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  • 特許-積層造形方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】積層造形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/209 20170101AFI20220607BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220607BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20220607BHJP
   A61C 13/00 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
B29C64/209
B33Y10/00
B33Y70/00
A61C13/00 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021529344
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2019082753
(87)【国際公開番号】W WO2020109390
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-24
(31)【優先権主張番号】18208698.3
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502289695
【氏名又は名称】デンツプライ デトレイ ゲー.エム.ベー.ハー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ノエルペル,シュテファニ
(72)【発明者】
【氏名】ティゲス,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルツ,ウーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー,クリストフ
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-291771(JP,A)
【文献】特表2018-509321(JP,A)
【文献】特表2017-538852(JP,A)
【文献】国際公開第2018/210602(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/195694(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用器具を調製するための積層造形方法であって、
(a)
(i)光散乱により測定された場合、5~150μmの範囲の直径D3,99を有するガラスフレークを含む充填材、及び
(ii)1種以上の硬化性化合物
を含む硬化性組成物を提供することと、
(b)該硬化性組成物を使用することにより、物体を形成するように装置を制御し、それによって、該硬化性組成物は、最小直径φminを有する放出オリフィスを通過することと、を含み、
ここで、ガラスフレークの直径D3,99に対する放出オリフィスの最小直径の比(φmin/D3,99)は、2~10未満の範囲にあり、ここで、ガラスフレークの中央直径D3,50は、ガラスフレークの平均厚みより大きく、
該硬化性組成物の充填材が、さらに、5μm未満のD 3,99 粒径を有する構造充填材を含む、方法。
【請求項2】
さらに、(c)該硬化性組成物を硬化させる工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
一ユニットの永久歯科用修復物を調製するためのものである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
該歯科用器具の物体が、歯科クラウン、インレー、アンレー又はベニヤの少なくとも一部である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ラスフレーク及び構造充填材の屈折率がそれぞれ、1.40~1.60の範囲にある、請求項1~のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
該硬化性組成物が、さらに、光開始剤系及び/又は熱開始剤系及び/又はレドックス開始剤系を含む、請求項1~のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
積層造形方法が、噴出法及び押出法から選択される、請求項1~のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
放出オリフィスが、ノズルの一部を形成している、請求項1~のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
ノズルが硬化性材料を貯蔵し、放出するためのカートリッジの一部を形成しているか、又はノズルが装置の一部を形成している、請求項記載の方法。
【請求項10】
放出オリフィスの最小直径が、10~1500μmの範囲にある、請求項1~のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
ガラスフレークが、光散乱により測定された場合、3~25μmの中央粒径D3,50を有し、及び/又は、ガラスフレークが、少なくとも10:1のアスペクト比(中央粒径D3,50/平均厚み)を有する、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
該組成物の総重量に基づいて、1~85重量%の充填材(i)を含有する、請求項1~1のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
該組成物の総重量に基づいて、0.5~83重量%の量で、ガラスフレークを含有する、請求項1~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
カートリッジの歯科用組成物中の構造充填材の重量とガラスフレークの重量との比が、80:1~1:80の範囲にある、請求項13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項記載の方法に用いられる硬化性歯科用組成物を収容する3Dプリンター用カートリッジであって
ートリッジは、3D印刷中に該硬化性組成物を噴出し又は押出すための放出オリフィスを有し、ここで、光散乱により測定されたガラスフレークの直径D3,99に対する放出オリフィスの最小直径φminの比(φmin/D3,99)は、10未満である、3Dプリンター用カートリッジ。
【請求項16】
請求項1記載の複数の歯科用カートリッジを含むパーツキットであって、
各カートリッジは、歯科用組成物を収容し、ここで、カートリッジは、該歯科用組成物を支持材料と区別するため、又は硬化した歯科用組成物の特性を識別するためにマーキングされる、パーツキット。
【請求項17】
硬化した歯科用組成物の特性が、色及び/又は不透明度から選択される、請求項16に記載パーツキット。
【請求項18】
光開始剤を含む、請求項1~1のいずれか一項記載の方法に用いられる歯科用器具を調製するための硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、積層造形方法に関する。さらに、本発明は、3Dプリンター用のカートリッジ及び本発明の複数の特定のカートリッジを含むパーツキットに関する。最後に、本発明は、本発明の積層造形方法に使用するための硬化性歯科用組成物に関する。
【0002】
本発明の積層造形方法は、広範囲の固体物体の調製に使用することができる。一方、歯科用器具の迅速なチェアサイド又は実験室での調製において、優れた寸法精度、美的及び機械的特性を有し、広範な手作業による仕上げを回避するという特定の利点が利用可能である。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
歯科用器具、例えば、修復物は、従来、複合材ブロック又はセラミックブロックを短時間で機械加工するためのソフトウェアにより制御されるフライス盤及び研削盤を使用するサブトラクティブフライス加工及び研削加工により製造されている。従来のサブトラクティブプロセスによれば、患者の歯列の光学スキャンが記録され、分析され、歯科用モデルがコンピュータを使用することにより設計される。この設計は、約25μmの精度を有するモデルに、約4~12分で固体ブロックをフライス加工/研削加工するのに使用される。その後、このモデルを焼結し、最終的にグレージングすることができ、これには、約10~25分かかる。加えて、このようなセラミック修復物は、修復物を歯の基部に接着させるのに使用されるセメントとの機械的及び/又は化学的相互作用を向上させるために、材料表面の表面処理、例えば、サンドブラスト及び/又は化学的エッチングを必要とする。したがって、サブトラクティブプロセスによる歯科用器具の製造は、チェアサイドで約30分かかり得る。
【0004】
ただし、コンピュータ制御のフライス盤及び研削盤は、コストが高く、慎重なメンテナンスを必要とし、その結果、かなりのメンテナンスコストが発生する。加えて、ブロック材料の大部分は、サブトラクティブフライス加工及び研削加工で失われ、歯科用補綴物のコストが高くなる。
【0005】
生体適合性樹脂材料を使用する比較的低コストで小型のデスクトップ3Dプリンター機を使用する積層造形技術を、歯科用器具、例えば、修復補綴物のチェアサイド製造に使用することができる。
【0006】
従来、積層造形方法は、デジタルモデルに基づいて材料を1層ずつ積層することにより物理的物体を生成するのに使用されている。例えば、溶融フィラメント製造又は溶融堆積モデリングでは、熱可塑性材料がフィラメント状に加工され、移動する加熱されたプリンター押出機ヘッドを通して可塑化された材料を押出すことにより、三次元物体が生成される。溶融した材料は、プリントヘッドのノズルから押出され、成長する加工対象物上に堆積される。溶融体を押出すのに必要な力は、システム全体の圧力降下を克服するのに十分でなければならない。この圧力降下は、溶融材料の粘性及び液化器とノズルの流動形状により決まる。溶融フィラメント製造に使用される典型的な材料は、熱可塑性ポリマー、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)ポリマー、ポリ乳酸(PLA)、グリコール変性ポリエチレンテレフタラート(PETG)、ナイロン等である。
【0007】
一方、多くの歯科用途の目的には、固化した熱可塑性材料の機械的特性又は耐薬品性は許容できない。
【0008】
積層造形のための更なる一般的な方法は、トレイに供給される低粘度樹脂配合物の層ごとの光硬化に基づく。典型的な例は、SLA(ステレオリソグラフィー)又はDLP(デジタル光加工)である。このような方法により、高速で手頃な3D印刷が可能となるが、低粘度樹脂(典型的には、<6Pas)に対するそれらの要求のために、適切な材料は、低い充填材含量(<1%)のものに制限される。その結果、印刷された物理的物体は、機械的特性(曲げ強度/E-モジュラス)が不十分となり、それらの適用は、非永久修復物、外科用ガイド又はスプリントに限定される。さらに、SLA又はDLPは、広範な手作業による仕上げ、例えば、有機溶媒を使用する過剰な樹脂の除去、支持構造体の除去並びに仕上げ及び研磨を必要とする。
【0009】
したがって、従来の3D印刷プロセスは、単一ユニットの永久歯科用修復物、例えば、クラウン、インレー、アンレー及びベニヤの調整のためにチェアサイドで使用することができない。
【0010】
単一ユニットの永久歯科用修復物の調整に許容される材料は、粒状充填材及び重合開始剤系の組成物の総重量に基づいて、少なくとも50重量%の重合性樹脂を含む複合材料である。この材料は、重合され、粒状充填材が組み込まれた架橋ポリマー相を形成する。
【0011】
しかしながら、積層造形中の押出又は噴出工程における複合材料の使用は、高解像度印刷に必要な微細ノズルの粒子に起因する目詰まりのために問題がある。
【0012】
WO第2016/142323号には、3Dプリンター用カートリッジが開示されている。このカートリッジは、ノズルを有するか又は所定のノズルを形成することができるように設計されている。このカートリッジは、光硬化性樹脂マトリックスと、ノズルの目詰まりを回避するために5μm未満の最大粒径を有する充填材のみとを含む歯科用複合材料を収容する。ノズルを通した押出を可能にするために、WO第2016/142323号には、硬化性歯科用複合材料が、好ましくは、50~800Pasの範囲の低い粘度を有することが教示されている。したがって、WO第2016/142323号の未硬化複合材料の凝集強度又はコンシステンシーは低く、層が流動する傾向にあり得る。したがって、各層は、後続の層が印刷される前に硬化されなければならない。さらに、歯科用複合材料の硬化後に除去しなければならない支持材料が必要である。
【0013】
したがって、歯科用器具の機械的特性は、従来の熱可塑性ポリマーを上回る複合材料の使用により改善されるが、WO第2016/142323号の方法の寸法精度、製造速度及び機械的特性は、従来のサブトラクティブプロセスの寸法精度、製造速度及び機械的特性と競合することができない。小型歯科用器具の調整においてさえ、未硬化材料の限定された強度、硬化した材料の限定された凝集強度及び手作業による仕上げの必要性は、WO第2016/142323号の方法が単一ユニットの永久歯科用修復物、例えば、クラウン、インレー、アンレー及びベニヤに有用であることを妨げる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
発明の概要
本発明の課題は、優れた寸法精度、美的及び機械的特性を有し、サブトラクティブ製造又はWO第2016/142323号により製造される歯科用修復物に必要とされるような広範な手作業による仕上げ又は表面処理を回避する、歯科用器具の迅速なチェアサイド又は実験室での調製に使用することができる積層造形方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、積層造形方法であって、
(a)
(i)光散乱により測定された場合、5~150μmの範囲の直径D3,99を有するガラスフレークを含む充填材、及び
(ii)1種以上の硬化性化合物
を含む硬化性組成物を提供することと、
(b)該硬化性組成物を使用することにより、物体を形成するように装置を制御し、それによって、該硬化性組成物は、最小直径φminを有する放出オリフィスを通過することと、を含み、
ここで、ガラスフレークの直径D3,99に対する放出オリフィスの最小直径の比(φmin/D3,99)は、2~10未満の範囲にある、方法を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、3Dプリンター用カートリッジであって、硬化性歯科用組成物を収容し、カートリッジは、3D印刷中に該硬化性組成物を噴出し又は押出すための放出オリフィスを有し、ここで、光散乱により測定されたガラスフレークの直径D3,99に対する放出オリフィスの最小直径φminの比(φmin/D3,99)は、10未満である、3Dプリンター用カートリッジを提供する。
【0017】
また、本発明は、複数の本発明のカートリッジを含むパーツキットであって、各カートリッジは、歯科用組成物及び場合により、支持材料を収容し、ここで、カートリッジは、該歯科用組成物を支持材料と区別するため、又は硬化した歯科用組成物の特性を識別するためにマーキングされ、その特性は、好ましくは、色及び/又は不透明度から選択される、パーツキットも提供する。
【0018】
最後に、本発明は、光開始剤を含む特定の硬化性組成物を提供する。
【0019】
本発明は、光散乱により測定された場合、5~150μmの範囲の直径D3,99を有するガラスフレークを含む充填材と、1種以上の硬化性化合物とを含む特定の硬化性組成物が、この複合組成物が狭い放出オリフィスを通って移動する際に、積層造形方法における押出又は噴出中に生じるようなせん断応力下で低粘度を有するという認識に基づいている。これにより、硬化性組成物の印刷速度を速めることができる。さらに、特定の硬化性組成物は、未硬化状態で高い凝集強度又は耐スランプ性を有するため、硬化性組成物の未硬化構造は、流動する傾向を有さず、硬化前に複数の層を印刷することができ、追加の支持構造を省略することができることが多い。したがって、印刷の解像度及び/又は寸法精度を損なうことなく、印刷速度を速めることができる。最後に、光散乱により測定された場合、5~150μmの範囲の直径D3,99を有する大きなガラスフレークを含有する硬化した複合組成物は、曲げ強度を含む優れた機械的特性を提供する。したがって、本発明の積層造形方法は、優れた美的及び機械的特性を有する、単一ユニットの永久歯科用修復物、例えば、クラウン、インレー、アンレー及びベニヤを含む歯科用器具の迅速なチェアサイド又は実験室での調製に使用することができる。広範な手作業による仕上げを避けることができるために、印刷物の寸法精度が改善される。
【0020】
驚くべきことに、硬化性組成物中の特定の大きなガラスフレークを、硬化性組成物の動的粘度を低下させる剪断応力誘引放出オリフィスと組み合わせて使用することは、WO第2016/142323号に記載されているような大きな球形充填材粒子により観察されるノズルの目詰まりとは対照的に、放出オリフィスの目詰まりをもたらさない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、D3,50=12.1μm、D3,99=42.5μmである、GF350nmMガラスフレークの粉砕後の粒径分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
好ましい実施態様の詳細な説明
「積層造形方法」という用語は、本明細書において、コンピュータ制御下で複合組成物が接合され、硬化されて、三次元物体を生成する任意の種々の方法を意味する。本発明によれば、複合組成物は、最小直径φminを有する放出オリフィスを通過する。本発明の積層造形方法は、材料押出又は材料噴出を含むことができる。材料押出は、材料がノズルを通して引き出され、ついで、層毎に堆積されることを意味する。材料噴出は、インクジェット文書印刷に類似しているが、紙上にインク滴を噴出する代わりに、3Dプリンターは、硬化性組成物の滴を構築トレイ上に噴出する。
【0023】
