(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】動物用遺伝子性疾患予防食品提案システム
(51)【国際特許分類】
A01K 29/00 20060101AFI20220608BHJP
【FI】
A01K29/00 A
(21)【出願番号】P 2021009190
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2020010431
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519173897
【氏名又は名称】株式会社ブーリアン
(74)【代理人】
【識別番号】100132621
【氏名又は名称】高松 孝行
(74)【代理人】
【識別番号】100123364
【氏名又は名称】鈴木 徳子
(72)【発明者】
【氏名】西村 勇人
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-502398(JP,A)
【文献】特開2001-195385(JP,A)
【文献】特表2019-509464(JP,A)
【文献】特開2011-175668(JP,A)
【文献】特開2013-092917(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0240359(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 29/00
G06F 17/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の遺伝性疾患の予防または進行抑制できる有効成分情報と単位重量当たりのカロリー情報とを少なくとも含む機能性食品材料に関する、複数の機能性食品材料データと、
単位重量当たりのカロリー情報を少なくとも含み、当該単位重量当たりのカロリーが異なる、複数のカロリー食品材料データと、
前記動物の少なくとも種類、年齢および体重と、
に基づいて、前記遺伝性疾患の予防または進行抑制できる遺伝子性疾患予防食品データを提案する動物用遺伝子性疾患予防食品提案システムであって、
前記動物の遺伝子解析の結果により判明した前記遺伝性疾患に対する予防または進行抑制できる前記有効成分情報を含む前記機能性食品材料データを選択する機能性食品材料選択手段と、
前記動物の少なくとも種類、年齢、体重、前記機能性食品材料データおよび前記複数のカロリー食品材料データに基づいて、前記機能性食品材料の重量、前記複数のカロリー食品材料それぞれの重量を算出する食品材料量算出手段と、
を
有し、
前記複数のカロリー食品材料データは、
前記機能性食品材料の単位重量当たりのカロリーよりも高いカロリー情報を含む高カロリー食品材料データと、
前記機能性食品材料の単位重量当たりのカロリーよりも低いカロリー情報を含む低カロリー食品材料データとからなり、
前記食品材料量算出手段は、前記動物の少なくとも種類、年齢、体重、前記機能性食品材料データ、前記高カロリー食品材料データおよび前記低カロリー食品材料データに基づいて、前記遺伝性疾患の予防または進行抑制することができる前記機能性食品材料の総重量と、前記高カロリー食品材料データの重量と前記低カロリー食品材料との重量の比率が予め定められたものとなるように前記高カロリー食品材料の重量および前記低カロリー食品材料の重量と、をそれぞれ算出する
ことを特徴とする動物用遺伝子性疾患予防食品提案システム。
【請求項2】
前記遺伝性疾患を所定のカテゴリに分類し、
前記機能性食品材料データには、前記所定のカテゴリに分類された遺伝性疾患の予防または進行抑制できる前記有効成分情報が複数含まれ、
前記機能性食品材料選択手段は、前記動物の遺伝子解析の結果により判明した前記遺伝性疾患に対する予防または進行抑制できる前記有効成分情報を含む前記機能性食品材料データを選択する
ことを特徴とする請求項
1に記載の動物用遺伝子性疾患予防食品提案システム。
【請求項3】
前記動物が犬であり、
機能性食品材料の重量と、高カロリー食品材料の重量および低カロリー食品材料の重量の合計重量との重量比が70:30であり、
前記食品材料量算出手段は、次式を用いて高カロリー食品材料の重量比率Aを算出することを特徴とする請求項
1または2に記載の動物用遺伝子性疾患予防食品提案システム。
(式中、Zは前記犬が必要とする一日当たりの総カロリーを示す。)
【請求項4】
前記動物の遺伝子解析を行う遺伝子解析手段と、
