(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】酸化高密度リポ蛋白質の測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20220608BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
G01N33/53 W
G01N33/531 B
(21)【出願番号】P 2018547755
(86)(22)【出願日】2017-10-26
(86)【国際出願番号】 JP2017038715
(87)【国際公開番号】W WO2018079658
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2016213873
(32)【優先日】2016-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000162478
【氏名又は名称】ミナリスメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【氏名又は名称】春田 洋孝
(74)【代理人】
【識別番号】100106574
【氏名又は名称】岩橋 和幸
(72)【発明者】
【氏名】山下 静也
(72)【発明者】
【氏名】三浦 瑞季
(72)【発明者】
【氏名】片山 有基
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-033525(JP,A)
【文献】特開2005-106466(JP,A)
【文献】特開2003-279571(JP,A)
【文献】特開平08-304395(JP,A)
【文献】国際公開第02/006832(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0017556(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
C12Q 1/00- 3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含むことを特徴とする、試料中の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法。
(1)試料と、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは
当該抗体の断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは
当該抗体の断片とを、
ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸若しくはその塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル若しくはその塩、又は、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルであるポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する水性媒体中で反応させ、酸化高密度リポ蛋白質と、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは
当該抗体の断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは
当該抗体の断片と、からなる免疫複合体1を生成させる工程;
(2)高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは
当該抗体の断片を、水性媒体中で、前記工程(1)で生成した免疫複合体1と反応させ、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは
当該抗体の断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは
当該抗体の断片と、酸化高密度リポ蛋白質と、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは
当該抗体の断片と、からなる免疫複合体2を生成させる工程;
(3)前記工程(2)で生成した免疫複合体2を測定する工程
【請求項2】
以下の工程を含むことを特徴とする、試料中の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法。
(1’)試料と、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは
当該抗体の断片とを、
ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸若しくはその塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル若しくはその塩、又は、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルであるポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する水性媒体中で反応させ、酸化高密度リポ蛋白質と、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは
当該抗体の断片と、からなる免疫複合体3を生成させる工程;
(2’)酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは
当該抗体の断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは
当該抗体の断片を、水性媒体中で、前記工程(1’)で生成した免疫複合体3と反応させ、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは
当該抗体の断片と、酸化高密度リポ蛋白質と、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは
当該抗体の断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは
当該抗体の断片と、からなる免疫複合体4を生成させる工程;
(3’)前記工程(2’)で生成した免疫複合体4を測定する工程
【請求項3】
前記工程(1)又は前記工程(1’)の前記水性媒体が、さらに、蛋白質およびポリエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質を含有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記蛋白質が、アルブミンである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記アルブミンが、牛血清アルブミンである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記陽イオン性界面活性剤が第四級アンモニウム塩である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記高密度リポ蛋白質に特異的に結合する抗体が、アポA蛋白質に結合する抗体である請求項1~
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記アポA蛋白質に結合する抗体が、アポA-I蛋白質に対する抗体である請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の測定方法に用いる試薬であって、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは
当該抗体の断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは
当該抗体の断片と、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは
当該抗体の断片と、
ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸若しくはその塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル若しくはその塩、又は、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルであるポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種とを含有する、酸化高密度リポ蛋白質の測定試薬。
【請求項10】
さらに、蛋白質およびポリエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質を含有する、請求項
9に記載の試薬。
【請求項11】
前記蛋白質が、アルブミンである請求項
10に記載の試薬。
【請求項12】
前記アルブミンが、牛血清アルブミンである請求項
11に記載の試薬。
【請求項13】
前記陽イオン性界面活性剤が第四級アンモニウム塩である、請求項
9~
12のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項14】
前記高密度リポ蛋白質に特異的に結合する抗体が、アポA蛋白質に結合する抗体である請求項
9~
13のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項15】
前記アポA蛋白質に結合する抗体が、アポA-I蛋白質に対する抗体である請求項
14に記載の試薬。
【請求項16】
酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは
当該抗体の断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは
当該抗体の断片と、
ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸若しくはその塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル若しくはその塩、又は、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルであるポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種と、を含有する第1試薬、及び、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは
当該抗体の断片を含有する第2試薬を含む、酸化高密度リポ蛋白質の測定キット。
【請求項17】
高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは
当該抗体の断片と、
ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸若しくはその塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル若しくはその塩、又は、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルであるポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種と、を含有する第1試薬、及び、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは
当該抗体の断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは
当該抗体の断片を含有する第2試薬を含む、酸化高密度リポ蛋白質の測定キット。
【請求項18】
さらに、蛋白質およびポリエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質が、第1試薬、及び、第2試薬の少なくとも1つの試薬に含有される、請求項
16又は
17に記載のキット。
【請求項19】
酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは
当該抗体の断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは
当該抗体の断片を含有する第1試薬、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは
当該抗体の断片を含有する第2試薬、及び、
ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸若しくはその塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル若しくはその塩、又は、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルであるポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する第3試薬を含む、酸化高密度リポ蛋白質の測定キット。
【請求項20】
さらに、蛋白質およびポリエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質が、第1~3試薬の少なくとも1つの試薬に含有される、請求項
19に記載のキット。
【請求項21】
前記蛋白質が、アルブミンである請求項
18又は
20に記載のキット。
【請求項22】
前記アルブミンが、牛血清アルブミンである請求項
21に記載のキット。
【請求項23】
前記陽イオン性界面活性剤が第四級アンモニウム塩である、請求項
16~
22のいずれか1項に記載のキット。
【請求項24】
前記高密度リポ蛋白質に特異的に結合する抗体が、アポA蛋白質に結合する抗体である請求項
16~
23のいずれか1項に記載のキット。
【請求項25】
前記アポA蛋白質に結合する抗体が、アポA-I蛋白質に対する抗体である請求項
24に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化高密度リポ蛋白質の測定方法、測定試薬、及び、測定キットに関する。
本願は、2016年10月31日に、日本に出願された特願2016-213873号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
動脈硬化症は、大動脈、冠状動脈、脳動脈、及び頚動脈などの筋型動脈に多く発生し、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などの主因となる疾患である。その原因として血清コレステロールの上昇、血小板凝集、内皮傷害などが提唱されているが、その成因はほとんど解析されていない。
【0003】
血清脂質は、心筋梗塞や狭心症などの冠動脈系疾患、脳梗塞や脳血管系痴呆などの脳動脈系疾患、あるいは腎症、糖尿病性腎症などの腎動脈系疾患および末梢動脈閉塞症などの末梢動脈系疾患などの各種循環器系疾患との関わりが強く示唆されており、その測定は、これら疾患の診断、病態の解明、治療の効果検出などに極めて重要であると考えられている。
【0004】
しかしながら、最近の研究で、上記の疾患患者群と健常者群との血清脂質の絶対量の比較を行った結果、両群間でそれほど大きな違いはなく、むしろ変性されたリポ蛋白質の血清中の存在量が明確に両群間で異なっていることが報告された(非特許文献1参照)。
【0005】
近年、動脈硬化をはじめとする循環器疾患の診断のための酸化高密度リポ蛋白質の測定方法として、高密度リポ蛋白質の酸化リン脂質(特にリゾホスファチジルコリン)を認識する抗体である9F5-3aと、抗アポA-I抗体とを用いた酸化高密度リポ蛋白質を測定する方法(特許文献1参照)、ホスホコリンに結合する抗体とアポ蛋白質に結合する抗体とを用いる測定方法(特許文献2参照)等が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-33525号公報
【文献】国際公開第2003/006989号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Circulation, 94, Suppl. I, 1288 (1996).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、簡便で、かつ、高感度な試料中の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法、測定試薬及び測定キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、試料と、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片とを、ポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する水性媒体中で反応させることにより、試料中の酸化高密度リポ蛋白質を簡便、かつ、高感度に測定できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[28]に関する。
[1]以下の工程を含むことを特徴とする、試料中の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法。
(1)試料と、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片とを、ポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する水性媒体中で反応させ、酸化高密度リポ蛋白質と、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、からなる免疫複合体1を生成させる工程;
(2)高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片を、水性媒体中で、前記工程(1)で生成した免疫複合体1と反応させ、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、酸化高密度リポ蛋白質と、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、からなる免疫複合体2を生成させる工程;
(3)前記工程(2)で生成した免疫複合体2を測定する工程
【0011】