本明細書で使用する場合、「ガラスフレーク」という用語は、ガラス粒子が小さく平坦な薄片、典型的には、ガラスフレークの大きな片から切り離された片の形態にあり、その中央直径がその厚みよりも大きく、好ましくは、少なくとも10倍大きいものを意味する。平均厚みに対する中央粒径(D3,50)の比は、本明細書において、「平均アスペクト比」と呼ばれる。
【0024】
本明細書で使用する場合、構造充填材又はガラスフレークに関連して「直径D3,99」又は「D3,99」という用語は、サンプルの体積の99%がこの値未満の直径を有する粒子から構成される直径を指す。直径D3,99は、光散乱法により測定される。したがって、パラメータD3,99は、全ての粒子を球としてモデル化することによる光散乱法により測定された粒径分布について計算される。「相当球」の直径を決定するために、幾つかの異なる属性を選択することができる。本発明によれば、粒子は、相当体積の球としてモデル化される。D3,99値は、「体積分割直径」と考えることができる。D3,99は、サンプル中の全ての粒子が体積の小さい順に配置される場合に、サンプルの体積を特定の割合に分割する直径である。関心のある直径未満の体積割合は、「D」の後ろに表わされる数である。したがって、D3,99直径は、サンプルの体積の99%がより小さい粒子で構成される直径である。
【0025】
本明細書で使用する場合、構造充填材又はガラスフレークに関連して「中央粒径」又はD3,50という用語は、サンプルの体積の50%がこの数値未満の直径を有する粒子から構成される直径を指す。中央粒径D3,50は、任意の適切な手段、例えば、光散乱又は高分解能走査型電子顕微鏡法、好ましくは、光散乱により測定することができる。
【0026】
「粒径分布」という用語は、直径に応じて存在する粒子の体積による相対量を定義する。
【0027】
本明細書で使用する場合、ガラスフレークの「平均厚み」は、以下のように決定することができる。サンプルの200個以上のガラスフレークの厚みを走査型電子顕微鏡(SEM)により測定する。ついで、測定された厚みの合計を、厚みが測定されたガラスフレークの数で割る。
【0028】
本明細書で使用する場合、「構造充填材」という用語は、ガラスフレーク以外の任意の歯科用充填材又は以下で記載される更なる充填材を意味する。好ましくは、構造充填材は、歯科用ガラス、最も好ましくは、不活性ガラス、反応性ガラス及びフッ化物放出ガラスから選択される歯科用ガラスである。
【0029】
「不活性ガラス」という用語は、セメント反応において酸性基を含有するポリマーと反応し得ないガラスを指す。例えば、不活性ガラスは、the Journal of Dental Research June 1979, pages 1607-1619、又はより近年では、US第4814362号、US第5318929号、US第5360770号及び出願US第2004/0079258A1号に記載されている。特に、US 第2004/0079258 A1号から、強塩基性酸化物、例えば、CaO、BaO、SrO、MgO、ZnO、NaO、KO、LiO等が弱塩基性酸化物、例えば、スカンジウム又はランタニド系列の酸化物により置き換えられている不活性ガラスが知られている。
【0030】
本明細書で使用する場合、「球形度」という用語は、構造充填材の形態にある粒子の表面積に対する構造充填材の形態にある所定の粒子と同じ体積を有する球の表面積の比を意味する。球状粒子は、>80%の球形度を有し得る。
【0031】
本明細書で使用する場合、「シラン化された」という用語は、ガラスフレーク及び/又は構造充填材及び/又は任意の更なる充填材、例えば、ナノ充填材が、例えば、表面を少なくとも部分的に、好ましくは、完全に覆う被覆の形態で、シランカップリング剤が提供されている表面を有することを意味する。「シランカップリング剤」は、1つ以上の重合性基及び1つ以上の加水分解性基を有する任意のオルガノシラン、例えば、(メタ)アクリル又はビニル、例えば、3-メタクリロイルオキシトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、トリス(2-メトキシエトキシ)-ビニルシラン又はトリス(アセトキシ)-ビニルシランであることができる。
【0032】
「重合」、「重合性」、「硬化性」及び「硬化」という用語は、多数の化合物、例えば、より小さな分子、例えば、モノマーの共有結合により組み合わせて、より大きな分子、すなわち、高分子又はポリマーを形成すること又はその能力に関する。重合性化合物は、直鎖高分子のみを形成するように組み合わせることができ、又はそれらを組み合わせて、一般的には、架橋ポリマーと呼ばれる三次元高分子を形成することができる。例えば、単官能性重合性化合物は、直鎖ポリマーを形成するが、少なくとも2つの官能基を有する重合性化合物は、ポリマーネットワークとしても知られる架橋ポリマーを形成する。
【0033】
本明細書で使用する場合、「硬化性化合物」という用語は、モノマー、オリゴマー及びポリマーを包含する。好ましくは、1種以上の硬化性化合物は、モノマーである。
【0034】
「硬化」及び「光硬化」という用語は、官能性重合性化合物、例えば、モノマー、オリゴマー又はさらにポリマーの架橋ポリマーネットワークへの重合を意味する。硬化は、架橋剤の存在下での不飽和重合性化合物の重合である。
【0035】
「化学線」は、光化学作用を生じることができ、少なくとも150nm、1250nm以下、典型的には、少なくとも300nm、750nm以下の波長を有し得る任意の電磁放射線である。
【0036】
「光開始剤」という用語は、例えば、光への暴露又は光化学プロセスにおける共開始剤との相互作用により活性化された場合に、フリーラジカルを形成する任意の化合物である。
【0037】
「共開始剤」という用語は、光化学プロセスにおいて光開始剤等の別の分子に化学変化を生じさせる分子を指す。共開始剤は、光開始剤又は電子供与体であることができる。
【0038】
本明細書で使用する場合、「電子供与体」という用語は、光化学プロセスにおいて電子を供与可能な化合物を意味する。適切な例は、非共有電子対を有するヘテロ原子を有する有機化合物、例えば、アミン化合物を含む。
【0039】
「熱開始剤」という用語は、例えば、定義された閾値温度を超える熱への暴露により活性化された場合に、フリーラジカルを形成する分子を指す。
【0040】
「レドックス開始剤」という用語は、重合性基の重合を開始可能なフリーラジカルを生成する、還元剤及び酸化剤を含む開始剤系を定義する。
【0041】
硬化性組成物
本発明の積層造形方法は、硬化性組成物を提供する工程を含む。該硬化性組成物は、充填材を含む。好ましくは、該硬化性組成物は、該組成物の総重量に基づいて、1超~85重量%、より好ましくは、10~80重量%、さらにより好ましくは、20~75重量%の量で、充填材を含有する。充填材は、ガラスフレークのみからなることができる。好ましくは、充填材は、ガラスフレーク及び1種以上の構造充填材からなる。
【0042】
ガラスフレークは、光散乱により測定された場合、5~150μmの範囲の直径D3,99を有する。好ましくは、光散乱により測定された場合、8~100μm、より好ましくは、10~60μmの範囲の直径D3,99を有する。
【0043】
該硬化性組成物は、該組成物の総重量に基づいて、0.5~83重量%の量で、ガラスフレークを含有することができる。好ましくは、該硬化性組成物は、該組成物の総重量に基づいて、5~40重量%、より好ましくは、10~25重量%の量で、ガラスフレークを含有する。
【0044】
好ましくは、ガラスフレークは、3~25μm、より好ましくは、3~15μmの直径D3,50を有する。
【0045】
本発明によれば、D3,99又はD3,50は、光散乱法を使用することにより測定される。
【0046】
ガラスフレークは、50nm~1000nm、好ましくは、60nm~700nm、より好ましくは、70nm~600nm、最も好ましくは、80nm~500nmの平均厚みを有することができる。
【0047】
ガラスフレークは、2:1~50:1、より好ましくは、少なくとも10:1の範囲の平均アスペクト比(中央粒径(D3,50)/平均厚み)を有することができる。
【0048】
シラン化ガラスフレークのガラスは、好ましくは、不活性ガラスである。ガラスフレークのガラスは、好ましくは、酸化物として下記成分(重量%)を含む:
SiO=64~70
=2~5
ZnO=1~5
NaO=8~13
MgO=1~4
CaO=3~7
Al=3~6並びに
O及びTiO 最大3%。
【0049】
ガラスフレークは、好ましくは、少なくとも20:1のアスペクト比を有するガラスフレークを粉砕し、続けて、粉砕したガラスフレークをシラン化することにより得ることができる。ガラスフレークの粉砕は、特に限定されず、歯科用充填材を粉砕するのに典型的に適用される任意の装置、例えば、ボールミル装置又はパールミル装置により行うことができる。
【0050】
粉砕したガラスフレークの粒径は、例えば、出発材料として使用されるガラスフレークの中央粒径、研削時間、並びに研削材料、例えば、ボール又はパールの量、サイズ及び材質、並びに流体、例えば、水から選択される粉砕条件により、適切に設定することができる。
【0051】
例えば、粉砕のために、出発材料として、700μm未満、より好ましくは、40~500μm、最も好ましくは、50~300μmの光散乱により測定された中央粒径を有するガラスフレークを使用することができる。
【0052】
洗浄されていないガラスフレークを歯科用組成物に加える場合、多くの場合、灰色がかったペーストが得られる。より良好な美的結果のために、ガラスフレークを被覆前に洗浄することができる。洗浄のために、ガラスフレークを過剰量の希酸、例えば、塩酸中で、好ましくは、1分~24時間、有利には、30分間撹拌し、ついで、ろ別し、ろ過中に約20倍量の水で洗浄することができる。最後に、ガラスフレークを周囲温度~200℃、好ましくは、50℃~100℃の温度で1分~48時間乾燥させることができる。
【0053】
シラン化前に粉砕されたガラスフレークの粒径分布を設定することにより、ノズルを通して本発明の未硬化歯科用組成物を押出すための押出力を、有利には、所望の範囲内に設定することができる。加えて、硬化した歯科用組成物は、有利な機械的特性、例えば、最大150MPa、典型的には、約100~140MPaの曲げ強度及び最大10GPa、典型的には、約5~8GPaのE-モジュラスを有する。
【0054】
このようにして得られた粉砕ガラスフレークを、重合性化合物と反応性の1つ以上の重合性基を有するシランによりシラン化することができる。歯科用組成物のシラン化充填材材料のためのシランは周知であり、歯科用途のための多種多様なものが、例えば、J. M. Antonucci, Journal of Research of National Institute of Standards and Technology, 2005, vol. 110, no 5, pages 541 to 558に記載されている。好ましくは、シラン化中に、懸濁液を超音波で処理することができる。
【0055】
典型的には、式(I)
(R,R,R)Si(R
(I)
[式中、nは、1~3であり、置換基R、R、Rの数は、4-nであり、ここで、R、R、Rのうちの少なくとも1つは、重合性基を表わす。2つ又は3つの基Rが存在する場合、Rは、同じか又は異なることができ、被覆される充填材材料の表面と反応可能な加水分解性基を表わす。Rは、アルコキシ基、エステル基、ハロゲン原子及びアミノ基からなる群より選択することができ、ここで、アルコキシ基は、好ましくは、直鎖C1-8又は分岐鎖もしくは環状C3-8アルコキシ基であり、エステル基は、好ましくは、直鎖C1-8又は分岐鎖もしくは環状C3-8のアルキル基を有するカルボキシラートである。最も好ましくは、加水分解性基Rは、アルコキシ基を表わす]
で示されるオルガノシランが適用される。
【0056】
基R、R及びRは、同じか又は異なることができ、R、R及びRのうちの少なくとも1つが、重合性基を表わすという条件で、非反応性基及び/又は重合性基を表わす。R、R及びRについての非反応性基は、アルキル基、好ましくは、直鎖C1-8又は分岐鎖もしくは環状C3-8のアルキル基により表わすことができる。R、R及びRについての重合性基は、好ましくは、(メタ)アクリル基、ビニル基又はオキシラン基、より好ましくは、(メタ)アクリル基又はビニル基、最も好ましくは、例えば、メタクリルオキシ又はメタクリルオキシアルキルの形態にあり得る(メタ)アクリル基(ここで、アルキルは、直線C1-8又は分岐鎖もしくは環状C3-8のアルキル基を意味する。)からなる群から選択される。
【0057】
特に好ましいオルガノシランは、例えば、3-メタクリルオキシトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、トリス(2-メトキシエトキシ)-ビニルシランもしくはトリス(アセトキシ)-ビニルシラン又はEP第0969789A1号に開示されている特定の群のオルガノシランのいずれか1つ、すなわち、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルジメトキシ-モノクロロシラン、3-メタクリルオキシプロピルジクロロモノメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリクロロシラン、3-メタクリルオキシプロピルジクロロモノメチル-シラン、3-メタクリルオキシプロピルモノクロロジメチルシラン及び3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリラートである。
【0058】
最も好ましくは、式(I)で示されるオルガノシランは、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリラートである。
【0059】
式(I)で示されるオルガノシランに代えて又は加えて、いわゆる、ダイポーダルオルガノシランを適用することができる。ダイポーダルオルガノシランは、典型的には、式(II)
((RSi-RCH-R
(II)
[式中、R及びRは、式(I)で示されるオルガノシランについて先に定義されたのと同じ意味を有し、Rは、アルキレン基、好ましくは、直鎖C1-8又は分岐鎖もしくは環状C3-8のアルキレン基を表わす]
で示される化合物である。
【0060】
本発明によれば、該硬化性組成物の充填材は、該硬化性組成物がガラスフレークと構造充填材との組み合わせを含むように、構造充填材をさらに含むことができる。ガラスフレークと構造充填材との組み合わせは、該硬化性組成物の粘度を所望の範囲に調整し、硬化した組成物の機械的特性を調整するのに有用である。ガラスフレークと構造充填材との組み合わせは、硬化した歯科用組成物のための良好にバランスのとれた特性を達成するために、特に選択される。シラン化ガラスフレークと構造充填材との特定の組み合わせにより、優れた光沢、光沢保持並びに長期間の化学的耐性及び耐摩耗性と、優れた機械的特性及び長期間の機械的耐性とを達成することができる。
【0061】
好ましい実施態様によれば、構造充填材は、5μm未満のD3,99粒径を有する。
【0062】
好ましくは、構造充填材は、0.3~2μm、より好ましくは、0.4~1.2μmの中央粒径D3,50を有する。
【0063】
好ましくは、該硬化性組成物は、直径600μm及び長さ11mmのノズルを通して未硬化組成物を押出す場合、室温(23℃)で100N未満の押出力を有する。さらに、硬化した組成物は、有利な機械的特性、例えば、少なくとも約100MPa、好ましくは、100~140MPaの曲げ強度及び少なくとも5GPa、好ましくは、5~8GPaのE-モジュラスを有する。その結果、該硬化性組成物を容易に押出し又は噴出することができ、硬化した組成物は、優れた機械的特性を示す。
【0064】
好ましくは、構造充填材は、0.4~1.2μmの中央粒径D3,50を有し、シラン化ガラスフレークは、(a)50nm~1000nmの平均厚み及び(b)10:1~50:1の範囲の平均アスペクト比(中央粒径/平均厚み)を有する。
【0065】
好ましくは、該歯科用組成物は、該組成物の総重量に基づいて、0.5~40重量%、より好ましくは、1~30重量%、さらにより好ましくは、10~25重量%又は3~20重量%の量で、ガラスフレークを含有する。
【0066】
該硬化性組成物において、構造充填材の重量とガラスフレークの重量との比は、好ましくは、80:1~1:80、より好ましくは、40:1~1:1、さらにより好ましくは、20:1~1.5:1、さらにより好ましくは、10:1~2:1、最も好ましくは、5:1~2.5:1の範囲にある。
【0067】
代替的な特に好ましい実施態様によれば、該歯科用組成物において、構造充填材の重量に対するガラスフレークの重量の比は、好ましくは、0.025:1~2:1、より好ましくは、0.05:1~1.5:1、さらにより好ましくは、0.075:1~1:1、さらにより好ましくは、0.1:1~0.75:1、最も好ましくは、0.125:1~0.6:1である。
【0068】
好ましくは、ガラスフレーク及び構造充填材の屈折率はそれぞれ、1.40~1.60の範囲にある。
【0069】
該硬化性組成物は、1種以上の硬化性化合物をさらに含む。該硬化性化合物は、少なくとも1つの重合性基を有する。
【0070】
1種以上の硬化性化合物の重合性基は、特に限定されない。少なくとも1つの重合性基は、例えば、ラジカル重合性炭素-炭素二重結合及び/又はカチオン重合性基であることができる。好ましくは、ラジカル重合性炭素-炭素二重結合は、(メタ)アクリロイル基及び(メタ)アクリルアミド基、好ましくは、(メタ)アクリロイル基の炭素-炭素二重結合から選択される。さらに、カチオン重合性基は、エポキシド基、オキセタン基、ビニルエーテル基、アジリジン基及びアゼチジン基、好ましくは、エポキシド基、ビニルエーテル基及びオキセタン基、最も好ましくは、エポキシド基及びビニルエーテル基から選択されるのが好ましい。
【0071】
少なくとも1つのラジカル重合性炭素-炭素二重結合を有する1種以上の硬化性化合物は、特に限定されない。ただし、好ましくは、それらのラジカル重合性炭素-炭素二重結合は、(メタ)アクリロイル基及び(メタ)アクリルアミド基の炭素-炭素二重結合から選択される。
【0072】
少なくとも1つのラジカル重合性炭素-炭素二重結合を有する重合性化合物の適切な例は、(メタ)アクリラート、アクリル酸又はメタクリル酸のアミド、ウレタンアクリラート又はメタクリラート及びポリオールアクリラート又はメタクリラートからなる群より選択することができる。
【0073】
(メタ)アクリラートは、好ましくは、下記式(A)、(B)及び(C):
【化1】

