(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
B22D 19/00 20060101AFI20220607BHJP
B22D 19/08 20060101ALI20220607BHJP
B22D 23/04 20060101ALI20220607BHJP
B22D 11/00 20060101ALI20220607BHJP
B22D 11/06 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
B22D19/00 B
B22D19/08 A
B22D23/04 A
B22D11/00 K
B22D11/06 330Z
(21)【出願番号】P 2022014299
(22)【出願日】2022-02-01
【審査請求日】2022-02-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健
(72)【発明者】
【氏名】細谷 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】大迫 翔平
(72)【発明者】
【氏名】熊井 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】仁田 諄
(72)【発明者】
【氏名】美濃 良信
(72)【発明者】
【氏名】高橋 啓太
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-194706(JP,A)
【文献】特開平01-309772(JP,A)
【文献】特開昭56-128647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D19/00
B22D19/08
B22D23/04
B22D11/00
B22D11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、該芯材を被覆する皮材とを有するクラッド材を製造する製造方法であって、
前記芯材を加熱する芯材加熱ステップと、
円板状をなし、側面の一部に溝が形成される複数のロールの溝によって形成される第1の空間に、加熱処理が施された前記芯材、および液状の前記皮材を通過させて、前記芯材の表面に前記皮材を被覆させるとともに、前記液状の前記皮材を前記第1の空間へ案内する案内部材と、前記ロールとの間に形成される第2の空間に、前記第1の空間からの余剰の前記液状の前記皮材を流すロール鋳造ステップと、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記第2の空間は、前記案内部材に形成される切欠き部と、前記ロールとによって形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記案内部材は、前記ロールを挟持する複数の挟持部を有し、
前記切欠き部は、各挟持部に形成され、当該挟持部の前記液状の前記皮材の流通方向の下流側の端部から上流側の端部までの第1の距離が、前記下流側の端部から、前記ロール同士の当接位置に対応する位置までの第2の距離よりも大きい、
ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第2の空間は、前記ロールに対する前記切欠き部の位置を変更させる付勢部材によって、当該第2の空間の大きさが変化する、
ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第2の空間は、前記ロールに形成される切欠き部と、前記案内部材とによって形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記溝は、溝面が弧状をなして延び、
各ロールの前記溝によって円形の前記第1の空間が形成される、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項7】
前記芯材は、第2の案内部材によって前記第1の空間に案内される、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項8】
芯材と、該芯材を被覆する皮材とを有するクラッド材を製造する製造装置であって、
円板状をなし、側面の一部に溝が形成される複数のロールであって、各ロールの溝によって、前記芯材、および前記皮材が通過可能な第1の空間を形成する複数のロールと、
前記芯材、および液状の前記皮材を前記第1の空間に案内する案内部材と、
を備え、
前記ロールと前記案内部材との間には、前記第1の空間とは異なる第2の空間が形成される、
ことを特徴とする製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、産業分野全般における部材の軽量化の要求から、加工用の部材についても、様々な観点により軽量化が試みられてきた。一方で、製品の信頼性や耐久性の向上も合わせて図る必要があり、これらの両立が必要となってきている。この両立を実現するため、二種類の材料を組み合わせて加工用の部材を作製する技術が広まってきている。例えば、特許文献1、2には、芯材と、芯材の表面を被覆する皮材とを有する線材(以下、クラッド材ともいう)が記載されている。
