(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】硫黄-炭素複合体及びそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
C01B 32/168 20170101AFI20220607BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20220607BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
C01B32/168
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M4/36 C
(21)【出願番号】P 2021503690
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(86)【国際出願番号】 KR2019011707
(87)【国際公開番号】W WO2020060097
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2020-10-07
(31)【優先権主張番号】10-2018-0112636
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0111292
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ボン・ス・キム
(72)【発明者】
【氏名】クォンナム・ソン
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】Junkai Wang, et al.,C-S@PANI composite with a polymer spherical network structure for high performance lithium-sulfur batteries,Physical Chemistry Chemical Physics,2016年,Vol.18,p.261-266
【文献】Chao Wang, et al.,Dual core-shell structured sulfur cathode composite synthesized by a one-pot route for lithium sulfur batteries,J. Mater. Chem. A,2013年,Vol.1,p.1716-1723
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-33/991
H01M 4/00- 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク型伝導性高分子コーティング層を含む硫黄-炭素複合体
であって、
前記ネットワーク型とは、硫黄-炭素複合体の表面に形成されたコーティング層が硫黄-炭素複合体の表面一部が露出することができるように網状に形成されたものを意味し、
前記炭素は、グラファイト(graphite)、グラフェン(graphene)、スーパーP(Super P)、カーボンブラック、デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラック、炭素繊維、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブ、炭素ナノワイヤー、炭素ナノリング、炭素織物及びフラーレン(C60)からなる群より選択される1種以上である、硫黄-炭素複合体。
【請求項2】
前記伝導性高分子は、ポリアニリン(polyaniline)、ポリピロール(polypyrrole)、ポリチオフェン(polythiophene)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(poly(3,4-ethylenedioxythiophene))、ポリアセチレン(polyacetylene)、ポリジアセチレン(polydiacetylene)、ポリチオフェンビニレン(poly(thiophenevinylene))、ポリフルオレン(polyfluorene)及びこれらの誘導体からなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の硫黄-炭素複合体。
【請求項3】
前記伝導性高分子の形状は、ナノ繊維、ナノワイヤー、ナノロッド及びナノチューブからなる群より選択される1種以上のナノ構造体である、請求項1又は2に記載の硫黄-炭素複合体。
【請求項4】
前記硫黄-炭素複合体は、
内部に少なくとも一つの炭素粒子が含まれた硫黄粒子;及び
前記硫黄粒子表面の一部または全部に位置する炭素粒子;を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体。
【請求項5】
前記硫黄と炭素の重量比は、6:4~9:1である、請求項1~4のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体。
【請求項6】
前記伝導性高分子の含有量は、前記伝導性高分子コーティング層を含む硫黄-炭素複合体全体の重量を基準として0.1~10重量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体。
【請求項7】
前記硫黄は硫黄(S8)、Li2Sn(nはn≧1の実数である。)、有機硫黄化合物及び炭素-硫黄ポリマー[(C2Sx)n、xは2.5~50の実数であり、nはn≧2の実数である]からなる群より選択される1種以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体。