[2]以下の工程を含むことを特徴とする、試料中の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法。
(1’)試料と、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片とを、ポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する水性媒体中で反応させ、酸化高密度リポ蛋白質と、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、からなる免疫複合体3を生成させる工程;
(2’)酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片を、水性媒体中で、前記工程(1’)で生成した免疫複合体3と反応させ、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、酸化高密度リポ蛋白質と、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、からなる免疫複合体4を生成させる工程;
(3’)前記工程(2’)で生成した免疫複合体4を測定する工程
【0012】
[3]前記工程(1)又は前記工程(1’)の前記水性媒体が、さらに、蛋白質およびポリエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質を含有する、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記蛋白質が、アルブミンである[3]に記載の方法。
[5]前記アルブミンが、牛血清アルブミンである[4]に記載の方法。
[6]前記ポリオキシエチレン系界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸若しくはその塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル若しくはその塩、又は、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルである、[1]~[5]のいずれか1つに記載の方法。
【0013】
[7]前記陽イオン性界面活性剤が第四級アンモニウム塩である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の方法。
[8]前記高密度リポ蛋白質に特異的に結合する抗体が、アポA蛋白質に結合する抗体である[1]~[7]のいずれか1つに記載の方法。
[9]前記アポA蛋白質に結合する抗体が、アポA-I蛋白質に対する抗体である[8]に記載の方法。
【0014】
[10][1]又は[2]に記載の測定方法に用いる試薬であって、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、ポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種とを含有する、酸化高密度リポ蛋白質の測定試薬。
[11]さらに、蛋白質およびポリエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質を含有する、[10]に記載の試薬。
[12]前記蛋白質が、アルブミンである[11]に記載の試薬。
[13]前記アルブミンが、牛血清アルブミンである[12]に記載の試薬。
[14]前記ポリオキシエチレン系界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸若しくはその塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル若しくはその塩、又は、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルである、[10]~[13]のいずれか1つに記載の試薬。
【0015】
[15]前記陽イオン性界面活性剤が,第四級アンモニウム塩である、[10]~[14]のいずれか1つに記載の試薬。
[16]前記高密度リポ蛋白質に特異的に結合する抗体が、アポA蛋白質に結合する抗体である[10]~[15]のいずれか1つに記載の試薬。
[17]前記アポA蛋白質に結合する抗体が、アポA-I蛋白質に対する抗体である[16]に記載の試薬。
【0016】
[18]酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、ポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種と、を含有する第1試薬、及び、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片を含有する第2試薬を含む、酸化高密度リポ蛋白質の測定キット。
[19]高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、ポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種と、を含有する第1試薬、及び、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片を含有する第2試薬を含む、酸化高密度リポ蛋白質の測定キット。
[20]さらに、蛋白質およびポリエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質が、第1試薬、及び、第2試薬の少なくとも1つの試薬に含有される、[18]又は[19]記載のキット。
【0017】
[21]酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片を含有する第1試薬、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片を含有する第2試薬、及び、ポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する第3試薬を含む、酸化高密度リポ蛋白質の測定キット。
[22]さらに、蛋白質およびポリエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質が、第1~3試薬の少なくとも1つの試薬に含有される、[21]に記載のキット。
[23]前記蛋白質が、アルブミンである[20]又は[22]に記載のキット。
[24]前記アルブミンが、牛血清アルブミンである[23]に記載のキット。
【0018】
[25]前記ポリオキシエチレン系界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸若しくはその塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル若しくはその塩、又は、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルである、[18]~[24]のいずれか1つに記載のキット。
[26]前記陽イオン性界面活性剤が,第四級アンモニウム塩である、[18]~[25]のいずれか1つに記載のキット。
[27]前記高密度リポ蛋白質に特異的に結合する抗体が、アポA蛋白質に結合する抗体である[18]~[26]のいずれか1つに記載のキット。
[28]前記アポA蛋白質に結合する抗体が、アポA-I蛋白質に対する抗体である[27]に記載のキット。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、簡便で、かつ、高感度な試料中の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法、測定試薬及び測定キットが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.測定方法
<測定方法1>
本発明の試料中の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法は、以下の工程を含むことを特徴とする方法である。
(1)試料と、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片とを、ポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する水性媒体中で反応させ、酸化高密度リポ蛋白質と、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、からなる免疫複合体1を生成させる工程;
(2)高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片を、水性媒体中で、前記工程(1)で生成した免疫複合体1と反応させ、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、酸化高密度リポ蛋白質と、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、からなる免疫複合体2を生成させる工程;
(3)前記工程(2)で生成した免疫複合体2を測定する工程
【0021】
≪工程(1)≫
工程(1)において、試料と、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片とを、ポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する水性媒体中で反応させる方法は、酸化高密度リポ蛋白質と、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、からなる免疫複合体1を生成させることを可能とする方法であれば特に制限はない。
【0022】
酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片は不溶性担体に固定化されていても、固定化されていなくてもよいが、固定化されていることが好ましい。
酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片が不溶性担体に固定化されている場合、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片が固定化された不溶性担体は抗原抗体反応の反応液中で生成されてもよく、この場合、一組の親和性物質の組み合わせの一方(A)が結合した酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、一組の親和性物質の組み合わせの他方(a)が結合した不溶性担体と、を抗原抗体反応の反応液中で反応させることにより、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片が固定化された不溶性担体を抗原抗体反応の反応液中で生成させることができる。
【0023】
A-aの組み合わせとしては、例えば以下の組み合わせ等が挙げられる。
・ビオチンとアビジン類(アビジン、ニュートラアビジン、ストレプトアビジン等)との組み合わせ;
・アビジン類(アビジン、ニュートラアビジン、ストレプトアビジン等)とビオチンとの組み合わせ;
・酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片のFc領域と、Fc領域と結合する抗体との組み合わせ。
【0024】
不溶性担体としては、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片を固定化し、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする不溶性担体であれば特に制限はなく、例えばマイクロタイタープレート等のポリスチレンプレート、ガラス製または合成樹脂製の粒状物(ビーズ)、ガラス製または合成樹脂製の球状物(ボール)、ラテックス、磁性粒子、ニトロセルロース膜等の各種メンブレン、合成樹脂製の試験管等が挙げられる。
【0025】
酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と不溶性担体との間の結合としては、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする結合であれば特に制限はなく、物理吸着、化学結合等が挙げられる。物理吸着としては、例えば静電的結合、水素結合、疎水結合等が挙げられる。化学結合としては、例えば共有結合、配位結合等が挙げられる。
【0026】
酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片は、前述の物理吸着及び/又は化学結合を利用して、直接、不溶性担体に固定化してもよいし、間接的に不溶性担体に固定化してもよい。間接的な固定化方法としては、例えばビオチンとアビジン類(アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン等)との特異的結合を介して、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片を不溶性担体に固定化する方法等が挙げられる。また、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片は、リンカーを介した共有結合により不溶性担体に固定化してもよい。
【0027】
リンカーとしては、例えば、不溶性担体表面の官能基と、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片が有する官能基の両者を共有結合できる分子であれば特に制限はなく、例えば、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片が有する官能基と反応することができる第1の反応活性基と、不溶性担体表面の官能基と反応することができる第2の反応活性基とを同時に持つ分子であり、第1の反応活性基と第2の反応活性基が異なる基であることが好ましい。酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片の官能基、および不溶性担体がその表面に保持している官能基としては、例えばカルボキシル基、アミノ基、グリシジル基、スルフヒドリル基、水酸基、アミド基、イミノ基、N-ヒドロキシスクシンイミド基(NHS基)、マレイミド基等が挙げられる。リンカーにおける反応活性基としては、例えばアリールアジド、カルボジイミド、ヒドラジド、アルデヒド、ヒドロキシメチルホスフィン、イミドエステル、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、ペンタフルオロフェニル(PFP)エステル、ソラレン、ピリジルジスルフィド、ビニルスルホン等の基が挙げられる。
【0028】
また、検体と、ポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種とを予め混合した後、得られた混合物を抗原抗体反応に供してもよい。
【0029】
工程(1)における、試料と、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片との反応の反応温度は、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする温度であれば特に制限はなく、通常、0~50℃であり、4~45℃が好ましく、20~40℃が特に好ましい。当該反応の反応時間は、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする時間であれば特に制限はなく、通常、1分間~4時間であり、10分間~3時間が好ましく、30分間~2時間が特に好ましい。酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片の反応溶液中の濃度は、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする濃度であれば特に制限はなく、通常0.01~100μg/mLであり、0.1~20μg/mLが好ましい。
【0030】
≪工程(2)≫
工程(2)において、工程(1)で生成した免疫複合体1に、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片を添加して反応させてもよいし、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片に、工程(1)で生成した免疫複合体1を添加して反応させてもよい。
【0031】
工程(2)における、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、酸化高密度リポ蛋白質と、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、からなる免疫複合体2を生成させる反応の反応温度は、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする温度であれば特に制限はなく、通常、0~50℃であり、4~45℃が好ましく、20~40℃が特に好ましい。当該反応の反応時間は、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする時間であれば特に制限はなく、通常、1分間~4時間であり、10分間~3時間が好ましく、30分間~2時間が特に好ましい。高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片の反応溶液中の濃度は、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする濃度であれば特に制限はなく、通常0.01~100μg/mLであり、0.1~20μg/mLが好ましい。
【0032】
工程(1)と工程(2)は順次行われても、同時に行われてもよい。
また、工程(1)と工程(2)の間に、必要に応じて、工程(1)の反応後の不溶性担体を洗浄する工程を追加してもよい。工程(1)の反応後の不溶性担体の洗浄の際に使用する洗浄液としては、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする洗浄液であれば特に制限はなく、例えばリン酸緩衝化生理食塩水(0.15 mol/L 塩化ナトリウムを含有する10 mmol/L リン酸緩衝液、pH7.2、以下、PBSと記す)や界面活性剤を含有するPBSなどが挙げられる。界面活性剤としては、例えばTween 20等の非イオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0033】
