(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】シートの積層を磁気パルスで溶接する方法
(51)【国際特許分類】
B23K 20/06 20060101AFI20220607BHJP
【FI】
B23K20/06
(21)【出願番号】P 2019524063
(86)(22)【出願日】2017-11-10
(86)【国際出願番号】 EP2017078943
(87)【国際公開番号】W WO2018087322
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-10-13
(32)【優先日】2016-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517100174
【氏名又は名称】エイディエム28・エスアーエルエル
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】カシャニ,メハダッド
(72)【発明者】
【氏名】ベン・ダヴィド,オリ
(72)【発明者】
【氏名】シュリブマン,ヴィクトル
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-089560(JP,A)
【文献】特開2006-150389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料製シートの積層(55)を含む物品(50)を磁気パルスで
接合する方法であって、
-前記積層(55)の厚みに、少なくとも1つの貫通孔(60)を設けることと、
-第1のプレート(51)および第2のプレート(52)と称する金属材料製の2枚のプレートを前記積層の両側に設置し、前記少なくとも1つの貫通孔(60)を覆う重複領域(53)を形成することと、
-前記プレートと積層との組立体をコイル(11)の有効部分(121)と対向させて配置し、それによって前記重複領域の作動領域が前記コイルの前記有効部分に対面して配置され、前記作動領域が前記少なくとも1つの
貫通孔(60)を覆うようにすることと、
-前記組立体を接合するまで前記作動領域を
磁場に暴露することと
を含む方法において、
前記作動領域を前記磁場に暴露している間、前記少なくとも1つの
貫通孔(60)の所で、
第1のプレート(51)と第2のプレート(52)との間に直接の接触があることを特徴とする、
方法。
【請求項2】
貫通孔(60)は、円錐台の形状に開けられる、請求項1に記載の
接合方法。
【請求項3】
貫通孔(60)は、
楕円形状に開けられる、請求項1に記載の
接合方法。
【請求項4】
前記貫通孔(60)は、前記2枚のプレートのいずれかのプレートの面に対して実質的に垂直方向を向いている平均軸(61)を有するように開けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の
接合方法。
【請求項5】
前記貫通孔(60)は、前記貫通孔の所で前記2枚のプレートのいずれかのプレートの面への垂直線に対して傾斜した平均軸(61)を有するように開けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の
接合方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法によって製造された物品(50)であって、金属材料製の2枚のプレート(51、52)の間に金属材料製シートの積層(55)を含む物品(50)であって、
前記積層は、その厚みに貫通孔(60)を有し、前記積層は、前記貫通孔を覆っている重複領域で前記2枚のプレートの間に含まれ、前記プレートと積層との組立体は、前記
貫通孔を覆っている前記重複領域の一部で不可逆的に
接合される、物品において、
前記2枚のプレートは、前記貫通孔(60)の所で互いに
接合されることを特徴とする、物品。
【請求項7】
貫通孔(60)は、円錐台の形状である、請求項6に記載の物品。
【請求項8】
貫通孔(60)は、
楕円形状である、請求項6に記載の物品。
【請求項9】
横断面が同じで大きさが同じである2つの貫通孔(60)を有し、前記