前記機能性食品材料選択手段および前記食品材料量算出手段により提案された前記機能性食品材料および前記カロリー食品材料並びにそれらの重量に基づいて、前記動物用遺伝子性疾患予防食品を製造する疾患予防食品製造手段とを具備することを特徴とする請求項1~
3の何れか1項に記載の動物用遺伝子性疾患予防食品提案システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも動物の状態(種類、品種、年齢、体重、性別等)に応じて、動物が保有する遺伝性疾患の予防または進行抑制に有効で、かつ安心して長期的に給与できる動物用遺伝子性疾患予防食品を提案する動物用遺伝子性疾患予防食品提案システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ペット等の動物においても人間と同様に、栄養過多、運動不足、高齢化等に起因する、高血圧、肥満、糖尿病等の疾患が多発している。そこで、ペットによる嗜好性が高く、ペットが好んで摂取し、しかもペットの疾患を予防・治療し得るペットフードが要望されている。
【0003】
例えば、腎臓病の予防または進行抑制に有効で、ペットに安心して長期的に給与することができ、ペットの健康維持を図ることができるペットフードとして、蛋白質の含有量が乾物換算で14~20質量%、脂肪の含有量が乾物換算で10~15質量%、リンの含有量が乾物換算で0.1~0.65質量%であるペットフードが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、近年では、ペット等の動物においても、遺伝子解析を行うことによって、動物が保有する潜在的な遺伝性疾患の有無を判定できるようになってきている。
【0006】
しかしながら、遺伝子解析の結果を活用して、動物が保有する遺伝性疾患の予防または進行抑制に有効で、かつ安心して長期的に給与できる動物用食品を容易に作製できないという問題点があった。
【0007】
また、人間と異なり、動物には様々な種類、品種、年齢、体重、性別等の多くのバリエーションがある。したがって、各動物の遺伝子性疾患に応じた動物用食品(ペットフードを含む)となると、その数は膨大となり、それらに合わせて動物用食品を製造することは現実的ではないという問題点があった。
【0008】
本発明は上述した事情に鑑み、動物が保有する遺伝性疾患の予防または進行抑制に有効で、かつ安心して長期的に給与できる動物用遺伝子性疾患予防食品を提案する動物用遺伝子性疾患予防食品提案システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者は、上述した問題点に関して鋭意研究開発を続けた結果、以下のような画期的な動物用遺伝子性疾患予防食品提案システムを見出した。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の第1の態様は、動物の遺伝性疾患の予防または進行抑制できる有効成分情報と単位重量当たりのカロリー情報とを少なくとも含む機能性食品材料に関する、複数の機能性食品材料データと、単位重量当たりのカロリー情報を少なくとも含み、単位重量当たりのカロリーが異なる、複数のカロリー食品材料データと、動物の少なくとも種類、年齢および体重と、に基づいて、遺伝性疾患の予防または進行抑制できる遺伝子性疾患予防食品データを提案する動物用遺伝子性疾患予防食品提案システムであって、動物の遺伝子解析の結果により判明した遺伝性疾患に対する予防または進行抑制できる有効成分情報を含む機能性食品材料データを選択する機能性食品材料選択手段と、動物の少なくとも種類、年齢、体重、機能性食品材料データおよび複数のカロリー食品材料データに基づいて、機能性食品材料の重量、複数のカロリー食品材料それぞれの重量を算出する食品材料量算出手段と、を有することを特徴とする動物用遺伝子性疾患予防食品提案システムにある。
【0011】
ここで、「遺伝子解析」とは、動物の遺伝子を解析(遺伝子検査を含む)するものであれば特に限定されず、動物の遺伝子の分析に基づいて行う疾病の診断を含む概念である。また、「単位重量当たりのカロリー」とは、単位重量当たりのカロリー自体だけでなく、単位重量当たりのカロリーを算出することができる情報(例えば、機能性食品材料重量と、その機能性食品材料の熱量(カロリー)とが含まれていれば、その機能性食品材料の熱量を機能性食品材料重量で除することにより、単位重量当たりのカロリーを算出することができる等)をも含む概念である。
【0012】