【0003】
特許文献1では、熱間圧延、冷間圧延および溶接を行ったり、焼鈍および引き抜きを繰り返したりしてクラッド材を作製しており、作業工程が多く複雑になっていた。これに対し、特許文献2では、芯材と、液状の皮材とを、ロール間を通過させることによってクラッド材を作製しており、少ない作業工程でクラッド材が作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-26830号公報
【文献】特開昭62-248556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2において、ロール間を通過させるのみでは芯材と皮材との接合強度が小さくなることがあった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、芯材と皮材とを高強度で接合することができる製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる製造方法は、芯材と、該芯材を被覆する皮材とを有するクラッド材を製造する製造方法であって、前記芯材を加熱する芯材加熱ステップと、円板状をなし、側面の一部に溝が形成される複数のロールの溝によって形成される第1の空間に、加熱処理が施された前記芯材、および液状の前記皮材を通過させて、前記芯材の表面に前記皮材を被覆させるとともに、前記液状の前記皮材を前記第1の空間へ案内する案内部材と、前記ロールとの間に形成される第2の空間に、前記第1の空間からの余剰の前記液状の前記皮材を流すロール鋳造ステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる製造方法は、上記の発明において、前記第2の空間は、前記案内部材に形成される切欠き部と、前記ロールとによって形成されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる製造方法は、上記の発明において、前記第2の空間は、前記ロールに対する前記切欠き部の位置を変更させる付勢部材によって、当該第2の空間の大きさが変化することを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる製造方法は、上記の発明において、前記第2の空間は、前記ロールに形成される切欠き部と、前記案内部材とによって形成されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる製造方法は、上記の発明において、前記溝は、溝面が弧状をなして延び、各ロールの前記溝によって円形の前記第1の空間が形成されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる製造方法は、上記の発明において、前記芯材は、第2の案内部材によって前記第1の空間に案内されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる製造装置は、芯材と、該芯材を被覆する皮材とを有するクラッド材を製造する製造装置であって、円板状をなし、側面の一部に溝が形成される複数のロールであって、各ロールの溝によって、前記芯材、および前記皮材が通過可能な第1の空間を形成する複数のロールと、加熱処理が施された前記芯材、および液状の前記皮材を前記第1の空間に案内する案内部材と、を備え、前記ロールと前記案内部材との間には、前記第1の空間とは異なる第2の空間が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、芯材と皮材とを高強度で接合することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1にかかるクラッド材の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態1にかかるクラッド材の製造方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態1にかかるクラッド材の製造装置の構成を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態1にかかるクラッド材の製造装置の構成を示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示すQ-Q線に対応するクラッド材の製造装置の断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態1にかかるクラッド材の製造装置の要部の構成を示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す部材の一部を拡大した拡大図