【請求項8】
前記炭素は
、炭素ナノチュー
ブである、請求項1~7のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体。
【請求項9】
前記伝導性高分子の形状がナノ繊維であり、前記ナノ繊維の直径が50nm~500nmである、請求項1~8のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体。
【請求項10】
前記伝導性高分子がポリアニリンである、請求項1~9のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれかに記載の硫黄-炭素複合体を含む正極。
【請求項12】
請求項1~
10のいずれかに記載の硫黄-炭素複合体を含むリチウム二次電池。
【請求項13】
前記リチウム二次電池は、リチウム-硫黄二次
電池である、請求項
12に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年9月20日付け韓国特許出願第10-2018-0112636号及び2019年9月9日付け韓国特許出願第10-2019-0111292号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池の正極材として適用可能な硫黄-炭素複合体、及びそれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、電子機器分野と電気自動車分野の急速な発展に伴い、二次電池の需要が増加している。特に、携帯用電子機器の小型化及び軽量化の趨勢により、それに応えることのできる高エネルギー密度を有する二次電池に対する要求が高まっている。
【0004】
二次電池の中でリチウム-硫黄二次電池は、硫黄-硫黄結合を有する硫黄系化合物を正極活物質として用い、リチウムのようなアルカリ金属またはリチウムイオンのような金属イオンの挿入及び脱挿入が起こる炭素系物質またはリチウムと合金を形成するシリコンやスズなどを負極活物質として用いる二次電池である。具体的に、還元反応である放電時に硫黄-硫黄結合が切れながら硫黄の酸化数が減少し、酸化反応である充電時に硫黄の酸化数が増加しながら、硫黄-硫黄結合が再び形成される酸化-還元反応を利用して電気的エネルギーを貯蔵し、生成する。
【0005】
特に、リチウム-硫黄二次電池の正極活物質として用いられる硫黄は理論エネルギー密度が1675mAh/gで、従来のリチウム二次電池で用いられる正極活物質に比べて5倍程度高い理論エネルギー密度を有しているため、高出力及び高エネルギー密度の発現が可能な電池である。これ加えて、硫黄は安価で埋蔵量が豊富で、需給が容易であり、環境に優しいという利点のために携帯用電子機器だけでなく、電気自動車のような中大型装置のエネルギー源として注目を帯びている。
【0006】
硫黄は不導体であり、伝導性物質である炭素と複合体を成して主に使用され、正極内に硫黄の含有量が高いほどエネルギー密度が増加するが、伝導性素材の量が減少するので、電気化学的過電圧が増加して起電力が失われる問題があった。
【0007】
このようなリチウム-硫黄二次電池の問題を解決するために、ポリスルフィドを吸着する素材を正極材にコーティングするか、または分離膜または負極のような電池内の構成品に導入する技術が提案された。また、伝導性高分子を正極材にコーティングする研究結果も報告されている。
【0008】
一例として、Jun Jin et al.(SOLID STATE IONICS 262(2014)pp.170-173)は、伝導性高分子であるポリアニリンでコーティングされたメソポーラス硫黄-炭素複合体を含むリチウム-硫黄二次電池の正極を開示している。
【0009】
また、Guo-Chun Li.et al.(ADVANCED ENERGY MATERIALS 2012,2,pp.1238-1245)も、伝導性高分子であるポリアニリンでコーティングされた硫黄-炭素ブラック複合体を含むリチウム-硫黄二次電池の正極活物質を開示している。
【0010】
しかし、これらの文献で提示する硫黄-炭素複合体の場合、ポリアニリンが薄膜でコーティングされているため、リチウムイオンの移動が難しくなる問題がある。
【0011】
したがって、硫黄-炭素複合体の伝導性を向上させるとともに、リチウムイオンの移動を円滑にすることができる技術の開発が急務となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】Jun Jin et al.,SOLID STATE IONICS 262(2014)pp.170-173
【文献】Guo-Chun Li. et al.,ADVANCED ENERGY MATERIALS 2012,2,pp.1238-1245
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者らは、前記問題を解決するために多角的に研究を行った結果、硫黄-炭素複合体に伝導性高分子を導入するが、伝導性高分子としてポリアニリンナノ繊維を用いて前記硫黄-炭素複合体の表面をリチウムイオンが通過できるようにする形態でコーティングすることにより、硫黄-炭素複合体の伝導性が改善されることを確認した。また、前記ポリアニリンナノ繊維でコーティングされた硫黄-炭素複合体は、ポリスルフィドへの吸着率が向上し、前記コーティングされたポリアニリンナノ繊維間にリチウムイオンの移動がスムーズに行われ、電池の性能が向上することを確認した。
【0014】
