(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】三酸化硫黄の転化方法及び水素生成方法
(51)【国際特許分類】
C01B 17/50 20060101AFI20220607BHJP
B01J 27/224 20060101ALI20220607BHJP
B01J 32/00 20060101ALI20220607BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20220607BHJP
C01B 3/04 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
C01B17/50 N
B01J27/224 M
B01J32/00
B01J35/10 301G
C01B3/04 R
(21)【出願番号】P 2019508323
(86)(22)【出願日】2017-04-27
(86)【国際出願番号】 IN2017050150
(87)【国際公開番号】W WO2017187454
(87)【国際公開日】2017-11-02
【審査請求日】2020-04-24
(31)【優先権主張番号】201611014896
(32)【優先日】2016-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】504361964
【氏名又は名称】インディアン・インスティテゥート・オブ・テクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】518383149
【氏名又は名称】オーエヌジーシー・エナジー・センター
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シュリーデーヴィ・ウパダーヤユラ
(72)【発明者】
【氏名】アショク・ニウリッティ・バースカールワール
(72)【発明者】
【氏名】キショア・コンダムディ
(72)【発明者】
【氏名】パルヴァタル・ダマラジュ
(72)【発明者】
【氏名】バーラト・バーガヴァ
(72)【発明者】
【氏名】サチナス・バネルジー
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2014-0120493(KR,A)
【文献】特開昭53-099097(JP,A)
【文献】特開昭62-045344(JP,A)
【文献】特開2003-010692(JP,A)
【文献】特表2019-514688(JP,A)
【文献】米国特許第04314982(US,A)
【文献】特開2013-111542(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0860538(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0048784(KR,A)
【文献】D. M. GINOSAR et al.,High-temperature sulfuric acid decomposition over complex metal oxide catalysts,INTERNATIONAL JOURNAL OF HYDROGEN ENERGY,2009年,34,4065-4073.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 17/50
B01J 27/224
B01J 32/00
B01J 35/10
C01B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属酸化物、混合遷移金属酸化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される活物質と
、担体物質とを含み、
前記担体物質は結晶化多孔質β-SiCであり、前記活物質対前記担体物質の重量比は0.1~25重量%の範囲である、触媒組成物を、反応器内に配置するステップと、
三酸化硫黄の流れを700℃~900℃の温度で前記触媒組成物上に、任意に使用されるキャリアガスの存在下で通過させるステップと、
三酸化硫黄、二酸化硫黄、酸素、水、及び任意に使用されるキャリアガスを含む流れを回収するステップと
を含む、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法。
【請求項2】
前記遷移金属は、Cu、Cr、及びFeからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活物質は、Cu、Cr、及びFeの酸化物からなる群から選択される遷移金属酸化物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記活物質は、二元酸化物、三元酸化物、及びスピネルからなる群から選択される混合遷移金属酸化物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記活物質はCuの酸化物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記活物質はCrの酸化物である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記活物質はFeの酸化物である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記活物質は、モル比1:2のCu及びFeの二元酸化物である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記活物質は、スピネル構造を有するCu及びFeの酸化物である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記活物質は、スピネル構造を有するCu及びCrの酸化物である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記担体物質は、0.05~0.9cc/gの範囲の細孔容積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記担体物質は5~35m
2/gの範囲の活性表面積を有し、BET多点窒素吸着法によって決定された比表面積は2~200m
2/g
、前記触媒組成物における遷移金属含量は0.1~20重量%
、触媒のサイズは0.1~15mmの範
囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前
記結晶化多孔質β-SiC
は、シリカを含まないβ-SiCを大気中700~1000℃の間で2~6時間にわたり酸化させて得られた、シリカで被覆された多孔質β-SiCである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記触媒組成物は、硫酸の分解に使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記触媒組成物は、水素生成に使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
水を水素及び酸素に分解することによる水素生成を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
S-Iサイクル法、ウェスチングハウス・サイクル法、Ispra-Mark 13サイクル法、及びロスアラモス・サイエンスラボラトリ・サイクル法からなる群から選択される方法によって水を水素及び酸素に分解することによる水素生成を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
水を水素及び酸素に分解するステップを含む、水素生成のための請求項1~16の何れか1項に記載の方法であって、以下の式(R1)によって表される反応と、以下の式(R1-1)及び(R1-2)によって表される基本反応とを介して硫酸を水、二酸化硫黄及び酸素に分解するステップを含む、方法。
【化1】
【請求項19】
S-Iサイクル法(硫黄-ヨウ素サイクル)、ウェスチングハウス・サイクル法、又はIspra-Mark 13サイクル法に従う、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
触媒サイズは0.1~15mmの範
囲である、請求項1から19の何れか1項に記載の方法。
【請求項21】
三酸化硫黄の空間速度は、500~500,000ml/g.触媒-hrの間に維持される、請求項1から19の何れか1項に記載の方法。
【請求項22】
0.1bar~40ba
rの間の圧力で行われる、請求項1から19の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載される主題は、一般に、触媒組成物の存在下で三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界のエネルギー需要は絶えず増加しており、様々な地球環境問題を引き起こす炭素含有エネルギー源の広範囲の使用により、温室効果ガスの大気放出が急速に増加している。これらの問題を軽減するために、太陽光、風力、潮力、原子力又は地質エネルギーを利用する技術など、再生可能エネルギー資源の開発のために世界中で多くの研究プログラムが開始されている。これにより、新規の普遍的なエネルギーキャリア、すなわち水素の導入がもたらされる[非特許文献1及び2]。水を水素及び酸素に直接分解(split)することは実用的ではなく、またエネルギーを必要とする。これは、エネルギー需要を減らす多くの方法において、別々の場所で水素及び酸素を生成することによって達成され得る。集合的に、これらの方法は熱化学水素サイクル(TC)として知られている。熱化学サイクルの幾つかの例は、硫黄-ヨウ素サイクル法、ウェスチングハウス(Westinghouse)・サイクル法、Ispra-Mark 13サイクル法、及びロスアラモス・サイエンスラボラトリ(Los Alamos science laboratory)・サイクル法である[非特許文献3及び4]。
【0003】
これらのサイクルの中で、ゼネラル・アトミック(General Atomic)によって最初に提案された硫黄-ヨウ素熱化学サイクルは、そのより高い効率のために最も有望なものであることが判明した[非特許文献5]。幾つかの工場規模での経済分析では、最終コストにおける熱エネルギーの感度は顕著であり、触媒性能のみを改善することで低下することができることが示されている[非特許文献6]。
【0004】
特許文献1は、二酸化硫黄及び酸素を得るための非常に高い温度での硫酸の熱分解について開示している。特許文献2は、硫酸の蒸気がバナジウム触媒と接触している場合の、熱分解よりもはるかに低い温度での硫酸を分解について開示している。
【0005】
特許文献3は、白金触媒を使用することによって硫酸の分解温度を低下させることができることを開示している。特許文献4は、硫酸バリウム、ジルコニア、チタニア、シリカ、ケイ酸ジルコニウム及びそれらの混合物などの様々な担体上に担持された白金触媒を開示している。これらの白金担持触媒は、分解反応の低温領域において、すなわち最高700℃まで安定で有効である。700℃を超える温度では、上記担体上に担持された酸化銅及び酸化鉄が触媒として使用された。酸の全触媒分解は、担持白金触媒を有する低温床及び安価な酸化鉄又は酸化銅が担持された形態を有する高温床としての一連の床で起こる。これらの床で達成された滞留時間は、それぞれ1.0秒及び0.5秒である。多段階プロセスに使用される触媒の組み合わせは、7秒以下の総滞留時間で最適温度の平衡値の少なくとも約95%に等しいSO2への分解を行うことができる。
【0006】
特許文献5は、アルミナ及びチタニア上に担体を有する又は有さない銅-鉄二元酸化物触媒を開示している。特許文献6及び特許文献7は、650℃~800℃の範囲のより低い温度での分解反応のための触媒及び方法を開示している。担持触媒は、多孔質シリカ上に担持された金属酸化物の複合体である。複合金属酸化物は、バナジウム、タングステン、及び銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む。しかしながら、触媒は、非常に高い不活性キャリアガスを伴って非常に低いSO3分圧(すなわち、全圧に対して0.045倍)で運転され、ほぼ平衡転化率を提供する。しかしながら、これらの触媒はより低い流量(W/F約5.6×10-5g-h/cm3)で運転され、処理能力の低下及び運転コストの向上をもたらす。
【0007】
多くの研究グループは、担持された形態又は担持されていない形態の何れかである金属酸化物/複合体を含む触媒の、分解温度の低下又は活性の向上を提案している[非特許文献7及び8]。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第2,406,930号
【文献】米国特許第3,888,730号
【文献】米国特許第4,089,940号
【文献】米国特許第4,314,982号
【文献】韓国特許第10-0860538号
【文献】米国特許出願公開第2014/0086823号明細書
【文献】国際公開第2012/161290号
【非特許文献】
【0009】
【文献】Lloyd A.「水素技術諮問パネル;水素技術諮問パネル(HTAP)(Hydrogen Technical Advisory Panel Hydrogen Technical Advisory Panel(HTAP)」,第1回水素燃料電池技術諮問会議(1st Hydrog.Fuel Cells Tech.Advis.Comm.Meet.),2006.
