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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】はんだ材及びダイアタッチメント方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/14 20060101AFI20220607BHJP
   B23K 35/26 20060101ALN20220607BHJP
   C22C 11/06 20060101ALN20220607BHJP
   C22C 13/00 20060101ALN20220607BHJP
   C22C 13/02 20060101ALN20220607BHJP
   C22C 11/00 20060101ALN20220607BHJP
   C22C 30/04 20060101ALN20220607BHJP
【FI】
B23K35/14 Z
B23K35/14 F
B23K35/26 310A
B23K35/26 310B
B23K35/26 310D
B23K35/26 310C
C22C11/06
C22C13/00
C22C13/02
C22C11/00
C22C30/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019561311
(86)(22)【出願日】2018-05-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 US2018032325
(87)【国際公開番号】W WO2018209237
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2019-11-07
(31)【優先権主張番号】62/505,463
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598085065
【氏名又は名称】アルファ・アセンブリー・ソリューションズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALPHA ASSEMBLY SOLUTIONS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100206140
【弁理士】
【氏名又は名称】大釜 典子
(72)【発明者】
【氏名】グリーノ、アンジェロ
(72)【発明者】
【氏名】バンキウィッツ、ボグダン
(72)【発明者】
【氏名】カセレフ、オスカー
(72)【発明者】
【氏名】リフトン、アンナ
(72)【発明者】
【氏名】マーチ、ミッシェル ティー.
(72)【発明者】
【氏名】シドン、ジラード
(72)【発明者】
【氏名】サレルノ、ポール
(72)【発明者】
【氏名】コープ、ポール ジェイ.
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-288526(JP,A)
【文献】特開2013-180100(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102554488(CN,A)
【文献】特開2006-263774(JP,A)
【文献】特表2005-510357(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0013054(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0190388(US,A1)
【文献】米国特許第05127969(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0096507(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0104855(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/14
B23K 35/26
C22C 11/06
C22C 13/00
C22C 13/02
C22C 11/00
C22C 30/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ材であって、
a)はんだ合金と、
b)熱伝導率向上構成要素と、を備え、
前記はんだ材が、約75~約150W/m・Kのバルクの熱伝導率を有し、
前記熱伝導率向上構成要素が、ワイヤの形態であり、銀、スズめっき銅、スズめっきされたニッケルめっきアルミニウム、パラジウム、及び白金からなる群から選択され、裸銅、裸のアルミニウム又は金ではなく、
