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  • 特許-劣化リンス水再生装置および洗浄装置 図1
  • 特許-劣化リンス水再生装置および洗浄装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】劣化リンス水再生装置および洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20220608BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20220608BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20220608BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20220608BHJP
   B01D 63/06 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
C02F1/44 K
B01D61/14 500
B01D69/00
B01D71/02
C02F1/44 A
B01D63/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019095036
(22)【出願日】2019-05-21
(65)【公開番号】P2020189262
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】591282711
【氏名又は名称】アクア化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104318
【弁理士】
【氏名又は名称】深井 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100182796
【弁理士】
【氏名又は名称】津島 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100181308
【弁理士】
【氏名又は名称】早稲田 茂之
(72)【発明者】
【氏名】岸永 成美
(72)【発明者】
【氏名】川畑 彩華
(72)【発明者】
【氏名】仲野 真一
(72)【発明者】
【氏名】和田 龍一
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】実開平7-31129(JP,U)
【文献】特開平1-139107(JP,A)
【文献】特開平8-52305(JP,A)
【文献】特開平7-308646(JP,A)
【文献】特開平9-141216(JP,A)
【文献】米国特許第05207917(US,A)
【文献】特開2015-029951(JP,A)
【文献】特開平9-220450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
B01D 17/00-17/12
B08B 3/00- 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
劣化リンス水を再生するためのセラミック分離膜モジュールと、
該セラミック分離膜モジュールと循環路によって接続された濃縮タンクと、
前記循環路に接続され、洗浄槽から排出された前記劣化リンス水を前記循環路に供給する供給路と、
前記劣化リンス水を、前記循環路を通って前記セラミック分離膜モジュールと濃縮タンクとの間を循環させる送液ポンプと、
前記劣化リンス水を循環させる過程で前記セラミック分離膜モジュールから分離された再生リンス水を前記洗浄槽に戻す返送路と、
前記供給路と前記返送路とを接続するバイパス路と、を備え
前記供給路は、前記バイパス路を通る前記返送路への流路と、前記セラミック分離膜モジュールへの流路との間で切り換え可能であることを特徴とする劣化リンス水再生装置。
【請求項2】
前記セラミック分離膜モジュールが、筒状のセラミック多孔質膜を含む膜エレメントをケーシング内に収納したものである請求項1に記載の劣化リンス水再生装置。
【請求項3】
前記セラミック多孔質膜が、精密ろ過膜または限外ろ過膜である請求項2に記載の劣化リンス水再生装置。
【請求項4】
前記セラミック多孔質膜は1~200nmの孔径を有する請求項2または3に記載の劣化リンス水再生装置。
【請求項5】
請求項1~4いずれかに記載の劣化リンス水再生装置を備えた洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば各種機械部品等の加工品の洗浄に使用した劣化リンス水を再生するための劣化リンス水再生装置および洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械部品等の加工には種々の加工油が使用されるため、加工品を洗浄して加工油を除去する必要がある。洗浄工程で使用される洗浄剤は、一般に、水系洗浄剤と、非水系洗浄剤と、準水系洗浄剤とに区分される。このうち、水系洗浄剤は、通常、無機・有機ビルダー、界面活性剤、キレート剤、防錆剤などから構成され、濃縮液や粉末の状態で提供されて、10~100倍程度に水で希釈して使用される。
【0003】
水系洗浄剤は、引火性や爆発性がない上に、固形物汚れも除去可能であって毒性も極めて少なく、しかも、ランニングコストが安いという利点がある。
また、水系洗浄剤は、超音波洗浄にも相性が良いという利点もある。超音波洗浄は、洗浄槽に超音波振動子を配置して超音波振動を発生させる洗浄方式であり、キャビテーション効果によって加工物の細部も含めて油汚れを剥ぎ取ることができる。