【文献】Jain IP.「水素:21世紀の燃料(Hydrogen the fuel for 21st century)」,Int J Hydrogen Energy 2009;34:7368-78.doi:10.1016/j.ijhydene.2009.05.093.
【文献】Funk JE,Reinstrom RM.「水からの水素生成におけるエネルギー要件(Energy requirements in production of hydrogen from water)」,Ind Eng Chem...1966;5:336-42.
【文献】Perkins C.「近い将来の太陽熱水分解技術(Likely near-term solar-thermal water splitting technologies)」,Int J Hydrogen Energy 2004;29:1587-99.doi:10.1016/j.ijhydene.2004.02.019.
【文献】Norman J,Mysels K,Sharp R,Williamson D.「硫黄-ヨウ素の熱化学水分解サイクルの研究(Studies of the sulfur-iodine thermochemical water-splitting cycle)」,Int J Hydrogen Energy 1982;7:545-56.doi:10.1016/0360-3199(82)90035-0.
【文献】Leybros J,Gilardi T,Saturnin A,Mansilla C,Carles P.「原子力熱源に結合された高度プロセスからの水素生成コストのプラントサイジング及び評価.その1:硫黄-ヨウ素サイクル(Plant sizing and evaluation of hydrogen production costs from advanced processes coupled to a nuclear heat source.Part I:Sulphur-iodine cycle)」,Int J Hydrogen Energy 2010;35:1008-18.doi:10.1016/j.ijhydene.2009.11.054
【文献】Dokiya M,Kameyama T,Fukuda K,Kotera Y.「熱化学水素調製の研究III 硫酸の熱分解による酸素発生ステップ(The study of thermochemical hydrogen preparation.III.An oxygen-evolving step through the thermal splitting of sulfuric acid)」,Bull Chem Soc Jpn 1977;50:2657-60.
【文献】Tagawa H,Endo T.「熱化学水分解法における酸素発生反応としての金属酸化物を用いた硫酸の触媒分解(Catalytic decomposition of sulfuric acid using metal oxides as the oxygen generating reaction in thermochemical water splitting process)」,Int J Hydrogen Energy 1989;14:11-7.doi:10.1016/0360-3199(89)90151-1.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
三酸化硫黄分解反応に必要な温度を低下させること、又は広範囲の運転条件に対して経済的な速度で三酸化硫黄分解反応を進行させる触媒を使用することにより高い活性と共に安定性を増加させることの何れかが、非常に重要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様では、遷移金属酸化物、混合遷移金属酸化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される活物質と、シリカ、チタニア、ジルコニア、炭化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される担体物質とを含み、活物質対担体物質の重量比は0.1~25重量%の範囲である、触媒組成物を、反応器内に配置するステップと、三酸化硫黄の流れを700~1223Kの温度で触媒組成物上に、任意に使用されるキャリアガスの存在下で通過させるステップと、三酸化硫黄、二酸化硫黄、酸素、水、及び任意に使用されるキャリアガスを含む流れを回収するステップとを含む、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法が提供される。
【0012】
本主題のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲を参照することにより、より良く理解されるであろう。この概要は、概念の選択を簡略化した形で紹介するために提供される。この概要は、主張される主題の重要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、主張される主題の範囲を限定するために使用されることも意図していない。
【0013】
本主題の上記及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面を参照することにより、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】SO
3の分解に対する温度の影響を示す図である。
【
図2】SO
3の分解に対する時間当たりの空間速度の影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
当業者であれば、本開示が具体的に記載されたもの以外の変形及び変更を受ける可能性があることを認識するであろう。本開示はそのような全ての変形及び変更を含むと理解されるべきである。本開示はまた、本明細書中で個別に又は集合的に言及され又は示されたそのようなステップ、特徴、組成物及び化合物の全て、並びにそのようなステップ又は特徴のうちの任意のもの及び任意の又は複数の組み合わせ全てを含む。
【0016】
[定義:]
便宜上、本開示のさらなる説明の前に、本明細書で使用される特定の用語及び例をここに集める。これらの定義は、開示の残りの部分の観点から読まれ、当業者によって理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、当業者に認識され知られている意味を有するが、便宜上及び完全さのために、特定の用語及びそれらの意味を以下に示す。
【0017】
冠詞「a」、「an」及び「the」は、その物品の1つ又は複数の(すなわち、少なくとも1つの)文法的物体を指すために使用される。
【0018】
用語「含む(comprise)」及び「含む(comprising)」は、包括的でオープンな意味で用いられ、追加の要素が含まれてもよいことを意味する。本明細書を通して、文脈がそうでないことを必要としない限り、用語「含む(comprise)」並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などのその変形用語は、記載された要素又はステップ又は要素又はステップの群を含むことを意味するが、任意の他の要素又はステップ又は要素又はステップの群を排除するものではないことを理解されたい。
【0019】
用語「触媒複合体」及び「触媒組成物」は、本開示では交換可能に使用される。
【0020】
比率、濃度、量、及び他の数値データは、本明細書では範囲形式で提示され得る。このような範囲形式は、単に便宜上及び簡潔さのためであり、範囲の限界として明示的に記載された数値だけでなく、その範囲内に包含される全ての個々の数値又は部分範囲もあたかも各数値及び部分範囲が明示的に記載されているかのように含むように、柔軟に解釈されるべきであることを理解されたい。
【0021】
本開示は、一般に、硫酸を触媒分解する方法、又は水素生成のための硫黄-ヨウ素サイクルにおいて三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に触媒分解する方法に関する。
【0022】
本開示の一実施形態では、蒸気形態の硫酸を、700~950℃の間の温度及び1bar~12barの間の圧力で、触媒又は多孔質β-SiC上に担持された金属酸化物触媒などの触媒の組み合わせと接触させる、硫酸を触媒分解する方法が提供される。
【0023】
本開示の一実施形態では、2つのステップで二酸化硫黄を生成するための、硫酸を分解する方法が提供される。第1ステップは、硫酸の三酸化硫黄及び水への熱分解を含む。第2ステップは、三酸化硫黄の二酸化硫黄及び酸素への触媒分解である。
【0024】
水を分解することによって水素及び酸素を生成する方法は、以下に提示された方法の何れかを用いて行うことができる;
a.S-Iサイクル法による水素及び酸素への水の硫黄-ヨウ素分解、
b.ウェスチングハウス・サイクル法、
c.Ispra-Mark 13サイクル法、
d.ロスアラモス・サイエンスラボラトリ・サイクル法。
【0025】
