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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】鋼床版における基層の除去方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 24/00 20060101AFI20220608BHJP
   E01D 19/12 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
E01D24/00
E01D19/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017158471
(22)【出願日】2017-08-21
(65)【公開番号】P2019035298
(43)【公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000229128
【氏名又は名称】ベルテクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】花村 進治
(72)【発明者】
【氏名】田村 和行
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-106208(JP,A)
【文献】特開2010-043492(JP,A)
【文献】特開2004-011212(JP,A)
【文献】特開2001-038717(JP,A)
【文献】特開2013-036194(JP,A)
【文献】特開昭64-036805(JP,A)
【文献】特開2007-278036(JP,A)
【文献】特開平06-173217(JP,A)
【文献】特開昭52-127922(JP,A)
【文献】特開2007-291839(JP,A)
【文献】特開2008-086931(JP,A)
【文献】米国特許第05961730(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 24/00
E01D 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板製のデッキプレートと、グースアスファルト製の基層と、該基層上の表層とで構成された鋼床版における前記基層の除去方法であって、
前記デッキプレートの連結部分における前記表層の撤去後、露出した前記基層を、バックホウなどのバケットを用いて、前記デッキプレートの連結部分に影響が及ばない程度の厚みを残して粗削りし、
粗削りされて残った前記基層に所定の温度及び圧力の高温高圧流体を噴射して、前記連結部分における前記基層を除去する
基層の除去方法。
【請求項2】
前記所定の温度が、
前記基層を構成するグースアスファルトの溶融温度に基づく温度以上の温度である
請求項1に記載の鋼床版における基層の除去方法。
【請求項3】
前記高温高圧流体が、
150Mpa以上の圧力である
請求項1または2に記載の鋼床版における基層の除去方法。
【請求項4】
前記高温高圧流体の噴射に伴い、剥離補助冶具によって補助しながら前記基層を剥離する
請求項1乃至3のうちいずれかに記載の鋼床版における基層の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板上に基層と表層を有する鋼床版における基層の除去方法及び除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼床版と呼ばれる構造の例えば道路橋では、例えば、特許文献1で開示されているように、鋼板製のデッキプレートと、グースアスファルト製の基層及び密粒度アスファルトで形成された表層で構成された路体構造とで構成されているものが多く採用されている。このような鋼床版では、車両の荷重が繰り返し作用するため、路体とを一旦除去し、鋼床版の損傷を確認した後、路体を再度敷設することがある。
【0003】
