等へ出力する。センサ113が磁界の変化に伴った電気信号を出力することにより、コントロールユニット等を介してロータ100aの回転位置及び回転数を検出することができる。
【0077】
図14は、モータ101を構成する部材の1つであるロータ100aを示す斜視図である。図15は、図14に示したロータ100aの分解斜視図である。図16は、図14のF-F線断面図である。図17は、図14のG-G線断面図である。
【0078】
図14及び図15に示されるように、ロータ100aは、回転軸であるシャフト2と、回転軸方向に延びる円柱状の部材であるコア106と、リング状に形成されたセンサマグネット107と、円筒状部材であるマグネット108と、を備えている。
【0079】
図15に示されるように、コア106は、回転軸方向における一方側の面である下面106b(一方の面)と、回転軸方向に延びて外側に面する外周面106cと、を有し、シャフト2を囲むように環状に形成されている。また、コア106は、回転軸方向において他方側へ突出する他方側突出部116と、センサマグネット107とマグネット108との間に位置するフランジ部126と、を有している。このフランジ部126は、コア106の回転軸方向における中央部に対して他方側突出部116に近い位置に設けられている。
【0080】
他方側突出部116は、他方側に面する上面116aと、回転軸方向に延びる外側に面する外周面116cと、内側に面してシャフト2を囲む面である内周面116dと、を有している。他方側突出部116の外径及びコア106の外径は、フランジ部126の外径よりも小さく設定されている。
【0081】
フランジ部126は、回転軸方向において対向する2つの面(上面126a、下面126b)と、上面126aと下面126bとの間で外側に面する外周面126cとによって画成されている。
【0082】
図15及び図16に示されるように、フランジ部126の上面126aには、センサマグネット107の回転を抑止するための第1係合部136が設けられている。この第1係合部136と係合する被第1係合部127がセンサマグネット107に設けられている。これら第1係合部136と被第1係合部127とが係合することで、フランジ部126の上面126aにおいて、センサマグネット107が他方側突出部116と係合している。この第1係合部136は、フランジ部126の上面126aから他方側へ突出した略直方体形状又は略立方体形状を有しており、当該第1係合部136の2つの面が他方側突出部116の外周面116c及びフランジ部126の上面126aに接触した状態で一体に設けられている。
【0083】
また、第1係合部136において、他方側突出部116の外周面116cから外側へ突出した長さは、他方側突出部116の外周面116cからフランジ部126の外周面126cまでの長さよりも短く設定されている。すなわち、第1係合部136の外側に面する面は、フランジ部126の外周面126cより内側に位置している。
【0084】
図15及び図17に示されるように、コア106の外周面106cには、マグネット108の回転を抑止するための第2係合部137が設けられている。この第2係合部137と係合する被第2係合部138がマグネット108の内周面に設けられている。これら第2係合部137と被第2係合部137とが係合することで、フランジ部126の下面126bにおいて、マグネット108がコア106と係合している。この第2係合部137は、フランジ部126の下面126bから一方側に突出した略直方体形状又は略立方体形状を有しており、当該第2係合部137の2つの面がフランジ部126の下面126b及びコア106の外周面106cに接触した状態で一体に設けられている。
【0085】
また、第2係合部137において、コア106の外周面106cから外側へ突出した長さは、コア106の外周面106cからフランジ部126の外周面126cまでの長さよりも短く設定されている。すなわち、第2係合部137の外側に面する面は、フランジ部126の外周面126cより内側に位置されている。
【0086】
図14及び図15に示されるように、センサマグネット107は、回転軸方向において対向する2つの面(上面107a、下面107b)と、上面107aと下面107bとの間で外側に面する外周面107cと、内側に面する内周面107dとを有し、他方側突出部116を囲むリング状の部材である。また、センサマグネット107は、フランジ部126の第1係合部136と係合される被第1係合部127を有している。
【0087】
このセンサマグネット107は、外径(径方向における外周部の大きさ)がフランジ部126の外径と同一又は略同一に設定されている。センサマグネット107の上面107aは、周方向に沿ってSNSN・・・と交互に異なる磁極が配置されるように着磁された永久磁石であり、センサマグネット107が回転することによりセンサ113と対向する位置の磁極が変化する。
【0088】
図15及び図16に示されるように、センサマグネット107の被第1係合部127は、センサマグネット107の内周面107dから外周面107cへ向かって凹む凹部であり、センサマグネット107の上面107aから下面107bにわたって切り欠かれた形状に形成されている。被第1係合部127の凹部を形成している周方向の長さは、第1係合部136の周方向の長さと同じ値に設定されている。また、被第1係合部127において内周面107dから外周面107cへ最も凹んだ部分の深さは、他方側突出部116の外周面116cから第1係合部136の外側に面する面までの長さと同じ、または僅かに大きく設定されている。すなわち、センサマグネット107の被第1係合部127に対して、フランジ部126の第1係合部136がかしめによって係合可能となっている。なお、かしめに代えて、回転かしめ(スピンかしめともいう)を行ってもよい。