本開示の方法は、R1で表される反応によって硫酸を水、二酸化硫黄及び酸素に分解するステップを含む。反応R1はさらに、それぞれ基本反応R1-1及びR1-2に分割される。基本反応のうち、基本反応R1-2は、二酸化硫黄を生成するための本発明の方法によって行われる。
【0026】
【0027】
硫黄-ヨウ素サイクル:酸素及び水素が段階的に生成される、以下の一連の反応R1~R3及び全体の反応R5で表されるS-I(硫黄-ヨウ素)サイクル法。水を分解することによって水素及び酸素を生成する本開示の方法は、ステップ-Iにおいて、硫酸の水、二酸化硫黄及び酸素への分解を含む。ステップ-Iはさらに、2つの基本反応Rl-1及びRl-2に分割される。本方法は、基本反応R1-2において二酸化硫黄の生成を含む。
【0028】
【0029】
ウェスチングハウス・サイクル:以下の式(R1)、(R6)及び(R7)で表されるウェスチングハウス・サイクル法において、水を分解することによって水素及び水を生成する本発明の方法は、ステップ-Iにおいて、硫酸の水、二酸化硫黄及び酸素への分解を含む。ステップ-Iはさらに、2つの基本反応Rl-1及びRl-2に分割される。本方法は、基本反応R1-2において二酸化硫黄の生成を含む。
【0030】
【0031】
Ispra-Mark 13サイクル:以下の式(R1)、(R8)及び(R9)で表されるIspra-Mark 13サイクル法において、水を分解することによって水素及び水を生成する本発明の方法は、ステップ-Iにおいて、硫酸の水、二酸化硫黄及び酸素への分解を含む。ステップ-Iはさらに、2つの基本反応Rl-1及びRl-2に分割される。本方法は、基本反応R1-2において二酸化硫黄の生成を含む。
【0032】
【0033】
ロスアラモス・サイエンスラボラトリ・サイクル:さらに、例えば、以下の式(R1)及び(R9)~(R11)で表されるロスアラモス・サイエンスラボラトリ・サイクル法において、水を分解することによって水素及び水を生成する本開示の方法は、ステップ-Iにおいて、硫酸の水、二酸化硫黄及び酸素への分解を含む。ステップ-Iはさらに、2つの基本反応Rl-1及びRl-2に分割される。本方法は、基本反応R1-2において二酸化硫黄の生成を含む。
【0034】
【0035】
何れの熱化学サイクルにおいても、水素は、それぞれの出発物質が別のものの生成物であるように設計された一連の化学反応で生成される。これらのサイクルでは、熱エネルギーは幾つかの高温化学反応を経て入る。熱量の幾らかは、発熱低温反応によって生成される。この反応に対する入力は、水及び高温の熱であり、これらは低温の熱、水素、及び酸素を放出する。これらのサイクル中に生成される廃液はなく、水以外の試薬は全て再循環され再利用される。これらのサイクルは、それぞれのサイクルごとに一連の化学反応で表すことができる。例えば、硫黄-ヨウ素サイクル法では、化学反応は以下のように表すことができる。
【0036】
【0037】
反応R1は、全てのサイクル反応の中で最も高いエネルギーを必要とし、基本反応R1-2では最も高い温度で熱が必要とされる。このような高い温度を得ることは非常に困難であり、さらにこのような高温に耐えることができる物質は限られており、非常に高価である。このような高温に達しても、従来の触媒のほとんどは活性を失う。
【0038】
本開示の一実施形態では、遷移金属酸化物、混合遷移金属酸化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される活物質と、シリカ、チタニア、ジルコニア、炭化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される担体物質とを含み、活物質対担体物質の重量比は0.1~25重量%の範囲である、触媒組成物を、反応器内に配置するステップと、三酸化硫黄の流れを700℃~950℃の温度で触媒組成物上に、任意に使用されるキャリアガスの存在下で通過させるステップと、三酸化硫黄、二酸化硫黄、酸素、水、及び任意に使用されるキャリアガスを含む流れを回収するステップとを含む、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法が提供される。
【0039】
本開示の一実施形態では、触媒組成物が、遷移金属酸化物、混合遷移金属酸化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される活物質と、シリカ、チタニア、ジルコニア、炭化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される担体物質とを含み、活物質対担体物質の重量比は0.1~25重量%の範囲であり、遷移金属は、Cu、Cr、及びFeからなる群から選択される、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法が提供される。
【0040】
本開示の一実施形態では、触媒組成物が、Cu、Cr、及びFeの酸化物からなる群から選択される活物質と、シリカ、チタニア、ジルコニア、炭化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される担体物質とを含み、活物質対担体物質の重量比は0.1~25重量%の範囲である、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法が提供される。
【0041】
本開示の一実施形態では、触媒組成物が、二元酸化物、三元酸化物、及びスピネルからなる群から選択される混合遷移金属酸化物を含む活物質と、シリカ、チタニア、ジルコニア、炭化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される担体物質とを含み、活物質対担体物質の重量比は0.1~25重量%の範囲である、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法が提供される。
【0042】
本開示の一実施形態では、触媒組成物が、Cuの酸化物を含む活物質と、シリカ、チタニア、ジルコニア、炭化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される担体物質とを含み、活物質対担体物質の重量比は0.1~25重量%の範囲である、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法が提供される。
【0043】
本開示の一実施形態では、触媒組成物が、Crの酸化物を含む活物質と、シリカ、チタニア、ジルコニア、炭化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される担体物質とを含み、活物質対担体物質の重量比は0.1~25重量%の範囲である、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法が提供される。
【0044】
本開示の一実施形態では、触媒組成物が、Feの酸化物を含む活物質と、シリカ、チタニア、ジルコニア、炭化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される担体物質とを含み、活物質対担体物質の重量比は0.1~25重量%の範囲である、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法が提供される。
【0045】
本開示の一実施形態では、触媒組成物が、モル比1:2のCu及びFeの二元酸化物を含む活物質と、シリカ、チタニア、ジルコニア、炭化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される担体物質とを含み、活物質対担体物質の重量比は0.1~25重量%の範囲である、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法が提供される。
【0046】
本開示の一実施形態では、触媒組成物が、スピネル構造を有するCu及びFeの酸化物を含む活物質と、シリカ、チタニア、ジルコニア、炭化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される担体物質とを含み、活物質対担体物質の重量比は0.1~25重量%の範囲である、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法が提供される。
【0047】
本開示の一実施形態では、触媒組成物が、スピネル構造を有するCu及びCrの酸化物を含む活物質と、シリカ、チタニア、ジルコニア、炭化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される担体物質とを含み、活物質対担体物質の重量比は0.1~25重量%の範囲である、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法が提供される。
【0048】
