(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】パンタグラフ
(51)【国際特許分類】
B60L 5/18 20060101AFI20220607BHJP
B60L 5/26 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
B60L5/18 Z
B60L5/26 Z
(21)【出願番号】P 2020531850
(86)(22)【出願日】2018-07-23
(86)【国際出願番号】 JP2018027567
(87)【国際公開番号】W WO2020021606
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】小林 隼人
(72)【発明者】
【氏名】中島 伸治
【審査官】西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-124804(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0272506(US,A1)
【文献】特開昭55-46805(JP,A)
【文献】実開昭60-144702(JP,U)
【文献】特開2007-189754(JP,A)
【文献】特開2017-011784(JP,A)
【文献】特開2000-152406(JP,A)
【文献】特開平3-103002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 5/18 - 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車幅方向をy軸方向、車高方向をz軸方向として、架線に摺接して集電する、y軸方向に長手のすり板及びすり板を支持する舟体を有する集電舟と、集電舟をy軸方向中央部において支持する舟支えと、z軸方向に屈伸自在に連結された上枠及び下枠を有し、上枠上端部において舟支えを支持する枠組と、枠組を支持する台枠と、上端部が舟支えに軸着され、下端部が枠組の下枠上端部に軸着されて集電舟の姿勢を一定に保持する第1バランスリンクと、上端部が枠組の上枠下端部に軸着され、下端部が台枠に軸着されて下枠の揺動に連動させて上枠を揺動させる第2バランスリンクとを備えたパンタグラフであって、
すり板内部に設けられたエアダクトに接続され、エアダクト内部にエアを供給するエアチューブを有し、エアダクトの内部エア圧が所定の圧力以下となった時に枠組が台枠側に屈して集電舟を自動降下させる自動降下装置を備えるものにおいて、
枠組の上枠及び下枠は中空部材から構成され、エアチューブは、すり板のy軸方向中央部においてエアダクトに接続され、舟支えを経て枠組の上枠及び下枠の内部に挿設されている
ことを特徴とするパンタグラフ。
【請求項2】
第1バランスリンクが枠組の上枠内部に挿入され、第2バランスリンクが枠組の下枠内部に挿入されて、エアチューブが、第1バランスリンク及び第2バランスリンクに結束された状態で上枠及び下枠の内部に挿設されることを特徴とする請求項1記載のパンタグラフ。
【請求項3】
舟支えを支持し、舟支えを囲繞する中空な頂部カバーが枠組の上枠上端部に設けられ、エアチューブは、頂部カバーの内部に収納されると共に、枠組の上枠と下枠との連結部を囲繞するように設けられる中空なヒンジカバー及び台枠を囲繞するように設けられる中空な下部カバーの内部に収納されることを特徴とする請求項1又は2記載のパンタグラフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車幅方向をy軸方向、車高方向をz軸方向として、架線に摺接して集電する、y軸方向に長手のすり板及びすり板を支持する舟体を有する集電舟と、集電舟をy軸方向中央部において支持する舟支えと、z軸方向に屈伸自在に連結された上枠及び下枠を有し、上枠上端部において舟支えを支持する枠組と、枠組を支持する台枠と、上端部が舟支えに軸着され、下端部が枠組の下枠上端部に軸着されて集電舟の姿勢を一定に保持する第1バランスリンクと、上端部が枠組の上枠下端部に軸着され、下端部が台枠に軸着されて下枠の揺動に連動させて上枠を揺動させる第2バランスリンクとを備えたパンタグラフに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のパンタグラフとして、すり板内部に設けられたエアダクトに接続され、エアダクト内部にエアを供給するエアチューブを有し、エアダクトの内部エア圧が所定の圧力以下となった時に枠組が台枠側に屈して集電舟を自動降下させる自動降下装置を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このパンタグラフでは、車両走行中にすり板に過大な外力が掛かってすり板が破損した際に、エアダクトの内部エア圧が降下するため、エアダクトの内部エア圧の降下を検知し、この検知に基づいて集電舟を自動降下させる。
