(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】可撓性電極及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20220607BHJP
H01G 11/26 20130101ALI20220607BHJP
H01G 11/46 20130101ALI20220607BHJP
H01G 11/48 20130101ALI20220607BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20220607BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20220607BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20220607BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20220607BHJP
H01M 4/1397 20100101ALI20220607BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20220607BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20220607BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
H01M4/13
H01G11/26
H01G11/46
H01G11/48
H01M4/02 Z
H01M4/04 Z
H01M4/136
H01M4/139
H01M4/1397
H01M4/48
H01M4/58
H01M4/62 Z
(21)【出願番号】P 2021022284
(22)【出願日】2021-02-16
【審査請求日】2021-02-16
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】509078089
【氏名又は名称】財團法人國家同▲歩▼輻射研究中心
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】莊 偉 綜
(72)【発明者】
【氏名】郭 榮 豪
(72)【発明者】
【氏名】▲とう▼ 名 傑
【審査官】近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-279354(JP,A)
【文献】特開2014-109018(JP,A)
【文献】特開2003-313429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01G 11/26
H01G 11/46
H01G 11/48
H01M 4/02
H01M 4/04
H01M 4/136
H01M 4/139
H01M 4/1397
H01M 4/48
H01M 4/58
H01M 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機軟質材と無機硬質材料を備えた可撓性電極であって、
前記有機軟質材は導電性ポリマーと接着剤を含み、前記接着剤は水溶性で且つイオン伝導性を有し、
前記無機硬質材料は、複数の層状ケイ酸塩ブロックの凝集によって形成された開放孔層構造を含み、前記有機軟質材は前記開放孔層構造の開口孔の隙間内に充填されると共に、有機ドメインと無機ドメインが相互に浸透する網目構造を形成し、各前記層状ケイ酸塩ブロックは複数のケイ酸塩結晶プレートを含み、前記ケイ酸塩結晶プレートは互いに相対するように積層されることにより積層方向を形成し、前記積層方向は前記有機軟質材の厚さ方向と平行とな
り、
前記接着剤はPVA、PEO、PVAC、PVP、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される
ことを特徴とする可撓性電極。
【請求項2】
少なくとも一部の前記ケイ酸塩結晶プレートの表面には第1の容量性活性物質が付着しており、前記第1の容量性活性物質は遷移金属イオンである
ことを特徴とする請求項1に記載の可撓性電極。
【請求項3】
