(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】細菌メタゲノム分析を通した前立腺疾患の診断方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/689 20180101AFI20220608BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20220608BHJP
C12Q 1/6886 20180101ALN20220608BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20220608BHJP
C12N 15/10 20060101ALN20220608BHJP
【FI】
C12Q1/689 Z ZNA
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6886 Z
C12N15/09 Z
C12N15/10 100Z
(21)【出願番号】P 2019535312
(86)(22)【出願日】2017-12-27
(86)【国際出願番号】 KR2017015576
(87)【国際公開番号】W WO2018124742
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2019-08-23
(31)【優先権主張番号】10-2016-0181570
(32)【優先日】2016-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0180014
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516348577
【氏名又は名称】エムディー ヘルスケア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MD HEALTHCARE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユン-クン
【審査官】上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/099076(WO,A1)
【文献】特表2013-503857(JP,A)
【文献】特表2013-503858(JP,A)
【文献】Archives of Medical Science,2015年,Vol.11, No.2 ,pp.385-394
【文献】Frontiers in Microbiology,2016年,Vol.7, Article 1489,pp.1-7
【文献】BMC Veterinary Research,2017年,13:65,pp.1-11
【文献】Journal of Medical Virology,2014年,Vol.86,pp.2042-2048
【文献】Experimental & Molecular Medicine,2016年,Vol.48, No.e208,pp.1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68-1/70
C12N 15/09-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)被検体サンプルから分離した細胞外小胞からDNAを抽出する段階;
(b)前記抽出したDNAに対して配列番号1および配列番号2のプライマーペアを利用してPCRを行う段階;および
(c)前記PCR産物の配列分析を通して正常ヒトと被検体サンプルで細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較して
正常ヒトに比べて
被検体サンプルで、
アッカーマンシア属(Akkermansia)およびクレブシエラ(Klebsiella)属(genus)細菌由来小胞の含量が増加しており、アシネトバクター(Acinetobacter)およびリゾビウム(Rhizobium)属(genus)細菌由来小胞の含量が減少している場合、前立腺癌であると判定する段階;または
リューコノストック属(Leuconostoc)およびメタノブレウィバクテル(Methanobrevibacter)属(genus)細菌由来小胞の含量が増加しており、プロテウス(Proteus)およびリゾビウム(Rhizobium)属(genus)細菌由来小胞の含量が減少している場合、前立腺肥大症であると判定する段階を含み、
前記被検体サンプルは、小便であることを特徴とする、メタゲノム解析を通した前立腺癌または前立腺肥大症の判定のための情報提供方法。
【請求項2】
前記段階(c)の正常ヒトと被検体サンプルで細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較する段階で、
正常ヒトに比べて
被検体サンプルで、
アッカーマンシア属(Akkermansia)およびクレブシエラ(Klebsiella)属(genus)細菌由来小胞の含量が増加しており、アシネトバクター(Acinetobacter)およびリゾビウム(Rhizobium)属(genus)細菌由来小胞の含量が減少しており;
ユーリ古細菌(Euryarchaeota)、ウェルコミクロビウム門(Verrucomicrobia)、ゲンマティモナス門(Gemmatimonadetes)、アキドバクテリア(Acidobacteria)、およびプランクトミケス門(Planctomycetes)よりなる群から選ばれる1種以上の門(phylum)細菌由来細胞外小胞、
メタノバクテリア(Methanobacteria)、ヴェルコミクロビウム綱(Verrucomicrobiae)、アシディミクロビウム綱(Acidimicrobiia)、スパルトバクテリア(Spartobacteria)、ゲンマティモナス綱(Gemmatimonadetes)、アキドバクテリウム綱(Acidobacteriia)、およびペドスパイラ(Pedosphaerae)よりなる群から選ばれる1種以上の綱(class)細菌由来細胞外小胞、
メタノバクテリア目(Methanobacteriales)、ヴェルコミクロビア目(Verrucomicrobiales)、粘液細菌目(Myxococcales)、アシディミクロビウム目(Acidimicrobiales)、クトニオバクター目(Chthoniobacterales)、アキドバクテリウム目(Acidobacteriales)、およびペドスパイラ目(Pedosphaerales)よりなる群から選ばれる1種以上の目(order)細菌由来細胞外小胞、
メタノバクテリアセエ(Methanobacteriaceae)、ヴェルコミクロビア科(Verrucomicrobiaceae)、リケネラセエ(Rikenellaceae)、ウィクセラセエ(Weeksellaceae)、ストレプトミセス科(Streptomycetaceae)、ヘリコバクター科(Helicobacteraceae)、クトニオバクター科(Chthoniobacteraceae)、およびコリバクテリアセアエ(Koribacteraceae)よりなる群から選ばれる1種以上の科(family)細菌由来細胞外小胞、または
フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)、カテニバクテリウム(Catenibacterium)、ロゼブリア(Roseburia)、メタノブレウィバクテル(Methanobrevibacter)、クロストリジウム(Clostridium)、クリセオバクテリウム(Chryseobacterium)、ハロモナス(Halomonas)、アグリゲイティバクター(Aggregatibacter)、ロドプラネス(Rhodoplanes)、サーモアネロバクテリウム(Thermoanaerobacterium)、カンジダタスコリパクター(Candidatus Koribacter)、およびフレキスピラ(Flexispira)よりなる群から選ばれる1種以上の属(genus)細菌由来細胞外小胞の含量が増加している場合;または