本開示の一実施形態では、触媒組成物が、遷移金属酸化物、混合遷移金属酸化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される活物質と、シリカ、チタニア、ジルコニア、炭化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される担体物質とを含み、活物質対担体物質の重量比は0.1~25重量%の範囲であり、担体物質は0.05~0.9cc/gの範囲の細孔容積を有する、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法が提供される。
【0049】
本開示の一実施形態では、触媒組成物が、遷移金属酸化物、混合遷移金属酸化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される活物質と、シリカ、チタニア、ジルコニア、炭化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される担体物質とを含み、活物質対担体物質の重量比は0.1~25重量%の範囲であり、担体物質は0.1~0.7cc/gの範囲の細孔容積を有する、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法が提供される。
【0050】
本開示の一実施形態では、触媒組成物が、遷移金属酸化物、混合遷移金属酸化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される活物質と、シリカ、チタニア、ジルコニア、炭化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される担体物質とを含み、活物質対担体物質の重量比は0.1~25重量%の範囲であり、担体物質は5~35m2/gの範囲の活性表面積(active surface area)を有する、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法が提供される。
【0051】
本開示の一実施形態では、触媒組成物が、遷移金属酸化物、混合遷移金属酸化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される活物質と、シリカ、チタニア、ジルコニア、炭化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される担体物質とを含み、活物質対担体物質の重量比は0.1~25重量%の範囲であり、担体物質は、BET多点窒素吸着法(BET multipoint nitrogen adsorption method)によって決定された2~200m2/gの範囲の比表面積を有する、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法が提供される。
【0052】
本開示の一実施形態では、触媒組成物が、遷移金属酸化物、混合遷移金属酸化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される活物質と、シリカ、チタニア、ジルコニア、炭化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される担体物質とを含み、活物質対担体物質の重量比は0.1~25重量%の範囲であり、担体物質は、BET多点窒素吸着法によって決定された5~100m2/gの範囲の比表面積を有する、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法が提供される。
【0053】
本開示の一実施形態では、触媒組成物が、遷移金属酸化物、混合遷移金属酸化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される活物質と、シリカ、チタニア、ジルコニア、炭化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される担体物質とを含み、活物質対担体物質の重量比は0.1~25重量%の範囲であり、担体物質は、BET多点窒素吸着法によって決定された5~60m2/gの範囲の比表面積を有する、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法が提供される。
【0054】
本開示の一実施形態では、触媒組成物が、遷移金属酸化物、混合遷移金属酸化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される活物質と、シリカ、チタニア、ジルコニア、炭化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される担体物質とを含み、活物質対担体物質の重量比は0.1~25重量%の範囲であり、触媒組成物は0.1~20重量%の範囲の遷移金属含量を有する、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法が提供される。
【0055】
本開示の一実施形態では、触媒組成物が、遷移金属酸化物、混合遷移金属酸化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される活物質と、シリカ、チタニア、ジルコニア、炭化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される担体物質とを含み、活物質対担体物質の重量比は0.1~25重量%の範囲であり、触媒組成物は0.1~20重量%の範囲の遷移金属含量を有し、触媒組成物は2~10重量%の範囲の遷移金属含量を有する、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法が提供される。
【0056】
本開示の一実施形態では、触媒組成物が、遷移金属酸化物、混合遷移金属酸化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される活物質と、シリカ、チタニア、ジルコニア、炭化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される担体物質とを含み、活物質対担体物質の重量比は0.1~25重量%の範囲であり、活物質のサイズは0.1~25mmの範囲である、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法が提供される。
【0057】
本開示の一実施形態では、触媒組成物が、遷移金属酸化物、混合遷移金属酸化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される活物質と、シリカ、チタニア、ジルコニア、炭化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される担体物質とを含み、活物質対担体物質の重量比は0.1~25重量%の範囲であり、活物質のサイズは0.1~15mmの範囲である、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法が提供される。
【0058】
本開示の一実施形態では、触媒組成物が、遷移金属酸化物、混合遷移金属酸化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される活物質と、多孔質β-炭化ケイ素(β-SiC)又はシリカで被覆された(silicated)多孔質炭化ケイ素(β-SiC(PT))を含む担体物質とを含み、活物質対担体物質の重量比は0.1~25重量%の範囲である、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法が提供される。
【0059】
本開示の一実施形態では、触媒組成物が、遷移金属酸化物、混合遷移金属酸化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される活物質と、結晶化(crystallized)多孔質β-SiC又はシリカで被覆された多孔質炭化ケイ素(β-SiC(PT))を含む担体物質とを含み、活物質対担体物質の重量比は0.1~25重量%の範囲である、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法が提供される。
【0060】
本開示の一実施形態では、触媒組成物が、遷移金属酸化物、混合遷移金属酸化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される活物質と、球状ペレット、押出成形物又は発泡体の形態である結晶化多孔質β-SiC又はシリカで被覆された多孔質炭化ケイ素(β-SiC(PT))を含む担体物質とを含み、活物質対担体物質の重量比は0.1~25重量%の範囲である、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法が提供される。
【0061】
