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特許7084549支持要素に計時器構成要素を固定するための弾性保持部材
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  • 特許-支持要素に計時器構成要素を固定するための弾性保持部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】支持要素に計時器構成要素を固定するための弾性保持部材
(51)【国際特許分類】
   G04B 17/32 20060101AFI20220607BHJP
   G04B 13/02 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
G04B17/32
G04B13/02 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021513843
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2019073236
(87)【国際公開番号】W WO2020057944
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】18196009.7
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス-ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】エルナンデス,イバン
(72)【発明者】
【氏名】キュザン,ピエール
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-528572(JP,A)
【文献】特表2013-524163(JP,A)
【文献】特開2013-234901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計時器構成要素(2)を支持要素(3)に固定するための弾性保持部材(1)であって、前記支持要素(3)を挿入できる開口部(5)を備え、前記保持部材(1)は、剛性アーム(6)と、前記開口部(5)における前記支持要素(3)の弾性クランプを確実にすることに寄与する接続領域(9)間に画定される弾性アーム(7)とを備え、各剛性アーム(6)は、前記支持要素(3)の対応する凸状接触部分(10)と協働できる前記保持部材(1)の2つの平坦な接触領域(8)を提供され、前記剛性アーム(6)または弾性アーム(7)はおのおの、接続領域(9)間を長手方向に延び、これら剛性アーム(6)およびこれら弾性アーム(7)は、前記保持部材(1)内に連続的かつ交互に配置され、各剛性アーム(6)は、各弾性アーム(7)を構成する材料の体積よりも大きな材料の体積を有する、弾性保持部材(1)。
【請求項2】
前記2つの接触領域(8)は、互いに離間された前記保持部材(1)の各剛性アーム(6)の内面に離れて分散される、請求項1に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項3】
各接触領域(8)は、前記保持部材(1)の各剛性アーム(6)の内面上に画定され、この保持部材(1)の厚さのすべてまたは一部にわたって延びる、請求項1または請求項2に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項4】
各接触領域(8)は、平凸型の接触構成になることにより、前記支持要素(3)の対応する接触部分(10)と協働できる、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項5】
接触部分(10)と同数の接触領域(8)を備える、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項6】
各剛性アーム(6)の前記2つの接触領域(8)はそれぞれ、鈍角をともに形成する異なる面に含まれる、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項7】
弾性アーム(7)と同数の剛性アーム(6)を備える、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項8】
