(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】液体ターゲットを利用した核種生産装置
(51)【国際特許分類】
G21G 1/08 20060101AFI20220607BHJP
G21G 1/10 20060101ALI20220607BHJP
G21G 4/08 20060101ALI20220607BHJP
G21K 5/08 20060101ALI20220607BHJP
G21K 5/00 20060101ALN20220607BHJP
【FI】
G21G1/08
G21G1/10
G21G4/08 Z
G21K5/08 R
G21K5/00 S
(21)【出願番号】P 2020111558
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2020-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2019-0090463
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518460417
【氏名又は名称】コリア・インスティテュート・オブ・ラディオロジカル・アンド・メディカル・サイエンシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 世暎
(72)【発明者】
【氏名】林 常茂
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲教▼徹
(72)【発明者】
【氏名】姜 周賢
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0094056(US,A1)
【文献】特表2009-527731(JP,A)
【文献】国際公開第2003/081604(WO,A1)
【文献】特開2009-047668(JP,A)
【文献】国際公開第2019/008665(WO,A1)
【文献】特開2018-190711(JP,A)
【文献】特表2007-508531(JP,A)
【文献】特表2007-536533(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00962942(EP,A1)
【文献】欧州特許第00752709(EP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0297554(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21G 1/08
G21G 1/10
G21G 4/08
G21K 5/08
G21K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体反応物が収容されることができるように構成される反応空間が備えられたチャンバ;
前記核反応以前の前記液体反応物及び前記核反応以後の液体生成物が一時的に収容されるように構成されるバイアル;
前記核反応以前の前記バイアルに収容された液体物質を吸い込み、吸い込んだ液体物質を前記チャンバに供給できるように駆動されるシリンジポンプ;
前記バイアル内部の放射性ガスが排出されることができるように構成される排気部
;
前記バイアルから前記放射性ガスが流出される場合、外部への漏れを防止することができるように前記バイアルを内部空間に収容する第1の遮蔽ボックス;
及び、
前記シリンジポンプ及び前記第1の遮蔽ボックスを内部空間に収容し、外部への放射性ガスの漏れを防止することができるように構成される第2の遮蔽ボックス;を含むことを特徴とする液体ターゲットを利用した核種生産装置。
【請求項2】
前記液体反応物は、液化ラジウム(Ra-226)を含み、
前記液体生成物は、液化ラジウム(Ra-226)及び液化アクチニウム(Ac-225)を含み、
前記放射性ガスは、ラドン(Rn)であることを特徴とする請求項1に記載の液体ターゲットを利用した核種生産装置。
【請求項3】
終端が前記チャンバの下側、前記バイアル、及び前記シリンジポンプと各々連結されることができるように分枝部を含んで構成された第1の流路;及び、
前記第1の流路の分枝部に備えられ、前記第1の流路で流体の移送経路を選択することができるように構成される第1の3-wayバルブ;をさらに含むことを特徴とする請求項
1または2に記載の液体ターゲットを利用した核種生産装置。
【請求項4】
前記液体生成物を移送させることができるように非活性気体を供給する非活性気体ソースをさらに含むことを特徴とする請求項
3に記載の液体ターゲットを利用した核種生産装置。
【請求項5】
