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特許7084676電動輸送機器ハイブリッドバッテリシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】電動輸送機器ハイブリッドバッテリシステム
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/249 20210101AFI20220608BHJP
   B64C 29/00 20060101ALI20220608BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
H01M50/249
B64C29/00 A
B64D27/24
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019564919
(86)(22)【出願日】2017-05-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 US2017034950
(87)【国際公開番号】W WO2018217218
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2020-01-09
(31)【優先権主張番号】15/607,250
(32)【優先日】2017-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519225026
【氏名又は名称】キティー・ホーク・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】KITTY HAWK CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バンダー・リンド・デーモン
(72)【発明者】
【氏名】ハンセル・ジョージ・ジェームズ
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0012445(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106170902(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0197700(US,A1)
【文献】特開2008-260346(JP,A)
【文献】特開2004-111242(JP,A)
【文献】特開2006-121874(JP,A)
【文献】特開2015-050041(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0051690(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0221683(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0072812(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0380315(US,A1)
【文献】特開平11-332023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/249
B64C 29/00
B64D 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動輸送機器であって、
複数のモータであって、各前記モータがそのモータによって駆動されるロータに結合され、各前記モータは、そのモータによって駆動されるロータに結合された筐体に搭載された、複数のモータと、
前記モータに結合されたハイブリッドバッテリシステムであって、
第1のエネルギ密度、第1の電力密度、および、第1のバッテリパック抵抗を有する第1のバッテリであって、前記複数のモータのそれぞれに接続され、前記電動輸送機器の中央の胴体に搭載された、第1のバッテリと、
対応する前記モータに前記第1のバッテリと並列してそれぞれが接続された複数の第2のバッテリであって、それぞれ、対応する前記モータとともに、そのモータによって駆動されるロータに結合された筐体に収納され、それぞれが前記第1のエネルギ密度より低い第2のエネルギ密度と、前記第1の電力密度より大きい第2の電力密度と、前記第1のバッテリパック抵抗よりも小さい第2のバッテリパック抵抗とを有する複数の第2のバッテリと、を備えるハイブリッドバッテリシステムと、を備え、