各剛性アーム(6)は、その2つの反対側の端部において、2つの異なる弾性アーム(7)に接続される、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項9】
各剛性アーム(6)は、各弾性アーム(7)を構成する材料の体積よりも大きい材料の体積を有する、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項10】
各弾性アーム(7)は、各剛性アーム(6)の断面よりも小さい断面を有する、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項11】
各弾性アーム(7)は、この弾性アーム(7)の本体全体で一定である断面を有する、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項12】
前記計時器構成要素(2)との取付点(11)を備える、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項13】
ひげぜんまいなどの前記計時器構成要素(2)を、テンプシャフトなどの支持要素(3)に固定するためのコレットである、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項14】
シリコン系材料で作られる、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の弾性保持部材(1)を備える計時器(100)の、時計ムーブメント(110)のための弾性保持部材-計時器構成要素アセンブリ(120)。
【請求項16】
1つの部品で作られる、請求項15に記載のアセンブリ(120)。
【請求項17】
請求項16または請求項17に記載の弾性保持部材-計時器構成要素アセンブリ(120)を備える計時器(100)の、時計ムーブメント(110)のための組付(130)であって、前記アセンブリ(120)は、支持要素(3)に固定される、組付(130)。
【請求項18】
請求項17に記載の少なくとも1つの組付(130)を備える時計ムーブメント(110)。
【請求項19】
請求項18に記載の時計ムーブメント(110)を備える計時器(100)。
【請求項20】
請求項16に記載の弾性保持部材-計時器構成要素アセンブリ(120)の支持要素(3)との組付(130)を実行するための方法であって、
- 前記アセンブリ(120)の前記弾性保持部材(1)の開口部(5)に、前記支持要素(3)を挿入するステップ(13)であって、前記ステップ(13)は、この弾性保持部材(1)の前記弾性アーム(7)の二重弾性変形を誘発する前記弾性保持部材の前記剛性アーム(6)を変位させるフェーズ(15)を提供される、前記弾性保持部材(1)を弾性変形させるサブステップ(14)を備える、ステップ(13)と、
- 前記支持要素(3)に前記保持部材(1)の半径方向弾性クランプを実行するサブステップ(17)を備える、前記支持要素(3)に前記保持部材(1)を固定するステップ(16)とを備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持要素に計時器構成要素を固定するための弾性保持部材に関する。
【0002】
本発明はまた、弾性保持部材-計時器構成要素アセンブリ、およびそのようなアセンブリと支持要素との組付に関する。
【0003】
本発明はまた、そのような組付を実行するための方法に関する。
【0004】
さらに、本発明は、少なくとも1つのそのような組付を備える時計ムーブメントに関する。
【0005】
最後に、本発明は、そのようなムーブメントを備える計時器に関する。
【背景技術】
【0006】
従来技術では、弾性クランプによって、時計ムーブメントにおけるテンプシャフトに、ひげぜんまいを組み立てることに関与する、計時器コレットなどの弾性保持部材が知られている。
【0007】
しかしながら、そのような弾性保持部材は、これらの部材がこれらのテンプシャフトに、低く制限された保持トルクを有するという事実のために、組付などの実行の文脈において、複雑で、長く、高価な取り付け操作を課すという大きな欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、特に、弾性保持部材-計時器構成要素アセンブリの支持要素との組付の取付操作を容易化/単純化するためのみならず、構成要素が平面内の所定の位置に保持されることを確実にし、構成要素の寿命中、その角度位置を保証するための十分な保持を確実にするために、高い保持トルクを有する弾性保持部材を提案することによって、上記の欠点のすべてまたは一部を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明は、計時器構成要素を支持要素に固定するための弾性保持部材に関し、上記支持要素を挿入できる開口部を備え、保持部材は、剛性アームと、開口部における支持要素の弾性クランプを確実にすることに寄与する接続領域間に画定される弾性アームとを備え、各剛性アームは、支持要素の対応する凸状接触部分と協働できる保持部材の2つの平坦な接触領域を提供される。