しかしながら、このような構造の鋼床版において、グースアスファルト製の基層はデッキプレートに強固に接着しており、除去することが困難であった。殊に、デッキプレート同士を連結する連結部分においては、連結ボルトなどによって凹凸部分があり、凹凸部分に対してもグースアスファルト製の基層が強固に接着しており、その除去はさらに困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-95849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、デッキプレートに接着されたグースアスファルト製の基層を容易に除去することができる鋼床版における基層の除去方法及び除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、鋼板製のデッキプレートと、グースアスファルト製の基層と、該基層上の表層とで構成された鋼床版における前記基層の除去方法であって、前記デッキプレートの連結部分における前記表層の撤去後、露出した前記基層を、バックホウなどのバケットを用いて、前記デッキプレートの連結部分に影響が及ばない程度の厚みを残して粗削りし、粗削りされて残った前記基層に所定の温度及び圧力の高温高圧流体を噴射して、前記連結部分における前記基層を除去することを特徴とする。
【0007】
またこの発明は、鋼板製のデッキプレートと、グースアスファルト製の基層と、該基層上の表層とで構成された鋼床版における前記基層を除去する基層除去装置であって、噴射する流体を所定温度に加熱する加熱部と、前記流体を所定の圧力に加圧する加圧部と、所定温度に加熱され、所定圧力に加圧された高温高圧流体を、露出した前記基層に対して噴射する噴射部とが備えられたことを特徴とする。
【0008】
上記高温高圧流体は、所定圧力に昇圧されるとともに、高温である流体を噴射できれば、高温高圧水、高温高圧液体、高温高圧ジェル体、あるいは高温高圧粉体であってもよいが、供給や回収の観点から、高温高圧水が好ましい。
この発明により、デッキプレートの連結部分に接着されたグースアスファルト製の基層を確実に除去することができる。
【0009】
詳述すると、前記デッキプレートの連結部分における前記表層の撤去後、露出した前記基層を、バックホウなどのバケットを用いて、前記デッキプレートの連結部分に影響が及ばない程度の厚みを残して粗削りし、粗削りされて残った前記基層に対して、所定の温度及び圧力の高温高圧流体を噴射するため、デッキプレートに対して強固に接着している基層の接着力が高温高圧流体の温度によって低下する。また、粗削りされて残った前記基層に対して高温高圧流体が噴射されるため、高温高圧流体の噴射圧力によってデッキプレートから接着力が低下した前記基層を容易に剥離させ、デッキプレートに接着されたグースアスファルト製の基層を確実に除去することができる。
【0010】
また、鋼床版における前記基層を除去する基層除去装置では、噴射する流体が加熱部で所定温度に加熱されるとともに、加圧部で所定の圧力に加圧されて高温高圧流体として噴射部より前記表層の撤去後に露出した前記基層に対して噴射するため、デッキプレートに対して強固に接着している基層の接着力が高温高圧流体の温度によって低下する。また、前記基層に対して高温高圧流体が噴射されるため、高温高圧流体の噴射圧力によってデッキプレートから接着力が低下した前記基層を容易に剥離させ、デッキプレートに接着されたグースアスファルト製の基層を確実に除去することができる。
【0011】
なお、デッキプレートとグースアスファルト製の基層との間がプライマーによってより堅固に接着されている場合であっても、デッキプレートに対するプライマーの接着力も高温高圧流体の温度によって低下するため、デッキプレートから基層を除去することができる。
【0012】
また、前記デッキプレートの連結部分における前記基層を除去するため、固定ボルトなどによって凹凸状であり、基層が剥離し難い連結部分であっても、所定温度以上の高温高圧流体を噴射させることでデッキプレートから剥離し難い基層を除去することができる。
【0013】
この発明の態様として、前記所定の温度が、前記基層を構成するグースアスファルトの溶融温度に基づく温度以上の温度であってもよく、前記加熱部が、前記基層を構成するグースアスファルトの溶融温度に基づく温度以上の温度に加熱してもよい。
【0014】
上述の溶融温度に基づく温度以上とは、グースアスファルトの溶融温度を基準とした適宜の範囲内の温度以上としてもよく、例えば、硬化したグースアスファルトが軟化する軟化温度としてもよい。なお、温度以上は、同等の温度やわずかに高い温度としてもよい。
【0015】
この発明により、デッキプレートに接着されたグースアスファルト製の基層をより容易に除去することができる。
詳述すると、露出した前記基層に対して、グースアスファルトの溶融温度に基づく温度以上の温度に加熱された高温高圧流体を噴射するため、デッキプレートに対する基層の接着力がより低下し、前記基層をより容易に剥離させて除去することができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記高温高圧流体が、150Mpa以上の圧力であってもよく、前記加圧部が150Mpa以上の圧力に加圧してもよい。