テネリクテス(Tenericutes)門(phylum)細菌由来細胞外小胞、
モリクテス綱(Mollicutes)綱(class)細菌由来細胞外小胞、
ストラメノパイル(Stramenopiles)、アルテロモナス目(Alteromonadales)、リケッチア目(Rickettsiales)、およびナイセリア目(Neisseriales)よりなる群から選ばれる1種以上の目(order)細菌由来細胞外小胞、
ペプトコッカス(Peptococcaceae)、エグジゴバクテリウム科(Exiguobacteraceae)、放線菌科(Actinomycetaceae)、セルロモナダシアエ(Cellulomonadaceae)、フソバクテリアセエ(Fusobacteriaceae)、ポルフィロモナダシアエ(Porphyromonadaceae)、フラボバクテリウム科(Flavobacteriaceae)、モラクセラ(Moraxellaceae)、およびナイセリアセエ(Neisseriaceae)よりなる群から選ばれる1種以上の科(family)細菌由来細胞外小胞、または
テトラジェノコッカス属(Tetragenococcus)、プロテウス(Proteus)、モーガネラ(Morganella)、エグジゴバクテリウム属(Exiguobacterium)、オリバクテリウム(Oribacterium)、ポルフィロモナス(Porphyromonas)、放線菌属(Actinomyces)、セルロモナス(Cellulomonas)、ジェオトガリコッカス(Jeotgalicoccus)、フソバクテリウム(Fusobacterium)、エンテロバクター(Enterobacter)、ナイセリア(Neisseria)、アドラークルーツィア(Adlercreutzia)、およびパラバクテロイデス(Parabacteroides)よりなる群から選ばれる1種以上の属(genus)細菌由来細胞外小胞の含量が減少している場合、前立腺癌であると判定することを特徴とする、請求項1に記載のメタゲノム解析を通した前立腺癌または前立腺肥大症の判定のための情報提供方法。
【請求項3】
前記段階(c)の正常ヒトと被検体サンプルで細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較する段階で、
正常ヒトに比べて
被検体サンプルで、
リューコノストック属(Leuconostoc)およびメタノブレウィバクテル(Methanobrevibacter)属(genus)細菌由来小胞の含量が増加しており、プロテウス(Proteus)およびリゾビウム(Rhizobium)属(genus)細菌由来小胞の含量が減少しており;
ユーリ古細菌(Euryarchaeota)およびアキドバクテリア(Acidobacteria)よりなる群から選ばれる1種以上の門(phylum)細菌由来細胞外小胞、
メタノバクテリア(Methanobacteria)、およびアキドバクテリウム綱(Acidobacteriia)よりなる群から選ばれる1種以上の綱(class)細菌由来細胞外小胞、
メタノバクテリア目(Methanobacteriales)およびアキドバクテリウム目(Acidobacteriales)よりなる群から選ばれる1種以上の目(order)細菌由来細胞外小胞、
ルミノコッカセエ(Ruminococcaceae)、リケネラセエ(Rikenellaceae)、メタノバクテリアセエ(Methanobacteriaceae)、およびコリバクテリアセアエ(Koribacteraceae)よりなる群から選ばれる1種以上の科(family)細菌由来細胞外小胞、または
ハロモナス(Halomonas)、ルミノコッカス(Ruminococcus)、フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)、クレブシエラ(Klebsiella)、ロゼブリア(Roseburia)、ビロフィラ(Bilophila)、およびクロモハロバクタ一属(Chromohalobacter)よりなる群から選ばれる1種以上の属(genus)細菌由来細胞外小胞の含量が増加している場合;または
ストラメノパイル(Stramenopiles)、サプロスピラ目(Saprospirales)、およびシュードモナダーレス(Pseudomonadales)よりなる群から選ばれる1種以上の目(order)細菌由来細胞外小胞、
エグジゴバクテリウム科(Exiguobacteraceae)、フラボバクテリウム科(Flavobacteriaceae)、放線菌科(Actinomycetaceae)、およびモラクセラ(Moraxellaceae)よりなる群から選ばれる1種以上の科(family)細菌由来細胞外小胞、または
アシネトバクター(Acinetobacter)属(genus)細菌由来細胞外小胞の含量が減少している場合、前立腺肥大症であると判定することを特徴とする、請求項1に記載のメタゲノム解析を通した前立腺癌または前立腺肥大症の判定のための情報提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌メタゲノム分析を通して前立腺癌および前立腺肥大症などの前立腺疾患を診断する方法に関し、より具体的には、被検体由来サンプルを利用して細菌メタゲノム分析を行って、特定細菌由来細胞外小胞の含量増減を分析することによって、前立腺疾患を診断する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
男性生殖器官の一部である前立腺は、精子と混ざって精液を作る液体を作る臓器である。前立腺肥大症は、前立腺が肥大化して、膀胱下部の尿が出る道を遮って、尿道の尿の流れが詰まったり減少した状態であり、陽性前立腺肥大症(benign protstate hyperplasia、BPH)は、男性排尿障害によって前立腺のサイズが増加して、排尿を困難にする疾患である。前立腺は、尿を膀胱から移動させる管(尿管)を取り囲んでおり、思春期の間に前立腺は均等に膨張し、年が取るほど腺の尿道の側方部に集中して前立腺肥大が進行される。陽性前立腺肥大症の原因は、まだ明確に明らかにされていないが、他の慢性疾患と同様に、様々な要因が作用すると知られている。前立腺は、男性ホルモン依存器官であるから、成長と機能を維持するためには、持続的な男性ホルモンが必要であり、去勢によって男性ホルモンが生成されなければ、前立腺は萎縮するなどの原因があり、遺伝的要因と家族歴等も、前立腺肥大症と関連があると知られている。
【0003】
前立腺癌(prostate carcinoma)は、前立腺に発生する悪性腫瘍であって、大部分は、前立腺細胞で発生する腺癌(腺細胞の癌)である。前立腺癌の危険要因は、高齢(50才以上)で急激に増加する。人種によっては、東洋人の発生率が最も低く、遺伝的素因、家族歴、男性ホルモン、糖尿病、肥満、西欧化した食生活(動物性脂肪摂取の増加)、感染などが危険要因と知られている。早期検診によって前立腺癌による死亡を予防することができるという明確な証拠はないが、一般的に、寿命が10年以上残っていると予想される50才以上の男性には、毎年血中(血清)前立腺特異抗原(PSA)測定検査と直腸指診検査を受けることを勧告している。しかし、現代西洋医学の多くの発展にも関わらず、まだ非侵襲的な方法で前立腺癌を予測する方法はなく、既存の診断方法では、前立腺癌などの固形癌が進行された場合に発見される場合が多いので、前立腺癌による医療費用と死亡を予防するためには、前立腺癌の発生および原因因子をあらかじめ予測して、高危険群において前立腺癌の発生を予防する方法を提供することが効率的な方法である。
【0004】