【0003】
しかしながら、上記パンタグラフには、台枠から枠組の外面に結束させて集電舟までエアチューブを引き回す必要があることから、エアチューブが露出し、このため、露出するエアチューブが、車両走行中のエア抵抗となることに起因して騒音源となったり、風雨に晒されることから劣化しやすく、劣化に伴いエアダクトの内部エア圧を誤検知したりする等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、自動降下装置が有するエアチューブの露出を極力抑えて車両走行時の騒音を低減させると共に、エアチューブの劣化を抑制して誤検知を防止するパンタグラフを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、車両の車幅方向をy軸方向、車高方向をz軸方向として、架線に摺接して集電する、y軸方向に長手のすり板及びすり板を支持する舟体を有する集電舟と、集電舟をy軸方向中央部において支持する舟支えと、z軸方向に屈伸自在に連結された上枠及び下枠を有し、上枠上端部において舟支えを支持する枠組と、枠組を支持する台枠と、上端部が舟支えに軸着され、下端部が枠組の下枠上端部に軸着されて集電舟の姿勢を一定に保持する第1バランスリンクと、上端部が枠組の上枠下端部に軸着され、下端部が台枠に軸着されて下枠の揺動に連動させて上枠を揺動させる第2バランスリンクとを備えたパンタグラフであって、すり板内部に設けられたエアダクトに接続され、エアダクト内部にエアを供給するエアチューブを有し、エアダクトの内部エア圧が所定の圧力以下となった時に枠組が台枠側に屈して集電舟を自動降下させる自動降下装置を備えるものにおいて、枠組の上枠及び下枠は中空部材から構成され、エアチューブは、すり板のy軸方向中央部においてエアダクトに接続され、舟支えを経て枠組の上枠及び下枠の内部に挿設されていることを特徴としている。
【0007】
本発明によれば、エアチューブが、すり板内部のエアダクトから集電舟をy軸方向中央部において支持する舟支えを経て枠組の上枠及び下枠の内部に挿設されるので、エアチューブの露出を極力抑えることができる。このため、車両走行中のエア抵抗が低減されて騒音低減が図られると共に、エアチューブが風雨に晒されることがないことからエアチューブの劣化が抑制され、エアダクトの内部エア圧の誤検知防止が図られる。
【0008】
また、本発明において、第1バランスリンクが枠組の上枠内部に挿入され、第2バランスリンクが枠組の下枠内部に挿入されて、エアチューブが、第1バランスリンク及び第2バランスリンクに結束された状態で上枠及び下枠の内部に挿設されることが好ましい。これによれば、エアチューブが、第1バランスリンク及び第2バランスリンクに結束された状態で枠組の上枠及び下枠の内部に挿設されるので、エアチューブの設置が容易となる。
【0009】
さらに、本発明において、舟支えを支持し、舟支えを囲繞する中空な頂部カバーが枠組の上枠上端部に設けられ、エアチューブは、頂部カバーの内部に収納されると共に、枠組の上枠と下枠との連結部を囲繞するように設けられる中空なヒンジカバー及び台枠を囲繞するように設けられる中空な下部カバーの内部に収納されることが好ましい。これによれば、エアチューブが頂部カバー、ヒンジカバー及び下部カバーの内部に収納されるため、エアチューブの露出がより抑制され、車両走行時の騒音低減と誤検知防止とをより図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のパンタグラフの一実施形態を示す要部透視斜視図。
【
図2】
図1に示すパンタグラフをx軸方向他方から見た要部透視図。
【
図4】
図3に示すパンタグラフの集電舟の要部断面図。
【
図5】
