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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】医療用長尺体および医療用長尺体セット
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20220607BHJP
   A61M 39/06 20060101ALI20220607BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20220607BHJP
   A61M 25/01 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
A61M25/06 550
A61M39/06 110
A61M39/06 122
A61M25/00 650
A61M25/01
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018567496
(86)(22)【出願日】2018-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2018004439
(87)【国際公開番号】W WO2018147380
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2017023529
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大内 竜也
(72)【発明者】
【氏名】岡村 遼
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-215026(JP,A)
【文献】特開2009-189861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
A61M 39/06
A61M 25/00
A61M 25/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体管腔に挿入可能なチューブ体と、
前記チューブ体の内腔と連通する内部空間を有し、前記チューブ体の基端部に配置されたハブと、
前記内部空間に配置されており、挿通部を有する弁体と、
前記弁体と当接することによって前記弁体を前記内部空間に固定するとともに、前記挿通部を介して前記内部空間と連通可能な基端開口部を備えたキャップ部材と、を有し、
前記キャップ部材は、前記チューブ体に挿入される医療器具を前記弁体に導くマーカー部を備え、
前記マーカー部は、当該マーカー部の周囲と識別可能な色彩を有し、
前記挿通部は、前記弁体において前記チューブ体の基端側に臨む基端面に設けられており、前記基端側に開口する基端側スリットと、前記弁体において前記チューブ体の先端側に臨む先端面に設けられており、前記先端側に開口する先端側スリットと、前記基端側スリットと前記先端側スリットとが交差する箇所に形成される挿通孔と、を有し、
前記基端側スリットと前記先端側スリットとを識別可能なスリット識別部をさらに有する、医療用長尺体。
【請求項2】
生体管腔に挿入可能なチューブ体と、
前記チューブ体の内腔と連通する内部空間を有し、前記チューブ体の基端部に配置されたハブと、
前記内部空間に配置されており、挿通部を有する弁体と、
前記弁体と当接することによって前記弁体を前記内部空間に固定するとともに、前記挿通部を介して前記内部空間と連通可能な基端開口部を備えたキャップ部材と、を有し、
前記キャップ部材は、前記チューブ体に挿入される医療器具を前記弁体に導くマーカー部を備え、
前記マーカー部は、当該マーカー部の周囲と識別可能な色彩を有する、医療用長尺体と、
前記医療用長尺体の内腔に挿入可能なダイレーターと、を有し、
前記医療用長尺体は、イントロデューサー用シースであり、
前記ダイレーターの先端部には、周囲と識別可能な色彩を有する先端マーカー部が設けられている、医療用長尺体セット。
【請求項3】
生体管腔に挿入可能なチューブ体と、
前記チューブ体の内腔と連通する内部空間を有しており、前記チューブ体の基端部に配置されたハブと、
前記内部空間に配置されており、挿通部を有する弁体と、
前記弁体と当接することによって前記弁体を前記内部空間に固定するとともに、前記挿通部を介して前記内部空間と連通可能な基端開口部を備えたキャップ部材と、を有し、
前記弁体は、前記チューブ体に挿入される医療器具を前記挿通部に導くマーカー部を備え、
前記マーカー部は、当該マーカー部の周囲と識別可能な色彩を有し、
前記挿通部は、前記弁体において前記チューブ体の基端側に臨む基端面に設けられており、前記基端側に開口する基端側スリットと、前記弁体において前記チューブ体の先端側に臨む先端面に設けられており、前記先端側に開口する先端側スリットと、前記基端側スリットと前記先端側スリットとが交差する箇所に形成される挿通孔と、を有し、
前記基端側スリットと前記先端側スリットとを識別可能なスリット識別部をさらに有する、医療用長尺体。
【請求項4】
生体管腔に挿入可能なチューブ体と、
前記チューブ体の内腔と連通する内部空間を有しており、前記チューブ体の基端部に配置されたハブと、
前記内部空間に配置されており、挿通部を有する弁体と、
前記弁体と当接することによって前記弁体を前記内部空間に固定するとともに、前記挿通部を介して前記内部空間と連通可能な基端開口部を備えたキャップ部材と、を有し、
前記弁体は、前記チューブ体に挿入される医療器具を前記挿通部に導くマーカー部を備え、
