(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】携行型時計へのアクセスをセキュアにする方法
(51)【国際特許分類】
G06F 21/32 20130101AFI20220607BHJP
G06F 21/36 20130101ALI20220607BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220607BHJP
【FI】
G06F21/32
G06F21/36
G06T7/00 510Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020193065
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2020-11-20
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591260638
【氏名又は名称】チソット・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】エドアルド・フランツィ
【審査官】岸野 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-058269(JP,A)
【文献】特開平10-289210(JP,A)
【文献】特開2011-253340(JP,A)
【文献】特開2017-027594(JP,A)
【文献】特表2010-522379(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079852(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/209587(WO,A1)
【文献】特表2009-544108(JP,A)
【文献】特表2007-519435(JP,A)
【文献】特開2016-077359(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0017785(US,A1)
【文献】特表2021-519937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 21/32
G06F 21/36
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携行型時計(100)へのアクセスをセキュアにする方法であって、
前記携行型時計(100)が、携行型時計(100)の着用者と携行型時計(100)に含まれるグラフィック表現との間のやりとりに基づいて携行型時計(100)の機能に対するアクセスの権限を与えることを意図して、携行型時計(100)の着用者を認証する認証ステップ(10)と、及び
前記携行型時計(100)が、機能へのアクセスの権限を保持/剥奪することを意図して、携行型時計の着用者の少なくとも1つのバイオメトリックデータアイテムに基づいて決められるデジタルデータアイテムの有効性を検証することによって、携行型時計の着用者のアイデンティティーを定期的にチェックする定期的チェックステップ(20)とを含
み、
前記定期的チェックステップ(20)は、前記携行型時計(100)が、着用者のアイデンティティーチェックのために生成されるデジタル識別アイテムを検証する検証サブステップ(28)を含み、
前記検証サブステップ(28)は、前記携行型時計(100)が、前記デジタル識別アイテムが基準デジタル識別アイテムと実質的に同じ又は同じ場合に、アクセス権限を保持するアクセス権限保持サブ段階(30)を行う比較段階(29)を含み、
前記基準デジタル識別アイテムは、前記着用者が認証された後に、前記デジタル識別アイテムと同様にして前記携行型時計(100)によって生成される
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記認証ステップ(10)は、
前記携行型時計(100)が、前記携行型時計(100)の視覚的データブロードキャスト用インタフェース(3)上にグラフィック表現(41)を提示する提示サブステップ(11)を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記認証ステップ(10)は、
前記携行型時計(100)が、前記着用者に、着用者を識別することを意図して、限定された時間間隔内にて、着用者の識別コードに対応する、前記グラフィック表現(41)の少なくとも2つの識別部分のシーケンスを選択
させる選択サブステップ(14)を含む