したがって、本発明の目的は、リチウムイオンの移動が可能な形態を有する伝導性高分子コーティング層が形成された硫黄-炭素複合体を提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、リチウムイオンの移動が可能な形態を有する伝導性高分子コーティング層が形成された硫黄-炭素複合体を含むリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、本発明は、ネットワーク型伝導性高分子コーティング層を含む硫黄-炭素複合体を提供する。
【0017】
前記伝導性高分子は、ポリアニリン(polyaniline)、ポリピロール(polypyrrole)、ポリチオフェン(polythiophene)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(poly(3,4-ethylenedioxythiophene))、ポリアセチレン(polyacetylene)、ポリジアセチレン(polydiacetylene)、ポリチオフェンビニレン(poly(thiophenevinylene))、ポリフルオレン(polyfluorene)及びこれらの誘導体からなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0018】
前記伝導性高分子の形状は、ナノ繊維、ナノワイヤー、ナノロッド及びナノチューブからなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0019】
前記硫黄-炭素複合体は、内部に少なくとも一つの炭素粒子が含まれた硫黄粒子;及び前記硫黄粒子表面の一部または全部に位置する炭素粒子;を含むものであってもよい。
【0020】
前記硫黄と炭素の重量比は、6:4~9:1であってもよい。
【0021】
前記伝導性高分子の含有量は、前記伝導性高分子コーティング層を含む硫黄-炭素複合体全体の重量を基準として0.1~10重量%であってもよい。
【0022】
前記硫黄は硫黄(S8)、Li2Sn(nはn≧1の実数である。)、有機硫黄化合物及び炭素-硫黄ポリマー[(C2Sx)n、xは2.5~50の実数であり、nはn≧2の実数である]からなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0023】
前記炭素は、グラファイト(graphite)、グラフェン(graphene)、スーパーP(Super P)、カーボンブラック、デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラック、炭素繊維、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブ、炭素ナノワイヤー、炭素ナノリング、炭素織物及びフラーレン(C60)からなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0024】
本発明はまた、前記硫黄-炭素複合体を含む正極を提供する。
【0025】
本発明はまた、前記硫黄-炭素複合体を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る硫黄-炭素複合体によれば、伝導性高分子コーティング層が導入され、リチウム-硫黄二次電池に適用する際に、正極から溶出されるポリスルフィドを吸着することができるので、前記ポリスルフィドが電解液に溶解して負極に移動することによって発生する寿命減少の現象を防止することができる。
【0027】
また、前記硫黄-炭素複合体にポリスルフィドが吸着された場合、炭素とともに導電構造を構成するので、硫黄の利用率を改善することができる。
【0028】
また、前記硫黄-炭素複合体は、伝導性高分子コーティング層が導入されて導電性が改善されることができる。
【0029】
また、前記伝導性高分子コーティング層が形成された硫黄-炭素複合体において、前記伝導性高分子コーティング層が伝導性高分子ナノ繊維により形成され、リチウムイオンが移動可能な空間を確保することができるので、リチウムイオンの移動をスムーズに行うことができる。
【0030】
また、前記伝導性高分子ナノ繊維により形成された伝導性高分子コーティング層を含む硫黄-炭素複合体をリチウム-硫黄二次電池の正極に適用する場合、リチウム-硫黄二次電池の性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明に係る伝導性高分子コーティング層を含む硫黄-炭素複合体の模式図である。
【
図2】比較例2に基づいてアニリンを添加した電解液及びアニリンを未添加の電解液に充電電圧を印加する場合の電位と電流の相関関係を示したグラフである。
【
図3a】それぞれ製造例1で合成されたポリアニリンナノ繊維及び実施例1で製造された硫黄-炭素複合体の表面に形成されたポリアニリンナノ繊維コーティング層に関するSEM(Scanning Electron Microscopy)写真である。
【
図3b】それぞれ製造例1で合成されたポリアニリンナノ繊維及び実施例1で製造された硫黄-炭素複合体の表面に形成されたポリアニリンナノ繊維コーティング層に関するSEM(Scanning Electron Microscopy)写真である。
【
図4】実施例1、比較例1及び2でそれぞれ製造されたリチウム-硫黄二次電池のコインセル評価の結果で最初の放電曲線を示したグラフである。
【
図5】実施例1、比較例1及び2でそれぞれ製造されたリチウム-硫黄二次電池のサイクル-放電容量曲線を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の理解を助けるために、本発明をさらに詳細に説明する。
【0033】
