(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】硫黄-炭素複合体、この製造方法、これを含む正極及びリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
C01B 32/05 20170101AFI20220607BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20220607BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220607BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20220607BHJP
H01M 4/60 20060101ALI20220607BHJP
H01M 4/137 20100101ALI20220607BHJP
【FI】
C01B32/05
H01M4/58
H01M4/36 C
H01M4/136
H01M4/60
H01M4/137
H01M4/36 A
(21)【出願番号】P 2020552807
(86)(22)【出願日】2019-07-29
(86)【国際出願番号】 KR2019009380
(87)【国際公開番号】W WO2020032454
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2020-09-29
(31)【優先権主張番号】10-2018-0092206
(32)【優先日】2018-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0090686
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ボン・ス・キム
(72)【発明者】
【氏名】スヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スン・ミ・ジン
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/084449(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0061874(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/05
H01M 4/58
H01M 4/36
H01M 4/136
H01M 4/60
H01M 4/137
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性炭素材;前記多孔性炭素材の表面上に形成されたフッ素系界面活性剤(fluorosurfactant)コーティング層;及び前記フッ素系界面活性剤コーティング層の表面上に形成された硫黄コーティング層;を含
み、
前記フッ素系界面活性剤は、下記化学式1で表されるものである、硫黄-炭素複合体
:
<化学式1>
【化1】
前記式において、m/(m+n)は0ないし1の実数で(ただし、m、nはそれぞれ定数である);R1は水素または炭素数1ないし18のアルキル基で;R2は水素、炭素数1ないし18のアルキル基またはアクリレートポリマー主鎖に対する結合点(connection point)で;xは1ないし10の定数で;aは1ないし50の定数で;bは1ないし100の定数で;cは1ないし50の定数である。
【請求項2】
前記硫黄-炭素複合体は、
前記多孔性炭素材9ないし49重量%;フッ素系界面活性剤0.1ないし3重量%;及び硫黄50ないし90重量%;を含む、請求項1に記載の硫黄-炭素複合体。
【請求項3】
前記多孔性炭素材は、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維及び活性炭からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1または2に記載の硫黄-炭素複合体。
【請求項4】
前記硫黄は、無機硫黄(S
8)、Li
2S
n(n≧1、nは定数)、有機硫黄化合物及び炭素-硫黄ポリマー[(C
2S
x)
n、2.5≦x≦50、n≧2、x及びnは定数である]からなる群から選択される1種以上である、請求項1から
3の何れか一項に記載の硫黄-炭素複合体。
【請求項5】
(S1)フッ素系界面活性剤(fluorosurfactant)を溶媒に溶解させ、フッ素系界面活性剤溶液を製造する段階;
(S2)前記フッ素系界面活性剤溶液と多孔性炭素材を混合してスラリーを製造する段階;
(S3)前記スラリーを乾燥させて溶媒を取り除いてスラリー粉末を形成する段階;
(S4)前記スラリー粉末と硫黄を混合して混合物を形成する段階;及び
(S5)前記混合物を加熱して硫黄-炭素複合体を製造する段階;を含
み、
前記フッ素系界面活性剤は、下記化学式1で表されるものである、硫黄-炭素複合体の製造方法
:
<化学式1>
【化2】
前記式において、m/(m+n)は0ないし1の実数で(ただし、m、nはそれぞれ定数である);R1は水素または炭素数1ないし18のアルキル基で;R2は水素、炭素数1ないし18のアルキル基またはアクリレートポリマー主鎖に対する結合点(connection point)で;xは1ないし10の定数で;aは1ないし50の定数で;bは1ないし100の定数で;cは1ないし50の定数である。
【請求項6】
前記(S1)段階において、前記溶媒はメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-ブタノール、イソブタノール、3-ペンタノール、ドデカノール、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)及びジメチルホルムアミド(DMF)からなる群から選択される1種以上である、請求項
5に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項7】
前記フッ素系界面活性剤溶液の濃度は、固形分重量を基準にして0.1ないし10重量%である、請求項
5または
6に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項8】
前記(S3)段階において、前記乾燥は前記スラリーを真空下で撹拌または撹拌しながら加熱して実施することである、請求項
5から
7の何れか一項に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項9】
前記(S5)段階において、前記加熱時の温度は115℃以上である、請求項
5から