本開示の一実施形態では、触媒組成物が、遷移金属酸化物、混合遷移金属酸化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される活物質と、球状ペレット、押出成形物又は発泡体の形態である結晶化多孔質β-SiC又はシリカで被覆された多孔質炭化ケイ素(β-SiC(PT))を含む担体物質とを含み、活物質対担体物質の重量比は0.1~25重量%の範囲であり、遷移金属はCu、Cr、及びFeからなる群から選択され、担体物質は0.05~0.9cc/gの範囲の細孔容積を有し、担体物質は5~35m2/gの範囲の活性表面積を有し、担体物質は、BET多点窒素吸着法によって決定された2~200m2/gの範囲の比表面積を有し、触媒組成物は0.1~20重量%の範囲の遷移金属含量を有する、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法が提供される。
【0062】
本開示の一実施形態では、触媒組成物が、担持触媒として使用されるバイメタル形態又はスピネル形態の何れかであるモル比1:2の銅及び鉄酸化物を含むか、又は単独で含み、0.1~30barの範囲の圧力及び700~1223Kの範囲の温度で平衡転化率付近までH2SO4を効果的に分解する、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法が提供される。シリカで被覆された結晶化多孔質β-SiC(β-SiC(PT))上に担持された上述の活物質は、驚くべきことに、温度勾配なしにその不活性特性及び構造的完全性を保持し、有効な基材であり得る。基材又は担体構造は、粉末、粒子、ペレット、顆粒、球体、ビーズ、ピル、ボール、ヌードル、シリンダー、押出成形物及び3裂片状の物(トリロブ;trilobe)からなる群から選択される。
【0063】
本開示の活物質が担持触媒として使用される場合、担体は、硫酸蒸気雰囲気下で、高圧及び高温に耐える十分な機械的強度を有するように機能し続け、かつ反応ガス及び生成ガスの高い流量を許容し続けることができなければならない。担体の最も重要な機能は、表面上に分散された活性成分の結晶の移動の成長速度を最小にすることである。これらは、触媒を高温で運転する場合に不可避であるが、なぜなら、担体の固化(caking)が徐々に分散剤としてのその役割を低下させ、そのことは触媒の活性に悪影響を及ぼすからである。さらに、触媒担体は不活性でなければならず、その機械的強度、腐食性硫酸蒸気環境における構造的完全性と共に、反応の温度及び圧力範囲における良好な熱安定性を保持できなければならないことも重要である。
【0064】
触媒系で使用されるアルミナ、チタニアなどの多くの通常の酸化物担体物質は、700℃~900℃の間で商業的実用寿命を示さないことが判明している。さらに、温度範囲の下端での運転は、しばしば基材にとって特に有害であり、上端での運転は、焼結により活性金属酸化物にとって危険である。驚くべきことに、前処理された多孔質β-SiC又はシリカで被覆された多孔質β-SiC(β-SiC(PT))上への活物質の担持は、良好な安定性、不活性特性及び有効性を示すことが判明している。さらに、その触媒はより経済的であり、経済的な運転範囲内で温度勾配はほとんど存在しない。
【0065】
表面積を最大にすることは、触媒反応において非常に重要である。本開示の一実施形態では、約25w/w(重量パーセント)未満の量で担体上に分散されたバイメタル酸化物の混合物の形態である鉄及び銅酸化物の混合物を含む、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化するための触媒組成物が提供される。
【0066】
本開示の一実施形態では、触媒組成物が、担体重量に基づいて3~15%(重量パーセント)の間の量で担体上に分散されたスピネル形態である鉄及び銅酸化物の混合物を含む、三酸化硫黄を二酸化硫黄及び酸素に転化する方法が提供される。活性銅-鉄スピネルの7~11%(担体重量に基づく重量パーセント)のレベルでは、触媒の表面積は少なくとも10m2/触媒のgであろう。
【0067】
触媒組成物は、任意の形態の触媒を使用して、固定床で、又は一段又は多段運転の何れかにおける単一床の一部で、又は動的床、例えば移動床/流動床で使用することができる。床を通過した硫酸蒸気は、700℃~900℃の所望の範囲に維持することができる。
【0068】
幾つかの実施形態によれば、分割された触媒構造は、約0.25mm~約12.7mm(約1/100インチ~約1/2インチ)、好ましくは約0.5mm~約4.0mmの間の直径又は最長特性寸法を有する。他の実施形態では、それらは約50ミクロン~6mmの範囲である。
【0069】
多くの公知の金属酸化物触媒は、高温で活性であり、長期間の活性の後に焼結を引き起こす。本発明により調製された触媒は、700℃~1200℃、より好ましくは700℃~900℃の間の温度範囲、及び0.1~30bar、より好ましくは1~20barの間の圧力範囲で長時間試験した場合に、硫酸の分解、より正確には硫黄-ヨウ素サイクルにおけるSO2及びO2へのSO3転化に対する活性及び安定性に優れている。本発明によると、反応器における大気条件での硫酸の空間速度は、どこでも(100~500,000)ml/g-触媒-hrの間に維持され、好ましくは500~72,000ml/g.触媒-hrが適切である。全ての実験は、窒素の不活性ガスの存在下で行われる。
【0070】
担持触媒として使用される金属酸化物、すなわち、バイメタル形態又はスピネル形態の何れかであるモル比1:2の銅及び鉄酸化物、又はその単独の酸化物が、広範囲の圧力(0.1~30bar)及び温度(750K~1173K)で平衡転化率付近までH2SO4を効果的に分解することが判明している。結晶化多孔質β-SiC炭化物上に担持された上記の活物質の場合、それは温度勾配なしにその不活性特性及び構造的完全性を保持し、有効な基材であると判明している。ここで、基材又は担体は、粉末、ペレット、押出成形物、一枚岩(monolith)又は発泡体の形態であってもよい。
【0071】
触媒系で使用されるアルミナ、チタニアなどの多くの通常の酸化物担体物質は、700℃~950℃の間及びその環境において商業的実用寿命を示さず、従って適切とは考えられないことが判明している。さらに、温度範囲の下端での運転は、しばしば基材にとって特に有害であり、上端での運転は、焼結により活性金属酸化物にとって危険である。しかしながら、多孔質β-SiC上への活物質の担持は、良好な安定性、不活性特性及び有効性を示すことが判明している。さらに、その触媒はより経済的であり、経済的な運転範囲内で温度勾配はほとんど存在しない。
【0072】
上述の触媒の有効性は、850℃で運転する場合に入ってくる硫酸のSO2への約85%の転化率がそれぞれ1~0.5秒の滞留時間で達成できるようにされる。多段階プロセスに使用される触媒は、5秒以下の滞留時間で最終(ultimate)温度に対する平衡値の少なくとも約95%に等しいSO2への分解を行うことができる。
【0073】
主題は、その特定の実施形態を参照してかなり詳細に記載されているが、他の実施形態も可能である。
【実施例】
【0074】
以下の実施例は、本発明の例示として与えられ、本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明はともに、例示的で説明的なものに過ぎず、特許請求の範囲に記載された主題のさらなる説明を提供することを意図していることを理解されたい。
【0075】
[実施例1(a)]
(触媒担体の前処理)
前処理法(PTM)と呼ばれる合成法を用いて触媒担体を得た。炭化ケイ素(β-SiC)押出成形物(直径2mm)はSICAT Sarl(フランス)より供給され、本明細書では以後、β-SiC(R)又は受け取った状態のβ-SiCとして記載される。β-SiC(R)試料を、β-SiCの表面からSiOxCy/SiO2を除去するために、室温で超音波処理下において、3~5分間にわたり水中1:1のHF溶液でエッチングした。試料をろ過し、ろ液のpH値が6.5~7の間に達するまで多量の脱イオン水で洗浄し、次いで、試料を120℃で真空下において、3~5時間乾燥させ、本明細書では以後、β-SiC(P)又は単にシリカを含まないβ-SiCとして記載される。その後、乾燥した試料(β-SiC(P))を大気中700~1000℃の間で2~6時間にわたり酸化させて、前処理したβ-SiC又は単にβ-SiC(PT)を得た。
【0076】
[実施例1(b)]
(触媒Fe2O3/β-SiC(R)の調製(比較のため))
1.713gの鉄前駆体(クエン酸鉄アンモニウム)を10mlの蒸留水に溶解させ、次いで、2mmサイズの予め乾燥させ脱気したβ-SiC(R)の押出成形物10gを添加した。次に、得られた混合物を約30分間超音波処理して、β-SiC(R)全体が溶液中に完全に浸漬されるようにした。30分後、溶液からβ-SiC(R)を分離し、80℃で30分間乾燥させた後、残りの溶液に再度添加して、鉄溶液全体がβ-SiC(R)によって吸収されるようにした。最後に、含浸させた基材を100℃で1時間風乾させ、次いで500℃で2時間か焼(calcine)した。最終的な触媒は、β-SiC(R)上に担持された5%のFe2O3である。2~15%(w/w)の担持酸化鉄触媒も同様の方法で調製した。
【0077】
[実施例1(c)]
(触媒Fe2O3/β-SiC(P)の調製)
Fe2O3担持β-SiC(P)を、実施例1(b)で使用したのと同じ手順で調製し、ここで、この実施例では、β-SiC(P)担体をβ-SiC(R)担体の代わりに使用した。
【0078】
[実施例1(d)]