本明細書及び請求の範囲に使われた用語や単語は通常的かつ辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるとの原則に即して、本発明の技術的な思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0034】
<硫黄-炭素複合体>
本発明は、伝導性高分子コーティング層を含む硫黄-炭素複合体に関する。
【0035】
図1は、本発明に係る伝導性高分子コーティング層を含む硫黄-炭素複合体の模式図である。
【0036】
図1を参照すると、伝導性高分子コーティング層を含む硫黄-炭素複合体(10)は、硫黄-炭素複合体(11)の表面に伝導性高分子コーティング層(12)が形成されたものであってもよい。
【0037】
前記伝導性高分子コーティング層(12)をなす伝導性高分子は、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリチオフェンビニレン、ポリフルオレン及びこれらの誘導体からなる群より選択される1種以上であってもよく、好ましくは、前記伝導性高分子はポリアニリンであってもよい。
【0038】
また、前記伝導性高分子コーティング層(12)の形状は、ネットワーク型であってもよい。このとき、ネットワーク型とは、硫黄-炭素複合体の表面に形成されたコーティング層が前記硫黄-炭素複合体の表面全体に形成されたものではなく、硫黄-炭素複合体の表面一部が露出することができるように網状に形成されたものを意味する。前記ネットワーク型の伝導性高分子コーティング層(12)には、前記硫黄-炭素複合体の表面一部が露出した部分に空間が形成されており、前記空間を通じてリチウムイオンが自由に移動することができる利点がある。
【0039】
このように前記伝導性高分子コーティング層がネットワーク型に形成されるようにするためには、伝導性高分子がナノワイヤー、ナノロッド及びナノチューブからなる群より選択される1種以上のナノ構造体の形状を有するものであってもよい。好ましくは、前記伝導性高分子がナノ繊維形状であってもよく、この場合、ネットワーク型コーティング層の形成に有利である。
【0040】
また、前記伝導性高分子がナノ繊維形状である場合、前記ナノ繊維の直径は10nm~1μm、好ましくは20nm~500nm、より好ましくは50nm~200nmであってもよい。前記範囲未満であれば硫黄-炭素複合体の伝導性を改善させる効果が少なく、前記範囲を超える場合は、ネットワーク型に形成されるコーティング層に形成される空間が狭小となり、リチウムイオンの移動が困難になることがある。
【0041】
前記伝導性高分子の含有量は、伝導性高分子コーティング層を含む硫黄-炭素複合体全体の重量を基準として0.1~10重量%、好ましくは0.5~7重量%、より好ましくは1~5重量%であってもよい。前記範囲未満であれば硫黄-炭素複合体の伝導性の改善効果が少なく、前記範囲を超える場合は、電池に適用時、電池の性能が低下することができる。
【0042】
前記硫黄-炭素複合体(11)は、内部に少なくとも一つの炭素粒子が含まれた硫黄粒子;及び前記硫黄粒子表面の一部または全部に位置する炭素粒子;を含むものであってもよい。
【0043】
また、前記硫黄-炭素複合体(11)は、硫黄粒子の内部と外部に炭素粒子が含まれる構造であるため、硫黄と炭素が均一な割合で混合されることができ、導電材である炭素が硫黄に対して電子伝導性を効果的に付与することができるという利点がある。
【0044】
また、前記硫黄-炭素複合体(11)において、前記硫黄は硫黄(S8)、Li2Sn(nはn≧1の実数である。)、有機硫黄化合物及び炭素-硫黄ポリマー[(C2Sx)n、xは2~50の実数であり、nはn≧2の実数である]からなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0045】
また、前記炭素は、グラファイト、グラフェン、スーパーP、カーボンブラック、デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラック、炭素繊維、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブ、炭素ナノワイヤー、炭素ナノリング、炭素織物及びフラーレン(C60)からなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0046】
また、前記硫黄-炭素複合体(11)の直径は、5~100μm、好ましくは10~70μm、より好ましくは15~60μmであってもよい。このとき、硫黄-炭素複合体(11)の直径とは、前記硫黄-炭素複合体粒子の断面で最長軸の長さを意味する。前記範囲未満であれば、伝導性高分子ナノ繊維がコーティングする表面積が大きすぎるため、前記表面積をすべてコーティングすることができず、コーティングの効果が示されないことがあり、前記範囲を超える場合は、電極形成時に不均一度が大きくなり、性能に悪影響を与えることができる。
【0047】
前記硫黄と炭素の重量比は60:40~90:10、好ましくは65:35~85:15、より好ましくは70:30~80:20であってもよい。前記硫黄に対する炭素の重量比が前記範囲未満であれば、伝導性が低下することができ、前記範囲を超える場合は、活物質の量が減ってエネルギー密度が低下することができる。
【0048】
<硫黄-炭素複合体の製造方法>
本発明はまた、伝導性高分子コーティング層を含む硫黄-炭素複合体の製造方法に関し、前記硫黄-炭素複合体の製造方法は、(S1)伝導性高分子を含む濃縮分散液を製造する段階;(S2)硫黄粉末と炭素素材を混合して硫黄-炭素複合体を製造する段階;及び(S3)前記濃縮分散液と硫黄-炭素複合体を混合し、乾燥させて、前記硫黄-炭素複合体に伝導性高分子コーティング層を形成する段階;を含む。
【0049】