[式中、
20、R 20、R** 20及びR*** 20は、独立して、水素原子;C3-6シクロアルキル基、C6-14アリール基もしくはC3-14ヘテロアリール基により置換されていてもよい直鎖C1-18もしくは分岐鎖C3-18のアルキル基;C1-16アルキル基、C6-14アリール基もしくはC3-14ヘテロアリール基により置換されていてもよいC~C18シクロアルキル基;又はC~C18アリール基もしくはC~C18ヘテロアリール基を表わし、
21は、水素原子;C3-6シクロアルキル基、C6-14アリール基もしくはC3-14ヘテロアリール基により置換されていてもよい直鎖C1-18もしくは分岐鎖C3-18のアルキル基もしくはC~C18アルケニル基;C1-16アルキル基、C6-14アリール基もしくはC3-14ヘテロアリール基により置換されていてもよいC~C18シクロアルキル基;又はC~C18アリール基もしくはC~C18ヘテロアリール基を表わし、
22は、1~45個の炭素原子を有する二価の有機残基を表わし、ここで、二価の有機残基は、1~7個のC3-12シクロアルキレン基、1~7個のC6-14アリーレン基、1~7個のカルボニル基、1~7個のカルボキシル基(-(C=O)-O-又は-O-(C=O-))、1~7個のアミド基(-(C=O)-NH-又は-NH-(C=O)-)又は1~7個のウレタン基(-NH-(C=O)-O-又は-O-(C=O)-NH-)並びに酸素、窒素及び硫黄から選択される1~14個のヘテロ原子からの少なくとも1つを含有することができ、この二価の有機残基は、ヒドロキシル基、チオール基、C6-14アリール基からなる群より選択される1つ以上の置換基により置換されていてもよく;好ましくは、R22は、1つ以上の-OH基により置換されていてもよいC~C18アルキレン基又はC~C18アルケニレン基であり、このアルキレン基又はアルケニレン基は、1~4個のC6-10アリーレン基、1~4個のウレタン基(-NH-(C=O)-O-又は-O-(C=O)-NH-)及び1~8個の酸素原子のうちの少なくとも1つを含有することができ、
23は、飽和で二価もしくは多価の置換もしくは非置換のC~C18炭化水素基、飽和で二価もしくは多価の置換もしくは非置換の環状C~C18炭化水素基、二価もしくは多価の置換もしくは非置換のC~C18アリール基もしくはヘテロアリール基、二価もしくは多価の置換もしくは非置換のC~C18アルキルアリール基もしくはアルキルヘテロアリール基、二価もしくは多価の置換もしくは非置換のC~C30アラルキル基、又は1~14個の酸素原子を有する二価もしくは多価の置換もしくは非置換のC~C45モノ-、ジ-もしくはポリエーテル残基を表わし、
mは、整数、好ましくは、1~10の範囲の整数である]
で示される化合物から選択することができる。
【0074】
20、R 20、R** 20及びR*** 20について、直鎖C1-18又は分岐鎖C3-18のアルキル基は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、ペンチル又はヘキシルであることができる。R21及びR 21について、C1-18アルキル基又はC2-18アルケニル基は、例えば、エチル(エテニル)、n-プロピル(プロぺニル)、i-プロピル(プロぺニル)、n-ブチル(ブテニル)、イソブチル(イソブテニル)、tert-ブチル(ブテニル)、sec-ブチル(ブテニル)、ペンチル(ペンテニル)又はヘキシル(ヘキセニル)であることができる。
【0075】
20、R 20、R** 20、R*** 20及びR21について、アリール基は、例えば、フェニル基又はナフチル基であることができ、C3-14ヘテロアリール基は、窒素、酸素及び硫黄から選択される1~3個のヘテロ原子を含有することができる。
【0076】
22について、「二価の有機残基は、・・・のうちの少なくとも1つを含有することができる」という表現は、二価の有機残基に含有される場合がある基が共有結合により二価の有機残基に組み込まれることを意味する。例えば、BisGMAにおいて、フェニルの形態にある2つのアリール基及び酸素の形態にある2つのヘテロ原子は、R22の二価の有機残基に組み込まれる。あるいは、更なる例として、UDMAにおいて、2つのウレタン基(-NH-(C=O)-O-又は-O-(C=O)-NH-)は、R22の二価の有機残基に組み込まれる。
【0077】
式(B)において、点線の結合は、R20とR*** 20とがCOに対して(Z)又は(E)の配置であり得ることを示す。
【0078】
好ましくは、式(A)、(B)及び(C)において、R20、R 20、R** 20及びR*** 20は、独立して、水素原子;C3-6シクロアルキル基、C6-14アリール基もしくはC3-14ヘテロアリール基により置換されていてもよい直鎖C1-16もしくは分岐鎖C3-16のアルキル基;C1-16アルキル基、C6-14アリール基もしくはC3-14ヘテロアリール基により置換されていてもよいC3-6シクロアルキル基;C6-14アリール:又はC3-14ヘテロアリール基を表わす。より好ましくは、式(B)において、R20、R 20、R** 20及びR*** 20は、独立して、水素原子;C4-6シクロアルキル基、C6-10アリール基もしくはC4-10ヘテロアリール基により置換されていてもよい直鎖C1-8もしくは分岐鎖C3-8のアルキル基;C1-6アルキル基、C6-10アリール基もしくはC4-10ヘテロアリール基により置換されていてもよいC4-6シクロアルキル基;又はC6-10アリール基を表わす。さらにより好ましくは、R20、R 20、R** 20及びR*** 20は、独立して、水素原子;シクロヘキシル基もしくはフェニル基により置換されていてもよい直鎖C1-4もしくは分岐鎖CもしくはCのアルキル基;又はC1-4アルキル基により置換されていてもよいシクロヘキシル基を表わす。最も好ましくは、R20、R 20、R** 20及びR*** 20は、独立して、水素原子又は直鎖C1-4もしくは分岐鎖CもしくはCのアルキル基を表わす。
【0079】
好ましくは、式(A)において、R21は、水素原子;C3-6シクロアルキル基、C6-14アリール基もしくはC3-14ヘテロアリール基により置換されていてもよい直鎖C1-16もしくは分岐鎖C3-16のアルキル基もしくはC2-16アルケニル基;C1-16アルキル基、C6-14アリール基もしくはC3-14ヘテロアリール基により置換されていてもよいC3―6シクロアルキル基;C6―14アリール基;又はC3―14ヘテロアリール基を表わす。より好ましくは、R21は、水素原子;C4-6シクロアルキル基、C6-10アリール基もしくはC4-10ヘテロアリール基により置換されていてもよい直鎖C1-10もしくは分岐鎖C3-10のアルキル基もしくはC2-10アルケニル基;C1-6アルキル基、C6-10アリール基もしくはC4-10ヘテロアリール基により置換されていてもよいC4―6シクロアルキル基;又はC6―10アリール基を表わす。さらにより好ましくは、R21は、水素原子;シクロヘキシル基もしくはフェニル基により置換されていてもよい直鎖C1-10もしくは分岐鎖C3-10のアルキル基もしくは直鎖C2-10もしくは分岐鎖C3-10のアルケニル基;又はC1-4アルキル基により置換されていてもよいシクロヘキシル基を表わす。さらにより好ましくは、R21は、非置換C1-10アルキル基又はC2-10アルケニル基、さらにより好ましくは、非置換C2-6アルキル基又はC3-6アルケニル基、最も好ましくは、エチル基又はアリル基を表わす。
【0080】
式(A)、(B)及び(C)で示される(メタ)アクリラート化合物は、メチルアクリラート、メチルメタクリラート、エチルアクリラート、エチルメタクリラート、プロピルアクリラート、プロピルメタクリラート、イソプロピルアクリラート、イソプロピルメタクリラート、2-ヒドロキシエチルアクリラート、2-ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)、ヒドロキシプロピルアクリラート、ヒドロキシプロピルメタクリラート、テトラヒドロフルフリルアクリラート、テトラヒドロフルフリルメタクリラート、グリシジルアクリラート、グリシジルメタクリラート、ビスフェノールAグリセロラートジメタクリラート(「ビス-GMA」、CAS-No.1565-94-2)、4,4,6,16(又は4,6,6,16)-テトラメチル-10,15-ジオキソ-11,14-ジオキサ-2,9-ジアザヘプタデカ-16-エン酸 2-[(2-メチル-1-オキソ-2-プロペン-1-イル)オキシ]エチルエステル(CAS no.72869-86-4)_(UDMA)、グリセロールモノ-及びジ-アクリラート、例えば、1,3-グリセロールジメタクリラート(GDM)、グリセロールモノ-及びジメタクリラート、エチレングリコールジアクリラート、エチレングリコールジメタクリラート、ポリエチレングリコールジアクリラート(ここで、繰り返しエチレンオキシド単位の数は、2~30で変動する)、ポリエチレングリコールジメタクリラート(ここで、繰り返しエチレンオキシド単位の数は、2~30で変動する)、特に、トリエチレングリコールジメタクリラート(「TEGDMA」)、ネオペンチルグリコールジアクリラート、ネオペンチルグリコールジメタクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、トリメチロールプロパントリメタクリラート、ペンタエリトリトール及びジペンタエリトリトールのモノ-、ジ-、トリ-及びテトラ-アクリラート及びメタクリラート、1,3-ブタンジオールジアクリラート、1,3-ブタンジオールジメタクリラート、1,4-ブタンジオールジアクリラート、1,4-ブタンジオールジメタクリラート、1,6-ヘキサンジオールジアクリラート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリラート、ジ-2-メタクリロイルオキシエチルヘキサメチレンジカルバマート、ジ-2-メタクリロイルオキシエチルトリメチルヘキサメチレンジカルバマート、ジ-2-メタクリロイルオキシエチルジメチルベンゼンジカルバマート、メチレン-ビス-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバマート、ジ-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバマート、メチレン-ビス-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバマート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-トリメチル-ヘキサメチレンジカルバマート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバマート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバマート、メチレン-ビス-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバマート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ヘキサメチレンジカルバマート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-トリメチルヘキサメチレンジカルバマート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバマート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバマート、メチレン-ビス-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバマート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-ヘキサメチレンジカルバマート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-トリメチルヘキサメチレンジカルバマート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバマート、ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバマート、メチレン-ビス-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバマート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ヘキサメチレンジカルバマート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-トリメチルヘキサメチレンジカルバマート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバマート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバマート、メチレン-ビス-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル 4-シクロヘキシルカルバマート、2,2’-ビス(4-メタクリルオキシフェニル)プロパン、2,2’ビス(4-アクリルオキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス[4(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシ-フェニル)]プロパン、2,2’-ビス[4(2-ヒドロキシ-3-アクリルオキシ-フェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-メタクリルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アクリルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-メタクリルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アクリルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-メタクリルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アクリルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス[3(4-フェノキシ)-2-ヒドロキシプロパン-1-メタクリラート]プロパン及び2,2’-ビス[3(4-フェノキシ)-2-ヒドロキシプロパン-1-アクリラート]プロパンからなる群より選択することができる。
【0081】
最も好ましくは、式(B)で示される化合物は、
【化2】