工程(2)の後に、前述の洗浄工程を追加してもよい。工程(2)の後の不溶性担体の洗浄に用いられる洗浄液は、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする洗浄液であれば特に制限はなく、例えば前述の洗浄液等が挙げられる。
【0034】
≪工程(3)≫
工程(3)において、工程(2)で生成した免疫複合体2の量を以下の方法を用いて測定することにより、試料中の酸化高密度リポ蛋白質濃度が決定される。
【0035】
(i)高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片が標識化されていない場合
高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片に結合する抗体(以下、第3抗体と記す)若しくは該第3抗体の抗体断片に標識が結合した標識化第3抗体若しくは該抗体断片を、免疫複合体2(酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、酸化高密度リポ蛋白質と、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、からなる免疫複合体)中の高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と反応させて、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、酸化高密度リポ蛋白質と、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、標識化第3抗体若しくは該抗体断片と、からなる免疫複合体5を形成させ、該免疫複合体中の標識を後述の方法により測定することにより、工程(2)で生成した免疫複合体2の量を測定することができる。第3抗体としては、例えば高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片のFc領域に結合する抗体若しくは該抗体断片等が挙げられる。標識としては、後述の標識等が挙げられる。
標識化第3抗体若しくは該抗体断片と、免疫複合体2中の高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片との反応の反応温度は、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする温度であれば特に制限はなく、通常、0~50℃であり、4~45℃が好ましく、20~40℃が特に好ましい。当該反応の反応時間は、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする時間であれば特に制限はなく、通常、1分間~4時間であり、10分間~3時間が好ましく、30分間~2時間が特に好ましい。標識化第3抗体若しくは該抗体断片の反応溶液中の濃度は、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする濃度であれば特に制限はなく、通常0.01~100μg/mLであり、0.1~20μg/mLが好ましい。
【0036】
(ii)高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片が標識化されている場合
免疫複合体2中の標識を測定することにより、工程(2)で生成した免疫複合体2の量を測定することができる。
標識としては、例えば酵素、蛍光物質、発光物質、放射性同位元素、ビオチン、ジゴキシゲニン、タグ配列を含むポリペプチド、金属コロイド粒子、着色ラテックス粒子等が挙げられる。
【0037】
酵素としては、例えば、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ等が挙げられる。
蛍光物質としては、例えば、フルオレッセイン イソチオシアネート(FITC)、ローダミンB-イソチオシアネート(RITC)等が挙げられる。その他の蛍光物質としては、例えばquantum dot (Science, 281, 2016-2018, 1998)、フィコエリスリン等のフィコビリ蛋白質、GFP (Green fluorescent Protein)、RFP (Red fluorescent Protein)、YFP (Yellow fluorescent Protein)、BFP (Blue fluorescent Protein)等の蛍光を発する蛋白質が挙げられる。
発光物質としては、例えば、アクリジニウムおよびその誘導体、ルテニウム錯体化合物、ロフィン等が挙げられる。ルテニウム錯体化合物としては、例えば、Clin. Chem. 37, 9, 1534-1539, 1991に示されたルテニウム錯体化合物等が挙げられる。
放射性同位元素としては、例えば、3H、14C、35S、32P、125I、131I等が挙げられる。
【0038】
酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、酸化高密度リポ蛋白質と、標識化された、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、からなる免疫複合体中の標識の測定、並びに、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、酸化高密度リポ蛋白質と、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、標識化第3抗体若しくは該抗体断片と、からなる免疫複合体中の標識の測定は、用いる標識により適宜、選択することができる。
標識が発色物質、すなわち、ある波長の光を吸収する物質の場合には、分光光度計やマルチウェルプレートリーダー等を用いて吸光度を測定することができる。
標識が蛍光物質の場合には、蛍光光度計や蛍光マルチウェルプレートリーダー等を用いて蛍光強度を測定することができる。
標識が発光物質の場合には、発光光度計や発光マルチウェルプレートリーダー等を用いて、発光強度を測定することができる。
標識が放射性同位元素である場合、放射活性をシンチレーションカウンター、γ-ウェルカウンター等により、放射活性を測定することができる。
標識が酵素である場合、標識量は、酵素活性を測定することにより定量することができる。例えば酵素の基質を当該酵素と反応させ、生成した物質を測定することにより、標識量を測定することができる。
酵素がペルオキシダーゼである場合には、例えば吸光度法、蛍光法等によりペルオキシダーゼ活性を測定することができる。吸光度法によりペルオキシダーゼ活性を測定する方法としては、例えばペルオキシダーゼと、その基質である過酸化水素および酸化発色型色原体の組み合わせとを反応させ、反応液の吸光度を分光光度計やマルチウェルプレートリーダー等で測定する方法等が挙げられる。酸化発色型色原体としては、例えばロイコ型色原体、酸化カップリング発色型色原体等が挙げられる。
【0039】
ロイコ型色原体は、過酸化水素およびペルオキシダーゼ等の過酸化活性物質の存在下、単独で色素へ変換される物質である。具体的には、テトラメチルベンジジン、o-フェニレンジアミン、10-N-カルボキシメチルカルバモイル-3,7-ビス(ジメチルアミノ)-10H-フェノチアジン(CCAP)、10-N-メチルカルバモイル-3,7-ビス(ジメチルアミノ)-10H-フェノチアジン(MCDP)、N-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミンナトリウム塩(DA-64)、10-N-カルボキシメチルカルバモイル-3,7-ビス(ジメチルアミノ)-10H-フェノチアジンナトリウム塩(DA-67)、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミン、ビス〔3-ビス(4-クロロフェニル)メチル-4-ジメチルアミノフェニル〕アミン(BCMA)等が挙げられる。
【0040】
酸化カップリング発色型色原体は、過酸化水素およびペルオキシダーゼ等の過酸化活性物質の存在下、2つの化合物が酸化的カップリングして色素を生成する物質である。2つの化合物の組み合わせとしては、カプラーとアニリン類(トリンダー試薬)との組み合わせ、カプラーとフェノール類との組み合わせ等が挙げられる。
カプラーとしては、例えば4-アミノアンチピリン(4-AA)、3-メチル-2-ベンゾチアゾリノンヒドラジン等が挙げられる。
アニリン類としては、N-(3-スルホプロピル)アニリン、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3-メチルアニリン(TOOS)、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメチルアニリン(MAOS)、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメトキシアニリン(DAOS)、N-エチル-N-(3-スルホプロピル)-3-メチルアニリン(TOPS)、N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメトキシアニリン(HDAOS)、N,N-ジメチル-3-メチルアニリン、N,N-ビス(3-スルホプロピル)-3,5-ジメトキシアニリン、N-エチル-N-(3-スルホプロピル)-3-メトキシアニリン、N-エチル-N-(3-スルホプロピル)アニリン、N-エチル-N-(3-スルホプロピル)-3,5-ジメトキシアニリン、N-(3-スルホプロピル)-3,5-ジメトキシアニリン、N-エチル-N-(3-スルホプロピル)-3,5-ジメチルアニリン、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3-メトキシアニリン、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)アニリン、N-エチル-N-(3-メチルフェニル)-N’-サクシニルエチレンジアミン(EMSE)、N-エチル-N-(3-メチルフェニル)-N’-アセチルエチレンジアミン、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-4-フルオロ-3,5-ジメトキシアニリン(F-DAOS)等が挙げられる。
フェノール類としては、フェノール、4-クロロフェノール、3-メチルフェノール、3-ヒドロキシ-2,4,6-トリヨード安息香酸(HTIB)等が挙げられる。
【0041】
蛍光法によりペルオキシダーゼ活性を測定する方法としては、例えばペルオキシダーゼと、その基質である過酸化水素および蛍光物質の組み合わせとを反応させ、蛍光光度計や蛍光マルチウェルプレートリーダー等で生成した蛍光の強度を測定する方法等が挙げられる。当該蛍光物質としては、例えば4-ヒドロキシフェニル酢酸、3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、クマリン等が挙げられる。
【0042】
発光法によるペルオキシダーゼ活性を測定する方法としては、例えばペルオキシダーゼと、その基質である過酸化水素および発光物質の組み合わせとを反応させ、発光強度計や発光マルチウェルプレートリーダー等で生成した発光の強度を測定する方法等が挙げられる。当該発光物質としては、例えばルミノール化合物、ルシゲニン化合物等が挙げられる。
【0043】
酵素がアルカリホスファターゼである場合には、例えば発光法等によりアルカリホスファターゼ活性を測定することができる。発光法によりアルカリホスファターゼ活性を測定する方法としては、例えばアルカリホスファターゼとその基質とを反応させ、生成した発光の発光強度を発光強度計や発光マルチウェルプレートリーダー等で測定する方法等が挙げられる。
アルカリホスファターゼの基質としては、例えば3-(2’-スピロアダマンタン)-4-メトキシ-4-(3’-ホスホリルオキシ)フェニル-1,2-ジオキセタン・二ナトリウム塩(AMPPD)、2-クロロ-5-{4-メトキシスピロ[1,2-ジオキセタン-3,2’-(5’-クロロ)トリシクロ[3.3.1.13.7]デカン]-4-イル}フェニルホスフェート・二ナトリウム塩(CDP-StarTM)、3-{4-メトキシスピロ[1,2-ジオキセタン-3,2’-(5’-クロロ)トリシクロ[3.3.1.13.7]デカン]-4’-イル}フェニルホスフェート・二ナトリウム塩(CSPDTM)、 9-[(フェニルオキシ)(ホスホリルオキシ)メチリデン]-10-メチルアクリダン・二ナトリウム、9-[(4-クロロフェニルチオ)(ホスホリルオキシ)メチリデン]-10-メチルアクリダン・二ナトリウム(LumigenTMAPS-5)等が挙げられる。
【0044】
酵素がβ-D-ガラクトシダーゼである場合には、例えば吸光度法(比色法)、発光法又は蛍光法等によりβ-D-ガラクトシダーゼ活性を測定することができる。吸光度法(比色法)によりβ-D-ガラクトシダーゼ活性を測定する方法としては、β-D-ガラクトシダーゼとその基質とを反応させ、反応液の吸光度を分光光度計やマルチウェルプレートリーダー等で測定する方法等が挙げられる。吸光度法(比色法)によりβ-D-ガラクトシダーゼ活性を測定する方法における、β-D-ガラクトシダーゼの基質としては、例えばo-ニトロフェル-β-D-ガラクトピラノシド等が挙げられる。発光法によりβ-D-ガラクトシダーゼ活性を測定する方法としては、例えばβ-D-ガラクトシダーゼとその基質とを反応させ、反応液の発光度を発光強度計や発光マルチウェルプレートリーダー等で測定する方法等が挙げられる。発光法によりβ-D-ガラクトシダーゼ活性を測定する方法における、β-D-ガラクトシダーゼの基質としては、例えばガラクトン-プラス[Galacton-Plus、アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)社製]及びその類似化合物等が挙げられる。蛍光法によりβ-D-ガラクトシダーゼ活性を測定する方法としては、例えばβ-D-ガラクトシダーゼとその基質とを反応させ、反応液の蛍光度を蛍光光度計や蛍光マルチウェルプレートリーダー等で測定する方法等が挙げられる。蛍光法によりβ-D-ガラクトシダーゼ活性を測定する方法における、β-D-ガラクトシダーゼの基質としては、例えば4-メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトピラノシド等が挙げられる。
【0045】
酵素がルシフェラーゼである場合には、例えば発光法等によりルシフェラーゼ活性を測定することができる。発光法によりルシフェラーゼ活性を測定する方法としては、例えばルシフェラーゼとその基質とを反応させ、反応液の発光度を発光強度計や発光マルチウェルプレートリーダー等で測定する方法等が挙げられる。ルシフェラーゼの基質としては、例えばルシフェリン、セレンテラジン等が挙げられる。
【0046】
標識が蛍光物質、発光物質、放射性同位元素および酵素以外の場合は、当該標識に特異的に結合する物質を蛍光物質、発光物質、放射性同位元素、酵素等で標識した標識体と、免疫複合体2中の標識、又は、免疫複合体5中の標識とを結合させ、当該標識に特異的に結合する物質を標識している蛍光物質、発光物質、放射性同位元素又は酵素を、上述の方法により測定することにより、当該標識を測定することができる。標識に特異的に結合する物質としては、標識に特異的に結合する抗体の他、標識がビオチンの場合は、アビジン類等が挙げられる。
【0047】
工程(3)の後に以下の工程(4)及び工程(5)を行うことにより、試料中の酸化高密度リポ蛋白質の濃度の決定することができる。
(4)試料として、既知濃度の酸化高密度リポ蛋白質を用いて前記工程(1)から(3)を行い、酸化高密度リポ蛋白質濃度と標識の測定値との関係を表す検量線を作成する工程;
(5)工程(4)で作成された検量線と、工程(2)で測定された標識の測定値と、から、試料中の酸化高密度リポ蛋白質の濃度を決定する工程
【0048】
<測定方法2>
本発明の試料中の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法は、以下の工程を含むことを特徴とする方法である。
(1’)試料と、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片若しくは該抗体断片若しくは該抗体断片とを、ポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する水性媒体中で反応させ、酸化高密度リポ蛋白質と、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、からなる免疫複合体3を生成させる工程;
(2’)酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片を、水性媒体中で、前記工程(1’)で生成した免疫複合体3と反応させ、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、酸化高密度リポ蛋白質と、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、からなる免疫複合体4を生成させる工程;
(3’)前記工程(2’)で生成した免疫複合体4を測定する工程
【0049】
≪工程(1’)≫
工程(1’)において、試料と、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片若しくは該抗体断片若しくは該抗体断片とを、ポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する水性媒体中で反応させる方法は、酸化高密度リポ蛋白質、及び、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片からなる免疫複合体3を生成させることを可能とする方法であれば特に制限はない。
【0050】
高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片は不溶性担体に固定化されていても、固定化されていなくてもよいが、固定化されていることが好ましい。