【0010】
他の実施形態では、
- 2つの接触領域は、互いに離間された上記保持部材の各剛性アームの内面に離れて分散され、
- 各接触領域は、保持部材の各剛性アームの内面上に画定され、この保持部材の厚さのすべてまたは一部にわたって延び、
- 各接触領域は、平凸型の接触構成になることにより、支持要素の対応する接触部分と協働でき、
- 弾性保持部材は、接触部分と同数の接触領域を備え、
- 各剛性アームの2つの接触領域はそれぞれ、鈍角をともに形成する異なる面に含まれ、
- 弾性保持部材は、弾性アームと同数の剛性アームを備え、
- 剛性アームおよび弾性アームは、保持部材内に連続的かつ交互に配置され、
- 各剛性アームは、その2つの反対側の端部において、2つの異なる弾性アームに接続され、
- 各剛性アームは、各弾性アームを構成する材料の体積よりも大きい体積の材料を有し、
- 各弾性アームは、各剛性アームの断面よりも小さい断面を有し、
- 各弾性アームは、この弾性アームの本体全体で一定である断面を有し、
- 弾性保持部材は、計時器構成要素との取付点を備え、
- 弾性保持部材は、ひげぜんまいなどの計時器構成要素を、テンプシャフトなどの支持要素に固定するためのコレットであり、
- 弾性保持部材は、シリコン系材料で作られる。
【0011】
本発明はまた、そのような保持部材を備える計時器の、時計ムーブメントのための弾性保持部材-計時器構成要素アセンブリに関する。
【0012】
特に、アセンブリは、1つの部品で作られる。
【0013】
本発明はまた、弾性保持部材-計時器構成要素アセンブリを備える計時器の、時計ムーブメントのための組付に関し、上記アセンブリは、支持要素に固定される。
【0014】
本発明はさらに、少なくとも1つのそのような組付を備える、時計ムーブメントに関する。
【0015】
本発明はまた、そのような時計ムーブメントを備える計時器に関する。
【0016】
本発明はまた、前の請求項にしたがって、弾性保持部材-計時器構成要素アセンブリの支持要素との組付を実行するための方法に関し、
- 上記アセンブリの弾性保持部材の開口部に、支持要素を挿入するステップであって、上記ステップは、この弾性保持部材の弾性アームの二重弾性変形を誘発する弾性保持部材の剛性アームを変位させるフェーズを提供される、弾性保持部材を弾性変形させるサブステップを備える、ステップと、
- 支持要素に保持部材の半径方向弾性クランプを実行するサブステップを備える、支持要素に保持部材を固定するステップとを備える。
【0017】
したがって、これらの特徴のおかげで、特に、内側構造および外側構造を備えるその剛性アームを構成するかなりの体積(または量)の材料によって特に誘発されるこの弾性保持部材の高い剛性のおかげで、弾性保持部材は、大きな弾性クランプに耐えることができ、したがって、大きな保持トルクを回復するために、拘束されたときに大量の弾性エネルギを蓄積することができる。これらの大きな体積の材料は、この保持部材への支持要素の挿入中に荷重下(または応力下)に置かれる接触領域8に、より正確に含まれることに留意されたい。
【0018】
それに加えて、この弾性保持部材は、この弾性エネルギの蓄積が、シリコンのようなそのような保持部材を構成する材料に関して、許容可能な応力にとどまる応力をもたらすように構成されることに留意されたい。実際、接触領域8は、平坦面を有し、したがって、接触部分で平凸型の接触構成を達成することを可能にし、したがって、破損または他の亀裂の出現による保持部材1への損傷の回避/阻止に寄与する。
【0019】
本発明はまた、そのような弾性保持部材を備える計時器の時計ムーブメントのための弾性保持部材-計時器構成要素アセンブリに関する。
【0020】
有利なことに、このアセンブリは1つの部品で作られる。
【0021】
本発明はまた、支持要素に固定されたそのような弾性保持部材-計時器構成要素アセンブリを備える計時器の時計ムーブメントのための組付に関する。
【0022】
