(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】回転ベゼルを備える時計ケース
(51)【国際特許分類】
G04B 19/28 20060101AFI20220607BHJP
【FI】
G04B19/28 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020040558
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2020-03-10
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504341564
【氏名又は名称】モントレー ブレゲ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】リシャール・デッラ サンタ
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-205150(JP,A)
【文献】特表2008-536132(JP,A)
【文献】特開2000-98060(JP,A)
【文献】特開平7-218653(JP,A)
【文献】特開平1-124789(JP,A)
【文献】特開昭61-245082(JP,A)
【文献】特開昭61-240187(JP,A)
【文献】特開2002-181960(JP,A)
【文献】特開2003-43163(JP,A)
【文献】特開2001-59879(JP,A)
【文献】特開平10-239454(JP,A)
【文献】米国特許第4815053(US,A)
【文献】特許第6453949(JP,B2)
【文献】特許第4617828(JP,B2)
【文献】特開平7-311286(JP,A)
【文献】特公昭48-21578(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ベゼル(4)及び中間部品(3)を備える時計ケース(1)であって、前記ベゼル(4)は、前記中間部品(3)上で回転移動し得るように組み付け、前記ベゼル(4)及び前記中間部品(3)は、環状室(12)を間に画定し、前記環状室(12)は、内側に、前記ベゼル(4)と前記中間部品(3)との間の摩擦トルク生成デバイス(11)を備え、前記デバイス(11)は、圧縮部材(14)及び制動要素(15)を備え、前記圧縮部材(14)は、前記制動要素(15)に対して圧縮応力を加え、前記圧縮応力の作用下、前記制動要素(15)は、前記ベゼル(4)に対して押圧され、
前記ベゼルを前記中間部品に組み付けるばねを前記中間部品と前記ベゼルの間に備え、外縁が前記環状室に延びる前記制動要素の内縁は、前記回転ベゼルが取り外されるとき前記圧縮部材及び前記制動要素が前記中間部品の所定位置に残されるよう十分な長さ延びているとともに該内縁が前記中間部品の外周側に開口する側に設けられた十分な長さの溝に保持されるとともに、前記ばねは、前記ベゼルが前記制動要素の外縁を押圧して前記ベゼルと前記制動要素が摩擦接触する位置に配置される、時計ケース(1)。
【請求項2】
前記圧縮部材(14)は、Oリング型ガスケットであることを特徴とする、請求項1に記載のケース(1)。
【請求項3】
前記制動要素(15)は、ポリオキシメチレン製リングであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のケース(1)。
【請求項4】
前記圧縮部材(14)のショア硬度及び/又は断面は、前記制動要素(15)に加える圧縮応力を定義するのに寄与することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のケース(1)。
【請求項5】
前記環状室(12)は、前記中間部品(3)の外側壁内に作製した溝(7)、及び前記ベゼル(4)の内側壁の一部分(13)によって形成することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のケース(1)。
【請求項6】
前記圧縮部材(14)は、前記環状室(12)の前記溝(7)及び前記制動要素(15)の両方と接触するように画定することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のケース(1)。
【請求項7】
前記制動要素(15)は、前記環状室(12)の部分及び前記圧縮部材(14)の両方と接触するように画定することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のケース(1)。