この発明により、デッキプレートに接着されたグースアスファルト製の基層をより確実に除去することができる。
【0017】
詳述すると、露出した前記基層に対して、所定温度以上の温度に加熱された高温高圧流体を噴射させることで、デッキプレートに対する基層の接着力がより低下した状態で、高温高圧流体によって前記基層に対して150Mpa以上の噴射圧力が作用するため、デッキプレートに対する接着力が低下した基層をより確実に剥離させて除去することができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記高温高圧流体の噴射に伴い、剥離補助冶具によって補助しながら前記基層を剥離してもよいし、前記噴射部における前記噴射流体の噴射方向に前方に延びる、前記基層を剥離する剥離補助冶具が備えられてもよい。
【0019】
この発明により、所定温度以上の高温高圧流体でデッキプレートから剥離しかかった基層を剥離補助冶具で補助しながら剥離することで、より効率的にデッキプレートから基層を除去することができる。
【0020】
なお、剥離補助冶具は鋼製、木製及び樹脂製などのいずれか、あるいはそれらの組み合わせでもよいが、熱伝導率が高い金属製であれば、高温高圧流体の熱をより伝達できるため、より剥離しやすくなるためより好ましい。
【発明の効果】
【0021】
この発明により、デッキプレートに接着されたグースアスファルト製の基層を容易に除去することができる鋼床版における基層の除去方法及び除去装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】グースアスファルト除去装置の概略図。
図2】鋼床版の構成を表す概略斜視図。
図3】路体撤去工法のフローチャート。
図4】アスファルト表層の撤去中の概略説明図。
図5】アスファルト表層の撤去完了の概略説明図。
図6】グースアスファルト層の粗取り中の概略説明図。
図7】グースアスファルト層の粗取り完了の概略説明図。
図8】グースアスファルト層の除去中の概略説明断面図。
図9】グースアスファルト層の除去完了の概略斜視図。
図10】排水回収をおこなったグースアスファルト層の除去の概略斜視図。
図11】飛散防止を行ったグースアスファルト層の除去の概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を図示の実施の形態により、図1乃至図9とともに詳細に説明する。
なお、図1はグースアスファルト除去装置100の概略図を示し、図2は鋼床版1の構成を表す概略斜視図を示し、図3は路体撤去工法のフローチャートを示し、図4はアスファルト表層4の撤去中の概略説明図を示し、図5はアスファルト表層4の撤去完了の概略説明図を示し、図6はグースアスファルト層5の粗取り中の概略説明図を示し、図7はグースアスファルト層5の粗取り完了の概略説明図を示し、図8はグースアスファルト層5の除去中の概略説明断面図を示し、図9はグースアスファルト層5の除去完了の概略斜視図を示している。
【0024】
詳しくは、図4(a)はアスファルト表層4の一部を撤去した状態の概略斜視図を示し、図4(b)は同状態のa-a断面図を示している。図5(a)はアスファルト表層4が撤去完了した状態の概略斜視図を示し、図5(b)は同状態のa-a断面図を示している。図6(a)はグースアスファルト層5の一部を粗取りした状態の概略斜視図を示し、図6(b)は同状態のa-a断面図を示している。図7(a)はグースアスファルト層5の粗取り完了した状態の概略斜視図を示し、図7(b)は同状態のa-a断面図を示している。図8(a),(b)はグースアスファルト層5の除去中の概略a-a断面図を示し、図8(c)はグースアスファルト層5の除去の別の実施形態の概略a-a断面図を示している。
【0025】
鋼床版1は、鋼板製のデッキプレート2と、デッキプレート2の表面を覆う路体3とで構成されている。
路体3は、従来のローラー転圧して締め固めるアスファルトコンクリート層であり舗装面を構成するアスファルト表層4と、デッキプレート2とアスファルト表層4とを接着するグースアスファルト製のグースアスファルト層5とで構成されている。
【0026】
グースアスファルト層5は、デッキプレート2とアスファルト表層4との接着性が高く、ひび割れが入りにくく防水性が高いため、デッキプレート2に対する防錆効果が高いグースアスファルト製である。
【0027】
グースアスファルトは、一般的に用いられる加熱アスファルト混合物に比べてフィラーとアスファルトの量が多く、軟化温度が140度であるとともに、高温時に高い流動性を有している。そのため、デッキプレート2にも密着するとともに、後述するようなデッキプレート2の連結部分2aにおける固定ボルト7等による凹凸部分に対しても均一な厚みで層構成することができる。
