(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】冷却塔用充填材及び充填材製造方法
(51)【国際特許分類】
F28F 25/08 20060101AFI20220608BHJP
F28C 1/02 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
F28F25/08 A
F28F25/08 Z
F28C1/02
(21)【出願番号】P 2018211793
(22)【出願日】2018-11-09
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000164553
【氏名又は名称】空研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】今道 章文
(72)【発明者】
【氏名】吉田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】岡本 勲
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-134315(JP,A)
【文献】実開昭53-107643(JP,U)
【文献】特開平4-223136(JP,A)
【文献】特開平7-318296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 25/08
F28C 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の複数の充填材シートを重ねて一体化させて形成され、各充填材シートが起立する向きで冷却塔の一部として配設され、各充填材シートに沿って流下する循環水と、充填材シート間の隙間を前記循環水の流下方向と直交する向きに流れる空気との間で熱交換を行わせる、開放式冷却塔用の充填材において、
前記充填材シートとして、
所定の第一の配置で複数設けられる突起部、及び当該突起部の突出する側とは反対側となる面側における前記突起部と重ならない位置に所定の第二の配置で複数設けられる凹状の受け部をそれぞれ有する第一シートと、
前記第二の配置で複数設けられる突起部、及び当該突起部の突出する側とは反対側となる面側における前記突起部と重ならない位置に前記第一の配置で複数設けられる凹状の受け部をそれぞれ有する第二シートとを備え、
前記第一シートの受け部が、開口部分の大きさを第二シートの突起部の太さより小さく形成され、受け部及び突起部の少なくとも一方を弾性変形させつつ第二シートの突起部を圧入可能とされ、
前記第二シートの受け部が、開口部分の大きさを第一シートの突起部の太さより小さく形成され、受け部及び突起部の少なくとも一方を弾性変形させつつ第一シートの突起部を圧入可能とされ、
前記第一シート及び第二シートが、略矩形状とされ、前記冷却塔の一部として配設される状態で空気の流入出側となる各端辺部に、所定の凹凸が前記端辺方向に沿って繰返すパターン形状の端パターン部を形成され、
前記各シートの端パターン部における各凹凸が、第一シートと第二シートとで凹凸の関係を互いに反転させた形状としてそれぞれ形成され、前記第一シート及び第二シートが交互に複数重ねられた状態で、隣合う第一シートと第二シートの端パターン部同士が凸部と凹部の裏側凸形状部分とを当接させる一方、凹部と凸部の裏側凹形状部分との間に所定開口形状の気流通路部を生じさせ、
前記端パターン部における凹部と凸部の裏側凹形状部分が、側方から所定の溶着装置における溶着用デバイスを挿入可能な大きさとされ、所定の凹部と当該凹部の第一シート及び第二シートを隔てた対向位置となる凸部の裏側凹形状部分にそれぞれ挿入した対をなす溶着用デバイスで、前記凹部と凸部の裏側凹形状部分間に位置する凸部と凹部の裏側凸形状部分との当接部分を溶着可能とされ、
交互に複数重ね合わせた前記第一シートと第二シートが、重なる各層において、前記突起部を受け部に圧入させて隣り合う第一シートと第二シートとを連結されると共に、隣り合う第一シートと第二シートにおける端パターン部での多数の凸部と凹部の裏側凸形状部分との当接部分のうち、前記端辺方向に所定間隔をなす複数の当接部分について、各当接部分を溶着されて、全てのシートを一体化されてなることを
特徴とする冷却塔用充填材。
【請求項2】
前記請求項1に記載の冷却塔用充填材において、
前記突起部が、少なくとも受け部に圧入される先端部分の外周形状を多角形とするように形成され、
前記受け部が、少なくとも開口部の内周形状を、突起部の前記先端部分外周形状をなす多角形の外接円より内径が小さく、且つ前記多角形の内接円より内径が大きい円形とするように形成されることを
特徴とする冷却塔用充填材。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の冷却塔用充填材において、
前記端パターン部が、凸部の裏側凹形状部分及び凹部の各断面形状が略台形状となる凹凸パターンを有する形状に形成され、
前記充填材シートが複数重ねられて一体化された状態で、隣合う充填材シートの端パターン部の凹部と凸部の裏側凹形状部分との間に生じる前記気流通路部の断面形状が略六角形とされることを
特徴とする冷却塔用充填材。
【請求項4】
合成樹脂製の複数の充填材シートを重ねて一体化させて、開放式冷却塔の一部をなす充填材を製造する、充填材の製造方法において、
前記充填材シートが、
所定の第一の配置で複数設けられる突起部、及び当該突起部の突出する側とは反対側となる面側における前記突起部と重ならない位置に所定の第二の配置で複数設けられる凹状の受け部をそれぞれ有する第一シートと、