前記マーカー部は、当該マーカー部の周囲と識別可能な色彩を有する、医療用長尺体と、
前記医療用長尺体の内腔に挿入可能なダイレーターと、を有し、
前記医療用長尺体は、イントロデューサー用シースであり、
前記ダイレーターの先端部には、周囲と識別可能な色彩を有する先端マーカー部が設けられている、医療用長尺体セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体管腔に挿入可能なチューブ体を備えた医療用長尺体および医療用長尺体セットに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野では、各種のカテーテル等の医療デバイスを経皮的に生体内に導入する際、生体管腔に挿入可能なチューブ体を有する医療用長尺体が用いられる。例えば、医療用長尺体は、生体管腔に挿入可能なチューブ体と、チューブ体の基端部に配置されたハブと、ハブの内部に配置された弁体と、を備えたイントロデューサー用シースである。
【0003】
イントロデューサー用シースは、生体内と生体外を繋ぐアクセス経路を形成するため、チューブ体の先端側から経皮的に生体管腔に導入される。この際、イントロデューサー用シースは、チューブ体の剛性を高めるため、イントロデューサー用シースの内腔にダイレーター(医療器具)が挿入される。また、イントロデューサー用シースは、チューブ体の先端側が生体管腔に導入され、かつ、チューブ体の基端側が生体外部に露出された状態で(生体内と生体外を繋ぐアクセス経路を形成した状態で)、ガイドワイヤーやカテーテル等の医療器具が挿入される。
【0004】
上述した通り、医師等の術者は、イントロデューサー用シースを使用する際、チューブ体の内部に配置された弁体を介して、医療器具をチューブ体の内腔に挿入する。この際、術者は、医療器具の先端部が弁体以外の箇所に接触して医療器具が損傷することなどを防止するために、医療器具の先端部が弁体の中心付近にくるように、注意を払う必要がある。このことは、弁体を介して医療器具をチューブ体の内腔に挿入する作業を迅速に行う上で一つの障害となっている。例えば、医療器具を弁体に導くためのデバイスを備えた医療用長尺体として、特許文献1に記載されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-208428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記医療用長尺体の場合、上記デバイスの分だけ部品点数が増え、医療用長尺体全体の構造が複雑になる。そのため、医療用長尺体の製造コストが増加するなどの問題がある。
【0007】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、弁体を介して医療器具をチューブ体の内腔に挿入する作業を迅速に行うことができる簡便な構造を備えた医療用長尺体および医療用長尺体セットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の医療用長尺体は、生体管腔に挿入可能なチューブ体と、チューブ体の内腔と連通する内部空間を有しており、チューブ体の基端部に配置されたハブと、内部空間に配置されており、挿通部を有する弁体と、弁体を固定するキャップ部材と、を有する。キャップ部材は、弁体と当接することによって弁体を内部空間に固定するとともに、挿通部を介して内部空間と連通可能な基端開口部を備えている。キャップ部材は、チューブ体に挿入される医療器具を弁体に導くマーカー部をさらに備える。マーカー部は、マーカー部の周囲と識別可能な色彩を有し、キャップ部材は、基端開口部を形成する誘導壁面部を有し、誘導壁面部は、チューブ体の基端側から先端側に向かって傾斜した傾斜部を備え、マーカー部は、傾斜部に配置される。
【0009】
また、上記目的を達成するための本発明の医療用長尺体は、生体管腔に挿入可能なチューブ体と、チューブ体の内腔と連通する内部空間を有しており、チューブ体の基端部に配置されたハブと、内部空間に配置されており、挿通部を有する弁体と、弁体と当接することによって弁体を内部空間に固定するとともに、挿通部を介して内部空間と連通可能な基端開口部を備えたキャップ部材と、を有する。弁体は、チューブ体に挿入される医療器具を挿通部に導くマーカー部をさらに備える。マーカー部は、マーカー部の周囲と識別可能な色彩を有する。挿通部は、弁体においてチューブ体の基端側に臨む基端面に設けられており、基端側に開口する基端側スリットと、弁体においてチューブ体の先端側に臨む先端面に設けられており、先端側に開口する先端側スリットと、基端側スリットと先端側スリットとが交差する箇所に形成される挿通孔と、を有し、基端側スリットと先端側スリットとを識別可能なスリット識別部をさらに有する。
【0010】
また、上記目的を達成するための本発明の医療用長尺体セットは、上記医療用長尺体と、医療用長尺体の内腔に挿入可能なダイレーターと、を有する。医療用長尺体は、イントロデューサー用シースであり、ダイレーターの先端部には、周囲と識別可能な色彩を有する先端マーカー部が設けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る医療用長尺体および医療用長尺体セットによれば、術者は、弁体を介してチューブ体の内腔に医療器具を挿入する際に、マーカー部を視認することによって、止血弁の位置を容易に把握できる。そのため、術者は、マーカー部が指し示す位置を狙うことによって、医療器具の先端部を止血弁の中心付近に容易に誘導できる。従って、弁体を介して医療器具をチューブ体の内腔に挿入する作業を迅速に行うことができる簡便な構造を備えた医療用長尺体および医療用長尺体セットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1に係るイントロデューサーセットを示す図である。