一方、人体に共生する微生物は、100兆に達してヒト細胞より10倍多く、微生物の遺伝子数は、ヒトの遺伝子数の100倍を超えると知られている。微生物叢(microbiotaあるいはmicrobiome)は、与えられた居住地に存在する細菌(bacteria)、古細菌(archaea)、真核生物(eukarya)を含む微生物群集(microbial community)を言い、腸内微生物叢は、ヒトの生理現象に重要な役割をし、人体細胞と相互作用を通じてヒトの健康と病気に大きい影響を及ぼすものと知られている。人体に共生する細菌は、他の細胞への遺伝子、タンパク質などの情報を交換するためにナノメートルサイズの小胞(vesicle)を分泌する。粘膜は、200ナノメートル(nm)サイズ以上の粒子は通過できない物理的な防御膜を形成して、粘膜に共生する細菌である場合には粘膜を通過しないが、細菌由来小胞は、サイズが大概100ナノメートルサイズ以下であるので、比較的自由に粘膜を通過して人体に吸収される。
【0005】
環境ゲノミクスとも呼ばれるメタゲノム学は、環境で採取したサンプルから得られたメタゲノム資料に対する分析学と言える(韓国特許公開第2011-0073049号)。 最近、16sリボソームRNA(16s rRNA)塩基配列を基盤とした方法でヒトの微生物叢の細菌構成をリスト化することが可能になり、16sリボソームRNAの遺伝子である16s rDNA塩基配列を次世代塩基配列分析(next generation sequencing、NGS)platformを利用して分析する。しかし、 前立腺肥大症および前立腺癌などの前立腺疾患の発病において、尿などの人体由来物から細菌由来小胞に存在するメタゲノム分析を通して前立腺疾患の原因因子を同定し、前立腺疾患の発病危険度を診断する方法については報告されたことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、前立腺肥大症および前立腺癌の原因因子をベースに前立腺疾患を診断するために、被検体由来サンプルである尿から細菌由来細胞外小胞から遺伝子を抽出し、これに対してメタゲノム分析を行い、その結果、前立腺癌および前立腺肥大症などの前立腺疾患の原因因子として作用できる細菌由来細胞外小胞を同定したところ、これに基づいて本発明を完成した。
【0007】
これより、本発明は、細菌由来細胞外小胞に対するメタゲノム分析を通して前立腺癌を診断するための情報提供方法を提供することを目的とする。また、本発明は、細菌由来細胞外小胞に対するメタゲノム分析を通して前立腺肥大症患者において前立腺癌を診断するための情報提供方法を提供することを目的とする。また、本発明は、細菌由来細胞外小胞に対するメタゲノム分析を通して前立腺肥大症を診断するための情報提供方法を提供することを目的とする。
【0008】
しかし、本発明が解決しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されてない他の課題は、下記の記載から当業者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような本発明の目的を達成するために、本発明は、下記の段階を含む、前立腺疾患診断のための情報提供方法を提供する。
(a)被検体サンプルから分離した細胞外小胞からDNAを抽出する段階;
(b)前記抽出したDNAに対して配列番号1および配列番号2のプライマーペアを利用してPCRを行う段階;および
(c)前記PCR産物の配列分析を通して正常ヒトと前立腺癌患者由来サンプルで細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較する段階;または
前記PCR産物の配列分析を通して前立腺肥大症患者と前立腺癌患者由来サンプルで細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較する段階;または
前記PCR産物の配列分析を通して正常ヒトと前立腺肥大症患者由来サンプルで細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較する段階。
【0010】
また、本発明は、下記の段階を含む、前立腺疾患の診断方法を提供する。
(a)被検体サンプルから分離した細胞外小胞からDNAを抽出する段階;
(b)前記抽出したDNAに対して配列番号1および配列番号2のプライマーペアを利用してPCRを行う段階;および
(c)前記PCR産物の配列分析を通して正常ヒトと前立腺癌患者由来サンプルで細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較する段階;または
前記PCR産物の配列分析を通して前立腺肥大症患者と前立腺癌患者由来サンプルで細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較する段階;または
前記PCR産物の配列分析を通して正常ヒトと前立腺肥大症患者由来サンプルで細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較する段階。
【0011】
また、本発明は、下記の段階を含む、前立腺疾患の発病危険度の予測方法を提供する。
(a)被検体サンプルから分離した細胞外小胞からDNAを抽出する段階;
(b)前記抽出したDNAに対して配列番号1および配列番号2のプライマーペアを利用してPCRを行う段階;および
(c)前記PCR産物の配列分析を通して正常ヒトと前立腺癌患者由来サンプルで細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較する段階;または
前記PCR産物の配列分析を通して前立腺肥大症患者と前立腺癌患者由来サンプルで細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較する段階;または
前記PCR産物の配列分析を通して正常ヒトと前立腺肥大症患者由来サンプルで細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較する段階。
【0012】
本発明の一具現例において、前記段階(c)で正常ヒト由来サンプルと比較してTenericutes、Euryarchaeota、Verrucomicrobia、Gemmatimonadetes、Acidobacteria、およびPlanctomycetesよりなる群から選ばれる1種以上の門(phylum)細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較して前立腺癌を診断するものであってもよい。
【0013】
本発明の一具現例において、前記段階(c)で正常ヒト由来サンプルと比較してMollicutes、Methanobacteria、Verrucomicrobiae、Acidimicrobiia、Spartobacteria、Acidobacteria-6、Gemmatimonadetes、Acidobacteriia、およびPedosphaeraeよりなる群から選ばれる1種以上の綱(class)細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較して前立腺癌を診断するものであってもよい。
【0014】
本発明の一具現例において、前記段階(c)で正常ヒト由来サンプルと比較してStramenopiles、Alteromonadales、RF39、Rickettsiales、Neisseriales、Methanobacteriales、Verrucomicrobiales、Myxococcales、Acidimicrobiales、Chthoniobacterales、iii1-15、Acidobacteriales、Ellin329、およびPedosphaeralesよりなる群から選ばれる1種以上の目(order)細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較して前立腺癌を診断するものであってもよい。
【0015】