前記第二の配置で複数設けられる突起部、及び当該突起部の突出する側とは反対側となる面側における前記突起部と重ならない位置に前記第一の配置で複数設けられる凹状の受け部をそれぞれ有する第二シートとからなり、
前記第一シート及び第二シートは、略矩形状とされ、当該矩形をなす四つの端辺のうち平行となる所定の二つの端辺部の各々に、所定の凹凸が前記端辺方向に沿って繰返すパターン形状の端パターン部を形成されると共に、当該端パターン部における各凹凸が、第一シートと第二シートとで凹凸の関係を互いに反転させた形状としてそれぞれ形成されてなり、
前記第一シートと第二シートとを交互に複数重ね合わせ、隣り合う第一シートと第二シートで、第一シートの受け部には第二シートの突起部を圧入し、且つ、第二シートの受け部には第一シートの突起部を圧入して、隣り合う第一シートと第二シートを突起部及び受け部の位置で連結すると共に、隣合う第一シートと第二シートの端パターン部で当接する凸部と凹部の裏側凸形状部分のうち、前記端辺方向に所定間隔をなす複数の凸部と凹部の裏側凸形状部分との当接部分について、当該当接部分を挟む位置となる、前記凸部の裏側凹形状部分と前記凹部に、側方から所定の溶着装置における対をなす溶着用デバイスをそれぞれ挿入し、対をなす溶着用デバイスで当該溶着用デバイス間に位置する凸部と凹部の裏側凸形状部分との当接部分を溶着する手順を繰り返して、全てのシートを一体化することを
特徴とする充填材製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開放式冷却塔用として充填材シートを積層一体化して製造される充填材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場や空気調和設備などで循環使用する水などの液相の熱媒体の冷却を目的として屋外に設置される冷却塔のうち、冷却塔内部の熱交換部として充填材を用いる開放式冷却塔では、充填材を流下する循環水と空気とを直接接触させて熱交換させる仕組みとなっている。
【0003】
こうした開放式冷却塔に用いられる充填材は、一般に、真空成形により循環水の流下状態を制御するための凹凸パターンを形成されたポリ塩化ビニル等の合成樹脂製の充填材シートを、接着剤で貼り合わせつつ複数重ねて一体のブロック状とされる。
【0004】
凹凸パターンの中には、充填材シート間の間隔を確保すると共に、接着面を与える突起部と、この突起部先端に接する受け部の各形状が付加されている。充填材シートは、突起部の先端に接着剤を塗布して、この突起部を隣接する他の充填材シートの受け部と接着させて一体化される。
【0005】
このような充填材では、各シートに沿って流れる水の重さが数十kg/m3程度となって各シートに加わることから、水の力で変形しないように一定の剛性が要求される。このため、充填材については、充填材シートの素材や凹凸パターンの形状を工夫してシート自体の剛性を高める他、突起部と受け部における接着、結合の強度を高くして全体としての剛性強化が図られていた。
【0006】
こうした従来の開放式冷却塔における充填材の例として、実開平2-54083号公報に記載されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の冷却塔における充填材は、前記特許文献に示されるような構成とされており、熱交換部としての充填材を、多数の充填材シートを積層して製造する際に、接着剤を用いて外れないよう一体化するのが一般的である。
【0009】
ただし、こうして接着剤を用いた充填材シートの接着による組立一体化は、接着剤の乾燥、硬化に時間がかかり、こうした乾燥のための場所、設備を必要とするといった問題があった。
【0010】
また、充填材の組立作業時において、接着剤に含まれる有機溶剤は中毒性のある物質であるため、作業員の健康面でのリスクが高かった。近年はそうした危険性のある作業は忌避される風潮があることから、充填材組立に関わる作業員の確保が難しい状況にあるという課題を有していた。
【0011】
加えて、近年、こうした接着剤のような有機溶剤(揮発性有機化合物)を含む物質については、化学品規制や危険物規制の対象としてその取り扱いを厳重にする動きが国内外で見られる。
【0012】
例えば、海外において充填材の現地組立を行う場合、充填材シートと接着剤をそれぞれ現地に輸送後、現場で充填材シートの接着作業を行い、積層して充填材として組立完成させる手順となる。しかし、輸送の際、有機溶剤を含む接着剤は規制対象となって特別の取り扱いを求められることが多く、その場合には、接着剤は充填材シートとは別口での輸送を強いられることとなり、輸送コストの上昇を招くと共に到着日程等の調整も必要になるという課題を有していた。