からなる群より選択される。
【0082】
特に好ましいモノ-又はビス-(メタ)アクリルアミド及びポリ[(メタ)アクリルアミド]は、下記式(D)、(E)及び(F):
【化3】

[式中、R24、R 24、R** 24及びR*** 24は、式(A)、(B)及び(C)について上記定義されたR20、R 20、R** 20、R*** 20と同じ意味を有し、R25、R 25は、独立して、式(A)について上記定義されたR21と同じ意味を有する残基を表わし、R27及びm’は、式(C)について上記定義されたR23及びmと同じ意味を有する]
を有する。
【0083】
式(E)において、R26は、1~45個の炭素原子を有する二価の置換又は非置換の有機残基を表わし、ここで、前記有機残基は、1~7個のC3-12シクロアルキレン基、1~7個のC6-14アリーレン基、1~7個のカルボニル基、1~7個のカルボキシル基(-(C=O)-O-又は-O-(C=O-))、1~7個のアミド基(-(C=O)-NH-又は-NH-(C=O)-)、1~7個のウレタン基(-NH-(C=O)-O-又は-O-(C=O)-NH-)並びに酸素、窒素及び硫黄から選択される1~14個のヘテロ原子のうちの少なくとも1つを含有することができ、この二価の有機残基は、ヒドロキシル基、チオール基、C6-14アリール基、-COOM、-POM、-O-PO又は-SOからなる群より選択される1つ以上の置換基により置換されていてもよい。好ましくは、R26は、1~4個のC6-10アリーレン基及びC3-8シクロアルキレン基、1~4個のウレタン基(-NH-(C=O)-O-又は-O-(C=O)-NH-)並びに1~8個の酸素原子又は窒素原子のうちの少なくとも1つを含有することができるC~C18アルキレン基又はC~C18アルケニレン基である。
【0084】
26について、「二価の有機残基は、・・・のうちの少なくとも1つを含有することができる」という表現は、式(B)で示される化合物のR22について上記定義されたのと類似する意味を有する。
【0085】
式(D)、(E)、(F)において、点線の結合は、R24とR*** 24とがCOに対して(Z)又は(E)の配置であり得ることを示す。
【0086】
式(D)で示される化合物において、R25及びR25 は共同して、R25とR25 とがC-C結合又はエーテル基、チオエーテル基、アミン基及びアミド基からなる群より選択される官能基により連結されている環を形成することができる。
【0087】
式(D)、(E)、(F)に示される好ましいメタクリルアミドは、下記式:
【化4】