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態2にかかるクラッド材の製造装置の構成を示す断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施の形態3にかかるクラッド材の製造装置の構成を示す断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施の形態4にかかるクラッド材の製造装置の構成を示す断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施の形態4の変形例にかかるクラッド材の製造装置の構成を示す断面図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施の形態5にかかるクラッド材の製造装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明において参照する各図は、本発明の内容を理解し得る程度に形状、大きさ、および位置関係を概略的に示してあるに過ぎない。すなわち、本発明は各図で例示された形状、大きさ、および位置関係のみに限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかるクラッド材の構成を示す斜視図である。クラッド材1は、芯材2と、芯材2を被覆する皮材3とを備える。
【0018】
芯材2は、第1の金属材料を用いて形成される円柱状の部材である。第1の金属材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛、亜鉛合金、錫、錫合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、銅合金、鉄、鉄合金、鋼、チタン、又はチタン合金等の、金属や合金が挙げられる。ここで、例えばアルミニウム合金とは、アルミニウムを主成分とする合金である。
【0019】
皮材3は、第2の金属材料を用いて形成される筒状の部材である。第2の金属材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、又はマグネシウム合金等の、金属や合金が挙げられる。皮材3は、芯材2とは異なる特性の金属材料が用いられる。
【0020】
続いて、クラッド材1の作製方法について説明する。
図2は、本発明の実施の形態1にかかるクラッド材の製造方法を示すフローチャートである。芯材2を用意し、この芯材2を加熱する(ステップS101:芯材加熱ステップ)。芯材加熱処理では、芯材2と皮材3とが十分に接合できる温度まで芯材2を加熱する。加熱温度は、例えばアルミニウムを用いる場合、350℃以上である。芯材加熱処理は、例えば、雰囲気炉加熱処理、高周波誘導加熱処理、抵抗加熱処理、赤外線加熱処理等の、公知の手法を用いることができる。
【0021】
芯材2を加熱後、ロール鋳造処理によって芯材2に皮材3を被覆させた成形物を作製する(ステップS102:ロール鋳造ステップ)。なお、ロール鋳造処理については後述する。
【0022】
成形物を作成後、この成形物にバリ除去処理等の仕上げ加工処理を施して、クラッド材1を作製する(ステップS103)。仕上げ加工処理は、所望の直径を実現するための引抜加工処理や、皮むき加工処理、予め設定された長さでの切断処理、研磨等の表面加工処理等を含む。
【0023】
続いて、ステップS102におけるロール鋳造処理について、
図3~
図8を参照して説明する。
図3は、本発明の実施の形態1にかかるクラッド材の製造装置の構成を示す斜視図である。
図4は、本発明の実施の形態1にかかるクラッド材の製造装置の構成を示す断面図である。
図5は、
図4に示すQ-Q線に対応するクラッド材の製造装置の断面図である。
【0024】
図3および
図4に示す製造装置100は、ロール鋳造処理に用いる装置である。製造装置100は、ロール部材110と、案内部材120と、保護管130とを備える。
【0025】
ロール部材110は、第1ロール111、第2ロール112、第3ロール113および第4ロール114を有する。第1ロール111~第4ロール114は、それぞれ円板状をなし、隣り合うロールの側面同士を対向させて配置される。第1ロール111~第4ロール114は、案内部材120に対して等間隔に配置され、例えば、第1ロール111は、隣り合う第2ロール112および第4ロール114に対して90°回転した向きとなっている。第1ロール111は、当該ロールの板厚方向に延び、かつロールの中心を通過する軸N1を回転軸として回転可能である。第2ロール112は、当該ロールの板厚方向に延び、かつロールの中心を通過する軸N2を回転軸として回転可能である。第3ロール113は、当該ロールの板厚方向に延び、かつロールの中心を通過する軸N3を回転軸として回転可能である。第4ロール114は、当該ロールの板厚方向に延び、かつロールの中心を通過する軸(図示略)を回転軸として回転可能である。なお、以下において、ロールの最も大きい面積を有する面を主面という。ロールは、この主面を、互いに反対側に位置する二つ有し、主面同士を接続する面を側面という。
