(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】固液界面検出装置及びこれを備えた前処理装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/26 20060101AFI20220608BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220608BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20220608BHJP
G01F 23/292 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
C12M1/26
C12M1/00 A
C12M3/00 Z
G01F23/292 Z
(21)【出願番号】P 2020531266
(86)(22)【出願日】2019-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2019027327
(87)【国際公開番号】W WO2020017411
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2018134179
(32)【優先日】2018-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発/高生産性微生物創製に資する情報解析システムの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 勉
(72)【発明者】
【氏名】篁 直樹
(72)【発明者】
【氏名】蓮沼 誠久
【審査官】平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0127695(US,A1)
【文献】特開2004-037320(JP,A)
【文献】特開2012-080836(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038887(WO,A1)
【文献】特開2012-075409(JP,A)
【文献】特開2006-138814(JP,A)
【文献】米国特許第09734420(US,B2)
【文献】国際公開第2018/155251(WO,A1)
【文献】特開2019-052940(JP,A)
【文献】協和界面科学株式会社 接触角計 Drop Masterシリーズ,iPROS製造業 [online],[Retrieved on 2019.09.25],2013年03月14日,<https://ipros.jp/product/detail/2491004>,Retrieved from the Internet
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/10
G01F 23/00-23/80
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内における固体と液体との界面を検出するための固液界面検出装置であって、
前記容器を外側から照明する面照明と、
前記容器に対して前記面照明とは反対側に配置され、前記界面を含む画像を撮像する撮像部と、
前記容器の底部を受ける台座部と、
前記台座部を水平方向に対して交差する方向に移動させることにより、前記容器を撮像位置に位置決めする移動機構と、
前記移動機構により前記撮像位置に位置決めされた前記容器を当該撮像位置に保持するための保持機構と、
前記撮像部により撮像された画像から前記界面を検出する界面検出処理部とを備え
、
前記移動機構は、前記保持機構により前記容器が前記撮像位置に保持された後に前記台座部を退避させ、
前記撮像部は、前記移動機構により前記台座部が退避された後に撮像を行うことを特徴とする固液界面検出装置。
【請求項2】
細胞に対する前処理を行うための前処理装置であって、
細胞を含む培養液が収容された容器に対して遠心分離を行う遠心分離機構と、
前記遠心分離機構により前記容器内で遠心分離された細胞と液体との界面を検出する請求項1に記載の固液界面検出装置と、
前記界面検出処理部により検出された前記界面の位置に基づいて、前記容器内における細胞以外の液体を除去する液体除去機構とを備えることを特徴とする前処理装置。
【請求項3】
前記液体除去機構は、前記容器内にニードルを挿入することにより、当該ニードルの先端から前記容器内の液体を吸引して除去するものであり、
前記撮像部は、前記容器内の液体中に前記ニードルを挿入する前後の画像を撮像し、
前記撮像部により撮像された前記容器内の液体中に前記ニードルを挿入する前後の画像の差分に基づいて、前記ニードルの先端位置を検出するニードル検出処理部をさらに備えることを特徴とする請求項
2に記載の前処理装置。
【請求項4】
細胞に対する前処理を行うための前処理装置であって、
細胞を含む培養液が収容された容器に対して遠心分離を行う遠心分離機構と、
前記遠心分離機構により前記容器内で遠心分離された細胞と液体との界面を検出する固液界面検出装置とを備え、
前記固液界面検出装置は、
前記容器を外側から照明する面照明と、
前記容器に対して前記面照明とは反対側に配置され、前記界面を含む画像を撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された画像から前記界面を検出する界面検出処理部を備え、