【請求項8】
前記制動要素(15)は、前記環状室(12)の一部分(13)の接触領域(19)と係合することを目的とする摩擦面を備えることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のケース(1)。
【請求項9】
前記ケース(1)は、それぞれ、前記中間部品(3)及び前記ベゼル(4)内に画定した2つの溝(6、9)を備える一方で、前記溝(6、9)は、互いに面するように配置し、前記ベゼル(4)を前記中間部品(3)に組み付けるのに使用するばね(8)を備えることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のケース(1)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のケース(1)を備える時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間部品及び中間部品上で回転し得るベゼルを有する計時器の時計ケースに関し、前記ケースは、ベゼルと前記中間部品との間に挿入される摩擦トルク生成デバイスを備える。
【0002】
本発明は、このデバイスを備えるそのようなケースを有する時計にも関する。
【背景技術】
【0003】
従来技術では、外部回転ベゼルは、一般に、潜水時計、又は地球時間を表示する時計に備えられ、多くの用途で使用される。概して、回転ベゼルは、把持が容易であるようにその外周に溝が付けられている。更に、回転ベゼルは、高すぎる抵抗をもたらすことなく、更には意図せずに移動することもなく、一貫して回転するように、時計ケースの中間部品上に組み付けなければならない。したがって、回転ベゼルは、各部品を修正する必要のない合理的な製造を可能にするため、一続きの同じ部品の間に一貫した摩擦をもたらすように組み付けなければならない。更に、締結デバイスは、取り付けが容易であって、衝撃又は意図しない摩擦の間、ベゼルが抜けて、外れないように十分な保証をもたらさなければならない。
【0004】
回転ベゼルは、金属ワイヤによって慣習的に中間部品上に組み付けられることが公知であり、この金属ワイヤは、波形であるか、複数のリーフを有し、ベゼルの溝及びベゼルを支持する中間部品の部品の溝内に同時に係合される。ベゼルを取り付ける際、金属ワイヤは、弾性変形を受け、これにより、金属ワイヤの長手方向の展開を変化させる。ベゼルが抜けないようにすることの保証は、常に申し分のないものではない。更に、これら公知のデバイスに対する正確な配置は、繊細であることが多い。
【0005】
平坦弾性リングによってケースの固定部品に接続される回転ベゼルも公知であり、平坦弾性リングは、平坦弾性リングの外周に沿った点で径方向に分割され、平坦弾性リングの外側縁部は、その内側縁部に加えて、回転ベゼル及び回転ベゼル支持部品内に作製した溝内に係合される。そのような組立体は、回転ベゼルの十分に正確な案内を保証するが、リングの2つの端部を所定の位置で組立体の部品の1つに対して係止する更なるデバイスを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、回転ベゼルを時計ケースの中間部品上に組み付ける公知の組み付け作業を改善することによって、上述の及び他の問題を克服することであり、回転ベゼル及び中間部品が、このベゼルの使用から生じる様々な要件に対しより良好に合致するようにする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的で、本発明は、回転ベゼル及び中間部品を備える時計ケースに関し、ベゼルは、中間部品上で回転移動し得るように組み付け、前記ベゼル及び前記中間部品は、環状室を間に画定し、環状室は、内側に、ベゼルと中間部品との間の摩擦トルク生成デバイスを備え、前記デバイスは、圧縮部材及び制動要素を備え、圧縮部材は、制動要素に対して圧縮応力を加え、圧縮応力の作用下、前記制動要素は、ベゼルに対して押圧される。
【0008】
したがって、これらの特徴のために、ベゼルと中間部品との間の摩擦トルク生成デバイスは、時計の寿命全体を通じて一定で、一貫した、強固な摩擦制動の保証に寄与し、したがって、ベゼルが、一貫して、高すぎる抵抗を得ずに、更には意図せずに移動することもなく、回転するのを可能にする。
【0009】
他の実施形態では、
-圧縮部材は、Oリング型ガスケットであり、
-制動要素は、ポリオキシメチレン製リングであり、