【0026】
第1ロール111~第4ロール114の材質は、鋼、銅、銅合金、タングステン基合金、超合金、又は超硬合金を用いることができ、これら金属材料の表面に皮膜を形成させて、液体30とロールとの反応を抑制することができる。皮膜には、例えば、窒化チタンアルミ、窒化クロム等のセラミック被膜や、非晶質炭素膜等を用いることができる。また、第1ロール111~第4ロール114の材質は、液体30とロールとの反応をさらに軽減するため、窒化ケイ素やアルミナ、ジルコニアなどのセラミックを用いることもできる。さらに、第1ロール111~第4ロール114の材質は、互いに同じであってもよいし、互い異なっていてもよいし、一部が他の材質と異なっていてもよい。
【0027】
第1ロール111の側面には、凹状の第1溝111aが形成される(
図5参照)。第2ロール112の側面には、凹状の第2溝112aが形成される。第3ロール113の側面には、凹状の第3溝113aが形成される。第4ロール114の側面には、凹状の第4溝114aが形成される。第1溝111a~第4溝114aは、それぞれ弧状に切欠かれてなり、溝同士が対向することによって円形の第1の空間S
1を形成する。なお、
図5では第1の空間S
1に皮材3(または液体30)が充填されている例を示している。
第1ロール111~第4ロール114は、第1の空間S
1を形成することができれば、形状が互いに同じ形状であってもよいし、互いに異なる(例えば、ロールの径が異なる)形状であってもよい。
【0028】
案内部材120は、先細な先端形状をなし、先端と、該先端とは反対側の端部とを貫通する内部空間を形成する本体部121と、本体部121の外周に設けられ、第1ロール111~第4ロール114を挟みこむ挟持部122とを有する。
【0029】
また、案内部材120には、本体部121の開口から挟持部122側に向かって開口の大きさが小さくなる孔形状をなす開口部123が形成される。開口部123は、挟持部122側の端部が、第1ロール111~第4ロール114が形成する第1の空間S
1に連なる。案内部材120の開口部123には、容器140を用いて、皮材3が溶解した状態の液体30が流し入れられる(
図4参照)。案内部材120は、芯材2および液体30を、第1ロール111~第4ロール114が形成する第1の空間S
1に案内する。なお、案内部材120は、複数の部材を組み合わせて作製してもよいし、一つの部材として一体的に作製してもよい。
【0030】
図6は、本発明の実施の形態1にかかるクラッド材の製造装置の要部の構成を示す断面図である。
図7は、
図6に示す部材の一部(破線領域)を拡大した拡大図である。案内部材120の挟持部122には、本体部121側と反対側(液体30の流通方向の下流側)の端部から延びる切欠き部122aが形成される。切欠き部122aは、ロール同士の当接部分に対向する位置に形成され、表面(ロール当接部分に対向する切欠き面)が平面をなす。切欠き部122aは、挟持部122の本体部121側と反対側の端部(位置P
B)から、切欠き部122aの本体部121側の端部(位置P
1)までの距離D
1が、位置P
Bから、ロール同士の当接位置に対応する位置P
Nまでの距離D
Nよりも大きい。なお、切欠き部は、位置P
Bから位置P
1までの距離が、距離D
Nよりも大きければよく、
図7に示す形状に限らない。例えば、段付き形状または曲面をなす切欠き部としてもよい。
【0031】
製造装置100では、各ロールの外表面と、挟持部122の切欠き部122aとによって、第1の空間S
1とは異なる第2の空間S
2が形成される(
図5参照)。
【0032】
保護管130は、筒状をなし、一部が案内部材120の内部に位置する。保護管130は、筒の中心軸が、第1溝111a~第4溝114aによって形成される円形の第1の空間S1の中心を通過する。保護管130によって、芯材2が、第1ロール111~第4ロール114が形成する第1の空間S1に案内される。
【0033】
ロール鋳造処理において、芯材2および液体30が、ともに案内部材120側からロール側に移動し、第1の空間S1を通過する。この際、液体30は、案内部材120内に流し入れられた後、第1の空間S1を通過時に、温度低下によって固化する。この際の温度低下は、第1ロール111~第4ロール114の表面や、芯材2の表面に接触することによる抜熱により冷却され、上述した成形物(皮材3)となる。
この際、開口部123や第1の空間S1から溢れた余剰の液体30が、第2の空間S2に流入する。この第2の空間S2への流入によって、余剰の液体30が、開口部123や第1の空間S1で滞留することが抑制される。
【0034】
