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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】放射線療法用粒子と懸濁液
(51)【国際特許分類】
   A61K 51/02 20060101AFI20220607BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 31/555 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 47/30 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220607BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20220607BHJP
   A61K 47/52 20170101ALI20220607BHJP
   A61K 51/00 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 51/06 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 51/08 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 51/12 20060101ALI20220607BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220607BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220607BHJP
   A61K 103/00 20060101ALN20220607BHJP
【FI】
A61K51/02 100
A61K9/10
A61K31/519
A61K31/555
A61K38/02
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K45/00
A61K47/02
A61K47/06
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/30
A61K47/42
A61K47/44
A61K47/52
A61K51/00 100
A61K51/04 100
A61K51/06 100
A61K51/08 100
A61K51/12 100
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K103:00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019087556
(22)【出願日】2019-05-07
(62)【分割の表示】P 2017568372の分割
【原出願日】2016-07-01
(65)【公開番号】P2019142952
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2019-06-28
(31)【優先権主張番号】15175318.3
(32)【優先日】2015-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】14/791,313
(32)【優先日】2015-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/798,258
(32)【優先日】2015-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517455465
【氏名又は名称】オンコインベント アクスィエ セルスカプ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】サラ ベストレーム
(72)【発明者】
【氏名】ロイ ハルトビク ラルセン
【審査官】原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-509636(JP,A)
【文献】特表2008-517049(JP,A)
【文献】特表2003-522808(JP,A)
【文献】特表2007-528373(JP,A)
【文献】特表2002-510656(JP,A)
【文献】登録実用新案第3123645(JP,U)
【文献】Ruby F. Meredith et al,CANCER BIOTHERAPY AND RADIOPHARMACEUTICALS,2014年,vol.29, no.1,pp.12-17
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 51/02
A61K 9/10
A61K 31/519
A61K 31/555
A61K 38/02
A61K 39/395
A61K 45/00
A61K 47/02
A61K 47/06
A61K 47/10
A61K 47/26
A61K 47/30
A61K 47/42
A61K 47/44
A61K 47/52
A61K 51/00
A61K 51/04
A61K 51/06
A61K 51/08
A61K 51/12
A61P 35/00
A61P 43/00
A61K 103/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CaCO3
α放射性核種224Ra、及び
220Rn、216Po、及び212Pbから成る群から選択される224Ra放射性子孫核種、
を含み、かつ1投与あたり1kBq~10GBqの放射性核種量、又は複数の投与量の工業規模製造に好適な50MBq~100GBqの放射性核種量を伴う、1若しくは複数の粒子、
並びに希釈剤、担体、界面活性剤、及び/又は賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記CaCO3が、CaCO3、PEG修飾CaCO3、タンパク質修飾CaCO3、炭水化物修飾CaCO3、脂質修飾CaCO3、ビタミン修飾CaCO3、有機化合物修飾CaCO3、ポリマー修飾CaCO3、及び/又は無機結晶修飾CaCO3から成る群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記粒子のサイズが、1nm~500μmである、請求項1~2のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項4】
モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、放射性免疫抱合体、免疫抱合体、キレート-抗体抱合体、葉酸及び葉酸誘導体を含めたビタミン、ペプチド、ミニボディ、並びにアフィボディから成る群から選択される1若しくは複数の化合物を更に含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記1若しくは複数の化合物が、CD19、CD20、CD22、CD33、CD37、CD38、CD45、CD74、CD138、PSMA、HER-2、EGFR、MUC-1、MUC-18、CEA、FBP、NG2、EPCAM、シンデカン-1、Ca-125、LK-26、HMFG、CS-1、及びBCMAから成る群から選択される標的をターゲッティングする、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物が、前記粒子の単分散又は多分散粒子を含む粒子懸濁液である、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
静脈内又は腔内注射に使用される、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
CaCO3を含む組成物、
α放射性核種224Ra、及び220Rn、216Po、及び212Pbから成る群から選択される224Ra放射性子孫核種を含み、1投与あたり1kBq~10GBqの放射性核種量、又は複数の投与量の工業規模製造に好適な50MBq~100GBqの放射性核種量を伴う、組成物、
並びに
任意選択で、該キットを使用するための取扱説明書、
を含むキット。
【請求項9】
212Pb-TCMC-抗体抱合体などのキレート剤抱合分子を更に含む、請求項8に記載のキット。
【請求項10】
212Pb抗原特異的処置のための212Pb-TCMC-抗体抱合体などの放射性免疫抱合体、及び請求項1~5のいずれか1項に規定される粒子を含む二成分型キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分解性化合物、並びにα放射性核種、及び/又はα放射性娘核種を作り出す放射性核種を含む、粒子、又は1若しくは複数の粒子を含む医薬組成物、又は同じ若しくは異なる粒子の懸濁液に関する。前記粒子は、癌治療における使用に有益である。
【背景技術】
【0002】
β放射性ラジオコロイド及びマイクロ粒子は、腹膜腹水及び微小腫瘍シーズ(microscopic tumor seeds)に対して一定の成果をあげながら数年間にわたって使用された。しかしながら、遅い効果と腸毒性への罹患率が、これらの処置を廃れさせ、そして、化学療法が、例えば卵巣癌における、標準的なアジュバント療法になった。腔内癌に対する新しいモダリティーに関して大きな医療的必要性が、依然として存在している。
α放射体は以前に、腹腔内癌の処置として提案された。2タイプの化学薬品クラス:(1)放射性免疫抱合体及び(2)マイクロ又はナノサイズの特定の懸濁液、が提案された。放射性免疫抱合体の利点は、細胞特異的ターゲッティングの可能性であり、不利益な点は、潜在的な全身的毒性を引き起こす血流内への生成物の大量の漏出である。
【0003】
マイクロ/ナノ粒子及びコロイドの利点は、遠隔毒性を低減する改善された局所的保持の可能性である。好ましくない点は、不均一な用量堆積及び放射線ホットスポットの可能性、そしてまた、分解などに対して不活性なので、粒子自体が刺激を引き起こし得ることでもある。マイクロ粒子及び/又はナノ粒子が使用される場合、その選択は、それらが完全に安定しているか又はゆっくりとした分解性である場合になされる。
【0004】
完全に安定な粒子を使用することによって、利点としては、全身的毒性のリスクの低さが挙げられる。不利益な点としては、より不均一な放射線量分布及び「ホットスポット」による局所毒性のいくらかのリスクが潜在的に挙げられる。安定した放射線療法用粒子が、原発性腫瘍及び肝臓への転移を処置するために非分解性ガラス球(TheraSphere(商標))又は樹脂ベースの球(SIR-Spheres(商標))に安定に標識された高エネルギーβ放射体90Yを使用した放射線塞栓療法に使用された。この場合、肝臓組織は、腸などに対する毒性放射線に対する盾となる。
【0005】
第二のアプローチは、いくつかの放射性核種を徐々に放出する分解性粒子を使用することである:可能性のある利点としては、母核種の改善された拡散、及び/又は短命な娘核種に起因するよりより均一な放射線用量、並びに局所毒性を引き起こす「ホットスポット」になる傾向が低いことが挙げられる。可能性のある不利益な点としては、血中に放出された放射性核種の輸送が起こり得ること及び更なる再分配による全身的毒性の可能性が挙げられる。分解性粒子は現在、放射性核種ではなく、化学療法剤のような他の細胞毒性化合物のために大部分が使用される。
よって、腔内癌に対するα粒子放射のための改善された送達系の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、分解性化合物、並びにα放射性核種、及び/又はα放射性娘核種を作り出す放射性核種を含む粒子に関する。