本発明の他の具現例において、前記段階(c)で正常ヒト由来サンプルと比較してPeptococcaceae、Exiguobacteraceae、Actinomycetaceae、Cellulomonadaceae、mitochondria、Fusobacteriaceae、S24-7、Porphyromonadaceae、Flavobacteriaceae、Moraxellaceae、Neisseriaceae、Methanobacteriaceae、Verrucomicrobiaceae、Rikenellaceae、Weeksellaceae、Streptomycetaceae、Helicobacteraceae、Chthoniobacteraceae、およびKoribacteraceaeよりなる群から選ばれる1種以上の科(family)細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較して前立腺癌を診断するものであってもよい。
【0016】
本発明の他の具現例において、前記段階(c)で正常ヒト由来サンプルと比較してRhizobium、Tetragenococcus、Proteus、Morganella、Exiguobacterium、Oribacterium、Porphyromonas、Actinomyces、Cellulomonas、Jeotgalicoccus、Acinetobacter、Fusobacterium、Enterobacter、Neisseria、Adlercreutzia、SMB53、Parabacteroides、Faecalibacterium、Catenibacterium、Roseburia、Akkermansia、Methanobrevibacter、Clostridium、Klebsiella、Chryseobacterium、Halomonas、Aggregatibacter、Rhodoplanes、Thermoanaerobacterium、Candidatus Koribacter、およびFlexispiraよりなる群から選ばれる1種以上の属(genus)細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較して前立腺癌を診断するものであってもよい。
【0017】
本発明の他の具現例において、前記段階(c)で前立腺肥大症患者由来サンプルと比較してVerrucomicrobia門(phylum)細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較して前立腺癌を診断するものであってもよい。
【0018】
本発明の他の具現例において、前記段階(c)で前立腺肥大症患者由来サンプルと比較してVerrucomicrobiae、Acidimicrobiia、Saprospirae、およびPedosphaeraeよりなる群から選ばれる1種以上の綱(class)細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較して前立腺癌を診断するものであってもよい。
【0019】
本発明の他の具現例において、前記段階(c)で前立腺肥大症患者由来サンプルと比較してVerrucomicrobiales、Acidimicrobiales、Saprospirales、Pedosphaerales、およびEllin329よりなる群から選ばれる1種以上の目(order)細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較して前立腺癌を診断するものであってもよい。
【0020】
本発明の他の具現例において、前記段階(c)で前立腺肥大症患者由来サンプルと比較してVerrucomicrobiaceae、Chitinophagaceae、およびHelicobacteraceaeよりなる群から選ばれる1種以上の科(family)細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較して前立腺癌を診断するものであってもよい。
【0021】
本発明の他の具現例において、前記段階(c)で前立腺肥大症患者由来サンプルと比較してRuminococcus、Akkermansia、およびFlexispiraよりなる群から選ばれる1種以上の属(genus)細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較して前立腺癌を診断するものであってもよい。
【0022】
本発明の他の具現例において、前記段階(c)で正常ヒト由来サンプルと比較してEuryarchaeota、およびAcidobacteriaよりなる群から選ばれる1種以上の門(phylum)細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較して前立腺肥大症を診断するものであってもよい。
【0023】
本発明の他の具現例において、前記段階(c)で正常ヒト由来サンプルと比較してMethanobacteria、Acidobacteria、およびAcidobacteriiaよりなる群から選ばれる1種以上の綱(class)細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較して前立腺肥大症を診断するものであってもよい。
【0024】
本発明の他の具現例において、前記段階(c)で正常ヒト由来サンプルと比較してStramenopiles、RF39、Saprospirales、Pseudomonadales、Methanobacteriales、およびAcidobacterialesよりなる群から選ばれる1種以上の目(order)細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較して前立腺肥大症を診断するものであってもよい。
【0025】
本発明の他の具現例において、前記段階(c)で正常ヒト由来サンプルと比較してExiguobacteraceae、Flavobacteriaceae、Actinomycetaceae、Moraxellaceae、Ruminococcaceae、Rikenellaceae、Methanobacteriaceae、およびKoribacteraceaeよりなる群から選ばれる1種以上の科(family)細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較して前立腺肥大症を診断するものであってもよい。
【0026】
本発明の他の具現例において、前記段階(c)で正常ヒト由来サンプルと比較してRhizobium、Proteus、Acinetobacter、SMB53、Halomonas、Ruminococcus、Faecalibacterium、Klebsiella、Roseburia、Leuconostoc、Bilophila、Chromohalobacter、およびMethanobrevibacterよりなる群から選ばれる1種以上の属(genus)細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較して前立腺肥大症を診断するものであってもよい。
【0027】
本発明のさらに他の具現例において、前記サンプルは、尿であってもよい。
【発明の効果】
【0028】
環境に存在する細菌から分泌される細胞外小胞は、体内に吸収されて、癌の発生に直接的な影響を及ぼすことができ、前立腺肥大症および前立腺癌は、症状が現れる前に早期診断が難しいため、効率的な治療が難しいのが現状であるから、本発明による人体由来サンプルを利用した細菌または細菌由来細胞外小胞のメタゲノム分析を通して前立腺肥大症および前立腺癌などの前立腺疾患発病の危険度をあらかじめ予測することによって、前立腺疾患の危険群を早期に診断および予測して、適切な管理により発病時期を遅らせたり発病を予防することができ、発病後にも早期診断することができるので、前立腺疾患の発病率を低下させ、治療効果を高めることができる。また、前立腺肥大症あるいは前立腺癌と診断された患者においてメタゲノム分析を通して原因因子を予測して、原因因子に対する露出を避けることによって、前立腺肥大症および前立腺癌の経過を良くしたり、再発を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1-2】