【0028】
なお、デッキプレート2同士の連結部分2aは、鋼板製の連結板6と、デッキプレート2と連結板6とを接続する複数本の固定ボルト7とで構成されている。なお、固定ボルト7は、デッキプレート2の連結方向及び幅方向に所定間隔を隔てて格子状に配置されている。そのため、連結板6の表面側には固定ボルト7による凹凸が形成されるが、上述したように高温時に高流動性を有するグースアスファルトが凹凸に対して密着した状態でグースアスファルト層5が形成されている。
【0029】
仕様によって異なるものの、本実施形態においては、デッキプレート2及び連結板6は12mm以上の厚みの鋼板で構成され、グースアスファルト層5は35~40cmの厚み、アスファルト表層4は30~35cmの厚みで構成されている。
【0030】
このような構成の鋼床版1は、アスファルト表層4のひび割れ発生などによるデッキプレート2に対する防錆効果の低下防止や、デッキプレート2の劣化状況確認のために、例えば、約7年毎に、路体3を撤去し、デッキプレート2の状態を確認する必要がある。
【0031】
このような路体3の撤去のうちグースアスファルト層5の除去は、グースアスファルト層5とデッキプレート2との接着性が高いため、タガネとハンマーを用いた手作業による撤去は非常に困難であった。
【0032】
そこで、本発明のグースアスファルト層5の除去方法に用いるグースアスファルト除去装置100は、図1に示すように、装置本体110と、グースアスファルト層5に向かって高温高圧噴射水を噴射する噴射ガン120とで構成されている。
【0033】
装置本体110は、高温高圧噴射水として噴射するための水を貯めるとともに所定温度に加熱する加熱タンク111と、所定の圧力に加圧するとともに、送り出す加圧ポンプ112と、加熱タンク111と加圧ポンプ112とを連結するとともに、加熱タンク111から加圧ポンプ112への導通量を調整する調整弁113とを、内部に備えている。
なお、装置本体110には、タイヤ114が備えられており、移動可能に構成されている。
【0034】
噴射ガン120は、導水ホース115によって加圧ポンプ112に連結されたグリップ部121と、グリップ部121から交差する方向に延びるノズル部122と、グリップ部121に備えられたトリガー123とで略ライフル型に構成されている。
【0035】
ノズル部122の先端には、高温高圧噴射水を扁平上に噴射する噴射ノズル124と、噴射ノズル124の基端側から支持され、噴射ノズル124の前方まで平板上に延びるスクレーパ125が備えられている。
【0036】
なお、スクレーパ125は熱伝導性の高い鋼製であるが、鋼製以外の木製または樹脂製などのいずれかの素材や、鋼製を含めたこれらを組み合わせた素材で構成してもよいが、熱伝導率が高い金属製であれば、高温高圧流体の熱をより伝達できるため、より剥離しやすくなるためより好ましい。
【0037】
このように構成されたグースアスファルト除去装置100は、加熱タンク111に対して給水部116から適宜の量の水を供給し、一定量の水を貯める加熱タンク111で所定温度まで加熱して高温水を構成する。なお、本実施形態では、グースアスファルト層5を構成するグースアスファルトの軟化温度140度以上の温度まで加熱するように設定している。
【0038】
そして、加熱タンク111で所定温度まで加熱された高温水は、噴射ガン120のトリガー123の操作により、加圧ポンプ112で所定圧力まで昇圧されて高温高圧水となり、導水ホース115を介して噴射ガン120の噴射ノズル124から高温高圧噴射水として噴射することができる。
【0039】
詳しくは、加圧ポンプ112は、一定の圧力で昇圧するため、調整弁113によって導通量を調整することで、所定圧力の高温高圧噴射水を噴射することができる。
なお、本実施形態では、140度に加熱された高温高圧噴射水で軟化したグースアスファルト層5を剥がすために、150MPaで高温高圧噴射水を噴射するように設定している。
【0040】
次に、このように構成されたグースアスファルト除去装置100を用いたグースアスファルト層5の除去方法を行う鋼床版1における路体3の撤去方法について図3に示すフローチャートとともに説明する。
鋼床版1における路体3を撤去するためには、まず、図4に示すように、ブレーカーなどの建設機械でアスファルト表層4を割ったのちに、バックホウなどのバケットを用いて削り取ってアスファルト表層4を撤去する(ステップs1)。
【0041】
図5に示すように、アスファルト表層4の撤去が完了すると、露出したグースアスファルト層5をバックホウなどのバケットを用いて粗削りしてグースアスファルト層5を粗取りする(ステップs2)。