前記前処理装置は、
前記界面検出処理部により検出された前記界面の位置に基づいて、前記容器内における細胞以外の液体を除去する液体除去機構をさらに備え、
前記液体除去機構は、前記容器内にニードルを挿入することにより、当該ニードルの先端から前記容器内の液体を吸引して除去するものであり、
前記撮像部は、前記容器内の液体中に前記ニードルを挿入する前後の画像を撮像し、
前記撮像部により撮像された前記容器内の液体中に前記ニードルを挿入する前後の画像の差分に基づいて、前記ニードルの先端位置を検出するニードル検出処理部をさらに備えることを特徴とする前処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内における固体と液体との界面を検出するための固液界面検出装置及びこれを備えた前処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微生物や植物の細胞を培養槽内の培養液中で培養し、その培養液から細胞を回収して前処理を行った上で、液体クロマトグラフ質量分析装置に供給することにより、メタボローム解析などの分析を行う技術が知られている。この種の技術では、細胞を含む培養液をサンプリングするためのサンプリング装置と、サンプリングされた培養液に含まれる細胞に対して前処理を行うための前処理装置とが用いられている。培養液のサンプリングは、無菌状態にて行われる(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
前処理装置では、細胞を含む培養液が収容された容器に対して、例えば遠心分離機構により遠心分離が行われる。これにより、細胞が固体として容器の底部などに溜まり、細胞(固体)と液体とが分離した状態となる。この状態で、容器内にニードルを挿入し、ニードルの先端から容器内の液体を吸引して除去すれば、細胞(固体)のみを回収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにして固体と液体とを分離し、液体のみを吸引して除去する場合には、ニードルの先端を固体と液体との界面に近付ける必要がある。ニードルの先端を、固体に接触しない範囲で可能な限り界面に近付ければ、ほぼ全ての液体を吸引して除去することができる。そこで、光電センサ又は超音波センサを用いて、固体と液体との界面を検出することが考えられる。
【0006】
光電センサを用いた方法では、容器の側面に沿って色の変化を検出することにより、固体と液体との界面を検出することが可能である。しかしながら、容器に対する光の当たり方によっては、検出感度にばらつきが生じ、検出される界面の位置に誤差が生じるおそれがある。
【0007】
超音波センサを用いた方法では、容器の上部から超音波を照射し、容器内の固体までの距離を検出することが可能である。しかしながら、固体と液体との界面の検出結果に誤差が生じやすく、固体(細胞)を誤ってニードルで吸引してしまうおそれがある。
【0008】
上記のような問題は、固体としての細胞を液体から分離して回収するような場合だけでなく、細胞以外の固体を液体から分離して回収するような場合にも生じる場合がある。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、固体と液体との界面をより精度よく検出することができる固液界面検出装置及びこれを備えた前処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る固液界面検出装置は、容器内における固体と液体との界面を検出するための固液界面検出装置であって、面照明と、撮像部と、界面検出処理部とを備える。前記面照明は、前記容器を外側から照明する。前記撮像部は、前記容器に対して前記面照明とは反対側に配置され、前記界面を含む画像を撮像する。前記界面検出処理部は、前記撮像部により撮像された画像から前記界面を検出する。
【0011】
このような構成によれば、面照明により容器に対して外側から均一に照明を行い、照明された容器内における固体と液体との界面の画像を撮像部で撮像することができる。したがって、照明により影となる界面の位置が、光の当たり方に起因してずれることがなく、常に正確な位置で撮像されるため、固体と液体との界面をより精度よく検出することができる。
【0012】
(2)前記固液界面検出装置は、台座部と、移動機構とをさらに備えていてもよい。前記台座部は、前記容器の底部を受ける。前記移動機構は、前記台座部を水平方向に対して交差する方向に移動させることにより、前記容器を撮像位置に位置決めする。
【0013】
このような構成によれば、台座部で容器の底部を受けて、その台座部を移動機構で正確に移動させることにより、容器を撮像位置に正確に位置決めすることができる。したがって、固体と液体との界面をさらに精度よく検出することができる。
【0014】
(3)前記固液界面検出装置は、保持機構をさらに備えていてもよい。前記保持機構は、前記移動機構により前記撮像位置に位置決めされた前記容器を当該撮像位置に保持する。この場合、前記移動機構は、前記保持機構により前記容器が前記撮像位置に保持された後に前記台座部を退避させてもよい。また、前記撮像部は、前記移動機構により前記台座部が退避された後に撮像を行ってもよい。
