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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/26 20060101AFI20220607BHJP
   B29C 33/12 20060101ALI20220607BHJP
   B29C 45/02 20060101ALI20220607BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C33/12
B29C45/02
B29C45/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019084786
(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2020179603
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100129137
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 ゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】奥西 祥人
(72)【発明者】
【氏名】小河 冬彦
(72)【発明者】
【氏名】坂井 秀行
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-162888(JP,A)
【文献】特開2013-028087(JP,A)
【文献】特開平01-201927(JP,A)
【文献】特開2006-319226(JP,A)
【文献】特開昭56-067210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形装置を用いて行う樹脂成形品の製造方法であって、
前記樹脂成形装置は、
成形型と、
一方の型楔形機構と、
一方の型キャビティブロック駆動機構とを含み、
前記成形型は、一方の型と他方の型とを含み、
前記一方の型は、一方の型キャビティ枠部材と、一方の型キャビティブロックとを含み、
前記一方の型キャビティブロックは、前記一方の型キャビティ枠部材内を前記成形型の型開閉方向に移動可能であり、
前記一方の型キャビティブロックにおける前記他方の型との対向面と、前記一方の型キャビティ枠部材の内側面とで一方の型キャビティを形成可能であり、
前記一方の型キャビティブロック駆動機構を用いて、前記一方の型キャビティブロックを、前記型開閉方向に移動させることが可能であり、
前記一方の型楔形機構を用いて、前記型開閉方向における前記一方の型キャビティブロックの位置を固定可能であり、
前記樹脂成形品の製造方法は、
前記成形型を用いて樹脂成形を行う樹脂成形工程と、
前記樹脂成形工程後に、成形された樹脂を前記成形型から離型する離型工程とを含み、
前記離型工程は、前記一方の型キャビティブロック駆動機構を用いて前記一方の型キャビティブロックの高さ位置を設定し、かつ、前記一方の型楔形機構を用いて、前記高さ位置まで移動させた前記一方の型キャビティブロックにおける前記他方の型と離れる方向の位置を制限するように固定した状態で、前記一方の型楔形機構と前記一方の型キャビティブロック駆動機構とを用いて離型動作を行う工程であることを特徴とする樹脂成形品の製造方法
【請求項2】
前記樹脂成形装置は、前記一方の型キャビティブロックの高さ位置の設定を、前記一方の型キャビティ枠部材と前記他方の型とにより成形対象物の一部をクランプした状態で行うことが可能である請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法
【請求項3】
前記樹脂成形装置は、さらに、プランジャを含み、かつ、樹脂を収容可能なポットを有し、
離型動作において、前記プランジャを、前記ポット内の不要樹脂部から離した後に、前記プランジャを、前記ポット内の不要樹脂部を支持可能な位置に移動させることが可能な請求項1又は2記載の樹脂成形品の製造方法
【請求項4】
前記樹脂成形装置は、さらに、型締め機構を含み、
前記型締め機構によって前記一方の型と前記他方の型とを型締めした状態で樹脂成形が可能であり、かつ、
前記プランジャを、前記ポット内の不要樹脂部を支持可能な位置に移動させた後に、前記型締め機構を用いて前記他方の型を前記成形型の型開き方向に移動させることにより、前記一方の型キャビティブロックを前記成形型の型締め方向に移動可能とすることが可能な請求項3記載の樹脂成形品の製造方法
【請求項5】
前記樹脂成形装置は、前記型締め機構を用いて前記他方の型を前記成形型の型開き方向に移動させた後に、前記一方の型キャビティブロック駆動機構を用いて前記一方の型キャビティブロックを前記成形型の型締め方向に移動させることが可能な請求項4記載の樹脂成形品の製造方法
【請求項6】
前記樹脂成形装置は、前記一方の型キャビティブロック駆動機構を用いて前記一方の型キャビティブロックを前記成形型の型締め方向に移動させた後に、前記一方の型楔形機構を動作させて、前記一方の型キャビティブロックを前記成形型の型開き方向に移動可能な状態とすることが可能な請求項5記載の樹脂成形品の製造方法
【請求項7】
前記樹脂成形装置は、前記一方の型楔形機構を動作させて、前記一方の型キャビティブロックを前記成形型の型開き方向に移動可能な状態とした後に、前記一方の型キャビティブロック駆動機構を用いて前記一方の型キャビティブロックを前記成形型の型開き方向に移動させることが可能な請求項6記載の樹脂成形品の製造方法
【請求項8】
前記樹脂成形装置は、前記一方の型キャビティブロック駆動機構を用いて前記一方の型キャビティブロックを前記成形型の型開き方向に移動させた後に、前記型締め機構により前記他方の型を前記成形型の型開き方向に移動させて型開き状態とすることが可能な請求項6記載の樹脂成形品の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品の製造には、成形型を有する樹脂成形装置が用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、モールド樹脂がキャビティに注入される前に、キャビティ高さ可変機構の上型駆動部7により第1可動テーパーブロック25を進退動させ、上型のインサート部材(キャビティ駒23)を型開閉方向に押動し、板厚可変機構の下型駆動部8により第2可動テーパーブロック39を進退動させ、下型のインサート部材(ワーク支持部37)を型開閉方向に押動することで、半導体チップ5の高さに合わせてキャビティ高さ可変機構を設定すると共に、基板1の厚さに合わせて板厚可変機構を設定して成形品を成形する技術が記載されている(特許文献1[0032]、[0033]、[0045]、[0049]、図2(A))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-56739
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された技術には、以下のような問題がある。例えば、その図2に示された構成では、キャビティ底部を形成するキャビティ駒23を上型チェイスブロック22にバネ24を介して吊り下げ支持されている。このため、キャビティ駒23を固定することができず、成形対象物の厚みのばらつきに応じて適切なキャビティ凹部32の高さを調整することが難しい。また、キャビティ駒23を固定することができないため、樹脂モールド部分の厚みにばらつきが発生するおそれがある。さらに、特許文献1には、離型動作の詳細について記載されていないため、具体的な離型動作が不明である。例えば、特許文献1では、前述した成形対象物の厚みのばらつきがある場合には、正常な離型動作ができないおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、成形対象物の厚みのばらつきによる成形不具合を抑制又は樹脂モールド部分の厚みのばらつきを抑制でき、かつ離型動作を行うことができる樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明の樹脂成形装置は、
成形型と、
一方の型楔形機構と、
一方の型キャビティブロック駆動機構とを含み、
前記成形型は、一方の型と他方の型とを含み、
前記一方の型は、一方の型キャビティ枠部材と、一方の型キャビティブロックとを含み、
前記一方の型キャビティブロックは、前記一方の型キャビティ枠部材内を前記成形型の型開閉方向に移動可能であり、
前記一方の型キャビティブロックにおける前記他方の型との対向面と、前記一方の型キャビティ枠部材の内側面とで一方の型キャビティを形成可能であり、
前記一方の型キャビティブロック駆動機構を用いて、前記一方の型キャビティブロックを、前記型開閉方向に移動させることが可能であり、
前記一方の型楔形機構を用いて、前記型開閉方向における前記一方の型キャビティブロックの位置を固定可能であり、
前記一方の型キャビティブロック駆動機構を用いて前記一方の型キャビティブロックの高さ位置を設定し、かつ、前記一方の型楔形機構を用いて、前記高さ位置まで移動させた前記一方の型キャビティブロックにおける前記他方の型と離れる方向の位置を制限するように固定した状態で、前記一方の型楔形機構と前記一方の型キャビティブロック駆動機構とを用いて離型動作を行うことが可能であることを特徴とする。
【0008】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、
本発明の樹脂成形装置を用い、
前記成形型を用いて樹脂成形を行う樹脂成形工程と、
前記樹脂成形工程後に、成形された樹脂を前記成形型から離型する離型工程とを含み、
前記離型工程は、前記一方の型キャビティブロック駆動機構を用いて前記一方の型キャビティブロックの高さ位置を設定し、かつ、前記一方の型楔形機構を用いて、前記高さ位置まで移動させた前記一方の型キャビティブロックにおける前記他方の型と離れる方向の位置を制限するように固定した状態で、前記一方の型楔形機構と前記一方の型キャビティブロック駆動機構とを用いて離型動作を行う工程であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、成形対象物の厚みのばらつきによる成形不具合を抑制又は樹脂モールド部分の厚みのばらつきを抑制でき、かつ離型動作を行うことができる樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法の提供をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の樹脂成形装置の一例を模式的に示す断面図である。
図2図2は、図1の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法の一例における一工程を模式的に示す断面図である。
図3図3は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法における別の一工程を模式的に示す断面図である。
図4図4は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図5図5は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図6図6は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図7図7は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図8図8は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図9図9は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図10図10は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図11図11は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図12図12は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図13図13は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図14図14は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図15図15は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図16図16は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図17図17は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図18図18は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図19図19は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図20図20は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図21図21は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図22図22は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図23図23は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図24図24は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図25図25は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図26図26は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図27図27は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図28図28は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図29図29は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図30図30は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図31図31は、図2と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図32図32は、図1の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法の別の一例における一工程を模式的に示す断面図である。