高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片が不溶性担体に固定化されている場合、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片が固定化された不溶性担体は抗原抗体反応の反応液中で生成されてもよく、この場合、一組の親和性物質の組み合わせの一方(B)が結合した高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、一組の親和性物質の組み合わせの他方(b)が結合した不溶性担体とを抗原抗体反応の反応液中で反応させることにより、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片が固定化された不溶性担体を抗原抗体反応の反応液中で生成させることができる。
【0051】
B-bの組み合わせとしては、例えば以下の組み合わせ等が挙げられる。
・ビオチンとアビジン類(アビジン、ニュートラアビジン、ストレプトアビジン等)との組み合わせ;
・アビジン類(アビジン、ニュートラアビジン、ストレプトアビジン等)とビオチンとの組み合わせ;
・高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片のFc領域と、Fc領域と結合する抗体との組み合わせ。
【0052】
不溶性担体としては、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片を固定化し、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする不溶性担体であれば特に制限はなく、例えば前述の不溶性担体等が挙げられる。
【0053】
高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と不溶性担体との間の結合としては、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする結合であれば特に制限はなく、例えば前述の方法が挙げられる。
高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片は、前述の物理吸着及び/又は化学結合を利用して、直接、不溶性担体に固定化してもよいし、間接的に不溶性担体に固定化してもよい。間接的な固定化方法としては、例えば前述の方法等が挙げられる。
また、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片は、リンカーを介した共有結合により不溶性担体に固定化してもよい。リンカーとしては、例えば、不溶性担体表面の官能基と高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片が有する官能基の両者を共有結合できる分子であれば特に制限はなく、例えば前述のリンカー等が挙げられる。
また、検体と、ポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種とを予め混合した後、得られた混合物を抗原抗体反応に供してもよい。
【0054】
工程(1’)における、試料と高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片との反応温度は、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする温度であれば特に制限はなく、通常、0~50℃であり、4~45℃が好ましく、20~40℃が特に好ましい。当該反応の反応時間は、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする時間であれば特に制限はなく、通常、1分間~4時間であり、10分間~3時間が好ましく、30分間~2時間が特に好ましい。高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片の反応溶液中の濃度は、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする濃度であれば特に制限はなく、通常0.01~100μg/mLであり、0.1~20μg/mLが好ましい。
【0055】
≪工程(2’)≫
工程(2’)において、工程(1’)で生成した免疫複合体3に、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片を添加して反応させてもよいし、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片に、工程(1’)で生成した免疫複合体3を添加して反応させてもよい。
工程(2’)における、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、酸化高密度リポ蛋白質と、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、からなる免疫複合体4を生成させる反応の反応温度は、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする温度であれば特に制限はなく、通常、0~50℃であり、4~45℃が好ましく、20~40℃が特に好ましい。当該反応の反応時間は、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする時間であれば特に制限はなく、通常、1分間~4時間であり、10分間~3時間が好ましく、30分間~2時間が特に好ましい。酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片の反応溶液中の濃度は、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする濃度であれば特に制限はなく、通常0.01~100μg/mLであり、0.1~20μg/mLが好ましい。
【0056】
工程(1’)と工程(2’)とは順次行われてよいが、同時に行われてもよい。
工程(1’)と工程(2’)を同時に行う場合には、試料中の酸化高密度リポ蛋白質を、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片、並びに、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と反応させる。工程(1’)と工程(2’)を同時に行う場合も、前述の通り、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片は不溶性担体に固定化されていても、固定化されていなくてもよく、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片の不溶性担体への固定化は前述の方法で行うことができる。
【0057】
また、工程(1’)と工程(2’)の間に、必要に応じて、工程(1’)の反応後の不溶性担体を洗浄する工程を追加してもよい。工程(1’)の反応後の不溶性担体の洗浄の際に使用する洗浄液としては、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする洗浄液であれば特に制限はなく、例えば前述の洗浄液等が挙げられる。
工程(2’)の後に、前述の洗浄工程を追加してもよい。工程(2’)の後の不溶性担体の洗浄に用いられる洗浄液は、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする洗浄液であれば特に制限はなく、例えば前述の洗浄液等が挙げられる。
【0058】
≪工程(3’)≫
工程(3’)において、工程(2’)で生成した免疫複合体4の量を以下の方法を用いて測定することにより、試料中の酸化高密度リポ蛋白質濃度が決定される。
【0059】
(i’)酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片が標識化されていない場合
酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片に結合する抗体(以下、第4抗体と記す)若しくは該抗体断片に標識が結合した標識化第4抗体若しくは該抗体断片を、免疫複合体4(高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、酸化高密度リポ蛋白質と、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、からなる免疫複合体)中の酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と反応させて、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、酸化高密度リポ蛋白質と、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、標識化第4抗体若しくは該抗体断片と、からなる免疫複合体6を形成させ、該免疫複合体中の標識を後述の方法により測定することにより、工程(2’)で生成した免疫複合体4の量を測定することができる。第4抗体としては、例えば酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片のFc領域に結合する抗体若しくはそのフラグメント等が挙げられる。
標識化第4抗体若しくは該抗体断片と、免疫複合体4中の酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片との反応の反応温度は、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする温度であれば特に制限はなく、通常、0~50℃であり、4~45℃が好ましく、20~40℃が特に好ましい。当該反応の反応時間は、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする時間であれば特に制限はなく、通常、1分間~4時間であり、10分間~3時間が好ましく、30分間~2時間が特に好ましい。標識化第4抗体若しくは該抗体断片の反応溶液中の濃度は、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする濃度であれば特に制限はなく、通常0.01~100μg/mLであり、0.1~20μg/mLが好ましい。
【0060】
(ii’)酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片が標識化されている場合
免疫複合体4中の標識を測定することにより、工程(2’)で生成した免疫複合体4の量を測定することができる。
標識としては、例えば前述の標識物質等が挙げられ、当該標識の測定としては、例えば前述の測定方法等が挙げられる。
標識が蛍光物質、発光物質、放射性同位元素および酵素以外の場合は、当該標識に特異的に結合する物質を蛍光物質、発光物質、放射性同位元素、酵素等で標識した標識体と、免疫複合体4中の標識、又は、免疫複合体6中の標識とを結合させ、当該標識に特異的に結合する物質を標識している蛍光物質、発光物質、放射性同位元素又は酵素を、上述の方法により測定することにより、当該標識を測定することができる。標識に特異的に結合する物質としては、標識に特異的に結合する抗体の他、標識がビオチンの場合は、アビジン類等が挙げられる。
【0061】
工程(3’)の後に、以下の工程(4’)及び工程(5’)を行うことにより、試料中の酸化高密度リポ蛋白質の濃度の決定することができる。
(4’)試料として、既知濃度の酸化高密度リポ蛋白質を用いて前記工程(1’)から(3’)を行い、酸化高密度リポ蛋白質濃度と標識の測定値との関係を表す検量線を作成する工程;
(5’)工程(4’)で作成された検量線と、工程(2’)で測定された標識の測定値と、から、試料中の酸化高密度リポ蛋白質の濃度を決定する工程
【0062】
本発明における酸化高密度リポ蛋白質とは、高密度リポ蛋白質を構成するアポ蛋白質であるアポA蛋白質を有し、高密度リポ蛋白質を構成する脂質部分の酸化により機能不全を呈する高密度リポ蛋白質をいう。
【0063】
本発明における試料としては、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする試料であれば特に制限はなく、例えば生体試料等が挙げられる。生体試料としては、例えば全血、血漿、血清、尿、髄液、唾液、羊水、尿、汗、膵液等が挙げられ、全血、血漿、血清、尿等が好ましい。
【0064】
本発明における酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体は、酸化高密度リポ蛋白質に結合し、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする抗体であれば特に制限はなく、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれも使用可能である。本発明における酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体としては、例えばマウス-マウスハイブリドーマセルラインFOH1a/DLH3(FERM BP-7171)によって産生されるモノクローナル抗体(以下、DLH3抗体と記す)等が挙げられる。
【0065】
本発明におけるホスホコリンに結合する抗体は、酸化高密度リポ蛋白質に結合し、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする抗体であれば特に制限はなく、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれも使用可能である。本発明におけるホスホコリンに結合する抗体としては、例えば、T-15抗体[J.Exp.Med.,132,737(1970)]、ハイブリドーマKTM-285(FERM BP-7589)により生産されたモノクローナル抗体KTM-285、形質転換細胞KTM-2001(FERM BP-7549)により生産される遺伝子組換え抗体KTM-2001等が挙げられる。
【0066】
本発明における酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体の抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体の抗体断片は、酸化高密度リポ蛋白質に結合し、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする抗体断片であれば特に制限はなく、例えば、抗体をパパイン処理により得られるFab、ペプシン処理により得られるF(ab’)2、ペプシン処理-還元処理により得られるFab’等のFc部分が除去された抗体断片、遺伝子工学的手法によりFc部分が除去された抗体断片等が挙げられる。
【0067】
本発明における高密度リポ蛋白質に結合する抗体は、高密度リポ蛋白質に結合し、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする抗体であれば特に制限はなく、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれも使用可能である。
【0068】
本発明における高密度リポ蛋白質に結合する抗体としては、アポA蛋白質に結合する抗体が好ましく、アポA-I蛋白質に対する抗体がより好ましい。かかる抗体として、例えば、抗アポA-I蛋白質モノクローナル抗体[Abnova社製]等が挙げられる。
本発明における高密度リポ蛋白質に結合する抗体の抗体断片は、高密度リポ蛋白質に結合し、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする抗体断片であれば特に制限はなく、例えば、前述の抗体断片等が挙げられる。
【0069】
本発明におけるポリオキシエチレン系界面活性剤としては、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とするポリオキシエチレン系界面活性剤であれば特に制限はなく、例えばポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸若しくはその塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル若しくはその塩、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル等が挙げられる。
【0070】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルにおける脂肪酸としては、例えば炭素数8~24の飽和又は不飽和脂肪酸が挙げられ、炭素数12~18の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましい。炭素数8~24の飽和又は不飽和脂肪酸としては、例えばオクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコサトリエン酸、アラキドン酸、イコサン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサン酸、ドコサヘキサエン酸、テトラドコサン酸、テトラコサペンタエン酸等が挙げられる。炭素数12~18の飽和又は不飽和脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート等が挙げられる。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの市販品としては、例えばTween 20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート;シグマ-アルドリッチ社製)、Tween 40(ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート;和光純薬工業社製)、Tween 60(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート;シグマ-アルドリッチ社製)、Tween 80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート;和光純薬工業社製)、レオドールTW-L106(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート;花王社製)、レオドールTW-L120(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート;花王社製)、レオドールTW-O106V(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート;花王社製)、レオドールTW-O120V(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート;花王社製)、レオドールTW-P120(ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート;花王社製)、レオドールTW-S106V(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート;花王社製)、レオドールTW-S120V(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート;花王社製)、BLAUNON OT-106 (ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート;青木油脂社製)、BLAUNON OT-21 (ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート;青木油脂社製)、ニューコール 25 (ポリオキシエチレンソルビタンラウレート;日本乳化剤社製)、ニューコール65 (ポリオキシエチレンソルビタンステアレート;日本乳化剤社製)、ニューコール85 (ポリオキシエチレンソルビタンオレエート;日本乳化剤社製)等が挙げられる。