終端が前記チャンバの上側、前記バイアル、及び前記非活性気体ソースと各々連結されることができるように分枝部を含んで構成される第2の流路;及び、
前記第2の流路の分枝部に備えられ、前記第2の流路で流体の移送経路を選択することができるように構成される第2の3-wayバルブ;をさらに含むことを特徴とする請求項
4に記載の液体ターゲットを利用した核種生産装置。
【請求項6】
前記第1の流路の分枝部、前記第1の3-wayバルブ、前記第2の流路の分枝部、及び前記第2の3-wayバルブは、前記第2の遮蔽ボックス内部に配置されることを特徴とする請求項
5に記載の液体ターゲットを利用した核種生産装置。
【請求項7】
前記第1の流路のうち前記第2の遮蔽ボックスと前記チャンバとの間に位置する部分を遮蔽することができるように構成される第1の遮蔽パイプ;及び、
前記第2の流路のうち前記第2の遮蔽ボックスと前記チャンバとの間に位置する部分を遮蔽することができるように構成される第2の遮蔽パイプ;をさらに含むことを特徴とする請求項
6に記載の液体ターゲットを利用した核種生産装置。
【請求項8】
前記液体反応物を前記チャンバにローディングする時、
前記第1の流路のうち前記シリンジポンプと前記チャンバの下側が通じることができるように前記第1の3-wayバルブの開放方向を調節し、
前記液体反応物が前記チャンバに移送されるに応じて前記第1の流路、前記チャンバ内部の反応空間及び前記第2の流路内部のガスが前記バイアルに移動した後、前記排気部に排出されることができるように前記第2の3-wayバルブの開放方向を調節することを特徴とする請求項
5に記載の液体ターゲットを利用した核種生産装置。
【請求項9】
前記核反応以後の前記液体生成物のアンローディング時、
前記非活性気体ソースから非活性気体を前記チャンバに吹き込むことができるように前記第2の3-wayバルブの開放方向を調節し、
前記液体生成物が前記バイアルに移送されるに応じて前記バイアル内部の気体が前記排気部に排出されることを特徴とする請求項
5に記載の液体ターゲットを利用した核種生産装置。
【請求項10】
前記排気部は、排気されたガスからラドンガスを捕集するラドン捕集部をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の液体ターゲットを利用した核種生産装置。
【請求項11】
前記排気部は、前記ラドンガスを貯蔵するラドンガス貯蔵部をさらに含み、少なくとも1回の半減期の間に前記ラドンを貯蔵するように構成されることを特徴とする請求項2に記載の液体ターゲットを利用した核種生産装置。
【請求項12】
前記液体生成物を分離及び精製することができるように構成される分離精製部をさらに含み、
前記分離精製部から分離された純粋液化ラジウムは、前記バイアルに回収して核反応に再使用できるように構成されることを特徴とする請求項2に記載の液体ターゲットを利用した核種生産装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体ターゲットを利用した核種生産装置に関し、より詳しくは、液化ターゲットを利用した核種生産時に発生する放射性ガスを処理することができる液体ターゲットを利用した核種生産装置に関する。
【背景技術】
【0002】
治療用放射性医薬品であるActinium-225を生産するためには226Ra(p、2n)225Acの核反応でRadium-226ターゲット物質に陽子を加速させて衝突させると、二つの中性子が放出されながらAc-225が生成される。この時に使われるRa-226物質は、一般的に固体ターゲットのうちパウダー形態のターゲットを使用するようになる。陽子が照射されたRa-226パウダーは、パウダーに含まれている核反応で生成されたAc-225を分離させるために一連の分離及び精製過程を経るようになる。そのために、Ra-226は、液化された形態で溶かすようになり、分離及び精製過程を経た後、再びAc-225を生産するための再使用のためにパウダー形態で作る過程を経るようになる。このようなパウダー形態のRa-226を利用してAc-225を生産する方法と関連して米国登録特許US6,680,993が開示されている。
【0003】