前記第1のバッテリおよび各前記第2のバッテリの両方から同時に電力が引き出される間に、前記第1のバッテリパック抵抗と前記第2のバッテリパック抵抗との差に少なくとも部分的に起因して、高電力モードにおいて、前記第1のバッテリから前記第2のバッテリに負荷が受動的に切り替えられることによって、前記モータには、電力が、低電力モードで前記第1のバッテリから不均一に供給され、前記高電力モードで前記第2のバッテリから不均一に供給され
前記電動輸送機器は航空機であり、
前記低電力モードは、巡航または定常状態飛行において用いられ、前記高電力モードは、離陸または着陸において用いられる、
電動輸送機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電動輸送機器であって、
前記第1のバッテリおよび前記第2のバッテリは、共有バスに対して切り替えられる、電動輸送機器。
【請求項3】
請求項1に記載の電動輸送機器であって、
前記第1のバッテリは、高負荷下でより大きい電流が前記第2のバッテリから引き出されるように、負荷下で前記第2のバッテリより大きく電圧が降下する、電動輸送機器。
【請求項4】
請求項1に記載の電動輸送機器であって、
前記第1のバッテリは、前記第2のバッテリより多いバッテリセル数を有する、電動輸送機器。
【請求項5】
請求項1に記載の電動輸送機器であって、
前記第1のバッテリは、円筒型バッテリを含む、電動輸送機器。
【請求項6】
請求項1に記載の電動輸送機器であって、
前記第2のバッテリは、パウチ型バッテリを含む、電動輸送機器。
【請求項7】
請求項1に記載の電動輸送機器であって、
前記電動輸送機器は、垂直離着陸航空機を含む、電動輸送機器。
【請求項8】
請求項に記載の電動輸送機器であって、
前記第2のバッテリ、および、前記第2のバッテリと並列する1つ以上の高電力密度の追加バッテリは、前記第1のバッテリなしで前記航空機を垂直に着陸させるのに十分な電力を提供する、電動輸送機器。
【請求項9】
請求項に記載の電動輸送機器であって、
前記第2のバッテリおよび1つ以上の高電力密度の追加バッテリは、各々、各バッテリ付近に設置されている単一のモータにそれぞれ個別に給電することができる、電動輸送機器。
【請求項10】
電動輸送機器に給電する方法であって、
前記電動輸送機器は、
複数のモータであって、各前記モータがそのモータによって駆動されるロータに結合され、各前記モータは、そのモータによって駆動されるロータに関連付けられた筐体に搭載された、複数のモータと、
前記モータに結合されたハイブリッドバッテリシステムであって、
第1のエネルギ密度、第1の電力密度、および、第1のバッテリパック抵抗を有する第1のバッテリであって、前記複数のモータのそれぞれに接続され、前記電動輸送機器の中央の胴体に搭載された、第1のバッテリと、
対応する前記モータに前記第1のバッテリと並列してそれぞれが接続された複数の第2のバッテリであって、それぞれ、対応する前記モータとともに、そのモータによって駆動されるロータに関連付けられた筐体に収納され、それぞれが前記第1のエネルギ密度より低い第2のエネルギ密度と、前記第1の電力密度より大きい第2の電力密度と、前記第1のバッテリパック抵抗よりも小さい第2のバッテリパック抵抗とを有する複数の第2のバッテリと、を備えるハイブリッドバッテリシステムと、を備え、
前記モータに、電力を低電力モードで前記第1のバッテリから不均一に供給することと、
前記モータに、電力を高電力モードで前記第2のバッテリから不均一に供給することと、を含み、
前記第1のバッテリおよび各前記第2のバッテリの両方から同時に電力を引き出す間に、前記第1のバッテリパック抵抗と前記第2のバッテリパック抵抗との差に少なくとも部分的に起因して、前記高電力モードにおいて、前記第1のバッテリから前記第2のバッテリに負荷が受動的に切り替えられ
前記電動輸送機器は航空機であり、
前記低電力モードは、巡航または定常状態飛行において用いられ、前記高電力モードは、離陸または着陸において用いられる、
方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
垂直離着陸(VTOL)機では、航空機を短距離で離着陸させるために、飛行の開始時および終了時に多くの電力が印加される。電動VTOL機では、バッテリまたはバッテリシステムは、飛行全体を通して航空機を維持するだけでなく、離着陸時に急増する電力を供給しなければならない。航空機への電力供給に対する費用効率が高く、重量効率の高い解決策を提供するために、高エネルギ密度バッテリが用いられてよい。高エネルギ密度バッテリは、バッテリへの損傷を生じることなしに垂直離陸または垂直着陸に必要な電力を供給できない可能性がある。飛行の終盤頃に、通常の高エネルギ密度バッテリは、垂直着陸にとっては低すぎる電圧を出力する可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0002】