本発明の一実施形態において、放射性核種は、224Ra、212Bi、212Pb、223Ra、225Ra、225Ac、213Bi、211At、227Thから成る群から選択されるである。
本発明の別の実施形態において、分解性化合物は、CaCO3、PEG修飾CaCO3、タンパク質修飾CaCO3、炭水化物修飾CaCO3、脂質修飾CaCO3、ビタミン修飾CaCO3、有機化合物修飾CaCO3、ポリマー修飾CaCO3、及び/又は無機結晶修飾CaCO3から成る群から選択される。
【0007】
本発明の更なる実施形態において、粒子のサイズは、1nm~500μmである。
本発明の別の実施形態において、粒子は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、放射性免疫抱合体、免疫抱合体、キレート-抗体抱合体、葉酸及び葉酸誘導体を含めたビタミン、ペプチド、ミニボディ、並びにアフィボディ(affibodies)から成る群から選択される1若しくは複数の化合物を含む。
本発明の更なる態様において、本発明は、本発明による1若しくは複数の粒子、並びに希釈剤、担体、界面活性剤、及び/又は賦形剤を含む医薬組成物に関する。
本発明の別の実施形態において、医薬組成物は、1投与あたり1kBq~10GBqの量の放射性核種を用いて調製される。
【0008】
本発明の別の実施形態において、医薬組成物は、複数の投与量の工業規模製造に好適な50MBq~100GBqの量の放射性核種を用いて調製される。例えば、100人の患者分の投与量が1日あたり1バッチで製造される場合、これは、100個の単一の投与バイアル又はすぐに使用できるシリンジに分割される、合計1~10GBqに調整され得る。
本発明の別の実施形態において、医薬組成物は、α放射性核種、及び/又はα放射性娘核種を作り出す放射性核種で標識された単分散又は多分散粒子を含む粒子懸濁液である。
本発明の別の実施形態において、医薬組成物は静脈内又は腔内注射に好適である。
本発明の別の態様は、薬物として使用するための本発明の粒子又は医薬組成物に関する。
【0009】
本発明の一態様において、本発明による粒子は、医療用デバイスであるか又は医療用デバイス内に含まれる。
本発明の更なる態様は、腔内療法、放射線塞栓療法又は放射線滑膜切除術における使用のための本発明の粒子又は医薬組成物に関する。
本発明の別の態様は、癌治療における使用のための本発明の粒子又は医薬組成物に関する。
【0010】
本発明の一実施形態において、癌は、腹腔内癌、頭蓋内癌、胸膜癌、膀胱癌、噴門癌、及びクモ膜下腔内の癌から成る群から選択される。
本発明の別の態様は、それを必要としている個人への本発明の粒子又は医薬組成物の投与を含む療法又は改善に関する。
本発明の別の態様は、本発明の粒子を調製するための方法であって、該方法は、放射性核種向けの担体の使用の有無にかかわらず、α放射性核種と生分解性化合物を互いに接触した状態にさせることを含む方法に関する。
【0011】
本発明の別の態様は、本発明によるナノ又はマイクロ粒子、α放射性核種又はα放射性娘核種を作り出す放射性核種、担体、希釈剤、及び/又は賦形剤、並びに任意選択で、そのキットを使用するための取扱説明書を含むキットに関する。
本発明の別の態様は、本発明によるナノ又はマイクロ粒子、α放射性核種又はα放射性娘核種を作り出す放射性核種、担体、希釈剤、及び/又は賦形剤、並びに任意選択で、粒子懸濁液と放射性免疫抱合体溶液を含む二官能性薬剤溶液を調製するためのキットを使用するための取扱説明書を含むキットに関する。
本発明の一実施形態において、キットは、モノクローナル抗体を含めたキレート剤抱合分子を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ヌードマウスにおける、224Ra標識CaCO3マイクロ粒子(A)及び溶存態224RaCl2(B)の腹腔内注射の20時間後、4日後及び7日後の組織分布。放射能測定法は、すなわち娘核種が224Raと平衡状態で存在する時間を見込んだ、最短で動物を屠殺した3日後に実施される。
図2】処置開始後44及び45日目に生理的食塩水、低線量粒子又は224Ra標識炭酸カルシウムマイクロ粒子で処置した腹腔内SKOV-3腫瘍の重量。
図3】生理的食塩水又は224Ra標識炭酸カルシウムマイクロ粒子で処置した、腹腔内ES-2腹水癌に罹患している動物の生存率。
図4】1.1及び8.9μmのメジアン径のCaCO3マイクロ粒子に関する224Ra及び娘212Pb標識効率を例示する棒グラフ。該棒は、それぞれ小及び大粒子に関する14及び12の個々の実験の平均を表し、そして、エラーバーは標準偏差を表す。
図5】様々な時点にて1.1及び8.9μmのメジアン径のCaCO3マイクロ粒子上に保持される224Ra放射能のパーセントを例示する棒グラフ。該棒は、それぞれ小及び大粒子に関する5及び4の個々の実験の平均を表し、そして、エラーバーは標準偏差を表す。
図6】1・106個のES-2細胞を腹腔内に注射し、そして、22時間後に生理的食塩水又は224Ra標識CaCO3マイクロ粒子で処置されたマウスの生存率。
図7】血液パラメータ:処置開始後の時間の関数としての白血球(WBC)、赤血球(RBC)、及び血小板(PLT)、に対する224Ra標識CaCO3マイクロ粒子を用いた処置の効果。各群3~5匹のマウスから、それぞれの時点にてサンプルを抽出した。プロットは、水平な棒線によって表された各群の平均と一緒に、各マウスの個別のデータポイントを示す。エラーバーは、標準偏差に相当する。
図8】細胞接種後の様々な時間にて生理的食塩水又は224Ra標識CaCO3マイクロ粒子で処置された腹腔内ES-2卵巣癌腹水モデルのマウスの生存率。
図9】1・105個のES-2細胞を腹腔内に注射し、そして、1時間後に2つの異なるサイズの224Ra標識CaCO3マイクロ粒子で処置したマウスの、生理的食塩水対照群と比較した生存率。
図10】ヌードマウスにおける、224Ra標識CaCO3マイクロ粒子(A)及び遊離224Ra溶液(B)の腹腔内注射20時間後、4日後及び7日後における組織1グラムあたりのBq単位の平均224Ra放射能として表した生体分布。注射した放射能は10kBq/マウスに標準化される。エラーバーは標準偏差を表す。
図11】ヌードマウスにおける、224Ra標識CaCO3マイクロ粒子(A)及び遊離224Ra溶液(B)の腹腔内注射20時間後、4日後及び7日後における組織1グラムあたりのBq単位での平均娘212Pb放射能として表した生体分布。注射した放射能は10kBq/マウスに標準化される。エラーバーは標準偏差を表す。
図12】10・106個のES-2細胞を腹腔内に注射し、そして、25時間後に生理的食塩水又は224Ra標識CaCO3マイクロ粒子で処置されたマウスの生存率。
【0013】
本発明の詳細な説明
本発明者らは、狭い範囲のα放射体に基づいて腸毒性のリスクがより低い癌治療を明らかにした。現在の発明は、α放射性核種、及び/又はα放射性娘核種、例えば224Ra、を作り出す放射性核種を含む遅分解性(slowly degradable)ナノ又はマイクロ粒子に基づく。
よって、本発明の1つの目的は、分解性化合物と、α放射性核種、及び/又はα放射性娘核種を作り出す放射性核種とを含む粒子に関する。
【0014】
本発明の態様は、CaCO3、α放射性核種224Ra、並びに220Rn、216Po、212Pb、及び212Biから成る群から選択される224Ra放射性子孫核種、を含む粒子に関する。220Rnは224Raの娘核種であり、216Poは224Raの放射性孫娘核種であり、及び212Pbは224Raなどの放射性曾孫娘核種である。
本発明の別の態様は、CaCO3、α放射性核種224Ra、並びに220Rn、216Po、及び212Pbから成る群から選択される224Ra放射性子孫核種を含む粒子に関する。220Rnは224Raの娘核種であり、216Poは224Raの放射性孫娘核種であり、及び212Pbは224Raの放射性曾孫娘核種である。
【0015】
放射性核種
本発明の放射性核種は、任意のα放射性核種、及び/又はα放射性娘核種を作り出す放射性核種であってよい。
例えば腹腔内腔における、局所療法におけるα粒子放射性化合物の主な利点は、90Y、131I、及び32Pのような医療用β放射体からのβ粒子のmm~cmの範囲と比べて、αの、一般的に0.1mm未満の、より狭い範囲である。
【0016】
α放射体の使用は、腔内環境において、i.p.使用の場合には放射線感受性腸陰窩細胞のような内臓のより深い領域の照射法による毒性に関するリスクを軽減することになる。また、細胞を殺滅するのにほんのわずかなαヒットしか必要とせず、且つ、DNA鎖切断の高い修復能力などの細胞耐性機構が、修復不能な二本鎖切断を高確率で引き起こすことによる問題を軽減するので、放射されたα粒子の高い線形エネルギー転移も有利である(Ritter et al., 1977)。
【0017】
大部分のα及びβ放射体もまた、防護のために遮蔽を必要とするX線やγ線をいくらか放射するので、1崩壊あたりの高い効果は、より少ない放射能しか必要としないので、病院職員及び関係者の遮蔽の必要性を低減することを意味する。
表1は、224Raの主な放射線特性を示す。224Ra及び娘核種の完全な崩壊は、合計4個のα粒子を作り出す。重要な態様は、この核種としての220Rnは、それが潜在的に結晶へと接着するのに化学的に不活性であるので、潜在的に母核種から拡散する場合がある結末である。
【0018】
これは、224Raの220Rn(娘核種)への最初の崩壊、次に216Po(放射性孫娘核種)への、続いて212Biに再び崩壊する、より寿命が長い212Pb(放射性曾孫娘核種)への崩壊を意味する。
【0019】
子孫とは、親放射性核種の崩壊の結果である放射性核種と理解される。よって、224Raが親放射性核種であるときには、220Rn(娘核種)、216Po(放射性孫娘核種)、212Pb(放射性曾孫娘核種)、及び考慮すべき放射性子孫核種の表1に列挙したすべての放射性核種がそうである。
よって、一実施形態において、α放射性核種224Raは、娘核種220Rn、放射性孫娘核種216Po、及び放射性曾孫娘核種212Pbを伴う。本発明の粒子に関して、224Raがα放射性核種であるとき、これらはすべて粒子に含まれる。
【0020】
本発明の一態様において、本発明による粒子は、医療用デバイスであるか、又は医療用デバイス中に含まれる。
医療用デバイスは、単独で又は組み合わせて使用されるか否かに関係なく、その製造業者によって特に診断及び/又は治療目的で使用されることが意図され、且つ、その正当な適用に必要である、製造業者によって:疾患の診断、予防、モニタリング、処置又は緩和;傷害又はハンディキャップの診断、モニタリング、処置、緩和又は補償;解剖又は生理的過程の調査、置換又は修飾;受胎調節の目的のためのヒトに使用されることが意図され;そしてそれが、薬理学的、免疫学的又は代謝的な手段によって人体での又は人体に対するその主要な意図した作用を達成しないが、斯かる手段によってその機能を支援し得るソフトウェアを含めた、任意の器具、装置、アプライアンス、ソフトウェア、材料又は他の物品である。
【0021】
医療用デバイスは、それらの用途及び適応症により異なる。例は、例えば舌圧子、医療用温度計、及び使い捨て手袋などの簡易デバイスから、例えば医療検査、移植、及びプロテーゼの実施を支援するコンピューターなどの高度なデバイスにまで及ぶ。