しかし、このような従来の技術は、Ac-225の生産のための一連の過程でパウダーと液化された状態に変化されるに応じてRa-226の量的損失を被るようになる。現在Ra-226は、約1600年の長い半減期を有しており、崩壊過程で不活性ガスであるラドンを放出する問題点があるため、処理及び貯蔵するのが難しかった。それによって、追加的な生産が中断された状態である。したがって、世界的に残り少ないRa-226を利用してAc-225を生産する過程でRa-226の損失を最小化することが好ましい。また、Ra-226を利用したAc-225の生産時、Ra-226から発生するRadonも放射線物質であるため、これを安全に処理すべき必要性が上がっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国登録特許US6,680,993(2004.01.20.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来のRa-226を利用して核反応でAc-225を生成する過程で発生できるRa-226の損失を最小化し、Ra-226から発生するRadonを安全に処理できる液体ターゲットを利用した核種生産装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題の解決手段として、液体反応物が収容されることができるように構成される反応空間が備えられたチャンバ、核反応以前の液体反応物及び核反応以後の液体生成物が一時的に収容されるように構成されるバイアル、核反応以前のバイアルに収容された液体物質を吸い込み、吸い込んだ液体物質をチャンバに供給できるように駆動されるシリンジポンプ、及びバイアル内部の放射性ガスが排出されることができるように構成される排気部を含む液体ターゲットを利用した核種生産装置が提供される。
【0007】
ここで、液体反応物は、液化ラジウム(Ra-226)を含み、液体生成物は、液化ラジウム(Ra-226)及び液化アクチニウム(Ac-225)を含み、放射性ガスは、ラドン(Rn)である。
【0008】
一方、バイアルから放射性ガスが流出される場合、外部へのs漏れを防止することができるようにバイアルを内部空間に収容する第1の遮蔽ボックスをさらに含む。
【0009】
一方、シリンジポンプ及び第1の遮蔽ボックスを内部空間に収容し、外部への放射性ガスの漏れを防止することができるように構成される第2の遮蔽ボックスをさらに含む。
【0010】
また、終端がチャンバの下側、バイアル、及びシリンジポンプと各々連結されることができるように分枝部を含んで構成された第1の流路、及び第1の流路の分枝部に備えられ、第1の流路で流体の移送経路を選択することができるように構成される第1の3-wayバルブをさらに含んで構成される。
【0011】
一方、液体生成物を移送させることができるように非活性気体を供給する非活性気体ソースをさらに含む。
【0012】
また、終端がチャンバの上側、バイアル、及び非活性気体ソースと各々連結されることができるように分枝部を含んで構成される第2の流路、及び第2の流路の分枝部に備えられ、第2の流路で流体の移送経路を選択することができるように構成される第2の3-wayバルブをさらに含む。
【0013】
さらに、第1の流路の分枝部、第1の3-wayバルブ、第2の流路の分枝部、及び第2の3-wayバルブは、第2の遮蔽ボックス内部に配置される。
【0014】
一方、第1の流路のうち第2の遮蔽ボックスとチャンバとの間に位置する部分を遮蔽することができるように構成される第1の遮蔽パイプ、及び第2の流路のうち第2の遮蔽ボックスとチャンバとの間に位置する部分を遮蔽することができるように構成される第2の遮蔽パイプをさらに含む。
【0015】
一方、液体反応物をチャンバにローディングする時、第1の流路のうちシリンジポンプとチャンバの下側が通じることができるように第1の3-wayバルブの開放方向を調節し、液体反応物がチャンバに移送されるに応じて第1の流路、チャンバ内部の反応空間及び第2の流路内部のガスがバイアルに移動した後、排気部に排出されることができるように第2の3-wayバルブの開放方向を調節する。
【0016】
また、核反応以後の液体生成物のアンローディング時、非活性気体ソースから非活性気体をチャンバに吹き込むことができるように第2の3-wayバルブの開放方向を調節し、液体生成物がバイアルに移送されるに応じてバイアル内部の気体が排気部に排出される。
【0017】
また、排気部は、排気されたガスからラドンガスを捕集するラドン捕集部をさらに含む。
【0018】
一方、排気部は、ラドンガスを貯蔵するラドンガス貯蔵部をさらに含み、少なくとも1回の半減期の間にラドンを貯蔵するように構成される。
【0019】
また、液体生成物を分離及び精製することができるように構成される分離精製部をさらに含み、分離精製部から分離された純粋液化ラジウムは、バイアルに回収して核反応に再使用できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明による液体ターゲットを利用した核種生産装置は、液化状態のターゲットを利用して核反応させ、核反応されない液化ターゲットを再使用して反応物の量的損失を最小化することができ、発生される放射性ガスを処理することができるため、安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による一実施例である液体ターゲットを利用した核種生産装置のブロック図である。