本発明はさらに、少なくとも1つのそのような組付を備える時計ムーブメントに関する。
【0023】
本発明はまた、そのような時計ムーブメントを備える計時器に関する。
【0024】
最後に、本発明はまた、そのような組付を実行するための方法に関する。
【発明の効果】
【0025】
他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、示唆的かつ非限定的な方式で、以下に与えられる説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の1つの実施形態による、ここでは拘束状態にある支持要素に計時器構成要素を固定するための弾性保持部材の正面図である。
図2】本発明の実施形態による、ここでは静止状態にある支持要素に計時器構成要素を固定するための弾性保持部材の斜視図である。
図3図2のIII-IIIに沿った断面図である。
図4図2の部分Aの拡大図である。
図5】本発明の1つの実施形態による、支持要素に固定された弾性保持部材-計時器構成要素アセンブリを含む少なくとも1つの組付を提供された時計ムーブメントを備える計時器を示す図である。
図6】弾性保持部材-計時器構成要素アセンブリの支持要素とのそのような組付を実行するための方法を示す図である。
図7図1の部分Dの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1から図4は、計時器構成要素2を支持要素3に固定するための弾性保持部材1の実施形態を示す。例として、弾性保持部材1は、ひげぜんまいなどの計時器構成要素2を、テンプシャフトなどの支持要素3に固定するためのコレットであり得る。
【0028】
これらの実施形態では、この保持部材1は、図5に見られ、計時器100の時計ムーブメント110に配置されるように提供される、弾性保持部材-計時器構成要素アセンブリ120に含まれ得る。そのようなアセンブリ120は、「壊れやすい」材料と呼ばれる材料、好ましくは微細加工可能な材料で作られた単一の部品であり得る。そのような材料は、シリコン、石英、コランダム、またはセラミックを備えることができる。
【0029】
このアセンブリの変形例では、弾性保持部材1のみが「壊れやすい」材料と呼ばれるそのような材料で作られ、計時器構成要素2は、別の材料で作られることに留意されたい。
【0030】
このアセンブリ120は、たとえば弾性クランプによって支持要素3に固定されることによって、時計ムーブメント110のための組付130に属することができる。この組付130は、腕時計製造分野における用途のために設計されたことに留意されたい。しかしながら、本発明は、航空学、宝飾品、あるいは自動車などの他の分野で完全に実施され得る。
【0031】
そのような保持部材1は、好ましくは平坦である上面および下面12を備え、これらはそれぞれ、図2に見られる第1の平面P1および第2の平面P2、ならびに外側構造4aおよび内側構造4bに含まれる。これらの外側構造4aおよび内側構造4bはそれぞれ、この保持部材1の外周壁および内周壁を備え、異なる形状を有する。より具体的には、外側構造4aに関して、それは、特に凸形状を有する部分を備える、概して六角形の形状を有し得る。これらの部分のおのおのは、弾性アーム7を剛性アーム6に接続する接続領域9に含まれる。弾性アーム7および剛性アーム6はおのおの、保持部材1の一部を互いに接続する細長部分である。言い換えれば、剛性アームまたは弾性アームは、2つの接続領域9間を長手方向に延びる。この文脈において、弾性アーム7が考慮される場合、互いに接続されるオルガン1の一部は、剛性アーム6であり、この接続は、接続領域9において行われる。同様に、剛性アーム6が考慮される場合、互いに接続されている部材1の一部は弾性アーム7であり、この接続は明らかに接続領域9において行われる。この外側構造4aは、特に、保持部材1の外周壁に配置された少なくとも1つの取付点11によって計時器構成要素2に接続されることが意図される。内側構造4bに関して、非三角形の形状を有する。この保持部材1の内周壁を備えるこの内側構造4bは、支持要素3が挿入されることを意図されているそのような保持部材1の開口部5を画定することに関与する。この開口部5は、中に配置されることが意図される支持要素3の一端の接続部分の体積よりも小さい、保持部材1における体積を画定する。この接続部分は、円形の断面を有し、支持要素3の周壁13に画定された凸状接触部分10のすべてまたは一部を備えることに留意されたい。この支持要素3は、図1に見られる曲率半径R1を有することに留意されたい。