【0015】
このような構成によれば、移動機構で容器を撮像位置に位置決めした後、その容器を撮像位置に保持機構で保持し、台座部を退避させてから撮像を行うことができる。これにより、撮像された画像において、固体と液体との界面が台座部で隠れてしまうといったことがないため、界面を確実に検出することができる。
【0016】
(4)本発明に係る前処理装置は、細胞に対する前処理を行うための前処理装置であって、遠心分離機構と、前記固液界面検出装置と、液体除去機構とを備える。前記遠心分離機構は、細胞を含む培養液が収容された容器に対して遠心分離を行う。前記固液界面検出装置は、前記遠心分離機構により前記容器内で遠心分離された細胞と液体との界面を検出する。前記液体除去機構は、前記界面検出処理部により検出された前記界面の位置に基づいて、前記容器内における細胞以外の液体を除去する。
【0017】
このような構成によれば、遠心分離された細胞(固体)と液体との界面を固液界面検出装置で検出し、その界面の位置に基づいて、容器内における細胞以外の液体を除去することができる。したがって、固液界面検出装置により精度よく検出された界面の位置に基づいて、ほぼ全ての液体を除去することが可能になる。
【0018】
(5) 前記液体除去機構は、前記容器内にニードルを挿入することにより、当該ニードルの先端から前記容器内の液体を吸引して除去するものであってもよい。この場合、前記撮像部は、前記容器内の液体中に前記ニードルを挿入する前後の画像を撮像してもよい。また、前記前処理装置は、前記撮像部により撮像された前記容器内の液体中に前記ニードルを挿入する前後の画像の差分に基づいて、前記ニードルの先端位置を検出するニードル検出処理部をさらに備えていてもよい。
【0019】
このような構成によれば、容器内の液体中にニードルを挿入する前後の画像の差分に基づいて、ニードルの先端位置を容易かつ正確に検出することができる。したがって、固液界面検出装置により精度よく検出された界面の位置に基づいて、ニードルの先端を、固体に接触しない範囲で可能な限り界面に近付けることができるため、ほぼ全ての液体をニードルで吸引して除去することが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、照明により影となる界面の位置が、光の当たり方に起因してずれることがなく、常に正確な位置で撮像されるため、固体と液体との界面をより精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る固液界面検出装置が適用される前処理装置を備えた自動前処理システムの概略構成を示したブロック図である。
【
図5】
図4の固液界面検出装置のA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.自動前処理システムの概略構成
図1は、本発明の一実施形態に係る固液界面検出装置が適用される前処理装置2を備えた自動前処理システム10の概略構成を示したブロック図である。この自動前処理システム10は、分析対象物に対する前処理を自動で行うための装置である。本実施形態において、分析対象物は、例えば培養された細胞であり、より具体的には菌体である。
【0023】
自動前処理システム10には、サンプリング装置1及び前処理装置2が備えられている。自動前処理システム10により前処理が行われた後の細胞からは、その細胞の代謝産物が抽出されて、液体クロマトグラフ質量分析装置3に供給される。液体クロマトグラフ質量分析装置3は、分析対象物を分析するための分析装置の一例に過ぎず、他の分析装置を用いて分析を行うことも可能である。
【0024】
サンプリング装置1は、容器(培養容器)から液体をサンプリングするための装置である。例えば、微生物や植物の細胞は、バイオリアクタと呼ばれる容器内において培養液中で培養され、バイオリアクタ内の細胞を含む培養液がサンプリング装置1によりサンプリングされる。バイオリアクタ内には、例えば磁力を用いて回転される攪拌部材や、溶存酸素の濃度を検知するための酸素濃度センサなどが設けられており、バイオリアクタ内において培養液を攪拌しながら溶存酸素濃度を調整することにより、サンプリング装置1内において細胞が培養される。
【0025】
前処理装置2は、バイオリアクタ内からサンプリングされた培養液に含まれる細胞に対して前処理を行う。サンプリング装置1では、細胞を含む培養液が、容器(サンプリング容器)としての試験管に収容される。前処理装置2には、遠心分離機構4、液体除去機構5、試薬供給機構6、攪拌機構7及び抽出機構8などが備えられており、これらの各機構により、試験管内の培養液に含まれる細胞に対して前処理が順次行われる。
【0026】
遠心分離機構4は、細胞を含む培養液が収容された試験管に対して遠心分離を行う。これにより、試験管内の培養液に遠心力が付与され、細胞(固体)と細胞以外の液体とに分離される。そして、遠心分離機構4により試験管内で遠心分離された細胞以外の液体が、液体除去機構5を用いて除去されることにより、細胞が回収される。
【0027】
液体除去機構5により液体が除去された後の試験管内には、試薬供給機構6により試薬が供給される。これにより、試験管内の細胞に試薬が混合され、混合液が生成される。そして、試薬供給機構6により生成された混合液が、攪拌機構7により攪拌される。
【0028】