図1は、体内で細菌由来細胞外小胞の分布様相を評価するためのものであって、
図1aは、マウスに腸内細菌(Bacteria)および細菌由来小包(EV)を口腔で投与した後、時間別(0、5min、3h、6h、および12h)にこれらの分布様相を撮影した写真であり、
図1bは、マウスに腸内細菌(Bacteria)および細菌由来細胞外小胞(EV)を口腔で投与し、12時間後に尿および多様な臓器(心臓、肺、肝、腎臓、脾臓、脂肪組織、および筋肉)を摘出して、前記細菌および細胞外小胞の分布様相を撮影した写真である。
【
図3】
図2は、前立腺癌患者および正常ヒトの尿から細菌由来小胞を分離した後、メタゲノム分析を行って、門(phylum)レベルで診断的性能が有意な細菌由来小胞(EVs)の分布を示した結果である。
【
図4】
図3は、前立腺癌患者および正常ヒトの尿から細菌由来小胞を分離した後、メタゲノム分析を行って、綱(class)レベルで診断的性能が有意な細菌由来小胞(EVs)の分布を示した結果である。
【
図5】
図4は、前立腺癌患者および正常ヒトの尿から細菌由来小胞を分離した後、メタゲノム分析を行って、目(order)レベルで診断的性能が有意な細菌由来小胞(EVs)の分布を示した結果である。
【
図6】
図5は、前立腺癌患者および正常ヒトの尿から細菌由来小胞を分離した後、メタゲノム分析を行って、科(family)レベルで診断的性能が有意な細菌由来小胞(EVs)の分布を示した結果である。
【
図7】
図6は、前立腺癌患者および正常ヒトの尿から細菌由来小胞を分離した後、メタゲノム分析を行って、属(genus)レベルで診断的性能が有意な細菌由来小胞(EVs)の分布を示した結果である。
【
図8】
図7は、前立腺癌患者および前立腺肥大症患者の尿から細菌由来小胞を分離した後、メタゲノム分析を行って、門(phylum)レベルで診断的性能が有意な細菌由来小胞(EVs)の分布を示した結果である。
【
図9】
図8は、前立腺癌患者および前立腺肥大症患者の尿から細菌由来小胞を分離した後、メタゲノム分析を行って、綱(class)レベルで診断的性能が有意な細菌由来小胞(EVs)の分布を示した結果である。
【
図10】
図9は、前立腺癌患者および前立腺肥大症患者の尿から細菌由来小胞を分離した後、メタゲノム分析を行って、目(order)レベルで診断的性能が有意な細菌由来小胞(EVs)の分布を示した結果である。
【
図11】
図10は、前立腺癌患者および前立腺肥大症患者の尿から細菌由来小胞を分離した後、メタゲノム分析を行って、科(family)レベルで診断的性能が有意な細菌由来小胞(EVs)の分布を示した結果である。
【
図12】
図11は、前立腺癌患者および前立腺肥大症患者の尿から細菌由来小胞を分離した後、メタゲノム分析を行って、属(genus)レベルで診断的性能が有意な細菌由来小胞(EVs)の分布を示した結果である。
【
図13】
図12は、前立腺肥大症患者および正常ヒトの尿から細菌由来小胞を分離した後、メタゲノム分析を行って、門(phylum)レベルで診断的性能が有意な細菌由来小胞(EVs)の分布を示した結果である。
【
図14】
図13は、前立腺肥大症患者および正常ヒトの尿から細菌由来小胞を分離した後、メタゲノム分析を行って、綱(class)レベルで診断的性能が有意な細菌由来小胞(EVs)の分布を示した結果である。
【
図15】
図14は、前立腺肥大症患者および正常ヒトの尿から細菌由来小胞を分離した後、メタゲノム分析を行って、目(order)レベルで診断的性能が有意な細菌由来小胞(EVs)の分布を示した結果である。
【
図16】
図15は、前立腺肥大症患者および正常ヒトの尿から細菌由来小胞を分離した後、メタゲノム分析を行って、科(family)レベルで診断的性能が有意な細菌由来小胞(EVs)の分布を示した結果である。
【
図17】
図16は、前立腺肥大症患者および正常ヒトの尿から細菌由来小胞を分離した後、メタゲノム分析を行って、属(genus)レベルで診断的性能が有意な細菌由来小胞(EVs)の分布を示した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、細菌メタゲノム分析を通して前立腺肥大症および前立腺癌などの前立腺疾患を診断する方法に関し、本発明者らは、被検体由来サンプルを利用して細菌由来細胞外小胞から遺伝子を抽出し、これに対してメタゲノム分析を行い、前立腺疾患の原因因子として作用できる細菌由来細胞外小胞を同定した。
【0031】
これより、本発明は、(a)被検体サンプルから分離した細胞外小胞からDNAを抽出する段階;
(b)前記抽出したDNAに対して配列番号1および配列番号2のプライマーペアを利用してPCRを行う段階;および
(c)前記PCR産物の配列分析を通して正常ヒトと前立腺癌患者由来サンプルで細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較する段階;または
前記PCR産物の配列分析を通して前立腺肥大症患者と前立腺癌患者由来サンプルで細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較する段階;または
前記PCR産物の配列分析を通して正常ヒトと前立腺肥大症患者由来サンプルで細菌由来細胞外小胞の含量増減を比較する段階を含む前立腺疾患診断のための情報提供方法を提供する。
【0032】
本発明において使用される用語「前立腺癌診断」とは、患者に対して前立腺癌が発病する可能性があるか、前立腺癌が発病する可能性が相対的に高いか、または、前立腺癌がすでに発病したかどうかを判別することを意味する。本発明の方法は、任意の特定患者に対する前立腺癌の発病危険度が高い患者にとって特別かつ適切な管理を通じて発病時期を遅らせたり発病しないようにするのに使用することができる。また、本発明の方法は、前立腺癌を早期に診断して、最も適切な治療方式を選択することによって、治療を決定するために臨床的に使用することができる。
【0033】
本発明において使用される用語「前立腺肥大症診断」とは、患者に対して前立腺肥大症が発病する可能性があるか、前立腺肥大症が発病する可能性が相対的に高いか、または、前立腺肥大症がすでに発病したかどうかを判別することを意味する。本発明の方法は、任意の特定患者に対する前立腺肥大症の発病危険度が高い患者にとって特別かつ適切な管理を通じて発病時期を遅らせたり発病しないようにするのに使用することができる。また、本発明の方法は、前立腺肥大症を早期に診断して、最も適切な治療方式を選択することによって、治療を決定するために臨床的に使用することができる。
【0034】
本発明において使用される用語「メタゲノム(metagenome)」とは、「群遺伝体」とも言い、土、動物の腸など孤立した地域内のすべてのウイルス、細菌、かびなどを含む遺伝体の総和を意味するものであって、主に培養にならない微生物を分析するために、配列分析器を使用して一度に多くの微生物を同定することを説明する遺伝体の概念に使用される。特に、メタゲノムは、一種のゲノムまたは遺伝体をいうものではなく、一つの環境単位のすべての種の遺伝体であって、一種の混合遺伝体をいう。これは、オミックス的に生物学が発展する過程で一種を定義するとき、機能的に既存の一種だけでなく、多様な種が互いに相互作用して完全な種を作るという観点から出た用語である。技術的には、速い配列分析法を利用して、種に関係なく、すべてのDNA、RNAを分析して、一つの環境内でのすべての種を同定し、相互作用、代謝作用を糾明する技法の対象である。本発明では、好ましくは血清から分離した細菌由来細胞外小胞を利用してメタゲノム分析を実施した。
【0035】
本発明の実施例では、正常ヒト、前立腺肥大症患者、および前立腺癌患者の尿内細菌由来細胞外小胞に存在する遺伝子に対するメタゲノム分析を実施し、門(phylum)、綱(class)、目(order)、科(family)、および属(genus)レベルでそれぞれ分析して、実際に前立腺癌および前立腺肥大症の発生原因として作用できる細菌由来小胞を同定した。
