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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】汗におけるバイオマーカーの検出
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20220607BHJP
【FI】
A61B5/00 N
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021555440
(86)(22)【出願日】2020-04-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-04
(86)【国際出願番号】 EP2020060044
(87)【国際公開番号】W WO2020208084
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-09-14
(31)【優先権主張番号】19168486.9
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ペルサース エデュアルド ジェラルド マリー
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン マーク トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ファン ガイセル トーマス ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ファン リーシャウト ロン マルティヌス ローレンティウス
(72)【発明者】
【氏名】デリモア キラン ハミルトン ジェイ
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-112734(JP,A)
【文献】特表2016-535614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の皮膚から得られる汗サンプルにおけるバイオマーカーを定量的に検出するためのウェアラブル装置において、前記ウェアラブル装置は、マイクロ流体ネットワークを有し、前記マイクロ流体ネットワークは、
既定量のマーカーを含むキャリア流体で満たされるリザーバ、
前記リザーバより下流に配され、被験者の皮膚と接触し、汗サンプルを収集するように適応するサンプル収集チャンバ、
前記サンプル収集チャンバより下流に配され、前記マーカーを検出するように適応する第1のセンサであり、前記キャリア流体における前記マーカーの濃度を測定するように適応する第1のセンサ、並びに
前記第1のセンサより下流に配され、前記バイオマーカーを検出するように適応する第2のセンサ
を有するウェアラブル装置。
【請求項2】
前記バイオマーカーに対し選択的である膜が、前記サンプル収集チャンバより下流であり、前記第1のセンサより上流に配される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ウェアラブル装置が、0.03nL/分/汗腺から20nL/分/汗腺までの間の発汗量で前記バイオマーカーを検出するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記マイクロ流体ネットワークは、前記第1及び第2のセンサより下流にある前記マイクロ流体ネットワークの部分から、前記リザーバと前記サンプル収集チャンバとの中間にある前記マイクロ流体ネットワークの部分まで延在する再循環チャネルをさらに有する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
前記マーカーは、色素、不活性コロイド粒子又は既定の濃度の電気化学的に検出可能な化合物を有する、請求項1乃至4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記キャリア流体を10nL/分から60nL/分までの既定の流量で送り出すように構成される1つ以上のポンプをさらに有する、請求項1乃至5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
被験者の皮膚と接触しているウェアラブル装置を使用して、前記被験者からの汗サンプルにおけるバイオマーカーを定量的に検出する方法において、前記方法は、
既定量のマーカーを含むキャリア流体を前記ウェアラブル装置のサンプル収集チャンバに送り出すステップであり、前記サンプル収集チャンバは、前記被験者の皮膚と接触し、汗サンプルを収集するように適応している、ステップ、
前記マーカーを含む前記キャリア流体及び前記汗サンプルを前記サンプル収集チャンバから第1及び第2のセンサに送り出すステップ、
前記第1のセンサから前記キャリア流体に存在する前記マーカーの濃度に関するデータを取得するステップ、
前記第2のセンサから前記バイオマーカーに関するデータを取得するステップ、並びに
前記第1及び第2のセンサからのデータに基づいて、前記汗サンプルにおける前記バイオマーカーの濃度を決定するステップ
を有する方法。
【請求項8】
前記第1のセンサから取得したデータに基づいて、前記キャリア流体及び前記汗サンプルの一方又は両方の流量を決定するステップを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記キャリア流体及び前記汗サンプルの一方又は両方の流量に基づいて、前記汗サンプルにおける前記バイオマーカーの濃度を決定するステップを有する、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記バイオマーカーは、Na、K、Cl、尿素、エタノール、グルコース、乳酸イオン、アンモニウムイオン又はコルチゾールの1つ以上を有する、請求項7乃至9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
生理学的センサから被験者の生理学的データを取得するステップ、及び
前記取得した生理学的データに基づいて、前記キャリア流体の流量を調整するステップ
を有する、請求項7乃至10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
被験者の皮膚から得られる汗サンプルにおけるバイオマーカーを定量的に検出するためのシステムにおいて、前記システムは、
請求項1乃至6の何れか一項に記載のウェアラブル装置、及び
処理器
を有し、前記処理器は、
前記ウェアラブル装置の第1のセンサからデータを取得し、前記第1のセンサから取得したデータは、前記キャリア流体における前記マーカーの濃度を有する、
前記ウェアラブル装置の第2のセンサからデータを取得し、及び
前記第1及び第2のセンサからのデータに基づいて、前記汗サンプルにおける前記バイオマーカーの濃度を決定する
ように構成される、システム。
【請求項13】
前記処理器は、前記キャリア流体における前記マーカーの濃度に基づいて、発汗量を決定するように構成される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
コンピュータ可読媒体を有するコンピュータプログラム製品において、前記コンピュータ可読媒体は、当該コンピュータ可読媒体内に具体化されるコンピュータ可読コードを有し、前記コンピュータ可読コードは、コンピュータ又は処理器による実行時に、前記コンピュータ又は処理器が、請求項7乃至11の何れか一項に記載の方法を行うように構成される、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被験者から得られる汗サンプルにおける生理学的に関連するバイオマーカーを検出するための機器、方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
健康及び健康状態を示すバイオマーカーの非侵襲的、継続的及び長期の監視は、例えば、脱水症、ストレス、睡眠、子供の健康及び術中モニタリングのために必要とされている。汗は、生理学的及び代謝的に豊富な情報を含む目立たない入手可能な生物流体(bio-fluid)である。汗の臨床的な関連成分の幾つかの例は、脱水を監視するためのNa、Cl及び/又はK、(敗血症に関連する)炎症に対する早期警戒としての乳酸、糖尿病及び新生児のためのグルコース、並びに睡眠及びトレスを監視するためのコルチゾールである。