以下、各段階別に本発明に係る硫黄-炭素複合体の製造方法をより詳細に説明する。
【0050】
(S1)段階
(S1)段階では、伝導性高分子を含む濃縮分散液を製造することができる。
前記伝導性高分子は、ネットワーク型コーティング層を形成することができる形状を有するものであってもよい。前記伝導性高分子の具体的な種類及び形状は前述の通りである。好ましくは、前記伝導性高分子はポリアニリンナノ繊維であってもよい。
前記伝導性高分子を水に分散及びろ過させる過程を数回繰り返し、伝導性高分子を含む濃縮分散液を製造することができる。
【0051】
(S2)段階
(S2)段階では、硫黄と炭素を混合して硫黄-炭素複合体を製造することができる。
【0052】
このとき、硫黄と炭素はそれぞれ粒子形態であり、硫黄と炭素の具体的な種類と直径は前述の通りである。
【0053】
具体的には、有機溶媒に硫黄と炭素を分散させ、加熱して溶融拡散法によって硫黄を溶融させ、混合して硫黄-炭素複合体を形成することができる。
【0054】
このとき、前記有機溶媒は、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、及び2-ブトキシエチルアセテートからなる群より選択される1種以上であってもよいが、これらに制限されるものではなく、硫黄と炭素を分散させることができる有機溶媒を広範囲に使用することができる。
【0055】
また、前記加熱時の温度は、硫黄の融点以上であってもよい。すなわち、前記加熱時の温度は115.21℃以上、好ましくは130~200℃、より好ましくは150~200℃であってもよい。前記範囲未満であれば硫黄が溶けないため、硫黄-炭素複合体を形成することができず、前記範囲を超える場合は、硫黄-炭素複合体が変性してリチウム二次電池の正極材として適用時、電池の性能改善効果が少ない。
【0056】
(S3)段階
(S3)段階では、前記(S1)段階で得た伝導性高分子を含む濃縮分散液、前記(S2)段階で得た硫黄-炭素複合体及び溶媒を混合し、乾燥させて、前記硫黄-炭素複合体の伝導性高分子コーティング層を形成することができる。
【0057】
前記溶媒は、前記硫黄-炭素複合体と親和性の良い溶媒であって、水、エタノール、アセトン、ジクロロメタン及び1-メチル-2-ピロリドンからなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0058】
<リチウム二次電池>
本発明はまた、前述のような硫黄-炭素複合体を含むリチウム二次電池に関する。このとき、前記硫黄-炭素複合体は、好ましくは正極活物質として含まれることができる。
【0059】
本発明に係るリチウム二次電池は、正極、負極、これらの間に介在された分離膜及び電解質を含むことができる。
【0060】
本発明において、前記リチウム二次電池の正極は、正極集電体及び前記正極集電体上に形成された正極活物質を有する正極合剤層を含むことができる。
【0061】
前記正極活物質としては、リチウム含有遷移金属酸化物を好ましく用いることができ、例えばLiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、Li(NiaCobMnc)O2(0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、LiNi1-yCoyO2、LiCo1-yMnyO2、LiNi1-yMnyO2(0≦y<1)、Li(NiaCobMnc)O4(0<a<2、0<b<2、0<c<2、a+b+c=2)、LiMn2-zNizO4、LiMn2-zCozO4(0<z<2)、LiCoPO4及びLiFePO4からなる群より選択されるいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物を用いることができる。また、このような酸化物(oxide)の他に、硫化物(sulfide)、セレン化物(selenide)及びハロゲン化物(halide)なども用いることができる。
【0062】
また、前記正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、かつ高い導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを用いることができる。このとき、前記正極集電体は、正極活物質との接着力を高めることもできるように、表面に微細な凹凸が形成されたフィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態を用いることができる。
【0063】
本発明において、前記リチウム二次電池の負極は、負極集電体及び前記負極集電体上に形成された負極活物質を有する負極合剤層を含むことができる。
【0064】
前記負極活物質としては、通常、リチウムイオンが吸蔵及び放出されることができる炭素材、リチウム金属、ケイ素またはスズなどを用いることができる。好ましくは、炭素材を用いることができ、炭素材としては、低結晶性炭素及び高結晶性炭素などをすべて用いることができる。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)及び硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、天然黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(meso-carbon microbeads)、液晶ピッチ(Mesophase pitches)及び石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。このとき、負極は結着剤を含むことができ、結着剤としては、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)など、様々な種類のバインダー高分子を用いることができる。