8の何れか一項に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし
4の何れか一項に記載の硫黄-炭素複合体を含むリチウム二次電池用正極。
【請求項11】
請求項
10に記載の正極を含むリチウム二次電池。
【請求項12】
前記リチウム二次電池はリチウム-硫黄二次電池である、請求項
11に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年8月8日付け韓国特許出願第10-2018-0092206号及び2019年7月26日付け韓国特許出願第10-2019-0090686号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、新規な構造を有する硫黄-炭素複合体、この製造方法、これを含む正極及びリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、電子機器分野と電気自動車分野の急速な発展によって二次電池の需要が増加している。特に、携帯用電子機器の小型化及び軽量化の成り行きにつれ、それに応えられる高エネルギー密度を有する二次電池に対する要求が高まっている。
【0004】
二次電池の中でリチウム-硫黄二次電池は硫黄-硫黄結合を有する硫黄系化合物を正極活物質で使用し、リチウムのようなアルカリ金属またはリチウムイオンのような金属イオンの挿入及び脱挿入が生じる炭素系物質またはリチウムと合金を形成するシリコンやスズなどを負極活物質で使用する二次電池である。具体的に、還元反応である放電時の硫黄-硫黄結合が切れながら硫黄の酸化数が減少し、酸化反応である充電時の硫黄の酸化数が増加しながら硫黄-硫黄結合が再形成される酸化-還元反応を利用して電気的エネルギーを保存して生成する。
【0005】
特に、リチウム-硫黄二次電池に正極活物質で使用される硫黄は理論エネルギー密度が1,675mAh/gで、既存のリチウム二次電池に使用される正極活物質に比べて5倍ほど高い理論エネルギー密度を持っていて、高出力、高エネルギー密度の発現が可能な電池である。これに加え、硫黄は安価で埋蔵量が豊かであるため需給が容易であり、環境にやさしいという利点のため携帯用電子機器のみならず電気自動車のような中大型装置のエネルギー源で注目されている。
【0006】
しかし、硫黄は電気伝導度が5×10-30S/cmで電気伝導性がない不導体であるため、電気化学反応で生成された電子移動が難しい問題がある。ここで、電気化学的反応サイトを提供することができる炭素のような電気的導電材とともに複合化されて硫黄-炭素複合体で使われている。
【0007】
既存の硫黄-炭素複合体は、酸化-還元反応時に硫黄が電解質に流出されて電池の寿命が劣化されるだけでなく、硫黄の還元物質であるリチウムポリスルフィドが浸出され、それ以上電気化学反応に参加できなくなる問題点があった。また、電極内の硫黄が過量ローディング(loading)される場合、容量が減少する問題点もある。
【0008】
このような問題を解決するための手段として、リチウム-硫黄二次電池の正極素材を多様化する研究開発が持続的に試みられている。
【0009】
一例として、特許文献1は、リチウム-硫黄二次電池用電極形成組成物として硫黄で構成される粉末型電極形成材料とカーボン基盤の導電性材料及びフッ素化界面活性剤などで選択される少なくとも一つの界面活性剤を含む組成物を提示し、このような組成物を含む正極によってリチウム-硫黄二次電池の充電及び放電サイクルの中で優れる容量値を示すことができることを開示している。
【0010】
また、特許文献2は、リチウム-硫黄二次電池の正極に硫黄とカーボンブラック、グラファイトなどと導電性添加剤を含み、またフッ素系界面活性剤をさらに含むことで電極の寿命を改善できると開示している。
【0011】
しかし、前述したような文献に開示されたリチウム-硫黄二次電池の場合、依然としてポリスルフィドが電解液に溶解される時に高くなる粘度による反応速度低下現象を防ぐことができる解決策を提示することができず、これを改善することができる正極物質に対する開発が至急な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2016-534496号公報
【文献】米国特許出願公開第2014/0079989号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者は、前記問題点を解決するために多角的に研究した結果、電解液に含まれた有機溶媒の表面エネルギーを下げることができる物質であるフッ素系界面活性剤(fluorosurfactant)を含み、炭素表面に前記フッ素系界面活性剤と硫黄がそれぞれ2重コーティング層を形成している形態の硫黄-炭素複合体を開発し、このような硫黄-炭素複合体を含む正極をリチウム二次電池に適用する時、電池寿命増加及びポリスルフィドが電解液に溶解する時に高くなる粘度による反応速度低下現象を緩めることができる。
【0014】
よって、本発明の目的は、リチウムの劣化を防ぐことができ、電解液の表面エネルギーを下げることができる、硫黄-炭素複合体及びその製造方法を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、上述したような硫黄-炭素複合体を含む正極を提供することである。
【0016】
本発明のまた別の目的は、上述したような硫黄-炭素複合体を含む正極を含むリチウム二次電池に関する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するために、本発明は、多孔性炭素材;前記多孔性炭素材の表面上に形成されたフッ素系界面活性剤(fluorosurfactant)コーティング層;及び前記フッ素系界面活性剤コーティング層の表面上に形成された硫黄コーティング層;を含む、硫黄-炭素複合体を提供する。
【0018】
前記硫黄-炭素複合体は、多孔性炭素材9ないし49重量%;フッ素系界面活性剤0.1ないし3重量%;及び硫黄50ないし90重量%;を含むことができる。
【0019】
前記多孔性炭素材は、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維及び活性炭からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0020】
前記フッ素系界面活性剤は、フッ素化炭素(fluorinated carbon)を含む高分子;及び極性ペンダント官能基(polar pendant group)を含む高分子;のブロック共重合体を含むことができる。
【0021】