【0003】
国際公開第2007/146047号は、グルコースを測定するためのパッチ、システム及び方法を開示している。
【0004】
成人は、安静時に毎秒約100ジュール(100ワット)の熱を発する。22℃前後の温度で衣服を着用している人にとって、この熱は、例えば熱伝導や熱対流をなくすような受動的手段により除去される。この場合、中核体温は一定のままである。しかしながら、i)人が労働又は運動をし始めるとき、及び/又はii)周囲温度が上昇しているとき、述べた手段は、中核体温を維持するには不十分である。恒常性を維持するために、身体は、血液を冷やすために皮膚にある血管の拡張を引き起こし、蒸発により皮膚を冷ます汗の発生を始める。
【0005】
周囲温度で、軽い運動又は軽い労働のみを伴う人により生成される汗の量は、かなり低く、約0.3nL/分/汗腺の一般的な値(0から0.7nL/分/汗腺の間で測定される値)である。人が安静にしているが、温度が36℃と高いとき、発汗量は、平均で、0.36mg*cm*分-1である。1.8m(標準化した人間の皮膚領域)当たり203万本の汗腺があり、1g/mLの汗密度であると仮定するとき、平均的な発汗量は、1分当たり約3.2ナノリットル(nL/汗腺/分)である。温度が熱中性帯(thermal neutral zone)より上に上昇することにより、身体は、冷却を必要とし、従って、発汗量は増大する。発汗量は、皮膚の刺激によって増大もする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半連続的な方法で汗を分析することの主な問題は、皮膚への汗の放出から、この汗アリコートにおけるバイオマーカーの実際の検出までの時間が非常に長くなることである。この時間遅延は、発汗量が非常に少なく、その結果、汗がマイクロ流体装置に入ってから、センサに到達するまでの時間がかなり長く、数時間に及ぶという事実により引き起こされる。例えば、この時間遅延は、装置に依存して24時間より長くなり得る。ウェアラブル装置のチャネルの高さ及び/又は幅を減らすことが考えられるが、これらは既に一般に約100ミクロンにすぎず、さらにチャネルの寸法を減らすことは、微細加工の複雑さを増大させる。
【0007】
別の問題は、汗の分泌に加えて、皮膚からの水分の蒸発である経表皮水分蒸散量(TEWL)があることである。この水分の蒸発は、液化によって収集チャンバに影響をお及ぼすことがあり、特に低い発汗量は、汗の未確認の希釈を与えることがある。さらに別の問題は、皮膚上にある成分が少量の汗に溶解し、バイオマーカーの濃度の正確な測定に憂慮すべき影響を及ぼし得ることである。
【0008】
汗におけるバイオマーカーを定性的又は定量的に検出するためのシステム及び装置、例えばウェアラブルな流体サンプリング装置は、当技術分野で知られている。例としては、Gao他著、Nature 529, 509-514(2016), Choi他著、Adv. Healthcare Mater. 2017, 6, 1601355及びKoh他著、Sci. Transl. Med. 8, 3664a165 (2016)に記載される例を含む。そのような装置は通例、分析するの十分な汗を収集するために、被験者が運動中であること、又は高温に曝されることを必要とする。信頼性のある汗の検知及びその装置の開発は、幾つかの問題、(1)汗の検知による結果は、非常に変動しやすい、(2)様々なバイオマーカーにとって、血液の値と汗の値との間の相関が欠如しているらしい、(3)汗の検知は、そのような装置におけるセンサに焦点が当てられて、微量の生成に対しては信頼性及びロバストな収集方法に焦点が当たっていない、ことにより妨げられてきた。
【0009】
汗を(流体構造を介して)皮膚からセンサに運ぶ時間は、かなり長く、数時間にも及ぶ。明らかに、運動により、周囲温度を上昇させる又は皮膚を刺激することにより、発汗量が増大するが、これは、一般病棟で回復している病人或いは患者のバイオマーカーの濃度を測定すること、又は日常業務を行っている人を監視することが望まれる場合には、実用的ではない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述したように、既存の装置及び方法の制限は、既存の技術が、十分な汗を発生させるために、被験者が運動中であること又は高温にいることの何れかを必要とすることであり、これは、被験者にとって迷惑で、不快であり、並びに被験者の健康を害する可能性がある。既存の装置及び方法は、汗を皮膚からセンサに運ぶのに長い時間も必要とし、従って、リアルタイムの臨床応用には実用的ではない。従って、これらの制限に対処することを目的とした改善は価値がある。本発明は、独立請求項により定義される。従属請求項は、有利な実施形態を規定する。
【0011】
従って、第1の態様に従って、被験者の皮膚から得られる汗サンプルにおけるバイオマーカーを定量的に検出するための装置が提供され、前記装置は、マイクロ流体ネットワークを有し、前記マイクロ流体ネットワークは、
既定量のマーカーを含むキャリア流体で満たされるリザーバ、
前記リザーバより下流に配され、被験者の皮膚と接触し、汗サンプルを収集するように適応するサンプル収集チャンバ、
前記サンプル収集チャンバより下流に配され、前記マーカーを検出するように適応する第1のセンサ、及び
第1のセンサより下流に配され、前記バイオマーカーを検出するように適応する第2のセンサ
を有する。
【0012】
キャリア流体において人工的マーカー(人工的とは汗に存在しないと定義される)を使用することにより、キャリア流体による汗の希釈係数は、このマーカーの濃度だけを測定する第1のセンサにより決定される。従って、この構成は、第2のセンサによる汗におけるバイオマーカーの濃度の適時の測定を可能にする。
【0013】
加えて、キャリア流体の既知の流量に基づいて、発汗量は、このマーカーの測定される濃度から計算されることができ、汗における特定のバイオマーカーの濃度が、1汗腺当たりの平均発汗量に依存するので、発汗量は適切である。、
【0014】
本発明によれば、第1のセンサは、キャリア流体におけるマーカーの濃度を測定するように適応する。
【0015】
幾つかの実施形態において、マイクロ流体ネットワークは、第1のセンサより下流に配される1つ以上の追加のセンサを有し、これら1つ以上の追加のセンサの各々は、異なるバイオマーカーを検出するように適応する。
【0016】
幾つかの実施形態において、前記装置は、0.03nL/分/汗腺から20nL/分/汗腺までの発汗量でバイオマーカーを検出するように構成される。幾つかの実施形態において、前記装置は、0.03nL/分/汗腺から0.7nL/分/汗腺までの発汗量でバイオマーカーを検出するように構成される。
【0017】
幾つかの実施形態において、バイオマーカーに対して選択的である膜が、サンプル収集チャンバより下流で、センサの上流に配される。
【0018】
幾つかの実施形態において、マイクロ流体ネットワークは、第1及び第2のセンサより下流のマイクロ流体ネットワークの部分から、リザーバとサンプル収集チャンバとの中間にあるマイクロ流体ネットワークの部分まで延在する再循環チャネルをさらに有する。
【0019】
幾つかの実施形態において、マーカーは、色素、不活性コロイド粒子又は既定の濃度の電気化学的に検出可能な化合物を有する。幾つかの実施形態において、前記色素は蛍光色素でもよい。
【0020】
幾つかの実施形態において、前記装置は、10nL/分から60nL/分までの既定の流量でキャリア流体を送り出す(ポンピングする)ように構成される1つ以上のポンプをさらに有する。幾つかの実施形態において、前記装置は、30nL/分の既定の流量でキャリア流体を送り出すように構成される1つ以上のポンプをさらに有する。
【0021】
第2の態様に従って、被験者の皮膚と接触しているウェアラブル装置を使用して、被験者からの汗サンプルにおけるバイオマーカーを定量的に検出する方法が提供され、前記方法は、
既定量のマーカーを含むキャリア流体を、前記ウェアラブル装置のサンプル収集チャンバに送り出すステップであり、前記サンプル収集チャンバは、前記被験者の皮膚と接触し、汗サンプルを収集するように適応している、ステップ、
前記マーカーを含むキャリア流体及び前記汗サンプルを前記サンプル収集チャンバから第1及び第2のセンサに送り出すステップ、