前記第1の容量性活性物質は遷移金属の硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される
ことを特徴とする請求項2に記載の可撓性電極。
【請求項4】
前記ケイ酸塩結晶プレートの平均粒子サイズは100から400ナノメートルの範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載の可撓性電極。
【請求項5】
前記有機軟質材は第2の容量性活性物質を含み、前記第2の容量性活性物質は遷移金属酸化物粒子から選択される
ことを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載の可撓性電極。
【請求項6】
前記第2の容量性活性物質は酸化マンガン、酸化コバルト、酸化バナジウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される
ことを特徴とする請求項
5に記載の可撓性電極。
【請求項7】
ケイ酸塩結晶プレートと、接着剤と、導電性ポリマーを準備し、前記ケイ酸塩結晶プレートの含有量は25重量%から35重量%の範囲であり、前記接着剤の含有量は15重量%から25重量%の範囲であり、前記導電性ポリマー材料の含有量は45重量%から55重量%の範囲であるステップ(a)と、
前記ケイ酸塩結晶プレートを水中に均一に分散させて懸濁液を形成するステップ(b)と、
ステップ(a)の前記接着剤と前記導電性ポリマー材料を、ステップ(b)の懸濁液中で均一に混合して混合溶液を形成し、水溶液の粘度が50~500mPa.sの範囲であるステップ(c)と、
前記混合溶液を金型に流し込み、又は金型プレートにコーティングしてから乾燥させるステップ(d)と、
を含むことを特徴とする可撓性電極の製造方法。
【請求項8】
前記ステップ(a)の前に更に、
前記ケイ酸塩結晶プレートを1Mの第1の容量性活性物質塩の水溶液内に浸すステップと、
前記ケイ酸塩結晶プレートに浸された前記第1の容量性活性物質塩の水溶液を、メッシュで濾し又は遠心分離することによって、前記第1の容量性活性物質のイオンを吸着させたケイ酸塩層ブロックを得るステップと、
を更に含むことを特徴とする請求項
7に記載の可撓性電極の製造方法。
【請求項9】
前記第1の容量性活性物質塩が遷移金属塩である、
ことを特徴とする請求項
8に記載の可撓性電極の製造方法。
【請求項10】
前記第1の容量性活性物質が、遷移金属の硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、及びそれらの組み合わせから選択される
ことを特徴とする請求項
9に記載の可撓性電極の製造方法。
【請求項11】
前記ケイ酸塩結晶プレートの平均粒子サイズが100から400ナノメートルの範囲である
ことを特徴とする請求項
7に記載の可撓性電極の製造方法。
【請求項12】
前記ケイ酸塩結晶プレートを、室温で前記第1の容量性活性物質の水溶液に12時間以上浸す
ことを特徴とする請求項
8に記載の可撓性電極の製造方法。
【請求項13】
前記接着剤が、PVA、PEO、PAMM、PVAC、PVP、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される
ことを特徴とする請求項
7に記載の可撓性電極の製造方法。
【請求項14】
前記ステップ(d)の後に、電気めっきによって第2の容量性活性物質を前記接着剤に導入するステップを更に含む
ことを特徴とする請求項
7~13の何れか一項に記載の可撓性電極の製造方法。
【請求項15】
前記第2の容量性活性物質が、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化バナジウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される
ことを特徴とする請求項
14に記載の可撓性電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
可撓性電極およびその製造方法、特に無機ケイ酸塩鉱物と有機ポリマーを含有する可撓性電極及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、フレキシブルディスプレイ、電子スキン、スマートウェア、スマートフォン等のウェアラブル電子機器が次第に普及し始めている。これらのウェアラブル電子機器は人の体に装着されるが、人が着ている衣服の上に装着されるタイプのものに加え、皮膚に直接接触するタイプのものも存在する。