貫通孔は、貫通孔の大きさの分だけ互いに離れている、請求項6~8のいずれか一項に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接の分野であり、さらに詳細には、部品を互いに恒久的に組み合わせるための磁気パルスによる溶接の分野である。本発明は、特に、金属材料製シートの積層を溶接する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、特に自動車分野の産業で、金属材料製の2枚のプレートの間にある数十枚の金属材料製シートの積層から形成された物品に対する需要が増大している。各シートの厚みは小さく、一般に約0.01~0.02mmである。各プレートの厚みは大きく、一般に約0.2~0.5mmである。このような物品は、特にリチウムイオン電池を形成することが目的である。
【0003】
これらの物品を生産することの難しさは、これらの様々なシートとプレートとの間の導電性を良好にするという要件にある。
【0004】
現在、これらのシートとプレートとを組み合わせるのに使用されている技術は、超音波溶接およびレーザ溶接である。2つの部品間の溶接は、その2つの部品間の境界に生じる熱によって行われる。
【0005】
これらの組み合わせ技術は迅速で経済的だが、いくつかの欠点がある。
【0006】
これらの技術は、シートをまとめて十分に圧縮できない上に、シートに局所的な加熱が生じるおそれがあり、これによって穴ができてしまって最終的な溶接の質が低下し、その結果、組立体の導電性が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の欠点を克服することが狙いである。
【0008】
本発明の目的は、特に、厚みの小さい金属シートを組み合わせることを可能にすると同時に、得られた物品の導電性を確保する効果的な対策を提供することである。
【0009】
本発明の補助的な目的は、この方法が実施しやすく迅速であることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのために、本発明は、金属材料製シートの積層を含む物品を磁気パルスで溶接する方法を提供する。
【0011】
磁気パルス溶接の一般的な定義は、一方の金属部品をもう一方の金属部品に対して重なっている領域で押圧することによって2つの金属部品の間に溶接部ができるが、外部に熱を出さないことである。このような方法の原理は主に、コイルによって生じる電磁力によって部品に高速の衝撃を与えることにある。
【0012】
本発明による方法は、
-積層の厚みに、少なくとも1つの貫通孔を設けることと、
-金属材料製の2枚のプレートを積層の両側に設置し、少なくとも1つの貫通孔を覆う重複領域を形成することと、
-プレートと積層との組立体をコイルの有効部分と対向させて配置し、それによって重複領域の作動領域がコイルの前記有効部分と対面して配置され、前記作動領域が少なくとも1つの孔を覆うようにすることと、
-プレートと積層の組立体を磁気パルス溶接することと
を含む。
【0013】
プレートは、積層を挟むようにしてこの積層と対向して配置される。プレートは、この積層の両側に配置されたときに積層の貫通孔と対向する孔を含んではいない。
【0014】
プレートと積層との組立体の溶接は、作動領域をコイル磁場に暴露することによって行う。
【0015】
コイルの有効部分から来る磁場は、作動領域で、コイルに近い方のプレートに圧力をかける。
【0016】
よって、圧力が第1のプレートと称する一方のプレートにかかり、プレートをシートに押し付けてこのプレートと直接接触させる。今度はこのシートが隣接するシートに押し付けられ、これが積層の最後のシートまで繰り返される。この最後のシートに関しては、第2のプレートと称するもう一方のプレートに押し付けられる。
【0017】
少なくとも1つの貫通孔では、この圧力は第1のプレートにかかり、第1のプレートを第2のプレートに押し付けて2枚のプレートの間の恒久的な溶接を実現する。第2のプレートに押し付けるとは、第1のプレートが第2のプレートに衝突するという意味である。換言すれば、少なくとも1つの貫通孔の所では、第1のプレートと第2のプレートとの間に直接の接触がある。貫通孔の所で行われる2枚のプレート間の溶接は、実際にはこの孔の周囲を環状に溶接した形状である。
【0018】
そのため、作動領域がコイルによって生じた磁場に暴露されて圧力による溶接を実現すると、2枚のプレートは、少なくとも1つの貫通孔の所で、コイルに近い方のプレートが他方のプレートの方向に急速に変形することによって互いにぴったりと押し付け合い、シートを包み込む。
【0019】
2枚のプレートに同時に圧力をかけることも可能である。
【0020】
このような方法により、2枚のプレートを少なくとも1つの貫通孔の所で互いに溶接することが可能になり、これによってシートをしかるべき場所に維持し、有利には、シートが後で剥離するのを制限することが可能になる。
【0021】