かかる第1の態様によれば、遺伝子解析の結果を活用して、動物が保有する遺伝性疾患の予防または進行抑制に有効で、かつ安心して長期的に給与できる動物用遺伝子性疾患予防食品を容易に提案することができる。また、動物には様々な種類、品種、年齢、体重、性別等の多くのバリエーションがあるが、かかる第1の態様では、機能性食品材料と複数のカロリー食品材料とを組み合わせることで、各動物の遺伝子性疾患に応じた動物用遺伝子性疾患予防食品を提案することができる。
【0013】
本発明の第2の態様は、複数のカロリー食品材料データは、所定の単位重量当たりのカロリーよりも高いカロリー情報を含む高カロリー食品材料データと、所定の単位重量当たりのカロリーよりも低いカロリー情報を含む低カロリー食品材料データとからなり、食品材料量算出手段は、動物の少なくとも種類、年齢、体重、機能性食品材料データ、高カロリー食品材料データおよび低カロリー食品材料データに基づいて、機能性食品材料の重量、高カロリー食品材料の重量および低カロリー食品材料の重量を算出することを特徴とする第1の態様に記載の動物用遺伝子性疾患予防食品提案システムにある。
【0014】
ここで、「所定の単位重量当たりのカロリー」とは、特に限定されず、任意に設定することができる単位重量当たりのカロリー(熱量)である。したがって、本態様には、「所定の単位重量当たりのカロリー」を明確に定めず、高カロリー食品材料と、その高カロリー食品材料の単位重量当たりのカロリーよりも低い単位重量当たりのカロリーの低カロリー食品材料とを用いて構成することも含まれる。
【0015】
かかる第2の態様によれば、少数の機能性食品材料および2つのカロリー食品材料(高カロリー食品材料・低カロリー食品材料)のみを組み合わせることで、各動物の遺伝子性疾患に応じた動物用遺伝子性疾患予防食品を提案することができる。
【0016】
本発明の第3の態様は、機能性食品材料の単位重量当たりのカロリー情報が、所定の単位重量当たりのカロリーまたはその近傍のカロリーであることを特徴とする第2の態様に記載の動物用遺伝子性疾患予防食品提案システムにある。
【0017】
ここで、「近傍のカロリー」とは、動物用遺伝子性疾患予防食品提案システムにより提案された動物用遺伝子性疾患予防食品を、実際に食す動物の体調に影響を与えないようなカロリーの幅をいい、例えば所定の単位重量当たりのカロリーよりも100kcal/100g高いカロリーから100kcal/100g低いカロリーまでの範囲に含まれるカロリーや、所定の単位重量当たりのカロリーよりも50kcal/100g高いカロリーから50kcal/100g低いカロリーまでの範囲に含まれるカロリーをいう。
【0018】
かかる第3の態様によれば、機能性食品材料の重量、各カロリー食品材料それぞれの重量を容易に算出することができると共に、動物の種類、年齢および体重に応じて、より適切な動物用遺伝子性疾患予防食品を提案することができる。
【0019】
本発明の第4の態様は、遺伝性疾患を所定のカテゴリに分類し、機能性食品材料データには、所定のカテゴリに分類された遺伝性疾患の予防または進行抑制できる有効成分情報が複数含まれ、機能性食品材料選択手段は、動物の遺伝子解析の結果により判明した遺伝性疾患に対する予防または進行抑制できる有効成分情報を含む機能性食品材料データを選択することを特徴とする第1~第3の態様の何れか1つに記載の動物用遺伝子性疾患予防食品提案システムにある。
【0020】
かかる第4の態様では、遺伝性疾患を所定のカテゴリに分類することにより、より少数の機能性食品材料、高カロリー食品材料および低カロリー食品材料を組み合わせることで、各動物の遺伝子性疾患に応じた動物用遺伝子性疾患予防食品を提案することができる。
【0021】
本発明の第5の態様は、機能性食品材料の総重量と、カロリー食品材料それぞれの重量およびカロリー食品材料の重量の合計重量との比率が予め定められていることを特徴とする第1~第4の態様の何れか1つに記載の動物用遺伝子性疾患予防食品提案システムにある。
【0022】
かかる第5の態様では、機能性食品材料の総重量と、カロリー食品材料それぞれの重量の合計重量との比率が予め定められており、各食品材料の比率等の計算が簡単になるので、動物用遺伝子性疾患予防食品をより容易に提案することができる。
【0023】
本発明の第6の態様は、動物が犬であり、機能性食品材料の重量と、高カロリー食品材料の重量および低カロリー食品材料の重量の合計重量との重量比が70:30であり、食品材料量算出手段は、次式を用いて高カロリー食品材料の重量比率Aを算出することを特徴とする第2または第3の態様に記載の動物用遺伝子性疾患予防食品提案システムにある。
