(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】分散モードスピーカのための強化アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20220607BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20220607BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20220607BHJP
H04R 7/04 20060101ALI20220607BHJP
H04R 9/04 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
H04R1/00 310F
G06F3/01 560
H04R1/02 103Z
H04R1/02 103G
H04R1/00 318Z
H04R7/04
H04R9/04 105A
(21)【出願番号】P 2020566762
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(86)【国際出願番号】 US2019063769
(87)【国際公開番号】W WO2020113115
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-03-05
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502208397
【氏名又は名称】グーグル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Google LLC
【住所又は居所原語表記】1600 Amphitheatre Parkway 94043 Mountain View, CA U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴームズ,ラジブ・バーナード
(72)【発明者】
【氏名】スターンズ,マーク・ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】キング,アンソニー
【審査官】西村 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-077918(JP,A)
【文献】特開2003-143690(JP,A)
【文献】特開2002-164977(JP,A)
【文献】特表2009-513051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00-31/00
G06F 3/00- 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータであって、
平面において延びるパネルおよび前記平面から直交して延びる1つ以上の柱を含むフレームと、
磁石およびボイスコイルを含む磁気回路アセンブリとを含み、前記磁石およびボイスコイルは、前記アクチュエータの動作中、前記パネルの前記平面に直交する軸に沿って互いに対して可動であり、前記アクチュエータはさらに、
前記フレームを前記磁気回路アセンブリの第1の構成要素に取り付ける1つ以上の懸架部材を含み、各懸架部材は、
前記懸架部材を前記柱のうちの対応する柱に取り付ける、軸方向に延びる垂直区分と、
前記パネルの平面に平行な第1の平面において前記対応する柱から遠ざかって、前記磁気回路アセンブリの前記第1の構成要素に取り付けられた端まで延びる第1のアームとを含み、
前記アクチュエータの動作中、前記懸架部材の前記第1のアームは、前記ボイスコイルに対する前記磁石の軸方向変位を許容するように撓む、アクチュエータ。
【請求項2】
前記アクチュエータの動作中に前記懸架部材が撓む際に前記懸架部材の1つ以上の場所での応力の集中を減少させるように、前記第1の平面における前記第1のアームの厚さが変化する、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記第1のアームは、前記第1の平面において前記対応する柱から第1の方向に遠ざかって延びる第1の直線区分と、前記第1のアームに接続された第2の直線区分とを含み、前記第2の直線区分は、前記第1の平面において前記第1の方向に直交して延びる、請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記第2の直線区分は、前記第2の直線区分の長さに沿ってテーパが付いた、前記第1の平面における厚さを有する、請求項3に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記第1のアームは、前記第1の直線区分と前記第2の直線区分とを接続する第1の曲線区分を含む、請求項3または4に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記第1のアームは、第2の曲線区分によって前記第2の直線区分に接続された第3の直線区分を含み、前記第3の直線区分は、前記第1の平面において前記第2の直線区分に直交して延び、前記第3の直線区分は、前記磁気回路アセンブリの前記第1の構成要素に取り付けられる、請求項3~5のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記第2の曲線区分は、前記第2の曲線区分の外縁に沿った第1の曲率半径を有し、前記第1の曲率半径は、前記第2の曲線区分の内縁に沿った第2の曲率半径よりも小さい、請求項6に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
各懸架部材は、前記パネルの平面に平行な第2の平面において前記対応する柱から遠ざかって、前記磁気回路アセンブリの前記第1の構成要素に取り付けられた端まで延びる第2のアームを含む
、請求項
1~7のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項9】
前記第1および第2のアームは、前記懸架部材の前記垂直区分によって接続される、請求項8に記載のアクチュエータ。
【請求項10】
前記第1および第2のアームは、対応する曲線区分によって前記垂直区分の対向端にそれぞれ接続され、前記対応する曲線区分はそれぞれ前記第1および第2の平面から延びる、請求項9に記載のアクチュエータ。
【請求項11】
前記垂直区分と2つの曲線区分とは集団でC字型の区分を形成する、請求項10に記載のアクチュエータ。
【請求項12】
前記曲線区分には、前記フレームの前記対応する柱がない、請求項10または11に記載のアクチュエータ。