FDAによれば、医療用デバイスとは「器具、装置、道具、機械、仕掛け(contrivance)、インプラント、インビトロ試薬、又は他の類似若しくは関連物品であって、以下の構成部品又は付属品:公式の米国民医薬品集(National Formulary)、米国薬局方(United States Pharmacopoeia)、又はそれらの付録にて承認されたもの;ヒト又は他の動物における疾患若しくは他の健康状態の診断、又は疾患の治癒、緩和、処置、又は予防における使用を意図したもの;或いはヒト又は他の動物の身体の構造又は機能に影響を与えることを意図したものであって、そしてそれが、本体又はヒト又は他の動物の身体内の又は身体に対する化学的作用を通してその本質的な目的をいずれも達成することなく、且つ、その本質的な目的のいずれかを達成するのに代謝されることに依存しないもの、も含めたもの」である。
【0022】
本粒子は、代謝されておらず、且つ、それらは体内において顕著な化学的作用も有していない。粒子は、体内で代謝されないか、又は全く化学的作用も有しないように設計された放射能の担体であり、そしてこれが、非常に限られた好ましくない副作用、例えば毒性など、を伴う放射線療法を可能にする。
よって、一実施形態において、「医療用デバイス」という用語は、先のFDA定義のように理解される。
【0023】
表1.224Raシリーズの主な放射線特性。
【表1】

1分岐による224Ra変換あたりの平均。1%を上回る実効存在度が占めたX線又はγのみ。224Ra及び娘核種の完全な崩壊あたり約26.5MeVのαの、0.7MeVのβの総実効エネルギーを意味する。
【0024】
ラジウム-224は、好ましいα放射体の一つであるが、他のものもまた、本発明に適用できる。
よって、本発明の一実施形態において、放射性核種は、224Ra、212Bi、212Pb、223Ra、225Ra、225Ac、213Bi、211At、227Thから成る群から選択される。
【0025】
実施例の非常に有利な知見は、有意な処置効果を生じさせるのに必要とされる放射能の量が、少なくとも体重1kgあたり100kBqであったことであり、-そしてそれは、マウス1匹あたり2~2.5kBqに相当するにすぎない、ということである。これは、マウスにおける実験的腹膜癌に対してα放射線免疫療法において必要とされる、マウス1匹あたり数百kBqの211Atや212Pbと比べて遜色がない(Gustafsson et al., 2012; Boudousq et al., 2013)。この特性は、224Ra-CaCO3によって例示される本発明の粒子の投与及び使用中のX線及びγからの被曝の問題を大きく低減し得る。
【0026】
患者の投与量あたりに使用される224Raの量は、1kBq~10GBq、より好ましくは100kBq~100MBqの範囲内、より一層好ましくは0.5MBq~25MBqの範囲である。
投与量は、癌型、例えば、疾患がどれくらい攻撃的であるかに依存する。一実施形態において、投与量は、10~100kBq/kg、例えば20~50kBq/kgなどである。別の実施形態において、投与量は、10~1000kBq/kg、例えば25~300kBq/kgなどである。更なる実施形態において、投与量は、100~500kBq/kg、例えば150~300kBq/kgなどである。
【0027】
本発明の一実施形態において、医薬組成物は、1投与あたり1kBq~10GBqの量の放射性核種を用いて調製される。
例えば、100人の患者分の投与量が1日あたり1バッチで製造される場合、これは、100個の単一の投与バイアル又はすぐに使用できるシリンジに分割される、合計1~10GBqに調整され得る。本発明の別の実施形態において、医薬組成物は、複数の投与量の工業規模製造に好適な、例えば50MBq~100GBqの量の放射性核種を用いて調製される。
【0028】
分解性化合物
本発明の分解性化合物は、分解され得る任意の化合物であり得る。
分解は、高pH、低pH、プロテアーゼ、酵素、ヌクレアーゼから成る群から選択される任意の経路によって、及び/又は(食作用も含めた)エンドサイトーシスのような細胞プロセスによっておこなわれ得る。
【0029】
本発明の一実施形態において、分解性化合物は、CaCO3、PEG修飾CaCO3、タンパク質修飾CaCO3、炭水化物修飾CaCO3、脂質修飾CaCO3、ビタミン修飾CaCO3、有機化合物修飾CaCO3、ポリマー修飾CaCO3、及び/又は無機結晶修飾CaCO3から成る群から選択される。
本発明の好ましい実施形態において、分解性化合物は、CaCO3(CC)である。
炭酸カルシウム(CC)粒子は、他の塩、タンパク質又はペプチドとの複合物として使用されてもよく、そして、オレイン酸塩及び類似物のような界面活性剤により表面修飾を受けてもよい。
【0030】
特別な実施形態において、CCは、炭酸カルシウムのポリエチレングリコール修飾粒子又は無機結晶修飾CCから成る群から選択される化合物と共に使用される。
特別な実施形態において、CC粒子は、機能的受容体及び/又はモノクローナル抗体や誘導体を含めた抗原結合基、並びに粒子の受容体又は抗原結合基が個々の標的細胞及び疾患組織に結合することを可能にする、ビタミン及び誘導体で修飾される。これは、粒子の修飾がCCへの化合物の付加と関連することを意味する。これは、様々な方法でおこなうことができ、そして、例えば双極子相互作用、イオン双極子及びイオン誘起双極子力、水素結合形成、ファンデルワールス力、及び力の相対強度などの相互作用による。
【0031】
娘核種と平衡状態にある224Ra溶液が粒子の標識に使用されるとき、特別な実施形態は、CC粒子と接触させる前に、まず212Pbのキレート剤を溶液に加え、そうして、二官能性放射線療法用混合物を作成する。キレート剤は、標的親和性分子、例えばモノクローナル若しくはポリクローナル抗体又は抗体の誘導体、ビタミン又はビタミンの誘導体、に優先的に結合される。
【0032】
特徴
粒子は、さまざまな特徴を有し得る。粒子のサイズは、用途及び適用によって異なる可能性がある。結晶タイプは、任意の既知のCC形態であり得、且つ、1nm~500μmの異なるサイズが、使用され得る。より好ましくは、サイズは、100nm~50μmの範囲内にあり、更に好ましくは、サイズは、1~10μmの範囲内にある。
好ましい一実施形態において、サイズは、1~10μmである。
本発明の一実施形態において、粒子のサイズは、1nm~500μmである。
【0033】
マウスでは、腹膜面に基づいたCC粒子の量は、0.1mg~50mgの範囲内に、より有益には恐らく1mg~15mgの範囲内になければならない。ヒトでは、使用される量は、マウスに比べて10~10000倍、恐らくより有益には、例えば腹腔内療法のために、0.1~10gでなければならない。他の腔において、量は、相対表面積又は存在する体液の体積に従って調整され得る。
【0034】
本発明に関する実施例において、224Raが、分解性炭酸カルシウムの放射性標識に使用できることがわかった。炭酸カルシウムは、ヒドロキシアパタイトカルシウムの密度を約14%下回る密度を有するので、同じサイズのヒドロキシアパタイトカルシウム粒子に対して沈殿することなく懸濁液状態を維持することがより容易であり得る。炭酸カルシウムは、少量の共沈物、例えば224Raの担体としての硫酸バリウム、の添加の有無にかかわらず、主な成分として使用された。
【0035】
よって、一実施形態において、共沈物が添加される。これらは、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、及びクロム酸バリウムから成る群から選択される。量の範囲は、典型的には、炭酸カルシウムに対して0.01%~10%、及び好ましくは、炭酸カルシウムに対して0.1~1%である。
放射性核種の添加前の粒子中の炭酸カルシウムの総量は、例えば共沈物が添加されるか否かによって変動する可能性がある。ある実施形態において、炭酸カルシウムの量は、90%超である。範囲は、90~95%、又は90~99%であり得る。量はまた、98%超又は99%超でもあり得る。
【0036】
粒子の追加化合物
分解性粒子は、多くの異なる追加化合物を含み得る。これらは、ターゲッティング、安定性、溶解性及び分解速度を含めた様々な目的に役立ち得る。
本発明の一実施形態において、粒子は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、放射性免疫抱合体、免疫抱合体、キレート-抗体抱合体、葉酸や葉酸誘導体を含めたビタミン、ペプチド、ミニボディ、及びアフィボディから成る群から選択される1若しくは複数の化合物を含む。
【0037】
本発明の一実施形態において、抗体は、トラスツズマブ、リツキシマブ、HH1、セツキシマブ、ベバシズマブ、ダラツムマブ、アレムツズマブ、ペムブロリズマブ、エプラツズマブ、L19、F8、F16、ガリキシマブ、トラリズマブ、アレムツズマブ、オファツムマブ、ベルツズマブ、アフツズマブ、トシツモマブ、Reditux、及びイブリツモマブから成る群のうちの1若しくは複数から選択される。
【0038】
本発明の別の実施形態において、化合物は、CD19、CD20、CD22、CD33、CD37、CD38、CD45、CD74、CD138、PSMA、HER-2、EGFR、MUC-1、MUC-18、CEA、FBP、NG2、EPCAM、シンデカン-1、Ca-125、LK-26、HMFG、CS-1、及びBCMAから成る群から選択される標的に特異的である。
【0039】
特別な実施形態において、224Ra標識されたものの医薬懸濁液は、腫瘍細胞上の抗原を含めた受容体に親和性を有する212Pb標識抗体、抗体フラグメント若しくはタンパク質若しくはペプチド又はビタミン誘導体(ターゲッティング抱合体)を含み、それにより、224Ra標識粒子は、腹腔内臓器の表面を含めた腹腔内表面に全面的なα粒子照射野をもたらし、そして、212Pb標識抗体又は類似体は、受容体又は抗原結合によって腫瘍細胞に対して特異的なα粒子用量をもたらす。
【0040】
本発明における放射性核種は、二官能性キレート剤を使用することによってターゲッティング分子に結合される。
これらは、環状キレート剤であっても、又は直鎖キレート剤であっても、又は分岐キレート剤であってもよい。
骨格窒素に取り付けられた酸性(例えば、カルボキシアルキル)基を有する直鎖又は環状又は分岐ポリアザアルカン骨格を含むポリアミノポリアシッドキレート剤に対して特に言及し得る。
【0041】
好適なキレート剤の例としては、DOTA誘導体、例えばp-イソチオシアネートベンジル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(p-SCN-Bz-DOTA)及びTCMCと呼ばれる、このDOTA化合物のテトラ第一アミド変異型、並びにDTPA誘導体、例えばp-イソチオシアネートベンジル-ジエチレントリアミン五酢酸(p-SCN-Bz-DTPA)などが挙げられ、最初のものが環状キレート剤であり、後者が直鎖キレート剤である。
【0042】
錯形成部分の金属付加は、ターゲッティング部分への錯形成部分の結合前後に実施され得る。
放射性標識手順は、一般に、放射性標識が起こる前にキレート剤が抗体に結合されるのであれば、使用される時間などに関してより簡便になる。抗体に取り付けられるキレート剤を使用した放射性標識抱合体を調製する原理は、例えば、Liu, 2008に大まかに記載されている。
【0043】
医薬組成物と組成物
態様は、本発明による粒子を含む組成物に関する。組成物は、224Ra及び/又は放射性子孫核種で標識された単分散又は多分散粒子を含む粒子懸濁液であり得る。
組成物は、水性組成物であることが好ましい。
本発明の更なる態様において、本発明は、本発明による1若しくは複数の粒子、及び希釈剤、担体、界面活性剤、解膠剤、及び/又は賦形剤を含む組成物又は医薬組成物に関する。
【0044】