を有する。
【0088】
式(D)、(E)、(F)に示される好ましいアクリルアミドは、下記式:
【化5】

を有する。
【0089】
ビス-(メタ)アクリルアミド:
構造式
【化6】

を有するN,N’-ジアリル-1,4-ビスアクリルアミド-(2E)-ブタ-2-エン(BAABE)
及び
構造式
【化7】

を有するN,N’-ジエチル-1,3-ビスアクリルアミド-プロパン(BADEP)
が最も好ましい。
【0090】
さらに、1つ以上のラジカル重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物は、EP第2705827号及びEP第2727576号に開示されている加水分解安定性多官能重合性モノマーから選択することができる。
【0091】
1つ以上のラジカル重合性炭素-炭素二重結合を有する特に好ましい化合物は、式(A)、(B)、(C)、(G)、(H)で示される化合物、より好ましくは、式(A)、(B)、(C)で示される化合物、最も好ましくは、式(B)で示される化合物から選択される。
【0092】
1つ以上のカチオン重合性基を有する1種以上の硬化性化合物は、特に限定されない。ただし、好ましくは、それらのカチオン重合性基は、エポキシド基、オキセタン基、ビニルエーテル基、アジリジン基及びアゼチジン基、より好ましくは、エポキシド基、オキセタン基及びビニルエーテル基、最も好ましくは、エポキシド基及びビニルエーテル基から選択される。
【0093】
エポキシド基及び/又はオキセタン基の形態にある1つ以上のカチオン重合性基を有する化合物は、好ましくは、式(J)、(K)、(L):
【化8】

[式中、
Aは、単結合、メチレン(-CH-)基又は-R28**CR29**-であり、ここで、R28**及びR29**は、R28及びR29について以下で定義されるのと同じ意味を有し、好ましくは、Aは、単結合又はメチレン(-CH-)基であり、最も好ましくは、Aは、単結合であり、
Hetは、酸素原子又は窒素原子、好ましくは、酸素原子であり、
28、R29、R30、R28*、R29*、R30*、R31は、独立して、水素原子、-COOM、又はC3-6シクロアルキル基、C6-14アリール基もしくはC3-14ヘテロアリール基により置換されていてもよい直鎖C1-18もしくは分岐鎖もしくは環状のC3-18のアルキル基;直鎖C1-16もしくは分岐鎖もしくは環状のC3-16のアルキル基、C6-14アリール基もしくはC3-14ヘテロアリール基により置換されていてもよいC~C18シクロアルキル基;もしくはC~C18アリール基もしくはC~C18ヘテロアリール基からなる群より選択される有機部分を表わし、この有機部分は、からなる群より選択される1つ以上の置換基により置換されていてもよく、
32は、1~45個の炭素原子を有する二価の有機残基を表わし、ここで、前記有機残基は、1~7個のC3-12シクロアルキレン基、1~7個のC6-14アリーレン基、1~7個のカルボニル基、1~7個のカルボキシル基(-(C=O)-O-又は-O-(C=O-))、1~7個のアミド基(-(C=O)-NH-又は-NH-(C=O)-)、1~7個のウレタン基(-NH-(C=O)-O-又は-O-(C=O)-NH-)、ケイ素、酸素、窒素及び硫黄から選択される1~14個のヘテロ原子のうちの少なくとも1つを含有することができ、好ましくは、R32は、1~4個のカルボキシル基(-(C=O)-O-又は-O-(C=O-))又は少なくとも1つの部分-SiR -O-SiR -(ここで、Rは、独立して、直鎖C1-4又は分岐鎖CもしくはCのアルキル基を表わす)のうちの少なくとも1つを含有することができるC~C18アルキレン基であり、この二価の有機残基は、-OH、-SHからなる群より選択される1つ以上の基により置換されていてもよく、
33は、飽和で二価もしくは多価の置換もしくは非置換の直鎖C~C18炭化水素基、飽和で二価もしくは多価の置換もしくは非置換の分岐鎖もしくは環状のC~C18炭化水素基、二価もしくは多価の置換もしくは非置換のC~C18のアリール基もしくはヘテロアリール基、二価もしくは多価の置換もしくは非置換のC~C18のアルキルアリール基もしくはアルキルヘテロアリール基、二価もしくは多価の置換もしくは非置換のC~C30アラルキル基、又は1~14個の酸素原子もしくは硫黄原子を有する二価もしくは多価の置換もしくは非置換のC~C45モノ-、ジ-もしくはポリエーテル残基を表わし、
’’は、整数、好ましくは、1~10の範囲の整数である]
で示される化合物から選択することができる。
【0094】
式(J)、(K)及び(L)で示される化合物において、R28、R30及びR28*、R30*は独立して、共同して、R28、R30及びR28*、R30*がC-C結合又はエーテル基、チオエーテル基、アミン基及びアミド基からなる群より選択される官能基により連結されている環を形成することができる。好ましくは、R28、R30及びR28*、R30*は、C-C結合により連結されており、R28、R30とR28*、R30*との間に位置するC-C結合と共に、3~8員の環、好ましくは、5~7員の環、最も好ましくは、C環を形成している。
【0095】
32について、「二価の有機残基は、・・・のうちの少なくとも1つを含有することができる」という表現は、式(B)で示される化合物のR22について上記定義されたのと類似する意味を有する。
【0096】
式(J)において、Hetは、酸素であり、R28及びR29は、独立して、1つ以上の-OH基により置換されていてもよい直鎖C1-8又は分岐鎖もしくは環状のC3-8のアルキル基を表わすのが好ましい。より好ましくは、式(J)において、Hetは、酸素であり、R28及びR29は、独立して、1つ以上の-OH基により置換されていてもよい直鎖C1-8アルキル基を表わし、R30及びR31は、水素原子を表わし、ここで、Aは、好ましくは、メチレン(-CH-)基である。
【0097】
式(K)において、Aは、単結合であり、Hetは、酸素であり、R28、R30及びR28*、R30*は独立して、共同して、R28、R30及びR28*、R30*がC-C結合により連結されている環を形成しており、R32は、1~4個のカルボキシル基(-(C=O)-O-又は-O-(C=O-))又は少なくとも1つの部分-SiR -O-SiR -(ここで、Rは、独立して、直鎖C1-4又は分岐鎖CもしくはCのアルキル基を表わす)のうちの少なくとも1つを含有することができるC~Cアルキレン基であるのが好ましい。
【0098】
好ましくは、式(J)及び(K)で示される化合物は、
【化9】

からなる群より選択される。
【0099】
式(K)で示される化合物は、EPOX及び/又はEPOX-Siであるのが最も好ましい。
【0100】
ビニルエーテル基の形態にある1つ以上のカチオン重合性基を有する化合物は、好ましくは、式(M)、(N)、(O):
【化10】

で示される化合物から選択することができる。
【0101】
34は、式(A)について上記定義されたR21と同じ意味を有するか又は代替的に、1~14個の酸素原子を有する一価の置換又は非置換のC~C45モノ-、ジ-又はポリエーテル残基を表わすことができ、R35は、式(B)について上記定義されたR22と同じ意味を有し、R36及びm’’’は、式(C)について上記定義されたR23及びmと同じ意味を有する。
【0102】
好ましくは、式(M)で示される化合物において、Hetは、酸素原子であり、R34は、直鎖C1-14又は分岐鎖もしくは環状のC3-14のアルキル基又は式-[-O-CH-CH-]-Rγ(ここで、n=1~9であり、Rγは、水素又はOHである)で示されるエチレングリコール部分を表わす。
【0103】
好ましくは、式(N)で示される化合物において、Het及びHet##は、酸素原子であり、R35は、1~4個のC3-8シクロアルキレン基又は1~9個の酸素原子のうちの少なくとも1つを含有することができるC~C18アルキレン基を表わす。ここで、酸素原子を式-[-O-CH-CH-]-(ここで、n=1~9である)で示されるエチレングリコール部分が形成されるように含有することができる。
【0104】
最も好ましくは、式(M)及び(N)で示される化合物は、
【化11】

からなる群より選択される。
【0105】
1つ以上のカチオン重合性基を有する特に好ましい化合物は、式(J)、(K)、(M)及び(N)で示される化合物、より好ましくは、式(K)、(M)及び(N)で示される化合物から選択される。
【0106】
少なくとも1つのラジカル重合性炭素-炭素二重結合と少なくとも1つのカチオン重合性基との組み合わせを有する1種以上の硬化性化合物は、特に限定されない。ただし、好ましくは、このような化合物において、ラジカル重合性炭素-炭素結合は、(メタ)アクリロイル基及び(メタ)アクリルアミド基から選択され、カチオン重合性基は、エポキシド基、オキセタン基、ビニルエーテル基、アジリジン基及びアゼチジン基から選択される。
【0107】
より好ましくは、このような化合物において、ラジカル重合性炭素-炭素結合は、(メタ)アクリルアミド基であり、カチオン重合性基は、ビニルエーテル基、エポキシド基及びオキセタン基から選択される。最も好ましくは、カチオン重合性基は、ビニルエーテル基及び/又はエポキシド基である。
【0108】
少なくとも1つのラジカル重合性炭素-炭素二重結合と少なくとも1つのカチオン重合性基との組み合わせを有する化合物は、好ましくは、式(P):
【化12】

で示される化合物から選択することができる。
【0109】
37、R38、R39は、式(J)、(K)及び(L)について上記定義されたR28、R29、R30と同じ意味を有し、R40、R40*は、式(A)、(B)及び(C)について上記定義されたR20及びR20 と同じ意味を有し、R41は、式(C)について上記定義されたR23と同じ意味を有し、
jは、0~6、好ましくは、1~3の整数であり、
kは、0~6、好ましくは、0~3の整数であり、
jは、0~6、好ましくは、0~3の整数であり、
ただし、j+k+l≧2という条件である。
【0110】
式(P)において、点線の結合は、R40がCOに対して(Z)又は(E)の配置であり得ることを示す。
【0111】
式(P)において、R37及びR39は、共同して、式(G)及び(H)のR28及びR30について上記定義されたように環を形成することができる。
【0112】
最も好ましくは、化合物(P)において、ラジカル重合性炭素-炭素結合は、(メタ)アクリルアミド基であり、カチオン重合性基は、ビニルエーテル基である。
【0113】
式(P)で示される化合物において、j=1~3、k=0及びj=1~3であり、R40は、水素原子であり、R40*は、直鎖C1-8又は分岐鎖もしくは環状のC3-8のアルキル基であり、R41は、1~9個の酸素原子を含有することができるC~C18アルキレン基を表わし、ここで、酸素原子を式-[-O-CH-CH-]-(ここで、n=1~9である)で示されるエチレングリコール部分が形成されるように含有することができるのが好ましい。
【0114】
式(P)で示される特に好ましい化合物は、下記構造式:
【化13】