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記認証ステップ(10)は、
前記携行型時計(100)が、選択されたシーケンスを検証する検証サブステップ(16)を含む
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記定期的チェックステップ(20)は、携行型時計(100)が備える少なくとも1つのマルチスペクトルバイオメトリック皮膚センサー(35)によって、前記マルチスペクトルバイオメトリック皮膚センサー(35)に近接する着用者の皮膚の部分の複数の画像を取得する取得サブステップ(21)を含み、
前記画像は、前記皮膚の部分に含まれる前記少なくとも1つのバイオメトリックデータアイテムを含む
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記定期的チェックステップ(20)は、
前記携行型時計(100)が、前記少なくとも1つのバイオメトリックデータアイテムに基づいてデジタル識別アイテムを生成する生成サブステップ(25)を含む
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記取得サブステップ(21)は、異なる波長を用いて皮膚の部分を照らす照明段階(22)を含む
ことを特徴とする請求項5
、及び、請求項5を引用する請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記取得サブステップ(21)は、異なる波長を用いて照らされた皮膚の部分の画像を捕捉する捕捉段階(23)を含む
ことを特徴とする請求項5
、及び、請求項5を引用する請求項6~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記生成サブステップ(25)は、取得された画像に含まれる前記皮膚の部分に関連する前記少なくとも1つのバイオメトリックデータアイテムを特徴づける特徴づけ段階(26)を含む
ことを特徴とする
、請求項5を引用する請求項6
に記載の方法。
【請求項10】
前記生成サブステップ(25)は、前記バイオメトリックデータアイテムの特徴づけに基づいてデジタル識別アイテムを設計する設計段階(27)を含む
ことを特徴とする請求項6
、及び、請求項6を引用する請求項7~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記バイオメトリックデータアイテムは、皮膚の血管網又はテクスチャに関連するものである
ことを特徴とする請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
携行型時計(100)へのアクセスをセキュアにするシステム
(1)であって、
請求項1~
11のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成しており、
当該システム(1)は、処理ユニット(2)、バイオメトリックセンサー(35)、入力インタフェース(34)及び視覚的データブロードキャスト用インタフェース(3)を備え、これらは互いに接続されている
ことを特徴とするシステム。
【請求項13】
前記バイオメトリックセンサー(35)は、マルチスペクトルバイオメトリック皮膚センサーである
ことを特徴とする請求項
12に記載のシステム。
【請求項14】
請求項
12及び
13のいずれか一項に記載のシステム(1)を備える
ことを特徴とする、携行型時計(100)、特に、コネクテッドタイプの機械式携行型時計(100)。
【請求項15】
請求項1~
11のいずれか一項に記載の方法を実行するためのプログラムコード命令を含み、
処理ユニット(2)によって実行される
ことを特徴とするコンピュータープログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携行型時計(例、腕時計、懐中時計)へのアクセスをセキュア(安全)にする方法及びこのような方法を実装するシステムに関する。
【0002】
本発明は、さらに、このようなシステムを備える携行型時計、そして、コンピュータープログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