【0065】
また、前記負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、かつ導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などを用いることができる。また、前記負極集電体は正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸が形成されたフィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態を用いることができる。
【0066】
このとき、前記正極合剤層または負極合剤層は、バインダー樹脂、導電材、充填剤及びその他の添加剤などをさらに含むことができる。
【0067】
前記バインダー樹脂は、電極活物質と導電材の結合と集電体に対する結合のために使用する。このようなバインダー樹脂の例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの様々な共重合体などが挙げられる。
【0068】
前記導電材は、電極活物質の導電性をさらに向上させるために使用する。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、かつ導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などを用いることができる。
【0069】
前記充填剤は、電極の膨張を抑制する成分として選択的に使用され、当該電池に化学的変化を誘発することなく、かつ繊維状材料であれば特に制限されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質が用いられる。
【0070】
本発明において、前記分離膜は多孔性基材からなってもよく、前記多孔性基材は、通常、電気化学素子に用いられる多孔性基材であればいずれも使用が可能であり、例えばポリオレフィン系多孔性膜(membrane)または不織布を用いることができるが、これに特に限定されるものではない。
【0071】
前記ポリオレフィン系多孔性膜の例としては、高密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンのようなポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどのポリオレフィン系高分子をそれぞれ単独で、またはこれらを混合した高分子で形成した膜(membrane)が挙げられる。
【0072】
前記不織布としては、ポリオレフィン系不織布の他に、例えば、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)、ポリエステル(polyester)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリアミド(polyamide)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキシド(polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylenesulfide)及びポリエチレンナフタレン(polyethylenenaphthalene)などをそれぞれ単独で、またはこれらを混合した高分子で形成した不織布が挙げられる。不織布の構造は、長繊維で構成されたスパンボンド不織布またはメルトブローン不織布であってもよい。
【0073】
前記多孔性基材の厚さは特に制限されないが、1μm~100μm、または5μm~50μmである。
【0074】
多孔性基材に存在する気孔の大きさ及び気孔度も特に制限されないが、それぞれ0.001μm~50μm及び10%~95%であってもよい。
【0075】
本発明において、前記電解液は非水電解液であってもよく、前記非水電解液に含まれる電解質塩はリチウム塩である。前記リチウム塩は、リチウム二次電池用電解液に通常使用されるものを制限なく用いることができる。例えば、前記リチウム塩は、LiFSI、LiPF6、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiPF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、(CF3SO2)2NLi、クロロボランリチウム、及び4-フェニルホウ酸リチウムからなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0076】
前述の非水電解液に含まれる有機溶媒としては、リチウム二次電池用電解液に通常使用されるものを制限なく用いることができ、例えば、エーテル、エステル、アミド、線形カーボネート、環形カーボネートなどをそれぞれ単独で、または2種以上混合して用いることができる。その中で代表的には、環形カーボネート、線形カーボネート、またはこれらのスラリーであるカーボネート化合物を含むことができる。
【0077】
前記環形カーボネート化合物の具体的な例としては、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、及びこれらのハロゲン化物からなる群より選択されるいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上のスラリーがある。これらのハロゲン化物としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート(fluoroethylene carbonate、FEC)などがあり、これに限定されるものではない。