また、このような方法により、2枚のプレート間が直接接触することで物品の導電性を向上させるとともに、貫通孔の周囲でシートを第1のプレートと接触させることも可能になる。
【0022】
また、このような磁気パルス溶接方法の1つの利点は、物品を形成している部品、すなわち2枚のプレートとシートとを組み合わせることが固体状態で行われることにもあり、これによって、材料が溶解してしまうという従来の溶接のあらゆる公知の問題を避けることが可能になる。そのため、エネルギー損失が最小になり、その結果、物品を形成している溶接対象の部品はそれほど加熱されない。溶接中に部品が溶解することがないため、融点の異なる材料を組み合わせることが可能になる。
【0023】
そのため、例えば非常に優れた導電体である銅製のプレートとアルミニウム製のシートとを組み合わせることが可能である。
【0024】
特定の実施形態によれば、本発明による方法は、さらに以下の特徴を満たしており、これらの特徴は、別々に取り込まれるか、その一つひとつの技術上の有効性を組み合わせて取り入れられる。
【0025】
本発明の特定の実施形態では、シートとプレートとの接触を向上させるため、少なくとも1つの貫通孔、好ましくは全ての貫通孔は、例えば直円錐台または斜円錐台の形状に開けられる。
【0026】
代替実施形態では、圧力を2枚のプレートに同時にかける場合、少なくとも1つの貫通孔、好ましくは全ての貫通孔は、小さい底面が互いにつながっている2つの逆向きの円錐台の形状に開けられる。
【0027】
本発明の特定の実施形態では、孔でのプレート間の溶接を引き伸ばすため、この貫通孔は、横断面が楕円形の筒形状に開けられる。
【0028】
本発明の特定の実施形態では、貫通孔は、2枚のプレートのいずれかのプレートの面に対して実質的に垂直方向を向いている平均軸を有するように開けられる。
【0029】
代替実施形態では、貫通孔は、この貫通孔の所で2枚のプレートのいずれかのプレートの面への垂直線に対して傾斜した平均軸を有するように開けられる。
【0030】
本発明は、金属材料製の2枚のプレートの間に金属材料製シートの積層を含む物品にも関する。積層は、その厚みに貫通孔を有する。積層は、貫通孔を覆っている重複領域で2枚のプレートの間に含まれている。プレートと積層との組立体は、孔を覆っている重複領域の一部で不可逆的に溶接される。プレートと積層との組立体は、磁気パルスで溶接される。2枚のプレートは、貫通孔の所で互いに溶接される。
【0031】
好ましくは、物品は、少なくとも1つの実施形態による溶接方法を用いて得られる。
【0032】
得られた物品は、2枚のプレートを孔の所で互いに溶接することで、シートをプレートの間でしかるべき位置に保持でき、後で剥離する危険性がないという点で有利である。
【0033】
2枚のプレートの間を直接接触させると同時に、貫通孔の周囲でシートを第1のプレートと接触させることで、物品の導電性が実現される。
【0034】
好適な実施形態によれば、本発明は、さらに以下の特徴を満たしており、これらの特徴は、別々に取り込まれるか、その一つひとつの技術上の有効性を組み合わせて取り入れられる。
【0035】
本発明の特定の形態によれば、貫通孔は、例えば直円錐台または斜円錐台の形状である。
このような実施形態は、有利には、シートとプレートとの接触を向上させる。
【0036】
本発明の特定の形態によれば、積層の貫通孔は、断面が楕円形の筒形状である。
【0037】
本発明の特定の形態によれば、積層は、横断面が同じで大きさが同じである2つの貫通孔を有し、前記孔は、貫通孔の大きさの分だけ互いに離れている。
【0038】
本発明は、添付の図面に照らして記載した以下の説明を読むことでよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】シートの積層を含む物品を磁気パルスによる溶接に適応した溶接装置内に配置して溶接の準備ができた状態にある概略側面図である。
【
図3】シートの積層の厚みにある孔の形状の代替案を示す図である。
【
図4】シートの積層の厚みにある孔の形状の代替案を示す図である。
【
図5】孔の横断面の代替案を示すシートの上面図である。
【
図6】孔の横断面の代替案を示すシートの上面図である。
【
図7】磁気パルスによる溶接の作業をした後の物品の重複領域の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、シート56の少なくとも1つの積層55を含む物品50の磁気パルスによる溶接に適応した溶接装置10を概略的に描いている。
【0041】
物品50を形成している様々な部品は、平坦形状、あるいは管状形状であってよい。
【0042】