前記第1のセンサから前記キャリア流体に存在するマーカーに関するデータを取得するステップ、
前記第2のセンサから前記バイオマーカーに関するデータを取得するステップ、並びに
前記第1及び第2のセンサからのデータに基づいて、前記汗サンプルにおける前記バイオマーカーの濃度を決定するステップ
を有する。
【0022】
本発明に従って、前記方法は、
前記第1のセンサから前記キャリア流体における前記マーカーの濃度に関するデータを取得するステップ、並びに
前記第1のセンサから取得したデータに基づいて、前記キャリア流体及び前記汗サンプルの一方又は両方の流量を決定するステップ
を有する。
【0023】
幾つかの実施形態において、前記方法は、前記キャリア流体及び前記汗サンプルの一方又は両方の流量に基づいて、前記汗サンプルにおけるバイオマーカーの濃度を決定するステップを有する。
【0024】
幾つかの実施形態において、前記バイオマーカーは、Na、K、Cl-、尿素、エタノール、グルコース、乳酸イオン、アンモニウムイオン又はコルチゾールの1つ以上を有する。
【0025】
幾つかの実施形態において、前記方法は、
生理学的センサから被験者に関する生理学的データを取得するステップ、及び
前記取得した生理学的データに基づいて、前記キャリア流体の流量を調整するステップ
を有する。
【0026】
第3の態様に従って、被験者の皮膚から得られる汗サンプルにおけるバイオマーカーを定量的に検出するためのシステムが提供され、前記システムは、
本明細書に記載されるようなウェアラブル装置、及び
処理器
を有し、前記処理器は、
前記ウェアラブル装置の第1のセンサからデータを取得し、前記第1のセンサから取得したデータは、前記キャリア流体におけるマーカーの濃度を有する、
前記ウェアラブル装置の第2のセンサからデータを取得し、並びに
前記第1及び第2のセンサからのデータに基づいて、汗サンプルにおけるバイオマーカーの濃度を決定する
ように構成される。
【0027】
幾つかの実施形態において、前記処理器は、キャリア流体におけるマーカーの濃度に基づいて、発汗量を決定するように構成される。
【0028】
第4の態様に従って、コンピュータ可読媒体を有するコンピュータプログラム製品が提供される。前記コンピュータ可読媒体は、この媒体に具体化されるコンピュータ可読コードを有する。前記コンピュータ可読コードは、適切なコンピュータ又は処理器により実行されるとき、このコンピュータ又は処理器が上述した方法を行うように構成される。
【0029】
上述した態様及び実施形態に従って、既存の技術の制約を対処する。特に、上述した態様及び実施形態に従って、被験者からの汗サンプルにおけるバイオマーカーの量は、この被験者が激しく運動すること又は高温にいることを必要とせずに、信頼でき、迅速に検出されることができる。特に、被験者は、単に軽い運動(例えばリハビリテーション又は単なる歩行)を行うか、又は単に僅かな温度の上昇に曝されることができ、被験者の汗におけるバイオマーカーの量は、比較的低い発汗量にもかかわらず決定されることができる。上述した態様及び実施形態は、非常に低い発汗量であるにもかかわらず、室温で完全に休息している被験者にも適している。上述した態様及び実施形態に従うバイオマーカーの濃度の検出は、被験者にとって便利であり、快適であり、非侵襲性である。前記装置におけるキャリア流体の使用は、汗サンプルが少量の液体であっても、汗サンプルのより迅速で、より効率的な収集を可能にし、分析前の汗の蒸発も防ぐ。汗におけるバイオマーカーの濃度は、前記第1のセンサから得られるデータからの希釈係数(汗によるキャリア流体の希釈)に基づいて決定される。従って、被験者の皮膚から得られる汗サンプルにおいてバイオマーカーを定量的に検出するための改良された装置、方法及びシステムが提供される。
【0030】
これらの態様及び他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかであり、それらを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
例示的な実施形態は、以下の図面を参照して、単に例として記載される。
図1図1は、一実施形態による装置を示す。
図2図2は、一実施形態による装置を示す。
図3図3は、一実施形態による装置を示す。
図4図4は、一実施形態による装置を示す。
図5図5は、一実施形態による方法を示すフローチャートである。
図6図6は、一実施形態によるシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
上記したように、本明細書において、被験者の皮膚から得られる汗サンプルにおいてバイオマーカーを定量的に検出するための改良される装置、システム及び方法が提供される。この装置は、被験者が着用するように構成され得る。従って、この装置は、ウェアラブル装置とすることができる。
【0033】
幾つかの実施形態において、前記装置は、当該装置が被験者から汗のサンプルを入手するのに適した位置に着用されるように、被験者の身体の一部の周りに配置するためのストラップ(又はバンド)を有する。幾つかの実施形態において、被験者の皮膚に前記装置を固定するために、この装置の底面に接着層が設けられる。
【0034】
前記装置は、汗サンプルを収集するのに適した、被験者の身体上の何れかの位置において被験者が着用するように構成されてもよい。幾つかの実施形態において、前記位置は、(例えば、皮膚との明確な接触を確実にするために)皮膚表面の近くに骨を有する位置でもよい。例えば、幾つかの実施形態において、前記装置は、被験者の腕部(上腕又は前(下)腕)、被験者の手首若しくは指、被験者の額、又は汗サンプルを収集するのに適した、被験者の身体上の他の何れかの位置の上に着用されるように構成される。
【0035】
被験者は、如何なる種類の被験者(例えば、患者又は他の何れかの被験者)であり得る。前記装置は、訓練を受けたユーザ、例えば医療専門家(例えば、医師、看護師又は他の何れかの医療専門家)、又は訓練を受けていないユーザ(例えば、被験者自身、介護者、家族又は他の何れかの訓練を受けていないユーザ)が使用するためのものである。前記装置は、医療環境(例えば、病院、手術室又は他の何れかの医療環境)及び/又は非医療環境(例えば、家又は他の何れかの非医療環境)において使用するためのものである。
【0036】
図1は、一実施形態に従う、被験者からの汗サンプルにおいてバイオマーカーを定量的に検出するための装置100を示す。図1に示されるように、装置100は、マイクロ流体ネットワークを有する。マイクロ流体ネットワークは、特定の構成要素と共に示され、その構成要素の各々は、以下に順番に説明される。しかしながら、この装置は、図1に示されない他の構成要素、例えば、マイクロ流体ネットワークにおける他の流路、ポンプ或いは又は弁、又はマイクロ電子回路を有することが理解される。同様に、ポンプに給電する電線、ポンプのアクチュエータ、センサを接続する電線、ADC、電子論理回路及び外部と(有線又は無線で)通信する電子機器は、描かれていない。
【0037】
センサ及び可撓性マイクロ電子回路を具備する可撓性マイクロ流体ネットワークを含む上記ウェアラブル装置を構築する方法は、Gao等著、Nature 529,509‐514(2016)に記載されるように、当技術分野において周知である。
【0038】
図1に示されるように、装置100のマイクロ流体ネットワークは、既知の(すなわち、既定の)濃度のマーカーを含むキャリア流体で事前に満たされるリザーバ102、前記リザーバより下流に配され、被験者の皮膚と接触し、汗サンプルを収集するように適応するサンプル収集チャンバ104、前記サンプル収集チャンバ104より下流に配され、前記マーカーを検出するように適応する第1のセンサ106、及び前記第1のセンサ106より下流に配され、前記バイオマーカーを検出するように適応する第2のセンサ108を有する。
【0039】