【0071】
ポリオキシエチレン脂肪酸エステルにおける脂肪酸としては、例えば炭素数8~24の飽和又は不飽和脂肪酸が挙げられ、炭素数12~18の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましい。炭素数8~24の飽和又は不飽和脂肪酸としては、例えばオクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコサトリエン酸、アラキドン酸、イコサン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサン酸、ドコサヘキサエン酸、テトラドコサン酸、テトラコサペンタエン酸等が挙げられる。炭素数12~18の飽和又は不飽和脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、例えばポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンジステアレート等が挙げられる。ポリオキシエチレン脂肪酸エステルの市販品としては、例えばエマノーン1112(ポリオキシエチレンモノラウレート;花王社製)、エマノーン4110(ポリオキシエチレンモノオレエート;花王社製)、エマノーン3199V(ポリオキシエチレンモノステアレエート;花王社製)、エマノーン3299V(ポリオキシエチレンジステアレエート;花王社製)、BLUINON L-400 (ポリオキシエチレンモノラウレート;青木油脂社製)、BLAUNON S-300A (ポリオキシエチレンモノステアレート;青木油脂社製)、BLAUNON O-600SA (ポリオキシエチレンモノオレエート;青木油脂社製)等が挙げられる。
【0072】
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルにおけるアルキルとしては、例えば炭素数8~9のアルキル等が挙げられる。炭素数8~9のアルキルとしては、例えばオクチル、ノニル等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルとしては、例えばポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの市販品としては、例えばトリトンX-100(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル;シグマ-アルドリッチ社製)、BLAUNON NK-810 (ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル;青木油脂社製)等が挙げられる。
【0073】
ポリオキシエチレンアルキルアミンにおけるアルキルとしては、例えば炭素数8~24のアルキルが挙げられ、炭素数10~20のアルキルが好ましい。炭素数8~24のアルキルとしては、例えばオクチル、イソオクチル、ノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル(ラウリル)、トリデシル、テトラデシル(ミリスチル)、ペンタデシル、ヘキサデシル(セチル)、ヘプタデシル、オクタデシル(ステアリル)、オレイル、ノナデシル、イコシル、ヘネイコシル、ドコシル(ベヘニル)、トリコシル、テトラコシル等が挙げられる。炭素数10~20のアルキルとしては、例えばデシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル(ラウリル)、トリデシル、テトラデシル(ミリスチル)、ペンタデシル、ヘキサデシル(セチル)、ヘプタデシル、オクタデシル(ステアリル)、オレイル、ノナデシル、イコシル等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルアミンの市販品としては、例えばナイミーンL-201(オキシエチレンドデシルアミン;日油社製)、ナイミーンL-202、ナイミーンL-207、ナイミーンL-215(以上、ポリオキシエチレンドデシルアミン;日油社製)、ナイミーンS-202、ナイミーンS-204、ナイミーンS-210、ナイミーンS-215、ナイミーンS-220(以上、ポリオキシエチレンオクタデシルアミン;日油社製)、ナイミーンT2-202、ナイミーンT2-210、ナイミーンT2-230[以上、ポリオキシエチレンアルキル(牛脂)アミン;日油社製]、ナイミーンF-202、ナイミーンF-203、ナイミーンF-205、ナイミーンF-210、ナイミーンF-215[以上、ポリオキシエチレンアルキル(ヤシ油)アミン;日油社製]、ブラウノンL-202、ブラウノンL-205、ブラウノンL-207、ブラウノンL-210、ブラウノンL-230(以上、ポリオキシエチレンドデシルアミン;青木油脂社製)、ブラウノンS-207、ブラウノンS-210、ブラウノンS-215、ブラウノンS-220、ブラウノンS-230(以上、ポリオキシエチレンオクタデシルアミン;青木油脂社製)、ブラウノンS-205T、ブラウノンS-208T、ブラウノンS-210T、ブラウノンS-215T、ブラウノンS-230T[以上、ポリオキシエチレンアルキル(牛脂)アミン;青木油脂社製]、ニューコールOD420(ポリオキシエチレンオクタデシルアミン;日本乳化剤社製)、パイオニンD3104(ポリオキシエチレンドデシルアミン;竹本油脂社製)、パイオニンD3110(ポリオキシエチレンドデシルアミン;竹本油脂社製)、パイオニンD3605[ポリオキシエチレンアルキル(大豆)アミン;竹本油脂社製]、パイオニンD3615T[ポリオキシエチレンアルキル(牛脂)アミン;竹本油脂社製]、BLAUNON O209(ポリオキシエチレンオレイルアミン;青木油脂社製)等が挙げられる。
【0074】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルにおけるアルキルとしては、例えば炭素数8~24のアルキルが挙げられ、炭素数10~20のアルキルが好ましい。炭素数8~24のアルキルとしては、例えばオクチル、イソオクチル、ノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル(ラウリル)、トリデシル、テトラデシル(ミリスチル)、ペンタデシル、ヘキサデシル(セチル)、ヘプタデシル、オクタデシル(ステアリル)、オレイル、ノナデシル、イコシル、ヘネイコシル、ドコシル(ベヘニル)、トリコシル、テトラコシル等が挙げられる。炭素数10~20のアルキルとしては、例えばデシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル(ラウリル)、トリデシル、テトラデシル(ミリスチル)、ペンタデシル、ヘキサデシル(セチル)、ヘプタデシル、オクタデシル(ステアリル)、オレイル、ノナデシル、イコシル等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルの市販品としては、例えばノニオンK-204、ノニオンK-220(以上、ポリオキシエチレンラウリルエーテル;日油社製)、ノニオンE-205、ノニオンE-215(以上、ポリオキシエチレンオレイルエーテル;日油社製)、ノニオンS-215、ノニオンS-225(以上、ポリオキシエチレンステアリルエーテル;日油社製)、エマルゲン108、エマルゲン120(以上、ポリオキシエチレンラウリルエーテル;花王社製)、エマルゲン220(ポリオキシエチレンセチルエーテル;花王社製)、エマルゲン320P(ポリオキシエチレンステアリルエーテル;花王社製)、エマルゲン420(ポリオキシエチレンオレイルエーテル;花王社製)、アデカトールLA-875、アデカトールLA-975(以上、ポリオキシエチレンラウリルエーテル;ADEKA社製)、アデカトールOA-7(ポリオキシエチレンオレイルエーテル;ADEKA社製)、エマルミンNL-70、エマルミンNL-90、エマルミンNL-100、エマルミンNL-110、エマルミンLS-80、エマルミンLS-90、エマルミンL-380(以上、ポリオキシエチレンラウリルエーテル;三洋化成工業社製)、BLAUNON EL-1507、BLAUNON EL-1509、BLAUNON EL-1512P、BLAUNON EL-1515、BLAUNON EL-1521(以上、ポリオキシエチレンラウリルエーテル;青木油脂社製)、BLAUNON CH-310、BLAUNON CH-310L、BLAUNON CH-313(以上、ポリオキシエチレンセチルエーテル;青木油脂社製)、BLAUNON SR-711(ポリオキシエチレンステアリルエーテル;青木油脂社製)、BLAUNON EN-1511(ポリオキシエチレンオレイルエーテル;青木油脂社製)、ノイゲンSD-60、ノイゲンSD-70、ノイゲンSD-80、ノイゲンSD-110、ノイゲンSD-150(以上、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル;第一工業製薬社製)、ノイゲンTDS-80、ノイゲンTDS-100、ノイゲンTDS-200D(以上、ポリオキシエチレントリデシルエーテル;第一工業製薬社製)等が挙げられる。
【0075】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸若しくはその塩におけるアルキルとしては、例えば炭素数8~24のアルキルが挙げられ、炭素数10~20のアルキルが好ましい。炭素数8~24のアルキルとしては、例えばオクチル、イソオクチル、ノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル(ラウリル)、トリデシル、テトラデシル(ミリスチル)、ペンタデシル、ヘキサデシル(セチル)、ヘプタデシル、オクタデシル(ステアリル)、オレイル、ノナデシル、イコシル、ヘネイコシル、ドコシル(ベヘニル)、トリコシル、テトラコシル等が挙げられる。炭素数10~20のアルキルとしては、例えばデシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル(ラウリル)、トリデシル、テトラデシル(ミリスチル)、ペンタデシル、ヘキサデシル(セチル)、ヘプタデシル、オクタデシル(ステアリル)、オレイル、ノナデシル、イコシル等が挙げられる。塩としては、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、モノエタノールアミン塩等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸若しくはその塩としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム塩等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸若しくはその塩の市販品としては、例えばプライサーフA212C、プライサーフA215C(以上、ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸;第一工業製薬社製)、プライサーフA208F(ポリオキシエチレンオクチルエーテルリン酸;第一工業製薬社製)、プライサーフA219B(ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸;第一工業製薬社製)、プライサーフDB-01(ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸・モノエタノールアミン塩;第一工業製薬社製)、NIKKOL DLP-10、NIKKOL TLP-4(以上、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム;日光ケミカルズ社製)、NIKKOL TCP-5(ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム;日光ケミカルズ社製)、NIKKOL DOP-6NV(ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム;日光ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0076】
ポリオキシエチレン多環フェニルエーテルにおける多環フェニルとは、基内に1つの芳香環を有する基(置換基)が2つ以上置換したフェニル基、基内に2つ以上の芳香環を有する基(置換基)が1つまたは複数置換したフェニル基等が挙げられる。基内に1つの芳香環を有する基としては、例えばベンジル、1-(フェニル)エチル等が挙げられる。基内に2つ以上の芳香環を有する基としては、例えばナフチル等が挙げられる。ポリオキシエチレン多環フェニルエーテルの市販品としては、例えばニューコール704、ニューコール706、ニューコール707、ニューコール708、ニューコール709、ニューコール710、ニューコール711、ニューコール712、ニューコール714、ニューコール610、ニューコール2607、ニューコール2609、ニューコール2614(以上、日本乳化剤社製)等が挙げられる。
【0077】
ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル若しくはその塩における多環フェニルとは、基内に1つの芳香環を有する基(置換基)が2つ以上置換したフェニル基、基内に2つ以上の芳香環を有する基(置換基)が1つまたは複数置換したフェニル基等が挙げられる。基内に1つの芳香環を有する基としては、例えばベンジル、1-(フェニル)エチル等が挙げられる。基内に2つ以上の芳香環を有する基としては、例えばナフチル等が挙げられる。塩としては、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、モノエタノールアミン塩等が挙げられる。ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル若しくはその塩の市販品としては、例えばニューコール707-SF、ニューコール707-SFC、ニューコール707-SN、ニューコール714-SF、ニューコール714-SN(以上、日本乳化剤社製)等が挙げられる。
【0078】
ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルにおける脂肪酸としては、例えば例えば炭素数8~24の飽和又は不飽和脂肪酸が挙げられ、炭素数12~18の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましい。炭素数8~24の飽和又は不飽和脂肪酸としては、例えばオクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコサトリエン酸、アラキドン酸、イコサン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサン酸、ドコサヘキサエン酸、テトラドコサン酸、テトラコサペンタエン酸、ヤシ油脂肪酸等が挙げられる。炭素数12~18の飽和又は不飽和脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ヤシ油脂肪酸等が挙げられる。ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルとしては、例えばポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリル、ポリオキシエチレンラウリン酸グリセリル、ポリオキシエチレンオレイン酸グリセリル等が挙げられる。ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルの市販品としては、例えばユニグリMK-207、ユニグリMK-230、ユニグリMK-278(以上、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリル;日油社製)、ユニグリML-212、ユニグリML-220(以上、ポリオキシエチレンラウリン酸グリセリル;日油社製)、ユニグリMO-220、ユニグリMO-230(以上、ポリオキシエチレンオレイン酸グリセリル;日油社製)等が挙げられる。
【0079】
本発明における陽イオン性界面活性剤としては、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする陽イオン性界面活性剤であれば特に制限はなく、例えば第四級アンモニウム塩等が挙げられる。第四級アンモニウム塩としては、例えば、下記一般式(I)で表される第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0080】
【0081】
(式中、R1は、炭素数8~24のアルキルを表し、R2は、炭素数1~24のアルキルを表し、R3およびR4は、同一または異なって、それぞれ炭素数1~6のアルキルを表し、Xは陰イオンを表す)
【0082】
炭素数8~24のアルキルとしては、例えばオクチル、イソオクチル、ノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル(ラウリル)、トリデシル、テトラデシル(ミリスチル)、ペンタデシル、ヘキサデシル(セチル)、ヘプタデシル、オクタデシル(ステアリル)、オレイル、ノナデシル、イコシル、ヘネイコシル、ドコシル(ベヘニル)、トリコシル、テトラコシル等が挙げられる。