前記はんだ材が、30重量%~95重量%の前記はんだ合金、及び70重量%~5重量%の前記熱伝導率向上構成要素を備え、
前記ワイヤが、平行に使用される複数のワイヤを含み、前記平行なワイヤが、互いに緊密に充填されており、
「約」は、+/-15%以下の変動を含むことを意味する、はんだ材。
【請求項2】
前記はんだ合金が、約20~約70W/m・Kの熱伝導率を有
「約」は、+/-15%以下の変動を含むことを意味する、請求項1に記載のはんだ材。
【請求項3】
前記はんだ合金が、約25~約60W/m・Kの熱伝導率を有
「約」は、+/-15%以下の変動を含むことを意味する、請求項2に記載のはんだ材。
【請求項4】
前記はんだ合金が、高鉛合金、SnAg合金、SnAgCu合金、インジウム及びインジウム合金、SnPb合金、並びにこれらのうちの1つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のはんだ材。
【請求項5】
前記熱伝導率向上構成要素が、少なくとも100W/m・Kの熱伝導率を有する、請求項1に記載のはんだ材。
【請求項6】
前記熱伝導率向上構成要素が、少なくとも200W/m・Kの熱伝導率を有する、請求項5に記載のはんだ材。
【請求項7】
前記熱伝導率向上構成要素が、少なくとも300W/m・Kの熱伝導率を有する、請求項6に記載のはんだ材。
【請求項8】
前記はんだ材が、約80~約110W/m・Kのバルクの熱伝導率を有
「約」は、+/-15%以下の変動を含むことを意味する、請求項1に記載のはんだ材。
【請求項9】
前記はんだ材が、はんだプリフォームの形態である、請求項1に記載のはんだ材。
【請求項10】
請求項1に記載のはんだ材を含む、はんだ接合部。
【請求項11】
前記はんだ接合部が、矩形であり、前記ワイヤが、前記矩形の短い方の寸法に平行に配向され、前記ワイヤは、ガスが抜けるためのより短い経路を形成する、請求項10に記載のはんだ接合部。
【請求項12】
基板と構成要素との間のはんだ接合部を作製する方法であって、
a)請求項1に記載のはんだ材を基板に塗布する工程と、
b)前記はんだ材上に構成要素を配設する工程と、
c)前記はんだ材をリフローして、前記基板と前記構成要素との間にはんだ接合部を
形成する工程と、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、電子デバイスの放熱性を向上させ、その信頼性を向上させるための熱伝導率調整構成要素を収容する電子パッケージングに使用するためのはんだ材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスが電子製品に使用されるために、それは、半導体パッケージに電気的に、機械的に、及び場合によっては熱的に相互接続されなければならない。この機械的相互接続は、ペースト又はフィルム形態の接着剤(例えば、ポリマー材料)を使用して達成され得る。電気的接続は、半導体デバイスの電気出力と半導体パッケージの入力との間に薄い金のワイヤ又はタブを取り付けることによって達成され得る。電力デバイスなどについて熱伝導が必要とされるとき、1つの従来の戦略は、アセンブリ時に半導体デバイスと半導体パッケージとの間に配設されるはんだを用いてポリマーの機械的接着剤を置換することを伴う。
【0003】
はんだペーストは、電子アセンブリに使用される最も認められている形態のはんだである。表面実装の適用は、典型的には、構成要素を回路基板に取り付けるためのはんだペーストに依存する。しかしながら、はんだペーストが唯一の解決策ではない場合がある。これは、特に、スルーホール構成要素又は印刷されたはんだペーストによって供給され得るよりも多くのはんだを必要とする非常に大きいデバイスを用いて作業するときに該当する。非常に多くの場合、プリント回路基板は、1つよりも多い形態のはんだを必要とする混合技術を伴う。したがって、はんだペーストが、表面実装構成要素に使用され得、はんだプリフォームが、スルーホール構成要素上にリードを取り付けるために使用され得る。
【0004】
はんだプリフォームは、非常に均一であるように設計されるはんだの形状で形成され、各プリフォームは、接合部に同じ体積のはんだを一貫して送達する。はんだプリフォームはまた、接合部を完成させるために必要なはんだ体積に応じて、非常に小さいサイズからかなり大きいサイズまでの範囲を有する、ワッシャ、ディスク、正方形、矩形、及びフレームを含む特定の要件に適合するように、様々な形状及びサイズに形成され得る。これらの形状はまた、複数のプリフォームが特定のパターンで適用されているときに使用するために、はんだの狭いストランドと接続され得る。ストランドは、はんだ塊へのリフロー及びウィックバック時に破断するように設計され、より迅速かつより正確な配置を可能にする。
【0005】