前記フッ素化炭素は、過フッ素化炭素(perfluorinated carbon)、テトラフルオロエチレン(Tetrafluoroethylene)、フッ化ビニリデン(vinylidene fluoride)からなる群から選択される1種以上であり、前記極性ペンダント官能基は、ヒドロキシル、カルボニル、アルデヒド、エーテル、カーボネート、カルボキシレート、カルボキシル、グリコール、アミン、イミン、イミド、ナイトレート、ニトリル、アルコール、アクリル、スルフィド、ジスルフィド、スルフィニル及びホスフェートからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0022】
前記フッ素系界面活性剤は、下記化学式1で表されるものであってもよい:
<化学式1>
【化1】
【0023】
前記式において、m/(m+n)は0ないし1の実数で(ただし、m、nはそれぞれ定数である);R1は水素または炭素数1ないし18のアルキル基で;R2は水素、炭素数1ないし18のアルキル基またはアクリレートポリマー主鎖に対する結合点(connection point)で;xは1ないし10の定数で;aは1ないし50の定数で;bは1ないし100の定数で;cは1ないし50の定数である。
【0024】
前記硫黄は無機硫黄(S8)、Li2Sn(n≧1、nは定数である)、有機硫黄化合物及び炭素-硫黄ポリマー[(C2Sx)n、2.5≦x≦50、n≧2、x及びnは定数である]からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0025】
本発明はまた、(S1)フッ素系界面活性剤(fluorosurfactant)を溶媒に溶解させ、フッ素系界面活性剤溶液を製造する段階;(S2)前記フッ素系界面活性剤溶液と多孔性炭素材を混合してスラリーを製造する段階;(S3)前記スラリーを乾燥させて溶媒を取り除いてスラリー粉末を形成する段階;(S4)前記スラリー粉末と硫黄を混合して混合物を形成する段階;及び(S5)前記混合物を加熱して硫黄-炭素複合体を製造する段階;を含む、硫黄-炭素複合体の製造方法を提供する。
【0026】
前記(S1)段階において、前記溶媒は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-ブタノール、イソブタノール、3-ペンタノール、ドデカノール、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)及びジメチルホルムアミド(DMF)からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0027】
前記フッ素系界面活性剤溶液の濃度は、固形分重量を基準にして0.1ないし10重量%であってもよい。
【0028】
前記(S3)段階において、前記乾燥は前記スラリーを真空下で撹拌または撹拌させながら加熱して実施することであってもよい。
【0029】
前記(S5)段階において、前記加熱時の温度は115℃以上であってもよい。
【0030】
本発明はまた、硫黄-炭素複合体を含むリチウム二次電池用正極を提供する。
【0031】
本発明はまた、前記正極を含むリチウム二次電池を提供し、前記リチウム二次電池はリチウム-硫黄二次電池であってもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明の硫黄-炭素複合体によれば、前記硫黄-炭素複合体は適量のフッ素系界面活性剤を含み、前記フッ素系界面活性剤によってリチウムの劣化を防ぐことができる。また、前記硫黄-炭素複合体は、電解液に含まれた有機溶媒の表面エネルギーを下げて表面の濡れ性を改善することにより、正極から浸出するポリスルフィドによって電解液の粘度が高くなっても正極と負極内の反応速度低下を緩和することができ、正極と負極内の均一な反応を誘導し、リチウム二次電池の寿命を改善することができる。
【0033】
また、本発明によれば、リチウム二次電池、特に、リチウム-硫黄二次電池の正極材である硫黄-炭素複合体にフッ素系界面活性剤を取り入れることで、高温で硫黄を溶融する複合化過程でより均一な硫黄分布を誘導することができる。
【0034】
また、本発明によれば、リチウム二次電池、特に、リチウム-硫黄二次電池の正極材である硫黄-炭素複合体にフッ素系界面活性剤を取り入れることで電池の放電過程で徐々に少量が拡散されるようにして放電容量の減少を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1a】本発明の一具現例による硫黄-炭素複合体の断面を示す模式図である。
【
図1b】本発明の一具現例による硫黄-炭素複合体の断面を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施例1及び比較例1で製造されたリチウム-硫黄二次電池に対する放電容量を測定したグラフである。
【
図3】本発明の実施例1及び比較例1で製造されたリチウム-硫黄二次電池に対する寿命特性を測定したグラフである。
【
図4】本発明の比較例1及び比較例2で製造されたリチウム-硫黄二次電池に対する放電容量を測定したグラフである。
【
図5】本発明の比較例1及び比較例3で製造されたリチウム-硫黄二次電池に対する放電容量を測定したグラフである。
【
図6】本発明の実施例2及び比較例1で製造されたリチウム-硫黄二次電池に対する寿命特性を測定したグラフである。
【
図7】本発明の実施例3及び比較例1で製造されたリチウム-硫黄二次電池に対する放電容量を測定したグラフである。
【
図8a】実施例1で製造された硫黄-炭素複合体の断面に対するSEM(Scanning Electron Microscope)写真である。
【
図8b】実施例1で製造された硫黄-炭素複合体の断面に対するSEM(Scanning Electron Microscope)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に対して理解しやすくするために、本発明をより詳しく説明する。
【0037】
本明細書及び特許請求の範囲で使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に即して、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈しなければならない。
【0038】
本明細書で使われている用語「複合体(composite)」とは、2つ以上の材料が組み合わされて物理的・化学的に互いに異なる相(phase)を形成しながらより有効な機能を発現する物質を意味する。
【0039】
硫黄-炭素複合体