【0003】
このため、従来の携帯型電子機器と比較して、ウェアラブル電子機器の場合、バッテリー又はエネルギー貯蔵部品を構成する部品には、安全性に加えて、人体に対して有毒でないことが要求される。
【0004】
そして、最終製品自体は人体に対して毒性を示さないことに加え、現在の環境問題は、ソーシャルメディアの普及により、世界中のさまざまな国で議論されている。一方、直接的又は間接的に、多くの国の政府が、国内の製造産業の更なる向上を望んでいるという事情もある。これらの事情に鑑みると、最終製品自体は人体に無害であるだけでなく、製造工程の全体を可能な限り低いエネルギー消費で賄い(要は、二酸化炭素排出量を極力減らす)、地球環境へ与える影響をできる限り少なくすることが製造業にとっての大きな課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した問題に鑑みて、ウェアラブル電子機器に使用されるバッテリー又はエネルギー貯蔵部品の電極を改良した可撓性電極を提供することを目的とする。
【0006】
具体的には、従来の技術と比較して、製造時のエネルギー消費量が少なく、地球環境への悪影響が少ない可撓性電極を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は溶媒として水のみを使用し、有機溶媒残留物等の安全上の懸念を少なくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題に鑑みて本発明は以下の構成を備える。
【0009】
本発明は、有機軟質材と無機硬質材料を備えた可撓性電極であって、
前記有機軟質材は導電性ポリマーと接着剤を含み、前記接着剤は水溶性で且つイオン伝導性を有し、
前記無機硬質材料は、複数の層状ケイ酸塩ブロックの凝集によって形成された開放孔層構造を含み、前記有機軟質材は前記開放孔層構造の開口孔の隙間内に充填されると共に、有機ドメインと無機ドメインが相互に浸透する網目構造を形成し、各前記層状ケイ酸塩ブロックは複数のケイ酸塩結晶プレートを含み、前記ケイ酸塩結晶プレートは互いに相対するように積層されることにより積層方向を形成し、前記積層方向は前記有機軟質材の厚さ方向と平行となる。
【0010】
また、少なくとも一部の前記ケイ酸塩結晶プレートの表面には第1の容量性活性物質が付着しており、前記第1の容量性活性物質は遷移金属イオンである。
【0011】
また、前記第1の容量性活性物質は遷移金属の硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0012】
また、前記ケイ酸塩結晶プレートの平均粒子サイズは100から400ナノメートルの範囲内である。
【0013】
また、前記接着剤はPVA、PEO、PVAC、PVP、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0014】
また、前記有機軟質材は第2の容量性活性物質を含み、前記第2の容量性活性物質は遷移金属酸化物粒子から選択される。
【0015】
また、本発明による可撓性電極において、前記第2の容量性活性物質は酸化マンガン、酸化コバルト、酸化バナジウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0016】
また、本発明による可撓性電極の製造方法は、ケイ酸塩結晶プレートと、接着剤と、導電性ポリマーを準備し、前記ケイ酸塩結晶プレートの含有量は25重量%から35重量%の範囲であり、前記接着剤の含有量は15重量%から25重量%の範囲であり、前記導電性ポリマー材料の含有量は45重量%から55重量%の範囲であるステップ(a)と、
前記ケイ酸塩結晶プレートを水中に均一に分散させて懸濁液を形成するステップ(b)と、
ステップ(a)の前記接着剤と前記導電性ポリマー材料を、ステップ(b)の懸濁液中で均一に混合して混合溶液を形成し、水溶液の粘度が50~500mPa.sの範囲であるステップ(c)と、
前記混合溶液を金型に流し込み、又は金型プレートにコーティングしてから乾燥させるステップ(d)と、
を含む。
【0017】
また、前記ステップ(a)の前に更に、