-圧縮部材のショア硬度及び/又は断面は、制動要素に加える圧縮応力を定義するのに寄与し、
-環状室は、中間部品の外側壁内に作製した溝及びベゼルの内側壁の一部分によって形成され、
-圧縮部材は、環状室の溝及び制動要素の両方と接触するように画定され、
-制動要素は、環状室の一部分及び圧縮部材の両方と接触するように画定され、
-制動要素は、環状室の一部分の接触領域と係合することを目的とする摩擦面を備え、
-時計ケースは、それぞれ、中間部品及びベゼル内に画定した2つの溝を備える一方で、溝は、互いに面するように配置し、ベゼルを中間部品に組み付けるのに使用するばねを備えることを目的とする。
【0010】
本発明は、そのようなケースを備える時計にも関する。
【0011】
以下で、決して限定するものではない例によって示す添付の図面を使用して、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による時計ケースの部分断面図である。
【
図2】本発明による、
図1に示すこのケースの部分Aをより拡大した図である。
【
図3】本発明による時計ケースの代替実施形態の部分断面図である。
【
図4】本発明による、
図3に示すケースのこの代替実施形態の部分Bをより拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、時計ケース1、特に、封止されたケースに関連して本発明を説明する。そのような時計ケース1は、好ましくは、腕時計内に含まれる。言うまでもないが、この例は、説明の目的で提供するにすぎず、本発明は、懐中時計等、あらゆる種類の計時器に適用することができる。
【0014】
図1、
図2及び
図3では、この時計100は、全体として、全体参照数字1によって指定されるケース1を備え、ケース1は、裏蓋2、並びに中間部品3及びベゼル4によって形成した組立体を有し、ベゼル4は、中間部品3上で回転するように組み付けられる。この中間部品及びこのベゼルは、例えば、鉄鋼、貴金属(金、銀、白金)、貴金属ベースの合金、又は更にはセラミック等から作製することができる。
【0015】
そのような中間部品3は、環状溝16を含み、環状溝16は、中間部品3の外側壁上に画定され、裏蓋2の内側面に面して前記ケース1の内側に配置され、前記溝16は、ガスケット17を備える。中間部品3及びこの裏蓋2は、時計100の様々な部材が中に収容される体積部の境界を定める。ガラス(glass/crystal)5は、中間部品3に締結され、ガスケット18は、ガラス5と前記ベゼル4との間に挿入される。
【0016】
ベゼル4が回転移動し得るように組み付けられる中間部品3は、2つの環状溝6及び7を有し、環状溝6及び7は、ベゼル4の組み付けを目的とし、この中間部品3の外側壁内に画定される。ベゼル4は、ばね8、例えば、マルチリーフ・ワイヤ・スプリング又は多角形ばねにより中間部品3上に組み付けられ、ばね8は、中間部品3の溝6及びベゼル4の溝9に係合する。参照数字6及び9が記される溝は、溝が互いに面するように配置され、それぞれ、中間部品3の円筒形外側壁及びベゼル4の円筒形内側壁内に作製される。したがって、このばね8によって、ベゼル4は、中間部品3の肩部10に対して下方に押圧される。
【0017】
中間部品3の溝7は、ベゼル4をこの中間部品3上に組み付けるのに寄与する摩擦トルク生成デバイス11の一部を備える。より詳細には、この溝7は、時計ケース1の環状室12内に含まれ、
図2で見える環状室12は、ベゼル4と中間部品3との間、特に、中間部品3の外側壁とベゼル4の内側壁との間に画定される。
【0018】
したがって、摩擦トルク生成デバイス11が中に配置されるこの環状室12は、中間部品3の外側壁内に作製される溝7、及びベゼル4の内側壁の一部分13によって形成され、この溝7及びこの部分13は、互いに面するように配置される。この部分13は、デバイス11の制動要素15の摩擦面と係合することを目的とする接触領域19を備えることに留意されたい。
【0019】
したがって、
図3を参照すると、時計ケース1の一代替実施形態では、摩擦トルク生成デバイス11は、両方とも中間部品3の外側壁内に作製された溝7及び環状溝20によって、並びにベゼル4の内側壁の一部分13によって形成されることに留意されたい。この構成では、制動要素15は、参照数字20が記された溝内に配置され、制動要素15の摩擦面が、デバイス11の接触領域19と係合するようにする。そのような構成は、中間部品からのケース1の取り外し、特に、ベゼルの取り外しを可能にするという利点を獲得し、分解の間、制動要素15及び圧縮部材14は、中間部品3内に所定の位置で保持されることに留意されたい。