【0013】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、接着剤を用いずに充填材シートを一体化可能として、接着剤に関わる諸問題の発生を防止し、組立作業を安全且つ効率よく行え、組立に係るコストを抑えられる冷却塔用充填材、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る冷却塔用充填材は、合成樹脂製の複数の充填材シートを重ねて一体化させて形成され、各充填材シートが起立する向きで冷却塔の一部として配設され、各充填材シートに沿って流下する循環水と、充填材シート間の隙間を前記循環水の流下方向と直交する向きに流れる空気との間で熱交換を行わせる、開放式冷却塔用の充填材において、前記充填材シートとして、所定の第一の配置で複数設けられる突起部、及び当該突起部の突出する側とは反対側となる面側における前記突起部と重ならない位置に所定の第二の配置で複数設けられる凹状の受け部をそれぞれ有する第一シートと、前記第二の配置で複数設けられる突起部、及び当該突起部の突出する側とは反対側となる面側における前記突起部と重ならない位置に前記第一の配置で複数設けられる凹状の受け部をそれぞれ有する第二シートとを備え、前記第一シートの受け部が、開口部分の大きさを第二シートの突起部の太さより小さく形成され、受け部及び突起部の少なくとも一方を弾性変形させつつ第二シートの突起部を圧入可能とされ、前記第二シートの受け部が、開口部分の大きさを第一シートの突起部の太さより小さく形成され、受け部及び突起部の少なくとも一方を弾性変形させつつ第一シートの突起部を圧入可能とされ、前記第一シート及び第二シートが、略矩形状とされ、前記冷却塔の一部として配設される状態で空気の流入出側となる各端辺部に、所定の凹凸が前記端辺方向に沿って繰返すパターン形状の端パターン部を形成され、前記各シートの端パターン部における各凹凸が、第一シートと第二シートとで凹凸の関係を互いに反転させた形状としてそれぞれ形成され、前記第一シート及び第二シートが交互に複数重ねられた状態で、隣合う第一シートと第二シートの端パターン部同士が凸部と凹部の裏側凸形状部分とを当接させる一方、凹部と凸部の裏側凹形状部分との間に所定開口形状の気流通路部を生じさせ、前記端パターン部における凹部と凸部の裏側凹形状部分が、側方から所定の溶着装置における溶着用デバイスを挿入可能な大きさとされ、所定の凹部と当該凹部の第一シート及び第二シートを隔てた対向位置となる凸部の裏側凹形状部分にそれぞれ挿入した対をなす溶着用デバイスで、前記凹部と凸部の裏側凹形状部分間に位置する凸部と凹部の裏側凸形状部分との当接部分を溶着可能とされ、交互に複数重ね合わせた前記第一シートと第二シートが、重なる各層において、前記突起部を受け部に圧入させて隣り合う第一シートと第二シートとを連結されると共に、隣り合う第一シートと第二シートにおける端パターン部での多数の凸部と凹部の裏側凸形状部分との当接部分のうち、前記端辺方向に所定間隔をなす複数の当接部分について、各当接部分を溶着されて、全てのシートを一体化されてなるものである。
【0015】
このように本発明によれば、充填材を構成する複数の充填材シートについて、突起部と受け部を設けた第一シートと第二シートを用いるようにし、第一シートと第二シートを交互に複数重ねて充填材を形成する中、隣り合う第一シートと第二シートが突起部を受け部に圧入させることで連結可能とされ、また、第一シートと第二シートの二つの端辺部に凹凸が繰り返される端パターン部が形成され、第一シート及び第二シートが交互に複数重ねられた状態で、隣合う第一シートと第二シートの端パターン部同士が凸部と凹部の裏側凸形状部分とを当接させる一方、端パターン部の凹部と凸部の裏側凹形状部分には溶着装置の溶着用デバイスを挿入可能とされ、端パターン部における凸部と凹部の裏側凸形状部分との当接部分のうち、必要な当接部分について、溶着用デバイス間に位置させて溶着するようにして、重ねた充填材シートを、各突起部と受け部における連結及び端パターン部での溶着で一体化し、充填材とすることにより、接着剤を用いずに複数の充填材シートを一体化できることとなり、充填材形成作業に際して接着剤を取り扱わずに済み、接着剤使用に起因する危険性を取り除いて作業の安全を確保できると共に、接着剤の取り扱いに伴うコスト発生を防止できる。また、隣り合う第一シートと第二シートを一体化するにあたっては、溶着を行う端パターン部以外は突起部の受け部への圧入による連結となり、容易に分離しない連結状態を簡略に生じさせられ、且つ端パターン部での最小限の溶着で必要な一体固定化状態での強度を無理なく確保でき、製造効率を高められる。
【0016】
また、本発明に係る冷却塔用充填材は必要に応じて、前記突起部が、少なくとも受け部に圧入される先端部分の外周形状を多角形とするように形成され、前記受け部が、少なくとも開口部の内周形状を、突起部の前記先端部分外周形状をなす多角形の外接円より内径が小さく、且つ前記多角形の内接円より内径が大きい円形とするように形成されるものである。
【0017】
このように本発明においては、突起部を多角形とし、受け部の内周径を突起部の多角形の外周円と内周円との間の大きさとすることにより、突起部外周の複数の角部が受け部よりわずかに大きい状態を生じさせて、突起部と受け部との形状及び大きさの関係を適切にすることができ、突起部を過度に抵抗なく受け部に圧入でき、第一シートと第二シートの重ね合わせ及び連結の作業を能率よく進められると共に、突起部外周と受け部内周との間に、受け部から突起部が容易に外れない摩擦力を生じさせて、必要十分な連結状態が得られる。
【0018】
また、本発明に係る冷却塔用充填材は必要に応じて、前記端パターン部が、凸部の裏側凹形状部分及び凹部の各断面形状が略台形状となる凹凸パターンを有する形状に形成され、前記充填材シートが複数重ねられて一体化された状態で、隣合う充填材シートの端パターン部の凹部と凸部の裏側凹形状部分との間に生じる前記気流通路部の断面形状が略六角形とされるものである。
【0019】