【0083】
炭素数1~24のアルキルとしては、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、ノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル(ラウリル)、トリデシル、テトラデシル(ミリスチル)、ペンタデシル、ヘキサデシル(セチル)、ヘプタデシル、オクタデシル(ステアリル)、オレイル、ノナデシル、イコシル、ヘネイコシル、ドコシル(ベヘニル)、トリコシル、テトラコシル等が挙げられる。
炭素数1~6のアルキルとしては、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
【0084】
陰イオンとしては、例えば水酸化物イオン、ハロゲンイオン、無機酸由来の陰イオン、有機酸由来の陰イオン等があげられる。
ハロゲンイオンとしては、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等が挙げられる。
無機酸由来の陰イオンとしては、例えば硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、炭酸イオン、重炭酸イオン等が挙げられる。
有機酸由来の陰イオンとしては、例えばギ酸イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、クエン酸イオン、グルタミン酸イオン等のカルボン酸イオン等が挙げられる。
【0085】
第四級アンモニウム塩の市販品としては、例えばカチオンAB(オクタデシルトリメチルアンモニウム クロライド;日油社製)、カチオンBB(ドデシルトリメチルアンモニウム クロライド;日油社製)、カチオン2ABT(ジステアリルジメチルアンモニウム クロライド;日油社製)、カチオン2DB-500E(ジデシルジメチルアンモニウム クロライド;日油社製)、カチオン2-OLR(ジオレイルジメチルアンモニウム クロライド;日油社製)等が挙げられる。
【0086】
本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法においては、ポリオキシエチレン系界面活性剤、及び、陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる界面活性剤は、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
本発明におけるポリオキシエチレン系界面活性剤、又は、陽イオン性界面活性剤の反応溶液中の濃度は、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする濃度であれば特に制限はなく、例えば0.0001~2.0%(w/v)であり、0.001~0.1%(w/v)が好ましく、0.005~0.05%(w/v)が特に好ましい。
本発明において、さらに蛋白質及び/又はポリエチレングリコールを用いることによってさらに高感度に酸化HDLを測定することができる。
本発明における蛋白質としては、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする蛋白質であれば特に制限はなく、例えばアルブミン、牛胎児血清(FBS)、カゼイン、ブロックエース(DSファーマバイオメディカル社製)等が挙げられ、アルブミンが好ましい。アルブミンとしては、例えば牛血清アルブミン(BSA)等が挙げられる。
本発明における蛋白質の反応溶液中の濃度は、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする濃度であれば特に制限はなく、例えば0.01~10.0%(w/v)であり、0.1~2.0%(w/v)が好ましい。
本発明におけるポリエチレングリコールとしては、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とするポリエチレングリコールであれば特に制限はなく、例えば平均分子量100~25,000のポリエチレングリコール等が挙げられ、平均分子量200~20,000のポリエチレングリコールが好ましい。
本発明におけるポリエチレングリコールの反応溶液中の濃度は、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする濃度であれば特に制限はなく、例えば0.5~15.0%(w/v)であり、1.0~10.0%(w/v)が好ましい。
【0088】
本発明における水性媒体としては、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする水性媒体であれば特に制限はなく、例えば脱イオン水、蒸留水、緩衝液等があげられ、緩衝液が好ましい。水性媒体のpHとしては、例えば4~10である。水性媒体として緩衝液を用いる場合には、設定するpHに適した緩衝液を用いることが好ましい。緩衝液の調製に使用される緩衝剤としては、緩衝能を有するものならば特に限定されないが、例えば乳酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、フタル酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、トリエタノールアミン緩衝剤、ジエタノールアミン緩衝剤、リジン緩衝剤、バルビツール緩衝剤、イミダゾール緩衝剤、リンゴ酸緩衝剤、シュウ酸緩衝剤、グリシン緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、グッド緩衝剤等が挙げられる。
【0089】
グッド緩衝剤としては、例えば2-モルホリノエタンスルホン酸(MES)緩衝剤、ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis-Tris)緩衝剤、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)緩衝剤、N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA)緩衝剤、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)緩衝剤、2-[N-(2-アセトアミド)アミノ]エタンスルホン酸(ACES)緩衝剤、3-モルホリノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)緩衝剤、2-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]エタンスルホン酸(BES)緩衝剤、3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)緩衝剤、2-{N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}エタンスルホン酸(TES)緩衝剤、N-(2-ヒドロキシエチル)-N’-(2-スルホエチル)ピペラジン(HEPES)緩衝剤、3-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)緩衝剤、2-ヒドロキシ-3-{[N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}プロパンスルホン酸(TAPSO)緩衝剤、ピペラジン-N,N’-ビス(2-ヒドロキシプロパン-3-スルホン酸)(POPSO)緩衝剤、N-(2-ヒドロキシエチル)-N’-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)ピペラジン(HEPPSO)緩衝剤、N-(2-ヒドロキシエチル)-N’-(3-スルホプロピル)ピペラジン(EPPS)緩衝剤、[N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン](Tricine)緩衝剤、[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン](Bicine)緩衝剤、3-[N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノプロパンスルホン酸(TAPS)緩衝剤、2-(N-シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸(CHES)緩衝剤、3-(N-シクロヘキシルアミノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(CAPSO)緩衝剤、3-(N-シクロヘキシルアミノ)プロパンスルホン酸(CAPS)緩衝剤等が挙げられる。
【0090】
水性媒体には、金属イオン、糖類、防腐剤、蛋白質安定化剤等が含有されてもよい。金属イオンとしては、例えばマグネシウムイオン、マンガンイオン、亜鉛イオン等が挙げられる。糖類としては、例えばマンニトール、ソルビトール等が挙げられる。防腐剤としては、例えばアジ化ナトリウム、抗生物質(ストレプトマイシン、ペニシリン、ゲンタマイシン等)、バイオエース、プロクリン300、プロキセル(Proxel)GXL等が挙げられる。蛋白質安定化剤としては、例えばペルオキシダーゼ安定化緩衝液[Peroxidase Stabilizing Buffer、ダコサイトメーション(DakoCytomation)社製]等が挙げられる。
【0091】
2.測定試薬
本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定試薬は、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法に用いられる試薬であり、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、ポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種とを含有する試薬である。本発明の試薬にはさらに、蛋白質およびポリエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質が含有されていてもよい。
【0092】
本発明の測定試薬における酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片としては、例えば前述の酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片がそれぞれ挙げられる。本発明の測定用試薬における酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片の含量としては、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする含量であれば特に制限はなく、通常、前述の水性媒体中、又は、前述の水性媒体で溶解された状態で0.01~100μg/mLであり、0.1~20μg/mLが好ましい。
【0093】
本発明の測定試薬を、前述の測定方法1において使用する場合には、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片は、不溶性担体に固定化されている方が好ましい。
不溶性担体としては、例えば前述の不溶性担体等が挙げられる。
また、本発明の測定試薬を、前述の測定方法1において使用する場合には、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片が固定化された不溶性担体は、試料と、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片との反応の反応液中で生成されてもよい。
【0094】
この場合、本発明の測定試薬には、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片が固定化された不溶性担体の代わりに、一組の親和性物質の組み合わせの一方(A)が結合した酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、一組の親和性物質の組み合わせの他方(a)が結合した不溶性担体とが含まれる。一組の親和性物質の組み合わせ、すなわち、Aとaの組み合わせとしては、例えば前述の組み合わせ等が挙げられる。
【0095】
本発明の測定試薬を、前述の測定方法2において使用する場合には、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片は、不溶性担体に固定化されている方が好ましい。
不溶性担体としては、例えば前述の不溶性担体等が挙げられる。
また、本発明の測定試薬を、前述の測定方法2において使用する場合には、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片が固定化された不溶性担体は、試料と、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片との反応の反応液中で生成されてもよい。
【0096】
この場合、本発明の測定試薬には、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片が固定化された不溶性担体の代わりに、一組の親和性物質の組み合わせの一方(B)が結合した高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、一組の親和性物質の組み合わせの他方(b)が結合した不溶性担体とが含まれる。一組の親和性物質の組み合わせ、すなわち、Bとbの組み合わせとしては、例えば前述の組み合わせ等が挙げられる。
【0097】
本発明の測定試薬は、凍結乾燥状態でも液状でもよい。凍結乾燥状態の測定試薬を使用する場合には、測定前に水性媒体で溶解して液状にして測定に供する。
液状の測定試薬においては、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片、並びに、ポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種は、水性媒体で溶解された状態となっている。
水性媒体としては、例えば前述の水性媒体が挙げられる。水性媒体には、前述の金属イオン、糖類、防腐剤、蛋白質安定化剤等が含有されてもよい。
【0098】
本発明の測定試薬におけるポリオキシエチレン系界面活性剤、及び陽イオン性界面活性剤としては、例えば前述のポリオキシエチレン系界面活性剤、及び陽イオン性界面活性剤がそれぞれ挙げられる。
本発明の測定試薬におけるポリオキシエチレン系界面活性剤、及び陽イオン性界面活性剤のそれぞれの界面活性剤の含量としては、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする含量であれば特に制限はなく、通常、前述の水性媒体中、又は、前述の水性媒体で溶解された状態で0.0001~2.0%(w/v)となる含量であり、0.001~0.1%(w/v)となる含量が好ましく、0.005~0.05%(w/v)となる含量が特に好ましい。
【0099】
本発明の測定試薬においては、ポリオキシエチレン系界面活性剤、及び、陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる界面活性剤は、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の測定試薬における蛋白質としては、例えば前述の蛋白質が挙げられる。本発明の測定試薬における蛋白質の含量としては、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする含量であれば特に制限はなく、通常、前述の水性媒体中、又は、前述の水性媒体で溶解された状態で0.01~10.0%(w/v)となる含量であり、0.1~2.0%(w/v)となる含量が好ましい。
本発明の測定試薬におけるポリエチレングリコールとしては、例えば前述のポリエチレングリコールが挙げられる。本発明の測定試薬におけるポリエチレングリコールの含量としては、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする含量であれば特に制限はなく、通常、前述の水性媒体中、又は、前述の水性媒体で溶解された状態で0.5~15.0%(w/v)となる含量であり、1.0~10.0%(w/v)となる含量が好ましい。
【0100】
3.測定キット
本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定試薬は、保存、運搬、流通等の観点からキットの形態と取ることもできる。本発明の測定キットは、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法に用いられる。
【0101】
<測定キット1>
本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定キットは、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、ポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種と、を含む第1試薬と、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片を含む第2試薬と、を含むキットである。
当該キットにおいては、蛋白質およびポリエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質が、第1試薬、及び、第2試薬の少なくとも1つの試薬に含有されていてもよい。
【0102】
本発明の測定キット1は、本発明の測定方法1に使用されるキットである。すなわち、本発明の測定キット1を用いる、酸化高密度リポ蛋白の測定方法は、以下の工程を含む方法である。
(1)試料と、測定キット1の第1試薬とを水性媒体中で反応させ、酸化高密度リポ蛋白質と、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、からなる免疫複合体1を生成させる工程;
(2)測定キット1の第2試薬を、水性媒体中で、前記工程(1)で生成した免疫複合体1と反応させ、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、酸化高密度リポ蛋白質と、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、からなる免疫複合体2を生成させる工程;