本発明の様々な実施形態は、以下の発明を実施するための形態および付随の図面において開示される。
【0003】
図1】ハイブリッドバッテリシステムの一実施形態を表す図。
【0004】
図2】ハイブリッドバッテリシステムを用いる航空機の一実施形態を表す図。
【0005】
図3】飛行中の航空機の電流要件の一実施形態を表す図。
【0006】
図4】ハイブリッドバッテリプロセスの一実施形態を表すフロー図。
【0007】
図5】スイッチを備えるハイブリッドバッテリシステムの一実施形態を表す図。
【0008】
図6】ハイブリッドバッテリシステムにおいてバッテリを切り替えるプロセスの一実施形態を表すフロー図。
【0009】
図7A】円筒型バッテリの一実施形態を表す図。
【0010】
図7B】巻き解かれた形態の円筒型バッテリの一実施形態を表す図。
【0011】
図7C】パウチ型バッテリの一実施形態を表す図。
【0012】
図8】円筒型バッテリおよびパウチ型バッテリの電圧曲線の一実施形態を表す図。
【0013】
図9】変動セル数下における円筒型バッテリおよびパウチ型バッテリの電圧曲線の一実施形態を表す図。
【0014】
図10】配線抵抗を有するハイブリッドバッテリシステムの一実施形態を表す図。
【0015】
図11】バッテリパックの抵抗を有するハイブリッドバッテリシステムの一実施形態を表す図。
【0016】
図12】ハイブリッドバッテリシステムにおいてバッテリ間の負荷をシフトするプロセスの一実施形態を表すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、プロセス、装置、システム、組成物、コンピュータ可読記憶媒体で具現化されるコンピュータプログラム製品、ならびに/または、プロセッサ(結合されたメモリに格納された命令、および/もしくは、そのメモリによって提供された命令を実行するように構成されたプロセッサなど)を含む、多くの方法によって実施されうる。本明細書では、これらの実施形態、または、本発明が取りうる他の形態は、技術とみなされてよい。一般に、開示のプロセス工程の順序は、本発明の範囲内で変更されてよい。特に記載されない限り、タスクを実行するように構成されると記載されたプロセッサまたはメモリなどの構成部品は、所定時間でタスクを実行するように一時的に構成されている一般構成部品、または、タスクを実行するように作られている特定構成部品として実装されてよい。本明細書では、「プロセッサ」との用語は、コンピュータプログラム命令などのデータを処理するように構成された1つ以上のデバイス、回路、および/または、処理コアを意味する。
【0018】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細な説明は、本発明の原理を表す付随の図と共に、以下に記載される。本発明は、そのような実施形態と関連して説明されるが、いずれの実施形態にも限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定され、本発明は、多くの変更、修正、および同等物を含む。本発明の十分な理解を提供するために、多くの特定の詳細が以下の説明に記載される。これらの詳細は、例示の目的で提供され、本発明は、これらの特定の詳細の一部または全てなしに、特許請求の範囲に従って実施されてよい。明確性のために、本発明に関する技術分野において周知の技術内容は、本発明を不必要に曖昧にしないように詳細には説明されていない。
【0019】
ハイブリッドバッテリを備える電動輸送機器が開示されている。この輸送機器は、モータと、モータに結合されたハイブリッドバッテリシステムとを備える。ハイブリッドバッテリシステムは、第1のエネルギ密度および第1の電力密度を有する第1のバッテリと、第1のバッテリと並列する第2のバッテリとを備える。第2のバッテリは、第1のエネルギ密度より低い第2のエネルギ密度と、第1の電力密度より高い第2の電力密度を有する。この輸送機器は、電力を第1のモードで第1のバッテリから不均一に引き出し、電力を第2のモードで第2のバッテリから不均一に引き出すように構成されている。
【0020】
ハイブリッドバッテリシステムでは、2種類の異なるバッテリが組み合わせてまたは別々に電気航空機に給電するために用いられる。定常状態飛行中には、高エネルギ密度バッテリが用いられてよい。高エネルギ密度バッテリは、航空機の飛行を維持するのに必要な少量の電力を効率よく提供できる。飛行の終盤頃に、高エネルギ密度バッテリは、消耗して、垂直着陸または電力集約型着陸を維持するには低すぎる電圧を出力する可能性がある。着陸時、または着陸間際に、航空機の主電源は、第2の種類のバッテリに変わる。第2の種類のバッテリは、高放電率を有して大電流を維持できる電力密度バッテリを含んでよい。