前記ケイ酸塩結晶プレートを1Mの第1の容量性活性物質塩の水溶液内に浸すステップと、
前記ケイ酸塩結晶プレートに浸された前記第1の容量性活性物質塩の水溶液を、メッシュで濾し又は遠心分離することによって、前記第1の容量性活性物質のイオンを吸着させたケイ酸塩層ブロックを得るステップと、
を更に含む。
【0018】
また、前記第1の容量性活性物質塩が遷移金属塩である。
【0019】
また、前記第1の容量性活性物質が、遷移金属の硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0020】
また、前記ケイ酸塩結晶プレートの平均粒子サイズが100から400ナノメートルの範囲である。
【0021】
また、前記ケイ酸塩結晶プレートを、室温で前記第1の容量性活性物質の水溶液に12時間以上浸す。
【0022】
更に、前記接着剤が、PVA、PEO、PAMM、PVAC、PVP、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0023】
また、前記ステップ(d)の後に、電気めっきによって第2の容量性活性物質を前記接着剤に導入するステップを更に含む。
【0024】
また、前記第2の容量性活性物質が、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化バナジウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、有機ドメインと無機ドメインが相互に浸透する網目構造を形成し、各層状ケイ酸塩ブロックは複数のケイ酸塩結晶プレートを含み、ケイ酸塩結晶プレートは互いに相対するように積層されることにより積層方向を形成し、この構造は、応力が特定の平面に沿って広がるので、構造の全体が破損するのを防ぎ易く、構造全体の機械的な強度を向上することができる。更に、人体に無害であるだけでなく、製造工程の全体を可能な限り低いエネルギー消費で賄い、地球環境へ与える影響を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1の実施形態を説明する可撓性電極の微細構造を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態を説明する可撓性電極の微細構造を示す斜視図であり、第2の部分領域M2をも説明する斜視図である。
【
図3-1】3Aは
図2のA-A断面線に沿った断面図であり、3Bは
図2のB-B断面線に沿った断面図である。
【
図3-2】3Cは
図2のC-C断面線に沿った断面図であり、3Dは
図2のD-D断面線に沿った断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態を示す断面図であり、第1の容量性活性物質がケイ酸塩結晶プレートの層間に吸着されていることを示す図である。
【
図5】本発明の第3の実施形態を示す断面図であり、第2の容量性活性物質を含む有機軟質材を示した図である。
【
図6】本発明の第4の実施形態を示す断面図であり、第1の容量性活性物質がケイ酸塩結晶プレートの層間に吸着され、有機軟質材に第2の容量性活性物質が含まれていることを示した図である。
【
図7】X線顕微鏡で画像化された本発明の可撓性電極の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の実施形態において、「上」または「下」とは、図面に示される向きを説明するためにのみ使用され、本発明の実施製品における実際の向きを限定するものではない。
【0028】
まず、本発明の図面を参照しての実施形態の説明に先立って、本発明の基本原理に加えて発明の効果を簡単に説明する。
【0029】
無機フレーク材料(粘土鉱物、雲母鉱石、その他の地殻に豊富に存在するケイ酸塩鉱物等)は、厚さは薄いものの、形状が不規則であるという共通の特徴を持っている。
【0030】
本発明の配合において、混合懸濁溶液は、有機相材料(導電性ポリマーおよび接着剤)と無機フレーク材料(例えば、地殻に豊富に存在する粘土鉱石および雲母鉱石等のケイ酸塩鉱物)を混合することによって形成されるものとする。
【0031】
混合懸濁液の溶媒の揮発中に、有機相材料と無機材料は互いに凝集して、ミクロ相分離によるドメイン構造、すなわち、無機材料を(豊富に)含む無機ドメイン(inorganic-rich phase domains)と有機物を(豊富に)含む材料ドメイン(organic-rich phase domains)を形成する。