図33図33は、図32と同じ樹脂成形品の製造方法における別の一工程を模式的に示す断面図である。
図34図34は、図32と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図35図35は、図32と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図36図36は、図32と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図37図37は、図32と同じ樹脂成形品の製造方法におけるさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図38図38は、図1の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法のさらに別の一例における一工程を模式的に示す断面図である。
図39図39は、図38と同じ樹脂成形品の製造方法の別の一工程を模式的に示す断面図である。
図40図40は、図38と同じ樹脂成形品の製造方法のさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図41図41は、図38と同じ樹脂成形品の製造方法のさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図42図42は、図38と同じ樹脂成形品の製造方法のさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図43図43は、図38と同じ樹脂成形品の製造方法のさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図44図44は、図38と同じ樹脂成形品の製造方法のさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図45図45は、図38と同じ樹脂成形品の製造方法のさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図46図46は、図38と同じ樹脂成形品の製造方法のさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図47図47は、図38と同じ樹脂成形品の製造方法のさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図48図48は、図38と同じ樹脂成形品の製造方法のさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図49図49は、図38と同じ樹脂成形品の製造方法のさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図50図50は、図38と同じ樹脂成形品の製造方法のさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図51図51は、図38と同じ樹脂成形品の製造方法のさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図52図52は、図38と同じ樹脂成形品の製造方法のさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図53図53は、図38と同じ樹脂成形品の製造方法のさらに別の一工程を模式的に示す断面図である。
図54図54は、図1の樹脂成形装置において、上型に離型フィルムを吸着する仕組みの一例を模式的に示す断面図である。
図55図55は、本発明の樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法における成形対象物の一例を模式的に示す断面図である。
図56図56は、本発明の樹脂成形装置における全体の構成の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0012】
本発明の樹脂成形装置は、例えば、前記一方の型キャビティブロックの高さ位置の設定を、前記一方の型キャビティ枠部材と前記他方の型とにより成形対象物の一部をクランプした状態で行うことが可能であってもよい。
【0013】
本発明の樹脂成形装置は、例えば、さらに、プランジャを含み、かつ、樹脂を収容可能なポットを有し、離型動作において、前記プランジャを、前記ポット内の不要樹脂部から離した後に、前記プランジャを、前記ポット内の不要樹脂部を支持可能な位置に移動させることが可能であってもよい。
【0014】
本発明の樹脂成形装置は、例えば、
さらに、型締め機構を含み、
前記型締め機構によって前記一方の型と前記他方の型とを型締めした状態で樹脂成形が可能であり、かつ、
前記プランジャを、前記ポット内の不要樹脂部を支持可能な位置に移動させた後に、前記型締め機構を用いて前記他方の型を前記成形型の型開き方向に移動させることにより、前記一方の型キャビティブロックを前記成形型の型締め方向に移動可能とすることが可能であってもよい。
【0015】
本発明の樹脂成形装置は、例えば、前記型締め機構を用いて前記他方の型を前記成形型の型開き方向に移動させた後に、前記一方の型キャビティブロック駆動機構を用いて前記一方の型キャビティブロックを前記成形型の型締め方向に移動させることが可能であってもよい。
【0016】
本発明の樹脂成形装置は、例えば、前記一方の型キャビティブロック駆動機構を用いて前記一方の型キャビティブロックを前記成形型の型締め方向に移動させた後に、前記一方の型楔形機構を動作させて、前記一方の型キャビティブロックを前記成形型の型開き方向に移動可能な状態とすることが可能であってもよい。
【0017】
本発明の樹脂成形装置は、例えば、前記一方の型楔形機構を動作させて、前記一方の型キャビティブロックを前記成形型の型開き方向に移動可能な状態とした後に、前記一方の型キャビティブロック駆動機構を用いて前記一方の型キャビティブロックを前記成形型の型開き方向に移動させることが可能であってもよい。
【0018】
本発明の樹脂成形装置は、例えば、前記一方の型キャビティブロック駆動機構を用いて前記一方の型キャビティブロックを前記成形型の型開き方向に移動させた後に、前記型締め機構により前記他方の型を前記成形型の型開き方向に移動させて型開き状態とすることが可能であってもよい。
【0019】
本発明の樹脂成形装置は、例えば、
成形型と、
一方の型楔形機構と、
一方の型キャビティブロック駆動機構とを含み、
前記成形型は、一方の型と他方の型とを含み、
前記一方の型は、一方の型キャビティ枠部材と、一方の型キャビティブロックとを含み、
前記一方の型キャビティブロックは、前記一方の型キャビティ枠部材内を前記成形型の型開閉方向に移動可能であり、
前記一方の型キャビティブロックにおける前記他方の型との対向面と、前記一方の型キャビティ枠部材の内側面とで一方の型キャビティを形成可能であり、
前記一方の型キャビティブロック駆動機構を用いて、前記一方の型キャビティブロックを、前記型開閉方向に移動させることが可能であり、
前記一方の型楔形機構を用いて、前記型開閉方向における前記一方の型キャビティブロックの位置を固定可能であり、
前記一方の型キャビティ枠部材と前記他方の型とにより成形対象物の一部をクランプするとともに、前記一方の型キャビティブロック駆動機構を用いて前記一方の型キャビティブロックの高さ位置を設定し、かつ、前記一方の型楔形機構を用いて、前記高さ位置が設定された前記一方の型キャビティブロックにおける前記他方の型と離れる方向の位置を制限するように固定した状態で、樹脂を前記一方の型キャビティに注入し、その後、前記一方の型楔形機構と前記一方の型キャビティブロック駆動機構とを用いて前記一方の型キャビティの深さを変化させて樹脂成形を行うことが可能であってもよい。
【0020】
本発明の樹脂成形装置は、例えば、さらに、プランジャを含み、かつ、樹脂を収容可能なポットを有し、前記一方の型楔形機構を固定した状態で、前記プランジャを前記ポット内に押し込むことにより、前記ポット内の樹脂を前記一方の型キャビティ内に注入可能であってもよい。
【0021】
本発明の樹脂成形装置は、例えば、前記一方の型楔形機構を動作可能とするために、前記プランジャを、前記ポット内と反対方向に引き出すとともに、前記一方の型キャビティブロックを、前記他方の型から離れる方向に移動可能であってもよい。
【0022】
本発明の樹脂成形装置は、例えば、前記一方の型キャビティブロックの高さ位置を設定した後に、前記プランジャを前記ポット内に押し込んで前記ポット内の樹脂を前記一方の型キャビティ内に注入することにより、前記一方の型キャビティブロックを前記他方の型から離れる方向に移動させ、前記一方の型キャビティの深さを増大させることが可能であってもよい。
【0023】
本発明の樹脂成形装置は、例えば、前記一方の型キャビティブロックの高さ位置を設定した後に、前記一方の型キャビティブロックを前記他方の型に近づく方向に移動させ、前記一方の型キャビティの深さを減少させることが可能であってもよい。
【0024】
本発明の樹脂成形装置は、例えば、さらに、型締め機構を含み、前記型締め機構によって前記一方の型と前記他方の型とを型締めした状態で樹脂成形が可能であってもよい。
【0025】
本発明の樹脂成形装置は、例えば、前記一方の型キャビティのキャビティ面が離型フィルムにより被覆され、前記離型フィルムを介して前記一方の型キャビティ内に樹脂が充填された状態で樹脂成形が可能であってもよい。
【0026】
本発明の樹脂成形装置は、例えば、さらに、離型フィルム吸着機構を含んでいてもよい。
【0027】
本発明の樹脂成形装置は、例えば、
前記一方の型楔形機構が、一対の一方の型楔形部材を含み、
前記一対の一方の型楔形部材は、一方の型第1楔形部材と一方の型第2楔形部材とを含み、
前記一方の型第1楔形部材と前記一方の型第2楔形部材とは、それぞれが、テーパ面を有し、互いの前記テーパ面が対向するように、配置されており、
前記一方の型第1楔形部材及び前記一方の型第2楔形部材の少なくとも一方を移動させることで、前記一方の型第1楔形部材と前記一方の型第2楔形部材とが接触した際における前記一対の一方の型楔形部材の前記型開閉方向の長さを変化可能であってもよい。なお、前記少なくとも一方の楔形部材を移動させる方向は、例えば、移動させる楔形部材の楔形の先端方向又は後端方向であってもよい。
【0028】
本発明の樹脂成形装置は、例えば、
前記樹脂成形装置が、さらに、他方の型楔形機構を含み、
前記他方の型が、他方の型キャビティブロックを含み、
前記他方の型楔形機構を用いて、前記型開閉方向における前記他方の型キャビティブロックの位置を固定可能であってもよい。
【0029】
本発明の樹脂成形装置は、例えば、
前記他方の型楔形機構が、一対の他方の型楔形部材を含み、
前記一対の他方の型楔形部材は、他方の型第1楔形部材と他方の型第2楔形部材とを含み、
前記他方の型第1楔形部材と前記他方の型第2楔形部材とは、それぞれが、テーパ面を有し、互いの前記テーパ面が対向するように、配置されており、
前記一方の型第1楔形部材及び前記一方の型第2楔形部材の少なくとも一方を移動させることで、前記他方の型第1楔形部材と前記他方の型第2楔形部材とが接触した際における前記一対の他方の型楔形部材の前記型開閉方向の長さを変化可能であってもよい。なお、前記少なくとも一方の楔形部材を移動させる方向は、例えば、移動させる楔形部材の楔形の先端方向又は後端方向であってもよい。
【0030】
本発明の樹脂成形装置は、例えば、前記一方の型第1楔形部材と前記一方の型第2楔形部材とが接触した際における前記一対の一方の型楔形部材の前記型開閉方向の長さを変化させることで、前記型開閉方向における前記一方の型キャビティブロックの位置を変更可能であってもよい。
【0031】
本発明の樹脂成形装置は、例えば、
前記一方の型及び前記他方の型の少なくとも一方を、前記成形型の型締め方向に移動させることで、前記成形対象物を、前記一方の型及び前記他方の型により挟み、前記一方の型キャビティブロック駆動機構を用いて、前記一方の型キャビティブロックを前記成形対象物に向かって移動させることで、前記成形対象物を、離型フィルムを介して前記一方の型キャビティブロックによって押圧し、その後、前記一方の型楔形機構を用いて、前記型開閉方向における前記一方の型キャビティブロックの位置を固定可能であってもよい。
【0032】
本発明の樹脂成形装置は、例えば、前記一方の型キャビティブロックの位置を固定した後に、前記一方の型及び前記他方の型の少なくとも一方を、前記成形型の型開き方向に移動させ、さらにその後、前記一方の型キャビティブロック駆動機構と前記一方の型楔形機構とを用いて前記一方の型キャビティブロックの位置を変更し、固定可能であってもよい。
【0033】
本発明の樹脂成形装置は、例えば、前記一方の型が、上型であり、前記他方の型が、下型であってもよい。また、例えば、それとは逆に、本発明の樹脂成形装置は、前記一方の型が、下型であり、前記他方の型が、上型であってもよい。