リザーバ102は、既知の量のキャリア流体で事前に満たされてもよい。このキャリア流体は、任意の不活性液体、例えば、水性液体又は有機溶媒でもよい。ある実施形態において、キャリア流体は、収集される汗サンプルとの混和性(miscibility)及び収集される汗サンプルに存在する何れかのバイオマーカーの良好な溶媒和(solvation)を確実にするための水性流体である。キャリア流体を使用するさらなる利点は、完全に濡れているため、皮膚の水分蒸発であるTEWLが、前記装置のサンプル収集チャンバには起こらないという事実である。その結果、TEWLによる汗の希釈は起こらない。幾つかの実施形態において、リザーバ102は、装置100の想定される使用寿命の間、十分なキャリア流体を保持するように寸法が決められてもよい。例えば、30nL/分のキャリア流体の流量で3日間の想定される使用に対し、リザーバ102は、150μLのキャリア流体を保持するように寸法が決められる。
【0040】
本明細書に記載されるウェアラブル装置は、図1において104として示されるサンプル収集チャンバも含む。図1の実施形態において、複数のサンプル収集チャンバが存在し、これらは、並列に接続され、マニホールド120を介してキャリア流体が供給される。複数のサンプル収集チャンバの各々の位置及びサイズは、数多くの要因に依存して選択されてよい。ある実施形態において、前記複数のサンプル収集チャンバの各々は、ウェアラブル装置を着用している被験者の少なくとも1つの汗腺の上に置かれるように、寸法が決められ、この装置内に位置決められる。サンプル収集チャンバ104は、リザーバの下流に配され、被験者の皮膚と接触し、汗サンプルを収集するように適応する。ある実施形態において、サンプル収集チャンバは、前記装置の底面に開口又はポートを有し、被験者の皮膚と密接な接触を形成する。このように、キャリア流体がマイクロ流体ネットワーク内を流れることにより、サンプル収集チャンバ104に隣接する皮膚の表面に生じる任意の汗サンプルが、毛細管現象により装置のマイクロ流体ネットワーク内に吸い込まれる。
【0041】
図1に見られるように、3段弁ポンプ118が、リザーバ102とサンプル収集チャンバ104との間に配される。このタイプの3段弁の組合せは、当技術分野において周知であり、各弁が他の弁とは独立して作動可能である。このように、ポンプ118の3つの弁の動作は、マイクロ流体ネットワーク内においてキャリア流体の流れを生じさせる。
【0042】
第1のセンサ106及び第2のセンサ108は、サンプル収集チャンバ104より下流にある。第1のセンサ106は、キャリア流体に存在するマーカーを検出するように適応するのに対し、第2のセンサ108は、汗サンプルに存在する(従って、キャリア流体に存在する)バイオマーカーを検出するように適応する。
【0043】
マーカーは、キャリア流体に溶解し、例えば電気又は光検知原理により検出可能である、何れかの検出可能なマーカーである。例えば、マーカーは、コロイド粒子、例えば、(ウシ血清アルブミンのような部分で覆われる)ポリスチレン粒子、コロイド状炭素若しくは金、又は検出可能なラテックス微小球(latex microsphere)を有するコロイドマーカーである。不活性コロイド粒子が検出されることができ、それらの濃度(例えば、体積当たりの粒子数)は、(光)散乱、蛍光、電気インピーダンスを含む様々な既知のセンサ及び技術を用いて、並びにカメラを用いて光学的に決定される。例えば、LEDにより生成される、流体チャネルを横切る光ビームが、そのような光検知を行うことができる。反対側には、粒子濃度の尺度として光吸収を測定する光学検出器が配される。マーカーは、色素、例えばフルオレセイン(fluorescein)、ローダミン(rhodamine)のような蛍光色素又はキャリ流体に溶解する他の何れかの色素である。色素は、当技術分野において周知であり、特定の波長の光で特定の吸光度及び/又は発光を持つことが知られ、電磁的検出にとって、それらを理想的なものにする。マーカーは、例えば電気化学ベースのセンサにおいて信号を生成する化合物により、マーカーを検出可能にし、その濃度を測定可能にする特定の性質を持つ化合物でもよい。検出可能なマーカーを選択し、そのマーカーに敏感である及び/又は特異的であるセンサを提供することは、十分に当業者の範囲内である。本発明に従って、第1のセンサ106は、上述する十分に確立された技術の何れかを使用して、キャリア流体におけるマーカーの濃度を測定するように適応する。
【0044】
マーカーは、キャリア流体において既定の濃度で存在する。既定の濃度のマーカーを使用することにより、キャリア流体が汗サンプルにより希釈される結果としてのマーカーの濃度の如何なる経時的な変化も監視することが可能になる。次に、これは、発汗量及び汗サンプル内にある何れかのバイオマーカーの濃度の決定を可能にする。汗中のバイオマーカーの濃度は、1汗腺当たりの平均発汗量に依存することが知られており、従って、発汗量の知識を持つことが、より正確な診断を可能にする。
【0045】
第2のセンサ108は、キャリア流体によってサンプル収集チャンバ104に取り込まれた汗サンプルにより、キャリア流体内のバイオマーカーの存在を検出するように適応する。幾つかの実施形態において、バイオマーカーは、Na、K、Cl、尿素、エタノール、グルコース、乳酸イオン、アンモニウムイオン或いはコルチゾールの1つ以上を有するか又はこれらから選択される。これらの各々を検出するためのバイオセンサは、例えばGao他著、Nature 529, 509-514(2016)に記載されるように、当技術分野において周知であり、必要に応じて、データを外部処理器にワイヤレス送信するために構成され得る。
【0046】
幾つかの実施形態において、前記装置は、0.03nL/分/汗腺から20nL/分/汗腺までの発汗量でバイオマーカーを検出するように構成される。例えば、幾つかの実施形態において、前記装置は、0.03nL/分/汗腺から0.7nL/分/汗腺までの発汗量でバイオマーカーを検出することができ、これは、セデンタリー(sedentary)状態の被験者の一般的な発汗量に対応する。セデンタリー状態という用語は、被験者が軽い運動(例えば、リハビリテーション)、軽い労働(例えば、歩行)及び/又は体温を僅かに上げることを行うことを意味すると理解される。幾つかの実施形態において、前記装置は、5nL/分/汗腺から20nL/分/汗腺までの発汗量でバイオマーカーを検出するように構成されることができ、これは、より激しい運動又は肉体労働を行う被験者の一般的な発汗量に対応する。
【0047】
0.03nL/分/汗腺の発汗量で、10本の発汗腺からの汗の取り込む場合、総発汗量は0.3nL/分である。これは、キャリア流体の流量を30nL/分に設定するとき、1%まで(~1%)の希釈となる。その結果、皮膚の汗をサンプリングしてから実際に検知するまでの時間は、27時間まで(~27時間)から約16分に短縮される。これは、臨床的に重要なバイオマーカーの変化を初期段階で検出するのに適切な時間である。最大発汗量が20nL/分/汗腺(激しい運動)と仮定すると、総発汗量は、200nL/分であり、この場合、キャリア流体の希釈は7.7倍まで(~7.7倍)である。従って、希釈されていないキャリア流体が、約4000レベルの信号を構成するとき、希釈される信号は、約535レベルであり、これは依然として、第1のセンサ106により正確に測定されることが可能である。後者の場合、皮膚の汗をサンプリングしてから実際に検知するまでの時間は、約2分である。従って、幾つかの実施形態において、ポンプ118は、10nL/分から60nL/分までの既定の流量でキャリア流体を汲み出すように動作可能である。幾つかの実施形態において、ポンプ118は、30nL/分の既定の流量でキャリア流体を送り出すように動作可能である。
【0048】
幾つかの実施形態(図示せず)において、マイクロ流体ネットワークは、第1のセンサより下流に配される1つ以上の追加のセンサを含み、これら1つ以上の追加のセンサの各々は、異なるバイオマーカーを検出するように適応する。
【0049】
本明細書、例えば図1の実施形態に記載されるウェアラブル装置において、第1のセンサ106及び第2のセンサ108の下流には、廃棄チャンバ112に通じる出口チャネル110がある。廃棄チャンバ112は、装置の想定される使用(例えば、3日)、使用中に装置によって送り出されるキャリア流体の流量、及び平均発汗量に基づいて寸法が決られることができる。例えば、廃棄チャンバ112は、少なくとも225μLの流体を保持するように寸法が決められる。出口チャネル110にある弁114は、必要であれば、キャリア流体がセンサの近くで滞留する時間が長くなるように、(汗サンプルを含む)キャリア流体の流量を制御する。リザーバ102から廃棄チャンバ112へのキャリア流体の流れを考慮して、弁122により制御され、マイクロ流体ネットワークの圧力を均一化するために設けられる空気管116が、ウェアラブル装置100のマイクロ流体ネットワークを完成する。