【0036】
より具体的に、本発明の一実施例では、細菌由来メタゲノムを門レベルで分析した結果、Tenericutes、Euryarchaeota、Verrucomicrobia、Gemmatimonadetes、Acidobacteria、およびPlanctomycetes門細菌由来小胞が前立腺癌患者と正常ヒトとの間に有意な差異があった(実施例4参照)。
【0037】
より具体的に、本発明の一実施例では、細菌由来メタゲノムを綱レベルで分析した結果、Mollicutes、Methanobacteria、Verrucomicrobiae、Acidimicrobiia、Spartobacteria、Acidobacteria-6、Gemmatimonadetes、Acidobacteriia、およびPedosphaerae綱細菌由来小胞が前立腺癌患者と正常ヒトとの間に有意な差異があった(実施例4参照)。
【0038】
より具体的に、本発明の一実施例では、細菌由来メタゲノムを目レベルで分析した結果、Stramenopiles、Alteromonadales、RF39、Rickettsiales、Neisseriales、Methanobacteriales、Verrucomicrobiales、Myxococcales、Acidimicrobiales、Chthoniobacterales、iii1-15、Acidobacteriales、Ellin329、およびPedosphaerales目細菌由来小胞が前立腺癌患者と正常ヒトとの間に有意な差異があった(実施例4参照)。
【0039】
より具体的に、本発明の一実施例では、細菌由来メタゲノムを科レベルで分析した結果、Peptococcaceae、Exiguobacteraceae、Actinomycetaceae、Cellulomonadaceae、mitochondria、Fusobacteriaceae、S24-7、Porphyromonadaceae、Flavobacteriaceae、Moraxellaceae、Neisseriaceae、Methanobacteriaceae、Verrucomicrobiaceae、Rikenellaceae、Weeksellaceae、Streptomycetaceae、Helicobacteraceae、Chthoniobacteraceae、およびKoribacteraceae科細菌由来小胞が前立腺癌患者と正常ヒトとの間に有意な差異があった(実施例4参照)。
【0040】
より具体的に、本発明の一実施例では、細菌由来メタゲノムを属レベルで分析した結果、Rhizobium、Tetragenococcus、Proteus、Morganella、Exiguobacterium、Oribacterium、Porphyromonas、Actinomyces、Cellulomonas、Jeotgalicoccus、Acinetobacter、Fusobacterium、Enterobacter、Neisseria、Adlercreutzia、SMB53、Parabacteroides、Faecalibacterium、Catenibacterium、Roseburia、Akkermansia、Methanobrevibacter、Clostridium、Klebsiella、Chryseobacterium、Halomonas、Aggregatibacter、Rhodoplanes、Thermoanaerobacterium、Candidatus Koribacter、およびFlexispira属細菌由来小胞が前立腺癌患者と正常ヒトとの間に有意な差異があった(実施例4参照)。
【0041】
本発明のさらに他の実施例では、前立腺肥大症患者と前立腺癌患者の尿内細菌由来細胞外小胞に対するメタゲノム分析を実施し、門(phylum)、綱(class)、目(order)、科(family)、および属(genus)レベルでそれぞれ分析して、実際に前立腺肥大症患者において前立腺癌の発生原因として作用できる細菌由来小胞を同定した。
【0042】
より具体的に、本発明の一実施例では、細菌由来メタゲノムを門レベルで分析した結果、Verrucomicrobia門細菌由来小胞が前立腺癌患者と前立腺肥大症患者との間に有意な差異があった(実施例5参照)。
【0043】
より具体的に、本発明の一実施例では、細菌由来メタゲノムを綱レベルで分析した結果、Verrucomicrobiae、Acidimicrobiia、Saprospirae、およびPedosphaerae綱細菌由来小胞が前立腺癌患者と前立腺肥大症患者の間に有意な差異があった(実施例5参照)。
【0044】
より具体的に、本発明の一実施例では、細菌由来メタゲノムを目レベルで分析した結果、Verrucomicrobiales、Acidimicrobiales、Saprospirales、Pedosphaerales、およびEllin329目細菌由来小胞が前立腺癌患者と前立腺肥大症患者の間に有意な差異があった(実施例5参照)。
【0045】
より具体的に、本発明の一実施例では、細菌由来メタゲノムを科レベルで分析した結果、Verrucomicrobiaceae、Chitinophagaceae、Helicobacteraceae科細菌由来小胞が前立腺癌患者と前立腺肥大症患者との間に有意な差異があった(実施例5参照)。
【0046】
より具体的に、本発明の一実施例では、細菌由来メタゲノムを属レベルで分析した結果、Ruminococcus、Akkermansia、Flexispira属細菌由来小胞が前立腺癌患者と前立腺肥大症患者の間に有意な差異があった(実施例5参照)。
【0047】
本発明のさらに他の実施例では、正常ヒトと前立腺肥大症患者の尿内細菌由来細胞外小胞に対するメタゲノム分析を実施し、門(phylum)、綱(class)、目(order)、科(family)、および属(genus)レベルでそれぞれ分析して、実際に喘息患者において前立腺癌の発生原因として作用できる細菌由来小胞を同定した。
【0048】
より具体的に、本発明の一実施例では、細菌由来メタゲノムを門レベルで分析した結果、Euryarchaeota、およびAcidobacteria門細菌由来小胞が前立腺肥大症患者と正常ヒトとの間に有意な差異があった(実施例6参照)。
【0049】
より具体的に、本発明の一実施例では、細菌由来メタゲノムを綱レベルで分析した結果、Methanobacteria、Acidobacteria、およびAcidobacteriia綱細菌由来小胞が前立腺肥大症患者と正常ヒトとの間に有意な差異があった(実施例6参照)。
【0050】
より具体的に、本発明の一実施例では、細菌由来メタゲノムを目レベルで分析した結果、Stramenopiles、RF39、Saprospirales、Pseudomonadales、Methanobacteriales、およびAcidobacteriales目細菌由来小胞が前立腺肥大症患者と正常ヒトとの間に有意な差異があった(実施例6参照)。
【0051】
より具体的に、本発明の一実施例では、細菌由来メタゲノムを科レベルで分析した結果、Exiguobacteraceae、Flavobacteriaceae、Actinomycetaceae、Moraxellaceae、Ruminococcaceae、Rikenellaceae、Methanobacteriaceae、およびKoribacteraceae科細菌由来小胞が前立腺肥大症患者と正常ヒトとの間に有意な差異があった(実施例6参照)。
【0052】
より具体的に、本発明の一実施例では、細菌由来メタゲノムを属レベルで分析した結果、Rhizobium、Proteus、Acinetobacter、SMB53、Halomonas、Ruminococcus、Faecalibacterium、Klebsiella、Roseburia、Leuconostoc、Bilophila、Chromohalobacter、およびMethanobrevibacter属細菌由来小胞が前立腺肥大症患者と正常ヒトとの間に有意な差異があった(実施例6参照)。