【請求項13】
前記第1および第2のアームの前記端は、前記磁気回路アセンブリの前記第1の構成要素の両側にそれぞれ取り付けられる、請求項8に記載のアクチュエータ。
【請求項14】
前記磁気回路アセンブリの前記第1の構成要素は、前記フレームの前記平面において略多角形形状を有し、対応する懸架部材が、前記多角形の各それぞれの辺に取り付けられる
、請求項
1~13のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項15】
前記多角形は四角形である、請求項14に記載のアクチュエータ。
【請求項16】
前記ボイスコイルは前記フレームに取り付けられ、前記磁気回路アセンブリの前記第1の構成要素は前記磁石を含む
、請求項
1~15のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項17】
請求項
1~16のいずれか1項に記載のアクチュエータを含む、パネルオーディオスピーカ。
【請求項18】
前記パネルはディスプレイパネルを含む、請求項17に記載のパネルオーディオスピーカ。
【請求項19】
モバイルデバイスであって、
平面において延びる電子ディスプレイパネルと、
前記電子ディスプレイパネルに取り付けられたシャーシとを含み、前記シャーシは、前記シャーシの背面パネルと前記電子ディスプレイパネルとの間に空間を規定し、前記モバイルデバイスはさらに、
前記空間に収容された電子制御モジュールを含み、前記電子制御モジュールはプロセッサを含み、前記モバイルデバイスはさらに、
前記空間に収容され、前記電子ディスプレイパネルの表面に取り付けられたアクチュエータを含み、前記アクチュエータは、
平面において延びるパネルおよび前記平面から直交して延びる1つ以上の柱を含むフレームと、
磁石およびボイスコイルを含む磁気回路アセンブリとを含み、前記磁石およびボイスコイルは、前記アクチュエータの動作中、前記パネルの前記平面に直交する軸に沿って互いに対して可動であり、前記アクチュエータはさらに、
前記フレームを前記磁気回路アセンブリの第1の構成要素に取り付ける1つ以上の懸架部材を含み、各懸架部材は、
前記懸架部材を前記柱のうちの対応する柱に取り付ける、軸方向に延びる垂直区分と、
前記パネルの平面に平行な第1の平面において前記対応する柱から遠ざかって、前記磁気回路アセンブリの前記第1の構成要素に取り付けられた端まで延びる第1のアームとを含み、
前記アクチュエータの動作中、前記懸架部材の前記第1のアームは、前記ボイスコイルに対する前記磁石の軸方向変位を許容するように撓む、モバイルデバイス。
【請求項20】
前記モバイルデバイスは、携帯電話またはタブレット、またはウェアラブルデバイスであり、前記ウェアラブルデバイスは、スマートウォッチまたは頭部装着型デバイスである、請求項19に記載のモバイルデバイス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は、2018年11月30日に出願された米国仮出願第62/774,104号の優先権を主張する。この先行出願の開示は、本願の開示の一部と考えられ、本願の開示において引用により援用される。
【0002】
背景
この明細書は、分散モードアクチュエータ(distributed mode actuator:DMA)、電磁(electromagnetic1:EM)アクチュエータ、ならびに、DMAおよびEMアクチュエータを特徴とする分散モードスピーカに関する。
【0003】
多くの従来のスピーカは、振動板でピストン状の運動を誘発することによって音を発生させる。対照的に、分散モードスピーカ(distributed mode loudspeaker:DML)などのパネルオーディオスピーカは、電気音響アクチュエータを通してパネルで均一に分散される振動モードを誘発することによって動作する。典型的には、アクチュエータは、圧電アクチュエータまたは電磁アクチュエータである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
典型的なアクチュエータの動作中、アクチュエータの構成要素は曲がり、これらの構成要素に機械的応力を経験させる。この応力は、アクチュエータの性能を低下させ、寿命を減少させるおそれがある。一定の幅を有する可撓性構成要素を特徴とする従来のDMAおよびEMアクチュエータと、直角に曲げられた可撓性構成要素を有する従来のEMアクチュエータとは、機械的応力による性能低下が特に起こりやすい。
【0005】
概要
従来の分散モードアクチュエータ(DMA)および電磁(EM)アクチュエータへの改良が開示される。たとえば、そのようなDMAおよびEMアクチュエータの実現化例は、従来のデバイスと比べて寸法が増加した部分を有する可撓性構成要素を特徴とする。寸法が増加した部分は、高応力領域に戦略的に位置する。構成要素はまた、増加した寸法が、アクチュエータが占める体積をあまり増加させないように、形作られ得る。
【0006】
音響パネルなどの機械的負荷にDMAまたはEMアクチュエータを取り付けることにより、アクチュエータは、パネルで振動モードを誘発して音を発生させるために使用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般に、第1の局面において、この発明は、平面において延びるパネルおよび平面から直交して延びる1つ以上の柱を含むフレームを含むアクチュエータを特徴とする。アクチュエータはまた、磁石およびボイスコイルを含む磁気回路アセンブリを含み、磁石およびボイスコイルは、アクチュエータの動作中、パネルの平面に直交する軸に沿って互いに対して可動である。アクチュエータはさらに、フレームを磁気回路アセンブリの第1の構成要素に取り付ける1つ以上の懸架部材を含む。各懸架部材は、懸架部材を柱のうちの対応する柱に取り付ける、軸方向に延びる垂直区分を含む。各懸架部材はさらに、パネルの平面に平行な第1の平面において対応する柱から遠ざかって、磁気回路アセンブリの第1の構成要素に取り付けられた端まで延びる第1のアームを含む。アクチュエータの動作中、懸架部材の第1のアームは、ボイスコイルに対する磁石の軸方向変位を許容するように撓む。
【0008】