【0050】
使用時、被験者の皮膚に装置100を固定した後、3段弁ポンプ118が稼働し、リザーバ102からマニホールド120を介してサンプル収集チャンバ104に向けてキャリア流体を運び始める。真空を防ぐために、空気管116に置かれる弁122が開かれ、同時に、出口チャネル110にある弁114が開かれ、リザーバ102内のキャリア流体を空気で置き換えることを可能にする。その後、キャリア流体は、サンプル収集チャンバ104に置かれる皮膚の上を流れ、それにより、発生した汗を吸収する。その後、キャリア流体は、さらに移動し、廃棄チャンバ112に入る前に、第1のセンサ106及び第2のセンサ108に到達する。
【0051】
幾つかの実施形態において、装置100は、第1のセンサ106及び第2のセンサ108の一方又は両方から1つ以上の信号を受信するマイクロ電子部品をさらに有する。例えば、装置100は、1つ以上のアナログ-デジタル変換器(ADC)を有し、このADCは、受信したアナログ信号を変換し、その信号をデジタル信号に変換して、ノイズを減らし、この信号を本明細書に記載されるようなシステムの処理器がより入手し易くさせる。十分に正確なADC(例えば、12ビット)を用いる場合、ダイナミックレンジをカバーするために、4096レベルが利用可能である。キャリア流体が1%希釈されるとき、第1のセンサ106による濃度測定を介してこの変化を記録するのに十分なレベル(~40)が利用可能である。ノイズが40レベルほどである場合、2%の変化を識別するのに十分な精度がある。従って、ノイズは、上述した検知原理で達成可能である約1%又はそれ以下にすべきである。
【0052】
図2は、一実施形態に従う、被験者からの汗サンプルにおけるバイオマーカーを定量的に検出するためのさらなる装置200を示す。装置200は、以下の説明から分かるように、図1の装置と比較すると、多くの同様の特徴を有する。図1の実施形態に関連して、例えばキャリア流体又はセンサの性質を含むこれらの同様の特徴についての説明は、図2の実施形態にも同様に適用可能であることが理解されるので、これらの説明を繰り返さない。
【0053】
図2に示されるように、装置200のマイクロ流体ネットワークは、既知の(すなわち、既定の)濃度のマーカーを含むキャリア流体で再び事前に満たされるリザーバ202、このリザーバより下流に配され、被験者の皮膚と接触し、汗サンプルを収集するように適応するサンプル収集チャンバ204、サンプル収集チャンバ204より下流に配され、マーカーを検出するように適応する第1のセンサ206、及び第1のセンサ204より下流に配され、バイオマーカーを検出するように適応する第2のセンサ208を有する。
【0054】
図1の実施形態と同様に、複数のサンプル収集チャンバが、ウェアラブル装置200内に存在し、これらのチャンバは、並列に接続され、マニホールド220を介してキャリア流体が供給される。図2に見られるように、3段弁ポンプ218が、リザーバ202とサンプル収集チャンバ204との間に配される。サンプル収集チャンバ204より下流には、図1の実施形態の第1のセンサ106及び第2のセンサ108に夫々対応する第1のセンサ206及び第2のセンサ208がある。
【0055】
図2の実施形態において、第1のセンサ206及び第2のセンサ208の下流には、廃棄チャンバ212に通じる出口チャネル210がある。出口チャネル210にある弁214は、必要であれば、キャリア流体がセンサの近くで滞留する時間が長くなるように、(汗サンプルを含む)キャリア流体の流量を制御する。図2の実施形態は、第1及び第2のセンサより下流にあるマイクロ流体ネットワークの部分から、リザーバとサンプル収集チャンバとの中間にあるマイクロ流体ネットワークの部分まで延在する再循環チャネルも含み、この再循環チャネルへのアクセスは、出口チャネル210にある追加の弁224により制御される。弁224の閉鎖は、キャリア流体が廃棄チャンバ212に流れるのを防ぎ、3段弁ポンプ228を備える追加の分流路226の形態の再循環チャネルにキャリア流体をそらす。分流路226は、サンプル収集チャンバ204より上流であるが、リザーバ202及び3段弁ポンプ218より下流にあるマイクロ流体ネットワークに再結合する。本実施形態は、サンプル収集チャンバ204を通るキャリア流体の再循環を可能にし、それにより、複数の汗サンプルを収集し、キャリア流体が第2のセンサ208を通るとき、キャリア流体におけるバイオマーカーの相対濃度を上げるので、有利である。汗がセンサに適時に到着する、及び混合性が向上することに加え、流体におけるマーカーは、センサを数回通るので、センサに結合する機会が増え、検出限界を向上させる。作動中、キャリア流体がメイン流路を満たし、センサ206及び208の後ろに位置決められる弁224を閉じて、同時に、メイン流路にあるポンプ218を閉鎖配置に設定することによって、メイン流路が一時的に遮断された後、追加の分流路226(分流路にあるポンプ228)が開放に設定される。次いで、分流路226にあるポンプ228は、センサ206及び208とサンプル収集チャンバ204との間に、通例は数分間、再循環を形成する。追加の複数の汗サンプルの量を収容するために、分流路226は、可撓性又は柔軟性材料内に形成されてもよく、従って、分流路に可撓性の弾性内面を与える。リザーバ202から廃棄チャンバ212へのキャリア流体の流れを考慮して、弁222により制御され、マイクロ流体ネットワークの圧力を均一化するために設けられる空気管216が、ウェアラブル装置100のマイクロ流体ネットワークを完成する。
【0056】
図3は、一実施形態に従う、被験者からの汗サンプルにおけるバイオマーカーを定量的に検出するためのさらなるウェアラブル装置300を示す。装置300は、以下の説明から分かるように、図1及び図2の装置と比較すると、多くの同様の特徴を有する。図1及び図2の実施形態に関連して、例えばキャリア流体又はセンサの性質を含むこれらの同様の特徴についての説明は、図3の実施形態にも同様に適用可能であると理解されるので、これらの説明を繰り返さない。
【0057】
図3に示されるように、装置300のマイクロ流体ネットワークは、既知の(すなわち、既定の)濃度のマーカーを含むキャリア流体で再び事前に満たされるリザーバ302、このリザーバより下流に配され、被験者の皮膚と接触し、汗サンプルを収集するように適応するサンプル収集チャンバ304、サンプル収集チャンバ304より下流に配され、マーカーを検出するように適応する第1のセンサ306、及び第1のセンサ304より下流に配され、バイオマーカーを検出するように適応する第2のセンサ308を有する。
【0058】
図3の実施形態において、第1のセンサ306及び第2のセンサ308の下流には、廃棄チャンバ312に通じる出口チャネル310がある。出口チャネル310にある弁314は、必要であれば、キャリア流体がセンサの近くで滞留する時間が長くなるように、(汗サンプルを含む)キャリア流体の流量を制御する。図2の実施形態と同様に、図3の実施形態は、出口チャネル310において追加の弁324も含む。弁324の閉鎖は、キャリア流体が廃棄チャンバ312に流れるのを防ぎ、上述したように作動可能な3段弁ポンプ328を備える追加の分流路326にキャリア流体をそらす。分流路326は、サンプル収集チャンバ304より上流であるが、リザーバ302及び3段弁ポンプ318より下流にあるマイクロ流体ネットワークに再結合し、上述したようなキャリア流体の再循環を可能にする。リザーバ302から廃棄チャンバ312へのキャリア流体の流れを考慮して、弁322により制御され、マイクロ流体ネットワークの圧力を均一化するために設けられる空気管316が、ウェアラブル装置300のマイクロ流体ネットワークを完成する。
【0059】
図3の実施形態は、図1及び図2に見られる複数の小さなサンプル収集チャンバの代わりに、単一の大きなサンプル収集チャンバ304が設けられるという点で、図1及び図2の実施形態と異なる。この実施形態において、サンプル収集チャンバ304は、約11mmの直径を持つ、約1平方センチメートルの表面領域を有する。サンプル収集チャンバ304は、約100μmの内部高を持ち、マイクロ流体ネットワークのマイクロ流体チャネルの量をはるかに超える約7000nLの内部容積を与える。