【0053】
本発明は、上記のような実施例結果を通じて、尿から分離した細菌由来細胞外小胞に対しメタゲノム分析を実施することによって、正常ヒトおよび前立腺肥大症患者と比較して前立腺癌患者において含量が有意に変化した細菌由来小胞を同定し、メタゲノム分析を通して前記各レベルで細菌由来小胞の含量増減を分析することによって、前立腺癌を診断することができることを確認した。
【0054】
また、本発明は、上記のような実施例結果を通じて、尿から分離した細菌由来細胞外小胞に対してメタゲノム分析を実施することによって、正常ヒトと比較して前立腺肥大症患者において含量が有意に変化した細菌由来小胞を同定し、メタゲノム分析を通して前記各レベルで細菌由来小胞の含量増減を分析することによって、前立腺肥大症を診断することができることを確認した。
【0055】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例】
【0056】
[実施例]
実施例1.腸内細菌および細菌由来小胞の体内吸収、分布、および排泄様相の分析
腸内細菌と細菌由来小胞が胃腸管を介して全身的に吸収されるかを評価するために、次のような方法で実験を行った。マウスの胃腸に蛍光で標識した腸内細菌と腸内細菌由来小胞をそれぞれ50μgの用量で胃腸管で投与し、0分、5分、3時間、6時間、12時間後に蛍光を測定した。マウス全体イメージを観察した結果、
図1aに示したように、前記細菌(Bacteria)である場合には、全身的に吸収されないか、細菌由来小胞(EV)である場合には、投与後に5分に全身的に吸収され、投与3時間後には、膀胱に蛍光が濃く観察されて、小胞が泌尿器系に排泄されることが分かった。また、小胞は、投与12時間まで体内に存在することが分かった。
【0057】
腸内細菌と腸内細菌由来小胞が全身的に吸収された後、様々な臓器に浸潤された様相を評価するために、蛍光で標識した50μgの細菌と細菌由来小胞を前記の方法のように投与した後12時間目にマウスから血液(Blood)、心臓(Heart)、肺(Lung)、肝(Liver)、腎臓(Kidney)、脾臓(Spleen)、脂肪組織(Adipose tissue)、および筋肉(Muscle)を摘出した。前記摘出した組織で蛍光を観察した結果、
図1bに示したように、前記腸内細菌(Bacteria)は、各臓器に吸収されていない反面、前記腸内細菌由来細胞外小胞(EV)は、血液、心臓、肺、肝、腎臓、脾臓、脂肪組織、および筋肉に分布することを確認した。
【0058】
実施例2.尿から小胞の分離およびDNA抽出
尿から小胞を分離し、DNAを抽出するために、まず、10mlチューブに尿を入れ、遠心分離(3,500×g、10min、4℃)を実施して浮遊物を沈めて上澄み液だけを回収した後、新しい10mlチューブに移した。0.22μmフィルターを使用して前記回収した上澄み液から細菌および異物を除去した後、セントリプレップチューブ(centrifugal filters 50kD)に移し、1,500×g、4℃で15分間遠心分離して50kDより小さい物質は捨て、10mlまで濃縮させた。再び0.22μmフィルターを使用してバクテリアおよび異物を除去した後、Type 90tiローターで150,000×g、4℃で3時間の間超高速遠心分離方法を使用して上澄み液を捨て、固まったペレット(pellet)を生理食塩水(PBS)で溶かして小胞を収得した。
【0059】
前記方法によって尿から分離した小胞100μlを100℃で沸かして、内部のDNAを脂質外に出るようにした後、氷に5分間冷ました。次に、残った浮遊物を除去するために、10,000×g、4℃で30分間遠心分離し、上澄み液だけを集めた後、Nanodropを利用してDNA量を定量した。以後、前記抽出されたDNAに細菌由来DNAが存在するかを確認するために、下記表1に示した16s rDNA primerでPCRを行って、前記抽出された遺伝子に細菌由来遺伝子が存在することを確認した。
【0060】
【0061】
実施例3.尿内小胞から抽出したDNAを利用したメタゲノム分析
前記実施例2の方法で遺伝子を抽出した後、前記表1に示した16S rDNAプライマーを使用してPCRを実施して遺伝子を増幅させ、シーケンシング(Illumina MiSeq sequencer)を行った。結果をStandard Flowgram Format(SFF)ファイルで出力し、GS FLX software(v2.9)を利用してSFFファイルをsequenceファイル(.fasta)とnucleotide quality scoreファイルに変換した後、リードの信用度評価を確認し、window(20 bps)平均base call accuracyが99%未満(Phred score<20)である部分を除去した。質が低い部分を除去した後、リードの長さが300bps以上であるものだけを利用し(Sickle version 1.33)、結果分析のために、Operational Taxonomy Unit(OTU)は、UCLUSTとUSEARCHを利用してシークエンス類似度によってクラスタリングを行った。具体的に、属(genus)は94%、科(family)は90%、目(order)は85%、綱(class)は80%、門(phylum)は75%シークエンス類似度を基準としてクラスタリングをし、各OTUの門、綱、目、科、属レベルの分類を行い、BLASTNとGreenGenesの16S DNAシークエンス データベース(108、453シークエンス)を利用して97%以上のシークエンス類似度を有するバクテリアを分析した(QIIME)。
【0062】
実施例4.正常ヒトと前立腺癌患者の尿から分離した細菌由来小胞メタゲノム分析基盤前立腺癌診断模型
前記実施例3の方法で、前立腺癌患者53人と年齢と性別をマッチングした正常ヒト159人の尿から小胞を分離した後、メタゲノムシーケンシングを行った。診断模型の開発は、まず、t-testで二つの群間のp値が0.05以下であり、二つの群間に2倍以上違いが生じる菌株を選定した後、logistic regression analysis方法で診断的性能指標であるAUC(area under curve)、敏感度、および特異度を算出した。
【0063】
尿内細菌由来小胞を門(phylum)レベルで分析した結果、Tenericutes、Euryarchaeota、Verrucomicrobia、Gemmatimonadetes、Acidobacteria、およびPlanctomycetes門細菌で一つ以上のバイオマーカーで診断模型を開発したとき、前立腺癌に対する診断的性能が有意に現れた(表2および
図2参照)。
【0064】
【0065】
尿内細菌由来小胞を綱(class)レベルで分析した結果、Mollicutes、Methanobacteria、Verrucomicrobiae、Acidimicrobiia、Spartobacteria、Acidobacteria-6、Gemmatimonadetes、Acidobacteriia、およびPedosphaerae綱細菌で一つ以上のバイオマーカーで診断模型を開発したとき、前立腺癌に対する診断的性能が有意に現れた(表3および
図3参照)。
【0066】
【0067】
尿内細菌由来小胞を目(order)レベルで分析した結果、Stramenopiles、Alteromonadales、RF39、Rickettsiales、Neisseriales、Methanobacteriales、Verrucomicrobiales、Myxococcales、Acidimicrobiales、Chthoniobacterales、iii1-15、Acidobacteriales、Ellin329、およびPedosphaerales目細菌で一つ以上のバイオマーカーで診断模型を開発したとき、前立腺癌に対する診断的性能が有意に現れた(表4および
図4参照)。
【0068】
【0069】