【0021】
一般的な費用効果が高い高エネルギ密度バッテリは、低放電率を有しうる。それらは、長時間、低電流を維持できるが、損傷を起こすことなく高電流を維持できない。本出願の目的では、エネルギ密度バッテリ、高エネルギ密度バッテリ、および低放電率バッテリは、高エネルギ密度の低電力密度バッテリを指すように同じ意味で用いられる。一般的な費用効果が高い電力密度バッテリは、低エネルギ密度を有しうる。電力密度バッテリおよび高放電率バッテリは、(例えば、エネルギ密度バッテリに関して)低エネルギ密度の高電力密度バッテリを意味する。いくつかの実施形態では、ハイブリッドバッテリシステムにおいて用いられるエネルギ密度バッテリまたは電力密度バッテリは、充電式である。
【0022】
図1は、ハイブリッドバッテリシステムの一実施形態を表す図である。いくつかの実施形態では、ハイブリッドバッテリシステムは、航空機の中央に設置されているエネルギ密度バッテリと、航空機のモータ付近に設置されている1つ以上の電力密度バッテリとを備える。図の例では、中央バッテリ116、機外バッテリ104、および機外バッテリ112は、結線されている。これらのバッテリは、プロペラ100およびプロペラ108にそれぞれ配線されているモータ102およびモータ110に給電してよい。機外バッテリ104は、プロペラ100が取り付けられているポッド106内でモータ102と並んで位置する。機外バッテリ112は、プロペラ108が取り付けられているポッド114内でモータ110と並んで位置する。図のように、中央バッテリ116は、ポッドの外側にモータから離れて位置する。
【0023】
図2は、ハイブリッドバッテリシステムを用いる航空機の一実施形態を表す図である。図のように、中央バッテリ217は、航空機216の胴体に設置されている。前翼208は、ポッド200、ポッド202、ポッド204、およびポッド206から延びるプロペラを備える。機外バッテリ208、機外バッテリ210、機外バッテリ212、および機外バッテリ214は、ポッド200、ポッド202、ポッド204、およびポッド206にそれぞれ格納されている。後翼234も4つのプロペラを備えている。ポッド216、ポッド220、ポッド222、およびポッド224の各々は、プロペラ、モータ、および機外バッテリ(それぞれ、バッテリ226、バッテリ228、バッテリ230、およびバッテリ232)を備える。図のように、中央バッテリおよび機外バッテリは、結線されている。いくつかの実施形態では、バッテリは、共有バスに接続されている。
【0024】
中央バッテリ217は、エネルギ密度バッテリを備えるが、機外バッテリは、電力密度バッテリを備える。機外バッテリは、中央バッテリなしで航空機を着陸させるのに十分な電力を提供できる。個々の機外バッテリは、着陸を通してその対応するモータを維持するのに十分な電力を供給でき、各ポッドは、独立して動作できる。機外バッテリの分散された位置決めは、航空機の着陸能力に影響する1つの外傷の可能性を軽減してよい。いくつかの実施形態では、航空機は、過剰動作し(例えば、航空機は、所有するより少ないロータで制御飛行を維持できる)、バッテリの分散は、過剰動作の構造をうまく利用する。
【0025】
全てのバッテリを分散させるのとは対照的に、中央バッテリを保持することで、ハイブリッドバッテリシステムは、重量制限内にとどまることができる。機外バッテリは、中央バッテリが補充される必要があるときは、発着陸の間に電力の上昇を提供することによって、ある種の余剰を提供してよい。
【0026】
様々な実施形態では、電力密度バッテリおよびエネルギ密度バッテリは、航空機の中央に設置される、電力密度バッテリおよびエネルギ密度バッテリは、航空機の機外に位置する、電力密度バッテリおよびエネルギ密度バッテリは、航空機の同じ位置に設置される、電力密度バッテリおよびエネルギ密度バッテリは、航空機の別の位置に設置される、または任意の適した構成で設置される。
【0027】
いくつかの実施形態では、ハイブリッドバッテリシステムは、1つ以上の舵面(方向舵、補助翼、昇降舵など)と、前方推進力源(プロペラやジェットエンジンなど)と、給電源(ロータやリフトファンなど)と、ノズル、ダイバータ、エンジンもしくはファン推進力が方向づけられうる物理的構造物(羽根など)、および/もしくは、推進力発生装置の回転を用いて方向づけられる、あるいは制御される、または集中さることが可能な力と、を含みうる航空機の飛行管制アセットに給電するのに用いられる。