図1に示すパンタグラフの枠組を示す概略断面図と上枠及び下枠の連結部の要部拡大断面図。
【
図6】
図5に示す上枠及び下枠の連結部のB-B断面図。
【
図7】パンタグラフの自動降下装置のエア回路を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1~5を参照して、本実施形態のパンタグラフ1は、所謂シングルアーム形と呼ばれるものである。パンタグラフ1は、車両の車幅方向をy軸方向、車高方向をz軸方向として、架線に摺接して集電する、y軸方向に長手のすり板21及びすり板21を支持する舟体22を有する集電舟2と、集電舟2をy軸方向中央部において支持する舟支え3と、z軸方向に屈伸自在に連結された上枠41及び下枠42を有し、上枠41の上端部41aにおいて舟支え3を支持する枠組4と、枠組4を支持する台枠5とを備えている。また、パンタグラフ1は、上端部41aが舟支え3に軸着され、下端部41bが枠組4の下枠42の上端部42aに軸着されて集電舟2の姿勢を一定に保持する第1バランスリンク6と、上端部42aが枠組4の上枠41の下端部41bに軸着され、下端部42bが台枠5に軸着されて下枠42の揺動に連動させて上枠41を揺動させる第2バランスリンク7とを備えている。さらに、パンタグラフ1は、すり板21の内部に設けられたエアダクト23に接続され、エアダクト23の内部にエアを供給するエアチューブ81を有し、エアダクト23の内部エア圧が所定の圧力以下となった時に枠組4が台枠5側に屈して集電舟2を自動降下させる自動降下装置8(
図7参照)を備えている。そして、パンタグラフ1では、枠組4の上枠41及び下枠42が中空部材から構成され、エアチューブ81は、すり板21のy軸方向中央部においてエアダクト23に接続され、舟支え3を経て枠組4の上枠41及び下枠42の内部に挿設されている。
【0012】
また、パンタグラフ1では、第1バランスリンク6が枠組4の上枠41の内部に挿入され、第2バランスリンク7が枠組4の下枠42の内部に挿入されて、エアチューブ81が、第1バランスリンク6及び第2バランスリンク7に結束された状態で上枠41及び下枠42の内部に挿設されている。さらに、舟支え3を支持し、舟支え3を囲繞する中空な頂部カバー9が枠組4の上枠41の上端部41aに設けられている。
【0013】
具体的には、すり板21は、架線に摺接する上面21aを有して集電する。上面21aは、上に凸となる形状を有し、且つ少なくともその頂部は曲面21a1から構成されている。曲面21a1の曲率は、例えば、工業規格EN50367を満たすR10000等とすることができる。また、すり板21は、上面21aを有するすり板本体211と、すり板本体211が固定されるキャリア212とを備えている。すり板本体211は、カーボン等の導電性を有する材料から一体成形され、z軸方向下方の底面は平面から構成されている。キャリア212は中空部材から構成され、そのz軸方向の上下両面は平面から構成され、キャリア212の上面上にすり板本体211が安定に載置される。また、キャリア212のx軸方向一方及び他方の上端には、一対の爪212aが立設されている。キャリア212において、x軸方向一方の上端に位置する爪212aは、z軸方向上方に向けてx軸方向他方に傾斜し、x軸方向他方の上端に位置する爪212aは、z軸方向上方に向けてx軸方向一方に傾斜している。これら一対の爪212aによってすり板本体211がx軸方向一方及び他方の側面部において係止され、すり板本体211がキャリア212に固定される。上記の如くのキャリア212は、例えば、アルミニウム等の軽金属から一体成形可能である。さらに、キャリア212には、y軸方向中央部の底部にエアコネクタ10が固定されている。エアコネクタ10は、キャリア212の中空部212bを通じてすり板21のエアダクト23と連通している。
【0014】