【0060】
一般的な発汗量は、極端に低い(0.03nL/分/汗腺)から高い、激しい運動(20nL/分/汗腺であるが、24時間の平均5.2nL/分/汗腺である)までの範囲となる。さらに、平均して、皮膚の1平方センチメートル当たり約100個の能動汗腺が存在し、従って、例えばサンプル収集チャンバ304のような大きな収集チャンバを利用することにより、平均発汗量は、3nL/分から520nL/分までの範囲となる。その結果、キャリア流体がない場合、充填時間は、約39時間から13.5分までの範囲となる。再び、少ない発汗量では、これは許容できない。説明されるようなキャリア流体を使用することにより、300nL/分のキャリア流体の流量で、サンプル収集チャンバ304の充填時間は、23分から8.6分までの範囲となる。再び、72時間使用する場合、廃棄領域が収容しなければならない最大量は約3.5mLである。この場合、典型的な廃棄領域の寸法は、(図3の水平方向の)長さが約2.3cm、(図3の垂直方向の)幅が3cm、及び(図3には示されない)高さが5mmである。効率的な混合を可能にするために、図3に描かれる実施形態において、再循環ループは、追加の分流路326として示される。
【0061】
図4は、一実施形態に従う、被験者からの汗サンプルにおけるバイオマーカーを定量的に検出するためのさらなるウェアラブル装置400を示す。装置400は、上述した実施形態と比較すると、多くの同様の特徴を有し、これらの実施形態に関連して、例えばキャリア流体又はセンサの性質を含むこれらの同様の特徴についての説明は、図4の実施形態にも同様に適用可能であると理解されるので、これらの説明を繰り返さない。
【0062】
図4の実施形態において、バイオマーカーに対して選択的である膜436が、サンプル収集チャンバ404より下流であり、第1及び第2のセンサ406及び408より上流に配される。言い換えれば、リザーバ402から第1及び第2のセンサ406及び408へのマイクロ流体の流路は、膜436によりサンプル収集チャンバ404から分離される。膜436は、十分な速さの充填時間を可能にしつつ、憂慮すべき成分、例えば他のバイオマーカー、皮脂及び皮膚上の成分がキャリア流体に入ることを防ぐ。従って、第2のセンサが所望するバイオマーカーの測定は、憂慮すべき影響を受けることなくキャリア流体において行われることができ、それにより、測定の特異性を増大させる。この場合、充填後、キャリア流体が循環ループ内に留まり、膜436を通過する所望のバイオマーカーの濃度は、キャリア流体内において徐々に増大する。幾らかの追加の液体が、再循環するキャリア流体に入ることができ、これら追加の液体は、再循環チャネル内の弾性部分(図示せず)により収容される。膜436は、以下の機能、サイズ排除(size exclusion)、親水性又は疎水性成分に対する選択性及び/又はイオンに対する選択性(例えば、浸透膜)を有してもよい。
【0063】
図2及び3の実施形態のような再循環ループ及び出口チャネルに加えて、図4の装置は、本実施形態ではキャリア流体を収集するだけの廃棄チャンバ412aを備える。廃棄チャンバ412aは、リザーバ402に戻る、圧力を均一化する空気管416を具備し、再循環ループ/分流路ができるだけ多く充填されることを確実にするために、上述した実施形態の廃棄チャンバよりも小さい容積である。装置400は、通気孔434を具備する汗廃棄チャンバ412bに通じる汗オーバーフローチャネル430も具備する。通気孔434は、例えば、疎水性膜から形成される。汗オーバーフローチャネル430への入口点は、サンプル収集チャンバ404からであり、従って、膜436の上流である。幾つかの実施形態において、膜436の下で集められる汗が限定的であり、マイクロ流体の量の増大が、弾性的に変形可能な膜及び再循環ループの弾性的に変形可能な内面により収容される場合、汗廃棄チャンバ412bは省略されてもよい。
【0064】
図5は、被験者の皮膚と接触しているウェアラブル装置を使用して、被験者からの汗サンプルにおけるバイオマーカーを定量的に検出するための方法500を示すフローチャートである。ウェアラブル装置は、例えば図1から図4を参照して、本明細書に記載されるような何れかのウェアラブル装置でもよい。ブロック502において、既定量のマーカーを含むキャリア流体が、ウェアラブル装置のサンプル収集チャンバに送り出され、ここでサンプル収集チャンバは、被験者の皮膚と接触し、汗サンプルを収集するように適応する。ブロック504において、マーカー及び汗サンプルを含むキャリア流体が、サンプル収集チャンバから第1及び第2のセンサに送り出され、これらはウェアラブル装置上にある。ブロック506において、キャリア流体中にあるマーカーの濃度に関するデータが、第1のセンサから取得される。ブロック508において、第2のセンサからバイオマーカーに関するデータが取得される。ブロック510において、汗サンプルにおけるバイオマーカーの濃度が、第1及び第2のセンサからの前記データに基づいて決定される。
【0065】
幾つかの実施形態において、前記方法は、廃棄チャンバへのキャリア流体(及び汗サンプル)の流れを遮断するステップ、並びにキャリア流体(及び汗サンプル)をサンプル収集チャンバ並びに第1及び第2のセンサに再循環させるステップを含む。
【0066】
幾つかの例において、前記方法は、汗サンプルの収集を容易にするために、サンプル収集チャンバにおいて又はサンプル収集チャンバの近位でエレクトロウェッティングプロトコルを動作させるステップを有する。
【0067】
幾つかの実施形態において、前記方法は、第1のセンサから取得したデータに基づいて、キャリア流体及び汗サンプルの一方又は両方の流量を決定するステップを有する。幾つかの実施形態において、汗サンプルにおけるバイオマーカーの濃度は、キャリア流体及び汗サンプルの一方又は両方の流量に基づいて決定される。
【0068】
幾つかの実施形態において、前記方法は、汗希釈係数を決定するステップを有し、この汗希釈係数から発汗量が決定される。特定のバイオマーカーに対し、第2のセンサにより測定されるような汗の濃度が、1汗腺当たりの平均発汗量に依存するので、発汗量は適切である。その結果、ルックアップテーブルを介して、測定されるバイオマーカーの濃度が病気により引き起こされた又は単に発汗量の変化により引き起こされたかを確認することができる。
【0069】
汗希釈係数Dsは、
Ds=1/(1-Cm/Cr) 式1
により決定され、ここで、Cmは、第1のセンサにより測定されるマーカーの濃度であり、Crは、希釈されていないキャリア流体におけるマーカーの事前に既定される濃度である。
【0070】
希釈されていない汗サンプルにおけるバイオマーカーの濃度(すなわち、診断を行うことを可能にする臨床的に重要な濃度)は、汗希釈係数を使用して、キャリア流体及び汗サンプルの組み合わせにおける、このバイオマーカーの測定される濃度から得られることが明らかである。
【0071】
加えて、総発汗量Qs(単位時間当たりの量)は、
Qs=[1/(Ds‐1)]*Qc 式2
により決定され、ここで、Qsは、汗腺のポンプ作用により生成され、Qcは、ポンプのポンプ作用により生成されるキャリア流体の既知の設定される流量である。
【0072】
さらに、皮膚のサンプリングと汗アリコートの実際の測定との間の時間遅延ΔTは、
ΔT=V/(Qs+Qc) 式3
により定義され、ここで、Vはマイクロ流体の構造の量である。
【0073】
幾つかの実施形態において、前記方法は、10nL/分から60nL/分までの既定の流量でキャリア流体を送り出すように、マイクロ流体ネットワークにおける1つ以上のポンプを制御するステップを有する。幾つかの例において、前記ポンプは、20nL/分から50nL/分までの既定の流量、例えば25nL/分から40nL/分まで、例えば約30nL/分でキャリア流体を送り出すように構成される。
【0074】
幾つかの実施形態(図示せず)において、前記方法は、生理学的センサから被験者の生理学的データを取得するステップ、及び取得された生理学的データに基づいて、キャリア流体の流量を調整するステップを有する。そのような生理学的センサの例は、心拍数モニター、血圧モニター、体温計又は温度プローブ、若しくは当技術分野で周知である他の何れかの生理学的センサを含む。
【0075】