図2】実施形態1に係るイントロデューサー用シースの断面図である。
図3図2の破線部3を拡大して示す図である。
図4】実施形態1に係るイントロデューサー用シースの平面図である。
図5】実施形態1の変形例1に係るイントロデューサーセットを示す図3に対応する拡大図である。
図6】実施形態1の変形例1に係るイントロデューサー用シースの平面図である。
図7】実施形態1の変形例2に係るイントロデューサー用シースの平面図である。
図8】実施形態2に係るイントロデューサー用シースの平面図である。
図9】実施形態2の変形例に係るイントロデューサー用シースの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
以下、各図を参照して本実施形態に係るイントロデューサーセット10を説明する。
【0014】
図1~4は、イントロデューサーセット10の各部を説明するための図である。
【0015】
図1および図3を参照して、本明細書では、イントロデューサー用シース20のカテーテル本体110にダイレーター30が挿入された状態のイントロデューサーセット10を、イントロデューサー組立体と称する。イントロデューサー組立体において、イントロデューサー用シース20のハブ120およびダイレーター30のダイレーターハブ32が配置される側(図1中の上側)を「基端側」と称する。イントロデューサー組立体において基端側とは反対側に位置し、生体管腔内に導入される側(図1中の下側)を「先端側」と称する。また、イントロデューサー用シース20およびダイレーター30が延伸する方向(図1中の上下方向)を「軸方向」と称する。また、「先端部」とは、先端(最先端)およびその周辺を含む一定の範囲を意味し、「基端部」とは、基端(最基端)およびその周辺を含む一定の範囲を意味するものとする。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係るイントロデューサーセット10は、イントロデューサー用シース20(医療用長尺体に相当)と、ダイレーター30(医療器具に相当)と、を有している。以下、イントロデューサー用シース20およびダイレーター30について詳説する。
【0017】
イントロデューサー用シース20は、血管等の生体管腔に留置され、生体内と生体外を繋ぐアクセス経路を形成する。例えば、イントロデューサー用シース20は、生体管腔に留置された状態で、その内腔111にカテーテル、ガイドワイヤー等の医療器具を挿通して、それらを生体管腔に挿入するために使用される。なお、生体管腔に挿入したガイドワイヤー、カテーテル等を使用して、経皮的冠動脈形成術(PTCA/PCI)などの手技(以下、目的の手技)を行うことができる。経皮的冠動脈形成術のアプローチ法として、足の血管からイントロデューサー用シース20を導入するTFI(Trans Femoral intervention)や腕の血管からイントロデューサー用シース20を導入するTRI(Trans Radial intervention)がある。
【0018】
図2を参照して、本実施形態に係るイントロデューサー用シース20は、生体管腔に挿入可能なカテーテル本体110(チューブ体に相当)と、カテーテル本体110の内腔111と連通する内部空間121を有しており、カテーテル本体110の基端部114に配置されたハブ120と、内部空間121に配置されており、挿通部131を有する止血弁130(弁体に相当)と、止血弁130を固定するキャップ140(キャップ部材に相当)と、カテーテル本体110の基端側の所定範囲を囲むストレインリリーフ150と、を有する。
【0019】
図2を参照して、カテーテル本体110は、内腔111を有する略円筒形状の管状部材で構成されている。カテーテル本体110は、テーパー状の先端部112と、先端部112の基端側に位置する本体部113と、本体部113の基端側に位置し、ハブ120に連結された基端部114と、を有している。
【0020】
カテーテル本体110の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、またはこれら二種以上の混合物など)、ポリオレフィンエラストマー、ポリオレフィンの架橋体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの高分子材料またはこれらの混合物などを用いることができる。
【0021】
カテーテル本体110の外表面115には、湿潤時に表面潤滑性を付与する親水性潤滑層116が配置されている。
【0022】
親水性潤滑層116を構成する材料は、水性溶媒との接触時に親水性及び膨潤性を示す材料である。親水性潤滑層116を構成する材料は、水性溶媒との接触時に親水性及び膨潤性を示す材料であれば特に制限されず、公知の材料が使用できる。
【0023】
ハブ120は、内部空間121と、内部空間121に連通するサイドポート122と、を有する。
【0024】
内部空間121は、カテーテル本体110の内腔111と連通する。内部空間121には、止血弁130が配置される。
【0025】
サイドポート122には、可撓性を有するチューブ71(図1を参照)の一端が液密に接続される。チューブ71の他端は、三方活栓72が装着される。サイドポート122は、三方活栓72のポートからチューブ71を介してカテーテル本体110の内腔111に、例えば生理食塩水のような液体を注入することが可能となっている。チューブ71は、例えば、ポリ塩化ビニル製の公知のチューブで構成することができる。