また、すり板21には、y軸方向一方端ではy軸方向一方に突出し、y軸方向他方端ではy軸方向他方に突出する一対の補助ホーン24が設けられている。補助ホーン24は、z軸方向下方に向けてy軸方向に傾斜する二股の補助ホーン本体24aと、補助ホーン24の突出方向と反対方向に延設されたジョイント24bとを備えている。y軸方向一方に突出する補助ホーン24が備えるジョイント24bは、y軸方向一方端部においてキャリア212の底部に締結され、y軸方向他方に突出する補助ホーン24が備えるジョイント24bは、y軸方向他方端部においてキャリア212の底面に締結され、各補助ホーン24はすり板21に連結されている。また、各ジョイント24bのキャリア212の底部との締結部に隣接する部分にロッド組11がピン12により固定されている。ロッド組11は、z軸方向下方に延びるロッド本体11aを備え、ロッド本体11aの下端部外周部にはねじ溝が刻設されている。各ジョイント24bにおいて、ロッド組11を挟んでキャリア212との締結部と反対側に位置する部分には、コイルスプリング等の弾性部材13のz軸方向上端部が外嵌して保持される弾性部材ガイド14aがz軸方向下方に突設されている。
【0015】
舟体22は、z軸方向上方に開放されたy軸方向全長に亘る中空部22aと、y軸方向の一端部と他端部とに位置するすり板支持部22bとを有している。弾性部材13は、舟体22のすり板支持部22bの中空部22aに収納され、すり板支持部22bの内底部には、弾性部材ガイド14aに対置する部位に弾性部材ガイド14bがz軸方向上方に突設され、弾性部材13はz軸方向下端部において弾性部材ガイド14bに外嵌する。このため、弾性部材13は、すり板21を上面21aが舟体22のz軸方向上端から突出するようにz軸方向上方に付勢することができる。また、ロッド組11のロッド本体11aは、z軸方向下端がすり板支持部22bの内底部にまで達する長さを有する。さらに、集電舟2はホーン15を有し、ホーン15は、舟体22の中空部22aからy軸方向一方と他方との夫々に突出し、且つz軸方向下方に弓形に折曲している。ホーン15は舟体22のすり板支持部22bの内底部に締結されている。ホーン15のz軸方向下方に折曲する部分には、x軸方向に貫通する複数の貫通穴15aが所定の間隔を存して設けられている。貫通穴15aは、車両走行中にエアが流入及び流出して集電舟2の車両進行方向後方にカルマン渦が発生するのを抑制し、空力騒音の低減に寄与する。そして、舟体22では、すり板支持部22bを除く部分22cの底面22c1が、すり板支持部22bの底面22b1よりもz軸方向上方にオフセットしている。この底面22c1のオフセットによって、舟体22のすり板支持部22bを除く部分22cのz軸方向の厚さがすり板支持部22bよりも薄くなり、集電舟2は、重量が従来のものよりも軽く、また、車両走行中のエア抵抗が低減したものとなっている。
【0016】
上記の如くの集電舟2の組付けは、弾性部材13のz軸方向下端部をすり板支持部22bの内底部に設けられた弾性部材ガイド14bに外嵌し、すり板21に連結された補助ホーン24のジョイント24bにピン12を差し込み、ロッド組11を固定した状態で行うことができる。すなわち、補助ホーン24のジョイント24b及びすり板21のキャリア212をz軸方向上方から舟体22の中空部22aに挿入する。この時、弾性部材13のz軸方向上端部が弾性部材ガイド14aに外嵌し、弾性部材13はすり板支持部22bの中空部22aに収納され、且つロッド本体11aの下端部がすり板支持部22bの底部に設けられたブッシュ11bの内部に挿入される。この状態において、キャップナット16をz軸方向下方からロッド本体11aの下端部外周部にねじ込む。キャップナット16をねじ込むにつれて弾性部材13がジョイント24bとすり板支持部22bとの間で圧縮され、弾性部材13はすり板21をz軸方向上方に付勢する。こうして、すり板21は、z軸方向上方に付勢されて舟体22の中空部22aに収納されると共に、上面21aが舟体22のz軸方向上端から突出し、すり板支持部22bに支持される。すり板21のすり板支持部22bによる支持状態では、すり板21が、舟体22の中空部22aでz軸方向上下に移動可能であるが、x軸方向及びy軸方向への移動はキャップナット16により制止され、すり板21が舟体22から脱落することはない。また、すり板22のz軸方向上下の移動はキャップナット16のねじ込み具合により制限される。なお、すり板21と舟体22とが組付けられた時、各ホーン15は、それに対応する位置の各補助ホーン本体24aの二股に分かれた一方部分24a1と他方部分24a2との間でz軸方向下方に介在する。ホーン15及び補助ホーン24aは共に、渡線から次の架線をすり板21の上面21aに誘導する。
【0017】