を有する2-ビニルオキシエトキシエチルメタクリラート(VEEM)である。
【0115】
好ましくは、該歯科用組成物は、モノマーの組み合わせ(x)及び(y)、(x)及び(z)、(y)及び(z)もしくは(x)、(y)及び(z)を含むか又はモノマー(z)を含む均質相を含む。ここで、
(x)は、少なくとも1つのラジカル重合性炭素-炭素二重結合を有する1種以上の化合物を表し、
(y)は、少なくとも1つのカチオン重合性基を有する1種以上の化合物を表わし、
(z)は、少なくとも1つのラジカル重合性炭素-炭素二重結合と少なくとも1つのカチオン重合性基との組み合わせを有する1種以上の化合物を表わす。
【0116】
「均質相」という用語は、モノマーの組み合わせ(x)及び(y)、(x)及び(z)、(y)及び(z)もしくは(x)、(y)及び(z)又はモノマー(z)が単一相内に検出可能な相境界を有さずに単一相中に存在することを意味する。本明細書で使用する場合、「モノマー」という用語は、重合性基を有する化合物を意味する。
【0117】
本明細書で使用する場合、「相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)」という用語は、2種以上のポリマーが少なくとも部分的に分子スケールで織り交ぜられているが、互いに共有結合しておらず、化学結合が切断されない限り分離することができないことを意味する。2種以上の予め形成されたポリマーの混合物は、IPNを表わさない。IPNの2種以上のポリマーが、2つ以上の重合性基を有する化合物から形成される場合には、IPNは、公式のIUPAC定義「分子スケールで少なくとも部分的に織り交ぜられているが、互いに共有結合しておらず、化学結合が切断されない限り分離することができない2種以上のネットワークを含むポリマー」に従う。1種以上のポリマーが、2つ以上の重合性基を有する化合物から形成され、1種以上のポリマーが、1つの重合性基を有する化合物から形成される場合には、IPNは、IUPAC定義によれば、いわゆる「半相互貫入ポリマーネットワーク(SIPN)」:「直鎖又は分岐鎖の高分子の少なくともいくつかによる少なくとも1種のネットワークの分子スケールでの貫入を特徴とする、1種以上のネットワーク及び1種以上の直鎖又は分岐鎖のポリマーを含むポリマー」である。IPNの現在の一般的定義は、IUPAC定義によるIPN及びSIPNを含むが、分子スケールで少なくとも部分的に織り交ぜられているが、互いに共有結合しておらず、化学結合が切断されない限り分離することができない2種以上の直鎖又は分岐鎖のポリマーも含む。
【0118】
モノマー(x)、(y)及び(z)のラジカル重合性炭素-炭素二重結合及びカチオン重合性基は、特に限定されない。好ましくは、ラジカル重合性炭素-炭素二重結合は、(メタ)アクリロイル基及び(メタ)アクリルアミド基、好ましくは、(メタ)アクリロイル基の炭素-炭素二重結合から選択される。さらに、カチオン重合性基は、エポキシド基、オキセタン基、ビニルエーテル基、アジリジン基及びアゼチジン基、好ましくは、エポキシド基、ビニルエーテル基及びオキセタン基、最も好ましくは、エポキシド基及びビニルエーテル基から選択されるのが好ましい。
【0119】
好ましくは、該歯科用組成物は、モノマーの組み合わせ(x)及び(y)、(x)及び(z)、(y)及び(z)又は(x)、(y)及び(z)、最も好ましくは、モノマーの組み合わせ(x)及び(y)、(x)及び(z)又は(x)、(y)及び(z)を含む均質相を含む。
【0120】
例えば、モノマー(x)は、式(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)及び(H)で示される化合物から選択することができ、モノマー(y)は、式(J)、(K)、(L)、(M)、(N)、(O)で示される化合物から選択することができ、モノマー(z)は、式(P)で示される化合物から選択することができる。
【0121】
好ましくは、均質相は、2つ以上の重合性炭素-炭素二重結合もしくはカチオン重合性基を有する1種以上の化合物(x)及び/もしくは(y)並びに/又は少なくとも1つの重合性炭素-炭素二重結合及び少なくとも1つのカチオン重合性基を有する1種以上の化合物(z)を含む。これにより、架橋ポリマーネットワークの形成が提供される。架橋ポリマーネットワークの形成は、形成されたIPNに更なる寸法/機械的安定性を付与するため有利である。より好ましくは、均質相(a)は、式(B)及び(E)で示される化合物からなる群より選択される2つ以上のラジカル重合性炭素-炭素結合を有する化合物(x)並びに/又は式(K)及び(O)で示される化合物からなる群より選択される2つ以上のカチオン重合性基を有する化合物(y)並びに/又は式(P)で示される化合物から選択される少なくとも1つのラジカル重合性炭素-炭素二重結合及び少なくとも1つのカチオン重合性基を有する化合物(z)を含む。
【0122】
化合物(x)を含む均質相について、均質相(a)は、成分(x)、(y)及び(z)を、0.1~10の重量比(x)/((y)+(z))で含有するのが好ましい。
【0123】
本発明の硬化性組成物は、開始剤系を含むことができる。開始剤系として、1種以上の硬化性化合物の重合を開始可能な任意の化合物又は系を使用することができる。開始剤系は、光開始剤系、熱開始剤系、レドックス開始剤系又は二重硬化開始剤系であることができる。
【0124】
「二重硬化開始剤系」という用語は、光開始剤系及びレドックス開始剤系又は光開始剤系及び熱開始剤系又は熱開始剤系及びレドックス開始剤系を含有する開始剤系を意味する。
【0125】
「三重硬化開始剤系」という用語は、光開始剤系及びレドックス開始剤系及び熱開始剤系を含有する開始剤系を意味する。
【0126】
例えば、適切な光開始剤系は、単元、二元又は三元系の形態にあることができる。単元系は、光開始剤を含むことができ、二元系は、光開始剤及び電子供与体化合物を含むことができ、三元系は、例えば、US第5,545,676号に記載されているように、ヨードニウム、スルホニウム又はホスホニウム塩、光開始剤及び電子供与体化合物を含むことができる。
【0127】
開始剤系に適した光開始剤は、約400nm~約520nm(好ましくは、約450nm~約500nm)の範囲内の一部の光を吸収するモノケトン及びジケトンである。特に適切な化合物は、約400nm~約520nm(さらにより好ましくは、約450~約500nm)の範囲内の一部の光吸収を有するアルファジケトンを含む。例は、カンファーキノン、ベンジル、フリル、3,3,6,6-テトラメチルシクロヘキサンジオン、フェナントラキノン、1-フェニル-1,2-プロパンジオン及び他の1-アリール-2-アルキル-1,2-エタンジオン並びに環状アルファジケトンを含む。適切な電子供与体化合物は、置換アミン、例えば、エチル ジメチルアミノベンゾアート又はジメチルアミノベンゾニトリルを含む。
【0128】
また、適切な光開始剤系は、典型的には、約380nm~約1200nmの機能波長範囲を有するホスフィンオキシドを含むこともできる。約380nm~約450nmの機能波長範囲を有するホスフィンオキシドフリーラジカル開始剤の例は、アシル及びビスアシルホスフィンオキシド、例えば、US第4,298,738号、US第4,324,744号及びUS第4,385,109号並びにEP第0173567号に記載されているものを含む。アシルホスフィンオキシドの具体例は、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ジベンゾイルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、トリス(2,4-ジメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、トリス(2-メトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,3,5,6-テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイル-ビス(2,6-ジメチルフェニル)ホスホナート及び2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシドを含む。約380nm超~約450nmの波長範囲で照射された場合にフリーラジカル開始が可能な市販のホスフィンオキシド光開始剤は、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE 819)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド(CGI 403)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンとの重量比25:75の混合物(IRGACURE 1700)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンとの重量比1:1の混合物(DAROCUR 4265)及びエチル 2,4,6-トリメチルベンジルフェニルホスフィナート(LUCIRIN LR8893X)を含む。典型的には、ホスフィンオキシド開始剤は、該組成物の総重量に基づいて、触媒有効量、例えば、0.1重量%~5.0重量%で該組成物に存在する。
【0129】
第三級アミン還元剤は、アシルホスフィンオキシドと組み合わせて使用することができる。適切な芳香族第三級アミンの例は、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-m-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-3,4-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-4-エチルアニリン、N,N-ジメチル-4-イソプロピルアニリン、N,N-ジメチル-4-t-ブチルアニリン、N,N-ジメチル-3,5-ジ-t-ブチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジメチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,4-ジメチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-エチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-イソプロピルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-t-ブチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジ-イソプロピルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジ-t-ブチルアニリン、4-N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、4-N,N-ジメチルアミノ安息香酸メチルエステル、4-N,N-ジメチルアミノ安息香酸n-ブトキシエチルエステル、4-N,N-ジメチルアミノ安息香酸2-(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、4-N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン、エチル 4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾアート及びN,N-ジメチルアミノエチルメタクリラートを含む。脂肪族第三級アミンの例は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-n-ブチルジエタノールアミン、N-ラウリルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリラート、N-メチルジエタノールアミンジメタクリラート、N-エチルジエタノールアミンジメタクリラート、トリエタノールアミンモノメタクリラート、トリエタノールアミンジメタクリラート及びトリエタノールアミントリメタクリラートを含む。
【0130】
アミン還元剤は、該組成物の総重量に基づいて、0.1重量%~5.0重量%の量で、該組成物に存在することができる。
【0131】
上記言及された光開始剤の他に、下記式(III):
-R
(III)
[式中、
は、下記式(IV):
【化14】

[式中、
Mは、Si又はGeであり、
は、置換又は非置換のヒドロカルビル基又はヒドロカルビルカルボニル基を表わし、
は、置換又は非置換のヒドロカルビル基又はヒドロカルビルカルボニル基を表わし、
は、置換又は非置換のヒドロカルビル基を表わす]
で示される基であり、
は、
a)Xと同じ意味を有し、それにより、式(III)で示される化合物は、対称もしくは非対称であることができ、又は
b)下記式(V):
【化15】