【0026】
ハブ120には、後述するダイレーターハブ32が外側から嵌合する(図3参照)。ハブ120は、ダイレーターハブ32の係合爪172に係合する係合溝171を有する。係合溝171は、ハブ120の外表面128からカテーテル本体110の中心側に向かって凹んだ形状を備える。係合溝171は、カテーテル本体110の周方向に沿って、環状に形成されている。
【0027】
ハブ120の構成材料としては、特に限定されないが、硬質樹脂のような硬質材料が好適である。硬質樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0028】
止血弁130は、ハブ120の内部空間121に配置されている。止血弁130は、ハブ120の基端部126に取り付けられている。止血弁130は、略楕円形の膜状(円盤状)である。止血弁130は、カテーテル本体110内に流れ込んだ血液が外部へ漏洩するのを防止する。
【0029】
止血弁130は、挿通部131を有する。挿通部131は、ダイレーター30や目的の手技に使用するカテーテルやガイドワイヤーなどの医療器具を挿通自在に構成される。
【0030】
止血弁130は、カテーテル本体110の基端側に臨む基端面132と、カテーテル本体110の先端側に臨む先端面133と、を有する。
【0031】
止血弁130の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、弾性部材であるシリコーンゴム、ラテックスゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム等が挙げられる。
【0032】
カテーテル本体110の基端部114は、ハブ120の連結部127に固定されている。カテーテル本体110の基端部114とハブ120の連結部127とは、例えば、接着剤により固定することができる。
【0033】
キャップ140は、止血弁130と当接し、ハブ120とキャップ140の間で止血弁130を挟持することで、止血弁130を内部空間121に固定する。例えば、図2に示すように、キャップ140は、ハブ120の凹部に配置された止血弁130と当接することによって、止血弁130を内部空間121に固定する。キャップ140は、挿通部131を介して内部空間121と連通可能な基端開口部141を備えている。
【0034】
ストレインリリーフ150は、カテーテル本体110およびハブ120に対して外嵌されている。ストレインリリーフ150は、ハブ120の先端部125を覆い、かつ、カテーテル本体110の基端側の所定範囲を囲んでいる。
【0035】
ストレインリリーフ150の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0036】
次に、図1および図3を参照して、ダイレーター30について説明する。
【0037】
ダイレーター30は、ダイレーター本体31と、ハブ120と接続可能に構成されたダイレーターハブ32と、を有している。
【0038】
ダイレーター本体31は、カテーテル本体110の内腔111に挿入可能であり、内腔31aを有する略円筒形状の管状部材で構成されている。内腔31aは、ガイドワイヤー等の医療器具が挿通自在に構成されている。ダイレーター本体31の先端部31bは、先端側へ向けて先細るテーパー形状に形成している。
【0039】
ダイレーターハブ32は、ダイレーター本体31がカテーテル本体110の内腔111に挿入された状態において、カテーテル本体110のハブ120に接続する。ダイレーターハブ32は、カテーテル本体110の外側からカテーテル本体110のハブ120に嵌合する。ダイレーターハブ32は、カテーテル本体110のハブ120の係合溝171に係合する係合爪172を有する。
【0040】
ダイレーター本体31は、イントロデューサー用シース20のハブ120とダイレーターハブ32とが接続された状態において、その先端部31bが、カテーテル本体110の先端部112から突出した状態となる。
【0041】
イントロデューサー用シース20は、ダイレーター本体31がカテーテル本体110の内腔111に挿入され、ダイレーター本体31の先端部31bがカテーテル本体110の先端部112から突出したイントロデューサー組立体の状態において、生体管腔に挿入される。これにより、イントロデューサー用シース20は、イントロデューサー組立体を生体管腔に挿入する際に、ダイレーター本体31の先端部31bにより皮膚の穿孔を広げるとともに、カテーテル本体110が折れることを防止できる。
【0042】
ダイレーター本体31を構成する材料は、特に制限されず、ダイレーター本体31として従来使用されるのと同様の材料を使用できる。具体的には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系ポリマーなどが挙げられる。
【0043】
ダイレーターハブ32の構成材料としては、特に限定されないが、硬質樹脂のような硬質材料が好適である。硬質樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0044】
次に、図3および図4を参照して、止血弁130およびキャップ140について詳説する。
【0045】