許容し得る担体及び医薬担体としては、これだけに限定されるものではないが、無毒性バッファー、増量剤、等張液、溶媒、共溶媒、抗微生物性保存料、抗酸化剤、湿潤剤、消泡剤、増粘剤などが挙げられる。より詳しく述べると、医薬担体は、これだけに限定されるものではないが、通常の生理的食塩水(0.9%)、2分の1生理食塩水、乳酸リンゲル液、溶存態スクロース、デキストロース、例えば3.3%のデキストロース/0.3%の生理的食塩水であり得る。生理学的に許容し得る担体は、保存及び出荷中に放射性医薬品の完全性を保護する、放射線分解安定化剤、例えばアスコルビン酸、ヒト血清アルブミンを含んでもよい。
【0045】
医薬組成物は、多数の粒子を含んでもよい。これらは、同じであっても又は異なっていてもよい。
よって、本発明の別の実施形態において、医薬組成物は、α放射性核種及び/又はα放射性娘核種を作り出す放射性核種で標識された単分散又は多分散粒子を含む粒子懸濁液である。
【0046】
投与
本発明の別の実施形態において、医薬組成物は、静脈内、腫瘍内又は腔内注射に好適である。
【0047】
適用
i.p.癌に対するα放射性マイクロ粒子の使用は、以前にも示唆された。Archerら(US4970062A)は、212Pbに重きをおいて、α放射体の担体として水酸化第二鉄コロイドを使用することを示唆したが、224Raを含めた他のいくつかの潜在的に有用なα放射体が列挙された。Bloomerら(1981)は、211At標識テルルコロイドを使用することを示唆したが、その一方、Vergoteら(1992)は、211At標識単分散ポリマー粒子を使用することを示唆した。Larsen及びSalberg(US8142758B2)は、223Ra又は224Raを含めた他のα放射体で標識したヒドロキシアパタイト粒子を使用することを示唆した。Archerらのケースに存在する問題は、アルカリ土類、特にラジウムの水酸化物が水への比較的高い溶解性を有するので、ラジウム標識粒子を調整するために良好ではない可能性がある(Kirby et al., 1964)。
【0048】
アスタチン-211テルルコロイドは、不安定であり、甲状腺への被曝を引き起こすこと(Vergote et al., 1992)、並びに211At標識ポリマー粒子が生分解性でなく、短い半減期及び限られた存在のため、211Atの製造設備は、高価であって、大規模な臨床用途において非実用的であることがわかった。カチオン性ラジウムの化学的不活性と低い錯形成能のため、テルルコロイド又はポリマー粒子の使用は、ラジウムの担体と見なされなかった。ラジウムの担体としてのヒドロキシアパタイトの使用は、良好な標識収率をもたらすが、ヒドロキシアパタイトカルシウムは、マイクロ粒子懸濁液として腔療法に使用されるとき、より急速な堆積及び放射線のそれほど理想的でない線量分布を引き起こし得る高密度を有する。
【0049】
本明細書中に提示した224Ra標識炭酸カルシウム(CC)粒子によって例示される新規粒子に関連する試験及び研究では、いくつかの予期せぬ知見:インビトロにおける生成物の高い標識収率及び関連安定性、224Ra半減期と一致する良好なi.p.保持、インビボにおける224Raの持続放出、マウスにおける良好な粒子耐性、及びマウスの腫瘍モデルにおける有意な抗腫瘍活性を得ることが可能であった、を得た。特に興味深く、且つ、予期していなかった知見は、i.p.脂肪における良好な取り込みであり、それは、網を含めたi.p.脂肪が転移性腫瘍の成長のために搾取されることから(Gerber et al., 2006)、重要な知見であった。より親油性の構造物がi.p.脂肪取り込みに必要であり、よって、本明細書中に使用される炭酸カルシウム粒子が、斯かる実質的な取り込みを示すことが驚きであったと、当業者は考える。
【0050】
本発明の別の態様は、薬物として使用するための本発明の粒子又は医薬組成物に関する。
本発明の粒子及び組成物は、放射線療法用化合物、及び/又は放射線療法用混合物として使用されてもよい。本発明の粒子の医学的利用としては、(1)腔内療法(2)放射線塞栓療法(3)放射線滑膜切除術におけるヒト又は獣医学への使用が挙げられる。腔内療法としては、例えば腹腔内癌、頭蓋内癌、胸膜癌、膀胱癌、噴門癌、クモ膜下腔の癌の処置を挙げることもできる。粒子が使用され得る腔の例は、腹膜若しくは髄膜上に散った癌及び任意のこれらの腔内の臓器を含めた、頭蓋内腔、胸腔、肺腔、脊椎腔、骨盤腔、心膜、胸膜腔、膀胱腔、又はこれらの組み合わせである。
【0051】
本発明の粒子の使用に関する特別な実施形態において、むしろ癌より又は癌と組み合わせた、感染症又は炎症である腔内疾患の処置又は改善である。
本発明の一実施形態において、感染症は、細菌感染症及びウイルス感染症から成る群から選択される。
放射線塞栓療法は、臓器、例えば肝臓、の原発性癌又は転移癌の処置を含んでもよく、肝臓又は腫瘍組織によって浸潤された別の固形臓器内の腫瘍に通じる血管に本発明の粒子を投与することによる。
【0052】
慢性炎を含めた関節障害のための放射線滑膜切除術は、放射性物質を使用した有痛関節疾患の放射線処置を対象とする。その使用としては、血友病性関節炎の処置が挙げられる。
今日、それは、炎症性疾患又はリウマチ様疾患、或いは様々な関節、特に膝、手及び足首の滑膜関節症に使用されるβ粒子放射性化合物に基づいている。分解性である、本明細書中に記載した224Ra-CC粒子は、放射線滑膜切除術において非常に有用である可能性がある。
粒子は、例えば腔内の、局所注射によって投与されるのが好ましい。
【0053】
特別な実施形態において、粒子は、腫瘍内に直接注射される。
物品は、例えば、医療用注射に適合する様々なバッファー、例えば溶解させた塩及び/又はタンパク質及び/又は脂質及び/又は糖、の中に分散させてもよい。
本発明の更なる態様は、腔内療法、放射線塞栓療法又は放射線滑膜切除術に使用するための本発明の粒子又は医薬組成物に関する。
【0054】
本発明の別の態様は、癌治療に使用するための本発明の粒子又は医薬組成物に関する。
本発明の一実施形態において、癌は、腹腔内癌、頭蓋内癌、胸膜癌、膀胱癌、噴門癌、及びクモ膜下腔の癌から成る群から選択される。
本発明の一実施形態において、癌は、転移癌、肺癌、卵巣癌、結腸直腸癌、胃癌、膵臓癌、乳癌、新生物性髄膜炎、腹膜癌、胸膜浸出液、悪性中皮腫、乳癌、肉腫、神経膠芽腫や星状細胞腫のような脳癌、膀胱癌、及び肝臓癌から成る群から選択される。
本発明の別の態様は、それを必要としている個人に、本発明の粒子又は医薬組成物を投与することを含む療法又は改善に関する。
【0055】
調製物及びキットのための方法
本発明の別の態様は、本発明の粒子を調製する方法に関し、該方法は、放射性核種の担体を使用の有無にかかわらず、α放射性核種と生分解性化合物とを互いに接触した状態にさせることを含む。
α放射体を含む溶液又は組成物、すなわち、混合物の状態で子孫212Pbを伴った224Ra溶液又は組成物は、212Pb抗原特異的処置のための放射性免疫抱合体、及び全面的な腔処置のためのα放射体、例えば224Ra-粒子を含む二成分処置システムを作り出すために、粒子を標識する前に、212Pbを錯化するためにキレート-抗体抱合体を用いて前処置される場合がある。
【0056】
ある実施形態は、212Pb抗原特異的処置のための放射性免疫抱合体、及び本発明による粒子を含む二成分システム又はキットに関する。
これを使用する望ましい方法は、キレート抱合抗体が入ったバイアルA及びα放射体、例えば娘核種と平衡状態の224Ra、が入ったバイアルB、並びにマイクロ粒子が入ったバイアルCを含むキットによるものであって、それによって、Aの内容物をバイアルBに加えるか又はその逆、そして、その混合物をバイアルCに移す前に数分間~数時間インキュベートし、シリンジに移す前に数分間~数時間更にインキュベートし、そして、患者に注射した。
【0057】
この原理は、224Ra-CC粒子が斯かるシステムにおいて抗腫瘍活性に大きく貢献すると予想されるので、療法に必要とされる212Pb-放射性免疫抱合体のレベルを著しく低減できる。
本発明の別の態様は、本発明によるナノ又はマイクロ粒子、α放射性核種又はα放射性娘核種を作り出す放射性核種、担体、希釈剤、及び/又は賦形剤、並びに任意選択で、キットを使用するための取扱説明書、を含むキットに関する。
【0058】
本発明の別の態様は、CaCO3を含む組成物、α放射性核種224Raを含む組成物、及び任意選択で、キットを使用するための取扱説明書、を含むキットに関する。
本発明の別の態様は、本発明によるナノ又はマイクロ粒子、α放射性核種又はα放射性娘核種を作り出す放射性核種、担体、希釈剤、及び/又は賦形剤、並びに任意選択で、粒子懸濁液及び放射性免疫抱合体溶液を含む二官能性薬剤溶液を調製するためにキットを使用するための取扱説明書、を含むキットに関する。
【0059】
本発明の一実施形態において、キットは、モノクローナル抗体を含めたキレート剤抱合分子を含む。
現行の手法及び生成物は、放射性核種に数日の半減期があるので、集約された製造及びエンドユーザーへの出荷を可能にしている。本発明の別の態様は、カルシウムと炭酸塩に徐々に溶解する生分解性粒子の使用であり、これにより、既に体内に大量に存在している生成物を少量取り出す。それはまた、以下の特徴でも注目に値する:α放射体、例えば224Raが炭酸カルシウム粒子の表面に吸収されるとき、より長寿命のβ放射体212Pb(t1/2=10.6時間)に崩壊する前に、超短寿命の216Po(t1/2=0.16秒間)と一緒の短寿命の220Rn(t1/2=56秒間)の顕著な放出が、2つのα粒子を生じる。鉛は、炭酸カルシウムと共に非常に高い沈殿性を有し、そのため、i.p.体液中の212Pbは、体循環内への212Pbの漏出を減少させる粒子への再結合の傾向がある。
【0060】
そのため、224Raが粒子から拡散し得るガスへと崩壊し、その後、炭酸カルシウムと共に沈殿する212Pbへと更に崩壊することは、非常に特別な技術的特徴である。
例えば、かなりの程度の腹腔癌が、腹部の腸の上を覆う組織の大きな脂肪パッドである網内で増殖する傾向があるので(Gerber et al., 2006)、マイクロ粒子から放出される場合、220Rnが高度に親油性であることは、有益なことであり得る。
【0061】
放射性核種のより深い封入のための、あらかじめ作製された粒子とその後の表面堆積、又は放射性核種の共堆積が、処置薬の作製に有用な2つの方法である。第一の方法は、不均一な粒子分布から用量の不均一性を低減し得る娘核種220Rnの一部の放出を可能にする。220Rnの短い半減期(56秒)のため、それが、腔から著しく再分配されないので、組織表面の深層に拡散しない。また、放射性核種の量も、腔内のラドン産生から、いずれかの顕著な物理的又は化学的影響、例えばガス圧、を引き起こすには少なすぎる。
【0062】
ある程度、224Raシリーズの放射性核種の表面分布を改善することは、より大量の粒子、すなわち、低減された比放射能、を使用するのに有益であろう。
二官能性懸濁液は、例えば、以下の方法、pH5~6のバッファー中、224Ra溶液を、1mg/mlのTCMC標識抗体に加え、2分から数時間インキュベートし、その後、その溶液を炭酸カルシウム(CC)粒子が入ったバイアルに加え、そして、数分から数時間インキュベートする、によって作製され得る。前記混合物は、212Pb標識生成物の比放射能の低減を避けるために、できるだけ早く投与されなければならない。これは、
【0063】
224RaがバイアルA中にあり、キレート剤抱合タンパク質がバイアルB中にあり、及びCC粒子がバイアルC中にあるキットシステムとして使用されるのが、恐らく最良である。
224Ra-CC粒子を伴った混合物に極めて強力なターゲッティング抱合体を与えるために212Pbを加えることもまた、可能であり得る。通常、斯かるシステムにおける224Raと212Pbの間の比は、1:1に近くなり得るが、いくつかの処置状況において、それは、212Pb-抱合体対224Ra粒子の量を10:1又はそれ以上の程度まで高めることが有益にもなり得る。最後の場合では、ターゲッティング抱合体の調製前に追加的な212Pbを加えるか、又は処置混合物の投与前に一部の224Ra-CC粒子を取り出すことが必要とされる。