【0024】
【数1】
この式中、Zは犬が必要とする一日当たりの総カロリーを示す。
【0025】
かかる第6の態様では、各食品材料の比率等の計算がより簡単になるので、動物用遺伝子性疾患予防食品をさらに容易に提案することができる。
【0026】
本発明の第7の態様は、動物の遺伝子解析を行う遺伝子解析手段と、機能性食品材料選択手段および食品材料量算出手段により提案された機能性食品材料およびカロリー食品材料並びにそれらの重量に基づいて、動物用遺伝子性疾患予防食品を製造する疾患予防食品製造手段とを具備することを特徴とする第1~第6の態様の何れか1つに記載の動物用遺伝子性疾患予防食品提案システムにある。
【0027】
かかる第7の態様では、遺伝子解析に基づいて作製した動物用遺伝子性疾患予防食品をその動物の飼い主等に配送することができる。
【0028】
なお、本発明において、「手段」、「データベース」、「システム」とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その「手段」、「データベース」、「システム」が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの「手段」、「データベース」、「システム」が有する機能が2つ以上の物理的手段や装置により実現されても、2つ以上の「手段」、「データベース」、「システム」の機能が1つの物理的手段や装置により実現されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は実施形態1に係る動物用遺伝子性疾患予防食品提案システムの概略概念図である。
【
図2】
図2は実施形態1に係る動物用遺伝子性疾患予防食品提案サーバの概略概念図である。
【
図3】
図3は実施形態1に係る疾患データの一例の表である。
【
図4】
図4は実施形態1に係る疾病カテゴリの一例の表である。
【
図5】
図5は実施形態1に係る機能性食品材料の一例を示す表である。
【
図6】
図6は実施形態1に係る機能性食品材料、高カロリー食品材料および低カロリー食品材料の100g当たりのカロリーの一例(例1、例2)を示す表である。
【
図7】
図7は実施形態1に係る調整表の一例である。
【
図8】
図8は実施形態1に係る機能性食品材料の重量、高カロリー食品材料の重量および低カロリー食品材料の重量の関係を示す概念図である。
【
図9】
図9は実施形態1に係る動物用遺伝子性疾患予防食品提案システムの動作を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は実施形態2に係る機能性食品材料の重量、高カロリー食品材料の重量および低カロリー食品材料の重量の関係を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る動物用遺伝子性疾患予防食品提案システムの実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
(実施形態1)
【0031】
図1に示すように、本実施形態に係る動物用遺伝子性疾患予防食品提案システム1は、ネットワーク40を介して、遺伝子解析手段10と、動物用遺伝子性疾患予防食品提案サーバ20と、疾患予防食品製造手段30とが接続されて構成されている。なお、本実施形態では、具体例として、動物の種類を「犬」とした場合について説明する。なお、動物の種類は猫等であってもよく、犬に限定されない。
【0032】
この動物用遺伝子性疾患予防食品提案サーバ20は、
図2に示すように、食品材料データベース21、機能性食品材料選択手段25および食品材料量算出手段26を有している。
【0033】
食品材料データベース21は、疾患データ210、機能性食品材料データ211、高カロリー食品材料データ212および低カロリー食品材料データ213を格納している。
【0034】
ここで、疾患データ210とは、遺伝子解析によって発見することができる遺伝性疾患に関するデータであれば特に限定されない。疾患データ210としては、例えば
図3に示すようなデータが挙げられる。この表において、疾病カテゴリとは、疾患データ210を所定のカテゴリに分類した際のカテゴリである。なお、この例では、全ての疾患データは、
図4に示す疾病カテゴリに分類されている。
【0035】
機能性食品材料データ211とは、遺伝性疾患の予防または進行抑制に有効で、かつ安心して長期的に給与できる有効成分情報と、単位重量当たりのカロリー情報とが少なくとも含まれる食品材料(キブル)に関するデータであれば特に限定されない。機能性食品材料データ211としては、例えば