【0028】
図3は、飛行中の航空機の電流要件の一実施形態を表す図である。図のグラフは、飛行時間に対する航空機に必要な電流を表している。段階300の離陸時に、必要な電力は、ピークレベルにある。必要な電力は、下がり、着陸段階304の間に再びピークが訪れるまで飛行中は低い。図のように、航空機は、飛行の大半は巡航状態にある。
【0029】
図4は、ハイブリッドバッテリプロセスの一実施形態を表すフロー図である。400では、高電力レベルが必要であるかどうかが決定される。高電力レベルが必要な場合は、402において、電力密度バッテリが負荷の大半を負う。例えば、電力密度バッテリは、共有バスに対してエネルギ密度バッテリより高い電流を供給する。エネルギ密度バッテリと異なり、電力密度バッテリは、損害を被ることなく高電流を出力できる。高電力レベルが必要でない場合は、404において、エネルギ密度バッテリが負荷の大半を負う。高電力レベルが必要でない場合にエネルギ密度バッテリを用いることは、効率的または費用効果が高いだろう。402または404に続いて、406では、飛行が完了したかどうか(例えば、航空機が着陸したかどうか)が決定される。飛行が完了していない場合は、その後のプロセスの反復が繰り返される。
【0030】
様々な実施形態では、主負荷は、様々な方法を用いて2種類のバッテリの間で移行される。バッテリの種類間での負荷の移行は、電気スイッチ、バッテリセル構造、バッテリセル量、システム内のバッテリの位置決め、またはバッテリセルケミストリを用いる、または操作することによって実現されてよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、高電力レベルが必要で、かつエネルギ密度バッテリが必要な電力を供給することができない場合にのみ、電力密度バッテリは負荷の大半を負う。いくつかの実施形態では、高電力レベルが必要で、かつ両方の種類のバッテリが完全に充電されているときは、電力密度バッテリおよびエネルギ密度バッテリは、離陸時に負荷を共有する。後に着陸など飛行中にバッテリが消耗し、低い充電率に達すると、エネルギ密度バッテリは、高負荷下で電圧降下に見舞われ、高電力レベルが必要なときに負荷の大半を電力密度バッテリに負わせる。
【0032】
図5は、スイッチを備えたハイブリッドバッテリシステムの一実施形態を表す図である。エネルギ密度バッテリ500、電力密度バッテリ502、およびモータ504は、並列している。いくつかの実施形態では、複数の電力密度バッテリおよび複数のモータがエネルギ密度バッテリと並列している。エネルギ密度バッテリ500および電力密度バッテリ502は、並列であるため、定常状態で同じ電圧にあってよい。これらのバッテリは、これらのインピーダンスに対する電流を供給してよい。モータ504または任意の適した負荷は、供給電力によって給電される。これらのバッテリは、共有バスに配線され、モータおよび追加モータまたはアクチュエータは、共有バスから電流を引き出す。
【0033】
電流は、配線抵抗のため、局所機外バッテリからそれぞれの局所モータに流れる傾向があってよい。いくつかの実施形態では、モータのスロットルを開くことで、モータは全てのバッテリから電流を引き出すが、スロットルを絞ることで、それぞれの機外バッテリは一部の電流をバスに乗せる。図のように、各バッテリは、スイッチを有する。エネルギ密度バッテリおよび電力密度バッテリは、どのバッテリが用いられる必要があるか、または用いられるのが望ましいかに応じて、回路に対して切り替えられてよい。
【0034】
図6は、ハイブリッドバッテリシステムにおいてバッテリを切り替えるプロセスの一実施形態を表すフロー図である。いくつかの実施形態では、離着陸中は、エネルギ密度バッテリはスイッチアウトされ、電力密度バッテリはスイッチインされるが、定常状態飛行(例えば、巡航状態)中は、エネルギ密度バッテリがスイッチインされ、電力密度バッテリがスイッチアウトされる。スイッチングは、離着陸時に電力密度バッテリが航空機に給電すること、および、定常状態飛行時にエネルギ密度バッテリが航空機に給電することを確実にするように行われてよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、より少数のスイッチが実装され、2種類のバッテリが飛行の特定期間中に同時に動作する。いくつかの実施形態では、スイッチングは、高負荷下におけるエネルギ密度バッテリの電圧降下のため、2つのバッテリ間の負荷を切り替えるために必要とされない。スイッチングは、バッテリを損傷から保護するための予防対策として実施されてよい。
【0036】