【0032】
この保持部材1は、外側構造4aおよび内側構造4bを互いに接続する剛性アーム6および弾性アーム7を備える。この保持部材1は、弾性アーム7と同数の剛性アーム6を備えることに留意されたい。剛性アーム6は、ここでは変形不可能またはほとんど変形不可能であり、保持部材1を補強するための要素として作用する。弾性アーム7に関しては、それらは主に引張りで変形できるが、ねじれでも変形できる。これらの剛性アーム6およびこれらの弾性アーム7は、この保持部材1において連続的かつ交互に画定されるか、さもなければ分散される。言い換えれば、これらの剛性アーム6は、上記弾性アーム7によって互いに接続される。より具体的には、各弾性アーム7は、接続領域9における2つの反対側の端部において、2つの異なる剛性アーム6に接続される。そのような剛性アーム6および弾性アーム7は、非限定的かつ非網羅的な方法で、
- 内側構造4bに含まれ、保持部材1の内周壁、したがってこの保持部材1の開口部5をもともに画定することに関与する内面と、
- 外側構造4aに含まれ、この保持部材1の外周壁をともに画定する外面とを備える。
【0033】
弾性アーム7の内面は本質的に平坦であり、剛性アーム6の内面は非平坦であり、たとえば、全体的または部分的に実質的に波型であることに留意されたい。本実施形態では、各剛性アーム6の内面は、実質的に中空または実質的に凹状の部分を備え、ここに2つの接触領域8が含まれる。これらの2つの接触領域8は、支持要素3の対応する接触部分10と協働できる。そのような接触領域8は、保持部材1の厚さのすべてまたは一部にわたって実質的に延びることによって内面に、特に、この内面の凹部に画定される。それに加えて、これらの接触領域8は平坦であり、おのおのが全体的にまたは部分的に平坦である面を含む。内面において、平坦接触領域8とも呼ばれる各剛体アーム8の2つの接触領域8はそれぞれ、鈍角をともに形成する異なる面にそれぞれ含まれる。各剛性アームのこれらの2つの接触領域8は、互いに離間されることによって離される。言い換えれば、内面は、図4および図7に見られる各剛性アーム6の2つの接触領域8を分離するための領域18を備える。この接続領域18は、中心軸Cを用いて、好ましくは2度であり得る、約1度から9度の間に含まれる角度αを画定する2つの端部を備える。接触領域8に関しては、中心軸Cを用いて、好ましくは10度であり得る、約1度から15度の間に含まれる角度βを画定する2つの端部を備える。
【0034】
剛性アーム6の接触領域8は、特に、各接触領域8の平坦面が、支持要素3の凸形状の接触部分10と協働する構成である平凸型の接触構成にしたがって、接触部分10と協働するように設けられていることに留意されたい。ここで、各接触部分10のこの凸形状は、この部分10が配置されている反対側の各対応する接触領域8の平坦面に対して評価されることに留意されたい。各接触領域8のこの平坦面は、支持要素の直径に接する平面を形成することに留意されたい。言い換えれば、平坦面は、直径に垂直であり、したがって、支持要素の半径R1に垂直である。
【0035】
この構成では、各剛性アーム6の内面に2つの平坦な接触領域8が存在することにより、組付中、および/または、この保持部材1の支持要素3との固定中に、これらの接触領域8および支持要素3の対応する接触部分10における応力の強度を低減しながら、保持部材1と支持要素3との間の機械的接続の生成中に、それらの間の接触圧力を実行可能にする。この応力は、破損/破壊またはその他の亀裂の出現により、保持部材1を損傷しやすい。
【0036】
従来技術では、この接触圧力は、異なる直径または曲率半径を有する円筒形または球形の部品間の接触圧力を決定するために、従来通りであるが排他的ではなく実施されるヘルツ圧力方程式から推定される。この場合、このヘルツ圧力は、次式にしたがって定義される。
【0037】
P=(E*F/πLR)1/2
ここで、
- E*は、等価弾性係数であり、
- Fは、接触領域8が受ける押圧力または半径方向荷重または均一な接触力とも呼ばれる半径方向力であり、
- Lは、各接触領域8の長さ、すなわち保持部材1の厚さに対応するガイド長さであり、
- Rは、次式で定義される相対曲率半径であり、
・R=(R12)/(R1+R2)、ここで、接触領域8と、支持要素3の対応する接触部分10とは、異なる曲率半径R2およびR1を有し、凸凸型接触構成にある。
【0038】