【0034】
本発明の樹脂成形装置は、例えば、トランスファ成形用の装置であってもよい。また、本発明の樹脂成形装置は、これに限定されず、例えば、圧縮成形用等の装置であってもよい。
【0035】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、例えば、
本発明の樹脂成形装置を用い、
前記一方の型キャビティ枠部材と前記他方の型とにより成形対象物の一部をクランプする成形対象物クランプ工程と、
前記成形対象物の一部がクランプされた状態で前記一方の型キャビティブロック駆動機構を用いて前記一方の型キャビティブロックの高さ位置を設定する高さ位置設定工程と、
前記一方の型楔形機構を用いて、前記高さ位置が設定された前記一方の型キャビティブロックにおける前記他方の型と離れる方向の位置を制限するように固定する前記一方の型キャビティブロック固定工程と、
前記樹脂を前記一方の型キャビティに注入する樹脂注入工程と、
前記樹脂注入工程後、前記一方の型楔形機構と前記一方の型キャビティブロック駆動機構とを用いて前記一方の型キャビティの深さを変化させて樹脂成形を行う樹脂成形工程と、
を含んでいてもよい。
【0036】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、例えば、さらに、前記一方の型の型面を離型フィルムで被覆する一方の型面被覆工程を含んでいてもよい。
【0037】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、例えば、さらに、樹脂成形される成形対象物を、離型フィルムを介して前記一方の型キャビティブロックによって押圧する成形対象物押圧工程を含んでいてもよい。
【0038】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、例えば、さらに、前記型開閉方向における前記他方の型キャビティブロックの位置を変更する他方の型キャビティブロック位置変更工程を含んでいてもよい。
【0039】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、例えば、前記樹脂成形装置が、前記本発明の樹脂成形装置であり、前記本発明の樹脂成形装置が、さらに、前記他方の型楔形機構を含んでいてもよい。
【0040】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、例えば、
さらに、前記一方の型及び前記他方の型の少なくとも一方を、前記成形型の型締め方向に移動させることで、前記成形対象物を、前記一方の型及び前記他方の型により挟んで固定する成形対象物クランプ工程と、
前記成形対象物を、離型フィルムを介して前記一方の型キャビティブロックによって押圧する成形対象物押圧工程と、
前記一方の型キャビティブロックの位置を固定する一方の型キャビティブロック固定工程と、を含み、
前記一方の型キャビティブロック位置変更工程において、前記一方の型キャビティブロック駆動機構を用いて、前記一方の型キャビティブロックを前記成形対象物に向かって移動させ、
前記成形対象物押圧工程において、前記一方の型キャビティブロック駆動機構を用いて、前記成形対象物を、離型フィルムを介して前記一方の型キャビティブロックによって押圧し、
前記成形対象物押圧工程後、前記一方の型キャビティブロック固定工程において、前記一方の型楔形機構を用いて、前記型開閉方向における前記一方の型キャビティブロックの位置を固定してもよい。
【0041】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、例えば、前記一方の型キャビティブロック固定工程後に、前記一方の型及び前記他方の型の少なくとも一方を、前記成形型の型開き方向に移動させ、さらにその後、前記一方の型キャビティブロック駆動機構を用いて、前記一方の型キャビティブロックの位置を変更する第2一方の型キャビティブロック位置変更工程と、前記一方の型楔形機構を用いて、前記一方の型キャビティブロックの位置を固定する第2一方の型キャビティブロック固定工程と、を含んでいてもよい。
【0042】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、例えば、前記樹脂成形工程において、前記成形対象物をトランスファ成形により樹脂成形してもよい。また、本発明の樹脂成形品の製造方法は、これに限定されず、例えば、前記樹脂成形工程において、前記成形対象物を、圧縮成形等により成形してもよい。
【0043】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、例えば、前記成形対象物が、基板を複数枚含み、前記各基板間を樹脂封止することにより前記成形対象物を樹脂成形してもよい。
【0044】
なお、本発明において、「成形型」は、例えば金型であるが、これに限定されず、例えば、セラミック型等であってもよい。
【0045】
本発明において、樹脂成形品は、特に限定されず、例えば、単に樹脂を成形した樹脂成形品でもよいし、チップ等の部品を樹脂封止した樹脂成形品でもよい。本発明において、樹脂成形品は、例えば、電子部品等であってもよい。
【0046】
本発明において、成形前の樹脂材料及び成形後の樹脂としては、特に制限されず、例えば、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。また、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂を一部に含んだ複合材料であってもよい。本発明において、成形前の樹脂材料の形態としては、例えば、顆粒状樹脂、液状樹脂、シート状の樹脂、タブレット状の樹脂、粉状の樹脂等が挙げられる。なお、本発明において、液状樹脂とは、常温で液状であってもよいし、加熱により溶融されて液状となる溶融樹脂も含む。
【0047】
また、一般に、「電子部品」は、樹脂封止する前のチップをいう場合と、チップを樹脂封止した状態をいう場合とがあるが、本発明において、単に「電子部品」という場合は、特に断らない限り、前記チップが樹脂封止された電子部品(完成品としての電子部品)をいう。本発明において、「チップ」は、樹脂封止する前のチップをいい、具体的には、例えば、IC、半導体チップ、電力制御用の半導体素子等のチップが挙げられる。本発明において、樹脂封止する前のチップは、樹脂封止後の電子部品と区別するために、便宜上「チップ」という。しかし、本発明における「チップ」は、樹脂封止する前のチップであれば、特に限定されず、チップ状でなくてもよい。
【0048】
本発明において、「フリップチップ」とは、ICチップ表面部の電極(ボンディングパット)にバンプと呼ばれる瘤状の突起電極を有するICチップ、あるいはそのようなチップ形態のことをいう。このチップを、下向きに(フェースダウン)してプリント基板などの配線部に実装させる。前記フリップチップは、例えば、ワイヤレスボンディング用のチップあるいは実装方式の一つとして用いられる。
【0049】
本発明において、例えば、基板に実装された部品(例えばチップ、フリップチップ等)を樹脂封止(樹脂成形)して樹脂成形品を製造してもよい。本発明において、前記基板(インターポーザともいう。)としては、特に限定されないが、例えば、リードフレーム、配線基板、ウェハー、ガラスエポキシ基板、セラミック基板、樹脂基板、金属基板等であっても良い。前記基板は、例えば、前述のとおり、その一方の面又は両面にチップが実装された実装基板であっても良い。前記チップの実装方法は、特に限定されないが、例えば、ワイヤーボンディング、フリップチップボンディング等が挙げられる。本発明では、例えば、前記実装基板を樹脂封止することにより、前記チップが樹脂封止された電子部品を製造しても良い。また、本発明の樹脂封止装置により樹脂封止される基板の用途は、特に限定されないが、例えば、携帯通信端末用の高周波モジュール基板、電力制御用モジュール基板、機器制御用基板等が挙げられる。
【0050】
以下、本発明の具体的な実施例を図面に基づいて説明する。各図は、説明の便宜のため、適宜省略、誇張等をして模式的に描いている。
【実施例1】
【0051】
本実施例では、本発明の樹脂成形装置の一例と、それを用いた樹脂成形品の製造方法の一例について説明する。
【0052】
図1の断面図に、本実施例における樹脂成形装置の構成を模式的に示す。なお、図1~54では、樹脂成形装置における、成形型を用いて樹脂成形を行う部分(以下「プレス部」という。)を主に図示している。しかし、後述するように、本発明の樹脂成形装置は、プレス部以外の任意の構成要素を含んでいてもよい。図1に示すとおり、この樹脂成形装置のプレス部3100は、上型(一方の型)1100及び下型(他方の型)1200を含む成形型と、上型キャビティブロック位置変更機構設置部(一方の型キャビティブロック位置変更機構設置部)1300と、下型キャビティブロック位置変更機構設置部(他方の型キャビティブロック位置変更機構設置部)1400とを主要構成要素として含む。また、このプレス部3100を有する樹脂成形装置は、さらに、離型フィルム吸着機構(図1では、図示せず)及びエアベント開閉機構1330を、主要構成要素として含む。エアベント開閉機構1330は、本実施例では、後述するように、上型キャビティブロック位置変更機構設置部1300の構成要素の一つであるが、本発明は、これに限定されない。例えば、エアベント開閉機構1330が、上型キャビティブロック位置変更機構設置部1300とは別の、プレス部3100又は樹脂成形装置の構成要素の一つであってもよい。
【0053】
上型(一方の型)1100は、上型キャビティブロック(一方の型キャビティブロック)1101と、上型キャビティ枠部材(一方の型キャビティ枠部材)1102及び1103とを含む。図示のとおり、上型キャビティブロック1101は、2つ並列に配置されている。上型キャビティ枠部材を構成する部材のうち、上型キャビティ枠部材1103は、2つの上型キャビティブロック1101に挟まれるように配置されている。上型キャビティ枠部材1102は、図示のとおり、上型キャビティブロック1101の外側に配置されている。上型キャビティ枠部材には、上型キャビティ枠部材1102及び1103に囲まれるように摺動孔1105が形成されている。上型キャビティブロック1101は、摺動孔1105内を、成形型の型開閉方向に移動可能である。なお、「型開閉方向」は、図1では、上型1100及び下型1200の開閉方向であり、すなわち、図の上下方向である。さらに、図示のとおり、上型キャビティブロック1101における下型(他方の型)1200との対向面と、上型キャビティ枠部材1102及び1103の内側面とで空間を囲むことにより上型キャビティ(一方の型キャビティ)1106を形成可能である。また、上型キャビティ枠部材1102の下端には、エアベント溝1104が形成されている。
【0054】
なお、図1においては図示していないが、上型キャビティ枠部材1103には、さらに、樹脂成形時の余剰樹脂(不要樹脂)を収容する空間である余剰樹脂部(不要樹脂部、またはカル部ともいう)が形成されていてもよい。
【0055】
下型(他方の型)1200は、下型キャビティブロック(他方の型キャビティブロック)1201、下型サイドブロック(他方の型サイドブロック)1202、及びポットブロック1203を主要構成要素とし、さらに、下型キャビティブロックピラー(他方の型キャビティブロックピラー)1204、下型弾性部材(他方の型弾性部材)1205、及びプランジャ1212を含む。なお、プランジャ1212は、下型1200の構成要素の1つであってもよいが、下型1200とは別の、プレス部3100の構成要素の1つであってもよい。下型キャビティブロック1201は、2つあり、それぞれ、上面が上型キャビティブロック1101に対向するように配置されている。ポットブロック1203は、2つの下型キャビティブロック1201に挟まれるように配置されている。下型サイドブロック1202は、図示のとおり下型キャビティブロック1201の外側に配置されている。そして、2つの下型キャビティブロック1201は、それぞれ、下型サイドブロック1202及びポットブロック1203の内側に配置されている。ポットブロック1203には、上下方向に貫通する孔であるポット1211が形成されている。プランジャ1212は、ポット1211内を上下動可能である。後述するように、プランジャ1212を上昇させることで、ポット1211内の溶融樹脂を、上型キャビティ1106内に押し込むことが可能である。
【0056】
下型キャビティブロックピラー1204は、下型キャビティブロック1201の下面に取り付けられている。下型弾性部材1205は、下型キャビティブロックピラー1204を取り囲むように配置され、型開閉方向(図上下方向)に伸縮可能である。
【0057】
上型キャビティブロック位置変更機構設置部(一方の型キャビティブロック位置変更機構設置部)1300は、上型キャビティブロック駆動機構(一方の型キャビティブロック駆動機構)1301と、上型キャビティブロック保持部材(一方の型キャビティブロック保持部材)1302と、ロードセル(押圧力測定機構)1303と、上型キャビティブロックピラー(一方の型キャビティブロックピラー)1304と、上型楔形機構(一方の型楔形機構、上型コッター機構、又は一方の型コッター機構ともいう)1310と、上型第2楔形部材保持部材(一方の型第2楔形部材保持部材、又は、上型第2コッター保持部材、若しくは一方の型第2コッター保持部材ともいう)1321と、上型第2楔形部材保持部材の弾性部材(一方の型第2楔形部材保持部材の弾性部材)1322と、エアベント開閉機構1330と、プラテン(上型キャビティブロック位置変更機構設置部ベース部材、又は、一方の型キャビティブロック位置変更機構設置部ベース部材)1340と、上型キャビティブロック位置変更機構設置部枠部材(一方の型キャビティブロック位置変更機構設置部枠部材)1341と、上型キャビティブロック位置変更機構設置部底面部材(一方の型キャビティブロック位置変更機構設置部底面部材)1342及び1343とを含む。プラテン1340は、一枚の板状部材であり、上型1100の上方に、上型1100全体を覆うように配置されている。また、後述するように、プラテン1340には、上型キャビティブロック位置変更機構設置部1300の他の部材が、直接又は間接的に取り付けられている。