平坦形状とは、部品がその長さの全体または一部にわたって、少なくとも部品が互いに重なっている領域で、少なくとも1つの平坦または実質的に平坦な形状の面を有しているという意味である。
【0043】
管状形状とは、部品がその長さの全体または一部にわたって、少なくとも部品が互いに重なっている領域で、管の形状であるという意味である。
【0044】
ここで、本発明を、平坦形状のシート56の積層55を溶接する事例で詳細に説明する。
【0045】
溶接装置10は、公知の方法で、コイル11、格納ユニット(図示せず)および1つ以上のスイッチ(図示せず)を備えている。
【0046】
格納ユニットは、例えばおよそ数十キロジュール(kJ)という強力なエネルギーを蓄積するように構成され、意図されている。
【0047】
好適な実施例では、格納ユニットは、放電コンデンサのアレイである。
【0048】
コイル11の場合、規定の空間に集中した磁場ができるように構成され、意図されている。
【0049】
コイル
コイル11は、本体12を有する。この本体12は、可塑性の変形に対して機械的抵抗があるという点のほか、およそ数十万アンペアの極めて高強度の電流を流すための高い導電性という点で特定の特徴を有する材料から作製されている。
【0050】
好適な実施例では、本体の材料は、鋼、好ましくは高強度の鋼で作製されている。
【0051】
スイッチが閉じると、本体12は格納ユニットに接続し、本体に高強度の電流が流れて磁場を生み出す。
【0052】
コイル11は、前記コイルの一領域での電流密度が溶接条件を満たすのに十分であるように設計される。この領域を有効部分121と呼ぶ。
【0053】
留意すべきことは、溶接を行うためには、複数のパラメータ、特に衝突の角度および衝突の速度を考慮しなければならないことである。この2つのパラメータは、コイルと溶接する部品との最初の相対配置、部品の材料および使用した電流信号に関係する。これらのパラメータは当業者に公知であり、ここでは詳細に説明しない。
【0054】
電流は、有効部分では、厚みが表皮深さと一致している有効部分によって画定された層の上に集中する。
【0055】
鋼製コイルの非限定的な例では、表皮深さは、数十kHzの周波数に対しておよそ数ミリメートルである。
【0056】
所望の使用、すなわちシートの積層55を溶接するためには、銅製プレートの場合、例えばおよそ0.3mmという極めて浅い表皮深さに磁場を集中させる必要がある。磁場をこのような表皮深さに集中させるため、発生した周波数は少なくとも25kHzよりも高い。
【0057】
磁場を0.1mm未満の表皮深さに集中させることを所望している別の例では、発生した周波数は少なくとも70kHzよりも高い。
【0058】
溶接する物品
溶接する物品50は、シートの積層55と、第1のプレート51および第2のプレート52と称する2枚のプレートとを含んでいる。
【0059】
積層55は、シートを積み重ねたものを含んでいる。この積層は、第1のシート56a、最後のシート56c、およびこの2つシートの間に中間シート56bを含んでいる。
【0060】
積層55は、2枚のプレート51、52の全体または一部の間に挟まっている。換言すれば、第1のプレート51の内面511の全体または一部は、第1のシート56aに当接して配置され、第2のプレート52の内面521の全体または一部は、最後のシート56cに当接して配置されている。
【0061】
積層55と2枚のプレート51、52とは、上下に配置されるように意図され、それによって重複領域53と称する共通の重ね合わさった領域を形成し、その後、前記重複領域の全体または一部をコイル11によって溶接するようになっている。
【0062】
積層55と2枚のプレート51、52とは、少なくとも重複領域53で、実質的に平行に上下に位置している。
【0063】
好ましくは、重複領域53は、少なくとも1枚のプレートの端部、例えば第1のプレート51の端部513に位置している。
【0064】
各プレート51、52は、例えば200~400μmの厚みを有していてよい。
【0065】
各プレート51、52は、好ましくは金属材料製である。
【0066】
非限定的な好適な例では、プレート51、52はアルミニウム製である。
【0067】
別の非限定的な例では、プレート51、52は銅製である。
【0068】
別の実施形態では、2枚のプレート51、52は、異なる金属材料でできている。
【0069】
図1~
図4に示した例では、積層55は、9枚のシートを含んでいるが、これは本発明を限定するものではない。
【0070】