携行型時計には、着用者が用いることができる一連の機能がある。このような機能は、時刻や日付の設定に加えて、着用者に固有なものでありカスタマイズされたサービスにアクセスするために有用であるような秘密データ又は個人的なデータの使用に関連することがある。これらのデータは、例えば、キー、証明(certificate)、認証コード、パスワード及びPINであり、これらは、携行型時計をプライベートな企業ネットワークにセキュアに接続したり、銀行サーバー、署名及び/又は暗号化された電子メールを送受信するためのセキュアなメッセージングシステムのようなセキュアなサーバーに関わる認証に用いられたりする。したがって、このような携行型時計の機能の使用に対するアクセスをセキュアにすることができることが重要であることを理解することができる。
【0004】
このために、従来技術では、追加の認証ステップを実装することなどによってアクセスの権限を与える認証基準を強化することによって、携行型時計へのアクセス、特に、携行型時計の機能へのアクセス、をセキュアにすることを意図した方法が知られている。
【0005】
しかし、このような方法の主要な課題の1つは、携行型時計の着用者が認証された後に、特にその携行型時計が盗まれた場合に、任意の個人がその携行型時計の機能にアクセスできてしまうということに関わる。
【0006】
代替的手法、特に、従来技術にある問題がないもの、を見出す必要性があることを理解することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような状況で、本発明は、信頼性があり堅牢性が高いような、携行型時計へのアクセスをセキュアにする方法を提案することを目的とする。
【0008】
このような方法には、自動的に、透過性が高く、着用者に対して非侵襲的に、携行型時計の着用者の識別を確実にするという利点がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これを達成するために、本発明は、携行型時計へのアクセスをセキュアにする方法に関し、この方法は、
- 携行型時計の着用者と携行型時計に含まれるグラフィック表現との間のやりとりに基づいて携行型時計の機能に対するアクセスの権限を与えることを意図して、携行型時計の着用者を認証する認証ステップと、及び
- 機能へのアクセスの権限を保持/剥奪することを意図して、携行型時計の着用者の少なくとも1つのバイオメトリックデータアイテムに基づいて決められるデジタルデータアイテムの有効性を検証することによって、携行型時計の着用者のアイデンティティーを定期的にチェックする定期的チェックステップと
を含む。
【0010】
他の実施形態においては、以下の特徴がある。
- 前記認証ステップは、携行型時計の視覚的データブロードキャスト用インタフェース上にグラフィック表現を提示する提示サブステップを含む。
- 前記認証ステップは、着用者を識別することを意図して、限定された時間間隔内にて、着用者の識別コードに対応する、前記グラフィック表現に含まれる少なくとも2つの識別部分のシーケンスを選択する選択サブステップを含む。
- 前記認証ステップは、選択されたシーケンスを検証する検証サブステップを含む。
- 前記定期的チェックステップは、携行型時計が備える少なくとも1つのマルチスペクトルバイオメトリック皮膚センサーによって、前記マルチスペクトルバイオメトリック皮膚センサーに近接する着用者の皮膚の部分の複数の画像を取得する取得サブステップを含み、前記画像は、前記皮膚の部分に含まれる前記少なくとも1つのバイオメトリックデータアイテムを含む。
- 前記定期的チェックステップは、前記少なくとも1つのバイオメトリックデータアイテムに基づいてデジタル識別アイテムを生成する生成サブステップを含む。
- 前記定期的チェックステップは、着用者のアイデンティティーチェックを予期して生成されるデジタル識別アイテムを検証する検証サブステップを含む。
- 前記検証サブステップは、前記デジタル識別アイテムが基準デジタル識別アイテムと実質的に同じ又は同じ場合に、アクセス権限を保持するアクセス権限保持サブ段階を行う比較段階を含む。
- 前記取得サブステップは、異なる波長を用いて皮膚の部分を照らす照明段階を含む。
- 前記取得サブステップは、異なる波長を用いて照らされた皮膚の部分の画像を捕捉する捕捉段階を含む。
- 前記生成サブステップは、取得された画像に含まれる前記皮膚の部分に関連する前記少なくとも1つのバイオメトリックデータアイテムを特徴づける特徴づけ段階を含む。
- 前記生成サブステップは、前記バイオメトリックデータアイテムの特徴づけに基づいてデジタル識別アイテムを設計する設計段階を含む。
- 前記バイオメトリックデータアイテムは、皮膚の血管網又はテクスチャに関連するものである。
【0011】
本発明は、さらに、携行型時計へのアクセスをセキュアにするシステムに関し、当該システムは、前記方法を実行するように構成しており、処理ユニット、バイオメトリックセンサー、入力インタフェース及び視覚的データブロードキャスト用インタフェースを備え、これらは互いに接続されている。