このように本発明によれば、第一シートと第二シートの各端パターン部における凹凸パターンが、凸部の裏側凹形状部分に囲まれた空隙部分と凹部に囲まれた空隙部分の各断面形状が略台形状となるように形成されて、第一シートと第二シートを交互に重ねて一体化した状態で、端パターン部の凸部の裏側凹形状部分と凹部との間に生じる気流通路部の断面形状が略六角形とされることにより、気流通路部の周りを取り囲む端パターン部の凸部の裏側凹形状部分と凹部が適切に配置されて外力が加わっても変形しにくく、充填材の外周部分として十分な剛性を確保できると共に、凸部の裏側凹形状部分に囲まれた空隙部分と凹部に囲まれた空隙部分を溶着用デバイス等を挿入しやすい形状として、凸部と凹部の裏側凸形状部分の当接部分を溶着する際に、溶着用デバイスを無理なく空隙部分に挿入して当接部分を挟む状態が得られ、溶着作業を効率よく実行できる。
【0020】
また、本発明に係る充填材製造方法は、合成樹脂製の複数の充填材シートを重ねて一体化させて、開放式冷却塔の一部をなす充填材を製造する、充填材の製造方法において、前記充填材シートが、所定の第一の配置で複数設けられる突起部、及び当該突起部の突出する側とは反対側となる面側における前記突起部と重ならない位置に所定の第二の配置で複数設けられる凹状の受け部をそれぞれ有する第一シートと、前記第二の配置で複数設けられる突起部、及び当該突起部の突出する側とは反対側となる面側における前記突起部と重ならない位置に前記第一の配置で複数設けられる凹状の受け部をそれぞれ有する第二シートとからなり、前記第一シート及び第二シートは、略矩形状とされ、当該矩形をなす四つの端辺のうち平行となる所定の二つの端辺部の各々に、所定の凹凸が前記端辺方向に沿って繰返すパターン形状の端パターン部を形成されると共に、当該端パターン部における各凹凸が、第一シートと第二シートとで凹凸の関係を互いに反転させた形状としてそれぞれ形成されてなり、前記第一シートと第二シートとを交互に複数重ね合わせ、隣り合う第一シートと第二シートで、第一シートの受け部には第二シートの突起部を圧入し、且つ、第二シートの受け部には第一シートの突起部を圧入して、隣り合う第一シートと第二シートを突起部及び受け部の位置で連結すると共に、隣合う第一シートと第二シートの端パターン部で当接する凸部と凹部の裏側凸形状部分のうち、前記端辺方向に所定間隔をなす複数の凸部と凹部の裏側凸形状部分との当接部分について、当該当接部分を挟む位置となる、前記凸部の裏側凹形状部分と前記凹部に、側方から所定の溶着装置における対をなす溶着用デバイスをそれぞれ挿入し、対をなす溶着用デバイスで当該溶着用デバイス間に位置する凸部と凹部の裏側凸形状部分との当接部分を溶着する手順を繰り返して、全てのシートを一体化するものである。
【0021】
このように本発明によれば、複数重ねて充填材を構成する充填材シートとして、突起部と受け部を設けた第一シートと第二シートを用い、第一シートと第二シートを交互に複数重ねて充填材を形成する中、隣り合う第一シートと第二シートが突起部を受け部に圧入させることで連結可能とし、また、第一シートと第二シートの二つの端辺部に凹凸が繰り返される端パターン部を形成するようにし、第一シート及び第二シートが交互に複数重ねられた状態で、隣合う第一シートと第二シートの端パターン部同士が凸部と凹部の裏側凸形状部分とを当接させる一方、端パターン部の凹部と凸部の裏側凹形状部分には溶着装置の溶着用デバイスを挿入可能とし、端パターン部における凸部と凹部の裏側凸形状部分との当接部分のうち、必要な当接部分について、溶着用デバイス間に位置させて溶着して、重ねた充填材シートを、各突起部と受け部における連結及び端パターン部での溶着で順次一体化していくことにより、接着剤を用いずに複数の充填材シートを一体化できることとなり、充填材形成作業に際して接着剤を取り扱わずに済み、接着剤使用に起因する危険性を取り除いて作業の安全を確保できると共に、接着剤の取り扱いに伴うコスト発生を防止できる。また、隣り合う第一シートと第二シートを一体化するにあたっては、溶着を行う端パターン部以外は突起部の受け部への圧入による連結となり、容易に分離しない連結状態を簡略に生じさせられ、且つ端パターン部での最小限の溶着で充填材としての一体固定化状態での必要強度を無理なく確保でき、充填材製造効率を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る充填材を適用した冷却塔の一部切欠正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る充填材における充填材シートの正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る充填材における充填材シートの要部拡大正面図及び要部拡大側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る充填材の一部拡大側面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る充填材の充填材シート重ね合わせ(積層)状態説明図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る充填材における充填材シート突起部と受け部の大きさの関係説明図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る充填材への溶着装置適用状態説明図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る充填材における充填材シートの溶着位置説明図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る充填材の充填材シート溶着状態説明図である。
【