アクチュエータの実施形態は、以下の特徴および/または他の局面の1つ以上の特徴のうちの1つ以上を含み得る。たとえば、アクチュエータの動作中に懸架部材が撓む際に懸架部材の1つ以上の場所での応力の集中を減少させるように、第1の平面における第1のアームの厚さが変化し得る。すなわち、第1の平面における第1のアームの厚さは均一でなくてもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、第1のアームは、第1の平面において対応する柱から第1の方向に遠ざかって延びる第1の直線区分と、第1のアームに接続された第2の直線区分とを含んでいてもよく、第2の直線区分は、第1の平面において第1の方向に直交して延びる。第1のアームは、第1の直線区分と第2の直線区分とを接続する第1の曲線区分を含み得る。第2の直線区分は、第2の直線区分の長さに沿ってテーパが付いた、第1の平面における厚さを有し得る。第1のアームは、第2の曲線区分によって第2の直線区分に接続された第3の直線区分を含んでいてもよく、第3の直線区分は、第1の平面において第2の直線区分に直交して延び、第3の直線区分は、磁気回路アセンブリの第1の構成要素に取り付けられる。
【0010】
いくつかの実施形態では、第2の曲線区分は、当該第2の曲線区分の外縁に沿った第1の曲率半径を有し、第1の曲率半径は、第2の曲線区分の内縁に沿った第2の曲率半径よりも小さい。
【0011】
いくつかの実施形態では、各懸架部材は、パネルの平面に平行な第2の平面において対応する柱から遠ざかって、磁気回路アセンブリの第1の構成要素に取り付けられた端まで延びる第2のアームを含む。第1および第2のアームは、対応する曲線区分によって垂直区分の対向端にそれぞれ接続されてもよく、対応する曲線区分はそれぞれ第1および第2の平面から延びる。垂直区分と2つの曲線区分とは集団でC字型の区分を形成し得る。曲線区分には、フレームの対応する柱がなくてもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、第1および第2のアームは、懸架部材の垂直区分によって接続され得る。第1および第2のアームの端は、磁気回路アセンブリの第1の構成要素の両側にそれぞれ取り付けられ得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、磁気回路アセンブリの第1の構成要素は、フレームの平面において略多角形形状を有し、対応する懸架部材が、多角形の各それぞれの辺に取り付けられる。すなわち、磁気回路アセンブリの第1の構成要素は、フレームの平面において多角形である形状を有する。多角形は四角形であってもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、ボイスコイルはフレームに取り付けられ、磁気回路アセンブリの第1の構成要素は磁石を含む。
【0015】
別の局面において、この発明は、第1の局面のアクチュエータを含むパネルオーディオスピーカを特徴とする。パネルオーディオスピーカのパネルは、ディスプレイパネルを含み得る。
【0016】
別の局面において、この発明は、平面において延びる電子ディスプレイパネルを含むモバイルデバイスを特徴とする。モバイルデバイスはまた、電子ディスプレイパネルに取り付けられたシャーシを含んでいてもよく、シャーシは、当該シャーシの背面パネルと電子ディスプレイパネルとの間に空間を規定する。モバイルデバイスはさらに、空間に収容された電子制御モジュールを含んでいてもよく、電子制御モジュールはプロセッサを含んでいてもよい。加えて、モバイルデバイスは、空間に収容されて電子ディスプレイパネルの表面に取り付けられたアクチュエータを含み得る。アクチュエータは、平面において延びるパネルおよび平面から直交して延びる1つ以上の柱を含むフレームを含み得る。アクチュエータはまた、磁石およびボイスコイルを含む磁気回路アセンブリを含んでいてもよく、磁石およびボイスコイルは、アクチュエータの動作中、パネルの平面に直交する軸に沿って互いに対して可動である。アクチュエータはさらに、フレームを磁気回路アセンブリの第1の構成要素に取り付ける1つ以上の懸架部材を含み得る。各懸架部材は、懸架部材を柱のうちの対応する柱に取り付ける、軸方向に延びる垂直区分を含み得る。各懸架部材はまた、パネルの平面に平行な第1の平面において対応する柱から遠ざかって、磁気回路アセンブリの第1の構成要素に取り付けられた端まで延びる第1のアームを含み得る。アクチュエータの動作中、懸架部材の第1のアームは、ボイスコイルに対する磁石の軸方向変位を許容するように撓む。
【0017】
別の局面において、この発明は、平面において延びる電子ディスプレイパネルを含むウェアラブルデバイスを特徴とする。ウェアラブルデバイスはまた、電子ディスプレイパネルに取り付けられたシャーシを含んでいてもよく、シャーシは、シャーシの背面パネルと電子ディスプレイパネルとの間に空間を規定する。ウェアラブルデバイスはさらに、空間に収容された電子制御モジュールを含んでいてもよく、電子制御モジュールはプロセッサを含んでいてもよい。加えて、ウェアラブルデバイスは、空間に収容され、電子ディスプレイパネルの表面に取り付けられたアクチュエータを含み得る。アクチュエータは、平面において延びるパネルおよび平面から直交して延びる1つ以上の柱を含むフレームを含み得る。アクチュエータはまた、磁石およびボイスコイルを含む磁気回路アセンブリを含んでいてもよく、磁石およびボイスコイルは、アクチュエータの動作中、パネルの平面に直交する軸に沿って互いに対して可動である。アクチュエータはさらに、フレームを磁気回路アセンブリの第1の構成要素に取り付ける1つ以上の懸架部材を含み得る。各懸架部材は、懸架部材を柱のうちの対応する柱に取り付ける、軸方向に延びる垂直区分を含み得る。各懸架部材はまた、パネルの平面に平行な第1の平面において対応する柱から遠ざかって、磁気回路アセンブリの第1の構成要素に取り付けられた端まで延びる第1のアームを含み得る。アクチュエータの動作中、懸架部材の第1のアームは、ボイスコイルに対する磁石の軸方向変位を許容するように撓む。
【0018】
他の利点の中でも、実施形態は、従来のアクチュエータと比べて、湾曲によって生じる機械的応力からの故障の可能性が減少したアクチュエータを含む。
【0019】
別の利点は、アクチュエータが、従来のアクチュエータと実質的に同じ空間を占める、ということである。これは、アクチュエータがより大きい電子デバイスへと一体化され、所定の体積内に収まることが要求される場合に特に有益であり得る。
【0020】
他の利点は、説明、図面、および請求項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】モバイルデバイスの一実施形態の斜視図である。
【
図2】
図1のモバイルデバイスの概略断面図である。
【
図3A】第1の平面において撓み部を有するDMAの断面図である。
【
図4A】
図3Aの第1の平面とは異なる第2の平面へと部分的に折り畳まれた撓み部を有するDMAの断面図である。
【
図5A】EMアクチュエータの4分の1切断斜視図である。
【
図6】EMアクチュエータの例示的な撓み部の斜視図である。