【0064】
本発明は、娘核種を伴った224Raのようなα放射体に基づく新規放射線療法用化合物に関する。ラジウム-224は、炭酸カルシウム粒子の表面に吸収されるか、又は担体、例えば、微量の硫酸バリウム、を使用した調製中に共堆積させ得る。
特別な実施形態において、224Raは、カルシウムと共に共結晶化されて、炭酸塩結晶を形成させ、それによって、224Raは、娘核種の逃避を避けるために、結晶の内側に存在し、表面には存在しない。
しかしながら、いくつかの設定では、放射性核種の部分的な持続放出は、これが、例えば、腹膜の表面、におけるより良好な用量の均一性、及び結晶粒の局所的な集合体による放射線「ホットスポット」の減少に作用し得るので、有益になり得る。
【0065】
224Raシリーズ(α粒子)の主な線量成分の照射領域は、組織において0.1mm未満であり、組織及び腹膜のより深い領域に損害を与えずに、腹膜及び腔内に存在する臓器の表面に、処置に関連する放射線量の送達が可能である。β放出コロイド及び粒子が、腹腔内療法において抱合体として使用されたとき、多少の抗腫瘍活性を示すが、腸などの放射線による遅発性効果が、これらの生成物の費用便益比を好ましくないものにすることを示す可能性があることが、古い試験から知られている。
【0066】
副作用の主な理由は、数mmの照射領域による、腸のより深い領域への放射線の侵入である。α放射体に切り換えることによって、深い下部組織表面の照射に関する問題を回避できる。α粒子に有利になる別の態様は、細胞において高い割合の致死性の二本鎖切断を引き起こし、且つ、処置を乗り切るような細胞に対する酸素状態の効果を低減する、αの高い線形エネルギー転移である。また、相対生物効果比も通常、βに対してαがかなり高い。
【0067】
当該発明は、これまでに記載されたα放射性コロイドとはいくつかの点で異なっている。(1)それは、224Ra及び娘核種の持続放出をおこない、そしてそれが、用量「平滑化」効果を有し、投与領域におけるα粒子の不均一分布の問題を低減し得る。(2)短寿命の220Rn(t1/2=56秒間)の崩壊と216Po(t1/2=0.15秒間)の崩壊の結果として生じるより長寿命の娘核種(t1/2=10.6時間)である212Pbは、試験粒子によって容易に再吸収され、そしてそれが、体循環内への212Pbの漏出を低減し得る。こうして、炭酸カルシウム粒子が、224Raの担体として特に好適であることがわかった。(3)粒子物質自体は、使用されるレベルでは無毒性であり、粒子は、無毒性イオンに徐々に分解可能であり、その結果、高度に生体適合性である。
【0068】
粒子は、サイズでナノメートル~数十マイクロメートルのサイズで作製され、高い標識収率で放射性標識され、そして、数日間保存し得るが、それがすぐに使用できる粒子懸濁液の集約された製造と病院への出荷を可能にするので重要である。六方晶系β-CaCO3、斜方晶系λ-CaCO3を含めた、いくつかの異なる種類のCC結晶が使用されてもよい。
【0069】
通則
本発明による化合物及び粒子に関連して先に考察したあらゆる特徴及び/又は態様が、本明細書中に記載した方法及び適用に対して例えを用いて適用されることは、理解されるべきである。
以下の図面及び実施例は、本発明を例示するために以下に提供される。それらは、説明に役立つことを意図しており、どのような形であっても制限と見なされてはならない。
【実施例
【0070】
実施例1 224Raの製造
溶媒の留去などを含め、濃縮放射性調製物を用いたすべての作業を、グローブボックス内でおこなった。1MのHNO3中の228Thの線源を、市販の供給業者から入手した。Ac-樹脂を、あらかじめパックされたカートリッジの形態でEichrom Technologies LLC(Lisle, IL, USA)から入手した。
【0071】
より少量の体積の溶媒を使用するために、カートリッジ(カートリッジ1)の材料の約30パーセントを抜き出し、1ml濾過カラム(Isolute SPE, Biotage AB, Uppsala, Sweden)で作ったより小さいカラム(カートリッジ2)に再充填した。元のカートリッジ含有量の20%に相当するスラリーを、500マイクロリットルの1M HNO3を加え、そして、少なくとも4時間、バイアル(4mlバイアル、E-Cサンプル、Wheaton, Millville, NJ, USA)を振盪しながらインキュベートする、500マイクロリットルの1M HCl中での228Thの固定に使用した。カートリッジ2に、少量(約0.1ml)のAc-樹脂を加えた。その後、スラリーを、捕捉層としてあらかじめ充填された材料を使用して、カートリッジ2に加えた。ラジウムは、カートリッジ2から2mlの1M HCl中に溶出され得る。2mlのラジウム溶液を、ヒートブロックを使用し、バイアルのゴム/テフロン(登録商標)隔壁のテフロン(登録商標)チューブ導出入部を通したN2ガスでバイアルをフラッシュし、そして、N2ガス流によって酸性蒸気を飽和NaOHのビーカーに導くことによって、蒸発乾固した。
【0072】
残渣を、0.5mlの1M HNO3中に溶解し、そして、約250mgのDowex陰イオン交換体が充填された1ml Isoluteカラムから成るカートリッジ3に投入した。カートリッジ3を、7mlの1M HNO3で洗浄し、212Pbを取り除き、そして、最後に3~4mlの8M HNO3224Raを溶出した。224Ra溶出液を、ヒートブロックとN2ガス流を使用して、蒸発乾固し、そして、残渣を0.1MのHCl中に溶解した。典型的には、228Th線源中に存在する224Raの70%超が、記載した方法を使用して抽出及び精製され得る。
【0073】
その後、陰イオン交換ステップをやめて、2mlの未精製の1M HClを、留去なしに使用し、そして、第二のAc樹脂カートリッジに投入し、そしてそれを、更に0.5mlのHClで洗浄して、224Raを含む2.5mlの溶出液を生じさせた。これを、蒸発乾固し、0.2ml以上の0.1M HCl中に溶解した。粒子の標識に使用する前に、224Ra溶液に、体積の10%に相当する量の5M 酢酸アンモニウムを加えて、pHを5~6に調整した。
【0074】
実施例2 放射性サンプルの計測
放射性サンプルを、Cobra II Autogammaカウンター(Packard Instruments, Downer Grove, IL, USA)又はHidex Automatic Gamma Counterでカウントした(Hidex, Turku, Finland)。228Th線源からの224Raの抽出中、CRC-25R線量キャリブレーター(Capintec Inc., Ramsey, NJ, USA)を使用した。
【0075】
サンプル中のリアルタイムでの224Ra、212Pb、及び212Biの分布を測定するために、液体窒素冷却型高純度ゲルマニウム(HPGe)検出装置(GWC6021, Canberra Industries, Meriden CT, USA)を使用した。これを、DSA1000デジタルシグナル解析器及びGenie2000ソフトウェア(Canberra)に組み合わせた。
【0076】
実施例3 マイクロ粒子の調製
炭酸カルシウムマイクロ粒子を、自然沈降法によって調製した。0.33MのNa2CO3(Merck, Germany)溶液を、同じ体積の0.33MのCaCl2(Merck, Germany)中に素早く注ぎ入れた。30秒間の激しいボルテックス処理後に、粒子懸濁液を5分間静置した。粒子を、濾紙によって濾別し、約30mlの水で洗浄し、室温にて一晩乾燥させた。濾過及び洗浄を、0.45μmのニトロセルロースフィルター(Whatman)を備えたガラス真空濾過装置(Whatman)でおこなった。乾燥したマイクロ粒子を室温にて保存した。得られたマイクロ粒子は、Countess(商標)Automated Cell Counter(Invitrogen)による分析によって支持される、顕微鏡によって示した1~10μm以内の直径、及び3~5μmの中央値を有する形状の球であった。
【0077】
実施例4 マイクロ粒子の放射性標識
所望の量のCaCO3粒子を、エッペンドルフチューブに移し、1mlの水中に懸濁した。粒子懸濁液を、超音波浴中で10~15分間、超音波処理し、続いて4つ洗浄ステップ:1mlの水で最初の2回、その後、1mlの0.1M Na2SO4(Alfa Aesar, Germany)で2回、を実施した。粒子を、遠心分離によって洗浄液と分離した。洗浄後、粒子を、0.5%のウシ血清アルブミン(15mgの粒子あたり0.1ml)を補ったDPBS(Gibco, Life Technologies, Carlsbad, CA, USA)中に懸濁し、HulaMixer(Invitrogen, Life Technologies, Carlsbad, CA, USA)により室温にて30分間インキュベートした。混合プログラムは以下の通りであった:回転の軌道幅は14rpmであり、反転幅は20°であり、及び振動幅は3°であった。1mgの粒子あたり3μgのSO4(0.3%)に相当する0.1M Na2SO4溶液の体積を、粒子懸濁液に加えた。更に、224Ra溶液を、粒子懸濁液が入ったチューブに移し、直後に、1mgの粒子あたり3μgのBa(0.3%)に相当する0.07M BaCl2・2H2O(Merck, Germany)溶液を加えた。異なる溶液を添加する間には、粒子懸濁液を、ボルテックスミキサーにより十分に混合した。添加されるべき放射性溶液及び/又はBaCl2・2H2O溶液の体積が10μlを超える場合、それを段階的に(一度に5~10μl、間には十分にボルテックス処理しながら)加えた。総放射性標識体積は、15mgの粒子あたり0.1mlの溶液と等しかった、すなわち、SO4溶液を加える前に取り出される上清の体積を、添加される他の溶液の体積に応じて調整した。放射性標識溶液中の粒子を、先に記載したのと同じ混合プログラムを用いて、HulaMixerにより最短1時間30分間、室温にてインキュベートした。最後に、粒子を、スクロースバッファーで1~3回洗浄した。スクロースバッファーは、94mg/mlのスクロース(Sigma Ultra, St. Louis, MO, USA)と2.1mg/mlのNa2SO4を含んでいた。標識効率を、HPGe検出器を用いて粒子と(単数若しくは複数の)洗浄液を計測することによって決定した。
【0078】
結果:3つの異なる粒子バッチ由来の粒子を用いた、8つの個々の実験において、標識収率は以下の通りであった:212Pb:96.5±1.9%、212Bi:96.7±2.1%、224Ra:95.5±3.2%(平均±SD)。結果は、娘核種を伴った224Raが、マイクロ粒子によって効果的に吸収されることを示す。2カ月間、室温にて粉末で保存された炭酸カルシウム粒子は、新たに調製した粒子と同様の効率で224Ra及びその娘核種を吸収した。
【0079】
実施例5 放射性標識マイクロ粒子のインビトロにおける安定性
実施例4に記載のとおり調製した放射性標識マイクロ粒子のインビトロにおける安定性を、2つの異なる溶液中で試験した。粒子を、室温にて1~1.4mlのスクロースバッファー中、又は37℃にて0.5mlのウシ胎仔血清中のいずれかでインキュベートした。様々な時点で、懸濁液を遠心分離し、上清及びペレット化した粒子中の放射能を計測した。その後、安定性研究が後の時点まで続けられる場合には、粒子ペレットを、スクロースバッファー又はウシ胎仔血清のいずれかの新しいアリコート中に再懸濁し、更にインキュベートした。
【0080】
表2.インビトロにおける炭酸カルシウム粒子による224Raの保持
【表2】
【0081】