はんだプリフォームはまた、はんだ接合を強化するために、はんだペーストと組み合わせて使用され得る。例えば、はんだペーストが接合部の強度及び適用範囲要件を満たすために十分なはんだ体積を提供しない場合、プリフォームを使用することが望ましい場合がある。
【0006】
コストを低減し、スループット及び歩留まりを向上させ、並びにパッケージ化された半導体デバイスの性能及び信頼性を向上させるように、産業における継続した圧力も存在する。
【0007】
典型的には、はんだ又は充填されたポリマー材料であるダイアタッチ材が、半導体ダイをリードフレーム、他のダイ、ヒートシンクなどに接続するために使用される。充填剤は、接続の要件に応じて、導電性又は非導電性であり得る。従来、ダイアタッチ材は、主に機械的結合を提供した。しかしながら、半導体デバイスがより複雑かつ動力の高い用途に発展されるにつれて、それらはまた、動作中により多くの熱を発生するようになり、廃熱の伝導が、ダイアタッチ材の望ましい特徴となっている。
【0008】
高出力用途について、はんだは、その高い熱伝導に起因して選択されるダイアアタッチ材である。しかしながら、はんだは、いくつかの有害な特性も有する。はんだの主な欠点の1つは、はんだが、ダイボンディング中及び後続の熱サイクル中に、ボンドライン内にボイドを形成する傾向を有することである。これらのボイドは、ダイの下に低熱伝導率のホットスポットを生じさせ、許容可能な結果を確保するために、ボンディング後の検査の要件を増加させる。
【0009】
高温はんだ合金が、ダイアタッチメント用途、電力半導体、及び光学デバイスパッケージング、フリップチップパッケージング、ヒートシンク接合、並びに動作中に発生する熱の放散が重要である他の用途で広く使用されている。はんだ材は、基板への熱を発生する電子デバイスのボンディングが、機械的及び電気的接続を形成することを可能にする。
【0010】
これらの用途の現行の業界標準はんだは、典型的には、高鉛はんだ(例えば、90~95重量%のPb)及びAu系共晶はんだ合金(例えば、80Au20Snはんだ)を必要とする。ダイアタッチプロセスは、一般に、接着ボンディング又ははんだ接合を使用して、シリコンダイ又はチップをリードフレーム又は他の基板に接続することを伴う。はんだ付けは、デバイスによって発生した熱を放散する際に有益であるポリマー接着剤と比較して、より高い通電能力及びはんだ合金のより良好な熱伝導率に起因して、特に電力デバイスについて、ダイをリードフレームに取り付けるための好ましい方法である。
【0011】
ダイアタッチに使用されるはんだは、典型的には、少なくとも280℃の液相線温度を有し、200~250℃の温度でリフローはんだ付けすることによって、共晶SnPb又は鉛フリーSnAgCu(SAC)はんだを用いたプリント回路基板上でのパッケージ化されたデバイスのその後の実装を可能にする。
【0012】
ダイアタッチメント用の最も広く使用されているはんだとしては、高PB合金、例えば、95Pb5Sn、88Pb10Sn2Ag、及び92.5Pb5Sn2.5Agが挙げられる。しかしながら、鉛の使用は、その毒性に起因して多くの用途で禁止されている。第1段階のパッケージング用途のための高PBはんだ合金は、それらに対する信頼性の高い代替がないため、現行の特定有害物質使用制限(Restriction of Hazardous Substances、RoHS)規制から免れているが、これらの領域における鉛フリー材料への転換は、最終的に実装されることになり、非常に望ましい。鉛フリー共晶Au-Sn(280℃)、Au-Si(363℃)、及びAu-Ge(356℃)合金が、ダイアタッチはんだとして使用され得るが、それらのコストは、法外に高い。Sn-Sb、Bi-Ag、Zn-Sn、及びZn-Al系における他の高温鉛フリーはんだもまた、候補であることが知られているが、各々その独自の欠点を有する。例えば、Sn-Sb及びZn-Sn合金の固相線温度は、概して、低過ぎであり、Zn-Al合金は、腐食性が高く、容易に酸化され、Bi-Ag合金は、低い熱/電気伝導率を有する脆性及び問題を有する。
【0013】
したがって、現在使用されているはんだ材の多くは、それらの能力の限界に直面しており、したがって、デバイスの信頼性を犠牲にし、その耐用年数を制限していることがわかる。特に高出力電子部品のために、デバイス信頼性を改善することができる、改善されたはんだ材に対する必要性が当技術分野において依然として存在する。
【0014】
電子機器の小型化及び高出力電子部品を形成する必要性により、熱を発生する半導体デバイスからの放熱の要件は、非常に重要になっている。
【0015】