【0078】
また、前記線形カーボネート化合物の具体的な例としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート、及びエチルプロピルカーボネートからなる群より選択されるいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上のスラリーなどを代表的に用いることができるが、これに限定されるものではない。特に、前記カーボネート系有機溶媒の中で環形カーボネートであるエチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートは高粘度の有機溶媒であって、誘電率が高く、電解質内のリチウム塩をよりよく解離させることができ、このような環形カーボネートにジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートのような低粘度、低誘電率の線形カーボネートを適当な割合で混合して用いると、より高い電気伝導率を有する電解液を作ることができる。
【0079】
また、前記有機溶媒中のエーテルとしては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、及びエチルプロピルエーテルからなる群より選択されるいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上のスラリーを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0080】
また、前記有機溶媒中のエステルとしては、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、σ-バレロラクトン及びε-カプロラクトンからなる群より選択されるいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上のスラリーを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0081】
前記非水電解液の注入は、最終製品の製造工程及び要求物性に応じて、電気化学素子の製造工程の中で適切な段階で行われることができる。すなわち、電気化学素子の組立前または電気化学素子の組立最終段階などで適用することができる。
【0082】
本発明に係るリチウム二次電池は、一般的な工程である巻取り(winding)以外にも、セパレータと電極の積層(lamination、stack)及び折り畳み(folding)工程が可能である。
【0083】
そして、前記電池ケースの形状は特に制限されず、円筒形、積層形、角形、ポーチ(pouch)形またはコイン(coin)形など様々な形状とすることができる。これら電池の構造と製造方法はこの分野において広く知られているので、詳細な説明は省略する。
また、前記リチウム二次電池は使用する正極/負極材質によって、リチウム-硫黄二次電池、リチウム-空気電池、リチウム-酸化物電池、リチウム全固体電池など、様々な電池に分類が可能である。
【0084】
本発明はまた、前記リチウム二次電池を単位電池として含む電池モジュールを提供する。
【0085】
前記電池モジュールは、高温安定性、長いサイクル特性及び高い容量特性などが要求される中大型デバイスの電源として使用することができる。
【0086】
前記中大型デバイスの例としては、電池的モーターによって動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(electric vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)、プラグ-インハイブリッド電気自動車(plug-in hybride electric vehicle、PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
<リチウム-硫黄二次電池>
本発明に係る硫黄-炭素複合体はリチウム二次電池の中でも、リチウム-硫黄二次電池の正極に適用することができる。
【0088】
このとき、前記リチウム-硫黄二次電池は、正極活物質として前記硫黄-炭素複合体を含む電池であってもよい。
【0089】
前記硫黄-炭素複合体は、気孔内部までリチウムイオンの移動経路を確保することで高いイオン伝導性を示すことができ、硫黄担持体の役割をして正極活物質である硫黄との反応性を高め、リチウム-硫黄二次電池の容量及び寿命特性を同時に向上させることができる。
【0090】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変形及び修正が添付された特許請求の範囲に属するのも当然である。
【0091】
<製造例1:ポリアニリンナノ繊維の合成>
伝導性高分子であるポリアニリンナノ繊維の合成は、Jiaxing Huang et al.(Nanofiber Formation in the Chemical Polymerization of Aniline:A Mechanistic Study Angew.Chem.Int.Ed.2004,43,5817-5821)に基づいて行った。
【0092】
アニリン(aniline)を1M HClに溶解させ、0.32Mのアニリン溶液100mlを製造した。
【0093】
過硫酸アンモニウム(ammonium persulfate)を1M HClに溶解させ、0.08Mの過硫酸アンモニウム溶液100mlを製造した。
【0094】
前記アニリン溶液と過硫酸アンモニウム溶液を混合して混合溶液を得た。
【0095】