また、集電舟2では、舟体22の底部のy軸方向中央部にz軸方向に貫通する開口22dが開設されている。開口22dと、z軸方向に貫通して開設された貫通穴31aとを重合させて舟支え3の上端部31が、舟体22の底部のy軸方向中央部に締結されている。舟支え3の上端部31はピン32により下端部33に軸着されている。貫通穴31a及び開口22dを通じてエアコネクタ10が、舟体22の中空部22aに挿入され、キャリア212に固定される。さらに、第1バランスリンク6の上端部6aは、上枠41の上端部41aから外方に突出し、舟支え3の下端部33にy軸方向に設けられたシャフト17により軸着されている。エアチューブ81は、舟支え3の下端部33の外面に沿い、貫通穴31a及び開口22dを経てエアコネクタ10の下端部10aに接続され、固定されている。そして、上枠41の上端部41aに設けられた中空な頂部カバー9が舟支え3に連結されて舟支え3を支持し、舟支え3を囲繞すると共に、第1バランスリンク6の上端部6a及びエアチューブ81における舟体22の開口22dから上枠41の上端部41aまでの部分が頂部カバー9の内部に収納されている。
【0018】
図5及び
図6を参照して、枠組4では、上枠41の下端部41bと下枠42の上端部42aとがヒンジ43によって屈伸自在に連結されている。ヒンジ43は、シャフト43aと、フォーク43bとを備えている。フォーク43bは、x軸方向一方に向かいz軸方向下方に延び、y軸方向に所定間隔を存して一対として設けられ、シャフト43aと下枠42の上端部43aとに締結され、ヒンジ43は下枠42の上端部42aの一部を構成している。上枠41の下端部41bはシャフト43aにより下枠42の上端部42aに軸着され、揺動自在となっている。第1バランスリンク41の下端部41bは、ヒンジ43のシャフト43aの内部に設けられた中空部43cにおいてピン43dによりシャフト43aに軸着され、この結果として、第1バランスリンク41の下端部41bは下枠42の上端部42aに軸着されている。エアチューブ81は、中空部43cに挿入されてフォーク43b側に引き出され、下枠42の上端部42aから下枠42の内部に挿入されている。また、上枠41の下端部41bには、x軸方向他方に向かいz軸方向下方に延びる連結部材44が設けられ、連結部材44は上枠41の下端部41bの一部を構成している。第2バランスリンク7は、下枠42の上端部42a及び下端部42bから下枠42の外方に突出している。ヒンジ43側に位置する第2バランスフレーム7の上端部7aは、連結部材44のz軸方向下端部にシャフト45により軸着され、この結果として、第2バランスリンク7の上端部7aは上枠41の下端部41bに軸着されている。一方、第2バランスフレーム7の台枠5側に位置する下端部7bは、台枠5上にz軸方向上方に向けて立設されたブラケット51にピン52により軸着されている。こうして、第2バランスフレーム7の下端部7bは台枠5に軸着されている。なお、上枠41と下枠42との連結部を構成する、連結部材44を含む上枠41の下端部41b、ヒンジ43を含む下枠42の上端部42a、及び第2バランスリンク7の上端部7aは、これらを囲繞するように設けられた中空なヒンジカバー46の内部に収納される。
【0019】
そして、エアチューブ81は、下枠42の下端部42bから下枠42の外方に引き出され、第2バランスリンク7の下端部7bに結束された状態で台枠5側に向かい、台枠5を囲繞するように設けられた中空な下部カバー53の内部に挿設されている。また、下枠42の下端部42bは、下部カバー53の内部に収納された支持部材54に設けられたメインシャフト55により軸着されている。具体的には、支持部材54は台枠5からz軸方向上方に向かって延び、支持部材54の上端部にメインシャフト55が設けられている。また、下枠42の下端部42bには支持部材54に向かって延びる連結プレート56が締結され、連結プレート56がメインシャフト55により軸着されることによって下枠42の下端部42bが台枠5に軸着されている。下部カバー53は、エアチューブ81及び支持部材54の他、下枠42の下端部42b、第2バランスリンク7の下端部7b、及び連結プレート56を囲繞し、これらを内部に収納している。
【0020】