ダイアタッチ及び他の電気的相互接続に使用されるはんだは、部品を一緒に接合するための機械的強度を提供すること、電流の経路を提供すること、又はデバイス内で発生した熱をヒートシンクに放散させるための経路としてサーマルインターフェースを提供することなどの、複数の機能を実施する。デバイス及び回路基板との良好なインターフェースを形成するための熱伝導率、電気伝導率、引張強度、剪断強度、クリープ、及びその容量などのはんだ材の物理的特性は、その全体的な性能を現実の用途において決定するうえで重要な因子である。これらの特性はまた、典型的な動作条件下で経時的に安定である必要がある。
【0016】
電子デバイス、特にLED及び高出力増幅器及びスイッチなどの高出力デバイスは、放散される必要がある多くの熱を発生させる。そのようなデバイスの動作中、サーマル及び電気的インターフェース材は、長期間にわたって高温に遭遇する。高温動作中、相互接続材料はまた、デバイス、基板、及び相互接続材料間の熱膨張係数(coefficient of thermal expansion、CTE)の不整合に起因して、高い機械的応力にも直面する。それゆえに、動作中のデバイスの長寿命化のために、相互接続材料及びインターフェースは、これらの条件下で安定した機械的、熱的、及び電気的特性を有するべきである。
【0017】
金属及び合金における熱エネルギーは、主に電子によって運ばれる。一般に、金属及び合金は、温度の上昇に伴って熱伝導率の低下を示す。これは、通常、合金内及びインターフェースにおける粒界からの電子対電子散乱、電子対原子散乱、及び電子散乱などのいくつかの因子の組み合わせの結果である。伝導率の変化は、望ましいものではない。金属及び合金の電気抵抗率もまた、温度の上昇と共に変化し得る。はんだ合金の抵抗率の変化もまた、望ましいものではない。
【0018】
それゆえに、好適な相互接続材料及び加工技術は、電子デバイス及びシステムの信頼性の高い高温パッケージの設計において大きな課題を残している。広範な温度スイング及び高温は、デバイスに与えられる熱機械的応力を実質的に増大させる。高温では、変形又はクリープが加速する間、はんだ強度が低下し、各負荷サイクル中の変形が増大し、疲労寿命が低下する結果をもたらす。確立されたはんだ技術は、そのような問題を克服できず、信頼性の高い高温動作を提供することができなかった。
【0019】
その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Liuらの米国特許第8,348,139号は、高温鉛フリーはんだ付け用途のための積層複合プリフォーム薄片を説明する。
【0020】
その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Tozelbaevらの米国特許第8,034,662号は、支持構造を含有するサーマルインターフェース材層を第1の半導体チップ上に配置することを含む半導体チップサーマルインターフェース材方法を説明する。しかしながら、この参照は、リフロー中に金属酸化物とフラックスとの相互作用中に形成されるガスのはんだ接合周辺部への自由運動を可能にしないメッシュの使用に限定される。
【0021】
したがって、当技術分野では、十分に高い熱伝導率を呈し、かつ従来技術の欠点を克服する、熱を発生する半導体デバイスから離れて放熱することができる鉛フリーはんだ合金に対する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0022】
本発明の目的は、熱を発生する半導体デバイスから放熱させることができる、はんだ合金を提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、十分な熱伝導率を呈する、はんだプリフォームを提供することである。
【0024】
本発明の更に別の目的は、熱伝導率調整構成要素を収容する、はんだプリフォームを提供することである。
【0025】
その目的のために、一実施形態では、本発明は、概して、はんだ材に関し、はんだ材は、
【0026】
A)はんだ合金と、
【0027】
B)熱伝導率調製構成要素と、を備え、
【0028】
はんだ材が、約75~約150W/m-Kのバルクの熱伝導率を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明のより完全な理解のために、添付の図面に関連してなされる以下の説明を参照する。
【0030】
図1】向上した熱伝導率を有する、本明細書に説明される、はんだ材の概略図を図示する。銅ワイヤがはんだ合金内に埋め込まれる、本発明の一実施形態による、はんだ材の図、及び銅ワイヤがはんだ合金内に埋め込まれ、またクラッディングされたコア層を含有する、本発明の一実施形態による、はんだ材の図。
【0031】
図2】本発明の一態様による、はんだ材プリフォームの光学画像を図示する。
【0032】
図3】埋め込まれたワイヤを示す、図2のプリフォームのX線画像を図示する。
【0033】