データは、224Raが、インビトロにおいて数日間、炭酸カルシウム粒子上に十分に保持されていることを示し、そして、放射線療法向けの使用のために有望な特性を示す。生成物が、集約した製造及び遠方のエンドユーザーへの出荷を可能にする数日の保存期限を有し得ることも示唆した。
【0082】
実施例6.マイクロ粒子への212Pbの再吸収/会合
CaCO3マイクロ粒子を、放射性溶液を加えないことを除いて、放射性標識手順について記載したように調製した。代わりに、放射性標識に関して同じ条件下で調製した「低線量」マイクロ粒子上に吸収された212Pbの量を計測するために、粒子を、450μlのウシ胎仔血清及び50μlの224Ra溶液の(あらかじめ37℃に加熱した)混合物中でインキュベートした。粒子懸濁液を、800rpmの回転速度で37℃にてインキュベートした。10分後に、粒子懸濁液を、スピンダウンし、250μlの上清をエッペンドルフチューブに移し、そして、放射能を計測した。その後、粒子を、上清中に再懸濁し、そして、試験を1時間及び24時間後の測定に対応して延長した。表3には、試験の結果を示す。
【0083】
表3.溶液から炭酸カルシウム粒子への212Pbの吸収
【表3】
【0084】
データは、媒質中の212Pbが媒質から有意に吸収されることを示し、炭酸カルシウム粒子の微小環境における220Rn拡散に、娘核種212Pbの有意な再吸収が続き得ることを示した。これは、血中への212Pbの取り込みからの全身毒性を低減する可能性がある。
【0085】
実施例7 放射性標識マイクロ粒子のインビボにおける生体分布と安定性
背景:腔内使用に関して、224Ra標識炭酸カルシウム粒子の有用性を評価するために、粒子懸濁液を、マウスの腹腔内に注射し、その後の224Raの生体分布を計測した。
【0086】
方法:放射性標識マイクロ粒子を、実施例4に記載のとおり調製した。洗浄後、粒子ペレットを、約13mg/mlの粒子濃度まで、pH7~7.5にてスクロースバッファー中に再懸濁した。施設内で飼育した、17.1~28.3gの体重を有する6~19週齢の雌Athymic Nude-Foxn1nuマウスを、生体分布試験に使用した。
それらに、約5mgのマイクロ粒子に結合させた11~18kBqの224Raを含有する0.4mlの粒子懸濁液を腹腔内注射によって投与した。マウスを屠殺し、そして、注射後20時間(n=2)、4日(n=3)、及び7日(n=3)の放射能測定のために、様々な組織を採取した。対照として、約12kBqの224Raを伴った0.25mlの0.9% NaCl溶液を各マウスへと腹腔内に投与することによって、遊離224Ra(溶解したRaCl2)を用いた生体分布実験を実施した。224RaCl2溶液は、5.5のpHを有した。比較のために、放射性標識マイクロ粒子を用いた生体分布試験に関して、3匹のマウスから成る群を、注射後の同時点にて屠殺した(図1A)。
【0087】
結果:図1A及びBはそれぞれ、224Ra標識炭酸カルシウム及び遊離224Raの生体分布プロファイルを示す。大腿骨取り込みに基づくと、224Raの放出は、224Ra標識炭酸カルシウムからは遅く、20時間後に約5分の1、投与後7日目に約3分の1まで増大する。放射性核種のこの限定した放出は、放射性標識粒子からの用量不均一を低減するので、一態様において有益になり得る。癌転移の腹腔内転移におけるi.p.脂肪の役割を考慮すれば有望であるi.p.脂肪におけるかなりの取り込みがあることは、注目に値する。結論として、224Ra標識炭酸カルシウムには、腔内放射線処置に関する非常に有望な分布特性がある。
【0088】
実施例8 ヌードマウスi.p.癌モデルにおける224Ra標識マイクロ粒子の抗腫瘍活性
背景:224Ra標識炭酸カルシウムマイクロ粒子の処置活性を試験するために、腹腔内微小転移のヌードマウス腫瘍モデルを使用した。
【0089】
材料と方法:SKOV-3-luc細胞(0.25mlのRPMI中に5・106細胞)を、施設内で飼育した、17.7~23.6gの体重を有する6週齢の雌Athymic Nude-Foxn1nuマウスに腹腔内注射した。3日後に、マウスを、200kBq/kg(0.25~0.3ml)、600kBq/kg(0.35~0.4ml)又は200kBq/kg(0.25~0.4ml)の3回注射の放射能を有する、スクロースバッファー中の224Ra標識炭酸カルシウムマイクロ粒子の腹腔内注射で処置した。後者の群は、それぞれの注射画分の間に48時間あった。対照動物には、生理的食塩水(0.4ml)又は200mg/kg(0.35~0.4ml)のスクロースバッファー中の無標識マイクロ粒子を与えた。マウスを、細胞接種前に、各群が8匹のマウスから成るように、処置群に無作為化した。処置開始後44及び45日目に、すべての動物を、頸椎脱臼によって安楽死させた。解剖中、肉眼的腫瘍の存在を、それぞれの動物の慎重な目視検査によって評価し、腹腔内のすべての目に見える腫瘍を、摘出し、そして、計量した。
【0090】
結果:データを図2に示す。生理的食塩水又は無標識炭酸カルシウムマイクロ粒子のいずれかを与えた2つの対照群の平均腫瘍重量の間には有意差がなかった。224Ra標識マイクロ粒子を与えたすべての群が、対照と比較して、統計的に有意であった腫瘍重量の大きな減少が示すように、腫瘍増殖の強い抑制を有した。224Ra処置群間には、統計的な違いはなかったが、より高い224Ra投与量及び分割処置は、より腫瘍増殖抑制に向かう傾向があった。
結論として、224Ra標識炭酸カルシウムマイクロ粒子は、腹腔内腫瘍に罹患しているマウスにおいて強力且つ一貫した抗腫瘍活性を示した。
【0091】
実施例9 進行性癌腹水モデルにおける処置効果
背景:ヒト卵巣癌は、腹腔内腹水につながることが多い。ヒト卵巣癌細胞株ES-2は、ヌードマウスにおいて進行性腫瘍細胞増殖及び癌性腹水を生じる。
【0092】
材料と方法:ES-2細胞(0.3mlのRPMI中に10・106細胞)を、施設内で飼育した、18.1~23.2gの体重を有する6週齢の雌Athymic Nude-Foxn1nuマウスに腹腔内注射した。25時間後に、マウスを、100kBq/kg(0.3ml)、300kBq/kg(0.3~0.35ml)又は500kBq/kg(0.3~0.35ml)の放射能を有するスクロースバッファー中の224Ra標識炭酸カルシウムマイクロ粒子の腹腔内注射で処置した。対照動物には、0.35mlの生理的食塩水を与えた。マウスを、細胞接種前に、各群が7~8匹のマウスから成る、処置群に無作為化した。動物を、計量し、そして、疾患の進行について最低で1週間あたり3回、そして、それらが疾患の最終ステージに近いことを示す臨床徴候を示したときには、毎日観察した。一般的な動物の外観及び挙動と共に、運動又は呼吸が低下する腹部膨満、急激な体重の増減を考慮して、それらが、健康を損なうに至ったその日に、すべてのマウスを頸椎脱臼によって安楽死させた。次に、安楽死させたマウスを、肉眼的な病理学検査のために解剖した。
【0093】
結果:生存期間を、腫瘍細胞接種後の日数として記録し、そして、追跡20日目までのデータを含めた予備的な生存曲線を提示した(図3)。腫瘍細胞接種後19日目に、生理的食塩水及び最低用量群(100kBq/kg)のすべてのマウスを安楽死させたが、その一方で、中(300kBq/kg)及び高(500kBq/kg)用量群のマウスの86%(6/7)は、試験終点に到達しなかった。これらの生き残った動物を、20日目に打ち切った。各群の生存期間の中央値を、表4に提示する。
【0094】
表4.生理的食塩水又は224Ra標識炭酸カルシウムによって処置した、腹腔内ES-2癌腹水に罹患しているマウスの生存期間の中央値
【表4】
【0095】
結論:224Ra標識炭酸カルシウムマイクロ粒子によりかなりの無病寿命延長を獲得し、腔内腹水に対する大きな潜在的可能性を示した。
【0096】
実施例10A 二成分型放射線療法用混合物の調製
いくつかの態様において、224Ra標識炭酸カルシウム粒子を細胞特異的放射性医薬品と組み合わせることが有益になり得る。これは、炭酸カルシウム粒子と接触させる前に、娘核種と平衡状態にある224Ra溶液を、212Pb結合キレート抱合体と組み合わせたときに得られる。
【0097】
方法:娘核種と平衡状態にある224Raの0.2mlの0.5M 酢酸アンモニウム溶液を、1mg/mlのTCMC標識モノクローナル抗体(mAb)(トラスツズマブ、セツキシマブ又はOI-3)に加え、そして、60分間インキュベートした。その後、反応混合物を、0.2mlの1% ウシ血清アルブミン中の30mgの炭酸カルシウムマイクロ粒子に加え、30分間混合した。その後、混合物を、遠心分離し、上清とペレットを別々にガンマカウンターでカウントし、そして、ゲルマニウム検出器で分析した。
212Pb標識抗体及び224Ra-CaCO3マイクロ粒子から成る放射線療法用混合物を調製した。212Pbで抗体を標識するために、抗体セツキシマブを、最初に、キレート剤、TCMCに結合させた。
【0098】
放射性免疫抱合体を調製するために、0.5Mの酢酸アンモニウム(pH5~6)を用いた224Ra溶液を、TCMC-セツキシマブと混合し、350rpmの回転速度で37℃にて30分間反応させた。得られた生成物の放射化学純度を、クロマトグラフィーストリップ(Biodex)で評価し、212Pbについて95%超であることがわかった。CaCO3マイクロ粒子を、添加した放射能が遊離224Ra及び212Pb標識TCMC-セツキシマブの両方を含む、先に記載の溶液であった点を除いて、放射性標識手順について記載したように調製した。HulaMixerによる室温にて1.5時間のインキュベーション後、放射性標識溶液中の粒子を、スピンダウンし、上清と粒子画分を分離した。粒子ペレットと上清の224Ra及び212Pbの放射能分布を、HPGe検出器で測定した。放射性化学物質純度分析を、上清のアリコートでおこなった。
【0099】
データを、表5及び6に提示する。表6は、66.39%の総212Pb放射能が上清で見られた一方で、98.41%の224Raが粒子上に保持されたことを示す。放出された212Pbの少なくとも98%がタンパク質に結合され(表5)、そしてそれは、抗体が粒子と混合される前の抗体結合212Pb画分を表す。表6では、212Pb-抗体抱合体と自由循環中の224Ra、及び炭酸カルシウム粒子への結合の画分が提示される。データは、224Raが粒子に結合する一方で、212Pb抱合体の大半が、媒質中を自由に循環することを示す。よって、注射に好適な二官能性放射線療法用混合物を得た。
【0100】
結論として、212Pb-TCMC-抗体抱合体と混合された224Ra溶液は、抗原標的特性並びにマイクロ粒子放射線療法用特性を有する、放射性免疫抱合体(RIC)と放射性標識マイクロ粒子とを伴った二成分型処置薬混合物をもたらす224Ra-CCマイクロ粒子を調製するのに使用できる。これは、全面的な腔照射法と、癌に対する特異的な腫瘍細胞標的化RIC処置との組み合わせを作り出す際に有利であり得る。RICの添加は、耐性癌細胞に対する処置効果を改善するためのα線放射の微細分布を高め得る。
【0101】
表5.炭酸カルシウム粒子への吸収前後の212Pb-TCMC-抗体抱合体の薄層クロマトグラフィ分析
【表5】
【0102】
表6.212Pb-TCMC-抗体を含有する224Ra溶液の粒子吸収
【表6】
【0103】
実施例10B 212Pb放射性免疫抱合体と224Raマイクロ粒子放射線療法用混合物を調製するキットシステムの説明
水溶液(例えば、0.5Mの酢酸アンモニウム、pH5~6)中の224Raの溶液が入ったバイアル(A)を、212Pbを作り出すために1日以上崩壊させる。TCMC-抗体抱合体若しくは同様のキレート抱合抗体の水溶液(B)と、乾燥又は水を含む炭酸カルシウムマイクロ粒子が入ったバイアル(C)。バイアルAとBの内容物を、該バイアルの一方の中で一緒に混合し、1分~4時間インキュベートし、その後、バイアルCと混合し、1分~4時間インキュベートした。それぞれのインキュベーションステップ後に、品質管理をおこなっても又はおこなわなくてもよい。最後に、A、B及びCを組み合わせた混合物をシリンジに流し込み、そして、患者に投与する。