図10】本発明の他の実施形態に係る充填材における充填材シートの溶着位置説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る冷却塔用充填材を前記
図1ないし
図9に基づいて説明する。本実施形態においては、直交流型(クロスフロータイプ)として通風用のファンのある中央部を挟んで二つの熱交換部を対向配置される開放式冷却塔に用いられる充填材の例について説明する。
【0024】
前記各図に示すように、本実施形態に係る充填材10は、合成樹脂製の複数の充填材シート11を重ねて一体化させて形成され、並列配置状態の各充填材シート11が起立する向きで冷却塔1の一部として配設される構成である。
【0025】
本実施形態に係る充填材10を適用する冷却塔1は、前記充填材10と、充填材10の上側に配設されて循環水を供給され、この循環水を充填材10各部へ分配滴下させる上部水槽20と、充填材10下側に配設されて充填材10を通過した循環水を回収する下部水槽30と、この下部水槽30から取出されて所定の循環経路を経た循環水をあらためて前記上部水槽10に送込む配水管路40と、下部水槽30中央上方に配設されて充填材10の各充填材シート11間に誘引通風で外部の空気を通すファン50とを備える構成である。
この冷却塔1における充填材10以外の各部構成については、公知の直交流型の開放式冷却塔と同様のものであり、詳細な説明を省略する。
【0026】
前記充填材10は、直交流型の冷却塔1の一部として、前記ファン50下方の空間を挟んで下部水槽30上側に一対配設される点や、充填材シート11間の隙間10aに循環水を滴下されると共に横方向へ外部の空気を通過させ、各充填材シート11に沿って流下する循環水と、充填材シート11間の隙間10aを前記循環水の流下方向と直交する向きに流れる空気との間で熱交換を行わせる点は、公知の充填材と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0027】
この充填材10をなす前記充填材シート11としては、第一シート12と第二シート13の二種類が用いられる。
前記第一シート12は、所定の第一の配置で複数設けられる突起部12a、及びこの突起部の突出する側とは反対側となる面側における前記突起部12aと重ならない位置に所定の第二の配置で複数設けられる凹状の受け部12bをそれぞれ有する構成である。
【0028】
前記第二シート13は、前記第二の配置で複数設けられる突起部13a、及びこの突起部の突出する側とは反対側となる面側における前記突起部13aと重ならない位置に前記第一の配置で複数設けられる凹状の受け部13bをそれぞれ有する構成である。
【0029】
突起部12a及び受け部13bの第一の配置、並びに、突起部13a及び受け部12bの第二の配置は、それぞれ突起部や受け部を所定間隔の碁盤目状配置又は千鳥状配置として規則正しく配置するものであり、且つ、第一シートと第二シートを重ね合わせた際に突起部同士及び受け部同士が重ならないように互いにずらしたものである。
【0030】
なお、第一シート12と第二シート13は独立した別形状のシートとしているが、これに限られるものではなく、第二シートが、第一シートのいずれの端辺部とも直角となる向きで且つ第一シートの中心を通る軸周りに、第一シートを180°回転させたものである、すなわち、第一シートと第二シートを同じシートとし、第二シートとして使用する際に向きを変える構成とすることもでき、同じ形状の充填材シートで充填材を形成でき、コストを抑えられる。
【0031】
第一シート12の受け部12bは、開口部分の大きさを第二シート13の突起部13aの太さより小さく形成され、受け部12b及び突起部13aの少なくとも一方を弾性変形させつつ第二シートの突起部13aを圧入可能とされる。同様に、第二シート13の受け部13bは、開口部分の大きさを第一シート12の突起部12aの太さより小さく形成され、受け部13b及び突起部12aの少なくとも一方を弾性変形させつつ第一シートの突起部12aを圧入可能とされる(
図5参照)。
【0032】
詳細には、各シートにおける突起部12a、13aは、受け部13b、12bに圧入される先端部分の外周形状を六角形とするように形成される。また、受け部13b、12bは、その開口部の内周形状を、圧入される突起部12a、13aの前記先端部分外周形状をなす六角形の外接円より内径が小さく、且つ同じ六角形の内接円より内径が大きい円形とするように形成される(
図6参照)。このように受け部13b、12bの開口内径を過度に小さくしないことで、圧入した突起部12a、13aを受け部13b、12bから抜けにくくする十分な保持力を確保する一方で、受け部13b、12bに突起部12a、13aを圧入する際に必要な力を過剰に大きくせずに済み、シートの重ね合わせと共に行われる突起部の圧入作業を速やかに進められる。
【0033】
また、充填材シート11として共通する点として、第一シート12及び第二シート13は、略矩形状とされ、この矩形をなす四つの端辺のうち平行となる所定の二つの端辺部で、且つ、冷却塔1の一部として配設される状態で空気の流入出側となる各端辺部、具体的には、矩形の長辺をなす二つの端辺部に、所定の凹凸が前記端辺方向に沿って繰返すパターン形状の端パターン部14、15を形成される構成である。
【0034】
この他、充填材シート11としての第一シート12及び第二シート13が、前記突起部12a、13aや受け部12b、13b、端パターン部14、15を除いた表面部に、所定の凹凸を繰返しのパターン形状として多数設けられ、シート表面の前記凹凸に沿って循環水を多様な経路で流下させ、この循環水と、シート間の隙間を流れる外部の空気とが接触するようにする基本的構成については、公知の冷却塔用充填材を構成する充填材シートと同様であり、詳細な説明を省略する。