図1a及び1bは、本発明の一具現例による硫黄-炭素複合体の断面を示すものである。
【0040】
図1aを参照すれば、本発明による硫黄-炭素複合体1は、多孔性炭素材10;前記多孔性炭素材10の表面上に形成されたフッ素系界面活性剤(fluorosurfactant)コーティング層20;及び前記フッ素系界面活性剤コーティング層20の表面上に形成された硫黄コーティング層30;を含むことができる。
【0041】
また、
図1bを参照すれば、本発明による硫黄-炭素複合体1は、多孔性炭素材10の気孔10p内部の表面上に形成されたフッ素系界面活性剤(fluorosurfactant)コーティング層20;及び前記フッ素系界面活性剤コーティング層20の表面上に形成された硫黄コーティング層30;を含むことができる。
【0042】
本発明において、前記多孔性炭素材は一般的に様々な炭素材質の前駆体を炭化させることで製造されることができる。
【0043】
前記多孔性炭素材は内部に一定しない気孔を含み、前記気孔の平均直径は1ないし200nm、好ましくは1ないし150nm、より好ましくは1ないし100nm範囲であり、気孔度または空隙率は多孔性全体体積の10ないし90%、好ましくは10ないし80%、より好ましくは10ないし70%の範囲であってもよい。もし、前記気孔の平均直径と気孔度が前記範囲未満である場合、気孔の大きさが分子レベルに過ぎず硫黄の含浸が不可能であり、これと逆に、前記範囲を超過する場合多孔性炭素の機械的強度が弱化され、電極の製造工程に適用するのに好ましくない。
【0044】
前記多孔性炭素材の形態は、球形、棒型、針状、板状、チューブ型またはバルク型でリチウム二次電池に通常使われるものであれば、制限されずに使われることができる。
【0045】
前記多孔性炭素材は、多孔性構造であったり、比表面積が高いもので、当業界で通常使われるものであれば、いずれも構わない。例えば、前記多孔性炭素材では、グラファイト(graphite);グラフェン(graphene);デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)などのカーボンナノチューブ(CNT);グラファイトナノファイバー(GNF)、カーボンナノファイバー(CNF)、活性化炭素ファイバー(ACF)などの炭素繊維;及び活性炭からなる群から選択される1種以上であってもよいが、これに制限されない。好ましくは、前記多孔性炭素材はグラファイトであってもよい。
【0046】
また、前記多孔性炭素材は、前記硫黄-炭素複合体の全体重量を基準にして9ないし49重量%、好ましくは15ないし40重量%、より好ましくは20ないし30重量%で含まれることができる。前記範囲未満であれば、硫黄を含浸することができる表面積と空間の提供が十分ではないため、硫黄の電気化学的活用性(反応性)が低下し、前記範囲を超過すれば、前記硫黄-炭素複合体に含まれたフッ素系界面活性剤と硫黄の含量が相対的に低下され、リチウム二次電池の正極に適用する時、電池のエネルギー密度が低下され過ぎることがある。
【0047】
本発明において、前記フッ素系界面活性剤は、フッ素化炭素(fluorinated carbon)を含む高分子;及び極性ペンダント官能基(polar pendant group)を含む高分子;のブロック共重合体を含むものであってもよい。
【0048】
前記過フッ素化炭素は、過フッ素化炭素(perfluorinated carbon)、テトラフルオロエチレン(Tetrafluoroethylene)、フッ化ビニリデン(vinylidene fluoride)からなる群から選択される1種以上で、前記極性ペンダント官能基は、ヒドロキシル、カルボニル、アルデヒド、エーテル、カーボネート、カルボキシレート、カルボキシル、グリコール、アミン、イミン、イミド、ナイトレート、ニトリル、アルコール、アクリル、スルフィド、ジスルフィド、スルフィニル及びホスフェートからなる群から選択される1種以上であってもよい。常用製品として、DuPontTM Zonyl(登録商標).、CapstoneTM flourosurfactant、3MTM FC-4430、4432、4434などを使用することができる。
【0049】
例えば、前記フッ素系界面活性剤は、下記化学式1で表されるものであってもよい。
【0050】
【0051】
前記式において、m/(m+n)は0ないし1で;R1は水素または炭素数1ないし18のアルキル基で;R2は水素、炭素数1ないし18のアルキル基またはアクリレートポリマー主鎖に対する結合点(connection point)で;xは1ないし10の定数で;aは1ないし50の定数で;bは1ないし100の定数で;cは1ないし50の定数である。
【0052】
また、前記フッ素系界面活性剤は、前記硫黄-炭素複合体の全体重量を基準にして0.1ないし3重量%、好ましくは0.1ないし2重量%、より好ましくは0.1ないし1重量%で含まれることができる。前記範囲未満であればフッ素系界面活性剤コーティングが炭素材の表面をコーティングするのに十分ではなく、電解液の表面エネルギーを下げる効果が微々たるものであって電池の寿命特性の改善効果が大きくないし、前記範囲を超過すれば余った界面活性剤が電気的抵抗で作用することができ、前記硫黄-炭素複合体内の硫黄と炭素の含量が相対的に減少して電池の性能が低下することがある。
【0053】
また、前記フッ素系界面活性剤は、前記多孔性炭素材の上にコーティング層の形態に形成されることができる。前記フッ素系界面活性剤自体が電解液に含まれた有機溶媒の表面エネルギーは下げる特性を有するので、たとえ前記フッ素系界面活性剤コーティング層の表面に形成された硫黄コーティング層から浸出されたポリスルフィドによって電解液の粘度が高くなるとしても、前記フッ素系界面活性剤コーティング層によって電解液の正極の濡れ性を改善することができる。また、充放電過程で負極表面に分子膜を形成する界面安定剤の役目をすることによって、リチウム金属の形態を一定にして劣化を遅延させ、寿命を向上させることができる。前記硫黄コーティング層から浸出されたポリスルフィドによって負極に含まれたリチウムが劣化される現象を前記フッ素系界面活性剤コーティング層が防ぐことができる。
【0054】
本発明において、前記硫黄は無機硫黄(S8)、Li2Sn(n≧1、nは定数である)、有機硫黄化合物及び炭素-硫黄ポリマー[(C2Sx)n、2.5≦x≦50、n≧2、x及びnは定数である]からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0055】