【0104】
実施例11 様々なサイズのマイクロ粒子の放射性標識と、それらの224Ra及び娘核種212Pbの保持
224Ra及びその娘核種212Pbの標識効率と経時的な保持を、1~10μmの好ましいサイズ範囲内の2つの異なるサイズの放射性標識CaCO3マイクロ粒子に対して調査した。粒子の数加重メジアン径が、単一粒子の光検知によって1.1及び8.9μmであることがわかり、こうして、粒子の好ましいサイズ範囲の両極を表した。最も大きい粒子を、実施例3に記載のとおり調製し、そして、より小さい粒子を、PlasmaChem GmbH, Berlin, Germanyから購入した。その粒子を、超音波処置ステップ及びDPBS中の0.5% BSAの中でのインキュベーションを省略したことを除いて、実施例4に記載のとおり224Raを用いて標識した。標識手順が終了した後に、粒子及び洗浄溶液を、Hidexガンマカウンターで1分間計測した。224Ra崩壊が非常に小さいガンマ線放出をもたらすので、224Raの放射能の測定を、その崩壊生成物212Pbのガンマ線放出の計測によって主に実施する。224Raのγ放射能、並びに娘核種212Pbのγ及びエックス線放射能を含む、65~345keVからのカウントを選択し、更なる計算のためにまとめた。224Raと212Pbの間の平衡状態を確立するために、サンプルを、それらを再計測する前に、標識の後に最低でも24時間崩壊させた。標識効率を、結合放射能として測定した:マイクロ粒子に加えた全放射能に対する、標識手順後に粒子に結合している放射能のパーセンテージ。
【0105】
【化1】
【0106】
式中、A粒子は、洗浄後の粒子懸濁液中の放射能であり、そして、W溶液は、洗浄溶液中の全放射能である。粒子標識を終了した後の測定値を、65~345keVウィンドウ内の224Raのγ線放出のごくわずかな寄与を仮定することによって、212Pb標識効率を推測するのに使用した。224Raと娘核種212Pbとの間の平衡状態は、212Pbの崩壊が224Raからの産生速度と等しいときに、達している。224Raの純粋な線源は、約2日後に平衡条件に達している。サンプルが標識後に2つの核種の比較的同等の分布を有すると予想されるので、サンプル中の224Raと212Pbの間の平衡状態に24時間後に達しているとここでは考えられる、すなわち、224Raの純粋な線源より速く平衡状態に達する。そのため、平衡状態にあるサンプルの測定値を、0時の224Raの標識効率を概算するのに使用する。
【0107】
標識後の粒子上の224Ra及び212Pbの保持を測定するために、粒子を、室温にて1mlのスクロースバッファー(94mg/mlのスクロース、2.1mg/mlのNa2SO4)中でインキュベートした。24時間、3、5、及び7日間後に、粒子懸濁液を遠心分離し、上清とペレット化した粒子中の放射能を計測した。その後、安定性研究がもっと後の時点まで続けられる場合には、粒子ペレットを、スクロースバッファーの新しいアリコート中に再懸濁して、更にインキュベートした。保持された放射能を、所定の時間のサンプルの全放射能に対する、上清の除去後に粒子から放出されていない(A上清)放射能のパーセンテージとして概算した。
【0108】
【化2】
【0109】
それらを再計測する前に、サンプルを最低でも24時間保存し、そして、先に記載したように、保持された212Pb放射能を、上清の除去直後に取得した測定値から概算したが、保持された224Ra放射能を、平衡測定から計算した。
【0110】
結果:1.1μm(8.9μm)粒子を用いた12(14)の個々の放射性標識実験において、放射性標識効率は、以下の通りであった(平均±標準偏差):224Ra:93.6±5.8%(88.8±6.5%)及び212Pb:87.6±7.7%(84.3±7.7%)。結果を図4に示しているが、その結果は、224Raと娘核種212Pbは、それらのサイズの違いに関係なく、マイクロ粒子によって高収率で吸収されることを示す。
保持実験(図5)からの結果は、224Raと娘核種212Pbが、スクロースバッファー中、インビトロにおいて数日間、CaCO3粒子上で十分に保持されたことを示し、そしてそれは、放射性標識粒子のための関連医薬担体になり得る。平均した保持放射能は、両方の粒度に関して、全時点において95%超である。これは、生成物が、集約した製造及び遠方のエンドユーザーへの出荷を可能にする数日の有効期間を有し得ることを示唆している。
【0111】
実施例12 腹水に罹患しているマウスにおける224Ra標識CaCO3マイクロ粒子の処置及び血液学的効果
背景:ヒト卵巣癌は、腹腔内腹水につながることが多い。ヒト卵巣癌細胞株ES-2は、ヌードマウスにおいて進行性腫瘍細胞増殖及び癌性腹水を生じる。
【0112】
方法:ES-2細胞(0.35mlのRPMI中に1・106細胞)を、施設内で飼育した、17.0~23.9gの体重を有する5~6週齢の雌Athymic Nude-Foxn1nuマウスに腹腔内注射した。22時間後に、マウスを、150kBq/kg(0.25~0.35ml)、300kBq/kg(0.3~0.35ml)、1000kBq/kg(0.4ml)又は2回注射の150kBq/kg(0.3~0.4ml)の放射能を有するスクロースバッファー中の224Ra標識CaCO3マイクロ粒子(単一粒子の光検知によって決定した8.9μmのメジアン径)の腹腔内注射で処置した。後者の群は、それぞれ注射画分の間を1週間とった。対照動物には、0.35mlの生理的食塩水を与えた。マウスを、細胞接種前に、各群が3~10匹のマウスから成る、処置群に無作為化した。予定した終点に達したとき、動物を、実施例9に記載のとおり頸椎脱臼によって安楽死させた。また、それらを、実施例9に記載と同様に観察した。加えて、最大100μlの血液を、処置開始13日前及び処置開始13日後と26日後に外側伏在静脈から採取した。3-5匹のマウスから、あらゆる時点にて各群からサンプル採取した。潜在的な血液毒性の評価を、自動化された獣医学的血液アナライザー(scil Vet abc, ABX Diagnostics, Montpellier, France)により白血球、赤血球、及び血小板をカウントすることによって実施した。
【0113】
結果:生存期間を、腫瘍細胞接種後の日数として記録し、図6の生存曲線として及び表7の生存期間の中央値として提示する。すべての用量の224Ra標識CaCO3マイクロ粒子が、生理的食塩水対照群と比較して、生存期間の中央値を最低でも二倍にした。これらの結果は、224Ra標識CaCO3マイクロ粒子が、比較的低用量(150kBq/kg群に関してマウスあたり2.6~3.6kBq)であっても、腔内腹水の処置に関して有意な潜在的可能性を有することを示す。血液学的分析からの結果(図7)は、処置開始前と比較して、白血球数算定の低減がないことを示す。より初期の時点と比較して、13日目の対照群と26日目の150kBq/kg群の白血球細胞数の増大は、該時点が、これらの群のマウスが重い腹水負荷を経験し始めた時期に相関し、且つ、試験のエンドポイントに達する間近であるため、恐らく腹部の腹水癌細胞の蓄積に対する免疫応答による。すべての処置群に関する平均血小板数は、ブリーダー(Envigo)によって提供されたこのマウス系統に関する参照値(1100±143×109/L)と有意差がなかった。赤血球に関しては、生理的食塩水対照と比較して、いずれの処置群においても、数における注目に値する違いは見られなかった。これらの結果は、224Ra標識CaCO3マイクロ粒子が、十分に許容され、そして、この試験において試験した処置的有効量レベルにて血液毒性を引き起こす徴候を示さないことを示唆した。
【0114】
結論:224Ra標識CaCO3マイクロ粒子を用いた処置後に、かなりの無病寿命延長を得た。血液パラメータに対して処置に関連する影響は観察されなかったが、224Ra-CaCO3マイクロ粒子処置が、有意な処置効果をもたらす用量にて十分に許容されることを示した。
【0115】
表7:1・106個のES-2細胞を腹腔内に注射し、そして、22時間後に生理的食塩水又は224Ra標識CaCO3マイクロ粒子で処置したマウスの生存期間の中央値
【表7】
【0116】
実施例13 異なる疾患発症ステージの腹腔内腹水に罹患しているマウスの処置
背景:悪性腹水は、腹腔内の進行癌において一般的であり、患者の平均寿命の短縮とクオリティオブライフに関係しているので、改善された処置戦略の医療的必要性が存在する。224Ra-CaCO3マイクロ粒子の抗腹水活性を、細胞接種後の様々な日数に対する処置を施すことによって、ヌードマウスのES-2腹水モデルにおいて評価した。
【0117】
方法:ES-2細胞(0.2~0.35mlのRPMI中に1・106細胞)を、施設内で飼育した、接種時点で17.0~23.9gの体重を有する5~6週齢の雌Athymic Nude-Foxn1nuマウスに腹腔内注射した。5~10匹のマウスから成る無作為化した群を、細胞接種の22時間、2、5、7、及び9日後に、スクロースバッファー中の224Ra標識CaCO3マイクロ粒子(単一粒子の光検知によって決定した8.9μmのメジアン径)の腹腔内注射で処置した。300kBq/kg(0.3~0.35ml)を投与した細胞接種の22時間後に処置した群を除いて、すべての処置群に、700kBq/kg(0.29~0.4ml)の用量を与えた。対照群のマウスには、細胞接種後1日目(10匹のマウス)、5日目(5匹のマウス)及び9日目(10匹のマウス)に生理的食塩水(0.35~0.4ml)を与えた。予定した終点に達したとき、動物を、実施例9に記載のように頸椎脱臼によって安楽死させた。また、それらを、実施例9に記載と同様に観察した。
【0118】
結果:生存期間を、腫瘍細胞接種後の日数として記録し、図8の生存曲線として及び表8の生存期間の中央値として提示する。生理的食塩水対照群と比較した生存期間の中央値の増大は、マウスを細胞接種後1~7日間から224Ra標識CaCO3マイクロ粒子で処置したとき、観察された。処置効果は処置日数と相関がある、すなわち、生存期間の最も有意な延長は、細胞接種後の最も早い時点の処置に関して見られる。表8に示したとおり、対照と比較して、224Ra-CaCO3マイクロ粒子投与群中の屠殺時に腹水を有したマウスにおいても短縮があった。これは、投与群が接種後により長い生存期間を有するにもかかわらず、これにより、腹水を発症するまでにより多くの時間を有した。
【0119】
結論:224Ra標識CaCO3マイクロ粒子を用いた処置は、ES-2細胞を腹腔内接種したマウスにおいて注目に値する抗腹水効果を有した。
【0120】
表8:細胞接種後の様々な時間にて、生理的食塩水又は224Ra標識CaCO3マイクロ粒子で処置した腹腔内ES-2卵巣癌腹水モデルに罹患しているマウスの生存期間の中央値
【表8】
【0121】
実施例14 腹腔内微小転移のマウスモデルにおける224Ra標識炭酸カルシウムマイクロ粒子の処置効果
背景:最大腫瘍縮小手術を用いて処置した、卵巣癌に罹患している患者は、腹腔内腫瘍細胞及び微小転移が残存するため再発する傾向がある。患者の残存腹腔内疾患の状態を模倣するために、1・105細胞の腹水を生じる細胞株ES-2をヌードマウスに接種し、そして、細胞の1時間後に224Ra標識CaCO3マイクロ粒子を用いた処置をおこなった。
【0122】