【0089】
センサマグネット107の被第1係合部127は、センサマグネット107をコア106の他方側から他方側突出部116を介して一方側へ移動させることによりフランジ部126の第1係合部136と係合可能である。センサマグネット107の被第1係合部127がフランジ部126の第1係合部136と係合すると、センサマグネット107は他方側突出部116に対して固定され、センサマグネット107の回転を抑止できる。なお、センサマグネット107の被第1係合部127に対してフランジ部126の第1係合部136が係合されると、センサマグネット107の内周面107dが他方側突出部116の外周面116cと対向するとともに、センサマグネット107の外周面107cとフランジ部126の外周面126c、及び、センサマグネットの上面107aと他方側突出部116の上面116aとが面一状態となる。
【0090】
図14及び図15に示されるように、マグネット108は、回転軸方向において対向する2つの面(上面108a、下面108b)と、上面108aと下面108bとの間で外側に面する外周面108cと、内側に面する内周面108dと、を有し、コア106を囲む環状に形成されている。また、マグネット108は、フランジ部126の第2係合部137と係合する被第2係合部138を有している。このマグネット108の外径(径方向における外周部の大きさ)は、フランジ部126の外径と同一又は略同一の値に設定されている。
【0091】
図15及び図17に示されるように、マグネット108の被第2係合部138は、マグネット108の内周面108dから外周面108cへ向かって凹む凹部である。被第2係合部138は、マグネット108の上面108aから下面108bに向かって延びる長さがフランジ部126の下面126bから一方側へ突出した第2係合部137の長さと同じ、または僅かに大きく設定されている。また、被第2係合部138の凹部を形成している周方向の長さは、第2係合部137の周方向の長さと同じ値に設定されている。さらに、被第2係合部138において内周面108dから外周面108cへ向かって最も凹んだ部分の深さは、コア106の外周面106cから第2係合部137の外側に面する面までの長さと同じ、または僅かに大きく設定されている。すなわち、マグネット108の被第2係合部138に対して、フランジ部126の第2係合部137が接着剤等で連結可能となっている。
【0092】
マグネット108の被第2係合部138は、マグネット108をコア106の一方側から他方側へ移動させることにより第2係合部137と係合可能である。マグネット108の被第2係合部138がフランジ部126の第2係合部137と係合すると、マグネット108はコア106に対して固定され、マグネット108の回転は抑止される。なお、マグネット108の被第2係合部138に対してフランジ部126の第2係合部137が係合されると、マグネット108の内周面108dがコア106の外周面106cと対向するとともに、マグネット108の外周面108cと、フランジ部126の外周面126cと、センサマグネット107の外周面107cとが面一になる。
【0093】
このように、フランジ部126の第1係合部136がセンサマグネット107の被第1係合部127と接着剤等を用いて連結しており、フランジ部126の第2係合部137がマグネット108の被第2係合部138と接着剤等を用いて連結することにより、コア106の他方側にセンサマグネット107が配置されて取り付けられ、コア106の一方側にマグネット108が配置されて取り付けられる。
【0094】
このとき、フランジ部126の第1係合部136がセンサマグネット107の被第1係合部127と係合することにより、センサマグネット107のコア106に対する回転が抑止される。すなわち、センサマグネット107がコア106に対して周方向に回転することが抑止された状態で、他方側突出部116と係合される。また、フランジ部126の第2係合部137がマグネット108の被第2係合部138と係合することにより、マグネット108のコア106に対する回転が抑止される。すなわち、マグネット108がコア106に対して周方向に回転することが抑止された状態でコア106と係合される。
【0095】
さらに、フランジ部126に対して第1係合部136及び第2係合部137が設けられているため、センサマグネット107がフランジ部126の上面106aによって軸方向における一方側への移動が抑止され、マグネット108がフランジ部126の下面106bによって軸方向における他方側への移動が抑止されている。すなわち、フランジ部126によってセンサマグネット107及びマグネット108の回転軸方向への変位についても抑止されている。
【0096】
以上説明したように、センサマグネット107及びマグネット108のコア106に対する回転が抑止された状態で取り付けられることにより、簡易な構成によりセンサマグネット107及びマグネット108をコア106に対して回転を抑止した状態で固定することができる。
【0097】
因みに、接着のみによる方法を用いてセンサマグネット107及びマグネット108を固定すると、接着剤の老化によりセンサマグネット107及びマグネット108とコア106との相対的な位置がずれてしまい、センサ113によりロータ100aの回転位置や回転数を検出することができなくなる。すなわち、センサマグネット107とコア106との相対的な位置がずれると、ロータ100aとの位相差が生じてロータ100aの回転位置や回転数を正確に検出することができない。