【0058】
上型キャビティブロック保持部材1302は、図示のとおり、プラテン1340を上下方向に貫通しており、上下動可能である。一方の型キャビティブロック保持部材1302の下端には、上型キャビティブロックピラー1304が取り付けられている。上型キャビティブロックピラー1304の下端には、上型キャビティブロック1101が取り付けられている。また、後述するように、上型キャビティブロック1101は、上型キャビティブロックピラー1304に対し、脱着可能である。上型キャビティブロック駆動機構1301は、上型キャビティブロック保持部材1302の上端に接続されている。上型キャビティブロック駆動機構1301により上型キャビティブロック保持部材1302を上下動させることで、上型キャビティブロック1101を上下動(すなわち、型開閉方向に移動させることが)可能である。また、上型キャビティブロック駆動機構1301としては、特に限定されないが、例えば、サーボモータ、エアーシリンダー等を用いることができる。
【0059】
上型楔形機構1310は、図示のとおり、上型第1楔形部材(一方の型第1楔形部材、上型第1コッター、又は一方の型第1コッターともいう)1311aと、上型第2楔形部材(一方の型第2楔形部材、上型第2コッター、又は一方の型第2コッターともいう)1311bと、上型楔形部材動力伝達部材(一方の型楔形部材動力伝達部材、上型コッター動力伝達部材、又は一方の型コッター動力伝達部材ともいう)1312と、上型楔形部材駆動機構(一方の型楔形部材駆動機構、上型コッター駆動機構、又は一方の型コッター駆動機構ともいう)1313とを含む。図1に示すように、上型第1楔形部材1311aと上型第2楔形部材1311bとは、それぞれ、厚み方向(図上下方向)における一方の面が、テーパ面である。より具体的には、図示のとおり、上型第1楔形部材1311aの下面及び上型第2楔形部材1311bの上面が、それぞれテーパ面である。上型第1楔形部材1311aと上型第2楔形部材1311bとは、互いのテーパ面が対向するように、配置されている。
【0060】
また、上型第1楔形部材1311aは、上型楔形部材動力伝達部材1312を介して上型楔形部材駆動機構1313に連結している。そして、上型楔形部材駆動機構1313により、上型第1楔形部材1311aと上型第2楔形部材1311bとにより形成される一対の上型楔形部材(一対の一方の型楔形部材。以下、単に「一対の上型楔形部材」、「上型楔形部材」又は「上型コッター」ということがある。)のテーパ面のテーパ方向(図左右方向)にスライドさせることで、一対の上型楔形部材の厚み方向の長さを変化可能である。例えば、上型第1楔形部材1311aをその先端方向に向けてスライドさせると、上型第2楔形部材1311bは、上型第1楔形部材1311aに対し相対的に逆方向にスライドすることになる。そうすると、一対の上型楔形部材の厚み方向(図上下方向)の長さが大きくなる。また、例えば、逆に、上型第1楔形部材1311aをその後端方向に向けてスライドさせることで、一対の上型楔形部材の厚み方向(図上下方向)の長さを小さくすることが可能である。これにより、後述するように、上下方向(型開閉方向)における上型キャビティブロック1101の位置を変更可能である。これにより、成形対象物の厚みがばらついても、上型キャビティブロック1101の位置を適切な位置に調節可能である。すなわち、これにより、上型キャビティ1106の深さを適切な深さに調節可能である。
【0061】
なお、図1の例では、上型楔形部材駆動機構1313により、一対の上型楔形部材の上側の上型第1楔形部材1311aを水平(図左右)方向に摺動(スライド)させることができる。しかし、これに限定されず、例えば、上型楔形部材駆動機構1313により、下側の上型第2楔形部材1311bをスライド可能であっても良いし、上型第1楔形部材1311a及び上型第2楔形部材1311bの両方をスライド可能であっても良い。また、上型楔形部材駆動機構1313としては、特に限定されないが、例えば、サーボモータ、エアーシリンダー等を用いることができる。
【0062】
また、図1では、上型第1楔形部材1311a及び上型第2楔形部材1311bのそれぞれ一方の面の全体がテーパ面である。しかし、本発明はこれに限定されず、少なくとも一方の楔形部材を、テーパ面に沿ってスライドさせることが可能であれば良い。例えば、上型第1楔形部材1311a及び上型第2楔形部材1311bの一方又は両方において、その一方の面の一部のみがテーパ面であっても良い。より具体的には、例えば、図示の上型第1楔形部材1311a及び上型第2楔形部材1311bの少なくとも一方において、一方の面の先端側(細い側)のみがテーパ面であり、根本側(太い側)は水平面であっても良い。
【0063】
上型第2楔形部材保持部材1321の上面は、上型第2楔形部材1311bの下面と接している。一方、プラテン1340の下面は、上型第1楔形部材1311aの上面と接している。すなわち、一対の上型楔形部材は、上型第2楔形部材保持部材1321の上面とプラテン1340の下面とに挟まれるように配置されている。そして、上型第2楔形部材保持部材の弾性部材1322及び上型第2楔形部材保持部材1321を用いて、上型第1楔形部材1311aと上型第2楔形部材1311bとが接した状態を保っている。
【0064】
上型キャビティブロック位置変更機構設置部底面部材は、上部の部材1342及び下部の部材1343により形成される。上型キャビティブロック位置変更機構設置部底面部材1343は、図示のとおり、その下面に、上型キャビティ枠部材1102及び1103を取り付けることができる。後述するように、上型キャビティ枠部材1102及び1103は、上型キャビティブロック位置変更機構設置部底面部材1343に対し着脱可能である。また、上型キャビティブロックピラー1304は、上型キャビティブロック位置変更機構設置部底面部材1342及び1343を上下方向に貫通しており、上下動可能である。上型キャビティブロック駆動機構弾性部材1322は、上型第2楔形部材保持部材1321の下面と上型キャビティブロック位置変更機構設置部底面部材1342の上面とに挟まれるように配置され、上下方向に伸縮可能である。上型キャビティブロック位置変更機構設置部枠部材1341は、その上端が上型キャビティブロック位置変更機構設置部ベース部材1340の下面に、下端が上型キャビティブロック位置変更機構設置部底面部材1342の上面に、それぞれ接続されている。また、上型キャビティブロック位置変更機構設置部枠部材1341は、上型第2楔形部材保持部材1321と、上型キャビティブロック保持部材1302と、一対の上型楔形部材とを取り囲むように配置されている。
【0065】
エアベント開閉機構1330は、エアベントピン動力機構1331と、エアベントピン1332とを含む。エアベントピン1332は、図示のとおり、上型キャビティ枠部材1102の上部と、上型キャビティブロック位置変更機構設置部底面部材1342及び1343、上型キャビティブロック位置変更機構設置部枠部材1341、並びにプラテン1340とを、上下方向に貫通しており、上下動可能である。エアベントピン動力機構1331によってエアベントピン1332を上下動させることで、後述するように、エアベント溝1104を開閉可能である。なお、エアベントピン動力機構1331としては、特に限定されないが、例えば、サーボモータ、エアーシリンダー等を用いることができる。
【0066】
なお、上型キャビティブロック位置変更機構設置部(一方の型キャビティブロック位置変更機構設置部)1300に設置される「上型キャビティブロック位置変更機構(一方の型キャビティブロック位置変更機構)」は、本実施例では、上型キャビティブロック駆動機構(一方の型キャビティブロック駆動機構)1301と、上型楔形機構(一方の型楔形機構)1310とを含む。しかし、本発明は、これに限定されず、例えば、上型キャビティブロック位置変更機構(一方の型キャビティブロック位置変更機構)が、さらに、他の構成要素を含んでいてもよい。
【0067】
下型キャビティブロック位置変更機構設置部1400は、図示のとおり、下型楔形機構(他方の型楔形機構)1410と、下型取付部材(他方の型取付部材)1421と、プラテン(下型第2楔形部材保持部材、又は、他方の型第2楔形部材保持部材、下型第2コッター保持部材、若しくは他方の型第2コッター保持部材ともいう)1422とを含む。
【0068】
下型楔形機構1410は、図示のとおり、下型第1楔形部材(他方の型第1楔形部材、下型第1コッター、又は他方の型第1コッターともいう)1411aと、下型第2楔形部材(他方の型第2楔形部材、下型第2コッター、又は他方の型第2コッターともいう)1411bと、下型楔形部材動力伝達部材(他方の型楔形部材動力伝達部材、下型コッター動力伝達部材、又は他方の型コッター動力伝達部材ともいう)1412と、下型楔形部材駆動機構(他方の型楔形部材駆動機構、下型コッター駆動機構、又は他方の型コッター駆動機構ともいう)1413とを含む。図1に示すように、下型第1楔形部材1411aと下型第2楔形部材1411bとは、それぞれ、厚み方向(図上下方向)における他方の面が、テーパ面である。より具体的には、図示のとおり、下型第1楔形部材1411aの上面及び下型第2楔形部材1411bの下面が、それぞれテーパ面である。下型第1楔形部材1411aと下型第2楔形部材1411bとは、互いのテーパ面が対向するように、配置されている。
【0069】
また、下型第1楔形部材1411aは、下型楔形部材動力伝達部材1412を介して下型楔形部材駆動機構1413に連結している。そして、下型楔形部材駆動機構1413により、下型第1楔形部材1411aと下型第2楔形部材1411bとにより形成される一対の下型楔形部材(一対の他方の型楔形部材。以下、単に「一対の下型楔形部材」、「下型楔形部材」又は「下型コッター」ということがある。)のテーパ面のテーパ方向(図左右方向)にスライドさせることで、一対の下型楔形部材の厚み方向の長さを変化可能である。例えば、下型第1楔形部材1411aをその先端方向に向けてスライドさせると、下型第2楔形部材1411bは、下型第1楔形部材1411aに対し相対的に逆方向にスライドすることになる。そうすると、一対の下型楔形部材の厚み方向(図上下方向)の長さが大きくなる。また、例えば、逆に、下型第1楔形部材1411aをその後端方向に向けてスライドさせることで、一対の下型楔形部材の厚み方向(図上下方向)の長さを小さくすることが可能である。これにより、後述するように、上下方向(型開閉方向)における下型キャビティブロック1201の位置を変更可能である。これにより、例えば、後述する成形対象物10における基板11の厚みがばらついても(例えば、後述する図6における左右の基板11の厚みが異なっても)、各下型キャビティブロック1201(例えば、図6における左右の下型キャビティブロック1201)の位置を適切に変更(調整)することにより、左右の基板11を適切な押圧力でクランプすることが可能となる。
【0070】
なお、図1の例では、下型楔形部材駆動機構1413により、一対の下型楔形部材の下側の下型第1楔形部材1411aを水平(図左右)方向に摺動(スライド)させることができる。しかし、これに限定されず、例えば、下型楔形部材駆動機構1413により、上側の下型第2楔形部材1411bをスライド可能であっても良いし、下型第1楔形部材1411a及び下型第2楔形部材1411bの両方をスライド可能であっても良い。また、下型楔形部材駆動機構1413としては、特に限定されないが、例えば、サーボモータ、エアーシリンダー等を用いることができる。
【0071】
また、図1では、下型第1楔形部材1411a及び下型第2楔形部材1411bのそれぞれ一方の面の全体がテーパ面である。しかし、本発明はこれに限定されず、少なくとも一方の楔形部材を、テーパ面に沿ってスライドさせることが可能であれば良い。例えば、下型第1楔形部材1411a及び下型第2楔形部材1411bの一方又は両方において、その一方の面の一部のみがテーパ面であっても良い。より具体的には、例えば、図示の下型第1楔形部材1411a及び下型第2楔形部材1411bの少なくとも一方において、一方の面の先端側(細い側)のみがテーパ面であり、根本側(太い側)は水平面であっても良い。また、図1では、下型第1楔形部材1411aと下型第2楔形部材1411bとが接していないが、上型楔形機構1310と同様に、下型第1楔形部材1411aと下型第2楔形部材1411bとが接した状態を保つようにしてもよい。
【0072】
下型第2楔形部材保持部材1422の上面は、下型第1楔形部材1411aの下面と接している。一方、下型キャビティブロックピラー1204の下端は、下型第2楔形部材1411bの上面に接続されている。すなわち、一対の下型楔形部材は、下型第2楔形部材保持部材1422の上面と下型キャビティブロックピラー1204の下端とに挟まれるように配置されている。そして、一対の下型楔形部材の厚み方向の長さを変化させることで、下型キャビティブロック1201を上下動可能である。
【0073】
下型取付部材1421は、下型第2楔形部材保持部材1422の上方に配置され、下型第2楔形部材保持部材1422に対し、相対的に上下しないように固定されている。下型取付部材1421と下型第2楔形部材保持部材1422とに挟まれた空間内において、一対の下型楔形部材を前述のように駆動させ、その厚み方向の長さを変化させることが可能である。下型取付部材1421の上面には、下型サイドブロック1202及びポットブロック1203が設置されている。また、下型キャビティブロックピラー1204は、下型取付部材1421内を上下方向に貫通しており、上下動可能である。下型弾性部材1205は、下型キャビティブロック1201の下面と下型取付部材1421の上面とに挟まれており、前述のとおり、型開閉方向(図上下方向)に伸縮可能である。
【0074】