本実施形態では、各剛性アーム6の2つの接触面積8は平坦であり、したがって、曲率半径R2を有さない。そのような接触領域8は、平凸型の接触構成において、支持要素3の対応する接触部分10と協働できる。
【0039】
したがって、そのような接触構成では、ヘルツ圧力方程式によって定義される接触圧力は、凸凸型接触構成に関連するものよりも小さく、この間、曲率半径R2を有する接触領域8が、支持要素3の対応する接触部分10と協働できる。平凸型の接触構成中に存在するこの接触圧力は、特に、本実施形態の保持部材1の平坦な各接触領域8について、曲率半径がないことに起因する相対曲率半径Rのこの文脈におけるより高い値のために、上記の他の構成中に実施されるものよりも低い。
【0040】
各剛性アーム6の2つの接触領域8が、支持要素3の対応する接触部分10と協働できる平凸型の接触構成では、接触圧力は、これらの他の接触構成の接触圧力よりも少なくとも40%低い。
【0041】
この実施形態では、剛性アーム6および弾性アーム7は、外側構造4aおよび内側構造4bを互いに接続し、おのおのはさらに、これらの外側構造4aおよび内側構造4bの一部をさらに備える。この保持部材1では、これらの剛性アーム6および弾性アーム7は、本質的に、支持要素3の弾性的なクランプタイプの固定を、内側構造4bによって、特に、この保持部材1の内周壁によって画定される、この保持部材1において作られた開口部5において達成することを可能にする。
【0042】
したがって、上記で見られるように、これらの剛性アーム6は、これらの剛性アーム6の内面のすべてまたは一部で画定され得る支持要素3との保持部材1の唯一の接触領域8を備える。別名「接触界面」と呼ばれる各剛性アーム6の2つの接触領域8はおのおの、支持要素3の接続部分の周壁13と、特に、支持要素3のこの周壁13で画定された対応する接触部分10と協働するように設けられる。これに関連して、保持部材1はその後、たとえば、時計ムーブメント110におけるひげぜんまいのような計時器構成要素2の正確なセンタリングを達成することに関与する6つの接触領域8を備える。
【0043】
図3を参照して示すように、この保持部材1において、各剛性アーム6は、各弾性アーム7を構成する材料の体積よりも実質的に大きいかまたは厳密に大きい材料の体積を有する。材料が多くなるほど、アームの剛性が高くなることが理解される。それに加えて、この保持部材1におけるアームの弾性または剛性は、この部材1の接触領域8に力を加えた場合、この部材1の接触領域8に対して、より具体的には、これらの剛性アームまたは弾性アームの変形の強度に対して画定されることに留意されたい。実際、外側構造4aおよび内側構造4b、特に内周壁および外周壁は、たとえば、剛性アーム6または弾性アーム7において、これらの構造が含まれるか否かに応じて変化する可変距離Eによって、この保持部材1内で互いに分離されることに留意されたい。実際、この距離Eは、各剛性アーム6に含まれる内周壁の一部と、外周壁の一部との間に画定されるときの最大距離E1、すなわち、この剛性アーム6の内面と外面との間に存在する最大距離E1である。特に、各剛性アーム6について、この最大距離E1は、各剛性アーム6の2つの接触領域8を含む、実質的に中空の部分に隣接する内面の部分と、この剛性アーム6の外周壁の反対側の部分との間に画定される。さらに、この距離Eは、弾性アーム7に含まれる外周壁の一部と内周壁の一部との間に画定される最小距離E2、すなわち、この弾性アーム7の内面と外面との間に存在する最小距離E2である。
【0044】
したがって、ここで、各弾性アーム7は、各剛性アーム6の断面よりも小さい断面を有することが理解される。言い換えると、各弾性アーム7の断面は、各剛性アーム6の断面の面積よりも小さい面積を有する。弾性アーム7の断面は、この弾性アーム7の本体全体で一定または実質的に一定であるが、剛性アーム6の断面は、この剛性アーム6の本体全体で不定/可変であることに留意されたい。それに加えて、
- 各剛性アーム6の断面は、好ましくは、この剛性アーム6の本体が延びる長手方向に垂直な中実または部分的に中実の断面であり、
- 各弾性アーム7の断面は、好ましくは、この弾性アーム7の本体が延びる長手方向に垂直である中実または部分的に中実の断面であることに留意されたい。
【0045】
剛性アーム6および弾性アーム7のそのような構成は、保持部材1が、従来技術の保持部材と比較して、同じクランプに対してより多くの量の弾性エネルギを蓄積することを可能にする。次に、保持部材1に蓄積されたそのような量の弾性エネルギにより、保持部材-計時器構成要素アセンブリ120の支持要素3との組付130における支持要素3において、より大きな保持部材のトルクを得ることができる。それに加えて、保持部材1のそのような構成は、従来技術の保持部材の弾性エネルギ比よりも、6から8倍大きい弾性エネルギ比を蓄積できることに留意されたい。