前記硫黄は、前記硫黄-炭素複合体の全体重量を基準にして50ないし90重量%、好ましくは60ないし85重量%、より好ましくは70ないし85重量%で含まれることができる。前記範囲未満であれば電気化学的活物質である硫黄の割合が減って電池の容量が小さくなることがある。また、前記範囲を超過すれば非伝導性である硫黄が炭素材の導電構造を遮断して電気化学的活性が遮られ、電池駆動が制限的なことがある。
【0056】
また、前記硫黄コーティング層は、硫黄が集まってアイランド(island)の形態で前記フッ素系界面活性剤コーティング層の表面に形成されることもでき、前記フッ素系界面活性剤コーティング層を全て覆うことができるように均一なレイヤー(layer)の形態で形成されることもできる。好ましくはリチウム二次電池、例えば、リチウム-硫黄二次電池の正極に適用する時、電池の容量を考慮して前記硫黄コーティング層は均一なレイヤーの形態で形成されることができる。
【0057】
上述したような硫黄-炭素複合体は、多孔性炭素材の上にフッ素系界面活性剤コーティング層と硫黄コーティング層が順次形成されていて、リチウム二次電池の正極材で使われることができる。
【0058】
特に、前記硫黄-炭素複合体は、リチウム-硫黄二次電池の正極材で使われることができ、電池の充放電が行われながら前記硫黄コーティング層に含まれた硫黄がポリスルフィドの形態で溶けるようになっても前記フッ素系界面活性剤コーティング層によって電解液の表面エネルギーが低くなって電解液の正極の濡れ性に優れるようになり、これによって正極で発生する化学反応が均一に起きるようにすることができる。
【0059】
また、前記硫黄-炭素複合体をリチウム金属の負極材で含む電池に適用する場合、前記フッ素系界面活性剤コーティング層によってリチウムの劣化を防ぐことができて電池の寿命を改善することができる。
【0060】
硫黄-炭素複合体の製造方法
本発明はまた、硫黄-炭素複合体の製造方法に係り、S1)フッ素系界面活性剤(fluorosurfactant)を溶媒に溶解させ、フッ素系界面活性剤溶液を製造する段階;(S2)前記フッ素系界面活性剤溶液と多孔性炭素材を混合してスラリーを製造する段階;(S3)前記スラリーを乾燥させて溶媒を取り除いてスラリー粉末を形成する段階;(S4)前記スラリー粉末と硫黄を混合して混合物を形成する段階;及び(S5)前記混合物を加熱して硫黄-炭素複合体を製造する段階;を含むことができる。
【0061】
以下、各段階別に本発明の硫黄-炭素複合体の製造方法をより詳しく説明する。
【0062】
(S1)段階
(S1)段階では、フッ素系界面活性剤(fluorosurfactant)を溶媒に溶解させ、フッ素系界面活性剤溶液を製造することができる。
【0063】
前記フッ素系界面活性剤の種類及び重量は前述したとおりである。
【0064】
前記溶媒は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-ブタノール、イソブタノール、3-ペンタノール、ドデカノール、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)及びジメチルホルムアミド(DMF)からなる群から選択される1種以上であってもよく、好ましくはエタノールであってもよい。
【0065】
前記フッ素系界面活性剤溶液の濃度は、固形分重量を基準にして0.1ないし5重量%、好ましくは0.1ないし2重量%、より好ましくは0.1ないし1重量%であってもよい。前記範囲未満であれば製造される硫黄-炭素複合体で多孔性炭素材の表面にコーティングされたフッ素系界面活性剤コーティング層が均一にコーティングされなかったり、フッ素系界面活性剤の量が少なくて電解液の表面エネルギー低下による正極の濡れ性改善のような効果を期待できず、前記範囲を超過すれば溶液の濃度が高すぎて過量の界面活性剤が抵抗成分で作用して電池の過電圧を増加させることがあり、多孔性炭素材の表面にフッ素系界面活性剤コーティング層が均一に形成されないこともある。
【0066】
(S2)段階
(S2)段階では、前記フッ素系界面活性剤溶液と多孔性炭素材を混合してスラリーを製造することができる。
【0067】
この時、前記フッ素系界面活性剤と多孔性炭素材の使容量は、前述したように、硫黄-炭素複合体に含まれたフッ素系界面活性剤と多孔性炭素材の重量を充たす分を使用することができる。
【0068】
また、前記多孔性炭素材の種類及び形態は前述したとおりである。
【0069】
(S3)段階
(S3)段階では、前記スラリーを乾燥させて溶媒を取り除いてスラリー粉末を形成することができる。
【0070】
前記乾燥は、前記スラリーを真空下で撹拌させたり、撹拌させながら加熱して実施することができる。
【0071】
この時、前記スラリーを真空下で撹拌させて溶媒を取り除く場合、前記真空による真空度は使用する溶媒の蒸気圧以上にして溶媒が沸騰することを制限することができる。一般に、真空とは常圧より低い気圧をいうので、決まった乾燥温度での溶媒の蒸気圧を想定する時、該当蒸気圧より低い圧力まで強い真空を加えれば、溶媒が沸騰するようになって均一な乾燥が不可能である。よって、溶媒の蒸気圧以上の真空まで加えて溶媒が沸騰することなく乾燥するために、溶媒の蒸気圧以上の真空を加えることができる。
【0072】
また、前記スラリーを撹拌させながら加熱して溶媒を取り除く場合、前記加熱温度は溶媒の沸点以下であってもよい。例えば、前記フッ素系界面活性剤溶液を製造する時、溶媒でエタノールを使用したら、前記乾燥はエタノールの沸点である78℃以下の温度で前記スラリーを撹拌及び加熱して溶媒を取り除くことができる。
【0073】
前記溶媒が除去された後スラリー粉末を得ることができ、前記スラリー粉末は多孔性炭素材の表面にフッ素系界面活性剤コーティング層が形成された形態を有することができる。
【0074】
(S4)段階
(S4)段階では、前記スラリー粉末と硫黄を混合して混合物を形成することができる。
【0075】
この時、前記硫黄の使容量は前述したように、硫黄-炭素複合体に含まれた硫黄の重量を充たす分を使用することができる。また、前記硫黄の種類及び形態は前述したとおりある。
【0076】
(S5)段階
(S5)段階では、前記混合物を加熱して硫黄-炭素複合体を製造することができる。
【0077】
この時、前記加熱時の温度は、硫黄が溶けて硫黄コーティング層を形成できる程度の温度、すなわち、硫黄の融点以上であってもよい。具体的に、前記加熱時の温度は115℃以上、好ましくは130℃ないし180℃、より好ましくは150℃ないし160℃であってもよい。前記範囲未満であれば硫黄が溶けない状態で存在して硫黄コーティング層を形成することができないし、前記範囲を超過すれば硫黄-炭素複合体が製造されることはあるが、硫黄が揮発して硫黄の損失と製造装備の劣化を引き起こすことがある。また、150℃ないし160℃で溶融硫黄の粘度が低くて担持に有利なことがある。