なお、下型キャビティブロック位置変更機構設置部(他方の型キャビティブロック位置変更機構設置部)1400に設置される「下型キャビティブロック位置変更機構(他方の型キャビティブロック位置変更機構)」は、本実施例では、下型楔形機構(他方の型楔形機構)1410を含む。しかし、本発明は、これに限定されず、例えば、下型キャビティブロック位置変更機構(他方の型キャビティブロック位置変更機構)が、さらに、他の構成要素を含んでいてもよい。
【0075】
図1の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法は、例えば、図2~21に示すようにして行うことができる。
【0076】
まず、図2~4に示すようにして、上型キャビティブロック1101の位置を予め設定された高さ位置に固定し、上型キャビティ1106の深さを変更する(一方の型キャビティブロック固定工程)。具体的には、以下のとおりである。
【0077】
まず、図2に示すとおり、上型キャビティブロック駆動機構1301を用いて、上型キャビティブロック1101を矢印c1の方向に下降させ、上型キャビティブロック1101の高さ位置を設定する。このとき、上型キャビティ1106が、所定の(目的とする)深さ未満になるまで上型キャビティブロック1101を下降させる。後述するように、再度上型キャビティブロック1101を上昇させることで、上型キャビティ1106を所定の(目的とする)深さとする。
【0078】
つぎに、図3に示すとおり、左右の上型第1楔形部材1311aを、それぞれ、その先端方向(矢印e1の方向)に移動させる。これにより、上型第1楔形部材1311a及び上型第2楔形部材1311bからなる一対の上型楔形部材の、厚み方向(型開閉方向、図上下方向)の長さが大きくなる。そして、図示のとおり、上型第2楔形部材保持部材1321が、上型第2楔形部材1311bにより押し下げられて下降する。このとき、上型第2楔形部材保持部材1321を、所定の(目的とする)上型キャビティ1106の深さに対応する位置まで下降させ、上型キャビティブロック1101の高さ位置を設定する。そして、この位置で上型第1楔形部材1311a及び上型第2楔形部材1311bを固定させる。言い換えれば、上型第1楔形部材1311a及び上型第2楔形部材1311bを用いて、高さ位置まで移動させた上型キャビティブロック1101を下型と離れる方向の位置を制限するように固定させる。
【0079】
つぎに、図4に示すとおり、上型キャビティブロック駆動機構1301を用いて、上型キャビティブロック1101を矢印d1の方向に上昇させる。このとき、図示のとおり、上型キャビティブロック保持部材1302が上型第2楔形部材保持部材1321に接触するまで上昇させる。これにより、上型キャビティブロック1101が設定された高さ位置で固定され、左右のそれぞれの上型キャビティ1106が、目的とする深さ(図右側ではD1、左側ではD2)となる。なお、図4では、右側の深さD1と左側の深さD2とが同じ例を示しているが、D1とD2とが異なる深さ(高さ)でもよい。図5以降では、図示の便宜のために、上型キャビティ1106の左右の深さが同じ例を示しているが、図4において、D1とD2とを異なる深さに設定し、上型キャビティ1106の左右の深さが異なったまま樹脂成形を行ってもよい。また、図5~22では、製造される樹脂成形品の樹脂厚み(パッケージ厚み)が左右で同じ例を示しているが、この樹脂厚みが左右で異なってもよい。
【0080】
つぎに、図5に示すように、上型1100の型面(上型面)に離型フィルム40を供給する。そして、吸着等によって上型面を離型フィルム40で被覆する(一方の型面被覆工程)。吸着には、後述するように、離型フィルム吸着機構(図5では、図示せず)を用いてもよい。また、離型フィルム40を吸着させる「上型1100の型面(上型面)」は、図示のとおり、上型キャビティ1106の型面及び上型キャビティ枠部材1102の下面を含む。さらに、このとき、図示のとおり、エアベント溝1104内部にも離型フィルム41を供給する。図5の状態では、エアベント溝1104が塞がれていないため、エアベント溝1104を介して離型フィルム40を吸着できる。
【0081】
なお、離型フィルム40の吸着は、特に限定されないが、例えば、吸引ポンプ等を用いて離型フィルム40及び41を上型面及びエアベント溝1104に吸着させることができる。より具体的には、離型フィルム40の吸着は、例えば、図54に示すようにして行うことができる。図54においては、プレス部3100を含む樹脂成形装置が、離型フィルム吸着機構1351を有する。離型フィルム吸着機構1351は、特に限定されないが、例えば、吸引ポンプ等を用いることができる。プラテン1340と、上型キャビティブロック位置変更機構設置部枠部材1341と、上型キャビティブロック位置変更機構設置部底面部材1342及び1343と、上型キャビティ枠部材1102及び1103とには、離型フィルム吸着配管1352が設けられている。離型フィルム吸着配管1352は、枝分かれしており、枝分かれしたそれぞれの一端が、上型キャビティ枠部材1102及び1103の下端に、離型フィルム吸着穴1353として開口している。そして、離型フィルム吸着配管1352の他端から、離型フィルム吸着機構1351により吸引することで、離型フィルム吸着穴1353を介して、離型フィルム40及び41を上型面及びエアベント溝1104に吸着させることができる。
【0082】
また、離型フィルム40及び41は、例えば、離型フィルム搬送機構(図示せず)等により、成形型の位置まで搬送し、その後、前述のとおり上型1100の型面(上型面)に供給してもよい。
【0083】
つぎに、図6に示すとおり、ポット1211内にタブレット(樹脂材料)20aを供給する。これとともに、図示のとおり、下型キャビティブロック1201上面に成形対象物10を供給する(成形対象物供給工程)。樹脂材料20aは、例えば、熱硬化性樹脂でもよいが、これに限定されず、例えば、熱可塑性樹脂でもよい。このとき、あらかじめ、ヒータ(図示せず)により、上型1100及び下型1200を加熱し昇温させておいてもよい。また、例えば、樹脂材料20a及び成形対象物10は、それぞれ、搬送機構(図示せず)により成形型の位置まで搬送し、成形型に供給してもよい。
【0084】
また、成形対象物10は、図示のとおり、基板11と、チップ12とを含む。チップ12は、基板11における一方の面(図では、上型キャビティ1106側の面)に固定されている。なお、同図では、1つの基板11に対しチップ12が2つずつ固定されているが、チップ12の数は、これに限定されず任意である。また、本発明について、成形対象物の構成はこれに限定されず、例えば、基板上に、チップに加え、又はこれに代えて任意の構成要素が固定されていてもよいし、成形対象物が基板のみからなっていてもよい。
【0085】
つぎに、図7に示すとおり、駆動源(図示せず)により、下型1200を矢印X1の方向に上昇させ、基板11を、下型キャビティブロック1201と上型キャビティ枠部材1102とで挟む。このとき、図示のとおり、あらかじめ昇温された下型1200の熱により、樹脂材料20aが溶融して溶融樹脂20bに変化している。
【0086】
つぎに、図8に示すとおり、下型1200を矢印X2の方向にさらに上昇させる。これにより、下型キャビティブロック1201と上型キャビティ枠部材1102とで挟まれた基板11に対し、下型キャビティブロック1201による上向きの圧力をかける。このようにして、基板11を、下型キャビティブロック1201と上型キャビティ枠部材1102とで挟んで押圧し、クランプする(成形対象物クランプ工程)。
【0087】
つぎに、図9に示すとおり、下型第1楔形部材1411aを、その先端方向(矢印a1の方向)に移動させ、下型第2楔形部材1411bに接触させる。この位置で下型第1楔形部材1411a及び下型第2楔形部材1411bを固定することで、下型キャビティブロック1201の上下方向の位置を、この位置で固定させる。
【0088】
つぎに、図10に示すとおり、下型1200を矢印Y1の方向に下降させ、わずかに型を開く。
【0089】
つぎに、図11に示すとおり、下型第1楔形部材1411aを先端方向(矢印a2の方向)にわずかに移動させる。これにより、基板11の締代分を考慮して、下型第1楔形部材1411a及び下型第2楔形部材1411bからなる一対の下型コッターの厚み方向の長さを若干増大させる。
【0090】
つぎに、図12に示すとおり、下型1200を矢印X3の方向に上昇させ、再度、成形型を締める。さらに、減圧機構(図示せず)を用いて、成形型内(上型キャビティ1106内等)を減圧する。このとき、図13に示すように、下型1200に矢印X4の方向に上向きの力を加え続ける。下型1200をこの位置(以下「1次クランプ位置」という場合がある。)に固定して、以下に示すとおり、溶融樹脂20bを上型キャビティ1106内に注入する(樹脂注入工程)。
【0091】
つぎに、図14に示すとおり、プランジャ1212を上向きに(矢印g1の方向に)移動させ、ポット1211内の溶融樹脂20bを上型キャビティ1106内に押し込む。
【0092】
さらに、図15に示すとおり、エアベントピン動力機構1331によってエアベントピン1332を下向きに(矢印h1の方向に)押し下げ、エアベント溝1104を塞ぐ。その後、同図に示すとおり、プランジャ1212を、矢印g2の方向に、さらに上昇させる。これにより、上型キャビティ1106内が、溶融樹脂20bでほぼ充填される。そして、この位置でプランジャ1212をいったん停止させる。このとき、上型キャビティブロック1101は、上型楔形機構1310を用いて固定されている。さらに、下型キャビティブロック1201は、下型楔形機構1410を用いて固定されている。このように、上型キャビティブロック1101及び下型キャビティブロック1201が固定されていることで、上型キャビティ1106内に樹脂圧が加わっても、上型キャビティブロック1101及び下型キャビティブロック1201が型開閉方向に移動することを抑制できる。
【0093】
なお、エアベントピン1332の動作について、図15の説明では、プランジャ1212を上向きに(矢印g1の方向に)移動させた直後(図14参照)に、エアベントピン1332を下向きに(矢印h1の方向に)押し下げているが、これに限定されない。具体的には、例えば、エアベントピン1332を下向きに(矢印h1の方向に)押し下げるタイミングは、プランジャ1212を上向きに(矢印g1の方向に)移動させた後から、図21を参照して後述する、下型1200を矢印Y2の方向に下降させ、型開きする前までであればいつでもよい。さらに、樹脂成形に用いる樹脂材料によっては、エアベントピン動力機構1331、エアベントピン1332及びエアベント溝1104によるエアベント動作を行わなくてもよい。
【0094】
さらに、図16~21に示すとおり、上型楔形機構1310と上型キャビティブロック駆動機構1301とを用いて上型キャビティ1106の深さを変化させて樹脂成形を行う(樹脂成形工程)。
【0095】
図16の矢印j1に示すとおり、プランジャ1212を所定の位置まで下降させる。その後に、上型キャビティブロック駆動機構1301及び上型キャビティブロック1101を予め設定された高さ位置まで矢印V1の方向に下降させる。なお、プランジャ1212の下降(矢印j1)後に上型キャビティブロック駆動機構1301及び上型キャビティブロック1101の下降(矢印V1)を行う例を説明したが、これらの動作の順序は特に限定されず、例えば、同時でもよい。また、プランジャ1212の下降(矢印j1)後に上型キャビティブロック駆動機構1301及び上型キャビティブロック1101の下降(矢印V1)を一回行う例を説明したが、この回数も特に限定されず、複数回繰り返してもよい。ここで説明する樹脂成形工程での予め設定された高さ位置は、上述の一方の型キャビティブロック固定工程(図2図4参照)での予め設定された高さ位置とは異なる高さ位置をいう。
【0096】
つぎに、図17の矢印e2に示すとおり、上型第1楔形部材1311aを、その先端方向に移動させ、上型コッター(上型第1楔形部材1311a及び上型第2楔形部材1311b)の厚み方向の長さが所定の長さになったところで停止させる。この所定の長さは、目的とする上型キャビティ1106の深さに対応し、予め設定された上型キャビティブロック1101の高さ位置に対応する。これにより、図示のとおり、上型第2楔形部材保持部材1321が下降し、上型キャビティブロック保持部材1302に接触する。なお、このとき、矢印V2に示すとおり、上型キャビティブロック1101に下向きの力を加え続けてもよい。また、矢印V2に示す下向きの力を加えずに、上型キャビティブロック1101を図示の位置で固定してもよい。
【0097】
つぎに、図18の矢印W1に示すとおり、上型キャビティブロック駆動機構1301に上向きの力を加える。これにより、上型キャビティブロック1101を、図示の位置で固定する。なお、ここで、上型キャビティブロック駆動機構1301に上向きの力を加えるこことなく、上型キャビティブロック1101を、図示の位置で固定することもできる。
【0098】
つぎに、図19の矢印X5に示すとおり、下型1200に上向きの力を加える。これにより、基板11に対するクランプ力が最大になり、下型1200が停止する。以下、この下型1200の位置を「2次クランプ位置」という場合がある。なお、このとき、プランジャ1212は動かさない。
【0099】
つぎに、図20の矢印g3に示すとおり、溶融樹脂20bにかかる圧力が所定の圧力となるまでプランジャ1212を上昇させる。なお、本実施例では、図19の動作後に図20の動作を行っているが、図19の動作と図20の動作とは同時に行ってもよい。
【0100】
そして、図21に示すとおり、溶融樹脂20bが硬化して硬化樹脂(封止樹脂)20及び余剰樹脂(不要樹脂部)20dとなる。以上のようにして、樹脂成形工程を行うことができる。なお、溶融樹脂20bを硬化させて硬化樹脂20とする方法は、特に限定されない。例えば、溶融樹脂20bが熱硬化性樹脂の場合は、さらに加熱を続けることによって硬化させてもよい。また、例えば、溶融樹脂20bが熱可塑性樹脂の場合は、成形型への加熱を停止し、そのまま放冷することによって硬化させてもよい。さらに、図21~31に示すとおり、溶融樹脂20bが硬化して硬化樹脂(封止樹脂)20及び余剰樹脂(不要樹脂部)20dとなった後に、離型動作(離型工程)を行う。