【
図8】モバイルデバイスのための電子制御モジュールの一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
さまざまな図面における同様の参照符号は、同様の要素を示す。
詳細な説明
この開示は、分散モードスピーカ(DML)などのパネルオーディオスピーカのためのアクチュエータを特徴とする。そのようなスピーカは、携帯電話、タブレット、またはウェアラブルデバイス(たとえばスマートウォッチ、または、スマート眼鏡などの頭部装着型デバイス)などのモバイルデバイスに一体化され得る。たとえば、
図1を参照して、モバイルデバイス100は、デバイスシャーシ102と、パネルオーディオスピーカを一体化するフラットパネルディスプレイ(たとえば、OLEDまたはLCDディスプレイパネル)を含むタッチパネルディスプレイ104とを含む。モバイルデバイス100は、タッチパネルディスプレイ104を介して画像を表示することおよびタッチ入力を受けることを含むさまざまなやり方で、ユーザとインターフェイスをとる。典型的には、モバイルデバイスは、およそ10mm以下の深さと、60mm~80mm(たとえば68mm~72mm)の幅と、100mm~160mm(たとえば138mm~144mm)の高さとを有する。
【0023】
モバイルデバイス100はまた、音声出力を生成する。音声出力は、フラットパネルディスプレイを振動させることによって音を発生させるパネルオーディオスピーカを使用して生成される。ディスプレイパネルは、DMAまたはEMアクチュエータなどのアクチュエータに結合される。アクチュエータは、タッチパネルディスプレイ104などのパネルに力を提供するために配置された可動部品であり、パネルを振動させる。振動するパネルは、たとえば20Hz~20kHzの範囲の、人間に聞こえる音波を生成する。
【0024】
音出力の生成に加えて、モバイルデバイス100は、アクチュエータを使用して触覚出力を生成することもできる。たとえば、触覚出力は、180Hz~300Hzの範囲の振動に対応することができる。
【0025】
図1はまた、
図2に示す断面方向に対応する破線を示す。
図2を参照して、モバイルデバイス100の断面は、デバイスシャーシ102とタッチパネルディスプレイ104とを示す。
図2はまた、参照しやすくするために、X軸、Y軸、およびZ軸を有するデカルト座標系を含む。デバイスシャーシ102は、Z方向に沿って測定される深さと、X方向に沿って測定される幅とを有する。デバイスシャーシ102はまた、背面パネルを有し、それは、主としてXY平面において延びるデバイスシャーシ102の部分によって形成される。モバイルデバイス100はアクチュエータ210を含み、それは、シャーシ102においてディスプレイ104の背後に収容され、ディスプレイ104の裏側に固定される。一般に、アクチュエータ210は、電気機械モジュール220およびバッテリー230を含む、シャーシに収容された他の部品によって制約される体積内に収まるようにサイズ決めされる。
【0026】
一般に、アクチュエータ210は、プレート106を介してアクチュエータをディスプレイパネル104に接続するフレームを含む。フレームは、撓み部および電気機械モジュールを通常含む、アクチュエータ210の他の構成要素のために支持を提供する足場として機能する。フレームは、湾曲の結果として実質的に変形しないように、十分に硬質であり得る。
【0027】
撓み部は典型的には、XY平面において延び、振動する際にZ方向に変位する、細長い部材である。撓み部は通常、少なくとも一方の端でフレームに取り付けられている。反対側の端はフレームがなくてもよく、撓み部が振動する際にZ方向に動くことが可能となる。
【0028】
電気機械モジュールは典型的には、電気信号を機械的変位に変換するトランスデューサである。電気機械モジュールが励磁されるとモジュールが撓み部を振動させるように、電気機械モジュールの少なくとも一部は通常、撓み部にしっかりと結合される。
【0029】
一般に、アクチュエータ210は、電子制御モジュール220およびバッテリー230を含む、モバイルデバイス100に収容された他の部品によって制約される体積内に収まるようにサイズ決めされる。アクチュエータ210は、電磁石アクチュエータまたは圧電アクチュエータといったさまざまな異なるアクチュエータタイプのうちの1つであり得る。
【0030】
ここで特定の実施形態に移ると、いくつかの実現化例では、アクチュエータは、分散モードアクチュエータ(DMA)である。たとえば、
図3Aおよび
図3Bは、電気機械モジュールと撓み部とを含むDMA300の異なる図を示す。
図3AはDMA300の断面であり、一方、
図3BはDMA300の上面図である。DMA300の動作中、電気機械モジュールは、撓み部の自由端をZ方向に変位させる。
【0031】
具体的には
図3Aを参照して、DMA300では、電気機械モジュールと撓み部とは、羽根板312と圧電スタック314aおよび314bとを含む片持ち梁310へと一体化される。羽根板312は、一端でフレーム320に取り付けられた細長い部材であり、フレーム320は、羽根板をプレート106に取り付けるスタブである。羽根板312は、フレーム320から延びて、取り付けられていない端で終わっており、この端はZ方向に自由に動く。フレーム320に取り付けられている羽根板312の部分は、Y方向に測定される幅を有し、それは、取り付けられていない撓み部の部分の幅よりも大きい。梁310は、羽根板312が挿入されるスロット322で、フレーム320に取り付けられている。
図3Aおよび
図3Bの例では、圧電スタック314aおよび314bは、羽根板312の上方および下方にそれぞれ配置される。各スタック314aおよび314bは、1つ以上の圧電層を含み得る。
【0032】
図3AがDMA300の断面を示す一方、
図3BはDMAの上面図を示す。
図3Aは、フレーム320および圧電スタック314aによって部分的に見えなくなっている羽根板312の上面図を含む。羽根板312と圧電スタック314aおよび314bとはすべて、XY平面に平行に延びる。DMA300が静止している場合、梁310、すなわち、羽根板312と圧電スタック314aおよび314bとは、XY平面に平行なままである。DMA300の動作中、圧電スタック314aおよび314bは励磁され、梁310をZ軸に対して振動させる。梁310の羽根板312の振動は、それを±Z方向に動かす。
【0033】
X方向に測定される羽根板312の長さはL
Fと表記され、端から端までの延在部とも呼ばれる。
図3Bは長さL
Wも示しており、それは以下に、撓み部の翼に関してより詳細に説明される。羽根板312の自由端は、幅W