方法:ES-2細胞(0.2mlのRPMI中に1・105の細胞)を、施設内で飼育した、18.5~28.8gの体重を有する6~9週齢の雌Athymic Nude-Foxn1nuマウスに、腹腔内注射した。細胞接種の1時間後に、マウスを、スクロースバッファーで(0.31~0.5ml)中の、2つの異なるサイズの、750kBq/kgの224Ra標識CaCO3マイクロ粒子の腹腔内注射を用いて処置した。対照群には、0.4mlの生理的食塩水を与えた。粒子の数加重メジアン径が、単一粒子の光検知によって、1.1及び8.9μmであることがわかり、こうして、粒子の好ましいサイズ範囲の両極を表した。最も大きい粒子を、実施例3に記載のとおり調製し、そして、より小さい粒子を、PlasmaChem GmbHから購入した。細胞接種前に、マウスを、各群が12~13匹のマウスから成る処置群に無作為化した。予定した終点に達したとき、動物を、実施例9に記載のとおり頸椎脱臼によって安楽死させた。また、それを、実施例9に記載の同様に観察した。
【0123】
結果:生存期間を、腫瘍細胞接種後の日数として記録し、図9の追跡80日目までのデータを含めた生存曲線として及び表9の生存期間の中央値として提示する。224Ra標識大及び小CaCO3粒子による処置に関して、生理的食塩水対照群と比較して、生存期間の中央値を、それぞれ42日間(3.2倍)及び36日間(2.9倍)延長した。80日目において、対照群の1/13(7.7%)と比較して、8.9μm及び1.1μmの大きさの粒子で処置したマウスの4/12(33.3%)及び3/12(25%)が生きていた。2つの224Ra投与群の生存曲線の間には、統計的な有意差がなかった。
【0124】
結論:結果は、224Ra標識CaCO3粒子が、生理的食塩水対照群と比較して、生存期間の中央値を約3倍増大し、そして、数匹の長期生存個体も生じる、残存腹腔内疾患の処置に関して大きな潜在的可能性を有することを示す。結果はまた、1~10μmの好ましいサイズ範囲の両極端の粒子が、微小転移性疾患を模倣したこのモデルにおいて類似した処置効率を有することも示す。
【0125】
表9:生理的食塩水対照群と比較して、1・105個のES-2細胞を腹腔内に注射し、1時間後に2つの異なるサイズの224Ra標識CaCO3マイクロ粒子で処置したマウスの生存期間の中央値
【表9】
【0126】
実施例15 炭酸カルシウムマイクロ粒子への212Pbの吸収
24時間の間に非放射性粒子に吸収された224Ra標識CaCO3マイクロ粒子から放出された212Pbの量を測定するために、透析手順を使用した。CaCO3マイクロ粒子を、超音波処理ステップとDPBS中の0.5% BSA中でのインキュベーションを省略したことを除いて、実施例4に記載のとおり224Raを用いて標識した。加えて、非放射性粒子を、放射性溶液を加えるステップを除いて、全く同じ方法で調製した。非放射性粒子(50mg)を、コニカル15ml遠心分離チューブ内で14mlの全体積までDPBS(pH7)で希釈した。DPBS中の約5mgの放射性粒子(0.15~0.40ml)を、透析デバイス(Slide-A-Lyzer MINI Dialysis Devices, 20 kDa MWCO, ThermoFisher)に加え、そして、透析バッファーとして機能する非放射性粒子を含むチューブ内に配置した。挿入された透析デバイスを伴ったチューブを、振盪しながら室温にて24時間インキュベートした。インキュベーション後に、15mlチューブをスピンダウンし、そして、上清を取り出した。透析デバイス内の放射能(AD)、透析バッファーの上清(AS)、及び15mlチューブからのペレット化した粒子(AP)を、Hidexガンマカウンターで計測した。24時間の間に放出された212Pbのパーセンテージを、次のようにして概算した:
【0127】
【化3】
【0128】
非放射性CaCO3粒子に吸収された放出212Pb放射能のパーセンテージを、次のようにして決定した:
【0129】
【化4】
【0130】
表10は、放射性標識粒子からDPBSに放出された212Pbが、CaCO3粒子に高度に吸収されるのを示す試験の結果を提示する。放出された212Pb放射能の半数超が、粒子に再結合する傾向がある。これは、224Ra娘核種(220Rn、216Po又は212Pb)がリコイルエネルギーのため又は220Rn拡散のため粒子から放出された場合、それに続いて娘核種212Pbの顕著な再吸収が起こり得ることを示している。これは非常に有益な概念である、なぜなら、それは、例えば、血流内への212Pbの取り込みを妨げることによって、腹腔内からの娘核種の再分配による全身的毒性を低減するからである。結論として、炭酸カルシウムマイクロ粒子は、それが224Ra標識炭酸カルシウム粒子からの220Rnの拡散から生じる遊離212Pbを再吸収し得るので、224Ra及び子孫を保持するのに特に適している。
【0131】
表10.224Ra標識CaCO3マイクロ粒子から放出される、及び非放射性粒子に吸収される212Pbの量
【表10】
【0132】
実施例16 放射性標識マイクロ粒子の生体分布とインビボにおける安定性
この実施例では、実施例7からのデータを、様々な組織の1グラムあたりのBqとして再び提示する。注射した用量を、1マウスあたり10kBqに標準化した。マウスを屠殺した約2.5~3時間後のサンプルの測定値を、212Pbの量を概算するのに使用したが、それに対し、マウスの屠殺の3~4日後のサンプルの再測定値を、224Raの量を決定するのに使用した。224Raに関するデータを、屠殺の時間でのサンプル中の放射能を示すように崩壊補正した。
【0133】
結果:遊離224Ra溶液と比較した、注射の20時間、4及び7日後の224Ra標識CaCO3粒子の組織分布を、組織1グラムあたりの平均放射能として図10に示す。図11は、娘核種212Pbの生体分布を示す。放射標識が粒子に結合しているとき、それは、骨格への大きく減少した被曝、及び腹腔内臓器の、おそらく、表面への、高い被曝を伴った組織放射線被曝における顕著なシフトを示す。結論として、224Ra標識炭酸カルシウムマイクロ粒子は、腹腔内の局所的な放射線療法用のものとして有望な特性を示す。
【0134】
実施例17 進行性癌の腹水モデルにおける処置効果
この実施例では、実施例9からのデータを、マウスの追跡期間を延長し、そして、Capintec CRC-25R投与量キャリブレーターの再較正後に用量レベルを調整した。マウスに与える用量を、35kBq/kg、100kBq/kg、及び165kBq/kgに調整した。
【0135】
結果:生存期間を、腫瘍細胞接種後の日数として記録し、図12の追跡30日目までデータを含む生存曲線として及び表11の生存期間の中央値として提示する。中及び高用量の224Ra-CaCO3粒子は、この進行性腹水モデルにおいて、生理的食塩水対照と比較して、生存期間の中央値において約二倍増をもたらした。最高用量群のあるマウスは、細胞接種後138日間生き延び、そして、いずれの疾患兆候も示すことなく屠殺された。
【0136】
表11:10・106個のES-2細胞を腹腔内に注射し、そして、25時間後に生理的食塩水又は224Ra標識CaCO3マイクロ粒子で処置したマウスの生存期間の中央値
【表11】
【0137】
結論として、224Ra標識炭酸カルシウムマイクロ粒子は、進行性腹腔内癌に罹患しているマウスにおける実質的な抗腫瘍活性を示したが、しかし、進行性癌に対して有意な抗癌効果を得るためには、35kBq/kgより高い線量が好ましい。
【0138】
参照文献
【化5】
【0139】
発明事項
事項1
分解性化合物、並びにα放射性核種、及び/又はα放射性娘核種を作り出す放射性核種を含む粒子。
事項2
前記放射性核種が、224Ra、212Bi、212Pb、223Ra、225Ra、225Ac、213Bi、211At、227Thから成る群から選択される、事項1に記載の粒子。
【0140】
事項3
前記分解性化合物が、CaCO3、PEG修飾CaCO3、タンパク質修飾CaCO3、炭水化物修飾CaCO3、脂質修飾CaCO3、ビタミン修飾CaCO3、有機化合物修飾CaCO3、ポリマー修飾CaCO3、及び/又は無機結晶修飾CaCO3から成る群から選択される、事項1~2のいずれか1項に記載の粒子。
事項4
前記粒子のサイズが、1nm~500μmである、事項1~3のいずれか1項に記載の粒子。
【0141】
事項5
前記粒子が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、放射性免疫抱合体、免疫抱合体、キレート-抗体抱合体、葉酸及び葉酸誘導体を含めたビタミン、ペプチド、ミニボディ、並びにアフィボディから成る群から選択される1若しくは複数の化合物を更に含む、事項1~4のいずれか1項に記載の粒子。
事項6
事項1~5のいずれか1項に記載の1若しくは複数の粒子、並びに希釈剤、担体、界面活性剤、及び/又は賦形剤を含む医薬組成物。
【0142】
事項7
1投与あたり1kBq~10GBqの量の放射性核種を用いて調製される、事項6に記載の医薬組成物。
事項8
複数の投与量の工業規模製造に好適な50MBq~100GBqの量の放射性核種を用いて調製される、事項6~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
事項9
前記組成物が、α放射性核種、及び/又はα放射性娘核種を作り出す放射性核種で標識された単分散又は多分散粒子を含む粒子懸濁液である、事項6~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0143】
事項10
静脈内又は腔内注射に好適である、事項6~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
事項11
薬物として使用するための、事項1~5のいずれか1項に記載の粒子又は事項6~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
事項12
腔内療法、放射線塞栓療法又は放射線滑膜切除術における使用のための、事項1~5のいずれか1項に記載の粒子又は事項6~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0144】
事項13
癌治療における使用のための、事項1~5のいずれか1項に記載の粒子又は事項6~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
事項14
前記癌が、腹腔内癌、頭蓋内癌、胸膜癌、膀胱癌、噴門癌、及びクモ膜下腔内の癌から成る群から選択される、事項1~5のいずれか1項に記載の粒子又は事項6~9のいずれか1項に記載の医薬組成物、事項12~13のいずれか1項に記載の使用のためのもの。
事項15
単回処置又は反復投与を使用して、それを必要としている個人への事項1~5のいずれか1項に記載の粒子又は事項6~9のいずれか1項に記載の医薬組成物の投与を含む処置方法又は改善方法。
【0145】
事項16
事項1~6のいずれか1項に記載の粒子を調製する方法であって、放射性核種向けの担体の使用の有無にかかわらず、α放射性核種と生分解性化合物とを互いに接触させることを含む方法。
事項17
以下の;
-事項1~6のいずれか1項に記載のナノ又はマイクロ粒子、
-α放射性核種又はα放射性娘核種を作り出す放射性核種、
-担体、希釈剤、及び/又は賦形剤、並びに
-任意選択で、該キットを使用するための取扱説明書、
を含むキット。
【0146】
事項18
以下の;
-事項1~6のいずれか1項に記載のナノ又はマイクロ粒子、
-α放射性核種又はα放射性娘核種を作り出す放射性核種、
-担体、希釈剤、及び/又は賦形剤、並びに
-任意選択で、粒子懸濁液と放射性免疫抱合体溶液とを含む二官能性薬剤溶液を調製するために該キットを使用するための取扱説明書、
を含むキット。
事項19
モノクローナル抗体を含めたキレート剤抱合分子を更に含む、事項18に記載のキット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12