【0078】
具体的に、前記混合物を加熱して溶融拡散法によって複合体を製造することができる。
【0079】
正極
本発明はまた、前述したような硫黄-炭素複合体を含む正極に関する。
【0080】
前記正極は、正極集電体及び前記正極集電体の少なくとも一面に形成された正極活物質層を含むことができる。前記正極集電体は、当該電池に化学的変化を引き起こすことなく高い導電性を有するものであれば特に制限されず、例えばステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用されることができる。この時、前記正極集電体は正極活物質との接着力を高めることもできるよう、表面に微細な凹凸が形成されたフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態を使用することができる。
【0081】
また、前記正極活物質層は、正極活物質、バインダー及び導電材を含むことができる。
【0082】
この時、前記正極活物質は、前述したような硫黄-炭素複合体であってもよい。
【0083】
前記正極活物質は、正極活物質層の総重量に対して40ないし95重量%、好ましくは45ないし85重量%、より好ましくは50ないし85重量%で含まれることができる。前記正極活物質の含量が前記範囲未満であれば電池の容量が低下されることがあり、前記範囲を超過すればバインダーと導電材の含量が相対的に低下して正極の機械的物性と電気伝導性が低下することがある。
【0084】
また、前記バインダーは正極活物質と集電体との結着力を高めるためのものであって、ポリ(ビニルアセテート)、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、アルキル化ポリエチレンオキシド、架橋結合されたポリエチレンオキシド、ポリビニルエーテル、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、Polyvinylidene fluoride)、ポリヘキサフルオロプロピレンとポリフッ化ビニリデンのコポリマー、ポリ(エチルアクリレート)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピリジン、ポリスチレン、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、これらの誘導体、ブレンド、コポリマーなどが使われることができ、前記ブレンドの場合、前記スチレン-ブタジエンゴムと前記カルボキシメチルセルロースの混合形態のバインダーを例えることができる。
【0085】
また、前記バインダーは、正極活物質層の総重量に対して5ないし20重量%、好ましくは5ないし18 重量%、より好ましくは5ないし15重量%で含まれることができる。前記バインダーの含量が前記範囲未満であればバインダー使用による正極活物質の間または正極活物質と集電体の間の結着力改善効果が微々たるものであり、前記範囲を超過すれば正極活物質の含量が相対的に少なくなって容量特性が低下するおそれがある。
【0086】
前記導電材は電子が正極内で円滑に移動させるためのもので、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックのような炭素系物質;またはポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロールのような導電性高分子;であってもよい。
【0087】
また、前記導電材は、正極活物質層の総重量に対して5ないし40重量%、好ましくは5ないし35重量%、好ましくは5ないし30重量%で含まれることができる。前記導電材の含量が前記範囲未満であれば導電材の使用による導電性向上効果が微々たるものである一方、前記範囲超過であれば正極活物質の含量が相対的に少なくなって容量特性が低下するおそれがある。
【0088】
正極の製造方法
前述したような正極は通常の方法によって製造されることができ、具体的には、正極活物質と導電材及びバインダーを有機溶媒で混合して製造した正極活物質層形成用組成物を集電体上に塗布した後、乾燥及び選択的に圧延して製造されることができる。
【0089】
この時、前記有機溶媒では、正極活物質、バインダー及び導電材を均一に分散させることができ、容易に蒸発されるものであれば特に制限されない。例えば、前記有機溶媒は、アセトニトリル、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、水及びイソプロピルアルコールからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0090】
リチウム二次電池
本発明はまた、前記のような硫黄-炭素複合体を正極にリチウム二次電池に関する。
【0091】
本発明によるリチウム二次電池は、正極、負極及びこれらの間に介在された電解質を含み、この時、前記正極として前述したような硫黄-炭素複合体を正極活物質で含む正極を使用することができる。
【0092】
また、本発明によるリチウム二次電池において、負極は負極集電体の上に負極活物質を有する負極活物質層が形成されたり、負極活物質層(一例として、リチウムホイル)を単独で使用することができる。
【0093】
この時、負極集電体や負極活物質層の種類は本発明で特に限定せずに、公知の材質が使用可能である。
【0094】
また、負極集電体は、当該電池に化学的変化を引き起こさずに導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使われることができる。また、前記負極集電体は正極集電体と同様、表面に微細な凹凸が形成されたフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が使われることができる。
【0095】
また、負極活物質は、結晶質人造黒鉛、結晶質天然黒鉛、非晶質ハードカーボン、低結晶質ソフトカーボン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、スーパー-P、グラフェン(graphene)、繊維状炭素からなる群から選択される一つ以上の炭素系物質、Si系物質、LixFe2O3(0≦x≦1)、LixWO2(0≦x≦1)、SnxMe1-xMe'yOz(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me':Al、B、P、Si、周期表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;スズ系合金;SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO2、Bi2O3、Bi2O4、Bi2O5などの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li-Co-Ni系材料;チタン酸化物;リチウムチタン酸化物などを含むことができるが、これらのみに限定されるものではない。