【0101】
以下、図21~31の離型工程について説明する。まず、図21に示すとおり、上型1100の型面に対する離型フィルム40の吸着をいったん解除する(OFFにする)。ここで、上型1100の型面に離型フィルム40を吸着させたままだと、以下の工程において、上型1100の型面と、基板11及び硬化樹脂20とが離型フィルム40を引っ張り合うことになるので、それを避けるためである。このように離型フィルム40を引っ張り合うと、離型フィルム40が伸びた箇所や基板11が浮いた箇所から、エアが入り込みリークが発生するおそれがある。
【0102】
つぎに、図22の矢印j2に示すとおり、不要樹脂部20dのうちポット1211内の部分(以下「カル」又は「カル部」という場合がある。)とプランジャ1212とがわずかに接触する位置まで下降させる。この位置は、プランジャ1212がポット1211内の不要樹脂部20dを支持可能な位置である。また、この位置は、硬化樹脂20(樹脂材料20a)の種類等により適宜変更可能である。
【0103】
つぎに、図23の矢印j3に示すとおり、プランジャ1212を下型1200が下降可能な位置までさらに下降させ、カルとプランジャ1212とを完全に離す。
【0104】
つぎに、図24の矢印g4に示すとおり、プランジャ1212を、図22と同じ位置まで再度上昇させる。
【0105】
つぎに、図25の矢印Y2に示すとおり、下型1200を下降させて停止させる。このとき、下型1200の下降後の停止位置は、収縮している下型弾性部材1205が伸長し始める直前の位置とする。また、このとき、プランジャ1212は動かさず、プランジャ1212で不要樹脂部20dのカル部を押さえたままにする。下型1200とプランジャ1212とを同時に(一度に)下降させると、不要樹脂部20dのうちカル部以外の部分(以下「ランナ」又は「ランナ部」という場合がある。)が折れるおそれがあるためである。
【0106】
つぎに、図26の矢印Y3に示すとおり、下型1200をさらに下降させて停止させる。このとき、下型1200の下降後の停止位置は上型キャビティ枠部材1102と下型キャビティブロック1201との基板のクランプ状態が維持される位置とする。このとき、同図の矢印g5に示すとおり、プランジャ1212を下型1200に対して相対的に上昇させ、図22と同じ位置で保つ。
【0107】
つぎに、図27の矢印Y4に示すとおり、下型1200をさらに下降させて停止させる。このとき、下型1200の下降後の停止位置は、離型フィルム40と基板11との間にごくわずかなスペース(隙間)Fができる距離とする。スペースFの幅は、基板11に対する下型キャビティブロック1201の吸着がはずれて基板11が浮き上がったとしても、基板11を吸着し直せる距離とする。スペースFの幅は、具体的には、特に限定されないが、例えば、0.1mm程度であってもよい。
【0108】
つぎに、図28の矢印c3に示すとおり、上型キャビティブロック駆動機構1301及び上型キャビティブロック1101をわずかに下降させる。これにより、図示のとおり、上型第2楔形部材保持部材1321と上型キャビティブロック保持部材1302との間にわずかなスペース(隙間)Gができる。このスペースGは、つぎの工程(図29)で上型楔形機構1310の動作を可能にするために上型第2楔形部材保持部材1321と上型キャビティブロック保持部材1302とを離すのが目的であるから、わずかな隙間でよい。スペースGの幅は、具体的には、特に限定されないが、例えば、スペースFと同程度であってもよい。なお、矢印c3に示す上型キャビティブロック1101の下降により、硬化樹脂20が上型キャビティブロック1101で下方に押し付けられることになる。
【0109】
つぎに、図29の矢印f1に示すとおり、上型第1楔形部材1311aを後退させる。これにより、図示のとおり、上型コッターにおける上型第1楔形部材1311aと上型第2楔形部材1311bとの間に、上型キャビティブロック1101を上昇させるための隙間ができる。
【0110】
つぎに、図30に示すとおり、再度、上型1100の型面に離型フィルム40を吸着させる(吸着をONにする)。そして、同図の矢印d3に示すとおり、上型キャビティブロック1101を上昇させる。これにより、離型フィルム40及び41並びに上型1100を、硬化樹脂20及び基板11から離型させる。
【0111】
そして、図31の矢印Y5に示すとおり、下型1200をさらに下降させ、離型フィルム40及び41並びに上型1100を、硬化樹脂20及び基板11から完全に離す。これにより、離型が完了する。このようにして、成形対象物10(基板11及びチップ12)が硬化樹脂20で封止された樹脂成形品を製造することができる。その後、アンローダ(図示せず)等で樹脂成形品を樹脂成形装置1000のプレス部3100の外に運び出して回収する。
【0112】
本実施例では、上型キャビティ1106の深さ(パッケージ厚み)を大きめにして樹脂を充填させ、その後に上型キャビティ1106の深さを減少させる例を示した。最初から上型キャビティ1106の深さが小さいと、チップ12と離型フィルム40との間の空隙が狭くなり、その空隙(チップ12の上方)に樹脂が充填されにくくなるおそれがある。また、例えば、チップの実装方法がワイヤーボンディングの場合、ワイヤー流れが起こるおそれがある。そこで、本実施例のように、まず、上型キャビティ1106の深さを大きめにして樹脂を充填させ、その後に上型キャビティ1106の深さを減少させれば、チップ12の上方に樹脂を充填しやすくなる。
【0113】
本発明では、例えば、本実施例で説明したように、成形対象物の厚みに応じて一方の型キャビティブロックの位置を変更可能である。これにより、一方の型キャビティの深さを変更できるので、成形対象物の厚みにばらつきがあっても成形不具合を抑制又は防止できる。具体的には、本発明によれば、例えば、成形型の締めが緩すぎる(成形対象物の厚みに対して一方の型キャビティの深さが大きすぎる)ことによる樹脂漏れを抑制又は防止できる。また、本発明によれば、例えば、逆に成形型の締めがきつすぎる(成形対象物の厚みに対して一方の型キャビティの深さが小さすぎる)ことによる成形対象物の破損を抑制又は防止できる。これにより、本発明では、樹脂成形品の不良発生を抑制又は防止できるため、歩留まりよく樹脂成形品を製造することができる。
【0114】
さらに、本発明では、例えば、本実施例で説明したように、一方の型楔形機構と一方の型キャビティブロック駆動機構とを用いて一方の型キャビティの深さを変化させて樹脂成形を行うことが可能である。これにより、成形対象物の厚みにばらつきがあっても成形不具合を抑制又は防止できる。具体的には、例えば、本実施例で説明したように、上型キャビティ1106の深さを大きめにして樹脂を充填させ、その後に上型キャビティ1106の深さを減少させれば、チップ12の上方に樹脂を充填しやすくなる。これにより、基板(成形対象物)11及びチップ12の厚みにばらつきがあっても成形不具合を抑制又は防止できる。
【0115】
なお、一方の型キャビティブロックの位置変更には、例えば、一方の型楔形機構を用いてもよい。また、この位置変更には、必要に応じ、例えば、本実施例で説明したように、一方の型キャビティブロック駆動機構、他方の型楔形機構等を用いてもよい。
【0116】
また、本発明によれば、前述のとおり、一方の型キャビティブロック駆動機構を用いて一方の型キャビティブロックの高さ位置を設定し、かつ、一方の型楔形機構を用いて、設定した高さ位置まで移動させた一方の型キャビティブロックにおける他方の型と離れる方向の位置を制限するように固定した状態で、一方の型楔形機構と一方の型キャビティブロック駆動機構とを用いて離型動作を行うことができる。これにより、成形対象物の厚みにばらつきがあっても離型動作の不具合を抑制又は防止できる。
【0117】
また、例えば、樹脂成形後に、単に型開きをした場合、前述のとおり、一方の型の型面と樹脂成形品とで離型フィルムを引っ張り合うことになるおそれがある。すると、離型フィルムが伸びた箇所や樹脂成形品が浮いた箇所から、エアが入り込みリークが発生するおそれがある。この問題は、成形対象物の厚みにばらつきがある場合、離型フィルムに微粘着性がある場合等には、特に顕著になる。また、樹脂成形直後には、硬化樹脂の強度が低いために、硬化樹脂が離型フィルムに引っ張られることで変形するおそれがある。同様に、薄型の樹脂成形品の場合、基板が薄いために、基板が離型フィルムに引っ張られることで変形するおそれがある。そこで、本実施例のように、いったん離型フィルムの吸着を解除(OFF)してから一方の型楔形機構と一方の型キャビティブロック駆動機構とを用いて離型動作を行い、再度離型フィルムを一方の型キャビティの型面に吸着させれば、この問題を解決できる。
【0118】
なお、本実施例では、上型キャビティ(一方の型キャビティ)1106を離型フィルム40で被覆して樹脂成形を行う例を説明した。しかし、本発明はこれに限定されず、離型フィルムを用いなくてもよい。離型フィルムを用いない場合は、例えば、成形後の樹脂を一方の型キャビティから離型しやすくするために、一方の型(本実施例では上型1100)に、離型用のエジェクターピン等を設けてもよい。
【0119】
また、本発明の樹脂成形品の製造方法は、図2~31で説明した方法に限定されない。例えば、図2~31ではトランスファ成形の例を示したが、本発明では、圧縮成形等の他の任意の樹脂成形方法を用いることができる。また、トランスファ成形の方法も、図2~31の方法に限定されず、任意である。
【0120】
また、本発明は、本実施例には限定されず、任意の変更が可能である。例えば、本実施例では、「一方の型」が上型で、「他方の型」が下型である。しかし、本発明は、これに限定されず、例えば、逆に、「一方の型」が下型で、「他方の型」が上型であってもよい。
【0121】
図1~31および54では、樹脂成形装置のプレス部3100を主に説明したが、樹脂成形装置は、プレス部3100以外の任意の構成要素を含んでいてもよい。図56の平面図に、プレス部3100を含む樹脂成形装置の全体の構成の一例を示す。図示のとおり、この樹脂成形装置1000は、樹脂封止前の成形対象物10(以下、「封止前基板10」という。)及び樹脂タブレット20aを供給する供給モジュール2000と、樹脂成形する例えば2つの樹脂成形モジュール3000A、3000Bと、樹脂成形品を搬出するための搬出モジュール4000とを、それぞれ構成要素として備えている。搬出モジュール4000は、成形済の樹脂成形品を収容する収容部4100を有する。なお、構成要素である供給モジュール2000と、樹脂成形モジュール3000A、3000Bと、搬出モジュール4000とは、それぞれ他の構成要素に対して互いに着脱されることができ、かつ、交換されることができる。
【0122】
また、樹脂成形装置1000は、供給モジュール2000により供給される封止前基板10及び樹脂タブレット20aを樹脂成形モジュール3000A、3000Bに搬送する搬送機構5000(以下、「ローダ5000」という。)と、樹脂成形モジュール3000A、3000Bにより樹脂成形された樹脂成形品を搬出モジュール4000に搬送する搬送機構6000(以下、「アンローダ6000」という。)とを備えている。
【0123】
図56の供給モジュール2000は、基板供給モジュール7000及び樹脂供給モジュール8000を一体化したものである。
【0124】
基板供給モジュール7000は、基板送出部7100と、基板供給部7200とを有する。基板送出部7100は、マガジン内の封止前基板10を基板整列部に送り出すものである。基板供給部7200は、基板送出部7100から封止前基板10を受け取り、受け取った封止前基板10を所定方向に整列させて、ローダ5000に受け渡すものである。
【0125】
樹脂供給モジュール8000は、樹脂送出部8100と、樹脂供給部8200とを有する。樹脂送出部8100は、樹脂タブレット20aをストックするストッカ(図示せず)から樹脂タブレット20aを受け取り、樹脂供給部82に樹脂タブレット20aを送り出すものである。樹脂供給部8200は、樹脂送出部8100から樹脂タブレット20aを受け取り、受け取った樹脂タブレット20aを所定方向に整列させて、ローダ5000に受け渡すものである。
【0126】
樹脂成形モジュール3000A、3000Bは、それぞれプレス部3100を有している。各プレス部3100は、図1~21で説明したように、昇降可能な成形型である下型1200と、下型1200の上方に相対向して固定された成形型である上型1100とを有し、さらに、下型1200及び上型1100を型締め又は型開きするための型締め機構を有する。なお、型締め機構としては、特に限定されないが、例えば、サーボモータ等の回転を直線移動に変換するボールねじ機構を用いて成形型に伝達する直動方式のものや、サーボモータ等の動力源を例えばトグルリンクなどのリンク機構を用いて成形型に伝達するリンク方式のものを用いることができる。また、型締め機構には、例えば、下型1200及び上型1100の型締め時に生じるクランプ圧力を検出するクランプ圧力検出部(図示せず)が設けられていてもよい。クランプ圧力検出部は、特に限定されないが、例えば、ひずみゲージ、ロードセル、又は圧力センサであってもよい。このクランプ圧力検出部により検出されたクランプ圧力信号は、図56の制御部9000に送信される。
【0127】
下型1200の下型キャビティブロック1201には、図6で説明したとおり、ローダ5000により搬送された封止前基板10が装着される。また、下型1200のポット1211には、図6で説明したとおり、ローダ5000により搬送された樹脂タブレット20aが供給される。なお、ポット1211の数は限定されず、例えば、1でも複数でもよい。
【0128】