【0042】
このグースアスファルト層5の粗取りでは、デッキプレート2に対して接着性の高いグースアスファルト層5をバケットで除去しようとすると、デッキプレート2や固定ボルト7に衝撃を与えたり、損傷するおそれがあるため、デッキプレート2や固定ボルト7に影響が及ばない程度の厚みを残してグースアスファルト層5を除去する(図6参照)。グースアスファルト層5の性状によって残す厚みは適宜設定すればよいが、本実施形態ではおよそ10mm程度厚みが残るように粗取りを行った。
【0043】
なお、所定の厚みのグースアスファルト層5が残るように粗取りされると、デッキプレート2同士の連結部分2aにおいては、図7に示すように、連結板6上に突出する固定ボルト7の形状に応じてグースアスファルト層5も凹凸状となる。
【0044】
このようにして、粗取りされたグースアスファルト層5を除去するため、グースアスファルト除去装置100を用いて、残るグースアスファルト層5を除去する(ステップs3)。
詳しくは、グースアスファルト除去装置100を用い、加熱タンク111で軟化温度まで加熱された高温水を加圧ポンプ112で所定圧力である150MPaまで昇圧し、噴射ノズル124から粗取りされたグースアスファルト層5に向かって高温高圧噴射水として噴射する。
【0045】
このように、軟化温度まで加熱された高温高圧噴射水が噴射されたグースアスファルト層5は、高温高圧噴射水の温度によって加熱され軟化する。軟化したグースアスファルト層5は、デッキプレート2との接着性は低下するため、高温高圧噴射水の噴射圧力によってデッキプレート2の表面から剥がれ、グースアスファルト層5を除去することができる。
【0046】
これを、図8(a)に示すように、端部から順に除去していくが、高温高圧噴射水の噴射圧力が作用しても剥がれず残ったグースアスファルト層5は、図8(b)に示すように、噴射ノズル124の前方に延びるスクレーパ125で削いでいくことで、デッキプレート2の表面からきれいに除去することができる。
【0047】
なお、噴射ノズル124の前方に延びるスクレーパ125の近傍に加熱された高温高圧噴射水が噴射しているため、スクレーパ125も高温高圧噴射水によって加熱されるため、デッキプレート2の表面に残るグースアスファルト層5をきれいに削ぎ落とすことができ、図9に示すように、グースアスファルト層5の除去及びアスファルト表層4の撤去は完了する。
【0048】
このように、鋼板製のデッキプレート2と、グースアスファルト製のグースアスファルト層5と、グースアスファルト層5上のアスファルト表層4とで構成された鋼床版1におけるグースアスファルト層5を除去するための高温高圧噴射水を構成するため、水をグースアスファルト層5の溶融温度に加熱する加熱タンク111と、高温水を所定の圧力である150MPaに加圧する加圧ポンプ112と、グースアスファルト層5の溶融温度に加熱され、所定圧力に加圧された高温高圧水を、露出したグースアスファルト層5に対して高温高圧噴射水として噴射する噴射ノズル124とが備えられたグースアスファルト除去装置100を用い、アスファルト表層4の撤去後、露出したグースアスファルト層5に対して、150℃及び150MPaの高温高圧噴射水を噴射してグースアスファルト層5を除去するため、デッキプレート2に対して接着性の高いグースアスファルト製のグースアスファルト層5を確実に除去することができる。
【0049】
詳述すると、上述したように、これまで、ブレーカーなどの建設機械でアスファルト表層4及びグースアスファルト層5を割ったのちに、バックホウなどのバケットを用いて削り取っていたが、デッキプレート2に衝撃を与えたり、損傷したりするおそれがあり、さらには、部分的にグースアスファルト層5が残ってしまう場合があった。特に、デッキプレート2の連結部分2aでは固定ボルト7による凹凸形状となり、その凹凸形状に食い込んだグースアスファルト層5の建設機械による除去では破損するおそれがあり、タガネとハンマーを用いて手作業でグースアスファルト層5を除去する必要があった。
【0050】
これに対し、本発明の路体撤去工法では、アスファルト表層4の撤去後、露出したグースアスファルト層5に対して、140度及び150MPaの高温高圧噴射水を噴射するため、デッキプレート2に対して強固に接着しているグースアスファルト層5の接着力が高温高圧噴射水の温度によって低下する。
【0051】
また、グースアスファルト層5に対して高温高圧噴射水が噴射されるため、高温高圧噴射水の噴射圧力によって、接着力が低下したグースアスファルト層5をデッキプレート2から容易に剥離させ、デッキプレート2に接着されたグースアスファルト製のグースアスファルト層5を容易に除去することができる。