【0096】
これに加え、負極活物質はSnxMe1-xMe'yOz(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me':Al、B、P、Si、周期表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO2、Bi2O3、Bi2O4及びBi2O5などの酸化物などを使用することができ、結晶質炭素、非晶質炭素または炭素複合体のような炭素系負極活物質が単独で、または2種以上が混用されて使われることができる。
【0097】
また、本発明によるリチウム二次電池において、電解液はリチウム二次電池の製造に通常使用されていたものなどが全て使われることができる。
【0098】
例えば、前記電解液で電解質として含まれることができるリチウム塩は、リチウム二次電池用電解液に通常使われるものなどが制限されずに使われることができ、例えば、前記リチウム塩の陰イオンとしては、F-、Cl-、Br-、I-、NO3
-、N(CN)2
-、BF4
-、ClO4
-、PF6
-、(CF3)2PF4
-、(CF3)3PF3
-、(CF3)4PF2
-、(CF3)5PF-、(CF3)6P-、CF3SO3
-、CF3CF2SO3
-、(CF3SO2)2N-、(FSO2)2N-
、CF3CF2(CF3)2CO-、(CF3SO2)2CH-、(SF5)3C-、(CF3SO2)3C-、CF3(CF2)7SO3
-、CF3CO2
-、CH3CO2
-、SCN-及び(CF3CF2SO2)2N-からなる群から選択されたいずれか一つであってもよい。
【0099】
本発明で使われる電解液において、電解液に含まれる有機溶媒としては、リチウム二次電池用電解液に通常使われるものなどが制限されずに使われることができ、代表的にプロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ビニレンカーボネート、スルホラン、ガンマ-ブチロラクトン、プロピレンスルフィド及びテトラヒドロフランからなる群から選択されるいずれか一つ、またはこれらの中で2種以上の混合物などが代表的に使われることができる。特に、前記カーボネート系有機溶媒の中で環状カーボネートであるエチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートは、高粘度の有機溶媒で誘電率が高くて電解質内のリチウム塩をよく解離させるので好ましく使われることができ、このような環状カーボネートにジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートのような低粘度、低誘電率の線状カーボネートを適度な割合で混合して使用すれば、高い電気伝導率を有する電解液を作ることができ、もっと好ましく使用することができる。
【0100】
また、本発明によるリチウム二次電池において、分離膜は従来に分離膜で使用された通常の多孔性高分子フィルムを使用することができる。例えば、前記分離膜は、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを単独で、またはこれらを積層して使用することができるし、または通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなった不織布を使うことができるが、これに限定されるものではない。
【0101】
前述したリチウム二次電池の形態は特に制限されないし、例えば、ゼリー-ロール型、スタック型、スタック-フォールディング型(スタック-Z-フォールディング型を含む)、またはラミネーション-スタック型であってもよく、好ましくはスタック-フォールディング型であってもよい。
【0102】
このような前記負極、分離膜及び正極が順次積層されて電解液を注入した電極組立体を製造した後、これを電池ケースに入れて、キャッププレート及びガスケットで密封して組み立ててリチウム二次電池を製造することができる。
【0103】
この時、リチウム二次電池は、使用する正極/負極材質によってリチウム-硫黄二次電池、リチウム-空気電池、リチウム-酸化物電池、リチウム全固体電池など様々な電池に分類可能であり、形態によって円筒状、角形、コイン型、ポーチ型などに分類されることができ、サイズによってバルクタイプと薄膜タイプに分けることができる。これらの電池の構造と製造方法は当該分野に広く知られているので、詳しい説明は省略する。
【0104】
前記リチウム-硫黄二次電池は、正極活物質で硫黄を、負極活物質でリチウム金属を使用することができる。リチウム-硫黄二次電池の放電時、負極ではリチウムの酸化反応が起こるし、正極では硫黄の還元反応が生じる。この時、還元された硫黄は負極から移動されてきたリチウムイオンと結合してリチウムポリスルフィドに変換され、最終的にリチウムスルフィドを形成する反応を伴う。
【0105】
本発明によるリチウム二次電池は、高容量及び高いレート特性などが要求されるデバイスの電源で使用されることができる。前記デバイスの具体的な例としては、電池的モーターによって動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグ-インハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(Escooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0106】
以下、本発明を理解しやすくするために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能であることは、当業者にとって自明なことであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0107】
実施例1
(1)硫黄-炭素複合体の製造
フッ素系界面活性剤(FC-4430、3MTM、CAS No.:1017237-78-3)をエタノール溶媒に溶解させ、固形分重量を基準にして0.5重量%のフッ素系界面活性剤溶液を製造した。
【0108】
前記フッ素系界面活性剤溶液と多孔性炭素材(炭素粉末、CAS No.:308068-56-6)を均一に混合してスラリーを製造した。