図4】埋め込まれたワイヤを示す、本発明によるプリフォームの光学画像を図示する。
【0034】
図5】A及びBは、本発明のはんだ材を使用して基板に取り付けられたシリコンダイのSEM画像を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、概して、電子パッケージングに使用するためのはんだ材に関し、はんだ材は、はんだ合金及び熱伝導率調整構成要素を備える。したがって、一実施形態では、本発明は、概して、熱伝導率調整構成要素を含有する、はんだプリフォームに関する。
【0036】
本明細書で使用するとき、「a」、「an」、及び「the」は、文脈がそうでない旨を明確に指示しない限り、単数及び複数の両方を指す。
【0037】
本明細書で使用するとき、「約」という用語は、パラメータ、量、持続時間などの測定可能な値を指し、具体的に列挙された値の、及びその値からの、+/-15%以下の変動、好ましくは+/-10%以下の変動、より好ましくは+/-5%以下の変動、更により好ましくは+/-1%以下の変動、及びまた更により好ましくは+/-0.1%以下の変動を、そのような変動が本明細書に説明される本発明で実施するために適切である限り、含むことを意味する。更に、修飾語「約」が指す値は、それ自体が本明細書に具体的に開示されていることもまた理解されるべきである。
【0038】
本明細書で使用するとき、「の下」、「より下」、「より低い」、「より上」、「上部の」、「前部」、「後部」などの空間的に相対的な用語は、別の要素又は特徴に対する1つの要素又は特徴の関係を説明する説明の容易さのために使用される。「前部」及び「後部」という用語は、限定することを意図するものではなく、適切な場合に交換可能であるように意図されることが更に理解される。
【0039】
本明細書で使用するとき、「備える」及び/又は「備えている」という用語は、記載された特徴、完全体、工程、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、完全体、工程、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらの群の存在又は追加を除外しない。
【0040】
本明細書に説明されるように、本発明は、基板インターフェースに対する半導体の性能を改善するために使用され得る材料、プロセス、及び設計を対象とし、それによって、インターフェース及び熱を発生する電子デバイスから離れる熱の流れを増加させる。
【0041】
一実施形態では、本発明は、概して、はんだ材に関し、はんだ材は、
【0042】
A)はんだ合金と、
【0043】
B)熱伝導率調製構成要素と、を備え、
【0044】
鉛フリーはんだ材が、約75~約150W/m-Kのバルクの熱伝導率を有する。
【0045】
1つの好ましい実施形態では、はんだ材は、はんだプリフォームの形態である。
【0046】
本明細書に説明されるように、一実施形態では、はんだ材は、高い熱伝導率を有し、熱伝導率は、電子パッケージング用途で使用される従来のはんだよりも高い。一実施形態では、複合はんだ材の熱伝導率は、従来のはんだ材よりも少なくとも約5%高いか、又は従来のはんだよりも少なくとも約10%高く、従来のはんだよりも最大約50%高く、はんだ合金の熱伝導率及び熱伝導率調整構成要素の熱伝導率に応じて更に高い。
【0047】
はんだ材は、電子パッケージング用途における基板と構成要素との間に冶金学的ボンドを提供する。本明細書に説明されるように、複合はんだ材は、過剰な熱障壁を形成せずに接続を提供するために十分な熱伝導率を有することが重要である。
【0048】
一実施形態では、はんだ材のはんだ合金は、熱伝導率の調節を必要とする従来のはんだ付け材料を含み、本発明は、はんだ自体の能力を超えて、はんだ材の熱伝導率及び機械的強度を向上させるために、多くの一般的なはんだ合金と共に使用され得、これには、限定ではなく例として、高鉛、SnAg、SAC、インジウム及びインジウム合金などの一般的なダイアタッチはんだ、並びにSnPbが挙げられる。広義には、本発明は、システムの熱伝導率及び機械的強度を向上させるために望ましい任意のはんだ合金と共に使用され得る。したがって、このはんだ合金は、限定ではなく例として、スズ、銅、銀、ビスマス、アンチモン、インジウム、金-スズ、鉛、ゲルマニウム、及びニッケルのうちの1つ以上を含み得る。一実施形態では、はんだ合金は、両方Avila Ribasらの米国特許出願公開第2018/0102464号又は国際公開第2017/192517号に説明されるはんだ合金を含んでもよく、これらの各々は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0049】
重要なことは、はんだ合金が、本明細書に説明される熱伝導率向上構成要素の追加によって、熱伝達及び信頼性について最適化されることができることである。