本実施の形態1では、四つのロールが形成する第1の空間S1に、加熱処理が施された芯材2と、液体30とを、該液体30を固化させながら通過させることによってクラッド材1を作製するようにした。本実施の形態1によれば、加熱された芯材2に、液状の皮材3を接触させるため、芯材2と皮材3とを高い接合強度で接合したクラッド材1を作製することができる。この際、上述した条件の切欠き部122aによって形成される第2の空間S2に液体30を流入させることで、液体30が開口部123や第1の空間S1に滞留することを抑制できる。液体30の滞留を抑制することによって、滞留による皮材3の成形不良が抑制される。
【0035】
また、本実施の形態1によれば、従来のように、別々に作製した芯材と皮材とを接合したり、焼鈍および引き抜きを繰り返したりすることなく、少ない作業工程でクラッド材を作製することができる。
【0036】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について、
図8を参照して説明する。
図8は、本発明の実施の形態2にかかるクラッド材の製造装置の構成を示す断面図である。本実施の形態2は、上述した実施の形態1に対し、挟持部122に形成される切欠き部の形状が異なる。それ以外の構成は、上述した実施の形態1と同じであるため説明を省略する。
【0037】
本実施の形態2において、挟持部122には、本体部121側と反対側の端部から延びる切欠き部122bが形成される。切欠き部122bは、ロール同士の当接部分に対向する位置に形成され、表面(ロール当接部分に対向する切欠き面)が曲面をなす。切欠き部122bの断面であって、ロールの回転軸と直交する平面を切断面とする断面の形状は、例えば
図7に示す形状が挙げられる。
【0038】
本実施の形態2では、各ロールの外表面と、挟持部122の切欠き部122bとによって、第1の空間S1とは異なる第2の空間S3が形成される。
【0039】
本実施の形態2では、実施の形態1と同様に、四つのロールが形成する第1の空間S1に、加熱処理が施された芯材2と、液体30とを、該液体30を固化させながら通過させることによってクラッド材1を作製するようにした。本実施の形態2によれば、加熱された芯材2に、液状の皮材3を接触させるため、芯材2と皮材3とを高い接合強度で接合したクラッド材1を作製することができる。この際、上述した条件の切欠き部122bによって形成される第2の空間S3に液体30を流入させることで、液体30が開口部123や第1の空間S1に滞留することを抑制できる。液体30の滞留を抑制することによって、滞留による皮材3の成形不良が抑制される。
【0040】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について、
図9を参照して説明する。
図9は、本発明の実施の形態3にかかるクラッド材の製造装置の構成を示す断面図である。本実施の形態3は、上述した実施の形態1に対し、挟持部122に形成される切欠き部の形状が異なる。それ以外の構成は、上述した実施の形態1と同じであるため説明を省略する。
【0041】
本実施の形態3において、挟持部122には、本体部121側と反対側の端部から延びる切欠き部122cが形成される。切欠き部122cは、ロールに対向する位置に形成され、ロールの表面と平行な平面を有する。切欠き部122cの断面であって、芯材2の中心軸と直交する平面(
図10の紙面と平行な平面)を切断面とする断面の形状が、L字状をなす。また、切欠き部122cの断面であって、ロールの回転軸と直交する平面を切断面とする断面の形状は、例えば
図7に示す形状が挙げられる。
【0042】
本実施の形態3では、各ロールの外表面と、挟持部122の切欠き部122cとによって、第1の空間S1とは異なる第2の空間S4が形成される。
【0043】
また、実施の形態3では、挟持部122を芯材2に対して進退させることができる。具体的には、各挟持部122には付勢部材124が接続され、付勢部材124が挟持部122に加える荷重を調整することによって、ロールに対する挟持部122の位置を制御することができる。挟持部122の位置によって挟持部122とロールとの間の第2の空間S4の大きさが変わる。この第2の空間S4の大きさの変化によって、この空間への液体30の流入量が変わる。
この際、案内部材120は、開口部123が形成する空間(ロールへの液体30の導入経路)を維持しつつ、付勢部材124の制御によって挟持部122のみ、または本体部121および挟持部122を移動させる。
【0044】
本実施の形態3では、実施の形態1と同様に、四つのロールが形成する第1の空間S1に、加熱処理が施された芯材2と、液体30とを、該液体30を固化させながら通過させることによってクラッド材1を作製するようにした。本実施の形態3によれば、加熱された芯材2に、液状の皮材3を接触させるため、芯材2と皮材3とを高い接合強度で接合したクラッド材1を作製することができる。この際、上述した条件の切欠き部122cによって形成される第2の空間S4に液体30を流入させることで、液体30が開口部123や第1の空間S1に滞留することを抑制できる。液体30の滞留を抑制することによって、滞留による皮材3の成形不良が抑制される。
【0045】