本実施形態において使用される試薬は、細胞中の代謝産物を抽出するための試薬であり、細胞に試薬が混合された混合液を攪拌することにより、細胞中から代謝産物が抽出された懸濁液が得られる。このようにして得られた懸濁液の一部が、抽出液として抽出機構8により抽出され、液体クロマトグラフ質量分析装置3に供給される。
【0029】
2.固液界面検出装置の具体的構成
図2は、固液界面検出装置20の斜視図である。
図3は、固液界面検出装置20の平面図である。
図4は、固液界面検出装置20の側面図である。
図5は、
図4の固液界面検出装置20のA-A断面図である。
【0030】
本実施形態では、前処理装置2の遠心分離機構4により遠心分離が行われた後の試験管14に対して、固液界面検出装置20により、試験管14内における固体と液体との界面141を検出するための処理が行われる(
図5参照)。すなわち、遠心分離が行われた後の試験管14内では、細胞(固体)と細胞以外の液体とが分離され、その界面141が固液界面検出装置20により検出される。
【0031】
その後、液体除去機構5に含まれるニードル15が試験管14内に挿入され、固液界面検出装置20により検出された界面141の位置に基づいて、ニードル15の先端が細胞に接触しない範囲で可能な限り界面141に近付けられる。この状態でニードル15の先端から液体を吸引することにより、試験管14内のほぼ全ての液体を吸引して除去することができる。
【0032】
固液界面検出装置20には、試験管14を外側から照明する面照明21と、試験管14に対して面照明21とは反対側に配置された撮像部22とが備えられている。面照明21は、照射面211から面発光により均一に光が照射される。したがって、試験管14は、外側から上下方向において均一に照明され、照明された試験管14内における固体と液体との界面141を含む画像が撮像部22により撮像される。
【0033】
本実施形態では、撮像部22が試験管14に対して面照明21とは反対側に配置されているため、撮像部22により撮像される画像においては、光を透過しない(又は透過しにくい)固体部分が影となり、光を透過しやすい液体部分が固体部分よりも明るくなる。したがって、撮像された画像における影の部分と明るい部分との境界位置を界面141の位置として検出することができる。
【0034】
固液界面検出装置20には、さらに、試験管14の底部を受ける台座部23と、台座部23を移動させる移動機構24と、試験管14を撮像位置に保持するための保持機構25とを備えている。撮像位置とは、撮像部22により撮像を行う際の試験管14の位置であり、界面141を含む画像を撮像部22により撮像することができる位置として予め設定されている。
【0035】
台座部23は、上面に凹部231が形成された部材であり、凸湾曲した試験管14の底部が凹部231内に入り込んだ状態で受けられる。本実施形態では、試験管14が上下方向に延びるような状態で台座部23により受けられる。ただし、試験管14は、上下方向に対して傾斜した方向に延びるような状態で台座部23により受けられるような構成であってもよい。
【0036】
移動機構24は、台座部23に連結された軸部241を備えており、エアシリンダなどの駆動源(図示せず)を用いて軸部241を軸線方向にスライドさせることにより、台座部23を移動させることができる。軸部241は、台座部23により受けられた試験管14と同じ方向に延びている。この軸部241をスライドさせることにより、台座部23に受けられた試験管14の位置を撮像位置に位置決めすることができる。この例では、軸部241が上下方向に延びているが、これに限らず、水平方向に対して交差する方向に台座部23を移動させることができるような構成であればよい。
【0037】
保持機構25は、1対の変位部251を備えている。1対の変位部251は、水平方向に互いに対向するように配置されており、1対の変位部251の間に試験管14を挟持することができる。試験管14を挟持するときには、1対の変位部251が接近した状態となり、それらの間に試験管14を挟持することができる。この状態から、1対の変位部251を互いに離間させ、試験管14の外径よりも離間させれば、1対の変位部251が試験管14を挟持しない状態となる。移動機構24により試験管14を撮像位置に位置決めした後、その位置で保持機構25により試験管14を保持すれば、試験管14を撮像位置に保持することができる。
【0038】
本実施形態では、撮像位置に保持された試験管14の底部の周囲が、筐体26により覆われる。筐体26は、中空状であり、その内部に試験管14の底部が挿入される。筐体26の上面には、試験管14を挿入するための開口261が形成されている。また、筐体26の底面には、移動機構24の軸部241を挿通させるための開口262が形成されている。面照明21は筐体26内に配置され、撮像部22は一部が筐体26内に挿入されている。このように、撮像部22により撮像される試験管14の底部の周囲を筐体26で覆うことにより、撮像される画像に対する外乱光の影響を少なくすることができる。
【0039】
3.撮像画像に対する画像処理
図5に概念的に示すように、本実施形態における固液界面検出装置20には、撮像部22により撮像された画像に対して画像処理を行うための画像処理部30が備えられている。画像処理部30は、例えばパーソナルコンピュータにより構成されており、画像処理部30に備えられたCPU(Central Processing Unit)がプログラムを実行することにより、界面検出処理部31及びニードル検出処理部32として画像処理部30が機能するようになっている。