【0032】
無機材料が豊富な領域では、複数のケイ酸塩結晶プレートは、一般には向かい合って積み重ねられ、不規則な形状の層を形成する。つまり、フレーク粒子が積み重ねられて集められると、これらのフレーク粒子の積層方向は、電極の材料の厚さ方向と実質的に平行となる。
【0033】
また、顕微鏡では、隣接する平坦部である層の間に垂直方向又は斜め方向に少ない数から構成される層を挿入して、全体として3次元の開放孔層構造を形成していることが観察できる。この3次元の開放孔層構造は、例えて言うならば、駐車場の第1のフロアと前記第1のフロアの上の階の第2のフロアと、これらのフロア同士を繋ぐために傾斜するように設けられた通路のような構造となる。つまり平坦部と、この平坦部と階層を別にする他の平坦部とを傾斜する通路にて接続するような構造となる。
【0034】
この構造は、応力が特定の平面に沿って広がるので構造の全体が破損するのを防ぎ易く、構造全体の機械的な強度を向上することができる。また、これらの相互に接続された平坦部と傾斜部は、ブロックの内部に吸着された第1の活性物質が網目へ入る通路を提供することとなり、酸化を減少させ得る電気化学によって生成された電気エネルギーを伝送できる。
【0035】
層状ケイ酸塩ブロックの凝集によって形成された無機ドメインに加えて、ミクロ相分離による有機ドメインは、層状ケイ酸塩ブロックによって形成された3次元の開放孔層構造の内部を充満させ、有機ドメインと無機ドメインが相互に浸透する網目構造を形成する。有機ドメインの導電性ポリマーと接着剤(高分子電解質)も、電子とイオンが網目構造を通過するための通路(チャネル)となる。
【0036】
このようなフレーク状(薄いカード状)の粒子は、厚さが薄いという共通の特徴がある一方、形状は不規則となる。したがって、このケイ酸塩鉱物の蓄積によって形成された構造は、フレーク状粒子の一部が他の粒子の間に垂直に又は傾斜して挿入されるように顕微鏡で観察し得る。ただし、全体的な構造がメラルーカ(と呼ばれる植物)の形状に近似するよう蓄積していれば、当該蓄積の結果は上述した「向かい合って蓄積される」と同一視される。
【0037】
さらに、少数のフレーク状の粒子が他の粒子の間に垂直に又は傾斜して挿入されるため、応力が特定の平面に沿って広がるようになり、結果として、構造全体が破損するのを防ぎ易くなり、構造全体の機械的強度を向上させることができる。
【0038】
続いて、本発明の第1の実施形態を
図1と
図2を参照して説明する。ここで、
図1は本発明の第1の実施形態を説明する可撓性電極の微細構造を示す斜視図であり、
図2は同じく本発明の第1の実施形態を説明する可撓性電極の微細構造を示す斜視図であり、第2の部分領域M2をも説明する斜視図である。
【0039】
本実施形態では、例示的な可撓性電極10と表面の内側を示している。本実施形態の可撓性電極10は、有機軟質材(有機ドメイン(Organic phase domain))11と複数の層状ケイ酸塩ブロック(無機ドメイン)12を含む。ここで、有機軟質材(有機ドメイン)11とは、図面における有機軟質材が有機ドメインを形成することを意味している。本発明の実施形態における有機ドメインは、有機成分が占める「空間」を意味しており、有機ドメインは有機軟質材の別の言い方を意味している訳ではない。
【0040】
有機軟質材(有機ドメイン)11は、主に導電性ポリマー(PEDOT:PSS、PANIまたはPPY等)と接着剤から構成される。この実施形態で使用される接着剤は、水溶性であり、更にイオン伝導性(例えば、PVA、PEO、PAMM、PVAC、又はPVP)である。
【0041】
【0042】
そして、
図3Aから
図3Dは、異なる位置(
図2においてA-A、B-B、C-C、およびD-Dの断面線の箇所)における例示的な可撓性電極10の断面の内部を示し、各層状ケイ酸塩ブロック12は、複数のケイ酸塩結晶プレート121が積層されることによって形成される。ケイ酸塩結晶ブロック121の方向(
図3A~3Dに示す)は、可撓性電極10の厚さ方向に実質的に平行である。
【0043】