【
図2】本発明による一実施例である液体ターゲットを利用した核種生産装置の概念図である。
【
図7】アンローディング過程でラドンが排出される過程を示す概念図である。
【
図8】アクチニウムを分離及び精製するために生成物を移動させるステップを示す概念図である。
【
図9】再貯留ステップを実行する前、液化ラジウムを流動させた状態を示す。
【
図10】
図2での第2の遮蔽ボックスを廃棄するために密封する概念を示す。
【
図11】本発明による一実施例での第2の遮蔽ボックスとその内部の構成を示す切開斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例による液体ターゲットを利用した核種生産装置に対して、添付図面を参照して詳細に説明する。そして、以下の実施例の説明において、各々の構成要素の名称は、当業界で他の名称で呼ばれることができる。しかし、これらの機能的類似性及び同一性がある場合は、変形された実施例を採用しても均等な構成とみなすことができる。また、各々の構成要素に付加された符号は、説明の便宜のために記載される。しかし、これらの符号が記載された図面上の図示内容は、各々の構成要素を図面内の範囲に限定するものではない。同様に、図面上の構成に一部変形した実施例が採用されても機能的類似性及び同一性がある場合は、均等な構成とみなすことができる。また、当該技術分野の一般的な技術者水準に鑑みて、当然含まれるべき構成要素と認められる場合、これに対しては説明を省略する。
【0023】
以下、液体ターゲットは液化ラジウムであり、液化ラジウムに粒子ビームが照射されると、液化状態のRa-226でp、2n核反応が発生するようになり、液化状態のAc-225が生成されることを前提に説明する。また、生成物は、液体状態のRa-226とAc-225が混合されている状態であることを前提に説明する。また、放射性ガスは、Ra-226が崩壊されて持続的に発生するラドンガス(Radon)であることを前提に説明する。ただし、これに限定するものではなく、本発明は、核反応前、核反応後または持続的に放射性ガスが発生される核種を対象とすることができる。また、液化ラジウムはRadium Chloride(RaCl2)、液化アクチニウムはActinium Chloride(AcCl3)で例えて説明したが、これは一例に過ぎず、多様な有機液体を利用して液化させたラジウムが利用されることができる。
【0024】
図1は、本発明による一実施例である液体ターゲットを利用した核種生産装置のブロック図である。本図面を参照して本発明による各構成要素の概念及び連結関係に対して説明した後、
図2乃至
図9を参照して動作に対して詳細に説明する。
【0025】
図示されたように、本発明は、チャンバ100、バイアル200、シリンジポンプ300、ヘリウムソース400、排気部、アクチニウム分離及び精製部600、制御部700、及び放射性ガス遮蔽部900を含んで構成されることができる。
【0026】
チャンバ100は、核反応が起こることができる反応空間を提供するように構成される。チャンバ100は、内側に液体ターゲットが収容されることができる反応空間が備えられ、液体ターゲットの流出入のための流路が形成されることができる。また、粒子ビームが照射される一側には反応空間内部の環境が外部と隔離されることができるようにフォイル101形態で構成されるウィンドウ101が備えられることができる。チャンバ100の反応空間は、後述する第1の流路810及び第2の流路820と各々流体疎通されるように構成されることができ、液体ターゲットが出入できるように構成され、また、非活性気体が流出入されることができるように構成される。
【0027】
一方、以上で説明していないが、チャンバ100と連結されるビームラインは、真空状態で維持されることができ、チャンバ100内の反応空間110は、ビームラインと独立的に液化されたターゲットが流動できるようにビームラインと隔離されることができる。ビームラインとの隔離は、粒子ビーム10の照射経路上に金属材質で構成されるフォイル101が備えられてビームラインとチャンバ100を各々密封するように構成されることができる。一方、フォイル101がビームラインとチャンバ100の連結部分で各々の開口部を密封する場合、粒子ビーム10が照射されると、熱が発生するため、これを冷却するための別途の冷却ラインが備えられることができる。また、液体ターゲットが収容された反応空間で核反応が起こる間に、液体ターゲットを冷却するための水冷式冷却ラインが備えられることができる。しかし、このような冷却ラインは、一般的な液体ターゲットを利用した核種生産装置に広く使われている構成であるため、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0028】