600では、エネルギ密度バッテリおよび電力密度バッテリが充電される。プロセスのこの時点における航空機は、着地しており、外部電源に取り付けられてよい。602では、電力密度バッテリが完全に充電されたかどうかが決定される。電力密度バッテリが完全に充電された場合は、604において、電力密度バッテリは、オフラインにされる。電力密度バッテリは、エネルギ密度バッテリより低いエネルギ密度を有してよいため、電力密度バッテリは、より短時間で完全に充電される。電力密度バッテリは、損害を引き起こしうる過充電を防ぐために除去されてよい。
【0037】
電力密度バッテリがオフラインにされた、または完全に充電された場合は、606において、航空機が離陸したかどうかが決定される。航空機が離陸していない場合は、プロセスは、602に戻る。航空機が離陸している場合は、608において、エネルギ密度バッテリおよび電力密度バッテリは、オンラインにされる。この例では、両方のバッテリは、同時に用いられる。負荷の大半は、エネルギ密度バッテリに負われてよい。離陸に続いて、航空機は巡航状態に入ってよい。巡航中は、エネルギ密度バッテリが負荷の大半を負ってよい。エネルギ密度バッテリは、十分な充電状態(例えば、100~50パーセント充電された状態)にある間は負荷の大半を負ってよい。610では、航空機が着陸しているかどうかが決定される。航空機が着陸していると決定されたときは、612において、エネルギ密度バッテリは、オフラインにされる。エネルギ密度バッテリは、損害を被るのを防ぐためにオフラインにされてよく、負荷が電力密度バッテリに負われていることを確実にしてよい。エネルギ密度バッテリが低充電状態にあり、(VTOL機の着陸中に予想される)高電力が必要な場合は、エネルギ密度バッテリは、必要な電力を提供し損ない、電力密度バッテリの存在を必要としてよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、2種類のバッテリの特性によりそれらの間で負荷が受動的に切り替えられるため、スイッチングは必要ない。エネルギ密度バッテリは、高負荷下で電力密度バッテリより大きな電圧降下を経て、電力密度バッテリが負荷の大半を負うようにしてよい。
【0039】
図7Aは、円筒型バッテリの一実施形態を表す図である。円筒型バッテリは、ハイブリッドバッテリシステムにおいて、エネルギ密度バッテリまたは中央バッテリとして用いられてよい。円筒型バッテリの一般的な例は、18650セルである。円筒型バッテリは、極めて高いエネルギ含量を有する。しかし、円筒型バッテリでは、高放電率または高電力レベルを実現するのは難しい。円筒型バッテリは、安く製造および入手できる傾向がある。
【0040】
図7Bは、巻き解かれた形態の円筒型バッテリの一実施形態を表す図である。図の例では、バッテリ704は、間に電解物を有するカソード層とアノード層とを備える。電流は、タブ702を通って流れる。
【0041】
図7Cは、パウチ型バッテリの一実施形態を表す図である。パウチ型バッテリは、ハイブリッドバッテリシステムにおいて電力密度バッテリとして用いられてよい。図のパウチ型バッテリ710は、比較的扁平形状である。パウチ型バッテリは、高放電率を有するが、円筒型バッテリと比べてエネルギの貯蔵において効率性が劣る。飛行の大半は、パウチ型セルが必要な電力を提供すると同時に、安価で容易に交換可能な18650バッテリを用いて給電されてよい。
【0042】
図8は、円筒型(エネルギ密度)バッテリおよびパウチ型(電力密度)バッテリの電圧曲線の一実施形態を表す図である。このグラフは、2つのバッテリのバッテリ残量に対する電圧を表示する。電圧は、共有バスの電圧、および、並列するバッテリの電圧を意味する。バッテリの形状が異なるため、バッテリの電圧曲線は異なる。図の電圧曲線は、1つのバッテリだけが存在する場合のバッテリの性能を例示している(例えば、曲線800は、エネルギ密度バッテリが単体でどう機能するかを示している)。
【0043】
類似のケミストリを想定すると、円筒型バッテリおよびパウチ型バッテリは、低負荷(例えば、1Ampの供給)下の充電残量が多い状態では類似の電圧曲線または同一の電圧曲線を有してよい。しかし、高負荷(例えば、10Ampの供給)下では、エネルギ密度バッテリの電圧は、電力密度バッテリの電圧より大きく垂下する。エネルギ密度バッテリの電圧降下により、電力密度バッテリは、高負荷下においてエネルギ密度バッテリより大きい負荷を負ってよい、または、高い電流を供給してよい。
【0044】
図のように、電圧曲線800は、低負荷下におけるエネルギ密度バッテリの電圧曲線である。電圧曲線806は、高負荷下におけるエネルギ密度バッテリを示す。高負荷下では、電圧は大きく垂下する。低負荷下における電力密度バッテリを示す電圧曲線802も、高負荷下では電圧曲線804(高負荷下における電力密度バッテリ)で示されるように垂下する。しかし、バッテリの構造によりそれほど垂下しない。