F2を有する。羽根板312の幅は、長さL
F-L
WにわたってW
F2のままである。
【0034】
フレーム320によって固着された羽根板312の端は第1の幅WF1を有し、それは、WSと表記されたフレーム320の幅よりも大きい。固着された端に向かって、羽根板312の幅は増加し、スロット322から横に延びる2つの翼を形成する。この実現化例では、翼は、X方向に延びて羽根板312を対称的な上部と底部とに分割する中心軸350に対して対称的であるが、他の実現化例では、翼は対称的でなくてもよい。上翼(すなわち、中心軸350の上方の翼)を参照すると、翼の縁は、X軸に平行な羽根板312の上部の縁と隣接している。WWと表記された上翼の幅は、羽根板312の上縁から、中心軸350から最も遠い翼の点まで測定される。各翼の幅WWと、撓み部の自由端の幅WF2と、撓み部の固着端の幅WF1とは、WF1=WF2+2WWという式によって関連付けられる。
【0035】
各翼はまた、L
Wと表記された長さを有する。
図3Aおよび
図3Bに示す実現化例では、L
WはW
Wよりも大きいが、他の実現化例では、L
WはW
W以下であってもよい。たとえば、L
WおよびW
Wは、およそ2mm~10mm、たとえば4mm~8mm、たとえば約5mmである。
【0036】
スロット322の幅は、翼の幅よりも大きくなるように釣り合わされる。たとえば、WSは、WWの2倍以上、WWの3倍以上、またはWWの4倍以上であってもよい。Z方向に測定されるようなスロット322の高さは、羽根板312の高さとほぼ等しく、およそ0.1~1mm、たとえば0.2mm~0.8mm、たとえば0.3mm~0.5mmであってもよい。
【0037】
一般に、フレーム320と圧電スタック314aおよび314bとの間の間隙は、LWまたはWWのいずれかよりも小さい。たとえば、間隙は、LWまたはWWの1/2以下、LWまたはWWの1/3以下、もしくは、LWまたはWWの1/5以下であってもよい。
【0038】
図3Bの例では、スロット322の幅W
Sは、自由端での羽根板312の幅W
F2よりも小さい。しかしながら、いくつかの実現化例では、W
SはW
F2よりも大きい。
【0039】
羽根板312の翼は、DMA300の動作に起因する機械的応力を分散するように、フレーム320の両側に延びる。翼の寸法は、翼が応力を最も効果的に分散するように選択され得る。たとえば、LFは、およそ150μm以上、175μm以上、または200μm以上、たとえば約1000μm以下、500μm以下であってもよい。別の例として、WWは、4μm以上、6μm以上、または8μm以上、たとえば約50μm以下、20μm以下であってもよい。
【0040】
翼の形状は、応力の分散を改良する(たとえば、最適化する)ように選択される。たとえば、
図3Bでのように上から見た場合に、各翼の形状は、長方形、半円、または半楕円であってもよい。
【0041】
図3Aおよび
図3Bは、DMAが静止している場合に撓み部の平面にある2つの翼を含む撓み部を有するDMAの一実現化例を示しているが、他の実現化例は、DMAが静止している場合に撓み部の平面にない翼を含む。
図4Aおよび
図4Bは、XY平面外へと折り畳まれた翼を含むDMA400の断面図および側面図を示す。
【0042】
DMA400は、フレーム320に接続された梁410を含む。
図3Aおよび
図3Bの梁310と同様に、梁410は、電気機械モジュールと撓み部とを含み、それらはともに、羽根板412と圧電スタック314aおよび314bとを含む片持ち梁410へと一体化される。羽根板312と同様に、羽根板412は、主としてXY平面において延びる部分を含む。しかしながら、主としてXY平面において延びる部分に加えて、羽根板412はまた、XY平面外へと折り畳まれ、延びる部分がXZ平面に平行な平面を形成するように延びる、2つの翼を含む。
【0043】
図4Aおよび
図4Bの例では、羽根板412は、
図4Aに示すような高さH
Fを有する押出平面になるように形成される1つ以上の材料を含む。次に、平面の一部が、羽根板412の翼を形成するように形作られる。羽根板412の翼はXY平面外へと折り畳まれるため、Y方向に測定されるような翼の幅は、撓み部の高さH
Fと等しい。したがって、上翼の幅は、H
Fと表記される。他の実現化例では、スタブを包囲する撓み部の部分の幅がH
Fよりも大きくなるように、羽根板412の高さはH
Fよりも大きくてもよい。
【0044】
羽根板312の翼と同様に、羽根板412の翼は、DMA400の動作中に羽根板が経験する応力の分散に寄与する。羽根板312と羽根板412との1つの違いは、後者が、前者よりも小さい体積を占めるものの、DMA400に対する応力を分散することができる、ということである。限られた空間を占める複数の構成要素を含むシステムでは、複数の構成要素の体積を減少させることが有利である。たとえば、モバイルデバイスに収容された電気部品はすべて、モバイルデバイスのシャーシの限られた空間内に収まらなければならない。したがって、羽根板312と比べて羽根板412が占めるより小さい体積は有利であるものの、2つの羽根板の機能的性能はほぼ同じである。
【0045】
圧電スタック314aおよび314bの1つ以上の圧電層は、任意の適切なタイプの圧電材料であってもよい。たとえば、材料は、セラミックまたは結晶圧電材料であってもよい。セラミック圧電材料の例は、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ビスマスフェライト、およびニオブ酸ナトリウムなどを含む。結晶圧電材料の例は、トパーズ、チタン酸鉛、チタン酸バリウムネオジム、ニオブ酸カリウムナトリウム(KNN)、ニオブ酸リチウム、およびリチウムタンタライトを含む。
【0046】
羽根板312および412は、圧電スタック314aおよび314bによって生成された力に応じて湾曲し得る任意の材料から形成されてもよい。羽根板312および412を形成する材料はまた、湾曲の結果として実質的に変形しないように、十分に硬質であるべきである。たとえば、羽根板312および412は、単一の金属または合金(たとえば鉄ニッケル、具体的にはNiFe42)、硬質プラスチック、または別の適切なタイプの材料であってもよい。羽根板312を形成する材料は、低いCTE不整合を有するべきである。
【0047】
いくつかの実現化例では、アクチュエータ210は、
図3A~3Bおよび
図4A~4Bに示すような分散モードアクチュエータであるが、他の実現化例では、アクチュエータは、電磁(EM)アクチュエータである。DMAと同様に、EMアクチュエータは、アクチュエータの運動の結果として生成された機械的エネルギーを、アクチュエータが取り付けられているパネルに伝達する。