幾つかの実施形態において、前記方法は、排出される汗の量に基づいて、キャリア流体の流量を適応させるステップを有する。上述したように、汗の生成は、~0.03nL/分/汗腺まで(~0.03nL/分/汗腺)から20nL/分/汗腺まで(~20nL/分/汗腺)と大きさに2~3桁の差がある。後者の場合、十分な汗(200nL/分)が排出され、妥当な期間に汗の分析を可能にするので、希釈の必要がないことは明らかである。この実施形態において、汗に加えられるキャリア流体(すなわち、希釈剤)の量は、生理学的センサの測定に基づいて、排出される汗の量に従って適応する。これは、生理学的センサの測定に基づいて、リザーバとサンプル収集チャンバとの間に配される3段弁ポンプの動作を制御することにより達成される。前記生理学的センサは、i)人の活動レベル及び活動強度を測定する例えば加速度計のような慣性センサ、ii)発汗量の増大とともに増大することが知られている汗のpHを測定するpHセンサ、iii)人の心拍数及び呼吸数を測定する例えばPPG(PhotoPlethysmoGram)センサのようなバイタルサインセンサ、並びにiv)発汗量センサ、の何れか1つとすることができる。全ての場合において、激しい活動が検出される場合、キャリア流体の流量の量は、3段ポンプの弁の制御により動的に減少する。キャリア流体の流量の減少は、汗の排出量の増大に反比例して増減(scaling)することができる。本実施形態の重要な利点は、i)汗の希釈を必要としないという状況で、希釈剤の不必要な枯渇を防ぎ、これはパッチの寿命を延ばす、及びii)希釈剤及び廃棄流体のためのリザーバをより小さくし、よりコンパクトなパッチの設計を可能にする、と2つある。
【0076】
図6は、一実施形態に従う、被験者からの汗サンプルにおけるバイオマーカーを定量的に検出するためのシステム600を示す。システム600は、上述したような装置100を有する。図6のシステムの装置100は、例えば図1から図4の何れかに示される装置の何れかを含む、本明細書に記載される何れかの装置であり得ることが理解される。システム600は、第1のセンサからキャリア流体におけるマーカーの濃度に関するデータを取得するために、本明細書に記載されるように構成される処理器602も有し、以下の要素、生理学的センサ604、メモリ606及び/又はユーザインターフェース608の1つ以上を有し、これら要素の各々は、例えば、本明細書に記載されるものでもよい。幾つかの実施形態において、装置100自体が、処理器602、並びに以下の要素、生理学的センサ604、メモリ606及び/又はユーザインターフェース608の1つ以上を有してもよい。その代わりに又はそれに加えて、幾つかの実施形態において、処理器602又は第2の処理器が、装置100の外部に(例えば、装置100と分離して又は装置100から遠隔に)あってもよい。これらの実施形態において、処理器は、装置100に通信可能に結合され得る。
【0077】
1つの処理器について言及されていたとしても、処理器は、1つ以上の処理器から構成されてよいことが理解される。1つ以上の処理器は、本明細書に記載される様々な機能を実行するために、ソフトウェア及び/又はハードウェアを用いて、多数の方法で実装されることができる。幾つかの実施形態において、前記1つ以上の処理器の各々は、本明細書に記載される方法の個々のステップ又は複数のステップを行うように構成されることができる。特定の実装において、前記1つ以上の処理器は、各々が、本明細書に記載される方法の個々のステップ又は複数のステップを行うように構成される、又は行うための複数のソフトウェアモジュール及び/又はハードウェアモジュールを有することができる。前記1つ以上の処理器は、1つ以上のマイクロプロセッサ、1つ以上のマルチコアプロセッサ及び/又は1つ以上のデジタル信号プロセッサ(DSP)、1つ以上の処理ユニット、及び/又は1つ以上の制御器(例えば、1つ以上のマイクロコントローラ)を有し、これらは本明細書に説明される様々な機能を行うように(例えば、ソフトウェア又はコンピュータプログラムコードを使用して)構成又はプログラムされる。前記1つ以上の処理器は、幾つかの機能を行うための専用ハードウェア(例えば、増幅器、前置増幅器、アナログ・デジタル変換器(ADC)及び/又はデジタル・アナログ変換器(DAC))と、他の機能を行うための1つ以上の処理器(例えば、1つ以上のプログラムされたマイクロプロセッサ、DSP及び関連回路)との組合せとして実装される。
【0078】
幾つかの実施形態において、処理器602は、本明細書に説明される1つ以上の方法を行うために、本明細書に説明されるような装置の1つ以上のポンプ及び弁の動作を制御するように構成される。
【0079】
幾つかの実施形態において、処理器602は、ウェアラブル装置の第1のセンサからデータを取得する、ウェアラブル装置の第2のセンサからデータを取得する、並びに第1及び第2のセンサからのデータに基づいて、汗サンプルにおけるバイオマーカーの濃度を決定するように構成される。
【0080】
幾つかの実施形態において、第1のセンサから取得されるデータは、キャリア流体におけるマーカーの濃度を有し、処理器は、キャリア流体における前記マーカーの濃度に基づいて発汗量を決定するように構成される。
【0081】
幾つかの実施形態において、処理器602は、第1のセンサから取得されるデータに基づいて、キャリア流体及び汗サンプルの一方又は両方の流量を決定するように構成される。幾つかの実施形態において、汗サンプルにおけるバイオマーカーの濃度は、キャリア流体及び汗サンプルの一方又は両方の流量に基づいて決定される。
【0082】
幾つかの実施形態において、処理器602は、汗希釈係数を決定するように構成され、この汗希釈係数から発汗量を決定することができる。特定のバイオマーカーに対し、第2のセンサにより測定されるような汗の濃度が、1汗腺当たりの平均発汗量に依存するので、発汗量は適切である。幾つかの実施形態において、処理器602は、取得及び/又は決定したデータをルックアップテーブルの対応するデータの組と比較し、測定されるバイオマーカーの濃度が病気により引き起こされた又は単に発汗量の変化により引き起こされたかを決定するように構成される。
【0083】
幾つかの実施形態において、前記システムは、前記方法に関連して上述したような生理学的センサ604を有する。そのようなセンサ、例えばバイタルサインセンサ、加速度計及びpHセンサは、発汗量に影響を及ぼす又は発汗量の変化を示すことができる他の係数の監視を可能にする。
【0084】
幾つかの実施形態において、前記システムは、通信インターフェース(又は通信回路)を有する。幾つかの実施形態において、上述した装置が、通信インターフェースを有してもよい。その代わりに又はそれに加えて、前記通信インターフェースは、装置の外部に(例えば、装置と分離して又は装置から遠隔に)あってもよい。前記通信インターフェースは、前記装置又は装置の構成要素が、例えば本明細書に説明される構成要素の何れかのような、前記システムの1つ以上の他の構成要素(例えば、1つ以上のセンサ、インターフェース、装置、処理器又はメモリ)と通信する及び/又は接続することを可能にするためのものである。例えば、前記通信インターフェースは、前記装置(又は例えば第1及び第2のセンサのような前記装置の1つ以上の構成要素)が、(例えば上述した)処理器と通信及び/又は接続することを可能にするためのものである。
【0085】
前記通信インターフェースは、前記装置又は前記装置の構成要素が、何れかの適切な方法で通信及び/又は接続することを可能にする。例えば、前記通信インターフェースは、前記装置又は前記装置の構成要素が、無線で、有線接続を介して又は他の何れかの通信(又はデータ転送)機構を介して、通信及び/又は接続することを可能にする。幾つかのワイヤレスの実施形態において、例えば、前記通信インターフェースは、通信及び/又は接続するために、前記装置又は装置の構成要素が、無線周波数(RF)、Bluetooth(登録商標)又は他の任意のワイヤレス通信技術を使用することを可能にする。
【0086】