図5に示すようなデータと、
図6中に示された機能性食品材料のカロリー(例1の場合は350kcal/100g、例2の場合は330~400kcal/100g)を少なくとも含むデータが挙げられる。この表において、疾病カテゴリとは、上述したものと同じものである。また、この表において、有効成分とは、有効成分情報であって、各疾病カテゴリに含まれる遺伝性疾患の予防または進行抑制に有効で、かつ安心して長期的に給与できる成分に関する情報であり、このようなものであれば特に限定されない。
【0036】
高カロリー食品材料データ212とは、カロリー食品材料データの1つであって、所定の単位重量当たりのカロリーよりも高い単位重量当たりのカロリーを有する動物用食品材料に関するデータであり、少なくとも単位重量当たりのカロリー情報が含まれているものであれば特に限定されない。ここで、「所定の単位重量当たりのカロリー」は、特に限定されず、任意に設定することができるカロリー(熱量)である。所定の単位重量当たりのカロリーとしては、例えば、後述する機能性食品材料のカロリー(350kcal/100g)と同じカロリー等が挙げられる。なお、各機能性食品材料データ211に含まれる単位重量当たりのカロリー情報は、同じであれば好ましいが、異なっていてもよい。
【0037】
同様に、低カロリー食品材料データ213とは、カロリー食品材料データの1つであって、所定の単位重量当たりのカロリーよりも低い単位重量当たりのカロリーを有する動物用食品材料に関するデータであり、少なくとも単位重量当たりのカロリー情報が含まれているものであれば特に限定されない。
【0038】
高カロリー食品材料データ212および低カロリー食品材料データ213としては、例えば
図6中に示すようなデータ(高カロリー食品材料および低カロリー食品材料の部分)が挙げられる。なお、実際の高カロリー食品材料および低カロリー食品材料は、例えば
図6の例1に示すカロリーとなるように、牛肉、豚肉および鶏肉等を配合して製造されることになる。また、実際の機能性食品材料は、例えば
図6の例1に示すカロリーとなるように、
図5に示す有効成分と、牛肉、豚肉、鶏肉等とを配合して製造されることになる。なお、機能性食品材料データ、高カロリー食品材料データおよび低カロリー食品材料データは、
図6の例2に示すように、所定の幅を有するように設定してもよい。
【0039】
食品材料データベース21としては、これらのデータを格納することができるものであれば特に限定されず、市販のデータベースソフトウェア等であってもよい。
【0040】
機能性食品材料選択手段25とは、動物の遺伝子解析の結果により判明した遺伝性疾患の予防または進行抑制を有する有効成分情報を含む機能性食品材料データ211を選択することができるものであれば特に限定されない。機能性食品材料選択手段25としては、例えば遺伝子解析の結果、その犬が「エルクハウンド原発緑内障」という遺伝性疾病を保有すると判明した場合には、
図3に示す表から疾病カテゴリとして「眼科関連(b)」を抽出し、その後、
図5に示す表から疾病カテゴリが(b)であり、有効成分情報として「アスタキサンチン、トコトリエノール、ルテイン」を含む機能性食品材料Bを選択するプログラム等が挙げられる。
【0041】
食品材料量算出手段26とは、少なくとも動物の種類(本実施形態の場合は犬)、年齢、体重、機能性食品材料データ、高カロリー食品材料データおよび低カロリー食品材料データに基づいて、機能性食品材料の重量、高カロリー食品材料の重量および低カロリー食品材料の重量を算出することができるものであれば特に限定されない。食品材料量算出手段26としては、例えば、次のようにして各食品材料(機能性食品材料、高カロリー食品材料および低カロリー食品材料)の重量を算出するプログラム等が挙げられる。
【0042】
まず、機能性食品材料の重量と、高カロリー食品材料の重量および低カロリー食品材料の重量の合計重量との比率(例えば、機能性食品材料の重量:高カロリー食品材料の重量および低カロリー食品材料の重量の合計重量=70:30)を決めておく。ここで、
図6に示すように、各食品材料の単位重量当たりのカロリーは予め算出されているものとする。また、各機能性食品材料の単位重量当たりのカロリーは同一になるように調整されているものとする。
【0043】
次に、次式を用いて、犬が必要とする一日当たりの総カロリーZを算出する。
【0044】
【0045】