(触媒Fe2O3/β-SiC(PT)の調製(比較のため))
Fe2O3担持β-SiC(PT)を、実施例1(b)で使用したのと同じ手順で調製し、ここで、β-SiC(PT)担体をβ-SiC(R)担体の代わりに使用した。
【0079】
[実施例2(a)]
(触媒Cu2O/β-SiC(R)の調製(比較のため))
1.8741gの銅前駆体(Cu(NO3)2・3H2O)を10mlの蒸留水に溶解させ、次いで、2mmサイズの予め乾燥させ脱気したβ-SiC(R)の押出成形物10gを添加した。次に、得られた混合物を約30分間超音波処理して、β-SiC(R)全体が溶液中に完全に浸漬されるようにした。30分後、溶液からβ-SiC(R)を分離し、80℃で30分間乾燥させた後、残りの溶液に再度添加して、銅溶液全体がβ-SiC(R)によって吸収されるようにした。最後に、含浸させた基材を100℃で1時間風乾させ、次いで500℃で2時間か焼した。最終的な触媒は、β-SiC(R)上に担持された5%のCu2Oである。2~15%(w/w)の担持酸化銅(I)触媒も同様の方法で調製した。
【0080】
[実施例2(b)]
(触媒Cu2O/β-SiC(PT)の調製(比較のため))
5%のCu2O/β-SiC(PT)触媒を、実施例1(b)で使用したのと同じ手順で調製し、ここで、この実施例では、β-SiC(PT)担体をβ-SiC(R)担体の代わりに使用した。同様の方法を使用して、β-SiC(PT)担体上の2~15%(w/w)の担持酸化銅(I)触媒も調製した。
【0081】
[実施例3(a)]
(触媒Cr2O3/β-SiC(R)の調製(比較のため))
1.101gのクロム酸アンモニウム(Cu(NO3)2・3H2O)を10mlの蒸留水に溶解させ、次いで、2mmサイズの予め乾燥させ脱気したβ-SiC(R)の押出成形物10gを添加した。次に、得られた混合物を約30分間超音波処理して、β-SiC(R)全体が溶液中に完全に浸漬されるようにした。30分後、溶液からβ-SiC(R)を分離し、80℃で30分間乾燥させた後、残りの溶液に再度添加して、クロム酸アンモニウム溶液全体がβ-SiC(R)によって吸収されるようにした。最後に、含浸させた基材を100℃で1時間風乾させ、次いで500℃で2時間か焼した。最終的な触媒は、β-SiC(R)上に担持された5%のCr2O3であった。β-SiC(R)担体上の2~15%(w/w)の担持酸化クロム(III)触媒も、同様の方法で調製した。
【0082】
[実施例3(b)]
(触媒Cr2O3/β-SiC(PT)の調製(比較のため))
5%のCr2O3/β-SiC(PT)触媒を、実施例3(a)で使用したのと同じ手順で調製し、ここで、β-SiC(PT)担体をβ-SiC(R)担体の代わりに使用した。同様の方法を使用して、β-SiC(PT)上に担持された2~15%(w/w)の担持Cr2O3触媒も調製した。
【0083】
[実施例4(a)]
(触媒CuFe2O4/β-SiC(R)の調製)
1.176gの硝酸アンモニウム(Fe(NO3)・9H2O)及び0.5049gの硝酸銅(Cu(NO3)2・3H2O)を15mlの蒸留水に溶解させ、次いで、2mm直径の予め乾燥させ脱気したβ-SiC(R)の押出成形物10gを添加した。次に、得られた混合物を約30分間超音波処理して、β-SiC(R)全体が溶液中に完全に浸漬されるようにした。30分後、溶液からβ-SiCを分離し、80℃で30分間乾燥させた後、残りの溶液に再度添加して、溶液全体がβ-SiC(R)によって吸収されるようにした。最後に、含浸させた基材を100℃で1時間風乾させ、次いで500℃で2時間か焼した。次いで、炉の温度を徐々に1000℃まで上昇させ、固体を中程度で混合しながら(with intermediate mixing)1000℃で3時間保持した。得られた触媒は、β-SiC(R)上に担持された5%のCuFe2O4の触媒であった。
【0084】
[実施例4(b)]
(触媒CuFe2O4/β-SiC(P)の調製)
実施例4(a)で使用したのと同じ手順を用いて5%のCuFe2O4/β-SiC(P)触媒を調製し、ここで、この実施例では、β-SiC(P)をβ-SiC(R)の代わりに担体として使用した。2~15%(w/w)のCuFe2O4/β-SiC(P)触媒も同様の方法で調製した。
【0085】
[実施例4(c)]
(触媒CuFe2O4/β-SiC(PT)の調製)
実施例4(a)で使用したのと同じ手順を用いて5%のCuFe2O4/β-SiC(PT)触媒を調製し、ここで、β-SiC(PT)をβ-SiC(R)の代わりに担体として使用した。2~15%(w/w)のCuFe2O4/β-SiC(PT)触媒も同様の方法で調製した。
【0086】
[実施例5(a)]
(触媒CuCr2O4/β-SiC(R)の調製)
細孔容積法(pore volume method)又は乾式含浸法(dry impregnation method)を用いて、無水クロム酸(chromium anhydride)及び硝酸銅の水溶液をβ-SiC(R)内に含浸させた。この方法では、6mlの無水クロム酸及び硝酸銅の水溶液(化学量論比率)を10gのβ-SiC(R)に添加し、次いで、固体を12時間熟成させた。次に、固体を120℃で12時間オーブン乾燥させ、乾燥空気流(1l/h.触媒のg)中900℃で3時間か焼して、CuCr2O4/β-SiC(R)を得た。
【0087】
[実施例5(b)]
(触媒CuCr2O4/β-SiC(PT)の調製)
実施例5(a)で使用したのと同じ手順を用いてCuCr2O4/β-SiC(PT)触媒を調製し、ここで、β-SiC(PT)をβ-SiC(R)の代わりに担体として使用した。2~15%(w/w)のCuCr2O4/β-SiC(PT)触媒も同様の方法で調製した。
【0088】
[実施例6(a)]
(触媒FeCr2O4/β-SiC(R)の調製)
細孔容積法又は乾式含浸法を用いて、無水クロム酸及び硝酸鉄の水溶液をβ-SiC(R)内に含浸させた。この方法では、6mlの無水クロム酸及び硝酸鉄の水溶液(化学量論比率)を10gのβ-SiC(R)に添加し、次いで、固体を12時間熟成させた。次に、固体を120℃で12時間オーブン乾燥させ、乾燥空気流(1l/h.触媒のg)中900℃で3時間か焼して、FeCr2O4/β-SiC(R)を得た。
【0089】
[実施例6(b)]
(触媒FeCr2O4/β-SiC(PT)の調製)
実施例6(a)で使用したのと同じ手順を用いてFeCr2O4/β-SiC(PT)触媒を調製し、ここで、β-SiC(PT)をβ-SiC(R)の代わりに担体として使用した。
【0090】
[実施例7]
(触媒CuFe2O4/Al2O3の調製)
1.176gの硝酸アンモニウム(Fe(NO3)・9H2O)及び0.5049gの硝酸銅(Cu(NO3)2・3H2O)を15mlの蒸留水に溶解させ、次いで、1mm直径の予め乾燥させ脱気したアルミナ押出成形物10gを添加した。次に、得られた混合物を約30分間超音波処理して、アルミナ全体が溶液中に完全に浸漬されるようにした。30分後、溶液からアルミナを分離し、80℃で30分間乾燥させた後、残りの溶液に再度添加して、溶液全体がアルミナによって吸収されるようにした。最後に、含浸させた基材を100℃で1時間風乾させ、次いで500℃で2時間か焼した。次いで、得られたか焼後の物質の温度を徐々に1000℃まで上昇させ、中程度で混合しながら3時間加熱した。得られた触媒は、アルミナ(Al2O3)上に担持された5%のCuFe2O4の触媒であった。
【0091】
[実施例8]
(触媒Fe2O3/Al2O3の調製)
1.713gの鉄前駆体(クエン酸鉄アンモニウム)を10mlの蒸留水に溶解させ、次いで、1mm直径の予め乾燥させ脱気したアルミナ押出成形物10gを添加した。次に、得られた混合物を約30分間超音波処理して、アルミナ全体が溶液中に完全に浸漬されるようにした。30分後、溶液からアルミナ押出成形物を分離し、80℃で30分間乾燥させた後、残りの溶液に再度添加して、鉄溶液全体がアルミナ押出成形物によって吸収されるようにした。最後に、含浸させた基材を100℃で1時間風乾させ、次いで500℃で2時間か焼した。最終的な触媒は、Al2O3上に担持された5%のFe2O3であった。アルミナ上に担持された2~15%(w/w)の酸化鉄及び酸化銅の担持触媒も、同様の方法で調製した。
【0092】
[実施例9(a)]
(CоFe2O4触媒の調製)
典型的な手順では、0.20MのFe(NO3)3溶液を0.10MのCo(NO3)2溶液と共に混合した。次に、この混合溶液に適量の6MのNaOH溶液を添加してpHを8~14に調整し、溶液の体積が約160mlになるまで脱イオン水を得られた溶液に添加した。この混合物を30分間強く撹拌し、次いで300mlのテフロン(登録商標)で裏打ちした(Teflon-lined)オートクレーブに移した。オートクレーブを密閉し、200℃で48時間維持した。反応が完了した後、得られた固体生成物をろ過し、水及び無水アルコールで数回洗浄した。最後に、ろ過した試料を120℃で4時間乾燥させて、CоFe2O4スピネル触媒を得た。
【0093】
[実施例9(b)]
(触媒CоFe2O4/β-SiC(PT)の調製)