【0045】
図9は、変動セル数を伴う円筒型(エネルギ密度)バッテリおよびパウチ型(電力密度)バッテリの電圧曲線の一実施形態を表す図である。着陸前に電力密度バッテリが使い切られるのを防ぐために、ハイブリッドバッテリシステムで用いられるエネルギ密度バッテリは、同システムで用いられる電力密度バッテリより多いバッテリセル数を有してよい。図の例では、低負荷下におけるエネルギ密度バッテリの電圧曲線(曲線900)は、低負荷下における電力密度バッテリの電圧曲線(曲線902)より上に位置している。エネルギ密度バッテリパックは、電力密度バッテリパックより多くのバッテリセルを備え、両方のバッテリパックが100%充電されているときに、エネルギ密度バッテリの電圧曲線がより高い電圧にあるようにする。定常状態では、エネルギ密度バッテリパックおよび電力密度バッテリパックの電圧は等しい。定常状態(例えば、低負荷)下では、電圧曲線(例えば、900および902)間のオフセットのため、エネルギ密度バッテリは、電力密度バッテリより大きい電力を提供(例えば、より高い電流を供給)してよい。エネルギ密度バッテリは、電力密度バッテリパックより速く放電し、より多くの電流を供給するだろう。
【0046】
電力密度バッテリパックは、パックの電圧が等しいときは、セル数が不均一なため、エネルギ密度バッテリパックと比べて放電のより低い段階にある。高放電率がバッテリパックに適用されるとき(例えば、高負荷)は、両方の電圧曲線は、曲線904(高負荷下におけるエネルギ密度バッテリ)および曲線906(高負荷下における電力密度バッテリ)で示されるように垂下する。パウチ型バッテリは、放電のより低い段階にあり、垂下が少ない。曲線904および曲線906は、図のように交差して、電力密度バッテリ曲線がエネルギ密度バッテリ曲線の上になる。電力密度バッテリは、エネルギ密度バッテリが低充電残量に達しているときは、高負荷下で電力の大半を提供するだろう。
【0047】
図10は、配線抵抗を有するハイブリッドバッテリシステムの一実施形態を表す図である。航空機には、2種類のバッテリが配線抵抗を利用する位置に設置されてよい。図の例では、エネルギ密度バッテリ1000、電力密度バッテリ1004、およびモータ1006が並列されている。配線抵抗1002は、Rwとして表されている。エネルギ密度バッテリ1000は、間に多くの長さを有して電力密度バッテリ1004から離れて位置してよい。配線またはワイヤハーネスは、電流がエネルギ密度バッテリから引き出されるときは、高負荷下で電圧降下(例えば、最大2%)を引き起こしうる。電圧降下により、高電力が必要なときは、より多くの電力が自然に機外バッテリ/電力密度バッテリから引き出されうる。低負荷下では、電圧降下はごくわずかで、エネルギ密度バッテリは、不均一な量の負荷を引き受けることができる。
【0048】
図11は、バッテリパック抵抗を有するハイブリッドバッテリシステムの一実施形態を表す図である。エネルギ密度バッテリは、電力密度バッテリと比べてパックにより大きな抵抗を有するように設計されて、高負荷下においてエネルギ密度バッテリが電力密度バッテリより少ない電力を供給するようにしてよい。図の例では、エネルギ密度バッテリ1102、電力密度バッテリ1106、およびモータ1108は、並列している。バッテリパック抵抗は、エネルギ密度バッテリについてはRp1で、電力密度バッテリについてはRp2で表されている。Rp1は、Rp2より大きくてよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、2種類のバッテリは、異なるセルケミストリを含む。所望のバッテリパックを製造するために、電解質の種類、アノードの種類、カソードの種類、電解物の厚さ、または成分濃度は変更されてよい。セルケミストリは、バッテリパックの電圧曲線が図11のように現れるように調節されてよい。
【0050】
図12は、ハイブリッドバッテリシステムにおいてバッテリ間の負荷を切り替えるプロセスの一実施形態を表すフロー図である。負荷は、高放電率下における2種類のバッテリパックの特性によって切り替えられてよい。2種類のバッテリの特性は、セルの形状、セルケミストリ、セル数、位置、設計された抵抗、または他の適した要素に基づいて、入念に選択または設計されてよい。1200では、航空機が定常状態であるかどうかが決定される。航空機が定常状態にある場合は、1202において、エネルギ密度バッテリが航空機に給電する。1202に続いて、または、航空機が定常状態にない場合は、1204において、航空機が飛行の高電力段階にあるかどうかが決定される。航空機が飛行の高電力段階にある場合は、1206において、エネルギ密度バッテリの電圧は垂下し、電力密度バッテリが航空機に給電する。いくつかの実施形態では、1204における決定は、航空機が飛行の高電力段階にあるかどうか、および、エネルギ密度バッテリが低充電残量であるかどうかである。1208では、飛行が完了したかどうかが決定される。飛行が完了していない場合は、プロセスは繰り返す。