バイアル200は、液化ターゲット及び核反応以後の生成物が一時的に貯留される空間である。液体ターゲットは、バイアル200からシリンジポンプ300を経てチャンバ100に流動されることができる。チャンバ100で核反応が行われた以後には、生成物がバイアル200に流動される。また、バイアル200は、生成物を液化ラジウムと液化アクチニウムに分離できるように構成される分離及び精製部と流体疎通されるように連結されることができる。また、バイアル200は、液体ターゲットのローディング及びアンローディング時、バイアル内部の圧力が維持されながらガスが排出されることができるように一側に開口が形成されることができる。
【0029】
シリンジポンプ300は、バイアル200内部に収容されている液化ラジウムをあらかじめ決められた量ほど吸い込んだ後に圧出できるように構成される。圧出された液化ラジウムは、チャンバ100の反応空間に移送されることができる。
【0030】
非活性気体ソース400は、液体ターゲットを利用した核種生産装置の流体を流動させることができるdriving forceを発生させることができるように構成される。非活性気体ソース400は、液体ターゲットまたはこれから発生される放射性ガスと反応しない安定性が高いガスが利用されることができる。例えば、非活性気体は、ヘリウム(He)である。ヘリウムソース400は、ヘリウムを流路上に吹き込んで液体を移動させ、またはバイアル200内部のガスを外部に排出するように構成されることができる。
【0031】
排気部は、ラジウムから持続的に発生されるラドンガスを排出することができるように構成される。排気部には別途の流動のための構成が備えられていなくても、液化ラジウムまたは液化生成物を流動させるに応じて圧力差によりガスが排出されることができるように構成される。排気部は、一側が第1の遮蔽ボックスと連結され、第2の遮蔽ボックスを貫通して備えられるガス排出流路830及びラドン捕集部500を含んで構成されることができる。また、ラドン捕集部500の構成の代わりにラドン貯蔵部が備えられることもできる。
【0032】
ラドン捕集部500は、捕集されたラドンを処理するための準備が実行されるように構成される。ラドン捕集部500は、バイアル200から排出されたガスが流入されることができるように構成される。ラドン捕集部500では極低温の環境でラドンガスのみを凝縮させ、その他のガスは通過するように構成される。凝縮されたラドンは、放射性廃棄物で廃棄できる。一方、ラドン捕集部500とは違ってラドン貯蔵部が備えられた場合、十分の半減期を経る時までラドンガス貯蔵部に保管した後、安定性が確保された以後に排出し、または十分な量の空気と希薄して外部に排出できる。
【0033】
アクチニウム分離及び精製部600は、液体生成物からアクチニウムを分離して精製することができるように構成される。アクチニウム分離及び精製部600は、別途の空間、例えば、グローブボックス(Glove Box)またはホットセル(Hot-cell)のような空間であり、ユーザが適切な過程を経てアクチニウムの分離及び精製を実行することができる。アクチニウム分離及び精製部600では液体生成物からアクチニウムを分離した以後、純粋液化ラジウムが再び回収されてバイアル200に移送させることができるように構成されることができる。回収された純粋液化ラジウムは、精製過程を経た後、核反応に再使用されることができる。
【0034】
制御部700は、液体ターゲットを利用した核種生産装置の全般的な動作を制御することができるように構成される。制御部700は、シリンジポンプ300、ヘリウムソース400などを入力によってまたはユーザによりあらかじめ設定された値で動作させることができる。また、制御部700は、後述するバルブの動作を制御することができるように制御入力を発生させることができる。また、図示されていないが、制御部700は、複数の地点に圧力、温度などの状態を測定することができるセンサーと連結されてモニタリングできるように構成されることができる。ただし、このような制御部700の構成は、多様に変形されて適用可能であるため、構成に対する詳細な説明は省略する。
【0035】
放射性ガス遮蔽部900は、液化ラジウムが移送される経路及びラドンガスが流動する空間を外部と隔離するように構成される。放射性ガス遮蔽部900は、ラドンガスの流動空間から流出されても外部空間の汚染を防止することができるように一定領域を隔離する。放射性ガス遮蔽部900は、第1の遮蔽ボックス910、第2の遮蔽ボックス920、第1の遮蔽パイプ930、及び第2の遮蔽パイプ940を含んで構成されることができる。一方、このような放射性ガス遮蔽部900の詳細な構成に対して、以下で