キャップ140は、カテーテル本体110に挿入される医療器具を弁体に導くマーカー部160を備える。マーカー部160は、マーカー部160の周囲と色知覚的に識別可能な色彩を有する。マーカー部160の色彩は、色彩の種類は特に限定されず、マーカー部160の周囲の色彩と異なっていればよい。なお、マーカー部160の色彩は、マーカー部の視認性を向上させるため、マーカー部160の周囲の色彩及び止血弁130の色彩と異なることが好ましい。例えば、止血弁130の色が無色透明、キャップ140の色が緑色の場合、マーカー部160の色を白色とすることができる。マーカー部160の色とキャップ140の色との間の色相差は大きい方が好ましく、マーカー部160の色を、キャップ140の色の補色としてもよい。
【0046】
術者は、マーカー部160を視認することにより、止血弁130を介してカテーテル本体110の内腔111に医療器具を挿入する際に、止血弁130の中心側に向けて医療器具を容易にセンタリングできる。なお、止血弁130の中心側とは、カテーテル本体110から挿通孔136に向かう方向をいう。
【0047】
マーカー部160は、平面視において、カテーテル本体110の径方向における止血弁130の中心部を基準にして点対称の形状を有する。例えば、図4では、上述のカテーテル本体110の径方向における止血弁130の中心部は、挿通孔136である。マーカー部160は、平面視において、リング状の形状を有する。本実施形態において、マーカー部160の中心側の端部161は、カテーテル本体110の周方向に沿って、マーカー部160の先端側の周縁部を形成している。
【0048】
マーカー部160は、基端開口部141を介して視認可能な止血弁130の表面132aを囲むようにキャップ140に配置される。基端開口部141を介して視認可能な止血弁130の表面132aとは、止血弁130の基端面132の領域のうち、イントロデューサー用シース20を平面視した際に、基端開口部141から視認可能な領域をいう。
【0049】
キャップ140は、基端開口部141を形成する誘導壁面部142を有する。誘導壁面部142は、基端側から先端側に向かって傾斜した傾斜部143を備える。マーカー部160は、傾斜部143に配置される。
【0050】
挿通部131は、基端面132に配置されており、基端側に開口する基端側スリット134と、先端面133に配置されており、先端側に開口する先端側スリット135と、を有する。挿通部131は、基端側スリット134と、先端側スリット135と、が交差する箇所に、挿通孔136を有する。医療器具は、挿通孔136を介してカテーテル本体110の内腔111に挿入される。
【0051】
誘導壁面部142の全面は、基端側から先端側に向かう曲面で構成されている。マーカー部160の中心側の端部161(周縁部)は、挿通部131を構成するスリット134、135の端部134a、135aよりも止血弁130の中心側に配置される。
【0052】
マーカー部160の中心側の端部161(周縁部)は、止血弁130に接する。具体的には、キャップ140に配置されたマーカー部160は、キャップ140が弾性を有する止血弁130を押圧することにより、止血弁130に接する。また、キャップ140に配置されたマーカー部160は、後述する突起部144を覆うように配置されることにより、キャップ140が止血弁130に当接する際、止血弁130に接する。
【0053】
キャップ140は、止血弁130へ向かって突出して止血弁130の中心を先端側へ凹むように押圧する突起部144を有する。止血弁130の基端面132は、突起部144によって凹状に湾曲した湾曲面132bを備える。誘導壁面部142の曲面は、湾曲面132bとなだらかに連続する。
【0054】
図1を参照して、ダイレーター30の先端部31bには、周囲と色知覚的に識別可能な色彩を有する先端マーカー部33が設けられている。先端マーカー部33の色は、例えば、ダイレーター本体31の色が青色の場合、赤色とすることができる。
【0055】
本実施形態に係るイントロデューサー用シース20によれば、キャップ140は、カテーテル本体110に挿入される医療器具を止血弁130に導くマーカー部160を備える。マーカー部160は、マーカー部160の周囲と識別可能な色彩を有する。これにより、術者は、止血弁130を介してカテーテル本体110の内腔111に医療器具(ダイレーター30や、目的の手技に使用するカテーテル、ガイドワイヤーなど)を挿入する際に、マーカー部160を視認することによって、止血弁130の位置を容易に把握できる。そのため、術者は、マーカー部160が指し示す位置を狙うことによって、医療器具の先端部を止血弁130の中心付近に容易に誘導できる。従って、止血弁を介して医療器具をカテーテル本体の内腔に挿入する作業を迅速に行うことができる簡便な構造を備えたイントロデューサー用シースを提供できる。
【0056】
また、術者が、医療器具の先端部を止血弁130の中心付近に容易に誘導できることにより、次のことも可能になる。すなわち、術者が、止血弁130を介して医療器具をカテーテル本体110の内腔111に挿入する際に、医療器具の最先端が止血弁130以外の箇所に接触することも軽減できる。そのため、止血弁130以外の箇所への接触に起因する医療器具の先端部の損傷を抑制できる。
【0057】
特に、術者は、イントロデューサー組立体を形成する際に、ダイレーター30の先端部31bをマーカー部160に位置合わせすることにより、ダイレーター30の先端部31bが止血弁130以外の箇所に接触することに起因するダイレーター30の損傷を簡便に抑制できる。また、術者は、イントロデューサー組立体を形成する際、止血弁130以外の箇所にダイレーター30が接触しないように注意を払う必要性が軽減されるため、手技中の手間が軽減され、手技に集中することができる。