【0035】
前記各シート12、13の端パターン部14、15は、端辺方向に沿って繰返し形成される凹凸を、凸部の裏側凹形状部分及び凹部の各断面形状が略台形状となる凹凸パターンを有する形状で、且つ、第一シート12と第二シート13とで凹凸の関係を互いに反転させた形状とされるものである(
図4参照)。
【0036】
第一シート12及び第二シート13が交互に複数重ねられた状態では、隣合う第一シート12と第二シート13の端パターン部14、15同士が、凸部16と凹部の裏側凸形状部分19aとを当接させる一方、凹部17と凸部の裏側凹形状部分18aとの間に略六角形の開口形状の気流通路部10bを生じさせる。
【0037】
また、隣合う第二シート13と他の第一シート12の端パターン部15、14同士は、同様に、凸部18と凹部の裏側凸形状部分17aとを当接させる一方、凹部19と凸部の裏側凹形状部分16aとの間に略六角形の開口形状の気流通路部10bを生じさせる。
【0038】
ただし、端パターン部14、15における、凹部17と凸部の裏側凹形状部分18aとの間や、凹部19と凸部の裏側凹形状部分16aとの間の各隙間部は、充填材10の冷却塔1での使用状態で外部空気を流入出させる気流通路部10bとされるだけでなく、隣り合う第一シート12と第二シート13とを端パターン部で溶着する際の作業空間も兼ねており、側方から溶着装置90の溶着用デバイス91を挿入可能な大きさとされる(
図7参照)。
【0039】
溶着装置90は、例えば、溶着用デバイス91を通じて超音波帯域の振動を溶着対象物(被溶着物)に加えて対象物を振動させ、振動により当接部分で発生する熱により対象物の当接箇所同士を溶かして一体化する公知の超音波溶着装置を用いることができる。なお、超音波溶着以外に、熱を直接溶着対象物の当接箇所に加えて溶着させるような他の溶着手法による溶着装置を用いるようにしてもかまわない。
【0040】
超音波溶着の場合は、隣り合う第一シート12と第二シート13の端パターン部14、15に対し、溶着装置90の対をなす溶着用デバイス91を、所定の凹部17とこの凹部17の第一シート12及び第二シート13を隔てた対向位置となる凸部の裏側凹形状部分18aにそれぞれ挿入し、各溶着用デバイス91をそれぞれシートに接触させて両シートを挟む。この状態で、溶着装置90を作動させて溶着用デバイス91を所定時間(例えば、数秒)振動させると、前記凹部17と凸部の裏側凹形状部分18a間に位置する凸部18と凹部の裏側凸形状部分17aも振動し、振動に基づく加熱状態となった凸部18と凹部の裏側凸形状部分17aとの当接部分が溶けて一体となる、すなわち溶着する仕組みである。
【0041】
こうした溶着装置90による溶着の工程では、重ねられて隣り合う第一シート11と第二シート12における端パターン部14、15での凸部16、18と凹部の裏側凸形状部分19a、17aとの多数の当接部分のうち、端辺方向に所定間隔をなす複数の当接部分のみ溶着させるようにしている。言い換えると、端パターン部14、15同士の各当接部分のうち、所定数の当接部分ごとに溶着させる当接部分を設定して、溶着させる当接部分同士が所定間隔をなして離れるようにしている。このように溶着させる当接部分の数を当接部分全体の数に対し少なくすることで、充填材シートを充填材として一体化するのに必要な連結の強度を溶着箇所で確保しつつ、溶着箇所を過度に増やさないようにし、溶着工程増による製造効率低下を防いでいる。
【0042】
溶着にあたっては、例えば、溶着用デバイスが複数組並べて配設され、それらが同時に複数の凹部と凸部の裏側凹形状部分との間の隙間部に挿入されて、一度に複数箇所の当接部分の溶着を実行可能な装置を用いることもできる。また、溶着用デバイスが複数放射状に配置された回転体を有し、この回転体を回転させながら端辺方向に移動させることで、端パターン部で所定間隔をなす複数の溶着対象の当接部分を挟む各隙間部に順次溶着用デバイスを挿入して、当接部分の溶着を続けて行っていく装置を用いることもでき、こうした装置で作業を行うようにすれば、より効率よく溶着作業を実行できる。
【0043】
そして、各シート12、13の端パターン部14、15における凹凸パターン形状についても、凸部の裏側凹形状部分及び凹部の各断面形状を溶着用デバイスの形状に対応させて、第一シート12と第二シート13を重ねた状態で溶着用デバイスを挿入しやすい形状として、溶着装置による溶着作業をより効率よく行えるようにすることができる。
【0044】
以上のように、第一シート12と第二シート13を交互に複数重ね合わせ、重なる各層において、突起部12a、13aを受け部13b、12bに圧入させて隣り合う第一シート11と第二シート12とを連結させると共に、隣り合う第一シート11と第二シート12における端パターン部14、15での多数の凸部16、18と凹部の裏側凸形状部分19a、17aとの当接部分のうち、前記端辺方向に所定間隔をなす複数の当接部分について、各当接部分を溶着させることで、全てのシートを一体化した充填材10が得られる仕組みである。
【0045】
この充填材10の冷却塔内側の空気出口部分に沿って、充填材10を出た散布水由来のミストを捕捉して、冷却塔外部に水滴が流出するのを防止するエリミネータを配設するようにしてもよい。その場合、エリミネータで捕捉された散布水は、下部水槽30に流下して、充填材10から流下するものと同様に回収されることとなる。
【0046】