これらの層状ケイ酸塩ブロック(無機ドメイン)12は、有機軟質材(有機ドメイン)11に集合しており、層状となるように埋め込まれるので、全ての層状ケイ酸塩ブロック(無機ドメイン)12は、有機軟質材(有機ドメイン)内に設けられ、開放孔層構造の隙間は有機軟質材(有機ドメイン)で満たされる。
【0044】
層状ケイ酸塩ブロック(無機ドメイン)12と有機軟質材(有機ドメイン)11は互いに貫通し合い、同時に有機軟質材(有機ドメイン)11の支持により全体として、床(プレート、平坦部12F)と斜面(傾斜部12R)で構成される開放孔層構造(floor-ramp like opened- perforated layer structure)が形成される。
【0045】
図3A~3Dに示されるように、平坦部12Fは水平方向に延伸し、傾斜部12Rは、2枚の平坦部12F同士をつなぐように傾斜して延伸する。
【0046】
各層状ケイ酸塩ブロック12は、互いに接続されていないクラスター(集団)又は接続された開放孔方式の網目である。そして、互いに接続されていないということは、各層状ケイ酸塩ブロック(無機ドメイン)12が、離島のように有機軟質材11(有機ドメイン)に分散していることを意味する。つまり、それらは互いに直接接続されておらず、有機軟質材11(有機ドメイン)に埋め込まれている。
【0047】
また、ここでいう「接続された」とは、全ての層状ケイ酸塩ブロック(無機ドメイン)12が孤立した島ではなく、層状ケイ酸塩ブロック(無機ドメイン)12が傾斜部12Rによって互いに接続されて、傾斜部12Rの支持によって開放孔層構造を形成することを意味する。
【0048】
本実施形態における可撓性電極10は、層状ケイ酸塩ブロック(無機ドメイン)12が互いに接続されていないように分布している場合(即ち複数の離島があるような場合)、柔軟性には優れるが、機械的強度が弱い。一方、層状ケイ酸塩ブロック(無機ドメイン)12が傾斜部12Rを介して接続されるように分布している場合、柔軟性に加えて、機械的強度にも優れる。
【0049】
上記の2つのタイプの層状ケイ酸塩ブロック(無機ドメイン)12の分布は、導電性ポリマーと接着剤に対するケイ酸塩結晶プレート121の重量パーセントを調整することによって達成でき、異なる適用環境における使用を可能とする。
【0050】
また、上記の2つのタイプのいずれの分布においても、可撓性電極10の有機軟質材11(有機ドメイン)は、水平方向又は垂直方向に層状ケイ酸塩ブロック12(無機ドメイン)によって構築された開放孔層構造の全体が覆われているわけではない。すなわち、層状ケイ酸塩ブロック12(無機ドメイン)によって構築された開放孔層構造と有機軟質材11(有機ドメイン)は、共同して互いに貫通し合った網目構造を形成する。
【0051】
したがって、可撓性電極10は、全方向性に導電経路を有し、方向性が制限されない。また、本実施形態では、層状ケイ酸塩ブロック(無機ドメイン)12と有機軟質材(有機ドメイン)11が、可撓性電極10の任意の位置の断面で同時に観察し得る。
【0052】
任意の位置を変更することによって生ずる違いは、無機ドメインと有機ドメインの面積比が断面の位置によって変化することであり、この結果、可撓性電極10は水平方向と垂直方向の両方に導電性を有することとなる。
【0053】
なお、
図3Aから
図3Dのケイ酸塩結晶プレート121は直接接触しているよう記載されているものの、実際、ケイ酸塩結晶プレート121は、それらの間に充填された有機軟質材11を依然として含む。
【0054】
可撓性電極10の特定の断面構造については、
図7を参照されたい。ここで、
図7はX線顕微鏡で画像化された本発明の可撓性電極の断面図である。黒い部分(暗い部分)は有機軟質材11(有機ドメイン)に属する。一方、白い部分(要はグレースケールの黒色の程度が少ない部分)は、層状ケイ酸塩ブロック(無機ドメイン)12に属する。
【0055】
層状ケイ酸塩ブロック(無機ドメイン)12は、水平に延びる層状ケイ酸塩ブロックによって形成される平坦部12Fと、傾斜するように積層された層状ケイ酸塩ブロックによって形成される傾斜部12Rとを更に含む。すなわち、傾斜部12Rも平坦部12Fも、どちらも層状ケイ酸塩ブロック12によって構成されるものである。
【0056】
図4に示すように、第2の実施形態では、ケイ酸塩結晶プレート121の少なくとも一部は、層間に吸着された第1の容量性活性物質122を有する。
【0057】