また、下型1200には、前述のとおり、ポット1211内を上下動可能なプランジャ1212が設けされている。プランジャ1212は、例えば、プランジャ駆動機構(図示せず)により上下動可能である。プランジャ駆動機構は、特に限定されないが、例えば、サーボモータとボールねじ機構とを組み合わせたものや、エアシリンダや油圧シリンダとロッドとを組み合わせたもの等を用いることができる。プランジャ駆動機構には、プランジャ駆動機構による樹脂のトランスファ圧力を検出するトランスファ圧力検出部(図示せず)が設けられている。トランスファ圧力とは、より具体的にいうと、ポット1211内の樹脂タブレット20aを加熱して溶融させた溶融樹脂をプランジャ1212で押圧するときにプランジャ1212に加わる圧力である。トランスファ圧力検出部は、特に限定されないが、例えば、ひずみゲージ、ロードセル、圧力センサ等であってもよい。このトランスファ圧力検出部により検出されたトランスファ圧力信号は、制御部9000に送信される。
【0129】
その他、上型1100と下型1200とには、それぞれヒータ等の加熱部(図示せず)が埋め込まれている。この加熱部により上型1100及び下型1200が加熱される。加熱温度は特に限定されないが、例えば、180℃程度であってもよい。
【0130】
なお、図56に示した樹脂成形装置の全体の構成は、一例であり、本発明は、これに限定されない。例えば、本実施例において、樹脂成形装置の全体の構成は、図56と同じでもよいし、異なっていてもよい。他の実施例においても同様である。
【実施例2】
【0131】
つぎに、本発明の別の実施例について説明する。
【0132】
本実施例では、本発明の樹脂成形品の製造方法の、実施例1とは別の一例について説明する。具体的には、上型キャビティ1106の深さ(パッケージ厚み)を小さ目にして樹脂を充填させ、その後に上型キャビティ1106の深さを増大させる例を示す。なお、本実施例における樹脂成形品の製造方法は、実施例1(図1)と同じ樹脂成形装置1000及びそのプレス部3100を用いて行う。
【0133】
本実施例における樹脂成形品の製造方法は、以下のようにして行うことができる。
【0134】
まず、図2~21の工程を、実施例1と同様にして行う。
【0135】
つぎに、図32の矢印g11に示すとおり、プランジャ1212をさらに上昇させ、上型キャビティ1106内を溶融樹脂20bでほぼ充填させる。より詳しくは、まず、図32に示すとおり、エアベントピン動力機構1331によってエアベントピン1332を下向きに(矢印h11の方向に)押し下げ、エアベント溝1104を塞ぐ。その後、同図に示すとおり、プランジャ1212を、矢印g11の方向に、さらに上昇させる。これにより、上型キャビティ1106内が、溶融樹脂20bでほぼ充填される。このとき、上型キャビティブロック1101は、上型楔形機構1310を用いて固定されている(第2一方の型キャビティブロック固定工程)。さらに、下型キャビティブロック1201は、下型楔形機構1410を用いて固定されている。このように、上型キャビティブロック1101及び下型キャビティブロック1201が固定されていることで、上型キャビティ1106内に樹脂圧が加わっても、上型キャビティブロック1101及び下型キャビティブロック1201が型開閉方向に移動することを抑制又は防止できる。
【0136】
なお、エアベントピン1332の動作について、図32の説明では、プランジャ1212を上向きに(矢印g11の方向に)移動させた直後に、エアベントピン1332を下向きに(矢印h11の方向に)押し下げているが、これに限定されない。具体的には、例えば、エアベントピン1332を下向きに(矢印h11の方向に)押し下げるタイミングは、プランジャ1212を上向きに(矢印g11の方向に)移動させた後から、下型1200を下降させ、型開きする前までであればいつでもよい。さらに、樹脂成形に用いる樹脂材料によっては、エアベントピン動力機構1331、エアベントピン1332及びエアベント溝1104によるエアベント動作を行わなくてもよい。
【0137】
さらに、図33~37に示すとおり、上型楔形機構1310と上型キャビティブロック駆動機構1301とを用いて上型キャビティ1106の深さを変化させて樹脂成形を行う(樹脂成形工程)。
【0138】
図33の矢印j11に示すとおり、プランジャ1212をわずかに下降させる。その後に、上型キャビティブロック駆動機構1301及び上型キャビティブロック1101を矢印V11の方向に下降させる。これにより、図示のとおり、上型第2楔形部材保持部材1321と上型キャビティブロック保持部材1302との間にわずかなスペース(隙間)Gができる。このスペースGは、つぎの工程(図34)で上型楔形機構1310の動作を可能にするために上型第2楔形部材保持部材1321と上型キャビティブロック保持部材1302とを離すのが目的であるから、わずかな隙間でよい。なお、プランジャ1212の下降(矢印j11)後に上型キャビティブロック駆動機構1301及び上型キャビティブロック1101の下降(矢印V11)を行う例を説明したが、これらの動作の順序は特に限定されず、例えば、同時でもよい。また、プランジャ1212の下降(矢印j11)後に上型キャビティブロック駆動機構1301及び上型キャビティブロック1101の下降(矢印V11)を一回行う例を説明したが、この回数も特に限定されず、複数回繰り返してもよい。
【0139】
つぎに、図34の矢印g12に示すとおり、プランジャ1212を上向きに移動させ、ポット1211内の溶融樹脂20bを上型キャビティ1106内に押し込む。これにより、図示のとおり、上型キャビティ1106の深さ(パッケージ厚み)が増大する。これにより、図示のとおり、上型キャビティブロック1101が上昇するとともに、上型第2楔形部材保持部材1321が押し上げられる。それにより、図34の矢印f11に示すとおり、上型第1楔形部材1311aが後退し、上型コッター(上型第1楔形部材1311a及び上型第2楔形部材1311b)の厚み方向の長さが減少する。
【0140】
つぎに、図35の矢印W11に示すとおり、上型キャビティブロック駆動機構1301に上向きの力を加える。これにより、上型キャビティブロック1101を、予め設定された高さ位置である図示の位置で固定する。なおここで、上型キャビティブロック駆動機構1301に上向きの力を加えるこことなく、上型キャビティブロック1101を、図示の位置で固定することもできる。ここで説明する樹脂成形工程での予め設定された高さ位置は、上述の一方の型キャビティブロック固定工程(図2図4参照)での予め設定された高さ位置とは異なる高さ位置をいう。
【0141】
つぎに、図36の矢印X15に示すとおり、下型1200に上向きの力を加える。これにより、基板11に対するクランプ力が最大になり、下型1200が停止する。以下、この下型1200の位置を「2次クランプ位置」という場合がある。なお、このとき、プランジャ1212は動かさない。
【0142】
さらに、図37の矢印g13に示すとおり、溶融樹脂20bにかかる圧力が所定の圧力となるまでプランジャ1212を上昇させる。なお、本実施例では、図36の動作後に図37の動作を行っているが、図36の動作と図37の動作とは同時に行ってもよい。
【0143】
さらに、実施例1と同様に、溶融樹脂20bを硬化させて硬化樹脂(封止樹脂)及び余剰樹脂(不要樹脂部)とする。以上のようにして、樹脂成形工程を行うことができる。そして、その後に、図21~31と同様にして型開きして離型する(離型工程)とともに、製造された樹脂成形品を、アンローダ等で樹脂成形装置1000のプレス部3100の外に運び出して回収する(図示せず)。以上のようにして、成形対象物10が硬化樹脂20で封止された樹脂成形品を製造することができる。
【0144】
本実施例では、上型キャビティ1106の深さ(パッケージ厚み)を小さ目にして樹脂を充填させ、その後に上型キャビティ1106の深さを増大させる例を示した。この方法は、例えば、基板11とチップ12との間に空隙がある場合等に、特に有効である。図55に、そのような成形対象物の例を示す。図示のとおり、この成形対象物10は、基板11の一方の面に、チップ12が、バンプ13を介して固定されている。バンプ13は複数であり、各バンプ13の間、すなわち基板11とチップ12との間には、空隙が存在する。この空隙は狭いため、広い空隙と比べて樹脂が充填されにくい。このような場合、チップ12上面(基板11と反対側の面)と一方の型キャビティブロックとの間の空隙が広いと、その空隙に優先的に樹脂が充填され、基板11とチップ12との間の空隙に樹脂が充填されないおそれがある。そこで、本実施例のように、まず、一方の型キャビティの深さ(パッケージ厚み)を小さ目にして樹脂を充填させ、その後に一方の型キャビティの深さを増大させる。このようにすれば、基板11とチップ12との間の狭い空隙にも樹脂が充填されやすい。すなわち、図6~38における成形対象物10(基板11及びチップ12)を、図55の成形対象物10(基板11、チップ12及びバンプ13)に変更して樹脂成形を行ってもよい。ただし、本発明において、成形対象物の構造は、これに限定されず、任意である。
【実施例3】
【0145】
つぎに、本発明のさらに別の実施例について説明する。
【0146】
本実施例では、樹脂成形品の製造方法において、成形対象物を、離型フィルムを介して一方の型キャビティブロックで押圧する例について説明する。この樹脂成形品の製造方法は、図1の樹脂成形装置を用いて行うことができる。
【0147】
本実施例における樹脂成形品の製造方法について、図38~53及び図12~31を用いて説明する。
【0148】
まず、図38に示すように、上型1100の型面(上型面)に離型フィルム40を供給する。そして、吸着等によって上型面を離型フィルム40で被覆する(一方の型面被覆工程)。吸着には、例えば、実施例1及び2と同様に、離型フィルム吸着機構(図38では、図示せず)を用いてもよい。より具体的には、離型フィルム40の吸着は、例えば、実施例1及び2と同様に、図54に示すようにして行うことができる。また、離型フィルム40を吸着させる「上型1100の型面(上型面)」は、図示のとおり、上型キャビティ1106の型面及び上型キャビティ枠部材1102の下面を含む。さらに、このとき、図示のとおり、エアベント溝1104内部にも離型フィルム41を供給する。図38の状態では、エアベント溝1104が塞がれていないため、エアベント溝1104を介して離型フィルム40を吸着できる。
【0149】
また、離型フィルム40及び41は、例えば、離型フィルム搬送機構(図示せず)等により、成形型の位置まで搬送し、その後、前述のとおり上型1100の型面(上型面)に供給してもよい。
【0150】
つぎに、図39に示すとおり、ポット1211内にタブレット(樹脂材料)20aを供給する。これとともに、図示のとおり、下型キャビティブロック1201上面に成形対象物10を供給する(成形対象物供給工程)。樹脂材料20aは、例えば、熱硬化性樹脂でもよいが、これに限定されず、例えば、熱可塑性樹脂でもよい。このとき、あらかじめ、ヒータ(図示せず)により、上型1100及び下型1200を、又は下型1200のみを、加熱し昇温させておいてもよい。また、例えば、樹脂材料20a及び成形対象物10は、それぞれ、搬送機構(図示せず)により成形型の位置まで搬送し、成形型に供給してもよい。
【0151】
本実施例では、成形対象物10は、図示のとおり、第1基板11と、チップ12と、第1接続部(第1接続端子)13と、第2接続部(第2接続端子)14と、第2基板15とを含む。第1基板11と第2基板15とは、それぞれの一方の面が、互いに対向するように配置されている。第1基板11と第2基板15とは、互いの対向面どうしが、接続端子14により接続されている。チップ12は、第1基板11における第2基板15との対向面上に、第1接続端子13により接続されている。そして、第1基板11と第2基板15との間を樹脂で満たすことにより、チップ12と、第1接続端子13と、第2接続端子14とを樹脂封止し、成形対象物10を樹脂成形して樹脂成形品を製造することができる。なお、同図では、1つの成形対象物10が、第1基板11及び第2基板15を1枚ずつ含むが、本発明は、これに限定されない。例えば、1つの成形対象物10が複数枚の第2基板15を含み、第1基板11上に、前記複数枚の第2基板15が搭載されてもよい。また、本実施例において、成形対象物10の構成は、これに限定されず、任意である。例えば、成形対象物10は、実施例1及び2の工程図で示した構成と同様に、基板11及びチップ12を有する構成でもよいし、図41で示したように、基板11とチップ12とバンプ13とを有する構成でもよい。
【0152】
つぎに、図40に示すとおり、駆動源(図示せず)により、下型1200を矢印X21の方向に上昇させ、第1基板11を、下型キャビティブロック1201と上型キャビティ枠部材1102とで挟む。このとき、図示のとおり、あらかじめ昇温された下型1200の熱により、樹脂材料20aが溶融して溶融樹脂(流動性樹脂)20bに変化している。なお、このとき、上型キャビティ1106の左右の深さは、同じ深さに設定してもよいが、異なる深さに設定してもよい。これにより、成形対象物10の高さが左右で異なっていても、同時に樹脂成形を行うことができる。
【0153】
つぎに、図41に示すとおり、下型1200を矢印X22の方向にさらに上昇させる。これにより、下型キャビティブロック1201と上型キャビティ枠部材1102とで挟まれた第1基板11に対し、下型キャビティブロック1201による上向きの圧力をかける。このようにして、第1基板11を、下型キャビティブロック1201と上型キャビティ枠部材1102とで挟んで押圧し、クランプする(成形対象物クランプ工程)。
【0154】
つぎに、図42に示すとおり、下型第1楔形部材1411aを、その先端方向(矢印a21の方向)に移動させ、下型第2楔形部材1411bに接触させる。この位置で下型第1楔形部材1411a及び下型第2楔形部材1411bを固定することで、下型キャビティブロック1201の型開閉方向の位置を、この位置で固定させる。
【0155】