【0098】
また、マグネット108とコア106との相対的な位置がずれると、ロータ100aの回転不足の原因となり、ロータ100aの信頼性を維持することが困難になる場合がある。他方、第2の実施の形態におけるロータ100aは、フランジ部126の第1係合部136がセンサマグネット107の被第1係合部127と係合し、フランジ部126の第2係合部137がマグネット108の被第2係合部138と係合することにより、センサマグネット107及びマグネット108のコア106に対する周方向における相対的な位置を維持した状態で固定している。このため、モータ101では、ロータ100aの信頼性を向上することができるとともに、センサ13により回転位置や回転数を正確に検出することができる。
【0099】
[変形例]
次に、図18及び図19を参照して、上述した本発明の第2の実施の形態に係るロータ100aの第1の変形例乃至第4の変形例について説明する。図18及び図19は、本発明の第2の実施の形態に係るロータ100aの変形例を示す拡大断面図であり、図18(a)は、図15に示すロータの第1の変形例であり、図18(b)は、図15に示すロータ100aの第2の変形例である。図19は(a)は、図15に示すロータ100aの第3の変形例であり、図19(b)は、図15に示すロータ100aの第4の変形例である。第1の変形例及び第2の変形例に係るロータにおいては、第1係合部及び被第1係合部の形状が異なり、第3の変形例及び第4の変形例では、第2係合部及び被第2係合部の形状が異なる。
【0100】
図18(a)に示されるように、第1の変形例に係るロータ200aは、他方側突出部116の外周面116cから外側へ突出した第1係合部236aと、当該第1係合部236aと係合する被第1係合部227aと、を有している。
【0101】
第1係合部236aは、略直方体形状又は略立方体形状を有しており、一方側に面する面がフランジ部126の上面126aから他方側へ向かって離れた位置に設けられている。すなわち、第1係合部236aは、1つの面のみが他方側突出部116の外周面116cに接触された状態で設けられている。
【0102】
被第1係合部227aは、センサマグネット107の内周面107dから外周面107cへ向かって凹む凹部であり、センサマグネット107の上面107aから下面107bにわたって形成されている。被第1係合部227aの凹部を形成している周方向の長さは、第1係合部236aの周方向の長さと同じ値に設定されている。また、被第1係合部227aにおいて内周面107dから外周面107cへ最も凹んだ部分の深さは、他方側突出部116の外周面116cから外側方向に突出した第1係合部236aの長さと同じ、または僅かに大きく設定されている。すなわち、センサマグネット107の被第1係合部227aに対して、他方側突出部116の第1係合部236aがかしめ又は回転かしめ(スピンかしめ)によって係合可能となっている。
【0103】
図18(b)に示されるように、第2の変形例に係るロータ200bは、フランジ部126の上面106aから他方側へ突出した第1係合部236bと、当該第1係合部236bと係合する被第1係合部227bと、を有している。
【0104】
第1係合部236bは、略直方体形状又は略立方体形状を有しており、内側へ面する面が他方側突出部116の外周面116cから離れて設けられている。すなわち、第1係合部236bは、1つの面のみがフランジ部126の上面126aに接触された状態で設けられている。
【0105】
被第1係合部227bは、センサマグネット107の内周面107dから外周面107cに向かって凹む凹部であり、センサマグネット107の上面107aから下面107bにわたって形成されている。被第1係合部227bの周方向の長さは、第1係合部236bの周方向の長さと同じ値に設定されている。また、被第1係合部227bにおいて内周面107dから外周面107cへ最も凹んだ部分の深さは、他方側突出部116の外周面116cから第1係合部236bの外側に面する面までの長さと同じ、または僅かに大きく設定されている。すなわち、センサマグネット107の被第1係合部227bに対して、フランジ部126の第1係合部236bがかしめ又は回転かしめ(スピンかしめ)によって係合可能となっている。
【0106】
図19(a)に示されるように、第3の変形例に係るロータ200cは、コア106の外周面106cから外側へ突出した第2係合部237cと、第2係合部237cと係合する被第2係合部238cと、を有している。
【0107】
第2係合部237cは、略直方体形状又は略立方体形状を有しており、他方側に面する面がフランジ部126の下面126bから一方側へ向かって離れた位置に設けられている。すなわち、第2係合部237cは、1つの面のみがコア106の外周面106cに接触された状態で設けられている。
【0108】
被第2係合部238cは、マグネット108の内周面108dから外周面108cへ向かって凹む凹部である。被第2係合部238cは、マグネット108の上面108aから下面108bに向かって延びる長さがフランジ部126の下面126bから第2係合部237cの一方側に面する面までの長さと同じ、または僅かに大きく設定されている。また、被第2係合部238cの凹部を形成している周方向の長さは、第2係合部237cの周方向の長さと同じ値に設定されている。また、被第2係合部238cにおいて内周面107dから外周面107cへ向かって最も凹んだ部分の深さは、コア106の外周面106cから第2係合部237cの外側に面する面までの長さと同じ、または僅かに大きく設定されている。すなわち、マグネット108の被第2係合部238cに対して、コア106の第2係合部237cがかしめ又は回転かしめ(スピンかしめ)によって係合可能となっている。