【0048】
一般に、EMアクチュエータは磁気回路アセンブリを含み、それは次に、磁石およびボイスコイルを含む。EMアクチュエータはまた、磁気回路アセンブリをフレームに取り付ける1つ以上の懸架部材を含む。フレームは、懸架部材の垂直区分に沿って懸架部材に各々取り付けられた1つ以上の柱を含む。垂直区分に加えて、各懸架部材はまた、それぞれの柱から直交して延び、一端で磁気回路アセンブリに取り付けられているアームを含む。
【0049】
EMアクチュエータ500の一実施形態を、
図5Aおよび
図5Bに示す。
図5Aおよび
図5Bを参照して、EMアクチュエータ500は、4分の1切断斜視図および異なる斜視図でそれぞれ示されている。
図5Aは、静止しているEMアクチュエータ500を示し、一方、
図5Bは、動作中のアクチュエータを示す。
【0050】
EMアクチュエータ500はフレーム520を含み、それはアクチュエータをパネル106に接続する。
図5Aおよび
図5Bを参照して、EMアクチュエータ500はさらに、外側磁石アセンブリ542と、内側磁石アセンブリ544と、ボイスコイル546とを含み、それらは集団で磁気回路アセンブリ540を形成する。破線で輪郭を描かれた外側磁石アセンブリ542は、「A」と表記された環状磁石と、磁石Aの上方に位置付けられた構造要素とを含む。点線で輪郭を描かれた内側磁石アセンブリ544は、「B」と表記された内側磁石と、磁石Bの上方に位置付けられた構造要素とを含む。双方の磁石AおよびBは、底板550に取り付けられている。
【0051】
図5Aの例では、EMアクチュエータ500は複数の磁石AおよびBを含んでいるが、他の実現化例では、アクチュエータは、単一の磁石、たとえば磁石Aまたは磁石Bのいずれかのみを含み得る。撓み部530a、530b、530c、および530dは、外側磁石アセンブリ542をフレーム520から懸架する。撓み部530a~530dは各々、外側磁石アセンブリ542の構造要素の別個の部分に接続する。
図5Aおよび
図5Bは、撓み部530a~530dがどのようにEMアクチュエータ500へと一体化されるかを示しているが、
図5Cは、撓み部の分離斜視図を示す。
【0052】
外側磁石アセンブリ542と内側磁石アセンブリ544との間には、空隙546がある。ボイスコイル548は、フレーム520に取り付けられ、空隙546に位置付けられる。EMアクチュエータ500の動作中、ボイスコイル548は励磁され、それは空隙546において磁場を誘発する。磁石アセンブリ542は誘発された磁場に位置付けられ、Z軸に平行である永続的な軸方向磁場を有するため、磁石アセンブリは、その磁場とボイスコイルの磁場との相互作用に起因する力を経験する。撓み部530a~530dは、磁石アセンブリ542が経験した力に応じて電気機械モジュール540がZ方向に動くことを可能にするように湾曲する。
図5Bは、EMアクチュエータ500の動作中に撓み部530a~530dがどのように湾曲するかについての一例を示す。
【0053】
フレーム520は、主としてXY平面において延びるパネルと、主としてZ方向に延びる4つの柱とを含む。4つの柱の各々は、それが撓み部530a~530dのうちの1つに取り付け可能になるようにサイズ決めされた、X方向に測定される幅を有する。この実現化例では、EMアクチュエータ500は、撓み部530a~530dのうちの1つに各々接続された4つの柱を含むが、他の実現化例では、アクチュエータは、5つ以上の柱に接続された5つ以上の撓み部を含んでいてもよく、さらに他の実現化例では、アクチュエータは、3つ以下の柱に接続された3つ以下の撓み部を含んでいてもよい。
【0054】
撓み部530a~530dは、Z方向に延びる垂直区分を含み、それらは、撓み部をフレーム520の柱に取り付ける。
図5Bは、それぞれの柱に各々接続された撓み部530cおよび530dを示す。撓み部の垂直部分の各々は、それらが取り付けられた柱の高さにわたって延びる。たとえば、撓み部の垂直部分は、各柱の高さの少なくとも10%(少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%)にわたって延びていてもよい。別の例として、第2の部分は、Z方向に0.5mm以上(0.8mm以上、1mm以上、1.25mm以上、1.5mm以上、2mm以上、2.5mm以上、3mm以上)にわたって延びていてもよい。撓み部は、接着剤、溶接、または他の物理的結合を使用して、柱に取り付けられてもよい。
【0055】
ここで撓み部の構造に移ると、
図6は、単一の撓み部600の斜視図を示す。
図6は撓み部600を示しているが、この撓み部の説明は撓み部530a~530dも説明する。
【0056】
撓み部600は、ともにXY平面に平行に延びる2つのアーム601および602を含む。第1のアーム601は、点線で限られ、Y方向に延びる第1の直線区分611Aを含む。第1のアーム601の第2の直線区分612Aは、X方向に延びる。第1のアーム601はさらに、第1の直線区分611Aと第2の直線区分612Aとを接続する第1の曲線区分621Aを含む。第1のアーム601の第3の直線区分613Aが、Y方向に延びる。第2の直線区分612Aは、第2の曲線区分622Aによって第3の直線区分613Aに接続される。
【0057】
第2のアーム602は、第1のアーム601に平行であり、かつ第1のアーム601と同一である。第2のアーム602は、第1の曲線区分621Bによって第2の直線区分612Bに接続された第1の直線区分611Bを含む。加えて、第2のアーム602は、第2の曲線区分622Bによって第2の直線区分612Bに接続された第3の直線区分613Bを含む。磁石アセンブリは図示されていないが、第3の直線区分613Aおよび613Bは各々、磁石アセンブリの両側に接続される。すなわち、各撓み部630a~630dの第1のアームの第3の直線区分は、磁石Aの上方に位置付けられた構造要素に接続し、一方、各撓み部630a~630dの第2のアームの第3の直線区分は、底板550に接続する。磁石Aの上方に位置付けられた構造要素は、略多角形形状、たとえば四角形形状を有する。
【0058】
撓み部600は、垂直区分630を含む。垂直区分630は、第1のアーム601および第2のアーム602に直交して延びる。第1のアームコネクタ631が第1のアーム601を垂直区分630に取り付け、一方、第2のアームコネクタ632が第2のアーム602を垂直区分630に取り付ける。双方のコネクタ631および632は、各コネクタが垂直区分630とともに集団でC字型の区分を形成するように、曲線状である。
【0059】