尿内細菌由来小胞を科(family)レベルで分析した結果、Peptococcaceae、Exiguobacteraceae、Actinomycetaceae、Cellulomonadaceae、mitochondria、Fusobacteriaceae、S24-7、Porphyromonadaceae、Flavobacteriaceae、Moraxellaceae、Neisseriaceae、Methanobacteriaceae、Verrucomicrobiaceae、Rikenellaceae、Weeksellaceae、Streptomycetaceae、Helicobacteraceae、Chthoniobacteraceae、およびKoribacteraceae科細菌で一つ以上のバイオマーカーで診断模型を開発したとき、前立腺癌に対する診断的性能が有意に現れた(表5および
図5参照)。
【0070】
【0071】
尿内細菌由来小胞を属(genus)レベルで分析した結果、Rhizobium、Tetragenococcus、Proteus、Morganella、Exiguobacterium、Oribacterium、Porphyromonas、Actinomyces、Cellulomonas、Jeotgalicoccus、Acinetobacter、Fusobacterium、Enterobacter、Neisseria、Adlercreutzia、SMB53、Parabacteroides、Faecalibacterium、Catenibacterium、Roseburia、Akkermansia、Methanobrevibacter、Clostridium、Klebsiella、Chryseobacterium、Halomonas、Aggregatibacter、Rhodoplanes、Thermoanaerobacterium、Candidatus Koribacter、およびFlexispira属細菌で一つ以上のバイオマーカーで診断模型を開発したとき、前立腺癌に対する診断的性能が有意に現れた(表6および
図6参照)。
【0072】
【0073】
実施例5.前立腺肥大症患者と前立腺癌患者の尿から分離した細菌由来小胞メタゲノム分析基盤前立腺癌診断模型
前記実施例3の方法で、前立腺癌患者53人と前立腺肥大症患者55人の尿から小胞を分離した後、メタゲノムシーケンシングを行った。診断模型の開発は、まず、t-testで二つの群間のp値が0.05以下であり、二つの群間に2倍以上違いが生じる菌株を選定した後、logistic regression analysis方法で診断的性能指標であるAUC(area under curve)、敏感度、および特異度を算出した。
【0074】
尿内細菌由来小胞を門(phylum)レベルで分析した結果、Verrucomicrobia門細菌をバイオマーカーで診断模型を開発したとき、前立腺癌に対する診断的性能が有意に現れた(表7および
図7参照)。
【0075】
【0076】
尿内細菌由来小胞を綱(class)レベルで分析した結果、Verrucomicrobiae、Acidimicrobiia、Saprospirae、およびPedosphaerae綱細菌で一つ以上のバイオマーカーで診断模型を開発したとき、前立腺癌に対する診断的性能が有意に現れた(表8および
図8参照)。
【0077】
【0078】
尿内細菌由来小胞を目(order)レベルで分析した結果、Verrucomicrobiales、Acidimicrobiales、Saprospirales、Pedosphaerales、およびEllin329目細菌で一つ以上のバイオマーカーで診断模型を開発したとき、前立腺癌に対する診断的性能が有意に現れた(表9および
図9参照)。
【0079】
【0080】
尿内細菌由来小胞を科(family)レベルで分析した結果、Verrucomicrobiaceae、Chitinophagaceae、およびHelicobacteraceae科細菌で一つ以上のバイオマーカーで診断模型を開発したとき、前立腺癌に対する診断的性能が有意に現れた(表10および
図10参照)。
【0081】
【0082】
尿内細菌由来小胞を属(genus)レベルで分析した結果、Ruminococcus、Akkermansia、およびFlexispira属細菌で一つ以上のバイオマーカーで診断模型を開発したとき、前立腺癌に対する診断的性能が有意に現れた(表11および
図11参照)。
【0083】
【0084】
実施例6.正常ヒトと前立腺肥大症の尿から分離した細菌由来小胞メタゲノム分析基盤前立腺肥大症診断模型
前記実施例3の方法で、前立腺癌患者55人と正常ヒト159人の尿から小胞を分離した後、メタゲノムシーケンシングを行った。診断模型の開発は、まず、t-testで二つの群間のp値が0.05以下であり、二つの群間に2倍以上違いが生じる菌株を選定した後、logistic regression analysis方法で診断的性能指標であるAUC(area under curve)、敏感度、および特異度を算出した。
【0085】
尿内細菌由来小胞を門(phylum)レベルで分析した結果、Euryarchaeota、およびAcidobacteria門細菌で一つ以上のバイオマーカーで診断模型を開発したとき、前立腺肥大症に対する診断的性能が有意に現れた(表12および
図12参照)。
【0086】
【0087】
尿内細菌由来小胞を綱(class)レベルで分析した結果、Methanobacteria、Acidobacteria、およびAcidobacteriia綱細菌で一つ以上のバイオマーカーで診断模型を開発したとき、前立腺肥大症に対する診断的性能が有意に現れた(表13および
図13参照)。
【0088】
【0089】
尿内細菌由来小胞を目(order)レベルで分析した結果、Stramenopiles、RF39、Saprospirales、Pseudomonadales、Methanobacteriales、およびAcidobacteriales目細菌で一つ以上のバイオマーカーで診断模型を開発したとき、前立腺肥大症に対する診断的性能が有意に現れた(表14および
図14参照)。
【0090】
【0091】
尿内細菌由来小胞を科(family)レベルで分析した結果、Exiguobacteraceae、Flavobacteriaceae、Actinomycetaceae、Moraxellaceae、Ruminococcaceae、Rikenellaceae、Methanobacteriaceae、およびKoribacteraceae科細菌で一つ以上のバイオマーカーで診断模型を開発したとき、前立腺肥大症に対する診断的性能が有意に現れた(表15および
図15参照)。
【0092】
【0093】
尿内細菌由来小胞を属(genus)レベルで分析した結果、Rhizobium、Proteus、Acinetobacter、SMB53、Halomonas、Ruminococcus、Faecalibacterium、Klebsiella、Roseburia、Leuconostoc、Bilophila、Chromohalobacter、およびMethanobrevibacter属細菌で一つ以上のバイオマーカーで診断模型を開発したとき、前立腺肥大症に対する診断的性能が有意に現れた(表16および
図16参照)。
【0094】
【0095】
上記に記述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形が可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明による人体由来サンプルを利用した細菌由来細胞外小胞に存在する遺伝子に対してメタゲノム分析を通して前立腺癌および前立腺肥大症の発病危険度をあらかじめ予測することによって、前立腺疾患の危険群を早期に診断および予測して、適切な管理により発病時期を遅らせたり発病を予防することができ、前立腺肥大症あるいは前立腺癌の発病後にも早期診断することができるので、前立腺疾患の発病率を低下させ、治療効果を高めることができる。
【配列表】