【0012】
好ましいことに、前記バイオメトリックセンサーは、マルチスペクトルバイオメトリック皮膚センサーである。
【0013】
本発明は、さらに、このようなシステムを備える、携行型時計、特に、コネクテッドタイプの機械式携行型時計、に関する。
【0014】
本発明は、さらに、前記方法におけるステップを実行するプログラムコード命令を含み、処理ユニットによって実行されるコンピュータープログラムに関する。
【0015】
添付の図面を参照しながら例示的な下記の説明を読むことによって、他の特徴及び利点が明確になるであろう。なお、これに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る、携行型時計へのアクセスをセキュアにするシステムを備える携行型時計の概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る、携行型時計へのアクセスをセキュアにする方法に関連する論理図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、携行型時計100、特に、携行型時計100の機能、へのアクセスをセキュアにするシステムを備える携行型時計100を示している。このようなシステム1は、携行型時計100内に備えられ、好ましくは機械式携行型時計100に接続されるハイブリッド表示を行うものである。これに関連して、この電子デバイス100は、携行型時計ケースのような本体と、ブレスレットのような取り付け要素とを備え、この取り付け要素によって、この本体が着用者の手首などに固定されることが可能になる。このシステム1は、特に、以下を備える。なお、これらに限定されず、他を排除するわけではない。
- ハードウェア及びソフトウェア資源を備える処理ユニット2、特に、メモリー要素6と連係する少なくとも1つのプロセッサー
- 第1のアナログ表示コンポーネント及び第2のデジタル及び/又は英数字表示コンポーネントを備えるハイブリッドディスプレー表盤のような視覚的データブロードキャスト用インタフェース
- スピーカのような音データブロードキャスト用インタフェース4
- 無線通信インタフェース5(例えば、セルラー、無線LAN、Bluetooth)
- キーパッドのような入力インタフェース34、又は具体的には、視覚的データブロードキャスト用インタフェース3などにおいて備えられるタッチ感応インタフェース
- 少なくとも1つの画像センサー36と、少なくとも1つのマルチスペクトル光源37と、及び少なくとも1つの熱画像センサー38とを備えるバイオメトリックセンサー35、特に、この実施形態においてはマルチスペクトル皮膚センサーであり、ここで、この光源37は、300~1100nmの波長の光放射を発することができ、さらに、この光源37は、レーザータイプであることができる。
【0018】
このシステム1では、処理ユニット2は、特に、視覚的データブロードキャスト用インタフェース3及び音データブロードキャスト用インタフェース4、入力インタフェース34、そして、無線通信インタフェース5及びバイオメトリックセンサー35に接続される。また、バイオメトリックセンサー35が電子デバイス100の本体内及び/又は取り付け要素内に配置されることにも留意すべきである。
【0019】
電子デバイス100にて実装されるこのシステム1は、離散的に、着用者と携行型時計100との直接の介入/やりとりなしに、携行型時計の認証対象着用者のアイデンティティーをチェックすることができ、これによって、着用者は、再度認証を受ける必要なく、着用している間のいつでも携行型時計100の機能を使用することができる。そして、少なくとも1つのバイオメトリックデータアイテムに基づいて、着用者を透過性が高く離散的な形態で識別する。本実施形態の範囲内にて、バイオメトリックデータアイテムは、着用者の皮膚の部分にあり、皮膚の血管網、又はさらには皮膚のテクスチャであることができる。身体を覆う着用者のこの皮膚には、異なる深さに位置する、皮膚の構成要素の異なる波長(スペクトル)における吸収及び反射の特性に関連する特異性があり、このような特異性は、人間の眼によって自然には見られないために当業者によってあまり容易に想像することができない。簡略化されたモデルでは、皮膚には、表面上に位置する「表皮」として知られる半透明性である層がある。この「表皮」の下には、「真皮」として知られる層がある。