シートは図面に示され、9枚として描かれているが、これらのシートの数は記載して図示した数に限定されるものではない。そのため、本発明の文脈から逸脱しない限り、10枚未満のシートまたは数十枚のシートを含む積層55を作ることが可能である。
【0071】
好ましくは、積層55は、少なくとも40枚のシートを含む。
【0072】
各シートは、例えば20μmの厚みを有する。
【0073】
各シートは、好ましくは金属材料製である。
【0074】
非限定的な好適な例では、シートはアルミニウム製である。
【0075】
異なる金属材料でできたシートから積層55を作ることも可能である。
【0076】
積層55は、その厚みに、ひいては各シートに、複数の貫通孔60を有する。以下の説明では、貫通孔を孔と称する。
【0077】
当然ながら、積層55がその厚みに孔60を1つのみ有することは自明である。以下の説明でもこの場合を適用する。
【0078】
孔60は、2枚のプレート51、52と積層55とが組み合わさっているときに孔60が重複領域53に位置するように、積層55内に位置付けられる。
【0079】
積層55を間に挟んでいる2枚のプレート51、52が、前記積層と共に溶接される準備の整った状態にあるとき、前記2枚のプレートは、
図2~
図4に示したように、積層に開けられた孔60に対面にしている孔を有してはいない。
【0080】
1つの実施例では、孔60どうしは、実質的には同列にある。
図2~
図4は、物品50の溶接作業をする前の孔60のラインの断面を示している。
【0081】
【0082】
孔60は、図面には6つとして図示され説明されているが、この孔の数は、説明し図示した数に限定されるものではない。そのため、本発明の文脈から逸脱しない限り、孔の数が6よりも少ないか多い積層55を作ることが可能である。
【0083】
孔60の数は、積層55の寸法に左右されることは明らかである。
【0084】
孔の数、形状および大きさは、重複領域および/または積層の厚みの寸法に応じて決定される。
【0085】
図2~
図4に示した1つの実施形態では、1つの孔60、好ましくは全ての孔は、この孔がその形状に関わらず平均軸61を有し、前記平均軸がこの孔の所で第1のプレート51、または第2のプレート52の内面に対して実質的に垂直方向を向いているように、積層55内に開けられる。
【0086】
別の実施形態では、孔60の平均軸は、前記孔の所で、第1または第2のプレートの内面に垂直な軸に対して実質的に傾斜している。
【0087】
孔の1つの実施例では、
図2に示したように、孔60は筒形状である。
【0088】
筒形状とは、第1のプレート51の内面511から第2のプレート52の内面521に向けての断面が一定の形状であるという意味である。
【0089】
筒形状は、あらゆる横断面の形状、例えば楕円形、円形、四角形、長方形または多角形の断面などを包含する。
【0090】
1つの実施形態では、孔60は、横断面が円形の筒形状である。
図5は、シートの上面を示しており、例えば第1のシート56aは、横断面が円形の孔を6つ含んでいる。
【0091】
別の実施形態では、孔60は筒形状で、横断面が楕円形である。
図6は、シートの上面を示しており、例えば第1のシート56aは、横断面が楕円形の孔を6つ含んでいる。
【0092】
孔の代替実施形態では、
図3に示したように、孔60は、実質的に円錐台の形状であり、大きい底面62が第1のプレート51の内面511の近くに位置し、小さい底面63が第2のプレート52の内面521の近くに位置している。
【0093】
実質的に円錐台の形状とは、横断面が単調に小さくなるか大きくなっていく形状を意味し、この場合は、第1のプレート51の内面511から第2のプレート52の内面521に向かって小さくなっている。
【0094】
孔の形状を説明するために使用した「円錐台」という表現は、広義の意味に捉えるべきであり、円錐台のあらゆる形状の断面、例えば楕円形、円形、四角形、長方形または多角形の断面などを包含する。
【0095】
円錐台は、直円錐台または斜円錐台であってよい。
【0096】
孔の改良した代替実施形態では、孔60は、ディアボロの形状になるように、小さい底面が互いに逆向きにつながっている2つの中空の円錐台の形状である。第1の円錐台は、大きい底面が第1のプレート51の内面511の近くに位置している。第2の円錐台は、大きい底面が第2のプレート52の内面521の近くに位置している。好ましくは、2つの円錐台は同軸である。
【0097】
1つの実施形態では、2つの円錐台は同じ寸法である。
【0098】
別の実施形態では、2つの円錐台は非対称である。
【0099】
本発明は、孔60どうしの形状が同じである積層55に限定されるものではない。積層55は、形状が異なる孔60を含んでいてよい。当業者は、記載していない形状および構成に本発明を適応させることができる。