【0109】
前記スラリーを撹拌しながら70℃で加熱させて溶媒を取り除いた後、スラリー粉末を得た。
【0110】
前記スラリー粉末と硫黄粉末(CAS No.:7704-34-9)を混合して得た混合物を155℃で加熱し、溶融拡散法によって硫黄-炭素複合体を製造した。
【0111】
この時、製造された硫黄-炭素複合体において、炭素、フッ素系界面活性剤及び硫黄の重量は、それぞれ28.5重量%、1.5重量%及び70.0重量%である。
【0112】
(2)正極製造
正極集電体として発泡アルミニウムを用意した。
【0113】
前記硫黄-炭素複合体75重量%、導電材10重量%及びバインダー15重量%を混合した後、溶媒であるD.I水(脱イオン水(Deionized Water))に溶解させて固形分を基準にして5重量%濃度のスラリーを製造した後、前記正極集電体上に塗布及び乾燥して正極を製造した。この時、導電材はカーボンブラック、バインダーはPVDFバインダーを使用した。
【0114】
(3)リチウム-硫黄二次電池の製造
前記製造された硫黄-炭素複合体を含む正極とリチウム負極を対面するように位置させた後、厚さ20μm及び気孔度45%のポリエチレン分離膜を前記正極と負極の間に介在した。
【0115】
その後、ケース内部に電解液を注入してリチウム-硫黄二次電池を製造した。この時、前記電解質は、ジオキソラン(DOL)及びジメチレングリコールジメチルエーテル(DEGDME、混合体積比=6:4)からなる有機溶媒に1M濃度のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)と1wt%のLiNO3を溶解させて製造した。
【0116】
実施例2
実施例1と同様に実施するが、製造された硫黄-炭素複合体において、炭素、フッ素系界面活性剤及び硫黄の重量がそれぞれ29.95重量%、0.05重量%及び70.0重量%になるようにして、硫黄-炭素複合体、正極及びリチウム二次電池を製造した。
【0117】
実施例3
実施例1と同様に実施するが、製造された硫黄-炭素複合体において、炭素、フッ素系界面活性剤及び硫黄の重量がそれぞれ26重量%、4重量%及び70.0重量%になるようにして、硫黄-炭素複合体、正極及びリチウム二次電池を製造した。
【0118】
比較例1
実施例1と同様に実施するが、フッ素系界面活性剤を使わずに、硫黄と炭素の重量比が3:7になるように硫黄-炭素複合体、正極及びリチウム-硫黄二次電池を製造した。
【0119】
比較例2
実施例1と同様に実施するが、フッ素系界面活性剤を使わずに、硫黄と炭素の重量比が3:7になるように硫黄-炭素複合体を製造して正極に適用した。
【0120】
また、前記フッ素系界面活性剤を電解液に0.3重量%ぐらい注入してリチウム-硫黄二次電池を製造した。
【0121】
比較例3
炭素粒子30重量%及び硫黄70重量%を混合して溶融拡散法によって複合体を製造した後、正極製造工程でD.I水を添加する時、フッ素系界面活性剤を前記複合体の重量に対して1重量%添加して同一に製造した。リチウム-硫黄二次電池は、実施例1と同様の方法で実施して製造した。
【0122】
実験例1
実施例及び比較例で製造された電池の容量及び寿命特性に対する実験を実施した。
【0123】
実施例及び比較例で製造された電池に対して、0.1Cで放電した後で充放電を2回行い、0.1C充電/0.2C放電で3回充放電、以後0.3C充電/0.5C放電で駆動条件を設定した。
【0124】
図2は、本発明の実施例1及び比較例1で製造されたリチウム-硫黄二次電池に対する放電容量を測定したグラフで、
図3は本発明の実施例1及び比較例1で製造されたリチウム-硫黄二次電池に対する寿命特性を測定したグラフである。
【0125】
図2及び
図3を参照すれば、実施例1と比較例1の硫黄の単位重量当たり放電容量は同一であるが、寿命は実施例1が比較例1に比べて2倍ぐらい改善されたことが分かる。
【0126】
図4は本発明の比較例1及び比較例2で製造されたリチウム-硫黄二次電池に対する放電容量を測定したグラフである。
【0127】
図4を参照すれば、比較例2は比較例1に比べて放電容量が低下したことが分かって、これによってフッ素系界面活性剤を正極と電解液のいずれにも含まない場合よりも、前記フッ素系界面活性剤を正極ではなく電解液に含む場合に電池性能がさらに低下することを確認することができる。
【0128】
図5は、本発明の比較例1及び比較例3で製造されたリチウム-硫黄二次電池に対する放電容量を測定したグラフである。
【0129】
図5を参照すれば、比較例3は比較例1に比べて放電容量が低下したことが分かって、これによってフッ素系界面活性剤を炭素材と硫黄の間にコーティングする場合より正極製造用スラリーに含む場合、電池性能がさらに低下することを確認することができる。
【0130】
図6は、本発明の実施例2及び比較例1で製造されたリチウム-硫黄二次電池に対する寿命特性を測定したグラフである。
【0131】
図6を参照すれば、実施例2は実施例1に比べてフッ素系界面活性剤が多少少なく含まれ、フッ素系界面活性剤を含まない比較例1に比べて寿命特性の改善効果が微々たることが分かる。
【0132】
図7は、本発明の実施例3及び比較例1で製造されたリチウム-硫黄二次電池に対する放電容量を測定したグラフである。
【0133】
図7を参照すれば、実施例3は実施例1に比べてフッ素系界面活性剤が多少多く含まれ、フッ素系界面活性剤を含まない比較例1に比べて放電容量改善効果が微々たることが分かる。また、実施例3は、放電末端の抵抗が増加して放電容量が減少することを確認した。
【0134】
実験例2
実施例及び比較例で製造された硫黄-炭素複合体の断面の形態を観察した。
【0135】
図8a及び8bは、実施例1で製造された硫黄-炭素複合体の断面に対するSEM写真である。
【0136】
図8aを参照すれば、実施例の炭素材をフッ素系界面活性剤にコーティングした後は、F原子が表面で少量観察されるが、
図8bのように、その上に硫黄を担持した後はF原子が観察されないので、実施例1の硫黄-炭素複合体内のフッ素系界面活性剤は炭素材と硫黄の間に存在することが分かる。
図8a及び8bに記載された数値は、いずれもFの分率を示すものである。
【0137】
以上、本発明は、たとえ限定された実施例と図面によって説明されたが、本発明はこれによって限定されず、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者によって本発明の技術思想と下記特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは勿論である。