図2を参照して詳細に説明する。
【0036】
図2は、本発明による一実施例である液体ターゲットを利用した核種生産装置の概念図である。本図面を参照して、流路と放射性ガス遮蔽部900に対して詳細に説明する。
【0037】
まず、流路をみると、第1の流路810、第2の流路820、ガス排出流路830、及び生成物移送流路840が備えられることができる。
【0038】
第1の流路810は、バイアル200、シリンジポンプ300、及びチャンバ100の下側を連結することができ、一つの分枝部が備えられて前述したバイアル200、シリンジポンプ300及びチャンバ100が流体疎通されるように構成されることができる。第1の流路810の分枝部には、連結された3個の流路のうち流体の移送経路を選択的に開閉できるように第1の3-wayバルブ811が備えられることができる。
【0039】
第2の流路820は、バイアル200、ヘリウムソース400、及びチャンバ100の上側と連結されることができ、一つの分枝部が備えられて前述したバイアル200、ヘリウムソース400、及びチャンバ100の上側が流体疎通されるように構成されることができる。第2の流路820の分枝部には、連結された3個の流路のうち流体の移送経路を選択的に開閉できるように第2の3-wayバルブ821が備えられることができる。
【0040】
ガス排出流路830は、後述する第1の遮蔽ボックス910の一側とラドン捕集部500を連結してガスが移送されることができるように構成される。
【0041】
生成物移送流路840は、バイアル200とアクチニウム分離及び精製部を連結して構成される。
【0042】
放射性ガス遮蔽部900は、放射性物質が流出されても生産施設全体が汚染されることを防止することができるように構成される。放射性ガス遮蔽部900は、第1の遮蔽ボックス910、第2の遮蔽ボックス920、第1の遮蔽パイプ930、第2の遮蔽パイプ940、第3の遮蔽パイプ950、及び第4の遮蔽パイプ960を含んで構成されることができる。
【0043】
第1の遮蔽ボックス910は、バイアル200の外側でバイアル200を一次的に遮蔽するために備えられる。一方、バイアル200は、一側に開口が形成されて遮蔽ボックス内部の空間とバイアル200内部の空間が流体疎通されるように構成され、バイアル200内部の圧力が高まる場合、自然にバイアル200内部に収容されていたガスがバイアル200外部に移動されることができるように構成されることができる。バイアル200の開口は、ガスのみが外部に流出されることができるように上側に形成されることが好ましい。
【0044】
第2の遮蔽ボックス920は、相対的にラドンガスの流出危険が高い領域に対して二重遮蔽できるように構成される。第2の遮蔽ボックス920は、第1の遮蔽ボックス910、シリンジポンプ300、第1の3-wayバルブ811、及び第2の3-wayバルブ821を内側に収容することができるように構成される。
【0045】
前述した第1の遮蔽ボックス910及び第2の遮蔽ボックス920は、ラドンガスが正常な流動経路から流出されても、外部に放射線が到達できないように十分の遮蔽力を有する材質で構成されることができる。
【0046】
一方、第1の流路810、第2の流路820、ガス排出流路830、及び生成物移送流路840は、第1の遮蔽ボックス910及び第2の遮蔽ボックス920を貫通して遮蔽ボックス内部と外部の構成要素を連結することができる。各々の流路が遮蔽ボックスを貫通する部分は、完壁にシーリングされて固定されることができる。
【0047】
複数の遮蔽パイプ930、940、950、960は、遮蔽ボックス910、920外部に配置される流路を包みながら外部と遮蔽されることができるように構成される。第1の遮蔽パイプ930は、第2の遮蔽ボックス920外部に配置される第1の流路810の一部分を遮蔽することができるように構成される。第2の遮蔽パイプ940は、第2の遮蔽ボックス920外部に配置される第2の流路820の一部分を遮蔽することができるように構成される。第3の遮蔽パイプ950は、第2の遮蔽ボックス920外部に配置されるガス排出流路830を遮蔽することができるように構成される。第4の遮蔽パイプ960は、第2の遮蔽ボックス920の外部に配置される生成物移送流路840を遮蔽することができるように構成される。
【0048】
以下、
図3乃至
図9を参照して本発明による核種生産装置の作動に対して詳細に説明する。
【0049】
図3及び
図4は、ローディング過程を示す概念図である。
【0050】