(3)前記工程(2)で生成した免疫複合体2を測定する工程
本発明の測定キット1において、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片は、不溶性担体に固定化されていることが好ましい。不溶性担体としては、例えば前述の不溶性担体等が挙げられる。
【0103】
この、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片が固定化された不溶性担体は、試料と、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、の反応の反応液中で生成されてもよい。この場合、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片が固定化された不溶性担体の代わりに、一組の親和性物質の組み合わせの一方(A)が結合した、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、一組の親和性物質の組み合わせの他方(a)が結合した不溶性担体とが用いられる。一組の親和性物質の組み合わせ、すなわち、Aとaの組み合わせとしては、例えば前述の組み合わせ等が挙げられる。
【0104】
本発明の測定キットにおいて、一組の親和性物質の組み合わせの一方(A)が結合した、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、一組の親和性物質の組み合わせの他方(a)が結合した不溶性担体とは同一の試薬に含まれても、別々の試薬に含まれてもよいが、別々の試薬に含まれることが好ましい。一組の親和性物質の組み合わせの一方(A)が結合した、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、一組の親和性物質の組み合わせの他方(a)が結合した不溶性担体とが別々の試薬に含まれる場合、以下のキットも本発明の測定キットに含まれる。
【0105】
一組の親和性物質の組み合わせの一方(A)が結合した、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、ポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種と、を含有する第1試薬、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片を含有する第2試薬、及び、一組の親和性物質の組み合わせの他方(a)が結合した不溶性担体を含有する第3試薬を含む、酸化高密度リポ蛋白質測定キット。
【0106】
一組の親和性物質の組み合わせの一方(A)が結合した、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、ポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種と、を含有する第1試薬、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片を含有する第2試薬、及び、一組の親和性物質の組み合わせの他方(a)が結合した不溶性担体を含有する第3試薬を含み、さらに、蛋白質及びポリエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質が、第1~3試薬の少なくとも1つに含有される、酸化高密度リポ蛋白質測定キット。
【0107】
<測定キット2>
また、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定キットは、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、ポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種とを含む第1試薬と、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片を含む第2試薬とを含むキットである。
当該キットにおいては、蛋白質およびポリエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質が、第1試薬、及び、第2試薬の少なくとも1つの試薬に含有されていてもよい。
【0108】
本発明の測定キット2は、本発明の測定方法2に使用されるキットである。すなわち、本発明の測定キット2を用いる、酸化高密度リポ蛋白の測定方法は、以下の工程を含む方法である。
(1’)試料と、測定キット2の第1試薬とを水性媒体中で反応させ、酸化高密度リポ蛋白質と、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、からなる免疫複合体3を生成させる工程;
(2’)測定キット2の第2試薬を、水性媒体中で、前記工程(1’)で生成した免疫複合体3と反応させ、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、酸化高密度リポ蛋白質と、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、からなる免疫複合体4を生成させる工程;
(3’)前記工程(2’)で生成した免疫複合体4を測定する工程
本発明の測定キット2において、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片は、不溶性担体に固定化されていることが好ましい。不溶性担体としては、例えば前述の不溶性担体等が挙げられる。
【0109】
この、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片が固定化された不溶性担体は、試料と、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片との反応の反応液中で生成されてもよい。この場合、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片が固定化された不溶性担体の代わりに、一組の親和性物質の組み合わせの一方(B)が結合した、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、一組の親和性物質の組み合わせの他方(b)が結合した不溶性担体とが用いられる。一組の親和性物質の組み合わせ、すなわち、Bとbの組み合わせとしては、例えば前述の組み合わせ等が挙げられる。
【0110】
本発明の測定キットにおいて、一組の親和性物質の組み合わせの一方(B)が結合した、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、一組の親和性物質の組み合わせの他方(b)が結合した不溶性担体とは同一の試薬に含まれても、別々の試薬に含まれてもよいが、別々の試薬に含まれることが好ましい。一組の親和性物質の組み合わせの一方(B)が結合した、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、一組の親和性物質の組み合わせの他方(b)が結合した不溶性担体とが別々の試薬に含まれる場合、以下のキットも本発明の測定キットに含まれる。
【0111】
一組の親和性物質の組み合わせの一方(B)が結合した、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、ポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種とを含有する第1試薬、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片を含有する第2試薬、及び、一組の親和性物質の組み合わせの他方(b)が結合した不溶性担体を含有する第3試薬を含む、酸化高密度リポ蛋白質測定キット。
【0112】
一組の親和性物質の組み合わせの一方(B)が結合した、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、ポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種とを含有する第1試薬、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片を含有する第2試薬、及び、一組の親和性物質の組み合わせの他方(b)が結合した不溶性担体を含有する第3試薬を含み、さらに、蛋白質及びポリエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質が、第1~3試薬の少なくとも1つに含有される、酸化高密度リポ蛋白質測定キット。
【0113】
<測定キット3>
さらに、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定キットは、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片を含有する第1試薬、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片を含有する第2試薬、及び、ポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する第3試薬を含むキットである。
当該キットにおいては、蛋白質およびポリエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質が、第1~3試薬の少なくとも1つの試薬に含有されていてもよい。
【0114】
本発明の測定キット3は、本発明の測定方法1又は測定方法2に使用されるキットである。
本発明の測定キット3を用いて本発明の測定方法1により測定する場合の、酸化高密度リポ蛋白の測定方法は、以下の工程を含む方法である。
(1)試料と、測定キット3の第3試薬とを混合し、試料希釈液を調製する工程;
(2)前記工程(1)で調製した試料希釈液と、測定キット3の第1試薬とを水性媒体中で反応させ、酸化高密度リポ蛋白質と、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、からなる免疫複合体1を生成させる工程;
(3)測定キット3の第2試薬を、水性媒体中で、前記工程(2)で生成した免疫複合体1と反応させ、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、酸化高密度リポ蛋白質と、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、からなる免疫複合体2を生成させる工程;
(4)前記工程(3)で生成した免疫複合体2を測定する工程
上記測定方法において、工程(1)と工程(2)は順次行われても、同時に行われてもよい。
【0115】
本発明の測定キット3において、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片は、不溶性担体に固定化されていることが好ましい。不溶性担体としては、例えば前述の不溶性担体等が挙げられる。
この、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片が固定化された不溶性担体は、試料と、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片との反応の反応液中で生成されてもよい。この場合、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片が固定化された不溶性担体の代わりに、一組の親和性物質の組み合わせの一方(A)が結合した、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、一組の親和性物質の組み合わせの他方(a)が結合した不溶性担体とが用いられる。一組の親和性物質の組み合わせ、すなわち、Aとaの組み合わせとしては、例えば前述の組み合わせ等が挙げられる。
【0116】
本発明の測定キットにおいて、一組の親和性物質の組み合わせの一方(A)が結合した、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、一組の親和性物質の組み合わせの他方(a)が結合した不溶性担体とは同一の試薬に含まれても、別々の試薬に含まれてもよいが、別々の試薬に含まれることが好ましい。一組の親和性物質の組み合わせの一方(A)が結合した、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、一組の親和性物質の組み合わせの他方(a)が結合した不溶性担体とが別々の試薬に含まれる場合、以下のキットも本発明の測定キットに含まれる。
【0117】
一組の親和性物質の組み合わせの一方(A)が結合した、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片を含有する第1試薬、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片を含有する第2試薬、ポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する第3試薬、及び、一組の親和性物質の組み合わせの他方(a)が結合した不溶性担体を含有する第4試薬を含む、酸化高密度リポ蛋白質測定キット。
【0118】
一組の親和性物質の組み合わせの一方(A)が結合した、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片を含有する第1試薬、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片を含有する第2試薬、ポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する第3試薬、及び、一組の親和性物質の組み合わせの他方(a)が結合した不溶性担体を含有する第4試薬を含み、さらに、蛋白質及びポリエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質が、第1~4試薬の少なくとも1つに含有される、酸化高密度リポ蛋白質測定キット。
【0119】
本発明の測定キット3を用いて本発明の測定方法2により測定する場合の、酸化高密度リポ蛋白の測定方法は、以下の工程を含む方法である。
(1’)試料と、測定キット3の第3試薬とを混合し、試料希釈液を調製する工程;
(2’)前記工程(1’)で調製した試料希釈液と、測定キット3の第2試薬とを水性媒体中で反応させ、酸化高密度リポ蛋白質と、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、からなる免疫複合体3を生成させる工程;
(3’)測定キット3の第1試薬を、水性媒体中で、前記工程(2’)で生成した免疫複合体3と反応させ、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、酸化高密度リポ蛋白質と、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片と、からなる免疫複合体4を生成させる工程;
(4’)前記工程(3’)で生成した免疫複合体4を測定する工程
上記測定方法において、工程(1’)と工程(2’)は順次行われても、同時に行われてもよい。
【0120】
本発明の測定キット3において、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片は、不溶性担体に固定化されていることが好ましい。不溶性担体としては、例えば前述の不溶性担体等が挙げられる。
この、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片が固定化された不溶性担体は、試料と、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片との反応の反応液中で生成されてもよい。この場合、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片が固定化された不溶性担体の代わりに、一組の親和性物質の組み合わせの一方(B)が結合した、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、一組の親和性物質の組み合わせの他方(b)が結合した不溶性担体とが用いられる。一組の親和性物質の組み合わせ、すなわち、Bとbの組み合わせとしては、例えば前述の組み合わせ等が挙げられる。
【0121】
本発明の測定キットにおいて、一組の親和性物質の組み合わせの一方(B)が結合した、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、一組の親和性物質の組み合わせの他方(b)が結合した不溶性担体とは同一の試薬に含まれても、別々の試薬に含まれてもよいが、別々の試薬に含まれることが好ましい。一組の親和性物質の組み合わせの一方(B)が結合した、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片と、一組の親和性物質の組み合わせの他方(b)が結合した不溶性担体とが別々の試薬に含まれる場合、以下のキットも本発明の測定キットに含まれる。
【0122】
酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片を含有する第1試薬、一組の親和性物質の組み合わせの一方(B)が結合した、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片を含有する第2試薬、ポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する第3試薬、及び、一組の親和性物質の組み合わせの他方(b)が結合した不溶性担体を含有する第4試薬を含む、酸化高密度リポ蛋白質測定キット。
【0123】
酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片を含有する第1試薬、一組の親和性物質の組み合わせの一方(B)が結合した、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片を含有する第2試薬、ポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する第3試薬、及び、一組の親和性物質の組み合わせの他方(b)が結合した不溶性担体を含有する第4試薬を含み、さらに、蛋白質及びポリエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質が、第1~4試薬の少なくとも1つに含有される、酸化高密度リポ蛋白質測定キット。