【0052】
なお、デッキプレート2とグースアスファルト製のグースアスファルト層5との間がプライマーによってより堅固に接着されている場合であっても、デッキプレート2に対するプライマーの接着力も高温高圧噴射水の温度によって低下するため、デッキプレート2からグースアスファルト層5を除去することができる。
【0053】
また噴射ノズル124における高温高圧噴射水の噴射方向に前方に延びる、グースアスファルト層5を剥離するスクレーパ125が備えられているため、グースアスファルト層5の溶融温度以上の高温高圧噴射水でデッキプレート2から剥離しかかったグースアスファルト層5をスクレーパ125で補助しながら剥離することで、より効率的にデッキプレート2からグースアスファルト層5を除去することができる。
【0054】
また、固定ボルト7などによって凹凸状であり、グースアスファルト層5が剥離し難い連結部分2aであっても、グースアスファルト層5の溶融温度以上に加熱された高温高圧噴射水を噴射させることでデッキプレート2から剥離し難いグースアスファルト層5を除去することができる。
【0055】
なお、上述の説明の噴射ガン120では、噴射ノズル124の前方に延びるスクレーパ125を備え、高温高圧噴射水の噴射圧力で剥がれなかったグースアスファルト層5を削ぎ落としたが、スクレーパ125を備えずとも、図8(c)に示すように、噴射ノズル124から高温高圧噴射水を噴射させるとともに、高温高圧噴射水によって軟化したグースアスファルト層5に対して、手持ちのスクレーパ200を用いて手作業で削ぎ落してもよい。
【0056】
さらには、図10に示すように、グースアスファルト層5の除去を行う施工箇所から所定間隔分のアスファルト表層4の撤去及びグースアスファルト層5の粗取りのみを行い、つまり施工箇所から所定間隔を隔てた周囲のグースアスファルト層5やアスファルト表層4を残すことで施工箇所の周りに水溜め部Xを形成し、水溜め部Xに排水ポンプ300をセットすることで、高温高圧噴射水を容易に回収して排水や再利用を図ることができる。
【0057】
さらにまた、図11(a)に示すように、グースアスファルト層5の除去を行う施工箇所から所定間隔分のアスファルト表層4の撤去及びグースアスファルト層5の粗取りのみを行い、つまり施工箇所から所定間隔を隔てた周囲のグースアスファルト層5やアスファルト表層4を残すとともに、図11(b)に示すように、残る周囲のアスファルト表層4及びグースアスファルト層5に沿って飛散防止シート400を設置することにより、高温高圧噴射水を施工箇所のグースアスファルト層5に向かって噴射させた際の高温高圧噴射水の飛散を防止することができる。
【0058】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、この発明のデッキプレートはデッキプレート2に対応し、
以下同様に、
基層はグースアスファルト層5に対応し、
表層はアスファルト表層4に対応し、
鋼床版は鋼床版1に対応し、
所定の温度及び圧力は140度及び150MPaに対応し、
高温高圧流体は高温高圧噴射水に対応し、
温度以上の温度は温度以上の140度に対応し、
剥離補助冶具はスクレーパ125に対応し、
加熱部は加熱タンク111に対応し、
噴射する流体は高温高圧噴射水に対応し、
加圧部は加圧ポンプ112に対応し、
噴射部は噴射ノズル124に対応し、
基層除去装置はグースアスファルト除去装置100に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0059】
例えば、上述の説明では、グースアスファルト層5に向けて噴射させる高温高圧噴射水は、所定圧力に昇圧するとともに、所定の温度に加熱した水を用いたが、水以外の液体やジェル体、あるいは粉体を用いてもよい。
【0060】
また、高温高圧噴射水を、グースアスファルト層5を構成するグースアスファルトの軟化温度に設定したが、グースアスファルトの溶融温度を基準とした温度に加熱してもよい。
さらに、アスファルト表層4の除去とグースアスファルト層5の粗取りとをそれぞれ別工程で順に行ったが、アスファルト表層4の除去とグースアスファルト層5の粗取りとを同工程で一緒に行ってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…鋼床版
2…デッキプレート
4…アスファルト表層
5…グースアスファルト層
100…グースアスファルト除去装置
111…加熱タンク
112…加圧ポンプ
124…噴射ノズル
125…スクレーパ
図1
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図11