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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】削孔機
(51)【国際特許分類】
   E21B 7/04 20060101AFI20220608BHJP
【FI】
E21B7/04 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018002518
(22)【出願日】2018-01-11
(65)【公開番号】P2019120100
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】浜田 元
(72)【発明者】
【氏名】今泉 和俊
(72)【発明者】
【氏名】浅野 剛
(72)【発明者】
【氏名】塚本 耕治
【審査官】山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-033789(JP,U)
【文献】特開2007-247265(JP,A)
【文献】特開2017-031744(JP,A)
【文献】実開平06-012591(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔を形成する削孔手段と、
前記削孔手段を支持するとともに、当該削孔手段の削孔方向への移動を案内する案内手段と、
前記案内手段の先端に設置され、当該案内手段を削孔面に固定する固定治具と、
前記案内手段を駆動可能な状態で支持するとともに、敷地内を移動するための移動手段を備える車両本体とを有し、
前記固定治具は、
前記削孔面に押圧されて弾性変形可能なパッド、および前記パッドの背面を保持する保持部を備えたパッド部と、
前記パッド部の背後に設けられ、前記パッドが正面を向いた状態で進退移動するのをガイドするガイド部と、
前記ガイド部の背後に設けられ、シリンダチューブおよび油圧により当該シリンダチューブ内を摺動するピストンを備えて筐体部に収容され、前記ガイド部を介して前記パッドを前記削孔面に押し付ける押圧手段とを具備し、
前記ガイド部は、前記押圧手段を収容する前記筐体部に固定されたライナ、および先端部が前記保持部における前記パッドの背面中央部位置に固定されるとともに後端部が前記押圧手段の前記ピストンに取り付けられて前記シリンダチューブから出没するプランジャに固定されて当該プランジャの出没により前記ライナ内を摺動する本体部を備え、前記本体部によって前記パッドの進退移動をガイドし、
前記パッド部に備えられた保持部には、前記本体部の摺動に合わせて前記ライナの外周を摺動するスリーブが取り付けられている、
ことを特徴とする削孔機。
【請求項2】
前記パッド部、前記ガイド部、前記押圧手段および前記筐体部が相互にユニット化されて前記固定治具が構成され、
当該固定治具は、取付部材を介して前記案内手段の先端に設置されている、
ことを特徴とする請求項1記載の削孔機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、削孔機に関し、例えば、発破方式によるトンネルの掘削工事において岩盤等に爆薬を装填する発破用の孔(以下、「発破孔」という。)を削孔する削孔機に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発破方式によるトンネルの掘削工事においては、削孔機により掘削対象の岩盤の複数箇所に発破孔を削孔した後、各発破孔内に爆薬を仕掛けてこれを爆破することで岩盤を掘削している。発破孔の削孔に際しては、削孔機のガイドセルの先端を岩盤に押し当て固定した後、ガイドセル上に移動可能な状態で設置された削孔ロッドの先端の削孔ビットを回転させながら岩盤に押し当てることで発破孔を削孔している。
【0003】
この種の削孔機については、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。
【0004】
特許文献1に記載の削孔機は、削孔ユニットを前後方向に案内する部材であるガイドセルの先端を固定するための固定治具が設けられている。固定治具は、その先端である爪体部が鋼製の鉤爪式であり、球座部を介して油圧シリンダからなる爪体押圧装置と接続された構造となっている。また、伸縮支持棒により固定治具の姿勢を保持するようになっており、リニアガイドにより、爪体押圧装置の伸長時における固定治具の移動の直進性を確保している。
【0005】
そして、特許文献1に記載の削孔機によれば、固定治具が岩盤から離れないので、ガイドセル先端の拘束力を維持することができて削孔位置の精度が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-31744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の削孔機では、ガイドセル(案内手段)の先端に設けられた固定治具を岩盤等の削孔面に押し付けて固定しておいて削孔ユニット(削孔手段)で発破孔を削孔する際において、とりわけ押し付けた岩盤等が固い(硬岩)場合に、強度不足から固定治具が損傷してしまうことがあった。
【0008】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、案内手段を削孔面に固定するために先端に設けられた固定治具の強度を向上させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明の削孔機は、孔を形成する削孔手段と、前記削孔手段を支持するとともに、当該削孔手段の削孔方向への移動を案内する案内手段と、前記案内手段の先端に設置され、当該案内手段を削孔面に固定する固定治具と、前記案内手段を駆動可能な状態で支持するとともに、敷地内を移動するための移動手段を備える車両本体とを有し、前記固定治具は、前記削孔面に押圧されて弾性変形可能なパッド、および前記パッドの背面を保持する保持部を備えたパッド部と、前記パッド部の背後に設けられ、前記パッドが正面を向いた状態で進退移動するのをガイドするガイド部と、前記ガイド部の背後に設けられ、シリンダチューブおよび油圧により当該シリンダチューブ内を摺動するピストンを備えて筐体部に収容され、前記ガイド部を介して前記パッドを前記削孔面に押し付ける押圧手段とを具備し、前記ガイド部は、前記押圧手段を収容する前記筐体部に固定されたライナ、および先端部が前記保持部における前記パッドの背面中央部位置に固定されるとともに後端部が前