【0046】
保持部材1における剛性アーム6および弾性アーム7の配置は、クランプによる挿入中に、各弾性アーム7の変形を可能にし、保持部材1全体の変形が、組み立てられる支持要素3の接続部分の幾何形状に適応することを可能にすることを留意されたい。それに加えて、各弾性アームが受ける変形のモードは、半径方向の膨張と結合されたトロイダルねじれである。
【0047】
図5を参照して示すように、本発明はまた、弾性保持部材-計時器構成要素アセンブリ120の支持要素3との組付130を実行するための方法に関する。この方法は、支持要素3を保持部材1の開口部5に挿入するステップ13を備える。このステップ13の間、支持要素3の端部は、この支持要素の接続部分が、この開口部5において画定された空間に導入されることを見越して、保持部材1の下面12に画定される開口部5の入口において現れる。このステップ13は、保持部材1、特に、支持要素3の接続部分の周壁13の接触部分10によって、剛性アーム6の接触領域8に接触力を加えた結果生じる上記開口部5を備えるこの保持部材1の中央領域を、弾性変形させるサブステップ14を備える。中央領域のこの弾性変形は、実際に、保持部材1の下面12の変形を生成し、これは、その後、特に、保持部材1の中央領域に含まれるこの面12の一部において、本質的に凹形状を有する。言い換えると、保持部材1の中央領域が変形すると、この下面12はもはや平坦ではなく、その後、第2の平面P2に完全に含まれなくなる。
【0048】
前述のように、保持部材1のこの弾性変形は、支持要素3の周壁13の接触部分10による剛性アーム6の接触領域8へ接触力を加えることに起因する。そのような変形サブステップ14は、加えられる接触力の作用下で、剛性アーム6を変位させるフェーズ15を備える。剛性アーム6のそのような変位は、支持要素3と保持部材1に共通の中心軸Cに対する半径方向B1と、この中心軸Cに一致する方向B2との間の方向において実行される。この方向B2は、方向B1に垂直であり、下面12から上面に向かって画定された方向に向けられていることに留意されたい。接触力は、好ましくは、上記接触領域8に対して垂直または実質的に垂直である。このフェーズ12の過程中、このように、この接触力の作用下で変位する剛性アーム6は、弾性アーム7の二重弾性変形を生成する。
【0049】
これらの弾性アーム7の「ねじれ弾性変形」とも呼ばれる第1の変形。このねじれ変形の間、各弾性アーム7は、2つの端部が接続されている変位している剛性アーム6によって、その2つの端部において同じ回転方向B4に駆動される。これらの弾性アーム7の本体の一部のみ、ここでは、これらのアーム7の端部が、ねじれ変形可能であることに留意されたい。そのような第1の変形は、特に、支持要素3との組付時に、保持部材1の破損および/またはこの部材1における亀裂の出現を阻止することに関与することによって、保持部材1の開口部5への支持要素3の挿入を改善することに寄与する。
【0050】
弾性アーム7の「引張変形」または「伸長弾性変形」とも呼ばれる第2の変形。この伸長変形の間、各弾性アーム7は、2つの端部が接続されている変位している剛性アーム6によって、その2つの端部において、長手方向B3に反対方向に引っ張られる。そのような第2の変形は、特に、保持部材1が大量の弾性エネルギを蓄積することを確実にすることに寄与する。
【0051】
弾性アーム7のこの二重弾性変形は、同時にまたは実質的に同時に、あるいは連続的または実質的に連続して実行できる。変形フェーズの実施の文脈において、この二重弾性変形が連続的または実質的に連続的に実行されるとき、その後、第1の変形は、第2の変形の前に実行され得ることに留意されたい。
【0052】
その後、この方法は、保持部材1を、補強要素3に固定するステップ16を備える。そのような固定ステップ16は、支持要素3に、保持部材1の半径方向の弾性クランプを実行するサブステップ17を備える。したがって、そのような拘束状態では、保持部材1は、大量の弾性エネルギを蓄積し、それが実質的な保持トルクを与えることに寄与し、特に弾性クランプによる最適なねじれを可能にすることが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7