【0040】
界面検出処理部31は、撮像部22により撮像された画像から、試験管14内における固体と液体との界面141を検出する処理を行う。具体的には、撮像された画像の各画素の輝度に基づいて、暗い部分(固体部分)と明るい部分(液体部分)との境界位置を界面141の位置として検出する。
【0041】
撮像部22により撮像を行う際には、まず、移動機構24が軸部241を上下方向にスライドさせることにより、試験管14が撮像位置に位置決めされる。そして、保持機構25で試験管14を保持することにより、撮像位置に試験管14が固定された後、移動機構24が軸部241を下方にスライドさせる。これにより、台座部23が試験管14の底部から離間し、台座部23が撮像部22の撮像範囲から退避する。
【0042】
このようにして台座部23が移動機構24により退避された後、撮像部22による撮像が行われる。これにより、試験管14の底部が台座部23によって隠れることなく、界面141を含む画像を撮像することができる。その後、保持機構25により試験管14を撮像位置に保持した状態のまま、ニードル15が試験管14内に挿入される。
【0043】
ニードル15を試験管14内に挿入する際には、ニードル15の先端が撮像部22の撮像範囲に入り、かつ、ニードル15の先端が界面141に対して液体側に離間した位置まで、ニードル15が降下される。この状態で撮像部22による撮像が行われることにより、界面141及びニードル15の先端を含む画像が撮像される。
【0044】
このように、本実施形態では、試験管14内の液体中にニードル15を挿入する前の画像と、ニードル15を挿入した後の画像とが、試験管14の位置を移動させることなく撮像部22により撮像される。この場合、撮像されたニードル15の挿入前後の画像は、ニードル15の有無のみが異なり、界面141の位置などは同一となる。
【0045】
ニードル検出処理部32は、撮像部22により撮像されたニードル15の挿入前後の画像の差分に基づいて、ニードル15の先端位置を検出する。すなわち、ニードル15を挿入する前の画像の各画素の輝度と、ニードル15を挿入した後の画像の各画素の輝度との差分を算出すれば、ニードル15の部分のみに大きな輝度差が算出される。したがって、その算出結果に基づいて、ニードル15の先端位置を検出することができる。
【0046】
このようにして、界面141の位置と、ニードル15の先端位置とが検出されることにより、ニードル15の先端を固体(細胞)に接触しない範囲で可能な限り界面141に近付けるのに必要なニードル15の移動距離を算出することができる。その後、算出された移動距離だけニードル15を降下させ、ニードル15の先端から液体を吸引することにより、試験管14内のほぼ全ての液体を吸引して除去することができる。
【0047】
4.作用効果
(1)本実施形態では、面照明21により試験管14に対して外側から均一に照明を行い、照明された試験管14内における固体(細胞)と液体(細胞以外)との界面141の画像を撮像部22で撮像することができる。したがって、照明により影となる界面141の位置が、光の当たり方に起因してずれることがなく、常に正確な位置で撮像されるため、固体と液体との界面141をより精度よく検出することができる。
【0048】
(2)本実施形態では、台座部23で試験管14の底部を受けて、その台座部23を移動機構24で正確に移動させることにより、試験管14を撮像位置に正確に位置決めすることができる。したがって、固体と液体との界面141をさらに精度よく検出することができる。
【0049】
(3)本実施形態では、移動機構24で試験管14を撮像位置に位置決めした後、その試験管14を撮像位置に保持機構25で保持し、台座部23を退避させてから撮像を行うことができる。これにより、撮像された画像において、固体と液体との界面141が台座部23で隠れてしまうといったことがないため、界面141を確実に検出することができる。
【0050】
(4)本実施形態では、試験管14内の液体中にニードル15を挿入する前後の画像の差分に基づいて、ニードル15の先端位置を容易かつ正確に検出することができる。したがって、固液界面検出装置20により精度よく検出された界面141の位置に基づいて、ニードル15の先端を、固体に接触しない範囲で可能な限り界面141に近付けることができるため、ほぼ全ての液体をニードル15で吸引して除去することが可能になる。
【0051】
5.変形例
本発明に係る固液界面検出装置20は、前処理装置2に限らず、他の任意の装置に適用することができる。すなわち、固液界面検出装置20は、試験管14に限らず、他の任意の容器に対して、その内部における固体と液体との界面を検出する際に使用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 サンプリング装置
2 前処理装置
3 液体クロマトグラフ質量分析装置
4 遠心分離機構
5 液体除去機構
6 試薬供給機構
7 攪拌機構
8 抽出機構
10 自動前処理システム
14 試験管
15 ニードル
20 固液界面検出装置
21 面照明
22 撮像部
23 台座部
24 移動機構
25 保持機構
26 筐体
30 画像処理部
31 界面検出処理部
32 ニードル検出処理部
141 界面