【0020】
この構成では、ベゼル4と中間部品3との間の摩擦トルク生成デバイス11は、圧縮部材14及びこの制動要素15を備える。この圧縮部材14は、環状室12の溝7内に配置され、圧縮部材14が、溝7の底部又は溝7の壁、及び制動要素15の両方と接触するようにする。制動要素15は、制動要素15が環状室12の部分13の接触領域19及び圧縮部材14の両方と接触するように画定される。この状況において、この圧縮部材14は、制動要素15に対して圧縮応力を加えるように環状室12内に配置され、この圧縮応力の作用下、前記制動要素15は、ベゼル4に対して押圧される。言い換えれば、この構成では、ベゼル4の回転に対する摩擦制動は、溝7内に配設された圧縮部材14により実行され、溝7は、制動要素15との圧縮接触をもたらし、制動要素15自体は、ベゼル4の部分13の接触領域19と摩擦接触することを理解されたい。部分13のそのような接触領域19は、デバイス11の制動要素15と係合するように画定される。
【0021】
このデバイス11では、圧縮部材14及び制動要素15は、圧縮部材14及び制動要素15を作製する材料に対して、少なくとも1つの異なる特徴、例えば、材料の弾性、材料の引張り強度、材料の最終圧縮強度、材料の耐摩耗性、材料の耐化学薬品性、材料の寸法安定性、材料のクリープ強度、材料の摩擦係数、又は材料の耐擦過性等を有さなければならないことに留意されたい。
【0022】
この状況において、圧縮部材14は、円形断面/外形を有するOリング・ガスケットである。Oリング・ガスケットは、環状室12の溝7の内側で圧縮保持され、したがって、この溝7は、このガスケットの外形と同様の外形を有することができ、例えば、溝7は、円形外形、又はより慣習的に、図に示すように、長方形外形を有する。1つの特定の実施形態では、このOリング・ガスケットの形成に使用する材料は、例えば、ゴム、シリコーン、ニトリル、又はIsoswiss(商標)及びIsochron(商標)ブランドによって作製したあらゆる他のエラストマを含む。圧縮部材は、かなり高い耐擦過性を有することを留意されたい。
【0023】
このデバイス11では、制動要素15はリングである。この制動要素15は、ポリマー、特に、頭文字「POM」又は名称「アセタール」によってより一般に公知であるポリオキシメチレンから作製することができる。この制動要素15は、例えば、一体部品であるが、互いに係合する複数部品によって形成することもできる。この制動要素15は、摩擦面を備え、摩擦面は、ベゼル4の内側壁の部分13の接触領域19と係合することを目的とし、この摩擦面及びこの部分13の両方は、相補形外形を有する。言い換えれば、接触領域19は、ほぼ完全に、制動要素15の摩擦面の形状を帯びている。この制動要素15は、その形状が本質的に四角形形状と同様である断面を備える。
【0024】
そのような制動要素は、好ましくは、
-0.001から0.1GPaの範囲内にある圧縮部材14の弾性係数を超え、好ましくは、60から80ショアの硬度及び20%の最大圧縮比に対応する、2,500から3,500のGPaの弾性係数;
-以下の条件:乾燥条件、湿潤条件、油状条件下で変動しない、(特に鉄鋼に対する)0.25から0.60の低い摩擦係数;
-特に制動要素がPOM製でありベゼルが鉄鋼製である場合に良好な結果をもたらしている実際的な適用例によって定義される、0.75u/kmの良好な耐摩耗性
を有する。
【0025】
全体として、制動要素は、特にPOM製である場合に、良好な疲労強度、良好な耐化学薬品性、良好なクリープ強度及び良好な耐温度性を有することに留意されたい。
【0026】
したがって、圧縮部材14は、制動要素15に対して、圧縮比としても公知である圧縮応力を加えることが観察されている。圧縮部材14のこの圧縮比は、ショア硬度又はこの圧縮部材14の断面の調節によって自由に適合させることができる。圧縮部材14のこの圧縮比は、ベゼル4の回転トルク、又は更にはベゼル4と中間部品3との間の摩擦トルクの強度の決定にも寄与する。
【0027】
言うまでもないが、本発明は、示した例に限定するものではなく、当業者には明らかであり得る様々な代替形態及び修正形態を本発明に対して行うことができる。
【符号の説明】
【0028】
1 時計ケース
3 中間部品
4 回転ベゼル
11 摩擦トルク生成デバイス
12 環状室
14 圧縮部材
15 制動要素