この「真皮」にはとりわけ、血管(又は血管網)があり、血管においては、ヘモグロビンが赤色に近い高波長、例えば、760~930nm、において反射性が高く、このことによって、着用者の皮膚の血管網を出現させ又は検出することが可能になる。言い換えれば、皮膚を構成している表皮と真皮の構成要素の光吸収スペクトルは、電磁波長に応じて均一ではなく、皮膚の外観と色は、このような現象の複雑な組み合わせに起因する。このように、この着用者の皮膚のテクスチャのようなバイオメトリックデータアイテムを検出したり明らかにしたりする必要がある場合、赤色の付近の波長に制限される光源によって皮膚を照らすことができ、このことによって、亀裂の底部における影現象を消失させる傾向がある。実際に、赤色の付近の波長が表皮を通って真皮で反射することによって逆投影効果が発生し、他方では、赤色から遠い色、典型的には紫色(400nm)と黄橙色(600nm)の間の波長帯、の色スペクトルの光源による皮膚の照明が、これらの亀裂の底部における影の出現によって、皮膚におけるこれらの亀裂を強く対比させることを可能にする。なお、皮膚に含まれるバイオメトリックデータアイテムの識別を、好ましくは照明なしで、熱画像センサー38を用いることによって向上させることができる。例えば、特に、この着用者の関心事の皮膚の部分に毛がある場合に、皮膚のテクスチャを検出するときに、熱画像センサー38を用いることによって、亀裂を明らかにすることが可能になる。一般的には、この亀裂は周囲の皮膚よりも温かく、毛はこの周囲の皮膚よりも冷たい。したがって、この構成では、毛は皮膚のテクスチャにおける亀裂と熱的に区別することができる。それらの間の温度差のためである。
【0020】
なお、検出されるべき又は明らかにされるべきバイオメトリックデータアイテムに応じた所定の波長の照射の下で、熱画像の捕捉を行うことができる。
【0021】
したがって、本発明の原理によると、着用者の定期的な識別が着用者の皮膚の部分の画像に含まれる少なくとも1つのバイオメトリックデータアイテムに基づいて行われ、この皮膚の部分は、所望のバイオメトリックデータアイテムを含む画像を捕捉するために、必要に応じて、適宜異なる波長にて、照らすことができることを理解することができる。このように、異なる波長で実施される照明によって、又は熱画像を捕捉する場合などに照明なしで、これらの画像に含まれるこのバイオメトリックデータアイテムを検出することができる。
【0022】
このシステム1では、処理ユニット2のメモリー要素6は、あらかじめ定められた/生成された基準デジタル識別アイテムに関連するデータを含む。また、これらのメモリー要素6は、デジタル画像処理アルゴリズム39を含み、これは、着用者の皮膚に関連しその着用者の皮膚の部分に関連する画像に含まれる少なくとも1つのバイオメトリックデータアイテムを特徴づけることを可能にする。また、これらのメモリー要素6は、基準デジタル識別アイテム、さらには、着用者のアイデンティティーチェックの範囲内で定期的に生成されるデジタル識別アイテム、を生成する生成アルゴリズム40を含む。
【0023】
処理ユニット2のこれらのメモリー要素6は、さらに、少なくとも1つのグラフィック表現41を含み、これは、着用者が携行型時計100の機能にアクセスできるように着用者の認証プロセスに寄与することを意図されている。このグラフィック表現41は、例えば、少なくとも1つのオブジェクトを含む画像であることができる。例として、この画像は、家屋、車両、及び/又は月などの天体のような複数のオブジェクトを含む風景を定めるものである。明らかに、この画像が少なくとも1つのオブジェクトを含む別のタイプの風景を定めるものであることができることを理解することができる。また、これらのメモリー要素6は、認証プロセスを構成しているときに前に携行型時計の着用者によって選択されていたこのグラフィック表現41の基準識別部分を含む基準シーケンス42に関連するデータを含む。
【0024】
このような携行型時計100のシステム1は、
図2に示している、携行型時計100へのアクセスをセキュアにする方法、特に、この携行型時計100の機能へのアクセスをセキュアにする方法、を実装することができる。このような方法は、離散的に、すなわち、非侵襲的に、そして自動的に、認証対象ユーザーのアイデンティティーをチェックすることを目的とし、これによって、再度認証を受ける必要なく、携行型時計100を着用している間はいつでも携行型時計100の機能を用いることができる。携行型時計100の機能は、時間、日付をセットすること、又はさらにはタイマー、ナビゲーションシステム、歩数計、活動ロガー、メッセージングシステムを用いること、着用者に固有でありカスタマイズされたサービスにアクセスするために有用な秘密データ又は個人的なデータへのアクセスなどに関連することができる。