【0050】
表1は、いくつかの一般的なはんだ合金のいくつかの例をリスト化し、それらの多くは、ダイアタッチ及びパッケージ化されたデバイスのアタッチ用途で使用される。熱伝導率の値の高速試験は、インジウムが80W/m-Kで最高値のうちの1つを有することを例示する。しかしながら、インジウムは、156℃の比較的低い溶融温度を有し、これは、非常に高い出力向けのダイアタッチ及びパッケージ化されたデバイスのアタッチ用途におけるその使用を制限する。
【表1】
【0051】
表1から、典型的な熱伝導率の値が、19W/m-K程度に低いものであり得ることを見ることができる。これらのはんだ合金は、全て、多くの従来の電子デバイスの良好な信頼性を確保するために十分に低い接合部の熱抵抗との信頼性の高い関係を提供することができる。しかしながら、それらの低い熱伝導率は、高出力電子パッケージング用途での使用についてそれらを不適切にする。
【0052】
本発明に説明されるはんだ材のバルク特性及びインターフェース特性は、熱伝達及び信頼性に関して最適である。はんだ合金を通る熱の流れを増加させるために、本発明のはんだ材は、熱伝導率向上構成要素を含む。この熱伝導率向上構成要素は、好ましくは、少なくとも約100W/m-K、より好ましくは少なくとも約200W/m-K、更により好ましくは少なくとも約300W/m-K、更により好ましくは少なくとも約400W/m-Kの熱伝導率を有する。
【0053】
本発明の発明者らは、材料の選択が、リフロー中のガスの形成及び接合部の機械的強度に重大な効果を有することを見出した。例えば、裸銅は、スズめっき銅よりも多くのガスを生成することになる。金はまた、それがはんだシステム内に溶解し、はんだ接合部を脆化させ、特に動力サイクル向け用途において、使用中の早期破壊を結果としてもたらすため、所望される材料ではない。同様に、めっきなしのアルミニウムは、はんだ濡れせず、はんだシステムの構造強度に対するメッシュの寄与を結果としてもたらさない。しかしながら、アルミニウムは、ニッケル及びスズでメッキされた場合、はんだ濡れし、はんだと金属間化合物を形成し、はんだシステムの機械的強度を向上させる。対照的に、ワイヤ金属がはんだ濡れせず、はんだと金属間化合物を形成しない場合、システムは、金属ワイヤを有していないはんだに対して機械的強度に劣ることになる。
【0054】
好ましい実施形態では、熱伝導率向上構成要素は、埋め込まれたワイヤが、はんだのバルクの熱伝導率を上昇させ、同様に側方の熱放散を向上させるための経路を提供することが見出されているため、埋め込まれたワイヤを備える。これは、不均一な発熱によるデバイス上のホットスポットを排除するために特に重要である。ワイヤはまた、はんだ接合部の厚さ及び均一性を制御するために有益である。
【0055】
したがって、好ましい実施形態では、熱伝導率向上構成要素は、ワイヤからなり、ワイヤは、銀、スズめっき銅、スズめっきされたニッケルめっきアルミニウム、パラジウム、及び白金から選択される。加えて、裸銅、裸のアルミニウム及び金は、上記に明らかにされた理由のために本発明での使用に好適ではない。
【0056】
はんだ内の熱伝導率向上構成要素の量は、特定の用途に依存し、したがって、はんだ材の所望されるバルクの熱伝導率に依存する。熱伝導率向上構成要素の量はまた、選択される、はんだ合金の特定の組成及び熱伝導率向上構成要素の種類にも依存することになる。
【0057】
例えば、1つの好ましい実施形態では、はんだ材は、プリフォームの形態であり、プリフォームは、約30重量%~約95重量%のはんだ合金、及び約70重量%~約5重量%の熱伝導率向上構成要素を含み、より好ましくは、約40~約90重量%のはんだ合金、及び約60~約10重量%の熱伝導率向上構成要素を含む。所望される量の熱伝導率向上構成要素は、1つ以上のワイヤをはんだ材に埋め込むことによって達成される。上記のように、はんだ材のバルクの熱伝導率は、好ましくは、約75~約150W/m-K、より好ましくは約90~約110W/m-Kの範囲内である。
【0058】
熱伝導率向上構成要素は、図1に示されるようにワイヤの形態ではんだ内に組み込まれることが好ましい。
【0059】
米国特許第8,034,662号に説明されるシステムに勝る、本発明のいくつかの主要な改善が存在する。まず、上述されたように、本発明の熱伝導率向上構成要素は、ワイヤの形態である。対照的に、米国特許第8,034,662号は、はんだに埋め込まれて、最小はんだ厚さ(ボンドライン)を設定し、溶融/リフロー中のはんだの運動を制約するメッシュを使用する。リフロー中のはんだの運動を制約することによって、基板及びダイの金属被覆は、はんだを制約するシステムを形成することになる。ボンドラインの厚さが制御される限り、はんだは、濡れて、金属被覆された表面に付着し、所望される場所に留まる。