【0058】
また、本実施形態に係るイントロデューサー用シース20によれば、マーカー部160は、基端開口部141を介して視認可能な止血弁130の表面132aを囲むようにキャップ140に配置される。これにより、術者は、イントロデューサー用シース20の手元側にあるマーカー部160を視認することによって、止血弁130の位置をより容易に把握できる。そのため、術者は、医療器具の先端部を止血弁130の中心付近により容易に誘導できる。
【0059】
また、本実施形態に係るイントロデューサー用シース20によれば、マーカー部160は、誘導壁面部142の傾斜部143に配置される。これにより、万が一、医療器具の先端部が、止血弁130の中心付近からマーカー部160側にずれてしまっても、医療器具の先端部は、傾斜部143に接触することになる。そして、傾斜部143に接触した医療器具の先端部は、傾斜部143に沿って止血弁130へと導かれるから、医療器具の損傷を抑制できる。そのため、医療器具の先端部が止血弁130以外の箇所に接触しないように、術者が注意を払う必要性が軽減される。その結果、止血弁130を介して医療器具をカテーテル本体110の内腔111に挿入する作業をさらに迅速に行うことができる。
【0060】
また、止血弁130に向かって傾斜する傾斜部143は、平面視で視認しやすい。そのため、術者がマーカー部160の位置を容易に把握でき、医療器具とマーカー部160との位置合わせが容易になる。
【0061】
また、本実施形態に係るイントロデューサー用シース20によれば、マーカー部160の中心側の端部161は、挿通部131を構成するスリット134、135の端部134a、135aよりも止血弁130の中心側に配置される。これにより、術者が止血弁130を介してカテーテル本体110の内腔111に医療用具を挿入する際、医療器具とマーカー部160との位置合わせをすることで、医療器具の先端部がスリット134、135の端部134a、135aに接触し、止血弁130の挿通部131が損傷することを抑制することができる。
【0062】
特に、術者がイントロデューサー組立体を形成する際、術者は、マーカー部160を目印とすることでスリット134、135の位置を容易に把握できるため、ダイレーター30の先端部31bが止血弁130の挿通部131以外の箇所に接触することに起因する止血弁130の損傷を簡便に抑制できる。
【0063】
また、誘導壁面部142の全面は、基端側から先端側に向かう曲面で構成されている。そのため、万が一、誘導壁面部142に医療器具が接触しても、医療器具が損傷することを抑制できる。
【0064】
また、本実施形態に係るイントロデューサー用シース20によれば、マーカー部160の中心側の端部161は、止血弁130に接する。これにより、術者は、マーカー部160を視認することによって、止血弁130と止血弁130以外の部分との間の境界をより明確に区別できる。そのため、術者は、マーカー部160が指し示す位置を狙うことによって、医療器具の先端部を止血弁130の中心付近にさらに容易に誘導できる。
【0065】
また、本実施形態に係るイントロデューサー用シース20とダイレーター30のセットによれば、医療用長尺体は、イントロデューサー用シース20であり、ダイレーター30の先端部31bには、周囲と識別可能な色彩を有する先端マーカー部33が設けられている。これにより、術者が、カテーテル本体110の内腔111にダイレーター30を挿入してイントロデューサー組立体を形成する際、イントロデューサー用シース20のマーカー部160とダイレーター30の先端マーカー部33を位置合わせすることにより、ダイレーター30の先端部31bを止血弁130の中心付近にさらに容易に誘導できる。
【0066】
また、本実施形態に係るイントロデューサー用シースによれば、キャップ140は、止血弁130へ向かって突出して止血弁130の中心を先端側へ凹むように押圧する突起部144を有する。止血弁130の基端面132は、突起部144によって凹状に湾曲した湾曲面132bを備える。そして、誘導壁面部142の曲面は、湾曲面132bとなだらかに連続する。これにより、医療器具は、万が一、止血弁130の挿通部131以外の箇所または誘導壁面部142に接触した場合であっても、誘導壁面部142からなだらかに連続する湾曲面132bにガイドされ、挿通する際の抵抗力が小さい止血弁130の中央部へと導かれる。そのため、医療器具および止血弁130の損傷を抑制できる。
【0067】
(変形例1)
上述した実施形態では、ダイレーター30は、イントロデューサー用シース20の外側に嵌合した。しかしながら、ダイレーター30は、イントロデューサー用シース20の内側に嵌合してもよい。
【0068】
図5は、本変形例に係るイントロデューサーセットを示す図3に対応する拡大図である。図6は、本変形例に係るイントロデューサー用シースの平面図である。
【0069】
本変形例に係るイントロデューサーセットにおいて、キャップ140は、ダイレーターハブ32の係合爪282に係合する係合爪281を有する。係合爪281は、キャップ140の基端開口部141において、カテーテル本体110の中心側に向かって突出している。
【0070】
ダイレーターハブ32は、キャップ140の係合爪281に係合する係合爪282を有する。係合爪282は、ダイレーターハブ32において先端側に臨む面から突出しており、軸方向に沿って延びている。
【0071】