【0124】
本発明の測定キットの、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片を含む第1試薬における酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、又は、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片の含量としては、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする含量であれば特に制限はなく、通常、前述の水性媒体中、又は、前述の水性媒体で溶解された状態で0.01~100μg/mLであり、0.1~20μg/mLが好ましい。本発明の測定キットの高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片を含む第2試薬における高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片の含量としては、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする含量であれば特に制限はなく、通常、前述の水性媒体中、又は、前述の水性媒体で溶解された状態で0.01~100μg/mLであり、0.1~20μg/mLが好ましい。
【0125】
本発明の測定キットの構成試薬は、凍結乾燥状態でも液状でもよい。
凍結乾燥状態の測定キットの構成試薬を使用する場合には、測定前に水性媒体で溶解して液状にして測定に供する。
液状の測定キットにおいては、酸化ホスファチジルコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、ホスホコリンに結合する抗体若しくは該抗体断片、高密度リポ蛋白質に結合する抗体若しくは該抗体断片、並びに、ポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種は、水性媒体で溶解された状態となっている。
水性媒体としては、例えば前述の水性媒体が挙げられる。水性媒体には、前述の金属イオン、糖類、防腐剤、蛋白質安定化剤等が含有されてもよい。液状の測定キットには、水性媒体が含まれる。水性媒体としては、例えば前述の水性媒体が挙げられる。水性媒体には、前述の金属イオン、糖類、防腐剤、蛋白質安定化剤等が含有されてもよい。
【0126】
本発明の測定キットの構成試薬におけるポリオキシエチレン系界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の界面活性剤の含量としては、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする含量であれば特に制限はなく、通常、前述の水性媒体中、又は、前述の水性媒体で溶解された状態で0.0001~2.0%(w/v)となる含量であり、0.001~0.1%(w/v)となる含量が好ましく、0.005~0.05%(w/v)となる含量が特に好ましい。
本発明の測定キットにおいては、ポリオキシエチレン系界面活性剤、及び、陽イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる界面活性剤は、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0127】
本発明の測定キットにおけるポリエチレングリコールとしては、例えば前述のポリエチレングリコールが挙げられる。本発明の測定キットの構成試薬におけるポリエチレングリコールの含量としては、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする含量であれば特に制限はなく、通常、前述の水性媒体中、又は、前述の水性媒体で溶解された状態で0.5~15%(w/v)となる含量であり、1.0~10.0%(w/v)となる含量が好ましい。
発明の測定キットにおける蛋白質としては、例えば前述の蛋白質が挙げられる。本発明の測定キットの構成試薬における蛋白質の含量としては、本発明の酸化高密度リポ蛋白質の測定方法を可能とする含量であれば特に制限はなく、通常、前述の水性媒体中、又は、前述の水性媒体で溶解された状態で0.01~10.0%(w/v)となる含量であり、0.1~2.0%(w/v)となる含量が好ましい。
【実施例】
【0128】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を何ら限定するものではない。なお、本実施例においては、下記メーカーの試薬を使用した。
【0129】
リン酸水素二ナトリウム(リン酸緩衝液;関東化学社製)、リン酸二水素ナトリウム(リン酸緩衝液;関東化学社製)、塩化ナトリウム(和光純薬工業社製)、Tween 20(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;シグマ-アルドリッチ社製)、レオドールTW-L106、レオドールTW-L120、レオドールTW-O120、レオドールTW-P120、レオドールTW-S120(以上、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;花王社製)、エマノーン1112(ポリオキシエチレン脂肪酸エステル;花王社製)、トリトンX-100(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;シグマ-アルドリッチ社製)、ナイミーンL-207、ナイミーンS-220(以上、ポリオキシエチレンアルキルアミン;日油社製)、エマルミンNL-70、エマルミンNL-90、エマルミンNL-110、エマルミンL-380(以上、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;三洋化成工業社製)、ノイゲンSD-150(ポリオキシエチレンアルキルアミン;第一工業製薬社製)、BLAUNON EL-1521(ポリオキシアルキルラウリルエーテル;青木油脂社製)、NIKKOL DLP-10(ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸若しくはその塩;日光ケミカルズ社製)、ニューコール704、ニューコール710、ニューコール714(以上、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル;日本乳化剤社製)、ニューコール707-SF(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩若しくはその塩;日本乳化剤社製)、ユニグリMK-230、ユニグリMK-278(以上、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル;日油社製)、カチオンBB(第四級アンモニウム塩)。
BSA[プロリアント(Proliant)社製]、ポリエチレングリコール(PEG)200(分子量200のPEG;日油社製)、PEG600(分子量600のPEG;日油社製)、PEG2000(分子量2,000のPEG;日油社製)、PEG6000(分子量6,000のPEG;和光純薬工業社製)、PEG20000(分子量20,000のPEG;和光純薬工業社製)。
【0130】
[実施例1]
以下の反応緩衝液、DLH3抗体固相化マイクロプレート、及びペルオキシダーゼ(POD)標識抗アポA-I蛋白質抗体溶液からなる酸化高密度リポ蛋白質測定キット1~4を作製した。
以下に示す通り、酸化高密度リポ蛋白質測定キット1~4を構成する反応緩衝液1~4をそれぞれ調製した。
【0131】
<反応緩衝液1(測定キット1用)>
リン酸緩衝液 0.01 mol/L(pH7.4)
塩化ナトリウム 0.15 mol/L
Tween 20 0.01%
【0132】
<反応緩衝液2(測定キット2用)>
リン酸緩衝液 0.01 mol/L(pH7.4)
塩化ナトリウム 0.15 mol/L
Tween 20 0.01%
BSA 1%
【0133】
<反応緩衝液3(測定キット3用)>
リン酸緩衝液 0.01 mol/L(pH7.4)
塩化ナトリウム 0.15 mol/L
Tween 20 0.01%
PEG6000 4.8%
【0134】
<反応緩衝液4(測定キット4用)>
リン酸緩衝液 0.01 mol/L(pH7.4)
塩化ナトリウム 0.15 mol/L
Tween 20 0.01%
BSA 1%
PEG6000 4.8%
【0135】
なお、上記測定キット1~4の各キットを用いる測定において、同一のDLH3抗体固相化マイクロプレート、及び、ペルオキシダーゼ(POD)標識抗アポA-I蛋白質抗体溶液を用いた。当該DLH3抗体固相化マイクロプレート、及び、ペルオキシダーゼ(POD)標識抗アポA-I蛋白質抗体溶液はそれぞれ、以下のように調製した。
【0136】
<DLH3抗体固相化マイクロプレート>
96ウェルマイクロプレート(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)の各ウェルに、特開平7-238098に記載の方法で作製したDLH3抗体の10μg/mL Tris-HCl緩衝液(pH8.0)溶液を、100μL/ウェルとなるように加えて、4℃ で16時間インキュベートし、次いで、Tris-HCl緩衝液溶液を除去し、1%(w/v)BSAを含むTris-HCl緩衝液(pH8.0)を各ウェルに350μLを加えて25℃で2時間インキュベートすることによりブロッキングし、その後、0.05%(w/v) Tween 20を含むPBS(pH7.4)で4回洗浄し、DLH3抗体が固定化されたプレートを調製した。
【0137】
<POD標識抗アポA-I蛋白質抗体溶液>
Peroxidase Labeling Kit-NH2(同仁化学研究所社製)を用いて、当該キットの取扱説明書に従い、抗アポA-I蛋白質モノクローナル抗体(Abnova社製)をPODで標識し、POD標識抗アポA-I蛋白質モノクローナル抗体を作製した。得られたPOD標識抗アポA-I蛋白質モノクローナル抗体を、以下の組成の溶液で10000倍希釈し、POD標識抗アポA-I蛋白質モノクローナル抗体溶液を調製した。
【0138】
リン酸緩衝液 0.01 mol/L(pH7.4)
塩化ナトリウム 0.15 mol/L
BSA 1%
Tween 20 0.05%
【0139】
[比較例1]
以下の反応緩衝液、DLH3抗体固相化マイクロプレート、POD標識抗アポA-I蛋白質抗体溶液からなる酸化高密度リポ蛋白質測定キット5~8を作製した。
以下に示す通り、酸化高密度リポ蛋白質測定キット5~8を構成する反応緩衝液5~8をそれぞれ調製した。なお、測定キット5~8の各キットを用いる測定において、同一のDLH3抗体固相化マイクロプレート、及び、ペルオキシダーゼ(POD)標識抗アポA-I蛋白質モノクローナル抗体溶液を用いた。当該DLH3抗体固相化マイクロプレート、及び、ペルオキシダーゼ(POD)標識抗アポA-I蛋白質モノクローナル抗体溶液は、実施例1に記載のDLH3抗体固相化マイクロプレート、及び、ペルオキシダーゼ(POD)標識抗アポA-I蛋白質モノクローナル抗体溶液をそれぞれ用いた。
【0140】
<反応緩衝液5(測定キット5用)>
リン酸緩衝液 0.01 mol/L(pH7.4)
塩化ナトリウム 0.15 mol/L
【0141】
<反応緩衝液6(測定キット6用)>
リン酸緩衝液 0.01 mol/L(pH7.4)
塩化ナトリウム 0.15 mol/L
BSA 1%
【0142】
<反応緩衝液7(測定キット7用)>
リン酸緩衝液 0.01 mol/L(pH7.4)
塩化ナトリウム 0.15 mol/L
PEG6000 4.8%
【0143】
<反応緩衝液8(測定キット8用)>
リン酸緩衝液 0.01 mol/L(pH7.4)
塩化ナトリウム 0.15 mol/L
BSA 1%
PEG6000 4.8%
【0144】
[実施例2]
前記測定キット1~8を用いて、以下の方法により、健常人から採取された血清(酸化高密度リポ蛋白濃度:23.8 U/L)(以下、試料A)を測定した。なお、ここでの単位“U/L”とは、1 mg/Lの高密度リポ蛋白(HDL)中のリン脂質(HDL-PL)を銅酸化して得られる酸化HDLを1 U/L酸化HDLとして定義されるものである。
【0145】
実施例1で調製したDLH3抗体固相化プレートの各ウェルに、それぞれの反応緩衝液で1000倍に希釈した試料A、又は、反応緩衝液(0 U/L試料) 100μLを添加し、37℃で2時間反応を行った(1次反応)。1次反応後のプレートの各ウェルを、洗浄液[0.05% Tween 20、0.15 mol/L塩化ナトリウムを含む0.01 mol/Lリン酸緩衝液(pH7.4)]で洗浄した後、各ウェルに、POD標識抗アポA-I蛋白質抗体溶液100μLを添加し、37℃で1時間反応を行った(2次反応)。2次反応後のプレートの各ウェルを前記洗浄液で洗浄した後、各ウェルに、TMB(3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン)水溶液を100μL添加し、37℃で20分間反応を行い、0.5 mol/L 硫酸50 μLを添加し反応を停止した(発色反応)。発色反応で得られた反応液の吸光度(主波長450 nm、副波長650 nm)を測定した。1000倍に希釈した試料Aを測定した際に得られる吸光度から、0 U/L試料を測定した際に得られる吸光度を差し引いた吸光度を表1に示す。
【0146】
【0147】
表1から明らかなように、Tween 20を含有しない反応緩衝液を含む測定キット5~8を用いて測定した場合、すなわち、一次反応においてTween 20が存在しない場合の吸光度が0.008~0.046であるのに対して、Tween 20を含有する反応緩衝液を含む測定キット1~4を用いて測定した場合、すなわち、一次反応においてTween 20が存在する場合の吸光度は0.112~0.714であり、測定感度が上昇することが判明した。
また、測定キット1と測定キット2~4との比較から、Tween 20と共に、更に、BSA及び/又はPEG6000を存在させることで測定感度がより上昇することも判明した。
【0148】
[実施例3]
以下の反応緩衝液、DLH3抗体固相化マイクロプレート、POD標識抗アポA-I蛋白質抗体溶液からなる酸化高密度リポ蛋白質測定キットA~Zを作製した。
【0149】
<反応緩衝液(測定キットA~X用)>
リン酸緩衝液 0.01 mol/L(pH7.4)
塩化ナトリウム 0.15 mol/L
界面活性剤 (表2に記載の界面活性剤と濃度)
BSA 1%
PEG6000 4.8%
【0150】
<DLH3抗体固相化マイクロプレート>
実施例1に記載のDLH3抗体固相化マイクロプレートを使用した。
【0151】
<POD標識抗アポA-I蛋白質抗体溶液>
実施例1に記載のPOD標識抗アポA-I蛋白質抗体溶液を使用した。
【0152】
[比較例2]
以下の反応緩衝液、DLH3抗体固相化マイクロプレート、POD標識抗アポA-I蛋白質抗体溶液からなる酸化高密度リポ蛋白質測定キットZを作製した。
【0153】
<反応緩衝液(測定キットZ用)>
リン酸緩衝液 0.01 mol/L(pH7.4)
塩化ナトリウム 0.15 mol/L
【0154】
<DLH3抗体固相化マイクロプレート>
実施例1に記載のDLH3抗体固相化マイクロプレートを調製した。
【0155】
<POD標識抗アポA-I蛋白質抗体溶液>
実施例1に記載のPOD標識抗アポA-I蛋白質抗体溶液を調製した。
【0156】
[実施例4]
実施例3の測定キットA~X、及び、比較例2の測定キットZのそれぞれのキットを用いて、実施例2と同様の方法で、それぞれの反応緩衝液で1000倍希釈した試料A、及び、反応緩衝液(0 U/L試料)を測定し、1000倍に希釈した試料Aを測定した際に得られる吸光度から、0 U/L試料を測定した際に得られる吸光度を差し引いた吸光度を算出した。その結果を表2に示す。
【0157】
【0158】
表2から明らかなように、実施例2で効果が示されたTween 20の他にも、表2に示されたポリオキシエチレン系界面活性剤、及び、陽イオン性界面活性剤の存在下で一次反応を行うことにより、測定感度が上昇することが判明した。
【0159】
[実施例5]
以下の反応緩衝液、DLH3抗体固相化マイクロプレート、POD標識抗アポA-I蛋白質抗体溶液からなる酸化高密度リポ蛋白質測定キットa~oを作製した。
【0160】
<反応緩衝液(測定キットa~o用)>
リン酸緩衝液 0.01 mol/L(pH7.4)
塩化ナトリウム 0.15 mol/L
Tween20 0.01%
BSA 1%
PEG (表3に記載のPEGと濃度)
【0161】
<DLH3抗体固相化マイクロプレート>
実施例1に記載のDLH3抗体固相化マイクロプレートを調製した。
【0162】
<POD標識抗アポA-I蛋白質抗体溶液>
実施例1に記載のPOD標識抗アポA-I蛋白質抗体溶液を調製した。
【0163】
[比較例3]
以下の反応緩衝液、DLH3抗体固相化マイクロプレート、POD標識抗アポA-I蛋白質抗体溶液からなる酸化高密度リポ蛋白質測定キットxを作製した。
【0164】
<反応緩衝液(測定キットx用)>
リン酸緩衝液 0.01 mol/L(pH7.4)
塩化ナトリウム 0.15 mol/L
【0165】
<DLH3抗体固相化マイクロプレート>
実施例1に記載のDLH3抗体固相化マイクロプレートを調製した。
【0166】
<POD標識抗アポA-I蛋白質抗体溶液>
実施例1に記載のPOD標識抗アポA-I蛋白質抗体溶液を調製した。
【0167】
[実施例6]
実施例5の測定キットa~o、及び、比較例3の測定キットxを用いて、実施例2と同様の方法で、それぞれの反応緩衝液で1000倍希釈した試料A、及び、反応緩衝液(0 U/L試料)を測定し、1000倍に希釈した試料Aを測定した際に得られる吸光度から、0 U/L試料を測定した際に得られる吸光度を差し引いた吸光度を算出した。その結果を表3に示す。
【0168】
【0169】
表3から明らかなように、分子量200~20000のPEGを用いることにより、測定感度が上昇することが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明により、酸化高密度リポ蛋白質の測定方法、測定試薬、及び、測定キットが提供される。本発明は、動脈硬化等の循環器疾患の診断に有用である。