【0025】
この方法は、前記携行型時計100に含まれるグラフィック表現、特に、携行型時計100の着用者と視覚的データブロードキャスト用インタフェース3上に/内に表示されるグラフィック表現との間のやりとりに基づいてこの携行型時計100の機能に対するアクセスの権限を与えることを意図して、携行型時計100の着用者を認証する認証ステップ10を含む。このステップ10は、着用者がそのアイデンティティーを証明することを可能にする。特に、このステップ10は、前記携行型時計100の視覚的データブロードキャスト用インタフェース3上にグラフィック表現41を提示するサブステップ11を含む。このサブステップ11は、この認証の実装のために想定される、視覚的データブロードキャスト用インタフェース3上/内にグラフィック表現41の表示を生成する表示生成段階12を含む。この段階12は、この認証の実装のために想定される、視覚的データブロードキャスト用インタフェース3上に表示される少なくとも2つのグラフィック表現41のサンプルからグラフィック表現41をユーザーが選択する選択サブ段階を含むことができる。なお、携行型時計100の機能にアクセスするために、認証プロセスの構成の間に着用者が選択したグラフィック表現41を着用者のみが知っていることに留意すべきである。
【0026】
そして、前記提示サブステップ11は、生成段階12が行われた後のカウントダウンアクティブ化段階13を含む。言い換えれば、ブロードキャスト用インタフェース3上にグラフィック表現41が提示された後に、あらかじめ構成可能なカウントダウンがアクティブ化する。このような段階13は、このカウントダウンによって定められる限定された時間間隔から、ブロードキャスト用インタフェース3上に/内に表示されるグラフィック表現41の識別部分のシーケンスの入力に必要な推定時間をカウントダウンするために役立つ。
【0027】
その後に、認証ステップ10は、前記着用者を識別することを意図して、限定された時間間隔内にて、着用者の識別コードに対応する、前記グラフィック表現41の少なくとも2つの識別部分のシーケンスを選択する選択サブステップ14を含む。このような識別部分は、ブロードキャスト用インタフェース3上に/内に提示されるグラフィック表現41において直接見ることができない。これらの状況で、選択サブステップ14は、前記グラフィック表現41におけるシーケンスの前記識別部分の少なくとも1つを可視化する可視化段階15を含む。この可視化段階15は、前記少なくとも1つの識別部分を含むために適した、グラフィック表現41の少なくとも1つの関心領域を選択する選択サブ段階を含む。この選択サブ段階の間に、着用者は、例えば、第1の関心領域又は第2の関心領域を選択する。これは、入力インタフェース35を用いてこの第1のゾーン又はこの第2のゾーンを拡大することによって行う。この第1又は第2の関心領域が選択された後に、識別部分が見えるようになる。この構成では、シーケンスを作成/形成するために使用可能な各識別部分を、入力インタフェース35を用いて選択することができる。
【0028】
なお、シーケンスが順序づけられたいくつかの数の識別部分を含み、選択された関心領域が、例えば、シーケンスにおいて2つの識別部分のみが順に順序づけられた3つの識別部分を含むことができる。これに関連して、残りの識別部分がシーケンスの一部であることを必要とし、その識別部分の選択は、グラフィック表現41の別の関心領域にて行われる。
【0029】
そして、認証ステップ10は、選択されたシーケンスの検証サブステップ16を含む。この検証サブステップ16は、識別部分のシーケンスの選択がカウントダウンによって定められる時間間隔内にて行われたことをチェックするチェック段階17を含む。この選択がこの限定された時間間隔内にて行われるかぎり、検証サブステップ16は、処理ユニット2によって実装される、前記選択されるシーケンスと基準シーケンス42とを比較する比較ステップ18を含む。この比較段階18は、前記シーケンスが基準シーケンス42と実質的に異なる又は異なる場合に、携行型時計100の機能へのアクセスを禁止するサブ段階を含む。逆に、この比較段階18は、前記シーケンスが基準シーケンス42と実質的に同じ又は同じ場合に、携行型時計100の機能へのアクセスの権限を与えるサブ段階を含む。
【0030】
この選択がこの限定された時間間隔内に行われなければ、検証サブステップ16は、提示サブステップ11及び選択サブステップ14を繰り返す繰り返しステップ19を実行する。その後に、シーケンスの選択が、限定された時間間隔内に再び行われない場合、検証サブステップ11は、携行型時計100の機能へのアクセスをブロック/ロックするサブステップを行うことが考えられる。これに関連して、前記携行型時計へのアクセスを復元するために、特定のロック解除/ブロック解除手順が必要とされる。