誘導壁面部142は、基端開口部141を形成する傾斜部243を有する。傾斜部243は、第1傾斜部243aと、第1傾斜部243aよりも先端側に形成された第2傾斜部243bと、を有する。第1傾斜部243aは、イントロデューサー用シース20の係合爪281として機能する。第2傾斜部243bは、第1傾斜部243aよりも、カテーテル本体110の中心側に突出している。
【0072】
マーカー部260は、第1傾斜部243aに配置された第1マーカー部261と、第2傾斜部243bに配置された第2マーカー部262と、を有する。
【0073】
第1マーカー部261と第2マーカー部262とは、互いに色知覚的に識別可能な色彩を有しているが、同じ色彩であってもよい。第1マーカー部261の色は、例えば、黒色とすることができ、第2マーカー部262の色は、白色とすることができる。
【0074】
第1マーカー部261および第2マーカー部262は、基端開口部141を介して視認可能な止血弁130の表面132aを囲むように配置されている。第1マーカー部261と第2マーカー部262は、平面視において、リング形状を備える。本変形例において、マーカー部262の中心側の端部262aは、カテーテル本体110の周方向に沿って、マーカー部260の先端側の周縁部を形成している。
【0075】
第2マーカー部262の中心側の端部262a(周縁部)は、挿通部131を構成するスリット134、135の端部134a、135aよりも止血弁130の中心側に配置される。
【0076】
第2マーカー部262の中心側の端部262a(周縁部)は、止血弁130に接する。
【0077】
本変形例によっても、上述した実施形態に係るイントロデューサーセット10と同様の作用・効果を奏する。
【0078】
(変形例2)
また、マーカー部は、複数の色彩を有してもよい。
【0079】
図7は、本変形例に係るイントロデューサー用シースの平面図である。
【0080】
本変形例に係るイントロデューサー用シースのマーカー部360は、第1領域361と、第1領域361と異なる色を有する第2領域362と、を備える。
【0081】
第1領域361の構成は、第2領域362が配置されていることを除いて、上述した実施形態に係るマーカー部160の構成と同じである。
【0082】
第2領域362は、第1領域361の所定位置において、止血弁130の放射方向に配置されている。また、第2領域362の幅Lは、キャップ140の外周から止血弁130に向かって小さくなっている。本明細書において、「幅」とは、カテーテル本体110の周方向に沿う第2領域362の長さを意味する。
【0083】
本変形例に係るイントロデューサー用シースによれば、マーカー部360の視認性が向上する。そのため、マーカー部360を設けるという簡便な構造によって、医療器具の先端部を止血弁130の中心付近にさらに容易に誘導できる。
【0084】
なお、マーカー部360を構成する色彩の種類は、上述した2種類の場合に限られず、3種類以上であってもよい。
【0085】
また、上述した変形例1の第1マーカー部261および/または第2マーカー部262を、本変形例に係るマーカー部360と同様に構成してもよい。
【0086】
(実施形態2)
上述した実施形態およびその変形例では、マーカー部160は、キャップ140に設けられた。しかしながら、マーカー部は、止血弁130に設けてもよい。
【0087】
本実施形態に係るイントロデューサーセットの構成は、マーカー部の構成を除いて、上述した実施形態およびその変形例と同様であるため、マーカー部以外の説明を省略する。
【0088】
図8は、本実施形態に係るイントロデューサー用シースの平面図である。
【0089】
図8を参照して、止血弁130は、カテーテル本体110に挿入される医療器具を挿通部131に導くマーカー部460を有する。
【0090】
マーカー部460は、マーカー部460の周囲と色知覚的に識別可能な色彩を有する。マーカー部460は、色彩の種類は特に限定されず、例えば、止血弁130の色が無色透明、キャップ140の色が緑色の場合、マーカー部160の色を白色とすることができる。
【0091】
マーカー部460は、止血弁130の湾曲面132b(図2参照)において、止血弁130の挿通孔136を囲むように設けられている。
【0092】
イントロデューサー用シースは、基端側スリット134と先端側スリット135とを識別可能なスリット識別部480をさらに有する。
【0093】
スリット識別部480は、基端側スリット134の位置を表示する。スリット識別部480は、基端側スリット134の位置を表示する矢印形状を備えている。スリット識別部480は、マーカー部460に配置されている。スリット識別部480は、マーカー部460と色知覚的に識別可能な色彩を有する。
【0094】
本実施形態に係るイントロデューサー用シースは、上述した実施形態に係るイントロデューサー用シース20が奏する作用・効果に加えて、次のような作用・効果を奏する。
【0095】
すなわち、本実施形態に係るイントロデューサー用シースによれば、術者が止血弁130を介してカテーテル本体110の内腔111に医療器具を挿入する際、マーカー部460の位置を視認することにより、止血弁130の挿通部131の位置を容易に把握できる。そのため、術者が止血弁130を介してカテーテル本体110の内腔111に医療器具を挿入する際、医療器具の先端部が止血弁130の挿通部131以外の箇所に接触することに起因する止血弁130の損傷を簡便に抑制できる。
【0096】
また、本実施形態に係るイントロデューサー用シースによれば、マーカー部460が挿通孔136を囲むように設けられていることにより、術者が止血弁130を介してカテーテル本体110の内腔111に医療器具を挿入する際、医療器具の先端部が挿通孔136以外の箇所に接触することを防止できる。そのため、止血弁130の損傷を簡便かつより確実に抑制できる。