1.135gのクエン酸鉄アンモニウムを10mlの蒸留水に溶解させ、2mm直径の予め乾燥させ脱気したβ-SiC(PT)押出成形物10gを添加した。次に、得られた混合物を約30分間超音波処理して、β-SiC(PT)全体が溶液中に完全に浸漬されるようにした。30分後、溶液からβ-SiC押出成形物を分離し、80℃で30分間乾燥させた後、残りの溶液に再度添加して、溶液全体がβ-SiC(PT)によって吸収されるようにした。次いで、試料を空気中で5時間乾燥させ、炉内において400℃で3時間か焼した。次いで、再度試料を炉から取り出し、後続の10mlの硝酸コバルト溶液(水10ml中0.619gのCo(NO3)2・6H2O)での含浸のために室温まで冷却した。再度同じ手順を繰り返し、900℃の温度で3時間か焼し、その後炉の温度を徐々に1000℃まで上昇させて、4時間にわたる固相反応(solid state reaction)を完了させた。得られた触媒を、CоFe2O4/β-SiC(PT)として記載した。
【0094】
[実施例10(a)]
(NiFe2O4触媒の調製)
等体積のNi(NO3)2・6H2O及びFe(NO3)3・9H2Oの溶液をモル比1:2(すなわち、それぞれ0.10M、0.2M)で混合することによって、水熱合成によりNiFe2O4触媒を調製した。6MのNaOHの溶液を混合塩溶液に、最終pH値が指定値に達するまで滴下して添加し、混加物(admixture)を形成した。この混加物を、ステンレス鋼シェルを有するテフロン(登録商標)オートクレーブ(300ml)に移し、少量の脱イオン水を全容量の80%までテフロン(登録商標)オートクレーブに添加した。オートクレーブを200℃で48時間加熱し、自然に室温まで冷却させた。最終生成物をろ過し、脱イオン水及び純アルコールで数回洗浄して可能な残留物を除去し、次いで120℃で4時間乾燥させてNiFe2O4触媒を得た。
【0095】
[実施例10(b)]
(NiFe2O4/β-SiC(PT)触媒の調製)
実施例9(b)に示すように、クエン酸鉄アンモニウム(10ml中1.135g)及び硝酸ニッケル溶液(水10ml中0.619gのNi(NO3)2・6H2O)を順次、β-SiC(PT)押出成形物上に次々と堆積させた。空気中でか焼した後、試料の温度を900℃に維持し、酸化ニッケルと酸化鉄(III)との間の固相反応を完了させ、担体のニッケルフェライト結晶を形成した。従って、形成された触媒を、β-SiC(PT)上に担持されたNiFe2O4として記載した。
【0096】
[実施例11(a)]
(ZnFe2O4触媒の調製)
化学量論量の硝酸亜鉛及び硝酸鉄を脱イオン水に溶解させる水熱法を用いて、ZnFe2O4スピネルを調製した。次に、適量の6MのNaOH溶液を塩溶液に添加して、pH=10~12に調整した。次いで、得られた混合物をテフロン(登録商標)ステンレス鋼オートクレーブに移し、温度を200℃に24時間維持した。反応が完了した後、得られた固体生成物をろ過し、多量の水及びアルコールで数回洗浄した。最後に、ろ過した試料を120℃で4時間風乾させて、ZnFe2O4スピネル触媒を得た。
【0097】
[実施例11(b)]
(ZnFe2O4/β-SiC(PT)触媒の調製)
10mlのクエン酸鉄アンモニウム(0.1104M)を10gのβ-SiC(PT)押出成形物に添加した。次いで、得られた混合物を数分間振って、セラミック全体が溶液にちょうど浸漬され、30分間放置されるようにした。その後、炭化ケイ素押出成形物を残りの溶液から分離し、オーブン中において80℃で2時間乾燥させた後、残りの溶液に再度添加して、鉄溶液全体がβ-SiC(PT)押出成形物によって吸収されるようにした。含浸された担持触媒をまず100℃で2時間乾燥させ、マッフル炉において400℃で3時間か焼して、室温まで冷却した。再度同じ手順を10mlの硝酸亜鉛溶液(水10ml中0.615g)を用いて繰り返した。最後に、触媒を900℃で2時間か焼し、次いで炉内において3時間で1000℃まで徐々に温度を上昇させ、最終的な固相反応を完了させて、β-SiC(PT)上に担持されたZnFe2O4を得た。
【0098】
[実施例12(a)]
(触媒NiCr2O4の調製)
NiCr2O4触媒を、出発物質としてNiO及びα-Cr2O3を使用する固相経路(solid state route)によって合成した。NiO及びα-Cr2O3試料の1:1モル混合物を乳鉢及び乳棒を用いて完全に混合し、650℃で6時間加熱し、次いで12時間かけて900℃まで徐々に加熱して、中程度で混合しながら2つの酸化物間の均質反応を完了させた。最後に、試料をさらに900℃で5時間保持して、NiCr2O4触媒を得た。
【0099】
[実施例12(b)]
(触媒NiCr2O4/β-SiC(PT)の調製)
細孔容積法又は乾式含浸法を用いて、無水クロム酸及び硝酸ニッケルの水溶液をβ-SiC(PT)内に含浸させた。この方法では、6mlの無水クロム酸及び硝酸ニッケルの水溶液(化学量論比率)を10gのβ-SiC(PT)に添加し、次いで、固体を12時間熟成させた。次に、固体を120℃で12時間オーブン乾燥させ、乾燥空気流(1l/h.触媒のg)中900℃で3時間か焼して、NiCr2O4/β-SiC(PT)を得た。
【0100】
[実施例13(a)]
(触媒ZnCr2O4の調製)
0.025モルのZn(NO3)2・6H2O及び0.05モルのCr(NO3)3・9H2Oを90mlの蒸留水に溶解させて、透明な水溶液を形成した。この水溶液に4MのNaOH溶液を激しく撹拌しながらゆっくりと滴下してpH7~12に調整し、懸濁液を得た。得られた懸濁液をテフロン(登録商標)で裏打ちされた300ml容量のオートクレーブに移し、200℃で48時間加熱した。次いで、生成物をろ過し、多量の脱イオン水及びアルコールで洗浄した。次いで、洗浄した生成物を120℃で4時間乾燥させ、緑の粉末(ZnCr2O4)を得た。
【0101】
[実施例13(b)]
(ZnCr2O4/β-SiC(PT)触媒の調製)
細孔容積法又は乾式含浸法を用いて、無水クロム酸及び硝酸亜鉛の水溶液をβ-SiC(PT)内に含浸させた。この方法では、6mlの無水クロム酸及び硝酸亜鉛の水溶液(化学量論比率)を10gのβ-SiC(PT)に添加し、次いで、固体を12時間熟成させた。次に、固体を120℃で12時間オーブン乾燥させ、乾燥空気流(1l/h.触媒のg)中900℃で3時間か焼して、ZnCr2O4/β-SiC(PT)を得た。
【0102】
[実施例14]
(Cr2O3触媒の調製)
硫酸クロムを3重量%のポリビニルアルコールと混合することによって酸化クロム(III)触媒を調製し、球状のペレットにした。これらのペレットを空気中において1000℃で5時間か焼して、酸化クロムに分解した。
【0103】
[実施例15]
(Cu2O触媒の調製)
硫酸銅を3重量%のポリビニルアルコールと混合することによって酸化第一銅を調製し、球形のペレットにした。これらのペレットを空気中において1000℃で5時間か焼して、酸化銅(I)に分解した。
【0104】
[実施例16(a)]
(触媒Pt/Al2O3の調製)
細孔容積法又は乾式含浸法を用いて、塩化白金酸の水溶液をアルミナ(Al2O3)内に含浸させた。溶液中の白金(Pt)濃度を計算して担体上に所望のPt含量を得た後に、固体を12時間熟成させた。次いで、固体を120℃で12時間オーブン乾燥させ、乾燥空気流(1l/h.触媒のg)中において500℃で3時間か焼し、窒素中10%水素ガス流(1l/h.触媒のg)において350℃で3時間還元させて、1%のPt/Al2O3を得た。
【0105】
[実施例16(b)]
(触媒Pt/β-SiC(PT)の調製)
細孔容積法又は乾式含浸法を用いて、塩化白金酸の水溶液を炭化ケイ素(β-SiC(PT))内に含浸させた。溶液中の白金(Pt)濃度を計算して担体上に所望のPt含量を得た後に、固体を12時間熟成させた。次いで、固体を120℃で12時間オーブン乾燥させ、乾燥空気流(1l/h.触媒のg)中において500℃で3時間か焼し、窒素中10%水素ガス流(1l/h.触媒のg)において350℃で3時間還元させて、1%のPt/β-SiC(PT)を得た。
【0106】
[実施例17]
(CuFeCrOb/β-SiC(PT)触媒の調製)
細孔容積法又は乾式含浸法を用いて、無水クロム酸、クエン酸鉄アンモニウム及び硝酸銅の水溶液をβ-SiC(PT)内に含浸させた。この方法では、6mlのモル比1:1:1(化学量論比率)の無水クロム酸、クエン酸鉄アンモニウム及び硝酸銅の水溶液を10gのβ-SiC(PT)に添加し、次いで、固体を12時間熟成させた。次に、固体を120℃で12時間オーブン乾燥させ、乾燥空気流(1l/h.触媒のg)中900℃で5時間か焼して、Cu:Fe:Crの元素比が1:1:1であると判明しているCuFeCrOb/β-SiC(PT)を得た。
【0107】
[実施例18]
(CuFeCrOc/β-SiC(PT)触媒の調製)
細孔容積法又は乾式含浸法を用いて、硝酸銅、クエン酸鉄アンモニウム及び無水クロム酸の水溶液をβ-SiC(PT)内に含浸させた。この方法では、6mlのモル比1:1:4(化学量論比率)の硝酸銅、クエン酸鉄アンモニウム及び無水クロム酸の水溶液を10gのβ-SiC(PT)に添加し、次いで、固体を12時間熟成させた。次に、固体を120℃で12時間オーブン乾燥させ、乾燥空気流(1l/h.触媒のg)中900℃で5時間か焼して、Cu:Fe:Crの元素比が1:1:4であると判明しているCuFeCrOb/β-SiC(PT)を得た。