また、実施の形態3では、挟持部122を芯材2に対して進退させるようにしたので、液体30の粘性等に応じて第2の空間S4の大きさを変化させて該第2の空間S4への液体30の流入量を調整することによって、液体30の特性によらず液体30の滞留を抑制することができる。
【0046】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4について、
図10を参照して説明する。
図10は、本発明の実施の形態4にかかるクラッド材の製造装置の構成を示す断面図である。本実施の形態4は、上述した実施の形態1に対し、切欠き部が挟持部には形成されず、ロール側に形成される点が異なる。それ以外の構成は、上述した実施の形態1と同じであるため説明を省略する。
【0047】
本実施の形態4において、挟持部122Aは、柱状をなして延びる。また、各ロールには、外縁に切欠き部がそれぞれ形成される。具体的には、第1ロール111の外縁には、第1溝111aに向かって傾斜する切欠き部111b、111cが形成される。また、第2ロール112の外縁には、第2溝112aに向かって傾斜する切欠き部112b、112cが形成される。また、第3ロール113の外縁には、第3溝113aに向かって傾斜する切欠き部113b、113cが形成される。また、第4ロール114の外縁には、第4溝114aに向かって傾斜する切欠き部114b、114cが形成される。各切欠き部は、一端が溝の端部に連なる。このため、各ロールの側面は、溝(例えば第1ロール111であれば第1溝111a)のみによって構成される。
【0048】
実施の形態4では、各ロールを配置すると、隣り合うロールの角部同士が接触して第1溝111a~第4溝114aによる空間(上述した第1の空間S1)を形成する。また、各ロールに形成される切欠き部によって、各ロールと挟持部122Aとの間に第2の空間S5が形成される。
【0049】
本実施の形態4では、実施の形態1と同様に、四つのロールが形成する第1の空間S1に、加熱処理が施された芯材2と、液体30とを、該液体30を固化させながら通過させることによってクラッド材1を作製するようにした。本実施の形態4によれば、加熱された芯材2に、液状の皮材3を接触させるため、芯材2と皮材3とを高い接合強度で接合したクラッド材1を作製することができる。この際、各ロールの外縁に、上述した条件の切欠き部を形成することによって、液体30が開口部123や第1の空間S1に滞留することを抑制できる。液体30の滞留を抑制することによって、滞留による皮材3の成形不良が抑制される。
【0050】
また、実施の形態4では、ロール側に切欠き部を形成したため、第1溝111a~第4溝114aによる空間(上述した第1の空間S1)に近い位置に、余剰の液体30が流入する第2の空間S5が形成されるため、余剰の液体30を一層円滑に流通させることができる。
【0051】
(実施の形態4の変形例)
次に、実施の形態4の変形例について、
図11を参照して説明する。
図11は、本発明の実施の形態4の変形例にかかるクラッド材の製造装置の構成を示す断面図である。本変形例は、上述した実施の形態4に対し、切欠き部の形成態様が異なる。それ以外の構成は、上述した実施の形態4と同じであるため説明を省略する。
【0052】
本変形例において、第1ロール111の外縁には、第1溝111aに向かって傾斜する切欠き部111d、111eが形成される。また、第2ロール112の外縁には、第2溝112aに向かって傾斜する切欠き部112d、112eが形成される。また、第3ロール113の外縁には、第3溝113aに向かって傾斜する切欠き部113d、113eが形成される。また、第4ロール114の外縁には、第4溝114aに向かって傾斜する切欠き部114d、114eが形成される。各切欠き部は、一端が溝の外周側面に連なる。このため、各ロールの外縁は、切欠き部と、溝および切欠き部の間に位置し、隣り合うロールと接触する平面部とによって構成される。
【0053】
変形例では、各ロールを配置すると、隣り合うロール側面の平面部同士が圧接して第1溝111a~第4溝114aによる空間(上述した第1の空間S1)を形成する。また、各ロールに形成される切欠き部によって、各ロールと挟持部122Aとの間に第2の空間S6が形成される。
【0054】
本変形例では、実施の形態4と同様に、四つのロールが形成する第1の空間S1に、加熱処理が施された芯材2と、液体30とを、該液体30を固化させながら通過させることによってクラッド材1を作製するようにした。本変形例によれば、加熱された芯材2に、液状の皮材3を接触させるため、芯材2と皮材3とを高い接合強度で接合したクラッド材1を作製することができる。この際、各ロールの外縁に、上述した条件の切欠き部を形成することによって、液体30が開口部123や第1の空間S1に滞留することを抑制できる。液体30の滞留を抑制することによって、滞留による皮材3の成形不良が抑制される。
【0055】
また、変形例では、ロールの側面に平面部が形成されるため、ロール同士を当接させた際に、平面部同士が密着する。これにより、第1溝111a~第4溝114aによる空間(上述した第1の空間S1)を形成した場合において、実施の形態4と比して、ロール間の隙間の発生を一段と確実に抑制することができる。