【0051】
明確な理解のために前述の実施形態がある程度詳細に説明されたが、本発明は、記載の詳細に限定されない。本発明を実施する多くの代替方法がある。開示の実施形態は、例示であり、制限するものではない。本発明は以下の適用例としても実現できる。
[適用例1]
電動輸送機器であって、
モータと、
前記モータに結合されたハイブリッドバッテリシステムであって、
第1のエネルギ密度および第1の電力密度を有する第1のバッテリと、
前記第1のバッテリと並列する第2のバッテリであって、前記第2のバッテリは、前記第1のエネルギ密度より低い第2のエネルギ密度と、前記第1の電力密度より大きい第2の電力密度とを有する第2のバッテリと、を備えるハイブリッドバッテリシステムと、を備え、
前記輸送機器は、電力を第1のモードで前記第1のバッテリから不均一に引き出し、第2のモードで前記第2のバッテリから不均一に引き出すように構成されている、電動輸送機器。
[適用例2]
適用例1に記載のシステムであって、
前記第1のバッテリおよび前記第2のバッテリは、前記バッテリが電力を提供する前記輸送機器の構成部品と並列している、システム。
[適用例3]
適用例1に記載のシステムであって、
前記第1のバッテリは、前記輸送機器の中央に格納されている、システム。
[適用例4]
適用例1に記載のシステムであって、
前記第2のバッテリは、電力を提供する前記輸送機器の構成部品付近またはそれに隣接して格納されている、システム。
[適用例5]
適用例1に記載のシステムであって、
前記第2のバッテリは、前記輸送機器の機外に格納されている、システム。
[適用例6]
適用例1に記載のシステムであって、
前記第1のモードは、低電力モードを含む、システム。
[適用例7]
適用例1に記載のシステムであって、
前記第2のモードは、高電力モードを含む、システム。
[適用例8]
適用例1に記載のシステムであって、
前記第1のバッテリおよび前記第2のバッテリは、共有バスに対して切り替えられる、システム。
[適用例9]
適用例1に記載のシステムであって、
前記第1のバッテリは、高負荷下でより大きい電流が前記第2のバッテリから引き出されるように、負荷下で前記第2のバッテリより大きく電圧が降下する、システム。
[適用例10]
適用例1に記載のシステムであって、
前記第1のバッテリは、前記第2のバッテリより多いバッテリセル数を有する、システム。
[適用例11]
適用例1に記載のシステムであって、
前記第1のバッテリは、円筒型バッテリを含む、システム。
[適用例12]
適用例1に記載のシステムであって、
前記第2のバッテリは、パウチ型バッテリを含む、システム。
[適用例13]
適用例1に記載のシステムであって、
前記輸送機器は、航空機を含む、システム。
[適用例14]
適用例1に記載のシステムであって、
前記輸送機器は、垂直離着陸航空機を含む、システム。
[適用例15]
適用例1に記載のシステムであって、
前記第1のモードは、巡航モードまたは定常状態飛行モードを含み、前記第2のモードは、離陸または着陸を含む、システム。
[適用例16]
適用例14に記載のシステムであって、
前記第2のバッテリ、および、前記第2のバッテリと並列する1つ以上の高電力密度の追加バッテリは、前記第1のバッテリなしで前記航空機を垂直に着陸させるのに十分な電力を提供する、システム。
[適用例17]
適用例16に記載のシステムであって、
前記第2のバッテリおよび1つ以上の高電力密度の追加バッテリは、各々、各バッテリ付近に設置されている単一のモータにそれぞれ個別に給電することができる、システム。
[適用例18]
輸送機器に給電する方法であって、
電力を第1のモードで第1のバッテリから不均一に引き出すことと、
電力を第2のモードで前記第1のバッテリと並列する第2のバッテリから不均一に引き出すことと、を含み、
前記第1のバッテリは、第1のエネルギ密度および第1の電力密度を有し、前記第2のバッテリは、前記第1のエネルギ密度より低い第2のエネルギ密度と、前記第1の電力密度より大きい第2の電力密度とを有する、方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12