【0031】
そして、この方法は、携行型時計の着用者のアイデンティティーを定期的にチェックする定期的チェックステップ20を含み、これは、機能へのアクセスの権限を保持/剥奪することを意図して、携行型時計の着用者の少なくとも1つのバイオメトリックデータアイテムに基づいて決められるデジタルデータアイテムの有効性を検証することによって行う。このようなステップは、定期的な離散的チェックステップとしても知られている。本実施形態の範囲内においては、バイオメトリックデータアイテムは、着用者の皮膚の部分に含まれる。このステップ20の間に、チェックに関連づけられた期間は、規則的であってもよく不規則であってもよく、処理ユニット2によって自動的に構成されることができ、また、着用者によって定められることができる。例として、この期間は数秒や数分であることができる。このようなチェックステップ20によって、各周期の後に、着用者の皮膚に含まれる少なくとも1つのバイオメトリックデータアイテムにしたがって確立されたデジタル識別アイテムに基づいて、着用者の「バイオメトリック」アイデンティティーをチェックすることによって、携行型時計の着用者が常に同じことを検証することが可能になる。
【0032】
そして、このチェックステップ20は、センサー35によって、前記センサー35に近接して位置する着用者の皮膚の部分の複数の画像を取得する取得サブステップ21を含み、前記画像は、この皮膚部分に含まれる少なくとも1つのバイオメトリックデータアイテムを含む。このサブステップ21は、異なる波長を用いて皮膚の部分を照らす照明段階22を含む。特に、この段階22の間に、処理ユニット2は、マルチスペクトルバイオメトリックセンサー35、そして特に、光源37、を制御して、これによって、光源37は、ここでは着用者のアイデンティティーチェックの範囲内で求められ着用者の皮膚の部分に含まれる、皮膚の前記少なくとも1つの特定のバイオメトリック情報アイテムを検出し又は明らかにするように適応する特定の波長を用いて皮膚の部分に向けて発光する。照明の構成が終わった後に、取得サブステップ21は、前記少なくとも1つのバイオメトリックデータアイテムを検出したり明らかにしたりすることに適した少なくとも1つの波長を用いて照らされたこの皮膚の部分の画像を捕捉する捕捉段階23を含む。この段階23の間に、処理ユニット2は、マルチスペクトルバイオメトリック皮膚センサー35、そして特に、画像センサー36を、光源37のアクティブ化/非アクティブ化と同期させて制御し、これによって、少なくとも1つの波長にて照射された皮膚部分に関連する少なくとも1つの画像を捕捉する。
【0033】
この取得サブステップ21は、さらに、皮膚部分の少なくとも1つの熱的画像を捕捉する捕捉段階24を含むことができる。このような段階24は、好ましくは照明なしで実行するが、別の代替形態では、当該部分の照明を少なくとも1つの所定の波長を用いて行うことができ、これは、当然、検出されるべき又は明らかにされるべきバイオメトリックデータアイテムに依存する。この段階24は、照明段階22及び画像捕捉段階23の前や後に行うことができる。
【0034】
そして、チェックステップ20は、取得された皮膚の部分の画像に含まれる前記少なくとも1つのバイオメトリックデータアイテムに基づいてデジタル識別アイテムを生成する生成サブステップ25を含む。このようなサブステップ25は、前記皮膚部分に対応する画像に含まれる前記バイオメトリックデータアイテムを特徴づける特徴づけ段階26を含む。この段階26の間に、処理ユニット2は、取得された画像を処理するための処理アルゴリズム39を実装する。これは、これらの画像それぞれにおいて前記少なくとも1つのバイオメトリックデータアイテムを識別/検出することを意図して行う。上記のように、このことには、着用者の皮膚のテクスチャ、着用者のこの皮膚の部分に含まれる血管網などに関連するデータアイテムを伴うようにすることができる。処理ユニット2によるこれらのアルゴリズム39、40の実装には、例えば、これらの画像をセグメントに分けるセグメント化プロセスを行うことを考えることができる。ここで、各取得画像は、着用者の皮膚の部分の概観を与え、そして、前記少なくとも1つのバイオメトリック情報要素の識別のための関連性が変動する領域を含む。このようなセグメント化プロセスは、処理されるセグメントを抽出し、これらの画像において処理しない部分を除去することに寄与する。