【0100】
図2~
図6の例では、2つの隣接する孔60は2つごとに、孔の横断面の最大寸法に等しい距離だけ離れている。
【0101】
図5の例では、横断面が同じ円形である孔60はすべて2つごとに、実質的に孔の直径に等しい距離だけ離れている。
【0102】
好ましくは、孔60は、直径が50mmで、互いに50mm離れている。
【0103】
ここで、物品50を溶接する本方法の一例を説明する。本溶接方法は、好ましくは前述の溶接装置10を用いて実施される。
【0104】
前半の工程では、孔60は積層55に開けられる。
【0105】
孔60は、物品に対して磁気パルスによる溶接を所望する積層箇所に開けられる。
【0106】
1つの実施形態では、シート56は事前に積層され、その後、孔は全シートに対して同時に開けられる。
【0107】
別の実施形態では、孔はシートごとに開けられ、その後シートは、孔60の平均軸61が同列になるように積層される。
【0108】
1つの実施例では、孔60は機械加工、例えば孔抜きまたは押し抜きによって開けられる。
【0109】
後半の工程では、溶接する物品を形成している部品、すなわち積層55と2枚のプレート51、52とを組み合わせる。
【0110】
2枚のプレート51、52は、積層55の両側に配置され、少なくとも事前に設けた孔60を覆う重複領域53を形成する。
【0111】
第1のプレート51の内面511は、第1のシートに当接して配置される。第2のプレート52の内面521は、最後のシートに当接して配置される。
【0112】
本方法は、次に、プレートと積層との組立体を溶接装置10内に設置する工程を含む。
【0113】
積層55および2枚のプレート51、52は、有利には、コイル11の所に設置し、重複領域53の全体または一部がこのコイルの有効部分121と対向するようにする。
【0114】
コイルの有効部分121と対応している重複領域53を作動領域と称する。作動領域は孔60を覆っている。
【0115】
図1および
図2の非限定的な例では、第1のプレート51は、コイルの有効部分121に近い方の部品である。第1のプレート51の外面512は、コイルの有効部分121と対向して配置される。第2のプレート52の外面522は、ブロック13と対向して配置される。
【0116】
2枚のプレート51、52と積層55とは、少なくとも重複領域53で、コイル11の有効部分121の近くで実質的に互いに平行になるように固定手段(図示せず)を介して維持される。
【0117】
これらの工程の後、物品は、溶接する準備が整った状態にある。
【0118】
2つの前半工程を実施する順序はこの通りである必要はなく、本方法に従って、記載した順序とは逆の順序で実行してもよいし、この工程の結果に変化がなければ同時に実行してもよい。
【0119】
次に、本方法は、磁気パルスによる溶接の工程を含む。
【0120】
スイッチ51が閉じると、コイル11の本体12は格納ユニットとに接続し、高強度の電流がコイル11に流れる。電流は、作動領域と有効部分121との間の所定空間に、この有効部分から来る集中磁場を発生させる。
【0121】
その後、作動領域は磁場に暴露され、
-圧力が第1のプレート51の外面512にかかってこの第1のプレートを第1のシート56aにぴったりと押し付け、今度はこの第1のシートが第2のシートにぴったりと押し付けられ、最後のシート56cが第2のプレート52の内面521にぴったりと押し付けられるまでこれを繰り返し、シートとプレートを恒久的に結合させ、
-孔60の所では、この圧力は第1のプレート51の外面512にかかってこの第1のプレートを第2のプレート52の内面521にぴったりと押し付ける
ようにする。
【0122】
この工程の後、物品50は作動領域で溶接される。2枚のプレート51、52と積層55とは、孔60どうしの間で溶接によって互いに接合し、2枚のプレート51、52は、孔60で溶接によって互いに接合する。
【0123】
図7は、情報提供のために溶接後の物品を示している。積層は、アルミニウム製のシート56を40枚含んでいる。2枚のプレートはアルミニウム製である。重複領域53の大きさは、長さ430mm、幅120mmである。孔は筒状で、同一の円形横断面を有し、直径は50mmであり、数は5で、2つごとに50mm離れている。
【0124】
本方法は、管状部品にも適応できる。
【0125】
上記の説明は、様々な特徴および利点によって本発明が目的を達成していることを明確に説明している。特に、シートの積層を含む部品の溶接に適応した磁気パルスによる溶接方法を提供している。