[式中、
は、単結合、酸素原子又は基NR’を表わし、ここで、R’は、置換又は非置換のヒドロカルビル基を表わし、
は、置換又は非置換のヒドロカルビル基、トリヒドロカルビルシリル基、モノ(ヒドロカルビルカルボニル)ジヒドロカルビルシリル基又はジ(ヒドロカルビルカルボニル)モノヒドロカルビルシリル基を表わす]
で示される基であり、又は
c)MがSiである場合、Rは、置換又は非置換のヒドロカルビル基であることができる]
を有する光開始剤を適用することができる。
【0132】
式(III)において、本明細書で使用する場合、「置換」という用語は、R、R、R、R及びR’がハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基及び-NR基(ここで、R及びRは、それぞれ独立して、C1-6アルキル基を表わす)からなる群より選択される置換基により置換されていることができることを意味する。ここで、ハロゲン原子の例示は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素であることができる。C1-6アルキル基は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル及びn-ブチルである。C1-6アルコキシ基の例示は、例えば、メトキシ、エトキシ及びプロポキシである。これらの置換基におけるアルキル部分は、直鎖、分岐鎖又は環状であることができる。好ましくは、置換基は、塩素原子、ニトロ基、C1-4アルコキシ基及び-NR基(ここで、R及びRは、それぞれ独立して、C1-4アルキル基を表わす)から選択される。
【0133】
、R及びRが置換されている場合には、それらは、1~3個の置換基、より好ましくは、1つの置換基により置換されているのが好ましい。
【0134】
式(III)で示される化合物において、部分R、R及びRは、以下のように定義することができる。
【0135】
及びRは、それぞれ独立して、置換又は非置換のヒドロカルビル基又はヒドロカルビルカルボニル基を表わし、Rは、置換又は非置換のヒドロカルビル基を表わす。
【0136】
ヒドロカルビル基は、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アリールアルキル基又はアリール基であることができる。
【0137】
アルキル基は、直鎖又は分岐鎖のC1-20アルキル基、典型的には、C1-8アルキル基であることができる。C1-6アルキル基についての例は、1~6個の炭素原子、好ましくは、1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル及びn-ヘキシルを含むことができる。
【0138】
シクロアルキル基は、C3-20シクロアルキル基、典型的には、C3-8シクロアルキル基であることができる。シクロアルキル基の例は、3~6個の炭素原子を有するもの、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルを含むことができる。
【0139】
シクロアルキルアルキル基は、4~20個の炭素原子を有することができ、1~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基と、3~14個の炭素原子を有するシクロアルキル基との組み合わせを含むことができる。シクロアルキルアルキル(-)基の例は、例えば、メチルシクロプロピル(-)、メチルシクロブチル(-)、メチルシクロペンチル(-)、メチルシクロヘキシル(-)、エチルシクロプロピル(-)、エチルシクロブチル(-)、エチルシクロペンチル(-)、エチルシクロヘキシル(-)、プロピルシクロプロピル(-)、プロピルシクロブチル(-)、プロピルシクロペンチル(-)、プロピルシクロヘキシル(-)を含むことができる。
【0140】
アリールアルキル(-)基は、C7-20アリールアルキル(-)基、典型的には、1~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基と、6~10個の炭素原子を有するアリール(-)基との組み合わせであることができる。アリールアルキル(-)基の具体例は、ベンジル(-)基又はフェニルエチル(-)基である。
【0141】
アリール基は、6~10個の炭素原子を有するアリール基を含むことができる。アリール基の例は、フェニル及びナフチルである。
【0142】
及びRのヒドロカルビルカルボニル基は、アシル基(Rorg-(C=O)-)を表わし、ここで、有機残基Rorgは、上記定義されたヒドロカルビル残基である。
【0143】
式(III)で示される化合物において、Rは、Xと同じ意味を有することができ、それにより、式(III)で示される化合物は、対称又は非対称であることができる。代替的には、Rは、置換もしくは非置換のヒドロカルビル基又は式(V)で示される基を表わすことができる。好ましくは、Rが、Xと同じ意味を有する場合には、式(III)で示される化合物は非対称である。Rが、置換又は非置換のヒドロカルビル基を表わす場合には、ヒドロカルビル基は、Rについて上記定義されたのと同じ意味を有し、それらから独立して選択される。
【0144】
式(III)で示される化合物の式(V)で示される基において、Rは、置換又は非置換のヒドロカルビル基、トリヒドロカルビルシリル基、モノ(ヒドロカルビルカルボニル)ジヒドロカルビルシリル基又はジ(ヒドロカルビルカルボニル)モノヒドロカルビルシリル基を表わす。
【0145】
式(V)のRが、トリヒドロカルビルシリル基、モノ(ヒドロカルビルカルボニル)-ジヒドロカルビルシリル基又はジ(ヒドロカルビルカルボニル)モノヒドロカルビルシリル基である場合、ヒドロカルビル基及びヒドロカルビルカルボニル基はそれぞれ、R、R及びRについて定義されたのと同じ意味を有し、それらから独立して選択される。
【0146】
式(V)において、R’は、Rについて定義されたのと同じ意味を有し、それらから独立して選択される。
【0147】
式(III)で示される化合物において、Mが、Siである場合、Rは、置換又は非置換のヒドロカルビル基であることができ、ここで、ヒドロカルビル基は、Rについて上記定義されたのと同じ意味を有し、それらから独立して選択される。
【0148】
例えば、RがXと同じ意味を有し、対称である式(III)で示される化合物は、下記構造式:
【化16】

を有することができる。
【0149】
例えば、Rが式(V)で示される基を表わし、ここで、Yが結合、酸素原子又はNR’基であり、Rが置換又は非置換のヒドロカルビル基を表わす式(III)で示される化合物は、下記構造式:
【化17】

を有することができる。
【0150】
例えば、Rが式(V)で示される基を表わし、ここで、Rがトリヒドロカルビルシリル基を表わす式(III)で示される化合物は、下記構造式:
【化18】

を有する。
【0151】
例えば、MがSiであり、Rが置換又は非置換のヒドロカルビル基を表わす式(III)で示される化合物は、下記構造式:
【化19】

を有することができる。
【0152】
好ましくは、式(III)で示される化合物は、
【化20】

からなる群より選択される。ここで、M=Siである式(III)で示される化合物が特に好ましい。
【0153】
最も好ましくは、式(III)で示される化合物は、
【化21】

からなる群より選択される。ここで、M=Siであるのが特に好ましい。
【0154】
式(III)で示される化合物は、市販されているか又は公開されている手順に従って調製することができる公知の化合物であることができる。
【0155】
光開始剤系は、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩及びテトラアリール又はテトラアルキルホスホニウム塩をさらに含むことができる。これらの塩は、光開始剤の重合性能を改善するための共開始剤として機能させることができるが、カチオン重合のための開始剤としても機能させることができる。
【0156】
例えば、ジアリールヨードニウム塩は、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモナート、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムテトラフルオロボラート、ジフェニルヨードニウム(DPI)テトラフルオロボラート、ジ(4-メチルフェニル)ヨードニウム(Me2-DPI)テトラフルオロボラート、フェニル-4-メチルフェニルヨードニウムテトラフルオロボラート、ジ(4-ヘプチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボラート、ジ(3-ニトロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ジ(4-クロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ジ(ナフチル)ヨードニウムテトラフルオロボラート、ジ(4-トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボラート、DPIヘキサフルオロホスファート、Me2-DPIヘキサフルオロホスファート、DPIヘキサフルオロアルセナート、ジ(4-フェノキシフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボラート、フェニル-2-チエニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、3,5-ジメチルピラゾリル-4-フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、DPIヘキサフルオロアンチモナート、2,2’-DPIテトラフルオロボラート、ジ(2,4-ジクロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ジ(4-ブロモフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ジ(4-メトキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ジ(3-カルボキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ジ(3-メトキシカルボニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ジ(3-メトキシスルホニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ジ(4-アセトアミドフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ジ(2-ベンゾチエニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート及びDPIヘキサフルオロホスファートからなる群より選択することができる。
【0157】
特に好ましいヨードニウム化合物は、ジフェニルヨードニウム(DPI)ヘキサフルオロホスファート、ジ(4-メチルフェニル)ヨードニウム(Me2-DPI)ヘキサフルオロホスファート、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモナート、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモナート、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロホスファート(Irgacure(登録商標)250、BASF SEから入手可能な市販品)、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムテトラフルオロボラート、4-オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモナート、4-(2-ヒドロキシテトラデシルオキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモナート及び4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムボラートを含む。
【0158】
特に好ましい実施態様によれば、ヨードニウム化合物は、DPIヘキサフルオロホスファート及び/又は4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートである。
【0159】
好ましいトリアリールスルホニウム塩は、下記式:
【化22】