図3に示すように、ローディング時にはバイアル200に収容されている液化ラジウム1をシリンジポンプ300が定量を吸い込んで収容する。このとき、シリンジポンプ300で吸い込む液化ラジウム1の量は、チャンバ100内に収容される量とシリンジポンプ300からチャンバ100までの流路に停滞される液化ラジウム1の量を考慮して決定されることができる。
図4に示すように、シリンジポンプ300が液化ラジウム1を圧出すると、流路に沿って移動した後にチャンバ100内に貯留される。また、チャンバ100内部に液化ラジウム1が収容されるに応じてラドンを含むガスが
図4上の上側流路を介してバイアルに移動され、バイアルの一側に備えられている流路を介して排出されてラドン捕集部500を通過するようになる。
【0051】
図5は、核反応過程を示す概念図である。準備過程としてチャンバ100に液化ラジウム1が貯留された場合、液化ラジウム1の流動を防止するためにシリンジポンプ300とチャンバ100との間のバルブを閉鎖することができる。また、核反応途中に上昇する圧力により放射性物質が逆流することを防止するために、チャンバ100とヘリウムソース400との間のバルブを閉鎖することができる。以後、粒子ビームを反応空間110に照射して核反応を起こす。一方、ヘリウムソース400とチャンバ100との間のバルブが開いている場合は、ヘリウムソースが作動して反応空間110内部の圧力が維持されることができる。
【0052】
【0053】
アンローディング時は、反応空間110からバイアル200に向かう流路が開放されるようにバルブを操作し、ヘリウムガス4を反応空間110内部に吹き込んで生成物をバイアル200に流動させる。このとき、反応空間110及び反応空間110からバイアル200までの流路に生成物が残存しないように十分な量のヘリウムを吹き込むことが好ましい。一方、ヘリウムガス4は、反応空間110の上側と連結された第2の流路820を介して反応空間110に流入され、液化ラジウム1は、反応空間110の下側と連結されている第1の流路810を介して流動されることができる。したがって、反応空間110内部にヘリウムガス4を吹き込むと、自然に下側で液化状態の生成物がチャンバ100外部に排出されることができる。
【0054】
図7は、アンローディング過程でラドンが排出される過程を示す概念図である。
【0055】
図示されたように、アンローディングステップの実行中、バイアル内部に液化生成物が流入されるに応じてバイアル200内部のガスがガス排出流路830に沿って排出されてラドン捕集部500を通過するようになる。以後、ラドン捕集部500ではヘリウムガス4とラドン3ガスが共に混合された気体からラドン3ガスのみを捕集し、その他のガスは外部に排出するようになる。ラドンが捕集されると、前述したように、液化された状態で放射性廃棄物で処理されることができる。また、図示されていないが、ラドン捕集部500が備えられていない場合、ラドンを所定時間の間に貯蔵し、または十分な量の空気と希薄して外部に排出できる。
【0056】
図8は、アクチニウムを分離及び精製するために液化生成物を移送させるステップを示す概念図である。
【0057】
図示されたように、アクチニウムの分離及び精製のためにバイアルから精製及び分離のための空間に液化生成物を移送させる。具体的に、バイアル200からアクチニウム分離及び精製部600との間の生成物移送流路840に備えられているバルブを開放し、バイアル200にヘリウムガス4を吹き込んで生成物をアクチニウム分離及び精製部600に移送する。アクチニウム分離及び精製部600では液化ラジウム1と液化アクチニウム2が互いに分離されることができる。アクチニウムの精製は、分離されたアクチニウムを移送した後、医療目的として使用することができるように不純物を除去する等、適切に精製する過程が実行される。
【0058】
図9は、再貯留ステップを実行する前、液化ラジウムを流動させた状態を示す。
【0059】
液化アクチニウム2が分離された残余液化ラジウム1は、純粋液化ラジウムになることができるように精製過程を経るようになり、アクチニウムとの分離過程で増加された液体を濃縮させて定量で作った後、バイアル200に再び移送される。以後、ローディングステップから生産工程が開始されて繰り返し実行されることができる。一方、再貯留ステップで純粋液化ラジウムがバイアルに貯留される場合、ローディングステップ及びアンローディングステップと同様に、増加する圧力によってガスがガス排出流路830に沿ってバイアルの外部に排出されるように構成されることができる。したがって、再貯留過程でも自然にラドンを含むガスの排出が行われるようになる。一方、再貯留時は、ヘリウムガスを利用して純粋液化ラジウムをバイアルに移送させることができる。ただし、前述した純粋液体ラジウムの移送方法は、一例に過ぎず、ヘリウムガス以外の多様な方法で実行されることができる。