前記混合溶液の形成時に常温で速く混合しながら初期反応を行った後、前記混合溶液の状態で10時間追加反応を行って、ポリアニリンナノ繊維分散液を製造した。
【0096】
<実施例1>
(1)硫黄-炭素複合体の製造
(1-1)伝導性高分子を含む濃縮分散液の製造
製造例1で得たポリアニリンナノ繊維分散液をろ過して残留反応物を除いたポリアニリンナノ繊維を取り除き、数回水に再分散及び再濾過を経てpHを6以上に中和させ、濃度が5%であるポリアニリンナノ繊維濃縮分散液を得た。
【0097】
(1-2)硫黄-炭素複合体の製造
炭素ナノチューブと硫黄を25:75の重量比で混合し、155℃で溶融拡散法により炭素に硫黄を担持して硫黄-炭素複合体を製造した。
【0098】
(1-3)ネットワーク型伝導性高分子コーティング層の形成
前記(1-1)で得たポリアニリンナノ繊維濃縮分散液、前記(1-2)で得た硫黄-炭素複合体及びエタノールを1:1:1の重量比で混合した。
【0099】
混合後、得た混合溶液を乾燥させて溶媒を除去することにより、ポリアニリンナノ繊維コーティング層が形成された硫黄-炭素複合体を製造した。このとき、前記ポリアニリンナノ繊維コーティング層が形成された硫黄-炭素複合体内に含まれたポリアニリンは5重量%である。
【0100】
(2)正極の製造
Al集電体の一面に、前記硫黄-炭素複合体を含む正極合剤層を形成して正極を製造した。このとき、前記正極合剤層は、前記硫黄-炭素複合体、バインダーとしてポリアクリル酸(PAA)及びカーボンブラックを88:7:5の重量比で混合した後、水に分散させたスラリーを前記Al集電体の一面にコーティング及び乾燥して、製造した。
【0101】
(3)リチウム-硫黄二次電池の製造
負極として100μm厚さのリチウム箔、前記(2)で製造された正極、電解液は溶媒として2-METHF/DMEを用い、LiTFSIとLiNO3を含む(2-METHF:2-メチルテトラヒドロフラン、DME:ジメトキシエタン)電解液及びポリオレフィン分離膜を用いて、コインセル形態のリチウム-硫黄二次電池を製造した。
【0102】
<比較例1>
実施例1と同様に行って、ポリアニリンナノ繊維コーティング層が形成されない硫黄-炭素複合体を製造した。
【0103】
<比較例2>
比較例1のようにポリアニリンナノ繊維コーティング層が形成されない状態の硫黄-炭素複合体を製造した後、コインセル製作時に電解液にアニリンを添加し、充電電圧を加え、前記硫黄-炭素複合体の表面に膜形態のポリアニリンコーティング層を形成した。このとき、前記アニリンの添加量は、ポリアニリンコーティング層が形成された硫黄-炭素複合体全体の重量を基準としてポリアニリンの含有量が5重量%となるようにして添加した。
【0104】
図2は、比較例2に基づいてアニリンを添加した電解液及びアニリンを、未添加の電解液に充電電圧を印加する場合の電位と電流の相関関係を示したグラフである。
【0105】
図2を参照すると、電解液にアニリンを添加して充電電圧を印加する場合、硫黄-炭素複合体の表面に膜形態のポリアニリンコーティング層が形成されたことが分かる。これは充電電圧を印加する場合、電極で電気化学的にアニリンの酸化が起こり、重合されてポリアニリンが生成される原理によるものである。すなわち、電圧3.5Vで観察される電流の増加によりアニリンからポリアニリンの電気化学的重合を確認することができ、活物質表面がポリアニリンコーティング層が形成されるものである(J.Mater.Chem.A,2014,2,18613-18623|18613)。
【0106】
<実験例1:SEM(Scanning Electron Microscopy)分析>
図3a及び3bは、それぞれ製造例1で合成されたポリアニリンナノ繊維及び実施例1で製造された硫黄-炭素複合体の表面に形成されたポリアニリンナノ繊維コーティング層に関するSEM写真である。
【0107】
図3a及び3bを参照すると、ポリアニリンナノ繊維を利用して硫黄-炭素複合体の表面にコーティング層を形成し、ネットワーク形状のコーティング層が形成されることを確認した。
【0108】
<実験例2:多孔性炭素構造体によるリチウム-硫黄二次電池の性能改善効果の分析>
実施例1と比較例1でそれぞれ製造された硫黄-炭素複合体を正極に適用したリチウム-硫黄二次電池の性能に関する実験を行った。製造されたコインセルで充放電試験を行い、充/放電電流密度は0.1C/0.1C 3回、0.2C/0.2C 3回、その後、0.3C/0.5Cで評価した。
【0109】
図4は、実施例1、比較例1及び2でそれぞれ製造されたリチウム-硫黄二次電池のコインセル評価の結果で最初の放電曲線を示したグラフであり、
図5は、実施例1、比較例1及び2でそれぞれ製造されたリチウム-硫黄二次電池のサイクル-放電容量曲線を示したグラフである。
【0110】
図4及び
図5を参照すると、比較例1に比べて実施例1のリチウム-硫黄二次電池で、初期放電容量が高く、かつ初期放電末端区間で過電圧が改善され、寿命特性も改善されることを確認した。
【0111】
また、比較例2は、比較例1に比べて過電圧が一部改善されるが、膜形態のポリアニリンコーティング層が形成され、放電末端で電圧が減少するため、十分な容量を示さず、実施例1に比べて性能が良くないことを確認した。
【0112】
以上、本発明はたとえ限定された実施例と図面によって説明されたが、本発明はこれに限定されず、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者によって本発明の技術思想と下記に記載する特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0113】
10:伝導性高分子コーティング層を含む硫黄-炭素複合体
11:硫黄-炭素複合体
12:伝導性高分子コーティング層