つぎに、図43に示すとおり、上型キャビティブロック駆動機構1301により、上型キャビティブロック1101を矢印c21の方向に下降させる。これにより、離型フィルム40を介して、上型キャビティブロック1101と第2基板15とを接触させて、上型キャビティブロック1101の高さ位置を設定する。このとき、上型キャビティブロック1101による第2基板15の押圧力(クランプ力)を、ロードセル1303で測定しておく。これにより、第2基板15の押圧力を制御することが可能になる。そうすることで、前記押圧力が強くなり過ぎて成形対象物10が破損することを抑制できる。
【0156】
つぎに、図44に示すとおり、上型第1楔形部材1311aを、その先端方向(矢印e21の方向)に移動させる。これにより、上型コッター(上型第1楔形部材1311a及び上型第2楔形部材1311b)の厚み方向の長さを増大させて、図示のとおり、上型第2楔形部材保持部材1321を押し下げ、上型キャビティブロック保持部材1302に接触させる。この位置で上型第1楔形部材1311a、上型第2楔形部材1311b及び上型キャビティブロック保持部材1302を固定することで、上型キャビティブロック1101の型開閉方向の位置を、この位置で固定させる(一方の型キャビティブロック固定工程)。言い換えれば、上型コッター(上型第1楔形部材1311a及び上型第2楔形部材1311b)を用いて、高さ位置まで移動させた上型キャビティブロック1101を下型と離れる方向の位置を制限するように固定させる。
【0157】
つぎに、図45に示すとおり、下型1200を矢印Y21の方向に下降させ、わずかに型を開く。前記「わずかに型を開く」は、第2基板15と離型フィルム40とが非接触になるようにわずかに開くことをいう。具体的には、特に限定されないが、第2基板15と離型フィルム40との距離が、例えば、0.1mm程度等のわずかな距離となるようにすればよい。
【0158】
つぎに、図46に示すとおり、上型キャビティブロック駆動機構1301により、上型キャビティブロック1101を矢印c22の方向に再度下降させる。これにより、図示のとおり、再度、離型フィルム40を介して、上型キャビティブロック1101と第2基板15とを接触させる。このように、上型キャビティブロック1101を矢印c2の方向に再度下降させることで、上型キャビティブロック保持部材1302と上型第2楔形部材保持部材1321との間に、上型第2楔形部材1311bを下降させるためのスペースsができる。
【0159】
つぎに、図47に示すとおり、上型第1楔形部材1311aを、その先端方向(矢印e22の方向)にわずかに移動させる。このようにすることで、図47に示すとおり、上型第2楔形部材1311bを、第2基板15の締代分(型締め方向に収縮する寸法の分)を考慮して、図46の状態からわずかに下降させている。このように第2基板15の締代分を考慮することで、第2基板15と離型フィルム40との間に樹脂が入り込むことを抑制又は防止できる。
【0160】
つぎに、図48に示すとおり、上型キャビティブロック駆動機構1301を用いて、上型キャビティブロック1101を矢印d21の方向に上昇させる。これにより、図示のとおり、上型キャビティブロック保持部材1302と上型第2楔形部材保持部材1321とを接触させる。
【0161】
なお、本発明の樹脂成形品の製造方法における前記「一方の型キャビティブロック位置変更工程」は、例えば、図44~48で説明したようにして行うことができるが、この方法には限定されず、任意である。例えば、図44~48では、上型楔形機構(一方の型楔形機構)1310及び一方の型キャビティブロック駆動機構(一方の型キャビティブロック駆動機構)1301を両方用いて前記「一方の型キャビティブロック位置変更工程」を行った。しかし、前記「一方の型キャビティブロック位置変更工程」は、例えば、前記両方の機構のうち一方のみを用いて行ってもよいし、いずれも用いなくてもよい。また、前記「一方の型キャビティブロック位置変更工程」を行う具体的な方法及び手順も、図44~48の方法及び手順に限定されず、任意である。
【0162】
つぎに、図49に示すとおり、下型第1楔形部材1411aを先端方向(矢印a22の方向)にわずかに移動させる。これにより、第1基板11の締代分を考慮して、下型第1楔形部材1411a及び下型第2楔形部材1411bからなる一対の下型コッターの厚み方向の長さを若干増大させる。このとき、上型キャビティブロック保持部材1302には、図示のとおり、上型キャビティブロック駆動機構1301により、矢印d21の方向に上向きの力を加え続ける。
【0163】
つぎに、図50に示すとおり、下型1200を矢印X23の方向に上昇させ、再度、成形型を締める。これによって、樹脂成形される基板(成形対象物)10を、離型フィルム40を介して上型キャビティブロック1101によって押圧する(成形対象物押圧工程)。さらに、減圧機構(図示せず)を用いて、成形型内(上型キャビティ1106内等)を減圧する。このとき、図51に示すように、下型1200に矢印X24の方向に上向きの力を加え続ける。
【0164】
つぎに、図52に示すとおり、プランジャ1212を上向きに(矢印g21の方向に)移動させ、ポット1211内の流動性樹脂20bを上型キャビティ1106内に押し込む。
【0165】
さらに、図53に示すとおり、エアベントピン動力機構1331によってエアベントピン1332を下向きに(矢印h21の方向に)押し下げ、エアベント溝1104を塞ぐ。その後、同図に示すとおり、プランジャ1212を、矢印g22の方向に、さらに上昇させ、上型キャビティ1106内への流動性樹脂20bの最終充填を行う。このとき、上型キャビティブロック1101は、上型楔形機構1310を用いて固定されている。さらに、下型キャビティブロック1201は、下型楔形機構1410を用いて固定されている。このように、上型キャビティブロック1101及び下型キャビティブロック1201が固定されていることで、上型キャビティ1106内に樹脂圧が加わっても、上型キャビティブロック1101及び下型キャビティブロック1201が型開閉方向に移動することを抑制又は防止できる。
【0166】
さらに、実施例1と同様に、溶融樹脂20bを硬化させて硬化樹脂(封止樹脂)及び余剰樹脂(不要樹脂部)とする。以上のようにして、樹脂成形工程を行うことができる。そして、その後に、図21~31と同様にして型開きして離型する(離型工程)とともに、製造された樹脂成形品を、アンローダ等で樹脂成形装置1000のプレス部の外に運び出して回収する(図示せず)。以上のようにして、成形対象物10が硬化樹脂20で封止された樹脂成形品を製造することができる。
【0167】
以上、実施例1~3を用いて、本発明の樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法の例について説明した。ただし、本発明はこれらに限定されず、任意の変更が可能である。具体的には、例えば、以下のとおりである。
【0168】
本発明の樹脂成形装置は、例えば、成形型のみを他の成形型と交換することができる。これにより、異なる仕様の成形型による樹脂成形にも容易に対応できる。具体的には、例えば、必要なキャビティ形状にあわせて一方の型(図1~54では上型)キャビティブロックの形状を変更してもよい。また、例えば、他方の型(図1~54では下型)キャビティブロックの形状を、使用する基板の形状に合わせて変更してもよい。また、例えば、ポットブロックの形状を、使用する樹脂タブレット(樹脂材料)の数、形状等に合わせて変更してもよい。また、例えば、エアベント開閉機構は、成形型の形状に合わせて移動させてもよい。
【0169】
本発明の樹脂成形装置では、例えば、図1~54で示したように、楔形機構(コッター機構)が成形型の一部として組み込まれておらず、成形型と楔形機構(コッター機構)とが別々に構成されている。これにより、例えば、楔形機構(コッター機構)を交換したり、別の楔形部材(コッター)を用意したりしなくても、容易に成形型を交換できる。このため、本発明の樹脂成形装置によれば、例えば、樹脂成形品の品種交換等のための成形型の交換が容易である。
【0170】
また、本発明では、例えば、実施例1~3で示したように、一方の型キャビティの深さを変更可能である。これにより、例えば、成形対象物の厚みが異なっても樹脂成形品の製造方法を行うことが可能である。具体的には、例えば、前述のように、図1~54の左右の成形型において、それぞれ上型キャビティ1106の深さを異なる深さに設定してもよい。また、本発明において、成形対象物の厚みの変化に対応する例は、これに限定されない。具体的には、例えば、1回の樹脂成形品の製造方法においては、全ての成形対象物の厚みを同じにし、再度樹脂成形品の製造方法を行う場合に、必要に応じ、それよりも前の回と成形対象物の厚みを変えて対応してもよい。なお、図1~55では、本発明の樹脂成形装置が成形型を複数有する場合を例に挙げて説明した。本発明の樹脂成形装置はこれに限定されず、成形型を1つのみ有していてもよいが、成形型を複数有すると、樹脂成形品の製造効率が良く、好ましい。
【0171】
さらに、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。
【符号の説明】
【0172】
10 成形対象物
11 基板(第1基板)
12 チップ
13 バンプ(第1接続部、第1接続端子)
14 第2接続部(第2接続端子)
15 第2基板
20 硬化樹脂(封止樹脂)
20a タブレット(樹脂材料)
20b 溶融樹脂
20d 余剰樹脂(不要樹脂部)
40 離型フィルム
41 エアベント部の離型フィルム
1000 樹脂成形装置
1100 上型(一方の型)
1101 上型キャビティブロック(一方の型キャビティブロック)
1102 上型キャビティ枠部材(一方の型キャビティ枠部材)
1103 上型キャビティ枠部材(一方の型キャビティ枠部材)
1104 エアベント溝
1105 摺動孔
1106 上型キャビティ(一方の型キャビティ)
1200 下型(他方の型)
1201 下型キャビティブロック(他方の型キャビティブロック)
1202 下型サイドブロック(他方の型サイドブロック)
1203 ポットブロック
1204 下型キャビティブロックピラー(他方の型キャビティブロックピラー)
1205 下型弾性部材(他方の型弾性部材)
1211 ポット
1212 プランジャ
1300 上型キャビティブロック位置変更機構設置部(一方の型キャビティブロック位置変更機構設置部)
1301 上型キャビティブロック駆動機構(一方の型キャビティブロック駆動機構)
1302 上型キャビティブロック保持部材(一方の型キャビティブロック保持部材)
1303 ロードセル(押圧力測定機構)
1304 上型キャビティブロックピラー(一方の型キャビティブロックピラー)
1310 上型楔形機構(一方の型楔形機構)
1311a 上型第1楔形部材(一方の型第1楔形部材)
1311b 上型第2楔形部材(一方の型第2楔形部材)
1312 上型楔形部材動力伝達部材(一方の型楔形部材動力伝達部材)
1313 上型楔形部材駆動機構(一方の型楔形部材駆動機構)
1321 上型第2楔形部材保持部材(一方の型第2楔形部材保持部材)
1322 上型第2楔形部材保持部材の弾性部材(一方の型第2楔形部材保持部材の弾性部材)
1330 エアベント開閉機構
1331 エアベントピン動力機構
1332 エアベントピン
1340 プラテン(上型キャビティブロック位置変更機構設置部ベース部材、又は、一方の型キャビティブロック位置変更機構設置部ベース部材)
1341 上型キャビティブロック位置変更機構設置部枠部材(一方の型キャビティブロック位置変更機構設置部枠部材)
1342、1343 上型キャビティブロック位置変更機構設置部底面部材(一方の型キャビティブロック位置変更機構設置部底面部材)
1351 離型フィルム吸着機構
1352 離型フィルム吸着配管
1353 離型フィルム吸着穴
1400 下型キャビティブロック位置変更機構設置部(他方の型キャビティブロック位置変更機構設置部)
1410 下型楔形機構(他方の型楔形機構)
1411a 下型第1楔形部材(他方の型第1楔形部材)
1411b 下型第2楔形部材(他方の型第2楔形部材)
1412 下型楔形部材動力伝達部材(他方の型楔形部材動力伝達部材)
1413 下型楔形部材駆動機構(他方の型楔形部材駆動機構)
1421 下型取付部材(他方の型取付部材)
1422 プラテン(下型第2楔形部材保持部材、又は、他方の型第2楔形部材保持部材)
2000 供給モジュール
3000A、3000B 樹脂成形モジュール
3100 プレス部
4000 搬出モジュール
4100 収容部
5000 ローダ(搬送機構)
6000 アンローダ(搬送機構)
7000 基板供給モジュール
7100 基板送出部
7200 基板供給部
8000 樹脂供給モジュール
8100 樹脂送出部
8200 樹脂供給部
9000 制御部
V1~V3、V11~V13 上型キャビティブロック駆動機構1301の下降方向又は力を加える方向を示す矢印
W1、W11 上型キャビティブロック駆動機構1301に力を加える方向を示す矢印
X1~X5、X15、X21~X24 下型(他方の型)1200の上昇方向又は力を加える方向を示す矢印
Y1~Y2、Y21 下型(他方の型)1200の下降方向を示す矢印
a1~a2、a21~a22 下型第1楔形部材(他方の型第1楔形部材)1411aの前進方向を示す矢印
c1~c2、c21~c22 上型キャビティブロック(一方の型キャビティブロック)1101の下降方向を示す矢印
d1、d21 上型キャビティブロック(一方の型キャビティブロック)1101の上昇方向を示す矢印
e1~e3、e21~e22 上型第1楔形部材(一方の型第1楔形部材)1311aの前進方向を示す矢印
f1、f11 上型第1楔形部材(一方の型第1楔形部材)1311aの後退方向を示す矢印
g1~g5、g12~g13、g21~g22 プランジャ1212の押し込み方向を示す矢印
s スペース
F、G スペース
h1、h11、h21 エアベントピン1332の下降方向を示す矢印
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