【0060】
以下、放射性液体及び放射性ガスが正常な流動経路から外れて第2の遮蔽ボックス内部に流出された場合、第2の遮蔽ボックスを廃棄する概念に対して説明する。核種生産装置の使用中、流路のうち一部が破損され、または第2の遮蔽ボックス内部に備えられた構成要素が破損される場合、正常な流路から液体及び気体が流出されることができる。放射性物質のうち、特にラジウムの場合、半減期が1602年と知られており、完全除染も困難であるため、装置の補修時に安定性を確保しにくい。したがって、本発明では放射性液体が流出されても、第2の遮蔽ボックスをそのまま密封して廃棄するようになるため、外部の汚染を防止しながら装置を補修することができるようになる。
【0061】
図10は、
図2での第2の遮蔽ボックスを廃棄するために密封する概念を示す。
【0062】
図示されたように、第2の遮蔽ボックス920内部で放射性物質(ラジウム2またはラドン3)の流出が発生した場合、第2の遮蔽ボックスと連結されている全ての流路を切断して密封し、第1の遮蔽パイプ930、第2の遮蔽パイプ940、第3の遮蔽パイプ950、及び第4の遮蔽パイプ960を密封して切断した後、第2の遮蔽ボックス920内部に備えられた構成と共に廃棄できる。結局、放射性物質が流出されても、追加で遮蔽できる構成が備えられて汚染領域が拡張されることを防止することができる。以後、汚染された第2の遮蔽ボックス920を密封して廃棄し、新しい第2の遮蔽ボックス920を含む部品に交替することができ、交替作業時も作業者の被曝を防止することができるようになる。
【0063】
一方、制御部では、放射性物質の流出が、核種生産装置で圧力センサー値をモニタリングして圧力が一定水準以下に低くなって回復しない場合、流出が発生したと判断されることができる。
【0064】
図11は、本発明による一実施例での第2の遮蔽ボックスとその内部の構成を示す切開斜視図である。
【0065】
放射性ガス遮蔽部900の第1の遮蔽ボックス910と第2の遮蔽ボックス920は、直方体状で構成され、各々の壁が所定厚さを有するように構成されることができる。第2の遮蔽ボックス920の内側一面には他の構成要素が固定されることができるように構成される。
図11の内部には、一側内壁に第1の遮蔽ボックス910、シリンジポンプ300、第1の流路810の一部、第2の流路820の一部、第1の3-wayバルブ811、及び第2の3-wayバルブ821が固定されている構成が開示されている。
【0066】
第1の遮蔽ボックス910は、内部にバイアル200が備えられることができるように構成され、前述したように、第1の遮蔽ボックス910の一側壁を貫通しながら第1の流路810、第2の流路820、及び生成物移送流路840が連結されることができる。ガス排出流路830は、第1の遮蔽ボックス910の一側に連結され、バイアル200から排出されたガスが第1の遮蔽ボックス910内部の圧力が高まる場合、自然にガス排出流路に排出することができるように構成される。
【0067】
本発明による核種生産装置の使用中、第1の遮蔽ボックス910内部で放射性ガスが流出された場合、具体的に放射性ガスの流出が発生し、または液状放射性物質が流出されてこれから放射性ガスが発生するようになった場合、外部へ放射性ガスが拡散されることを防止することができる。放射性ガスが流出された場合、第2の遮蔽ボックス920と連結されている多数の遮蔽パイプを密封し、第2の遮蔽ボックス920自体を廃棄することができる。
【0068】
以上で説明したように、本発明による液体ターゲットを利用した核種生産装置は、液化状態のターゲットを利用して核反応させ、核反応されない液化ターゲットを再使用して反応物の損失を最小化することができ、発生される放射性ガスを処理することができるため、安全性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0069】
1:液化ラジウム
2:液化アクチニウム
3:ラドン
4:ヘリウムガス
10:粒子ビーム
100:チャンバ
101:フォイル
110:反応空間
200:バイアル
300:シリンジポンプ
400:ヘリウムソース
500:ラドン捕集部
600:アクチニウム分離及び精製部
700:制御部
810:第1の流路
811:第1の3-wayバルブ
820:第2の流路
821:第2の3-wayバルブ
830:ガス排出流路
840:生成物移送流路
900:放射性ガス遮蔽部
910:第1の遮蔽ボックス
920:第2の遮蔽ボックス
930:第1の遮蔽パイプ
940:第2の遮蔽パイプ
950:第3の遮蔽パイプ
960:第4の遮蔽パイプ