【0004】
しかし、超音波洗浄では、超音波振動によって加工油の乳化分散を促進するので、乳化状態の加工油の除去が大きな問題となる。特許文献1では、アルカリ洗浄剤または中性洗浄剤を水希釈した洗浄液を使用して洗浄後、使用した洗浄液を中空糸膜に流通させて乳化状態の加工油を除去し、洗浄液を再生する洗浄システムが記載されている。
【0005】
一方、実際の洗浄装置では、機械部品等の被洗浄物を洗浄液で洗浄後、被洗浄物をすすぐリンス工程と、最終の乾燥工程とがある。リンス工程では、水(リンス水)あるいは防錆水(防錆剤添加リンス水)(以下、これらを「リンス水」と総称する。)で被洗浄物に付着・残存した乳化状態の加工油を除去する。
しかし、リンス後の劣化リンス水中には加工油が乳化状態で含有されているため、同じリンス水を繰り返し使用すると、洗浄品質が低下するおそれがある。また、劣化リンス水をそのまま系外に排出するのは環境面からも好ましくない。そのため、劣化リンス水中の加工油濃度を低減することが、次工程への加工油持ち出しが抑制されるなど、洗浄品質の保持および環境面から要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6298603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、劣化リンス水から乳化加工油を高効率で除去して、リンス水を再生することができる劣化リンス水再生装置および洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の劣化リンス水再生装置は、劣化リンス水を再生するためのセラミック分離膜モジュールと、セラミック分離膜モジュールと循環路によって接続された濃縮タンクと、循環路に接続され、洗浄槽から排出された劣化リンス水を前記循環路に供給する供給路と、劣化リンス水を、循環路を通って前記セラミック分離膜モジュールと濃縮タンクとの間を循環させる送液ポンプと、劣化リンス水を循環させる過程でセラミック分離膜モジュールから分離された再生リンス水を洗浄槽に戻す返送路と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の洗浄装置は、上記劣化リンス水再生装置を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、劣化リンス水から乳化加工油を高効率で除去して、リンス水を再生することができるので、リンス水を交換することなく繰り返し利用することができ、高い洗浄品質を保持し、かつ環境面でも優れているという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る劣化リンス水再生装置を示す構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る洗浄装置の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係る劣化リンス水再生装置(以下、単に再生装置ということがある。)を図1に基づいて説明する。図1に示すように、再生装置1は、被洗浄物をリンスするための洗浄槽2から供給路3を経て排出される劣化リンス水を再生するためのセラミック分離膜モジュール4と、該セラミック分離膜モジュール4を通過した劣化リンス水を収容する濃縮タンク5とを備える。
【0013】
洗浄槽2には、超音波振動子(US)6が設置されており、前工程である洗浄工程にて洗浄液で洗浄された被洗浄物を超音波洗浄にてリンスする。洗浄槽2に収容されるリンス水は、主として水または水に防錆剤、キレート剤等を配合したものが使用され、洗浄工程で被洗浄物に付着した乳化加工油を除去することを目的とする。
【0014】
洗浄液としては、例えば、アルカリ洗浄剤または中性洗浄剤を含む水系洗浄液が挙げられる。アルカリ洗浄剤は、金属用水系洗浄剤として一般的に使用されているもので、アルカリ金属水酸化物、水溶性アルカリ金属塩などの無機系ビルダーと、界面活性剤、キレート剤などを主成分として含み、通常、10~100倍程度に水で希釈して使用される。
【0015】
セラミック分離膜モジュール4は、図示しない筒状のセラミック多孔質膜をケーシング内に収納したものである。セラミック多孔質膜としては、例えばアルミナ、ムライト、チタニア等の多孔質膜が挙げられる。これらのセラミック多孔質膜は精密ろ過膜または限外ろ過膜として機能し、限外ろ過膜であるのが好ましい。また、再生は、被処理液をセラミック多孔質膜の筒内に導入し、膜面に対して平行に流す、いわゆるクロスフロー方式で行われる。
【0016】
劣化リンス水をろ過して、劣化リンス水に含まれる乳化加工油を除去するためには、使用するセラミック多孔質膜は、孔径が1~200nm、好ましくは5~100nm程度であるのがよい。
【0017】
また、セラミック分離膜モジュール4は、複数の筒状セラミック多孔質膜を1つのケーシング内に収容したものであるのがよい。また、複数のセラミック分離膜モジュール4を並列的に配置し、各セラミック分離膜モジュール4の流入口に劣化リンス水が流入するようにしてもよい。
【0018】
セラミック分離膜モジュール4と濃縮タンク5とは循環路10a、10bで接続されている。循環路10aは、濃縮タンク5の下流側流出口とセラミック分離膜モジュール4の上流側流入口とを接続している。一方、循環路10bは、セラミック分離膜モジュール4の下流側流出口と濃縮タンク5の上流側流入口とを接続しており、セラミック分離膜モジュール4を通過した劣化リンス水を濃縮タンク5に送る。
【0019】