そして、機能性食品材料の重量:高カロリー食品材料の重量および低カロリー食品材料の重量の合計重量=70:30の場合は、次式を用いて高カロリー食品材料の重量比率Aを算出する。
【0046】
【0047】
なお、低カロリー食品材料の重量比率Bは、30からAを引くこと(B=30-A)によって得られる。そして、これらの比率と、各食品材料の単位重量当たりのカロリー情報とを用いることによって、総カロリーがZになるような、機能性食品材料の重量と、高カロリー食品材料の重量と、低カロリー食品材料の重量を算出することができる。
【0048】
この際に、組み合わせによっては、Bが負の値となってしまうことがある。その場合には、予め作成しておいた
図7に示すような調整表(Z=395.9kcalの場合)を用いて遺伝子性疾患予防食品の総量を調整し、AおよびBが共に正の値となるものを選択する。また、AおよびBが共に正の値となったものが複数ある場合には、例えば、その中で総量が最も小さいものを選択する。
【0049】
このようにすることによって、食品材料量算出手段26は、例えば
図8の概念図に示すように、犬の年齢および体重に応じて、機能性食品材料の重量、高カロリー食品材料(high)の重量および低カロリー食品材料(low)の重量を算出することができる。
【0050】
さらに、
図1に示す遺伝子解析手段10は、動物の遺伝子を解析することができる機能を有するものであれば特に限定されない。遺伝子解析手段10としては、例えば、動物の口腔内から採取された粘膜の遺伝子解析を行う遺伝子検査キット、遺伝子検査装置、検査機関や企業等が挙げられる。
【0051】
また、疾患予防食品製造手段30も、機能性食品材料選択手段25によって選択された機能性食品材料データ211並びに、食品材料量算出手段26によって算出された機能性食品材料の重量、高カロリー食品材料の重量および低カロリー食品材料の重量(これらを併せて、「遺伝子性疾患予防食品に関する情報」という。)を使って、遺伝子性疾患予防食品を実際に製造することができる機能を有するものであれば特に限定されない。疾患予防食品製造手段30としては、例えば動物用食品を製造している工場や企業等が挙げられる。
【0052】
そして、ネットワーク40は、遺伝子解析の結果や遺伝子性疾患予防食品に関する情報等を送信することができるものであれば特に限定されず、例えばインターネットやイントラネットであってもよい。ネットワーク40の接続方法も特に限定されず、有線でも無線であってもよい。
【0053】
次に、動物用遺伝子性疾患予防食品提案システム1の動作について説明する。
図9は、動物用遺伝子性疾患予防食品提案システム1の動作を示すフローチャートである。
【0054】
動物用遺伝子性疾患予防食品提案システム1が稼働(スタート)すると、まず犬の口腔内の粘膜等が採取され、遺伝子解析が行われる(S1)。その遺伝子解析の結果はネットワーク40を介して、動物用遺伝子性疾患予防食品提案サーバ20に送信される(S2)。この際に、その動物に関する情報(種類、品種、年齢、体重等および飼い主の氏名や住所等)の情報も同時に動物用遺伝子性疾患予防食品提案サーバ20に送信される。
【0055】
動物用遺伝子性疾患予防食品提案サーバ20は、その遺伝子解析の結果に基づいて、機能性食品材料データ211を抽出(例えば、エルクハウンド原発緑内障を発症する可能性が高いと解析された場合には、その予防または進行抑制を有する有効成分(アスタキサンチン、トコトリエノール、ルテイン)が含まれる機能性食品材料Bを抽出)し(S3)し、各食品材料の重量を算出する(S4)。算出された各食品材料およびその重量に関する情報は、疾患予防食品製造手段30に送信される(S5)。なお、この際にもその犬に関する情報(種類、品種、年齢、体重等および飼い主の氏名や住所等)の情報も同時に疾患予防食品製造手段30に送信される。
【0056】
そして、疾患予防食品製造手段30は、動物用遺伝子性疾患予防食品提案サーバ20から送信された情報に基づいて、所定の量の遺伝子性疾患予防食品を生産する(S6)。その後、疾患予防食品製造手段30は、その犬の飼い主に遺伝子性疾患予防食品を配送し(S7)、一連の動作を終了する。
【0057】
以上、説明したように、動物用遺伝子性疾患予防食品提案システム1を構成することにより、遺伝子解析の結果を活用して、動物が保有する遺伝性疾患の予防または進行抑制に有効で、かつ安心して長期的に給与できる動物用食品を容易に作製することができる。また、動物には様々な種類、品種、年齢、体重、性別等の多くのバリエーションがあるが、少数の機能性食品材料、高カロリー食品材料および低カロリー食品材料を組み合わせることで、各動物の遺伝子性疾患に応じた動物用食品(ペットフードを含む)を生産することができる。