【0108】
[実施例19(調製した触媒の活性試験)]
方法1:上記実施例から得られた触媒を、以下に述べる固定床反応器中で試験する。1gの触媒をガラス管反応器の中央に装填し、N2不活性ガスを同伴する液体H2SO4(98重量%)と共に予熱したN2不活性ガスを、シリンジポンプを通して一次分解器にポンプで送り、ここで温度を700℃に維持した。硫酸の空間速度は、500ml/g触媒-hr~50,000ml/g触媒-hrの間に維持される。反応器の温度は700℃~950℃の間に保たれ、圧力は大気圧に保たれる。高圧実験(すなわち、1~20barの間の圧力)のために、ハステロイ反応器を使用した。触媒上の分解生成物(H2SO4、SO3、H2O、SO2及びO2の痕跡)を一連の吸収器に通し、ここで、N2及びO2以外の全てのガスを定量分析用に吸収させた。吸収されなかった酸素ガスは、ガスクロマトグラフ及び酸素分析器を用いて定量化される。
【0109】
方法2:上記実施例1~6から得られた触媒を、二段固定床反応器で試験する。典型的な実験では、室温の液体硫酸を、マスフローコントローラ(MFC)を通して不活性キャリアガス窒素と共に、規定された流量でシリンジポンプを用いて第1段分解器に供給する。第1段は、硫酸の完全な分解を確実にするために、実験を通して700℃に維持される。熱分解されたSO3、H2O及びN2は、第2段反応器の触媒床に達する前の予熱セクションとして作用する高温セラミックビーズを通って流れる。触媒分解された生成物(SO2、O2、H2O、N2及び分解されていないSO3)を冷却させ、I2/I-水溶液で満たされた直列に接続された2本のボトル内に閉じ込め、SO3及びSO2の濃度を測定する。吸収されなかったガスは、ガスクロマトグラフ(カルボスフィア(carbosphere)が充填されたTCD及びGCカラムを備えた、NUCON、モデル5765)及びオンライン酸素分析器で分析される。
【0110】
【0111】
【0112】
表7、実施例1(b)、1(c)及び1(d)に示すように、3つの異なる表面処理されたβ-SiC上に酸化鉄(III)を担持した。触媒活性を、固定床反応器において様々な温度で測定した。前処理された担体から調製された触媒が受け取った状態又は純粋な炭化ケイ素と比較して最も高い転化率を与えることは明らかであった。この高い活性は、SiO2が豊富な担体上での酸化鉄(III)の高い分散に起因する。同様に、全ての触媒の中で、実施例4(c)、実施例5及び実施例6は、考慮された温度範囲にわたって最も高い活性を有し、これらもやはり前処理された又はシリカで被覆されたβ-SiC担体を有する。これらの前処理された担体触媒は、受け取った状態の触媒担体によって調製された触媒と比較して、驚くべきほど高い転化率を示すが、驚くべきことに、触媒の安定性は多孔質β-SiCのシリカで被覆された触媒担体で向上した。様々な触媒の安定性を10~300時間にわたり試験し、表8に示す。前処理された炭化ケイ素上に担持された触媒は、受け取った状態のSiC又は他の担体上に担持された触媒よりもはるかに活性かつ安定であったことが分かる。試験の最初の25時間の間、全ての種類のβ-SiC担体を有する触媒は、硫酸の分解に対して同様の活性を示したが、その担体が前処理されている触媒、実施例4(c)、2(b)及び1(d)、すなわち触媒CuFe2O4/β-SiC(PT)、Cu2O/β-SiC(PT)、及びFe2O3/β-SiC(PT)は、300時間までの運転で活性を保持した。
【0113】
[実施例20]
適量の鉄前駆体(クエン酸鉄アンモニウム)を10mlの蒸留水に溶解させ、次いで、2mmサイズの予め乾燥させ脱気したβ-SiC(PT)の押出成形物10gを添加する。次に、得られた混合物を、全溶液が担体によって吸収されるまで超音波処理する。最後に、含浸させた基材を100℃で風乾させ、次いで500℃でか焼する。最終的な触媒は、β-SiC(PT)上に担持された12%のFe2O3である。1gの触媒をガラス管反応器の中央に装填する。マスフローコントローラによって不活性キャリアガス窒素と共に、シリンジポンプを通して硫酸供給物を導入した。SO3のモル分率が触媒床の入口で0.28となり、公称滞留時間が床で0.5秒となるように、硫酸流量を維持した。反応器の温度は700℃~950℃の間に保たれ、圧力は大気圧に保たれる。高圧実験(すなわち、1~20barの間の圧力)のために、同様のハステロイ反応器を使用した。触媒上の分解生成物(H2SO4、SO3、H2O、SO2及びO2の痕跡)を一連の吸収器に通し、ここで、N2及びO2以外の全てのガスを定量分析用に吸収させる。吸収されなかった酸素ガスは、ガスクロマトグラフ及びオンライン酸素分析器を用いて定量化される。
【0114】
触媒を700℃~950℃で試験したところ、850℃の温度で約0.5秒の滞留時間内に平衡生成物分布(equilibrium product distribution)が確立されることが示され、触媒は非常に有効であると考えられる。この触媒はまた、この温度範囲内で硫黄雰囲気中においてその有効性及び効率を保持し、それに曝されることによる物理的な影響は受けないようである。
【0115】
[実施例21]
(実施例20で調製した)β-SiC(PT)担持酸化鉄を、Cu(NO3)2・3H2O(化学量論量)の溶液10mlに浸漬させ、30分間超音波処理する。次いで、溶液から担体を分離し、100℃でさらに30分間風乾させた後、上記と同じ方法(実施例1)で残りの溶液に再度添加する。次いで、得られた固体混合物を100℃で風乾させ、次いで400℃で2時間か焼する。この方法で得られた触媒は、β-SiC(PT)上に担持された12%の銅-鉄酸化物(Cu対Feの比は1:2)である。
【0116】
(実施例19に記載したように)触媒を700℃~950℃で試験したところ、850℃の温度で約0.5秒の滞留時間内に平衡生成物分布が確立されることが示され、触媒は非常に有効であると考えられる。この触媒はまた、この温度範囲内で硫黄雰囲気中においてその有効性及び効率を保持し、それに曝されることによる物理的な影響は受けないようである。
【0117】
[実施例22]
2.681gの鉄前駆体(クエン酸鉄アンモニウム)及び1.212gの銅前駆体(硝酸銅)を30mlの蒸留水に溶解させ、次いで、2mmサイズの予め乾燥させ脱気したβ-SiC(PT)の押出成形物10gを添加する。中程度で撹拌しながら(with intermediate agitations)2時間放置した後、溶媒を蒸発させ、次いで、触媒を70℃~120℃で乾燥させ、空気中において500℃で3時間か焼した。か焼した後、流動空気中において2~5時間にわたり、温度を1223K~1273Kの間に調整した。この方法で得られた触媒は、24m2/gの表面積を有するβ-SiC(PT)上に担持された12%の銅フェライト(CuFe2O4)である。(実施例19に記載したように)触媒を700℃~950℃で試験したところ、850℃の温度で約0.5秒の滞留時間内に平衡生成物分布が確立されることが示され、触媒は非常に有効であると考えられる。この触媒はまた、この温度範囲内で硫黄雰囲気中においてその有効性及び効率を保持し、それに曝されることによる物理的な影響は受けないようである。
【0118】
[実施例23]
実施例20に記載したように、実施例22で調製した触媒をハステロイ高圧反応器内に装填し、0.1~20barの圧力範囲で試験する。硫酸の空間速度は、500ml/g触媒-hr~500,000ml/g触媒-hrの間に維持される。反応器の温度は700℃~950℃の間に保たれ、圧力は大気圧に保たれる。触媒上の分解生成物(H2SO4、SO3、H2O、SO2及びO2の痕跡)を一連の吸収器に通し、ここで、N2及びO2以外の全てのガスを定量分析用に吸収させる。吸収されなかった酸素ガスは、ガスクロマトグラフ及びオンライン酸素分析器を用いて定量化される。表7は、10bar圧力、850℃の温度で、滞留時間を0.5秒に維持した場合の、SO3の分解のパーセンテージを示す。
【0119】
図2は、850℃の温度及び大気圧における、様々な空間速度でのSO
3の転化率を示す。グラフは、これらの空間速度の間、反応器中でプラグフロー条件(plug flow condition)が維持されていることを示す。
【0120】
さらなる詳述なしに、当業者は、前述の説明を用いて、本発明を最大限に利用することができると考えられる。従って、前述の好ましい特定の実施形態は、単なる例示として解釈され、本開示の残りの部分を決して限定するものではない。前述の実施例は、本発明の一般的又は具体的に記載された反応物及び/又は運転条件を前述の実施例で使用されたものに置き換えることによって、同様の成功をもって繰り返すことができる。以上の説明から、当業者は、本発明の本質的な特徴を容易に確認することができ、その精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の様々な変形及び変更を行って、それを様々な用途及び条件に適合させることができる。
【0121】
主題は、その特定の実施形態を参照してかなり詳細に記載されているが、他の実施形態も可能である。