第1の容量性活性物質122は、遷移金属イオン(例えば、鉄、コバルト、ニッケル等又はそれらの混合物)から選択され、特に遷移金属の硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、又は塩化物から選択される。
【0058】
図5を参照して本発明の第3の実施形態を説明する。ここで、
図5は本発明の第3の実施形態を示す断面図であり、第2の容量性活性物質を含む有機軟質材を示した図である。
図5に示すように、第3の実施形態では、有機軟質材(有機ドメイン)11は、第2の容量性活性物質112を更に含む。
【0059】
第2の容量性活性物質112は、遷移金属ナノ粒子、マンガン酸化物、コバルト酸化物又はバナジウム酸化物などの遷移金属酸化物粒子から選択される。
【0060】
図6に示すように、第4の実施形態では、ケイ酸塩結晶プレート121の少なくとも一部は、層間に吸着された第1の容量性活性物質122を有する。さらに、有機軟質材11(有機ドメイン)は、第2の容量性活性物質112をさらに含む。
【0061】
第1の容量性活性物質122は、遷移金属イオン(鉄、コバルト、ニッケルなど、又はそれらの混合物等)又は遷移金属イオンによって還元された遷移金属酸化物ナノ粒子から選択される。一方、第2の容量性活性物質112は、遷移金属粒子、酸化マンガン又は酸化バナジウム等の遷移金属酸化物粒子から選択される。
【0062】
各実施形態において、各層状ケイ酸塩ブロック12を構成するケイ酸塩結晶プレート121の平均粒子サイズは、100ナノメートルから400ナノメートルの範囲である。
【0063】
また、上記の粒子サイズ範囲は、動的光散乱によるレーザー粒子サイズアナライザー方式(Dynamic Light Scattering)によって測定し得る。なお、この実験で使用されたレーザー粒子サイズアナライザーの型式は、MALVERNNano-Sである。
【0064】
以下、可撓性電極の製造方法について説明する。なお、以下の調合方法と製造方法は単なる例に過ぎず、本発明による可撓性電極が以下の手順でのみ製造できることを意味するものではない。
【0065】
まず、ケイ酸塩結晶プレート、接着剤(この場合はPVA)、導電性ポリマー材料(この場合はPEDOT:PSS)を準備するが、調合法としては以下の例が挙げられる。
【0066】
【0067】
上記表1の式の比率で材料を調製した後、最初にケイ酸塩結晶プレートを水(約3~5wt%)に加え、超音波振動により、粒子サイズを数百ナノメートルまで均一に分散させ、浮遊状態を示すようにする。
【0068】
次に、PVAとPEDOT:PSSを、攪拌、超音波振動の何れか又は両方を実行することによって、シリケート結晶プレートの懸濁液に溶解して、混合溶液を形成する。この混合溶液の粘度は、50~500mPa.sの範囲に制御する。
【0069】
ケイ酸塩結晶プレートは最終的には形状の要件に従って、懸濁液を金型に注入し、又は金型プレートに塗布し、24時間放置して自然乾燥させる。そして、乾燥後、金型又は金型プレートを取り外して、本発明による可撓性電極を取得する。なお、環境保護の観点から、本発明では化学有機溶媒を使用しなくても製造できるようにしている。
【0070】
上記の表において、調合法1と調合法6のケイ酸塩結晶プレートは、20(wt%)と含有量が少ないことが分かる。これらの調合法で作製された可撓性電極のサンプルを、電子顕微鏡とX線顕微鏡を使用して観察すると、以下のことが分かる。すなわち、殆どの層状ケイ酸塩ブロック(無機ドメイン)は所謂離島が点在しているような分布となり、有機軟質材(有機ドメイン)に散在するように埋め込まれたような状態となる。
【0071】
調合法3と調合法5のケイ酸塩結晶プレートは、40(wt%)と高い含有量を有し、この調合方法で作製した可撓性電極のサンプルの断面を電子顕微鏡とX線顕微鏡の技術を使用して観察すると、殆どの層状ケイ酸塩ブロックが互いに繋がっていることが分かる。
【0072】
一方、調合法2、4及び7のケイ酸塩結晶プレートの含有量は30(wt%)と中程度である。この調合方法で作成された可撓性電極のサンプルを、電子顕微鏡およびX線顕微鏡を使用して観察すると、幾つかの層状ケイ酸塩ブロックは離島のように離れているが、互いに接続された層状ケイ酸塩ブロックも確認できる。
【0073】