で示されるS-(フェニル)チアントレニウムヘキサフルオロホスファートである。
【0160】
特に好ましいホスホニウム塩は、テトラアルキルホスホニウム塩、テトラキス-(ヒドロキシメチル)-ホスホニウム(THP)塩又はテトラキス-(ヒドロキシメチル)-ホスホニウムヒドロキシド(THPOH)塩であり、ここで、テトラアルキルホスホニウム塩のアニオンは、ホルマート、アセタート、ホスファート、スルファート、フッ化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物からなる群より選択される。
【0161】
可視光の範囲における特に好ましい光開始剤系は、式(III)で示される光開始剤を、場合により、カンファーキノンに加えて、上記されたジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩又はテトラアリールもしくはテトラアルキルホスホニウム塩と組み合わせて含む。
【0162】
近UV範囲(300~400nm)における好ましい光開始剤系は、フェニルホスフィンオキシド化合物、好ましくは、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド及び/又はビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドを含む。
【0163】
適切な熱開始剤系は、熱の存在下で重合性化合物(ii)又は更なる重合性化合物の重合性基の重合を開始可能なフリーラジカルを生成する少なくとも1種の化合物を含む。典型的な熱開始剤は、アゾ化合物、例えば、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、4-シアノ-4-(2-シアノ-5-ヒドロキシ-5-オキソペンタン-2-イル)ジアゼニルペンタン酸、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]又はジメチル 2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオナート);有機ペルオキシド、例えば、ジベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド又は無機ペルオキシド、例えば、過硫酸カリウムもしくは過硫酸ナトリウムを含む。
【0164】
適切なレドックス開始剤系は、光の存在とは無関係に、重合性化合物(ii)又は更なる重合性化合物の重合性基の重合を開始可能なフリーラジカルを生成する還元剤及び酸化剤を含む。還元剤及び酸化剤は、開始剤系(iii)が十分に貯蔵安定であり、典型的な歯科条件下での貯蔵及び使用を可能にする望ましくない着色がないように選択される。さらに、還元剤及び酸化剤は、開始剤系(iii)が樹脂系と十分に混和性であり、該組成物中に開始剤系を溶解させることができるように選択される。
【0165】
有用な還元剤は、US第5,501,727号に記載されているようなアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体及び金属錯化アスコルビン酸化合物;アミン、すなわち、第三級アミン、例えば、4-tert-ブチルジメチルアニリン;芳香族スルフィン酸塩、例えば、p-トルエンスルフィン酸塩及びベンゼンスルフィン酸塩;チオ尿素、例えば、1-エチル-2-チオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、1,1-ジブチルチオ尿素及び1,3-ジブチルチオ尿素;並びにそれらの混合物を含む。他の二次還元剤は、塩化コバルト(II)、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、ジチオナイト又はスルファイトアニオンの塩及びそれらの混合物を含むことができる。
【0166】
適切な酸化剤は、過硫酸及びその塩、例えば、アンモニウム、ナトリウム、カリウム、セシウム及びアルキルアンモニウム塩を含む。更なる酸化剤は、ペルオキシド、例えば、ベンゾイルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、例えば、クミルヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド及びアミルヒドロペルオキシド並びに遷移金属の塩、例えば、塩化コバルト(III)及び塩化第二鉄、硫酸セリウム(IV)、過ホウ酸及びその塩、過マンガン酸及びその塩、過リン酸及びその塩、並びにそれらの混合物を含む。1種以上の異なる酸化剤又は1種以上の異なる還元剤を開始剤系に使用することができる。少量の遷移金属化合物を加えて、レドックス硬化速度を促進することもできる。還元剤及び酸化剤は、適切なフリーラジカル反応速度を可能にするのに十分な量で存在する。
【0167】
還元剤又は酸化剤は、組成物の貯蔵安定性を高めかつ必要であれば、還元剤及び酸化剤を共に包装することを可能にするために、マイクロカプセル化することができる(US第5,154,762号)。カプセル化剤の適切な選択により、酸化剤及び還元剤、さらには、酸官能性成分及び任意の充填材を貯蔵安定状態で組み合わせることが可能となる。さらに、水不溶性カプセル化剤の適切な選択により、還元剤及び酸化剤を粒状反応性ガラス及び水と貯蔵安定状態で組み合わせることが可能となる。
【0168】
開始剤系(iii)の活性種の量は、特に限定されない。適切には、開始剤系(iii)における光開始剤の量は、1種以上の重合性化合物(ii)又は以下に記載される更なる重合性化合物の総量に基づいて、0.001~5mol%の範囲にある。
【0169】
更なる任意成分
本発明の歯科用組成物は、上記された任意成分に加えて、更なる任意成分を含むことができる。
【0170】
例えば、本発明に従って使用される硬化性組成物は、適切な溶媒を含むことができる。これらの溶媒は、水、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール(n-、i-)、ブタノール(n-、iso-、tert-)及びケトン、例えば、アセトン等から選択することができる。本発明の歯科用組成物は、該組成物の総重量に基づいて、5~75重量%の量で、溶媒を含むことができる。
【0171】
本発明の硬化性組成物の充填材は、場合により、ガラスフレーク及び構造充填材以外の更なる充填材を含むことができる。更なる充填材は、5~100nmの一次粒子の粒径D3,50を有するナノ充填材から選択することができる。好ましくは、更なる充填材は、シラン化されている。適切なシラン化ナノ充填材は、EP第0969789号に開示されている。シラン化ナノ充填材の具体例は、Cab-O-Sil TS720(Cabot Corporation)である。更なる充填材は、該硬化性組成物の充填材中に、該硬化性組成物の総重量に基づいて、最大50重量%、より好ましくは、0.1~20重量%、さらにより好ましくは、0.5~5重量%の量で含有されることができる。
【0172】
本発明の積層造形方法は、さらに、該硬化性組成物を使用することにより、物体を形成するように装置を制御する工程を含み、ここで、該硬化性組成物は、最小直径φminを有する放出オリフィスを通過する。放出オリフィスは、ノズルの一部を形成していることができる。特に、ノズルは、該硬化性材料を貯蔵し、放出するためのカートリッジの一部を形成することができる。代替的には、ノズルは、該装置の一部を形成することができる。ノズルは、カートリッジ本体もしくは該装置から突出する部材であることができ、又はカートリッジもしくは貯蔵区画の壁を越えて突出することなく、カートリッジ本体もしくは該装置の貯蔵区画の壁にあるオリフィスであることができる。
【0173】
好ましい実施態様によれば、放出オリフィスの最小直径は、10~1500μmの範囲にある。より好ましくは、φminは、高解像度印刷を提供するために、30~300μmの範囲内にある。
【0174】
ノズルの長さは、0.1~20mmの範囲にあることができる。
【0175】
好ましい実施態様によれば、積層造形方法は、噴出法及び押出法から選択される。該装置は、3D印刷可能な材料として本発明の硬化性組成物で印刷するためのプリンタヘッドを少なくとも備えるプリンタユニットを備える3Dプリンターであることができる。場合により、3Dプリンタユニットは、二剤硬化性組成物を混合するように構成されている材料投入ユニットを備えることができる。
【0176】
該装置の制御は、設計モジュール、例えば、ワークステーションから該装置に送られる設計ファイルに記憶されている3D印刷可能なモデルに基づくことができる。設計ファイルは、物理的歯科用器具を作製するために、該装置により使用可能な歯科用器具のデジタル表現を提供する。3D印刷可能なモデルは、CADモデルの三角測量に基づいてデータを記憶するステレオリソグラフィファイルフォーマット(STL)で保存することができる。より新しいCADファイルフォーマットである積層造形ファイルフォーマット(AMF)も使用することができ、この場合、情報は、湾曲した三角測量を使用して記憶される。
【0177】
歯科用器具は、該硬化性組成物が最小直径φminを有する放出オリフィスを通過する、1つ以上の利用可能で積層造形技術を使用して、チェアサイドで製造することができる。積層造形技術は、3D印刷又は押出堆積を含む他の3D印刷技術を含むことができる。歯科用器具の設計は、歯科治療オフィスに配置された装置を使用して実現することができるが、歯科修復製品の設計は、例えば、インターネット、他のコンピュータネットワークを介して、安全性の高いサーバに送信して、又は電子媒体を使用し、別の施設にメールして、歯科修復製品を製造することもできる。
【0178】
本発明の積層造形方法は、さらに、該硬化性組成物を硬化させる工程を含むことができる。硬化を各層が形成された後に行うことができる。代替的には、硬化を該硬化性組成物の2つ以上の層が適用された後に行うことができる。
【0179】
好ましい実施態様によれば、本発明の方法は、さらに、物体を光及び/又は熱の適用により長期間硬化させる最終硬化工程を含むことができる。
【0180】
本発明の積層造形方法では、ガラスフレークの直径D3,99に対する放出オリフィスの最小直径の比(φmin/D3,99)は、2~10未満の範囲にある。
【0181】
好ましい実施態様によれば、本発明の方法は、歯科用器具を調製するためのものであり、ここで、該物体は、好ましくは、単一ユニットの永久歯科用修復物であり、ここで、該物体は、好ましくは、歯科クラウン、インレー、アンレー又はベニヤの少なくとも一部である。
【0182】
また、本発明は、3Dプリンター用カートリッジであって、硬化性歯科用組成物を収容し、カートリッジは、3D印刷中に該硬化性組成物を噴出し又は押出すための放出オリフィスを有し、ここで、光散乱により測定されたガラスフレークの直径D3,99に対する放出オリフィスの最小直径φminの比(φmin/D3,99)は、10未満である、3Dプリンター用カートリッジを提供する。
【0183】
該カートリッジは、単一のバレル又は少なくとも2つの細長いバレルを有することができる。バレルは、該硬化性組成物の少なくとも一成分を貯蔵し、分配するのに使用される。該カートリッジは、成分を混合し、ついで、放出オリフィスを通して混合された組成物を分配するための静的混合要素を含有する分配チップを備えることができる。
【0184】
本発明のカートリッジは、一剤硬化性組成物又は多剤硬化性組成物、好ましくは、二剤組成物を押出し又は噴出するためのものである。一実施態様では、該カートリッジは、二重バレル構造を有するカートリッジ本体を含む。第1の細長いバレルは、該硬化性組成物の第1の成分を貯蔵し、放出するのに使用される。第1のバレルは、第1のプランジャロッドを受け入れるための開口部と、第1の成分を放出するための出口ポートとを有する。第2の細長いバレルは、該硬化性組成物の第2の成分を貯蔵し、放出するのに使用される。第2のバレルは、第2のプランジャロッドを受け入れるための開口部と、第2の成分を放出するための出口ポートとを有する。
【0185】
カートリッジ本体は、該硬化性組成物の第1及び第2の成分を受容するための分配チップを含むことができる。ついで、分配チップは、該組成物を放出オリフィスに送り出す。分配チップは、該硬化性組成物の成分を組み合わせ、混合する静的混合要素をさらに備えることができる。ついで、混合された組成物は、分配チップのノズルの放出オリフィスを通して分配される。
【0186】
該カートリッジは、3つ以上のバレルを有することができ、多成分硬化性組成物を分配するのに使用することができる。例えば、該カートリッジは、3又は4成分の硬化性組成物を分配するための3つ又は4つのバレルを有することができる。
【0187】
また、本発明は、本発明の複数のカートリッジを含み、各カートリッジが、歯科用組成物及び場合により、支持材料を収容し、ここで、該カートリッジが、該歯科用組成物を支持材料と区別するため、又は硬化した歯科用組成物及び/又は支持材料の特性を識別するためにマーキングされ、その特性は、好ましくは、色及び/又は不透明度から選択される、パーツキットも提供する。
【0188】
ここから、本発明を下記実施例に基づいて本発明をさらに説明するものとする。
【実施例
【0189】
実施例
パールミルによるガラスフレークの粉砕
ミル(Dyno-mill Multi Lab, Willy A. Bachofen AG Maschinenfabrik)の研削容器に研削ビーズ(ソーダ石灰ガラス、0.75~1mm) 450mLを充填した。貯蔵タンク中で、100g ECRガラスフレークGF350nmM(Glassflake Ltd., Leeds, England製)(表面官能化されていない)を水 1.5L中に分散させた。連続的に撹拌することにより、均質な分散液を維持した。この分散液を、ぜん動ポンプにより研削容器に送り込み、ミル出口から貯蔵タンクに戻した。粉砕は、粒径D3,50及びD3,99が所望の値に達した時点で停止した。
【0190】
ガラスフレークの洗浄
洗浄されていないガラスフレークを歯科用組成物に加えると、灰色がかったペーストが得られた。より良好な美的結果のために、ガラスフレークを被覆前に洗浄することができる。洗浄のために、ガラスフレークを2倍量の2.5% 塩酸で30分間撹拌し、ついで、ろ別し、ろ過中に約20倍量の水で洗浄することができる。最後に、ガラスフレークを80℃で約16時間乾燥させることができる。
【0191】
シランによるガラスフレークの被覆
粉砕したガラスフレークを約5倍量の2-プロパノールに分散させ、1時間撹拌した。攪拌中、この懸濁液を超音波処理し、3wt%の3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリラート(ガラスフレーク量に関連)を懸濁液に滴加した。続けて、溶媒を真空中で除去し、残留物を80℃で約16時間乾燥させた。被覆ガラスフレークを、脱凝集のために180μmふるいを通してふるい分けした。水 約50mLを含有するビーカー中で、約50mgの被覆ガラスフレークの一部を表面上に置き、それにより、被覆ガラスフレークは浮遊したままであり、これは、ガラスフレークが疎水性である3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリラートにより被覆されたことを示す。
【0192】
ペースト調製
4.05g シラン化ガラスフレーク(GF350nmM、D3,50=12μm;D3,99<43μm)、10.65g タイプ3のバリウムガラス(SDI、D3,50=0.6μm)及び0.3g Cab-O-Sil TS720(Cabot Corporation)を当技術分野において公知であるように、10.00gの光硬化性メタクリラート系モノマー混合物と配合した。ペーストの押出性を改善するために、この材料を、EXAKTモデル80E 3ロールミルを用いて処理した。内径600μm、長さ11mmのノズルを有するカートリッジからのペーストの押出力(EF)を、Zwick RetroLine引張試験機を使用して調査した。与えられたペーストについて、室温でのカートリッジ押出力は、24Nである。このペーストの曲げ強度(FS)及びE-モジュラスもZwickを使用して調査した。本ペーストについて、FSは、113MPaであり、E-モジュラスは、6.8GPaである。
【0193】
粒径分析
ガラスフレークの中央粒径(D3,50)及びD3,99の測定法
少量のガラスフレークを、水 800mLを含有し、2200U/分に設定された撹拌機及び80%に設定された超音波プローブを備えたMalvern Mastersizer 3000の測定セルに直接加えた。ここで加えた実際のガラスフレーク量は、測定装置で検出されたレーザーシャドウイング(laser shadowing)に依存していた。加えたガラスフレークの量は、8~15%のレーザーシャドウイングをもたらす。測定セル内の超音波プローブから超音波を撹拌下で2分間適用した後に、中央粒径を測定した。超音波を適用して、ゆるく凝集/層状化したガラスフレークを粉砕した。
【0194】
下記パラメータをMalvern Mastersizer 3000ソフトウェアにおいて定義した。
【0195】
【表1】
【0196】
結果を図1に示す。
図1