図5Bに関して上述したように、撓み部530a~530dは、電気機械モジュール540がZ方向に動くことを可能にするように湾曲する。一般に、アクチュエータシステムの動作中に湾曲する撓み部の部分は、湾曲しない部分よりも高い機械的応力を経験するであろう。したがって、撓み部は、応力の結果として湾曲部分で破壊または塑性変形が起こりやすいおそれがある。
【0060】
したがって、より高い応力を経験する場所での故障を減少させるために、これらの箇所で撓み部の幅を増加させてもよい。たとえば、撓み部530a~530dは、一定の幅を有さない(すなわち、撓み部530a~530dは均一でない幅を有する)。代わりに、故障の可能性を減少させるために、撓み部530a~530dは、湾曲部分で最大幅を有する。
図7Aおよび
図7Bは、湾曲部分での撓み部の増加した幅を示す、撓み部700の拡大図である。上述のように、各撓み部530a~530dは互いに同一である。したがって、撓み部700に言及する以下の説明も、撓み部530a~530dの特徴を説明する。
【0061】
図7Aは、撓み部700の第1のアームの上面図である。点線は、撓み部700の区分、すなわち、第3の区分713、第2の曲線区分722、第2の直線区分712、第1の曲線区分721、第1の直線区分711A、および第1のアームコネクタ731の境界を示す。
【0062】
撓み部700の第3の直線区分の自由端は、W
min1と表記された第1の幅を有し、それは、第3の直線区分713の底部または外縁から第3の直線区分の上部または内縁まで測定される。
図7Aまたは
図7Bには図示されていないが、撓み部700の第3の直線区分の各々は、磁石アセンブリに取り付けられる。第3の直線区分713上に位置付けられた円は、撓み部700と磁石アセンブリとの接続部の例示的な位置を表わす。たとえば、円は、溶接、ねじ、接着剤、または他のタイプの接続部の位置であり得る。W
min1は、約0.5mm~約0.7mm、たとえば0.55mm、0.6mm、0.65mmである。
【0063】
撓み部700の第3の直線区分が磁石アセンブリに取り付けられる一方、第2の曲線区分722は、磁石アセンブリとの接続部から遠ざかって延びる。EMアクチュエータの動作中に磁石アセンブリがZ軸に沿って動くと、第2の曲線区分722もZ軸に沿って動く。磁石アセンブリの運動を許容するために、第2の曲線区分722もZ軸に沿って湾曲する。Z軸に沿った湾曲により、第2の曲線区分722は機械的応力を経験する。
【0064】
第3の直線区分713の自由端から反時計回りに進むと、第1の部分の幅は、それが最大幅Wmax1に達するまで増加する。Wmax1は、約1.4mm~約1.6mm、たとえば1.45mm、1.5mm、1.55mmであってもよい。上述のように、Wmax1の場所は、EMアクチュエータの動作中、撓み部700が経験する平均応力よりも高い応力を経験する第2の曲線区分722の部分に対応する。第2の曲線区分722での増加した幅は、EMアクチュエータの動作中に撓み部が故障しにくくなるように、撓み部を強化する。より具体的には、アクチュエータの動作中、第2の曲線区分722は、第3の直線区分713との境界に最も近い部分が、第2の直線区分712に最も近い部分の変位とは異なる量だけ変位された結果、ねじれる。ねじれた場所に応力が集中し、撓み部の疲労を引き起こす。Wmax1を最大化することにより、第2の曲線区分722の構造的剛性が最大化され、その結果、この区分のねじれる動きが最小化される。
【0065】
第2の曲線区分722は、第2の曲線区分の外縁に沿った第1の曲率半径を有し、第1の曲率半径は、第2の曲線区分の内縁に沿った第2の曲率半径よりも小さい。第2の曲線区分722の丸みを帯びた湾曲および増加した幅はともに、撓み部に対する応力を、応力が平均より高い区域から応力が平均より低い区域へ再分散することによって、撓み部700が経験する応力を減少させるよう機能する。
【0066】
第2の曲線区分722の丸みを帯びた湾曲と同様に、第1の曲線区分722の湾曲も、撓み部700が経験する応力を減少させるよう機能する。第1の曲線区分721の幅は、Wmin2と表記された幅を有する。Wmin2は、約0.4mm~約0.6mm、たとえば0.45mm、0.5mm、0.55mmであってもよい。Wmax1からWmin2へ反時計回りに進むと、撓み部の幅は徐々に減少する。引き続きWmin2から第1のアームコネクタ731の縁へ反時計回りに進むと、撓み部の幅は、第1の直線区分711Aと第1のアームコネクタ731との間の境界で測定される幅Wmax2まで徐々に増加する。Wmax2は、約0.7~約0.9mm、たとえば0.75mm、0.8mm、0.85mmであってもよい。
【0067】
図7Bを参照して、撓み部700の斜視図は、第1のアームコネクタ731によって垂直区分730に接続された第1の直線区分711Aを含む。斜視図はまた、第2のアームコネクタ731によって垂直部分730に接続された第3の部分第1の直線区分711Bを含む。第1のアームコネクタ731および第2のアームコネクタ732は、これらの要素が経験する応力をそれらのそれぞれの湾曲全体にわたって分散するように、曲線状である。
【0068】
アクチュエータの動作中、第1の直線区分711Aおよび711Bに最も近い第1のアームコネクタ731および第2のアームコネクタ732の端は、第2および第1のアームコネクタの湾曲により、垂直区分730に最も近い端よりも大きいZ方向変位を経験する。第1のアームコネクタ731および第2のアームコネクタ732は、それらの位置により、撓み部700が経験する平均応力よりも大きい応力を経験する。第1のアームコネクタ731および第2のアームコネクタ732が応力により故障する可能性を減少させるために、コネクタの幅は、第1または第2のアームコネクタと垂直区分730との境界で測定される幅Wmin3から、幅Wmax2まで増加する。Wmin3は、約0.4mm~約0.6mm、たとえば0.45mm、0.5mm、0.55mmであってもよい。
【0069】
一般に、開示されたアクチュエータは、たとえば上述の
図2の電子制御モジュール220などの電子制御モジュールによって制御される。一般に、電子制御モジュールは、携帯電話の1つ以上のセンサおよび/または信号受信機から入力を受信し、当該入力を処理し、アクチュエータ210が好適な触覚応答を提供するようにする信号波形を生成して送信する、1つ以上の電子コンポーネントから構成される。
図8を参照して、携帯電話100などのモバイルデバイスの例示的な電子制御モジュール800は、プロセッサ810と、メモリ820と、ディスプレイドライバ830と、信号発生器840と、入力/出力(I/O)モジュール850と、ネットワーク/通信モジュール860とを含む。これらのコンポーネントは、(たとえば信号バス802を介して)互いに、およびアクチュエータ210と電気的に通信している。