濃縮タンク5に収容された劣化リンス水は、循環路10aを通って再びセラミック分離膜モジュール4に送られ、残留する乳化加工油が除去され、リンス水が再生される。セラミック分離膜モジュール4から分離された再生リンス水は、返送路13により洗浄槽2に戻される。一方、濃縮タンク5には、繰り返しの循環により濃縮された乳化加工油を含む劣化リンス水が蓄積されるので、これを廃棄するための排出路14が設けられる。
【0020】
循環路10aには、送液ポンプ9が配設されている。送液ポンプ9より上流側の循環路10aには、洗浄槽2から排出された劣化リンス水を給送する供給路3が接続される。
供給路3には三方弁11が設けられ、この三方弁11にバイパス路12の一端が接続される。バイパス路12の他端は返送路13に接続される。さらに、供給路3には、異物を除去するためのフィルタ18が設けられている。フィルタ18は三方弁11より下流側に設けられているが、三方弁11の上流側に設けてもよい。
【0021】
次に、本実施形態に係る再生装置1を用いた劣化リンス水の再生方法を説明する。
洗浄槽2では、多数の被洗浄物をリンス水でリンスする。長時間使用して劣化したリンス水は、被洗浄物から分離された乳化状態の加工油を含んでいる。このような劣化リンス水は、洗浄槽2に付設したオーバーフロー槽7に排出され、オーバーフロー槽7から供給路3にて再生装置1に送られる。
【0022】
再生装置1に送られた劣化リンス水は、セラミック分離膜モジュール4に供給される。セラミック分離膜モジュール4への劣化リンス水の供給は、送液ポンプ9により加圧して行われる。このとき、セラミック分離膜モジュール4の流入口にかかる圧力や供給される液の流量等は、再生効率が最適となるように適宜設定すればよい。
【0023】
セラミック分離膜モジュール4において、クロスフロー方式にて劣化リンス水から再生リンス水を分離した後、排出された劣化リンス水は循環路10bにて濃縮タンク5に送られ、さらに循環路10aからセラミック分離膜モジュール4に送られるようにする。これにより、劣化リンス水は、送液ポンプ9によりセラミック分離膜モジュール4と濃縮タンク5との間を循環し、劣化リンス水から再生リンス水が分離される。
一方、セラミック分離膜モジュール4において劣化リンス水から分離された再生リンス水は、返送路13を通って洗浄槽2に戻される。
【0024】
以上のように、劣化リンス水の再生においては、劣化リンス水をセラミック分離膜モジュール4と濃縮タンク5との間を循環させながら、この循環路10a、10bに洗浄槽2から排出された劣化リンス水が供給路3を経て供給される。
なお、供給路3に設けた三方弁11を切り換えて、洗浄槽2から劣化リンス水の再生装置1への供給を停止させ、その状態でセラミック分離膜モジュール4と濃縮タンク5との間の循環のみを行わせるようにしてもよい。また、これとは逆に、循環10aに図示しない開閉弁を設けて、前記した循環を停止させ、洗浄槽2から劣化リンス水の再生装置1への供給のみを行わせるようにしてもよい。
【0025】
セラミック分離膜モジュール4から排出された劣化リンス水を、セラミック分離膜モジュール4と濃縮タンク5との間で循環させることにより、濃縮タンク5内の乳化加工油の濃度は次第に濃縮され高くなるので、所定濃度に達した段階で、濃縮タンク5内の劣化リンス水を排出路14から廃棄する必要がある。また、セラミック分離膜モジュール4内の筒状セラミック多孔質膜を定期的に交換する必要がある。
そのような場合には、洗浄槽2から排出された劣化リンス水を、三方弁11からバイパス路12を経て返送路13より洗浄槽2に戻す循環を行わせる。
【0026】
以上の実施形態では、洗浄槽2から排出された劣化リンス水を、最初にセラミック分離膜モジュール4に供給するようにしたが、本発明はこれに限定されず、上記劣化リンス水を、最初に循環路10aを通って濃縮タンク5に供給し、ついで循環路10bを通ってセラミック分離膜モジュール4に供給するようにしてもよい。その場合、送液ポンプ9は、循環路10bに設けるのがよい。
すなわち、循環路10a、10bを通る劣化リンス水の流れ方向を上記の実施形態とは逆方向にする以外は、上記の実施形態と同様にして劣化リンス水を再生することができる。
【0027】
本発明の洗浄装置は、図2に示すように、機械部品等の被洗浄物を、アルカリ洗浄剤を含む洗浄液で洗浄する洗浄槽15と、この洗浄槽15で洗浄した被洗浄物から洗浄剤成分、乳化加工油等を除去するリンスを行う洗浄槽2と、リンスした被洗浄物を乾燥させる乾燥槽16とを備える。洗浄槽2は、前記した劣化リンス水再生装置1を備える。
また、洗浄槽15には、洗浄液再生装置17を設けるのが好ましい。この洗浄液再生装置17としては、例えば、特許文献1に記載のように、中空糸膜を使用した中空糸膜モジュールを備えたものが使用可能である。
【0028】
本発明の再生装置1およびこの再生装置1を備えた洗浄装置は、被洗浄物から分離された乳化加工油を劣化リンス水から分離して再生するので、リンス水を交換することなく繰り返し利用することができる。
【0029】
以上、本発明の実施形態に係る再生装置1およびこの再生装置1を備えた洗浄装置について説明したが、本発明の再生装置1および洗浄装置は、上記実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0030】
1 再生装置
2 洗浄槽
3 供給路
4 セラミック分離膜モジュール
5 濃縮タンク
6 超音波振動子
7 オーバーフロー部
9 送液ポンプ
10a、10b 循環路
11 三方弁
12 バイパス路
13 返送路
14 排出路
15 洗浄槽
16 乾燥槽
17 洗浄液再生装置
18 フィルタ
図1
図2