【0060】
しかしながら、メッシュが埋め込まれた支持構造体の使用は、メッシュの使用が、ワイヤに基づくものに対して機械的に劣ることになる、はんだ接合部を結果としてもたらすため、本発明では望ましくない。まず、メッシュ構造は、リフロー中に金属酸化物とフラックスとの相互作用中に形成されるガスのはんだ接合周辺部への自由運動を可能にしない。本発明のようにワイヤを使用することによって、リフロー中に形成されたガスが、はんだ接合部から抜けることができる1つの方向が存在し、したがって、接合部での少ないボイド形成を結果としてもたらす。
【0061】
本発明では、矩形はんだ接合部の場合、ワイヤは、より短い寸法に平行に配向されて、ガスが抜けるためのより短い経路を形成する。これは、はんだ凝固中にガスが存在する場合、はんだ接合部内のボイドが結果として生じることになり、接合部の機械的一体性を損ない、有効熱伝導率を低下させ、はんだアタッチメントの強度を低下させるため、重要である。ダイアタッチに使用される高ボイドはんだ接合部の剪断試験は、ダイをはんだから分離するために必要とされる剪断力の低下を結果としてもたらす。ボイドがダイホットスポットの下に位置付けられる場合、それは、そのホットスポットに起因してダイの早期破壊を結果としてもたらす可能性があり、これは、ボイド形成状態に関する多くの業界仕様が、総ボイド限界、及び同様に単一の最大ボイド限界を記載する理由である。
【0062】
本発明のワイヤは、平行に使用され得、平行なワイヤは、互いにより緊密に充填され得る。これは、米国特許第8.034,662号に例示されるメッシュ又は小さい支柱と比較して、はんだシステム内に埋め込まれている高熱伝導率材料のより高い割合を結果としてもたらす。
【0063】
最後に、上述のように、熱伝導率向上構成要素の材料の選択が重要であることが見出された。対照的に、米国特許第8,034,662号は、メッシュ金属材料の種類に区別がなく、好適であるとして列挙される代表的な材料としては、ニッケル、金、白金、銀、パラジウム、銅、アルミニウム、これらの組み合わせなどが挙げられている。
【0064】
図2は、本発明の一態様による、はんだ材プリフォームの光学画像を図示する。加えて、図3は、埋め込まれたワイヤを示す、図2のプリフォームのX線画像を図示する。図4は、埋め込まれたワイヤを示す、本発明によるプリフォームの光学画像を図示する。
【0065】
本明細書に説明される高熱伝導率はんだ材は、任意の適用可能な方法によって製造され、基板に塗布され得る。例えば、ワイヤは、圧延又は鋳造によってはんだ合金内に組み込まれ得る。他の方法もまた、当業者に既知であり、本発明に適用可能である。
【0066】
良好な加工性を確保するために、ワイヤは、電気めっき、スパッタリング、又は他の既知の技術によって、はんだ合金によってプレコートされてもよい。このはんだ合金は、相溶性の問題がないことを確保するために、ベースのはんだ合金と同じはんだ合金であることが好ましい。
【0067】
ワイヤの直径は、約5~約200ミクロン、より好ましくは、約25~約150ミクロン、更により好ましくは約50~約125ミクロンで変動し得る。結果として得られる、はんだ接合部は、多くの電子用途に関して典型的であるものとほぼ同じ厚さである。
【0068】
はんだ接合部は、はんだペースト及び/又ははんだプリフォームを基板に適用することによって形成され得る。リフロープロセス中、はんだは、溶融し、基板と構成要素との間の接合部を形成する。図5A及び図5Bは、本発明のはんだ材を使用して基板に取り付けられたシリコンダイのSEM画像を図示する。
【0069】
本明細書に説明される、はんだ材は、限定されるものではないが、リフロー及び真空オーブンを含む、全て既知のアセンブリプロセスで使用可能である。
【0070】
本発明は、ここで、以下の非限定的な実施例に関連して論じられる。
実施例1:
【0071】
本実施例は、はんだのみのプリフォームと比較した、銅ワイヤが埋め込まれたプリフォームの結果として生じる熱伝導率の変化の計算を例示する。本実施例では、μmの直径の3つの銅ワイヤが、1000×1000×200μmのはんだプリフォーム内に埋め込まれた。
【0072】
システムの体積:1000μm×1000μm×200μm=200×10μm
【0073】
銅の体積:3×Πrh=3×Π(50μm)×1000μm=23.5×10μm
【0074】
はんだの体積:(200-23.5)×10μm
【0075】
銅の熱伝導率(CuTC):400W/m-K
【0076】
はんだの熱伝導率(SolderTC):50W/m-K
【0077】
(Cuの体積)/総体積×CuTC+(はんだの体積)/総体積×SolderTC=総(バルク)熱伝導率=91W/m-K。
実施例2.