図7を参照して、パンタグラフ1は、上枠41及び下枠42の屈伸の動力源となる、メインシャフト55を一方及び他方に回動させるトルクを発生するエアスプリング60を備えている。エアスプリング60にエアを供給するエア流路61は、その一端が車両の屋根上に設置されるエア碍管70を介して車内に設置されたエア圧制御手段90に接続され、他端が車両に設置されたエア源100に接続されている。エア圧制御手段90では、エア流路61の上流側にエアスプリング60へのエアの供給及び停止を行う電磁弁62が設けられ、下流側にエアスプリング60のエア圧を所定の圧力に一定に保持するレギュレータ63が設けられている。エアチューブ81は、エア圧制御手段90において、電磁弁62よりも上流側でエア流路61に接続され、すり板21のエアダクト23の内部エア圧を検知する圧力センサ82がエアチューブ81に介設されている。また、自動降下装置8では、パンタグラフ1において、エア流路61から分岐し、エアチューブ81に接続されたバイパス流路110が設けられている。バイパス流路110には、エアスプリング60に供給されたエアを外部に放出する急速排気弁111が介設されている。
【0021】
上記の如くの自動降下装置8では、エア圧制御手段90により電磁弁62が開放され、エアスプリング60にエア源100からエア流路61を通じてエアが供給されると、メインシャフト55にトルクが負荷され、メインシャフト55が一方に回動して
図5に示す下枠42がz軸方向上方に揺動する。この下枠42の揺動に連動して上枠41もz軸方向上方に揺動する。その結果、枠組4が自動的にz軸方向上方に伸び、集電舟2のすり板21の上面21aが架線に接触する。一方、エアスプリング60の内部に充満したエアが排気されると、メインシャフト55が他方に回動し、下枠42がz軸方向下方に揺動し、上枠41も同方向に揺動して、枠組4が台枠5側に屈し、集電舟2が自動的に降下する。そして、自動降下装置8では、車両走行中にすり板21に過大な外力が掛かってすり板21が破損すると、エアダクト23に充満していたエアがすり板21の外部に漏出し、このエアの漏出に伴ってエアダクト23の内部エア圧が降下する。圧力センサ82が検知する内部エア圧が、エア圧制御手段90に設けられたメモリーに予め設定しておいた所定のエア圧以下となった時、エア圧制御手段90は、電磁弁62を閉鎖し、急速排気弁111を開放してエアスプリング60に充満していたエアを外部に急速に排気させる。この急速排気に伴い枠組4が台枠5側に屈して集電舟2を自動降下させる。
【0022】
本実施形態のパンタグラフ1では、上記の如く、エアチューブ81が、すり板21の内部のエアダクト23から集電舟2をy軸方向中央部において支持する舟支え3を経て枠組4の上枠41及び下枠42の内部に挿設されるため、エアチューブ81の露出を極力抑えることができる。このため、車両走行中のエア抵抗が低減されて騒音低減が図られると共に、エアチューブ81が風雨に晒されることがないことからエアチューブ81の劣化が抑制され、エアダクト23の内部エア圧の誤検知防止が図られる。また、エアチューブ81が、第1バランスリンク6及び第2バランスリンク7に結束された状態で枠組4の上枠41及び下枠42の内部に挿設されるので、エアチューブ81の設置が容易となる。さらに、エアチューブ81が中空な頂部カバー9、ヒンジカバー45及び下部カバー53の内部に収納されるため、エアチューブ81の露出がより抑制され、車両走行時の騒音低減と誤検知防止とをより図ることができる。
【0023】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。集電舟をはじめとして、すり板、舟体、舟支え、頂部カバー、ヒンジカバー、及び下部カバーの構成及び構造は任意のものを採用することができる。また、第1バランスリンク及び第2バランスリンクについても同様である。さらに、自動降下装置におけるエア回路の構成も上記実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0024】
1…パンタグラフ、2…集電舟、21…すり板、22…舟体、23…エアダクト、3…舟支え、33…舟支え3の下端部、4…枠組、41…上枠、41a…上枠41の上端部、41b…上枠4の下端部、42…下枠、42a…下枠42の上端部、46…ヒンジカバー、5…台枠、53…下部カバー、6…第1バランスリンク、6a…第1バランスリンク6の上端部、6b…第2バランスリンクの下端部、7…第2バランスリンク、7a…第2バランスリンク7の上端部、7b…第2バランスリンク7の下端部、8…自動降下装置、81…エアチューブ、9…頂部カバー。