【0056】
(実施の形態5)
次に、実施の形態5について、
図12を参照して説明する。
図12は、本発明の実施の形態5にかかるクラッド材の製造装置の構成を示す断面図である。本実施の形態5は、上述した実施の形態1に対し、切欠き部が挟持部には形成されず、ロール側に形成される点が異なる。それ以外の構成は、上述した実施の形態1と同じであるため説明を省略する。
【0057】
本実施の形態5において、挟持部122Aは、柱状をなして延びる。また、各ロールには、外縁に切欠き部がそれぞれ形成される。具体的には、第1ロール111の外縁には、切欠き部111f、111gが形成される。また、第2ロール112の外縁には、切欠き部112f、112gが形成される。また、第3ロール113の外縁には、切欠き部113f、113gが形成される。また、第4ロール114の外縁には、切欠き部114f、114gが形成される。各切欠き部は、各ロールの主面に対して垂直な平面を有する。このため、各ロールの側面は、溝(例えば第1ロール111であれば第1溝111a)と、切欠き部とによって構成される。
【0058】
実施の形態5では、各ロールを配置すると、隣り合うロールの角部同士が接触して第1溝111a~第4溝114aによる空間(上述した第1の空間S1)を形成する。また、各ロールに形成される切欠き部によって、各ロールと挟持部122Aとの間に第2の空間S7が形成される。
【0059】
本実施の形態5では、実施の形態1と同様に、四つのロールが形成する第1の空間S1に、加熱処理が施された芯材2と、液体30とを、該液体30を固化させながら通過させることによってクラッド材1を作製するようにした。本実施の形態5によれば、加熱された芯材2に、液状の皮材3を接触させるため、芯材2と皮材3とを高い接合強度で接合したクラッド材1を作製することができる。この際、各ロールの外縁に、上述した条件の切欠き部を形成することによって、液体30が開口部123や第1の空間S1に滞留することを抑制できる。液体30の滞留を抑制することによって、滞留による皮材3の成形不良が抑制される。
【0060】
また、実施の形態5では、ロール側に切欠き部を形成したため、第1溝111a~第4溝114aによる空間(上述した第1の空間S1)に近い位置に、余剰の液体30が流入する第2の空間S7が形成されるため、余剰の液体30を一層円滑に流通させることができる。
【0061】
なお、上述した実施の形態1~5では、ロール同士が形成する空間が、円や矩形である例について説明したが、このほか、楕円や、台形、五角形以上の多角形、星形等の他の形状であってもよい。また、ロールの数は、二つおよび四つに限らない。皮材3の外表面のバリの発生や芯材2と皮材3との間の空隙の形成を抑制するという観点においては、ロールは三つ以上有することが好ましい。さらに、断面において、芯材および皮材の形状が異なるものであってもよい。例えば、矩形断面を有する芯材に、外縁が円をなす皮材を被覆してもよい。この場合、製造装置100に、矩形断面を有する芯材を通過させることによって作製することが可能である。
【0062】
また、ロールの数は、上述した四つに限らず、二つ以上備えていればよい。ここで、ロールの数が多い方が、芯材2に対するロール圧力の均一性が向上するため、製造時の皮材3の外表面のバリの発生や芯材2と皮材3との間の空隙の形成が抑制される。
【0063】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【0064】
以上説明したように、本発明に係る製造方法および製造装置は、クラッド材の作製において、芯材と皮材とを高強度で接合するのに好適である。
【符号の説明】
【0065】
1 クラッド材
2 芯材
3 皮材
100 製造装置
110 ロール部材
111 第1ロール
111a 第1溝
111b~111g、112b~112g、113b~113g、114b~114g、122a~122c 切欠き部
112 第2ロール
112a 第2溝
113 第3ロール
113a 第3溝
114 第4ロール
114a 第4溝
120 案内部材
121 本体部
122、122A 挟持部
130 保護管
140 容器
S1 第1の空間
S2~S7 第2の空間
【要約】
【課題】芯材と皮材とを高強度で接合することができる製造方法および製造装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係る製造方法は、芯材と、該芯材を被覆する皮材とを有するクラッド材を製造する製造方法であって、芯材を加熱する芯材加熱ステップと、円板状をなし、側面の一部に溝が形成される複数のロールの溝によって形成される第1の空間に、加熱処理が施された芯材、および液状の皮材を通過させて、芯材の表面に皮材を被覆させるとともに、液状の前記皮材を第1の空間へ案内する案内部材と、ロールとの間に形成される第2の空間に、第1の空間からの余剰の液状の皮材を流すロール鋳造ステップと、を含む。
【選択図】
図1