そして、これらのアルゴリズム39は、皮膚の部分の位置領域によって、識別される前記少なくとも1つの特定のバイオメトリックデータアイテムに関連する特徴を含むこれらの画像セグメントをインデクシングすることを考えることができ、これによって、当該部分のこの測地的領域の特徴の形態学的タイポロジーに関する適切な処理を各領域に割り当てることができるようにする。これに関連して、これらのアルゴリズム39は、処理、変換及び検出のタイプの画像解析操作を行うことによって、各画像の画素によって担持されるデータを検出することによって、当該画像の各セグメントを処理する。その後に、これらのアルゴリズム39は、特徴フィルタリング及び抽出又はベクトル化操作を行い、これによって、識別され抽出された前記少なくとも1つのバイオメトリック情報要素に関連する画像データをパラメーター的データ、典型的には、インデックス、百分率などとして表される相対的数値、に変換する。
【0035】
ここで、同じ皮膚の部分を表すいくつかの画像を取得することによって、この特徴づけ段階26の精度と有効性を向上させることに役立つ。
【0036】
その後に、生成サブステップ25は、前記少なくとも1つのバイオメトリックデータアイテムの特徴づけに基づいてデジタル識別アイテムを設計する設計段階27を含む。この段階27の間に、処理ユニット2は、特徴づけ段階26の間に得られたパラメーター的データの処理のために特に考えられるようなデジタル識別アイテムを生成するための生成アルゴリズムを実装する。このパラメーター的データは、前記少なくとも1つのバイオメトリックデータアイテムに関連する。
【0037】
そして、チェックステップ20は、着用者のアイデンティティーチェックを予期して生成されるデジタル識別アイテムを検証する検証サブステップ20を含む。この検証サブステップ28は、処理ユニット2によって実装される、生成されたデジタル識別アイテムと基準デジタル識別アイテムとを比較する比較段階29を含む。この方法では、基準デジタル識別アイテムを定めるステップ11の間に、着用者が正当に認証され、そのアイデンティティーが確認された後に、基準デジタル識別アイテムを作ることができ、このステップ11においては、チェックステップ20の間に実行される取得サブステップ21及び生成サブステップ25と同様のサブステップを行うことが考えられる。この方法では、携行型時計100の着用者が認証されると、処理ユニット2は、この定義ステップ11を実行し、そして、処理ユニット2のメモリー要素6において得られる基準デジタル識別アイテムのアーカイブを行う。したがって、この基準デジタル識別アイテムは、処理ユニット2によって自動的に決めることができ、又はこの基準デジタル識別要素を定めるように着用者をガイドするように意図されたセッティングプロセス中に着用者によって構成することができる。
【0038】
この比較段階29は、生成されたデジタル識別アイテムが基準デジタル識別アイテムと実質的に異なる又は異なる場合に、携行型時計100の前記機能に対するアクセス権限付与をなくすサブ段階30を含む。この場合、携行型時計100の着用者及び所有者が所有しなくなった可能性があるので、携行型時計100の機能へのアクセスがなくされる。したがって、これに関連して、携行型時計100の機能を再び用いるためには、認証を受ける必要がある。
【0039】
この比較段階29は、さらに、生成されたデジタル識別アイテムが基準デジタル識別アイテムと実質的に同じ又は同じ場合に、携行型時計100の前記機能に対するアクセス権限を保持する保持サブ段階31を含む。この場合、チェックユニット2は、再度、決められた期間に応じて、チェックステップ20における取得サブステップ21と生成サブステップ25を行い、再度、比較段階29を行う。
【0040】
したがって、本発明によって、特に着用者が認証された後に、携行型時計の着用者のアイデンティティーを継続的に自動的かつ非侵襲的にチェックすることが可能になる。
【0041】
本発明は、さらに、本方法のステップ10~31を実行するためのプログラムコード命令を含むコンピュータープログラムに関し、このプログラムは、携行型時計100の処理ユニット2によって実行される。
【符号の説明】
【0042】
1 システム
2 処理ユニット
3 視覚的データブロードキャスト用インタフェース
4 音データブロードキャスト用インタフェース
5 無線通信インタフェース
6 メモリー要素
34 入力インタフェース
35 バイオメトリックセンサー
36 画像センサー
37 光源
38 熱画像センサー
39 処理アルゴリズム
40 生成アルゴリズム
41 グラフィック表現
42 基準シーケンス
100 携行型時計