(実施形態2)
【0058】
実施形態1では、カロリー食品材料として、高カロリー食品材料データと低カロリー食品材料データの2つを用いて動物用遺伝子性疾患予防食品提案システムを構成したが、本発明はこれに限定されない。
【0059】
カロリー食品材料として、単位重量当たりのカロリーがそれぞれ異なる、3つ以上のカロリー食品材料データを用いて動物用遺伝子性疾患予防食品提案システムを構成してもよい。このような動物用遺伝子性疾患予防食品提案システムは、より多くのカロリー食品材料データを用いることができるので、対象動物の状態に、より適合する動物用遺伝子性疾患予防食品を提案することができる。
(実施形態3)
【0060】
実施形態1では、遺伝子解析の結果、1つの遺伝性疾患を保有することが判明した場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、遺伝子解析の結果、複数の遺伝性疾患を保有することが判明した場合であっても、本発明を適用することができる。
【0061】
この場合には、機能性食品材料選択手段は、それらの遺伝性疾患の予防または進行抑制を有する機能成分を含む複数の機能性食品材料データを選択することになる。そして、機能性食品材料量算出手段は、抽出した複数の機能性食品材料データを用いて、各機能性食品材料の重量を算出することになるが、その方法は特に限定されない。例えば、
図10の概念図に示すように、機能性食品材料量算出手段は、各機能性食品材料(A~E)の重量が均等になるように、各機能性食品材料の重量を算出するようにしてもよいし、所定の割合になるように各機能性食品材料の重量を算出するようにしてもよい。
(他の実施形態)
【0062】
上述した実施形態では、遺伝子解析手段と、動物用遺伝子性疾患予防食品提案サーバと、疾患予防食品製造手段とがネットワークを介して接続されていたが、本発明はこれに限定されない。動物用遺伝子性疾患予防食品提案システムの一例としては、遺伝子解析手段と、動物用遺伝子性疾患予防食品提案サーバと、疾患予防食品製造手段とがネットワークを介して接続されておらず、それぞれ独立して存在していてもよい。なお、このように動物用遺伝子性疾患予防食品提案システムを構成した場合には、電話、ファクシミリや書面等の手段により、遺伝子解析の結果や遺伝子性疾患予防食品に関する情報(その動物に関する情報(種類、年齢、体重等および飼い主の氏名や住所等)の情報を含む)を、動物用遺伝子性疾患予防食品提案サーバや疾患予防食品製造手段に伝える必要があるのは言うまでもない。
【0063】
また、上述した実施形態では、高カロリー食品材料および低カロリー食品材料は、それぞれ1種類しかなかったが、本発明はこれに限定されない。計算量が増えることになるが、複数の高カロリー食品材料および複数の低カロリー食品材料を用いて、動物用遺伝子性疾患予防食品を提案するようにしてもよい。このように構成することにより、よりカロリー的に柔軟な(カロリーからの観点から見ても適切な)動物用遺伝子性疾患予防食品を提案することができる。
【0064】
さらに、上述した実施形態では、動物の種類、年齢および体重を用いて動物用遺伝子性疾患予防食品を提案するように動物用遺伝子性疾患予防食品提案システムを構成したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、動物の種類、年齢および体重以外に、その動物の品種(犬であればシェパードや柴犬等)の情報を用いて動物用遺伝子性疾患予防食品を提案するように動物用遺伝子性疾患予防食品提案システムを構成してもよい。
【0065】
このような動物用遺伝子性疾患予防食品提案システムは、より適切な動物用遺伝子性疾患予防食品を提案することができる。
【0066】
なお、上述した実施形態では、遺伝子解析とは別に、動物の種類を入力するようにしたが、本発明はこれに限定されない。遺伝子解析によって得られた結果から動物の種類を設定してもよいのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0067】
1 動物用遺伝子性疾患予防食品提案システム
10 遺伝子解析手段
20 動物用遺伝子性疾患予防食品提案サーバ
21 食料材料データベース
25 機能性食品材料選択手段
26 食品材料量算出手段
30 疾患予防食品製造手段
40 ネットワーク
210 疾患データ
211 機能性食品材料データ
212 高カロリー食品材料データ
213 低カロリー食品材料データ