【0078】
実施例2は、銀ワイヤを含む熱伝導率向上構成要素を有するSnAg3.5はんだなどの、典型的なより高い溶融温度のはんだの熱伝導率の向上を実証する。表2は、5つの銀ワイヤをはんだに追加することによって、結果として生じるシステムの熱伝導率が、インジウムの値を超える88.1W/m-Kに上昇することを例示する。加えて、本システムは、175℃の最大ダイ動作温度を維持することができる、221℃の溶融温度を有する。対照的に、インジウム合金は、約110℃のダイ動作温度を維持することができるだけである。
【0079】
銀ワイヤをスズめっき銅ワイヤで代替することが、わずかに小さい全体的な熱伝導率の値を結果としてもたらすことになるが、依然として、熱的強化を伴わないSnAg3.5はんだ合金と同様に向上した熱伝導率を結果としてもたらす。
【表2】
【0080】
したがって、はんだ合金材における熱伝導率向上構成要素の使用は、システムの熱伝導率を向上させ、最適な熱伝達及び信頼性を可能にすることがわかる。
【0081】
最後に、次の「特許請求の範囲」は、本明細書に説明される本発明の一般的及び具体的な特徴の全て、並びに言語の問題としてそれらの間に収まり得る本発明の範囲の全ての記述を包含するように意図されていることも理解されたい。
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
はんだ材であって、
a)はんだ合金と、
b)熱伝導率調整構成要素と、を備え、
前記はんだ材が、約75~約150W/m-Kのバルクの熱伝導率を有する、はんだ材。
(態様2)
前記はんだ合金が、約20~約70W/m-Kの熱伝導率を有する、態様1に記載のはんだ材。
(態様3)
前記はんだ合金が、約25~約60W/m-Kの熱伝導率を有する、態様2に記載のはんだ材。
(態様4)
前記はんだ合金が、高鉛合金、SnAg合金、SnAgCu合金、インジウム及びインジウム合金、SnPb合金、並びにこれらのうちの1つ以上の組み合わせからなる群から選択される、態様1に記載のはんだ材。
(態様5)
前記熱伝導率調整構成要素が、ワイヤの形態である、態様1に記載のはんだ材。
(態様6)
前記熱伝導率調整構成要素が、銀、スズめっき銅、スズめっきされたニッケルめっきアルミニウム、パラジウム、及び白金からなる群から選択される、態様5に記載のはんだ材。
(態様7)
前記熱伝導率調整構成要素が、裸銅、裸のアルミニウム又は金ではない、態様5に記載のはんだ材。
(態様8)
前記熱伝導率向上構成要素が、少なくとも100W/m-Kの熱伝導率を有する、態様5に記載のはんだ材。
(態様9)
前記熱伝導率向上構成要素が、少なくとも200W/m-Kの熱伝導率を有する、態様8に記載のはんだ材。
(態様10)
前記熱伝導率向上構成要素が、少なくとも300W/m-Kの熱伝導率を有する、態様9に記載のはんだ材。
(態様11)
前記はんだ材が、約80~約110W/m-Kのバルクの熱伝導率を有する、態様1に記載のはんだ材。
(態様12)
前記はんだ材が、はんだプリフォームの形態である、態様1に記載のはんだ材。
(態様13)
前記鉛フリーはんだ材が、約30重量%~約95重量%の前記はんだ合金、及び約70重量%~約5重量%の前記熱伝導率向上構成要素を備える、態様1に記載のはんだ材。
(態様14)
前記ワイヤが、平行に使用される複数のワイヤを含み、前記平行なワイヤが、互いに緊密に充填されている、態様5に記載のはんだ材。
(態様15)
態様1に記載のはんだ材を含む、はんだ接合部。
(態様16)
態様5に記載のはんだ材を含む、はんだ接合部。
(態様17)
前記はんだ接合部が、矩形であり、前記ワイヤが、前記矩形の短い方の寸法に平行に配向され、前記ワイヤは、ガスが抜けるためのより短い経路を形成する、態様16に記載のはんだ接合部。
(態様18)
基板と構成要素との間のはんだ接合部を作製する方法であって、
a)態様1に記載のはんだ材を基板に塗布する工程と、
b)前記はんだ材上に構成要素を配設する工程と、
c)前記はんだ材をリフローして、前記基板と前記構成要素との間にはんだ接合部を
形成する工程と、を含む、方法。

図1
図2
図3
図4
図5