【0070】
プロセッサ810は、データまたは命令を処理し、受信し、または送信することができる任意の電子デバイスとして実現されてもよい。たとえば、プロセッサ810は、マイクロプロセッサ、中央処理装置(central processing unit:CPU)、特定用途向け集積回路(application-specific integrated circuit:ASIC)、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor:DSP)、またはそのようなデバイスの組合せであり得る。
【0071】
メモリ820は、そこに格納されたさまざまな命令、コンピュータプログラム、または他のデータを有する。命令またはコンピュータプログラムは、モバイルデバイスに関して説明された動作または機能のうちの1つ以上を実行するように構成されてもよい。たとえば、命令は、ディスプレイドライバ830、信号発生器840、I/Oモジュール850の1つ以上のコンポーネント、ネットワーク/通信モジュール860を介してアクセス可能な1つ以上の通信チャネル、1つ以上のセンサ(たとえば生体認証センサ、温度センサ、加速度計、光学センサ、気圧センサ、湿度センサなど)、および/またはアクチュエータ210を介して、デバイスのディスプレイの動作を制御または調整するように構成されてもよい。
【0072】
信号発生器840は、アクチュエータ210にとって好適なさまざまな振幅、周波数、および/またはパルスプロファイルのAC波形を生成し、アクチュエータを介して音響応答および/または触覚応答を生成するように構成される。別個のコンポーネントとして示されているが、いくつかの実施形態では、信号発生器840はプロセッサ810の一部であり得る。いくつかの実施形態では、信号発生器840は増幅器を、たとえばその一体化された、または別個のコンポーネントとして含み得る。
【0073】
メモリ820は、モバイルデバイスによって使用され得る電子データを格納可能である。たとえば、メモリ820は、たとえば、音声ファイルおよび映像ファイル、文書およびアプリケーション、デバイス設定およびユーザ嗜好、さまざまなモジュールのためのタイミングおよび制御の信号またはデータ、データ構造またはデータベースといった、電気的データまたはコンテンツを格納することができる。メモリ820はまた、アクチュエータ210のための信号を発生させるために信号発生器840によって使用され得るさまざまなタイプの波形を再作成するための命令を格納してもよい。メモリ820は、たとえばランダムアクセスメモリ、読出専用メモリ、フラッシュメモリ、リムーバブルメモリ、または他のタイプの記憶素子、またはそのようなデバイスの組合せといった、任意のタイプのメモリであってもよい。
【0074】
上に簡単に説明されたように、電子制御モジュール800は、
図8にI/Oモジュール850として表わされたさまざまな入力および出力コンポーネントを含んでいてもよい。
図8ではI/Oモジュール850のコンポーネントは単一のアイテムとして表わされているが、モバイルデバイスは、ユーザ入力を受け付けるためのボタン、マイク、スイッチ、およびダイヤルを含む多くの異なる入力コンポーネントを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、I/Oモジュール850のコンポーネントは、1つ以上のタッチセンサおよび/または力センサを含んでいてもよい。たとえば、モバイルデバイスのディスプレイは、ユーザがモバイルデバイスに入力を提供することを可能にする1つ以上のタッチセンサおよび/または1つ以上の力センサを含んでいてもよい。
【0075】
I/Oモジュール850のコンポーネントの各々は、信号またはデータを生成するための特殊回路を含んでいてもよい。場合によっては、コンポーネントは、ディスプレイ上に提示されたプロンプトまたはユーザインターフェイスオブジェクトに対応するアプリケーション特有の入力のためのフィードバックを生成または提供してもよい。
【0076】
上述のように、ネットワーク/通信モジュール860は、1つ以上の通信チャネルを含む。これらの通信チャネルは、プロセッサ810と外部デバイスまたは他の電子デバイスとの間の通信を提供する1つ以上の無線インターフェイスを含み得る。一般に、通信チャネルは、プロセッサ810上で実行される命令によって解釈され得るデータおよび/または信号を送信および受信するように構成されてもよい。場合によっては、外部デバイスは、他のデバイスとデータをやりとりするように構成された外部通信ネットワークの一部である。一般に、無線インターフェイスは、無線周波数、光信号、音響信号、および/または磁気信号を何ら限定されることなく含んでいてもよく、無線インターフェイスまたは無線プロトコルを通して動作するように構成されてもよい。例示的な無線インターフェイスは、無線周波数セルラーインターフェイス、光ファイバーインターフェイス、音響インターフェイス、ブルートゥース(登録商標)インターフェイス、短距離無線通信インターフェイス、赤外線インターフェイス、USBインターフェイス、Wi-Fi(登録商標)インターフェイス、TCP/IPインターフェイス、ネットワーク通信インターフェイス、または任意の従来の通信インターフェイスを含む。
【0077】
いくつかの実現化例では、ネットワーク/通信モジュール860の通信チャネルのうちの1つ以上は、モバイルデバイスと別のデバイス(別の携帯電話、タブレット、コンピュータなど)との間の無線通信チャネルを含んでいてもよい。場合によっては、出力、音声出力、触覚出力、または視覚的表示要素が、出力のために別のデバイスに直接送信されてもよい。たとえば、可聴警報または視覚的警告が、電子デバイス100から携帯電話に、そのデバイス上での出力のために送信されてもよく、その逆であってもよい。同様に、ネットワーク/通信モジュール860は、モバイルデバイスを制御するために別のデバイス上で提供される入力を受信するように構成されてもよい。たとえば、可聴警報、視覚的通知、または触覚的警報(またはそのための命令)が、提示のために外部デバイスからモバイルデバイスに送信されてもよい。
【0078】
ここに開示されたアクチュエータ技術は、たとえば音響および/または触覚フィードバックを提供するように設計されたパネルオーディオシステムで使用され得る。パネルは、たとえばLCD技術のOLEDに基づいたディスプレイシステムであってもよい。パネルは、スマートフォン、タブレットコンピュータ、またはウェアラブルデバイス(たとえば、スマートウォッチ、または、スマート眼鏡などの頭部装着型デバイス)の一部であってもよい。
【0079】
他の実施形態は、以下の請求項にある。