【0097】
また、先端側スリット135は、止血弁130の先端面133に設けられており、先端側に開口している。そのため、医療器具を、挿通孔136ではなく、先端側スリット135に向けて進入させてしまった場合、医療器具の先端部によって止血弁130が損傷するリスクが高い。一方、基端側スリット134は、止血弁130の基端面132に設けられており、基端側に開口している。そのため、術者は、医療器具を、挿通孔136ではなく、基端側スリット134に向けて進入させてしまったとしても、医療器具の先端部を基端側スリット134に沿わせながら移動させることで、止血弁130の損傷を抑制しつつ、医療器具を挿通孔136に挿通させることができる。
【0098】
本実施形態に係るイントロデューサー用シースによれば、スリット識別部480を視認することによって基端側スリット134と先端側スリット135とを識別できる。そのため、術者は、術者が止血弁を介してカテーテル本体の内腔に医療用具を挿入する際、医療器具を、先端側スリット135に向けて誤って進入させてしまうリスクを軽減できる。これにより、止血弁130を介してカテーテル本体110の内腔111に医療器具を挿入する際に、止血弁130の損傷をさらに確実に抑制できる簡便な構造のイントロデューサー用シースを提供できる。
【0099】
(変形例)
マーカー部は、複数の色彩を有してもよい。
【0100】
図9は、本変形例に係るイントロデューサー用シースの平面図である。
【0101】
本変形例に係るマーカー部560は、第1領域561と、第1領域561と異なる色彩を有する第2領域562と、を備える。第1領域561の構成は、上述した実施形態2に係るマーカー部460の構成と同じである。第2領域562は、第1領域561よりも、イントロデューサー用シース20の中心側(止血弁130の中心側)に配置されている。第2領域562は、挿通孔136を中心に円形形状を備える。第2領域562の色は、例えば、赤色とすることができる。
【0102】
図9は、マーカー部が2種類の色彩を有する場合を例示しているが、マーカー部を構成する色彩の種類は、上述した2種類の場合に限られず、3種類以上であってもよい。マーカー部の形状やマーカー部を構成する色彩の種類およびその組合せを変えることによって、マーカー部の視認性を向上させることが可能である。
【0103】
以上、実施形態およびその変形例を通じてイントロデューサー用シースを説明したが、本発明は実施形態およびその変形例において説明した構成のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0104】
例えば、上述した実施形態およびその変形例では、マーカー部は、止血弁130またはキャップ140のいずれか一方に設けられたが、マーカー部は、止血弁130およびキャップ140の両方に設けてもよい。
【0105】
また、上述した実施形態2において、スリット識別部480の形態は、基端側スリット134の位置を表示する矢印形状を備える形態であった。しかしながら、スリット識別部480の形態は、基端側スリット134と先端側スリット135とを識別可能である限りにおいて限定されない。例えば、基端側スリット134の位置を表示する三角形やひし形の形状であってもよい。また、マーカー部460において、基端側スリット134に沿って、周囲と色知覚的に識別可能な色彩を有する帯状の部位を形成し、当該部位を、スリット識別部480としてもよい。また、スリット識別部480を、キャップ140に設けてもよい。さらには、上述した実施形態1およびその変形例に係るイントロデューサー用シースの止血弁130および/またはキャップ140に、スリット識別部を設けることも可能である。
【0106】
また、上述した実施形態1およびその変形例2並びに実施形態2およびその変形例では、ダイレーターは、カテーテル本体のハブに接続した。しかしながら、ダイレーターは、キャップに接続するように構成してもよい。ダイレーターとキャップとの接続方法は特に限定されないが、例えば、実施形態1の変形例1に示したように、キャップに係合爪を設けるなどの方法により、ダイレーターとキャップとを接続することが可能である。
【0107】
本出願は、2017年2月10日に出願された日本国特許出願第2017-023529号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。
【符号の説明】
【0108】
10 イントロデューサーセット(医療用長尺体セット)、
20 イントロデューサー用シース(医療用長尺体)、
30 ダイレーター(医療器具)、
31b ダイレーターの先端部、
33 先端マーカー部、
110 カテーテル本体、
111 内腔、
120 ハブ、
121 内部空間、
130 止血弁、
131 挿通部、
132 基端面、
132a 基端開口部を介して視認可能な表面、
133 先端面、
134 基端側スリット、
134a 基端側スリットの端部、
135 先端側スリット、
135a 先端側スリットの端部、
140 キャップ(キャップ部材)、
141 基端開口部、
142 誘導壁面部、
143、243 傾斜部、
144 突起部、
160、260、360、460、560 マーカー部、
161、262a マーカー部の中心側の端部、
243a 第1傾斜部(傾斜部)、
243b 第2傾斜部(傾斜部)、
361 第1領域、
362 第2領域、
480 スリット識別部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9