前記上部水槽20は、底部に多数の小孔を有する浅い箱状体で形成され、充填材10の上側において所定の循環経路を経由してきた循環水の供給を受け、この循環水を底部の多数の孔から充填材10各部へ向けて一様に所定の水量で分配滴下させる公知の構成である。
【0047】
前記下部水槽30は、固定設置される支持枠31上に配設され、流下した循環水を受けて一時貯溜しつつ回収するものであり、循環水減少時に補給される補給水の給水部(図示を省略)や、循環水の導入及び送出し用の管路(図示を省略)等をそれぞれ接続され、循環水を所定量貯溜可能とされる公知の構成である。
【0048】
前記配水管路40は、冷却塔1に還流してきた循環水を上部水槽20へ供給する管路として冷却塔内に設けられるものである。また、前記ファン50は、冷却塔1の中央上部に配設され、その下方で一対の充填材10に挟まれた中央の通風用空間を介して誘引通風で各充填材10に横方向から外部の空気を通し、充填材10を横に通過した排気を上方へ吹出して排出する公知のものである。
【0049】
次に、前記構成に基づく充填材の製造工程及び充填材を適用した冷却塔の作動状態について説明する。
充填材10の製造にあたっては、まず、充填材シート11としての第一シート12と第二シート13とを交互に重ね合わせていき、重ね合わせの際に、第一シート12に第二シート13を重ねる場合には、第二シート13を第一シート12側に押さえつけて、第二シート13の各突起部13aを第一シート12の各受け部12bにそれぞれ圧入する。また、第二シート13に第一シート12を重ねた場合には、第一シート12を第二シート13側に押さえつけて、第一シート12の各突起部12aを第二シート13の各受け部13bにそれぞれ圧入する(
図5参照)。このようにして、隣り合う第一シート12と第二シート13を突起部及び受け部の位置で連結する。
【0050】
各シートにおける受け部12b、13bは、その円形の開口部の大きさを、それぞれ対応する突起部13a、12aにおける六角形の先端部分より適度に小さく形成されており、これら受け部12b、13bに突起部13a、12aを圧入すると、受け部と突起部の少なくとも一方が弾性変形して弾性力(保持力)を生じることとなり、受け部12b、13bから突起部13a、12aが容易に抜けない状態が得られ、第一シート12と第二シート13を重ねた状態に維持できる。
【0051】
こうした突起部13a、12aを受け部12b、13bに圧入させることによる各シート同士の連結は手作業で行うこともでき、大掛かりな連結工程の機械化が必須ではなくなり、充填材10は工場での機械化による自動組立と手作業による現地組立の両方に対応できることとなる。
【0052】
他方、隣合う第一シート12と第二シート13における端パターン部14、15のうち、第一シート12に第二シート13が重なる端パターン部では、端辺方向に所定間隔をなす複数の凸部16と凹部の裏側凸形状部分19aとの当接部分について、この当接部分を挟む位置となる、第一シート12の凸部の裏側凹形状部分16aと第二シート13の凹部19に、側方から溶着装置90の対をなす溶着用デバイス91をそれぞれ挿入し、各溶着用デバイス91を凸部16の裏面と凹部19の底面にそれぞれ接触させる。その上で、溶着装置90を作動させ、対をなす溶着用デバイス91を振動させて、これら溶着用デバイス間に位置する凸部16と凹部の裏側凸形状部分19aとの当接部分を溶着させる(
図8、
図9参照)。
【0053】
同様に、第二シート13に第一シート12が重なる端パターン部では、端辺方向に所定間隔をなす複数の凸部18と凹部の裏側凸形状部分17aとの当接部分について、この当接部分を挟む位置となる、第二シート13の凸部の裏側凹形状部分18aと第一シート12の凹部17に、側方から溶着装置90の対をなす溶着用デバイス91をそれぞれ挿入し、各溶着用デバイス91を凸部18の裏面と凹部17の底面にそれぞれ接触させる。その上で、溶着装置90を作動させ、対をなす溶着用デバイス91を振動させて、これら溶着用デバイス間に位置する凸部18と凹部の裏側凸形状部分17aとの当接部分を溶着させる。
第一シート12と第二シート13を重ねた各層について同様の手順を繰り返して、全てのシートを一体化すると、充填材10の製造工程は完了となる。
【0054】
充填材シート11において、端パターン部14、15に挟まれた、突起部12a、13aを他シートの受け部13b、12bに圧入させて連結する中央の領域は、充填材シート11同士の連結の強度はあまり大きくないものの、充填材10をなす全ての充填材シート11を一体に連結することが可能である。よって、連結工程の途中段階や、充填材10としての使用中に充填材の一部が破損した場合でも、充填材シート11が互いに分離しにくく取り扱い性に優れる。
【0055】
続いて、前記構成に基づく充填材を適用した冷却塔の作動状態について説明する。通常の冷却塔運転状態では、循環経路中の冷凍機あるいは空気調和機器等を経て熱を受取り、温度を上げて冷却塔1に戻った熱媒体としての循環水は、まず冷却塔1内の配水管路40に入り、管路を上部水槽20側へ向うこととなる。
【0056】
配水管路40から上部水槽20に流下した循環水は、所定時間で底部の各孔を通過し、下方の充填材10へ向けて滴下される。この上部水槽20から滴下され、充填材10上に達した循環水については、充填材シート11間の隙間10aに進むこととなる。
【0057】
充填材10の各隙間10aに達した循環水は充填材シート11に沿って流下しつつ、ファン50による誘引通風でこの充填材10に対して横方向に通風される外部空気と接触する。循環水は、主に空気と循環水の温度差に伴う熱伝達(顕熱)による冷却作用、及び、循環水の蒸発熱(潜熱)による冷却作用により冷却される一方、熱交換により逆に外部空気温度を上昇させることとなる。