幾つかの実施形態において、前記システムは、少なくとも1つのメモリ606を有する。幾つかの実施形態において、上述した装置は、少なくとも1つのメモリを有する。その代わりに又はそれに加えて、少なくとも1つのメモリ606は、装置の外部に(例えば、装置と分離して又は装置から遠隔に)あってもよい。例えば、病院データベースは、メモリを有し、このメモリは、クラウドコンピューティングリソース又は同様のものでもよい。前記装置(又は前記システムの処理器)は、少なくとも1つのメモリと通信及び/又は接続するように構成されてもよい。メモリは、何れかの種類の非一時的な機械可読媒体、例えばRAM(random access memory)、SRAM(static RAM)、DRAM(dynamin RAM)、ROM(read-only memory)、PROM(programmable ROM)、EPROM(erasable PROM)及びEEPROM(electrically erasable PROM)のような揮発性及び不揮発性のコンピュータメモリを含む、キャッシュ又はシステムメモリを有する。幾つかの実施形態において、少なくとも1つのメモリは、処理器(例えば前記装置の処理器)により、前記装置が本明細書に記載される方法で動作するように実行されるプログラムコードを記憶するように構成される。
【0087】
その代わりに又はそれに加えて、幾つかの実施形態において、少なくとも1つのメモリは、本明細書に記載される方法が必要とする又は本明細書に説明される方法から生じる情報を記憶するように構成される。例えば、幾つかの実施形態において、少なくとも1つのメモリは、本明細書に記載されるセンサの何れかにより取得されるデータ、キャリア流体におけるマーカーの既定の濃度或いはキャリア流体の既定の(又は適応する)流量に関するデータ、生理学的状態のインジケータとして発汗量及びバイオマーカーの濃度を相関させる1つ以上のルックアップテーブル、又は本明細書に記載される方法が必要とする又は本明細書に記載される方法から生じる他の如何なる情報、或いは情報の何れかの組み合わせの何れかの1つ以上を記憶するように構成される。幾つかの実施形態において、前記装置(又は前記システムの処理器)は、本明細書に記載される方法が必要とする又は本明細書に記載される方法から生じる情報を記憶するために、少なくとも1つのメモリを制御するように構成される。
【0088】
前記システムは、ユーザインターフェース608を有する。幾つかの実施形態において、上述した装置は、このユーザインターフェースを有する。その代わりに又はそれに加えて、前記ユーザインターフェースは、装置の外部に(例えば、装置と分離して又は装置から遠隔に)あってもよい。前記装置(又は前記システムの処理器)は、ユーザインターフェースと通信及び/又は接続するように構成されてもよい。幾つかの実施形態において、前記装置(又は前記システムの処理器)は、本明細書に記載される方法で動作するように前記ユーザインターフェースを制御するように構成されることができる。
【0089】
ユーザインターフェース608は、本明細書に記載される方法が必要とする又は本明細書に説明される方法から生じる情報を示す(又は出力、表示若しくは提供する)ように構成される。例えば、幾つかの実施形態において、前記ユーザインターフェースは、本明細書に記載されるセンサの何れかにより取得されるデータ、キャリア流体におけるマーカーの既定の濃度或いはキャリア流体の既定の(又は適応する)流量に関するデータ、生理学的状態のインジケータとして発汗量及びバイオマーカーの濃度を相関させる1つ以上のルックアップテーブル、又は本明細書に記載される方法が必要とする又は本明細書に記載される方法から生じる他の如何なる情報、或いは情報の何れかの組合せの何れかの1つ以上を示す(又は出力、表示若しくは提供する)ように構成される。その代わりに又はそれに加えて、ユーザインターフェース608は、ユーザ入力を受信するように構成されることができる。例えば、ユーザインターフェース608は、ユーザが情報又は命令を手動で入力する、装置100と相互作用する及び/又は装置100を制御することを可能にする。従って、前記ユーザインターフェースは、情報を示す(又は出力、表示若しくは提供する)ことを可能にする、及びその代わりに又はそれに加えて、ユーザがユーザ入力を提供することを可能にする如何なるユーザインターフェースでもよい。
【0090】
例えば、前記ユーザインターフェースは、1つ以上のスイッチ、1つ以上のボタン、キーパッド、キーボード、マウス、タッチスクリーン或いは(例えばタブレット、スマートフォン又は他の任意のスマートデバイスのようなスマートデバイス上の)アプリケーション、ディスプレイ或いはディスプレイスクリーン、例えばタッチスクリーンのようなグラフィカルユーザインターフェース(GUI)或いは他の如何なるのビジュアル構成要素、1つ以上のスピーカ、1つ以上のマイク或いは他の如何なるオーディオ構成要素、1つ以上のライト(例えば、発光ダイオード(LED)ライト)、触覚フィードバックを提供する構成要素(例えば、振動機能或いは他の如何なる触覚フィードバック構成要素)、拡張現実デバイス(例えば拡張現実グラス又は他の如何なる拡張現実デバイス)、スマートデバイス(例えば、スマートミラー、タブレット、スマートフォン、スマートウォッチ又は他の如何なるスマートデバイス)又は他の如何なるユーザインターフェース或いはユーザインターフェースの組合せを有する。幾つかの実施形態において、情報を示すように制御されるユーザインターフェースは、ユーザがユーザ入力を提供することを可能にするのと同じユーザインターフェースでもよい。
【0091】
コンピュータ可読媒体を有するコンピュータプログラム製品も提供される。前記コンピュータ可読媒体は、この媒体に具体化されるコンピュータ可読コードを有する。前記コンピュータ可読コードは、適切なコンピュータ又は処理器により実行されると、このコンピュータ又は処理器が本明細書に記載される方法を行うように構成される。前記コンピュータ可読媒体は、例えば、コンピュータプログラム製品を担持することが可能である如何なる実体又は装置でもよい。例えば、前記コンピュータ可読媒体は、データ記憶装置、例えばROM(例えばCD-ROM或いは半導体ROM)、又は磁気記録媒体(例えばハードディスク)を含んでよい。さらに、前記コンピュータ可読媒体は、電気或いは光ケーブルを介して、又は無線或いは他の手段により搬送される伝達可能キャリア、例えば電気又は光信号でもよい。コンピュータプログラム製品がそのような信号において具現化されるとき、コンピュータ可読媒体は、そのようなケーブル又は他の装置或いは手段により構成される。その代わりに、コンピュータ可読媒体は、コンピュータプログラム製品が埋め込まれた集積回路でもよく、この集積回路は、本明細書に記載される方法を行うように適応するか又はその方法の実行に使用される。
【0092】
従って、本明細書において、既存の技術に関連する制限に対処する、被験者の皮膚から得られる汗サンプルにおけるバイオマーカーを定量的に検出するための改善される装置100、200、300、400、方法500、システム600及びコンピュータプログラム製品が提供される。本明細書に記載される装置、方法及びシステムは、一般病棟及びICUにいる患者の突然の悪化に対する早期警戒として、及び睡眠障害の調査のために、患者が医師にかかるとき、抽出検査(スポットチェック)方式の測定だけが現在行われるような、患者を監視する分野で使用されることができる。
【0093】
開示される実施例に対する変形例は、図面、本開示及び添付の特許請求の範囲の検討から、本明細書に記載される原理及び技術を実施する際に当業者により理解及び実施され得る。請求項において、「有する」という用語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、要素が複数あることを述べなくても、その要素が複数あることを排除するものではない。単一の処理器又は他のユニットが、特許請求の範囲に挙げられる幾つかのアイテムの機能を実行することができる。ある特定の方法が互いに異なる従属請求項に挙げられているという単なる事実は、これらの方法の組み合わせが有利に使用され得ないことを示さない。コンピュータプログラムは、適切な媒体、例えば他のハードウェアと一緒に或いはその一部として供給される光記憶媒体若しくはソリッドステート媒体に記憶又は配布されることができるが、他の形態、例えばインターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システムを介して配布されてもよい。請求項における如何なる参照符号も、その範囲を限定すると解釈されるべきではない。
図1
図2
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図6