【0109】
図19(b)に示されるように、第4の変形例に係るロータ200dは、フランジ部126の下面126bから一方側へ突出した第2係合部237dと、当該第2係合部237dと係合する被第2係合部238dと、を有している。
【0110】
第2係合部237dは、略直方体形状又は略立方体形状を有しており、内側に面する面がコア106の外周面106cから離れて設けられている。すなわち、第2係合部237dは、1つの面のみがフランジ部126の下面126bに接触された状態で設けられている。
【0111】
被第2係合部238dは、マグネット108の内周面108dから外周面108cへ向かって凹む凹部である。被第2係合部238dは、マグネット108の上面108aから下面108bに向かって延びる長さがフランジ部126の下面126bから第2係合部237dの一方側に面する面までの長さと同じ、または僅かに大きく設定されている。また、被第2係合部238dの凹部を形成している周方向の長さは、第2係合部237dの周方向の長さと同じ値に設定されている。また、被第2係合部238dにおいて内周面108dから外周面108cへ向かって最も凹んだ部分の深さは、コア106の外周面106cから第2係合部237dの外側に面する面までの長さと同じ、または僅かに大きく設定されている。すなわち、マグネット108の被第2係合部238dに対して、コア106の第2係合部237dがかしめ又は回転かしめ(スピンかしめ)によって係合可能となっている。
【0112】
このように、第1係合部237aが被第1係合部227aに係合、又は、第1係合部237bが被第1係合部227bに係合するため、センサマグネット107をコア106に対して回転を抑止した状態で固定することができる。
【0113】
また、第2係合部237cが被第2係合部238cに係合、又は、第2係合部237dが被第2係合部238dに係合するため、マグネット108をコア106に対して回転を抑止した状態で固定することができる。
【0114】
[その他]
なお、上述した第2の実施の形態においては、第1係合部がフランジ部126の上面126aに設けられ、被第1係合部がセンサマグネット107に設けられている場合について説明したが、第1係合部がセンサマグネット107に設けられ被第1係合部がフランジ部126の上面106aに設けられていてもよい。すなわち、センサマグネット107の下面107bから一方側へ突出した略直方体形状又は略立方体形状の第1係合部と、フランジ部126の上面126aから下面126bへ向かって凹む凹部である被第1係合部により、他方側突出部116がセンサマグネット107と係合するように形成されていてもよい。また、センサマグネット107の内周面107dから内側へ突出した略直方体形状又は略立方体形状の第1係合部と、他方側突出部116の外周面116cから内側へ向かって凹む凹部である被第1係合部により他方側突出部116がセンサマグネット107と係合するように形成されていてもよい。
【0115】
また、上記の第2の実施の形態においては、第2係合部がフランジ部126の下面126bに設けられ、被第2係合部がマグネット108に設けられている場合について説明したが、第2係合部がマグネット108に設けられ被第2係合部がフランジ部126の下面126bに設けられていてもよい。すなわち、マグネット108の上面108aから他方側へ突出した略直方体形状又は略立方体形状の第2係合部と、フランジ部126の下面126bから他方側へ向かって凹む凹部である被第2係合部により、コア106がマグネット108と係合するように形成されていてもよい。また、マグネット108の内周面108dから内側へ突出した略直方体形状又は略立方体形状の第1係合部と、コア106の外周面106cから内側へ向かって凹む凹部である被第1係合部によりコア106がマグネット108と係合するように形成されていてもよい。
【0116】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0117】
1 モータ
1a ロータ
2 シャフト(回転軸の一例)
3 マグネット
3c,3d 被嵌合部
6 コア(磁性体の一例)
6a フランジ部
6b コアの下面
6c 嵌合部
6e 突出部
6f 筒部
6g 凹み
6h 頭部
9 リング(金属部材の一例)
9a 環状部
9d 嵌合部
11 ハウジング
12 ブラケット
100a ロータ
101 モータ
106 コア
107 センサマグネット
108 マグネット
111 ハウジング
112 ステータ
113 センサ
115 基板
116 他方側突出部
126 フランジ部
127 被第1係合部
136 第1係合部
137 第2係合部
138 被第2係合部
200a,200b,200c,200d ロータ
227a,227b 被第1係合部
236a,236b 第1係合部
237c,237d 第2係合部
238c,238d 被第2係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図11
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