【0058】
こうして循環水は充填材10で冷却された後、下部水槽30に達して回収される。下部水槽30に溜った循環水は、水槽出口から再び循環経路に入り、熱交換媒体として冷凍機や空気調和機器等で熱を吸収した後、配水管路40に入って前記過程が繰返される。
【0059】
このように、本実施形態に係る冷却塔用充填材においては、充填材10を構成する複数の充填材シート11について、突起部12a、13aと受け部12b、13bを設けた第一シート12と第二シート13を用いるようにし、第一シート12と第二シート13を交互に複数重ねて充填材を形成する中、隣り合う第一シート12と第二シート13が突起部を受け部に圧入させることで連結可能とされ、また、第一シート12と第二シート13の二つの端辺部に凹凸が繰り返される端パターン部14、15が形成され、第一シート12及び第二シート13が交互に複数重ねられた状態で、隣合う第一シート12と第二シート13の端パターン部14、15同士が凸部16と凹部の裏側凸形状部分19aとを当接させる一方、端パターン部14、15の凹部17と凸部の裏側凹形状部分18aには溶着装置90の溶着用デバイス91を挿入可能とされ、端パターン部14、15における凸部16と凹部の裏側凸形状部分19aとの当接部分のうち、必要な当接部分について、溶着用デバイス91間に位置させて溶着するようにして、重ねた充填材シート11を、各突起部と受け部における連結及び端パターン部での溶着で一体化し、充填材10とすることから、接着剤を用いずに複数の充填材シート11を一体化できることとなり、充填材形成作業に際して接着剤を取り扱わずに済み、接着剤使用に起因する危険性を取り除いて作業の安全を確保できると共に、接着剤の取り扱いに伴うコスト発生を防止できる。また、隣り合う第一シート12と第二シート13を一体化するにあたっては、溶着を行う端パターン部14、15以外は突起部12a、13aの受け部13b、12bへの圧入による連結となり、十分な強度での連結状態を簡略に生じさせられ、且つ端パターン部14、15での最小限の溶着で必要な一体固定化状態を無理なく確保でき、製造効率を高められる。
【0060】
なお、前記実施形態に係る冷却塔用充填材においては、充填材シート11としての第一シート12及び第二シート13における突起部12a、13aの各先端部分の外周形状を六角形に形成される構成としているが、これに限らず、受け部12b、13bの円形開口部の内周径より外接円の径が大きくなり、且つ内接円の径が小さくなるような、他の多角形、例えば、五角形や八角形に形成する構成とすることもでき、外周形状を六角形とする場合同様、受け部13b、12bに圧入した突起部12a、13aを受け部から抜けにくくする十分な保持力を確保できる一方で、突起部12a、13aを圧入する際に必要な力を過剰に大きくせずに済み、シートの重ね合わせと共に行われる突起部の圧入作業を速やかに進められることとなる。
【0061】
また、前記実施形態に係る冷却塔用充填材において、充填材シート11としての第一シート12及び第二シート13における端パターン部14、15は、端辺方向に沿って繰返し形成される凹凸を、凸部の裏側凹形状部分及び凹部の各断面形状が略台形状となる凹凸パターンを有する形状とされて、第一シート12及び第二シート13を交互に複数重ねた状態で、凹部17、19と凸部の裏側凹形状部分18a、16aとの間の開口形状が略六角形をなす構成としているが、これに限られるものではなく、例えば
図10に示すように、他の開口形状となるように端パターン部の凹凸パターンを設定する構成とすることもできる。
【0062】
図10に示される端パターン部14、15の凹凸パターンは、凸部16、18と凹部17、19との間に平坦な中間部分(ただし、この中間部分は平面に限らず、剛性を高くするリブ等を設けるようにすることもできる)14a、15aを介在させた形状として形成される。
【0063】
この場合、第一シート12と第二シート13を交互に複数重ね合わせ、重なる各層において、隣り合う第一シート11と第二シート12における端パターン部14、15での凸部16、18と凹部の裏側凸部分19a、17aとの各当接部分を溶着させることで、全てのシートを一体化した充填材10が得られることとなる。
【0064】
この
図10に示す例では、端パターン部14、15を、凸部16、18と凹部17、19との端辺方向の間隔を大きくした凹凸パターン形状とすることで、凹部17、19と凸部の裏側凹形状部分18a、16aとの間の開口が端辺方向に長く延びた形状をなすこととなり、端パターン部14、15同士の当接部分を最小限として気流通路部となる開口部分を最大限確保でき、充填材シート間の隙間に対する空気の流入出時の抵抗を抑えられる。また、端パターン部14、15同士の各当接部分の間を大きく空けて、当接部分の数を少なくすることで、溶着箇所を当接部分ごとに設定しても、溶着箇所が大きく増えることはなく、溶着工程増による製造効率低下を防止できる。
【符号の説明】
【0065】
1 冷却塔
10 充填材
11 充填材シート
12 第一シート
12a、13a 突起部
12b、13b 受け部
13 第二シート
14、15 端パターン部
14a、15a 中間部分
16、18 凸部
17、19 凹部
16a、18a 凸部の裏側凹形状部分
17a、19a 凹部の裏側凸形状部分
20 上部水槽
30 下部水槽
31 支持枠
40 配水管路
50 ファン
90 溶着装置
91 溶着用デバイス