また、上述の実施形態では、ケイ酸塩結晶プレートをPVAとPEDOT:PSSの水溶液に混合する前に、ケイ酸塩結晶プレートを1M濃度の第1の容量性活性物質塩(硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、その他の遷移金属塩等)の溶液に室温で12時間以上浸すこともできる。この際、pHと温度に関連には留意が必要である。
【0074】
次に、ケイ酸塩結晶プレートに浸した第1の容量性活性物質塩の溶液をメッシュで濾過し(スクリーン)又は遠心分離法を用いて、第1の容量性活性物質イオン(遷移金属イオン等)が表面に吸着したケイ酸塩結晶プレートを得る。第1の容量性活性物質が表面に吸着されたケイ酸塩結晶プレートで作られた可撓性電極は
図4の第2の実施形態に示されている。
【0075】
第2の実施形態では、
図4に示すような可撓性電極が製造された後、第2の容量性活性物質を、電気めっき(例えば、1秒あたり1クーロン)によって可撓性電極の有機軟質材に導入することにより、
図6の第4の実施形態に示される可撓性電極が得られる。
【0076】
所謂電気めっき法は、可撓性電極をモル濃度4Mの硫酸溶液に入れ、10分間超音波振動させて表面を洗浄する方法である。洗浄して乾燥させた後、遷移金属塩溶液に浸し、可撓性電極に電圧をかけて、容量性活性物質を可撓性電極に堆積させ、可撓性電極の内部に導入する。
【0077】
第1の実施形態では、
図3A~
図3Dに示す可撓性電極が製造された後、第2の容量性活性物質についても、上記の電気めっき法によって可撓性電極の有機軟質材に導入することにより、
図5の第3の実施形態に示すような可撓性電極を得ることができる。
【0078】
さらに、第1の容量性活物と第2の容量性活性物質の少なくとも何れかを可撓性電極に導入することにより、可撓性電極自体を強い容量性の電極として使用することができる。例えば、可撓性がある強い容量性の電極は、本発明の2個の可撓性電極をポリマー固体電解質で分離することによって製造することができる。ここでいうポリマー固体電解質は、台湾特許の特許番号I611442号に記載されている電解質であっても差し支えないが、本発明の製造方法はこれには限定されない。
【0079】
更に、本発明の実施形態による可撓性電極は、製造プロセスで有機溶媒を使用せず、且つ、選択されたケイ酸塩シート材料は自然界に多数存在する天然のミネラルであるため、製品は無毒である。よって、身に着けて使用するウェアラブル電子機器に適している。また、上述のように、本発明の実施形態による製造方法は、化学有機溶媒を使用しないでも製造できるので、環境保護の観点からも有効である。
【0080】
なお、ケイ酸塩結晶プレートのサイズは実際には非常に小さいため、本発明の実施形態では可撓性電極の微細構造の構造的な理解を容易にするため、図面におけるケイ酸塩結晶プレートは実際の縮尺とは異なる場合があり、必ずしも可撓性電極の構造を正確に図示している訳ではない。
【0081】
上述の記載と示唆に基づいて、この当業者は、上記の実施形態の内容を適宜変更することができるが、本発明の技術的範囲は当該変更後の発明にも均等の範囲が及ぶものとする。また、本発明の上述の実施形態は本発明の技術的範囲を本明細書の実施形態で説明したものに限定するものではない。
【0082】
なお、化学物質の略語と英語表記に関しては以下の通りである。
PEDOT:PSS : Poly(3,4-ethylenedioxythiophene):Poly(styrene sulfonate)
ポリジオキシエチルチオフェン:ポリスチレンスルホン酸
PANI: Polyaniline ポリアニリン
PPY: Polypyrrole ポリピロール
PVA: Poly(vinyl alcohol) ポリビニルアルコール
PEO: Polyethylene oxide ポリエチレンオキシド
PAMM: Polyacrylamide ポリアクリルアミド
PVAC: Poly(vinyl acetate) ポリ酢酸ビニル
PVP: Poly(vinyl pyrrolidone) ポリビニルピロリドン
【符号の説明】
【0083】
10 可撓性電極
11 有機軟質材
112 第2の容量性活性物質
12 層状ケイ酸塩ブロック
12F 平坦部
12R 傾斜部
121 ケイ酸塩結晶プレート
122 第1の容量性活性物質
M1 第1の部分領域
M2 第2の部分領域