記押圧手段の前記ピストンに取り付けられて前記シリンダチューブから出没するプランジャに固定されて当該プランジャの出没により前記ライナ内を摺動する本体部を備え、前記本体部によって前記パッドの進退移動をガイドし、前記パッド部に備えられた保持部には、前記本体部の摺動に合わせて前記ライナの外周を摺動するスリーブが取り付けられている、ことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の本発明の削孔機は、上記請求項1記載の発明において、前記パッド部、前記ガイド部、前記押圧手段および前記筐体部が相互にユニット化されて前記固定治具が構成され、当該固定治具は、取付部材を介して前記案内手段の先端に設置されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、案内手段を削孔面に固定するための固定治具として、削孔面に押圧されて弾性変形して削孔時の衝撃を緩和するパッドを有するパッド部を備えており、当該パッド部がガイド部を介して第1の押圧手段に直結されているので、固定治具の強度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施の形態に係る削孔機の側面図である。
図2図1の削孔機の平面図である。
図3】削孔時の図1の削孔機の正面図である。
図4図1の削孔機のガイドセルおよび削孔ユニットの拡大側面図である。
図5】固定治具の要部断面図である。
図6】(a)は縮んだ状態の固定治具の要部断面図、(b)は伸びた状態の固定治具の要部断面図である。
図7図1の削孔機の油圧系の概略構成図である。
図8】(a)は掘削工程中のトンネルを上方から見た断面図、(b)は図8(a)のトンネルを側面から見た断面図である。
図9】(a),(b)は発破孔形成工程中の削孔機の説明図である。
図10】発破孔形成工程における掘削機の油圧系の出力波形図である。
図11】(a),(b)は図8に続く掘削工程中のトンネルを側面から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0020】
まず、本実施の形態の削孔機の全体構成について図1図4を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態に係る削孔機の側面図、図2図1の削孔機の平面図、図3は削孔時の図1の削孔機の正面図、図4図1の削孔機のガイドセルおよび削孔ユニットの拡大側面図である。
【0021】
本実施の形態の削孔機1は、例えば、発破方式によるトンネルの掘削工事において岩盤等に爆薬を装填するための発破孔を削孔する装置であり、車両本体2と、ブーム3と、ガイドセル(案内手段)4と、削孔ユニット(削孔手段)5と、ケージ6とを備えている。特に限定されるものではないが、削孔機1としては、例えば、古河ロックドリルのJTH2RS-190EX(2ブーム、2ケージ)が使用されている。ただし、ここでは一例として、発破孔の削孔長を4mとするので、削孔機1のガイドセル4のフィード長を4040mmとした。
【0022】
この削孔機1の車両本体2は、例えば、4つの車輪(移動手段)2aを有する四輪駆動式の車両で構成されている。これにより削孔機1は作業現場(敷地内)を自由に移動することが可能になっている。また、車両本体2の前輪の前方と後輪の後方にはそれぞれ2つ(合計4つ)の昇降ジャッキ2bが設置されている。削孔機1は、図3に示すように、削孔作業に際して昇降ジャッキ2bによって車輪2aが地面から離れる位置まで持ち上げられた状態で大地Gに固定されるようになっている。ただし、車両本体2は、四輪駆動式の車両に限定されるものではなく、例えば、キャタピラ式の車両を用いてもよい。
【0023】
この車両本体2の前方部(削孔機1の前進方向部分)には、例えば、2つのブーム3が上下左右方向に移動可能な状態で機械的に接続されている。ブーム3は、ガイドセル4を支持するとともに、ガイドセル4の上下方向および左右方向の角度を変える機構部である。
【0024】
ブーム3に支持されたガイドセル4は、削孔ユニット5を前後方向に案内する部材であり、支持体4aと、先端固定治具(以下、固定治具という)4bと、セル押圧装置4cとを備えている。
【0025】
固定治具4bは、フィード圧作用時(削孔時)においてもガイドセル4の先端を岩盤等の削孔面に押し付けて固定することが可能なようにする装置であり、支持体4aの先端に装着されている。ここでは2つのガイドセル4の先端の各々に固定治具4bを装着した場合について説明したが、1つのガイドセル4の先端のみに固定治具を装着してもよい。なお、固定治具4bの構成については後ほど詳細に説明する。
【0026】
セル押圧装置4cは、フィード圧作用前にガイドセル4の先端(すなわち、固定治具4b)を岩盤等の削孔面に押し付け固定する押圧手段であり、支持体4aの下部に装着されている。セル押圧装置4cは、例えば、油圧ジャッキにより構成されており、車両本体2に設置された油圧ユニット(図1図4には図示せず)に機械的に接続されている。この油圧ユニットについては後ほど図7を用いて詳細に説明する。
【0027】
このガイドセル4には、上述したように削孔ユニット5が前後方向に移動可能な状態で支持されている。削孔ユニット5は、岩盤等に発破孔を削孔する削孔手段であり、車両本体2から離間する方向に沿って順に、ドリフタ5aと、削孔ロッド5bと、削孔ビット5cとを機械的に直列に接続した状態で備えている。
【0028】
ドリフタ5aは、油圧式の駆動手段であり、削孔ロッド5bおよび削孔ビット5cに対して回転力および打撃力を与えるとともに、ガイドセル4に沿って往復運動することが可能になっている。ドリフタ5aによる回転力は、内蔵のモータにより、打撃力は、内蔵のピストンにより与えられる。また、ドリフタ5aの前進移動によりフィード圧(削孔ビット5cを岩盤に押し付ける圧力)が与えられる。ドリフタ5aを往復運動させる油圧装置は、例えば、油圧シリンダ等からなり、ガイドセル4のセル押圧装置4cに油圧を供給する油圧ユニット(図1図4には図示せず)に機械的に接続されている。特に限定されるものではないが、ドリフタ5aとしては、例えば、HD190が使用されている。また、ドリフタ5aのフィード圧は、例えば、CI級の岩盤における最大レベルと考えられる10~12MPaを基本とされている。
【0029】
削孔ロッド5bは、ドリフタ5aからの回転力と押圧力とを削孔ビット5cに伝達する部材であり、例えば、現場で一般に多用されている32六角ロッドが使用されている。削孔ビット5cは、回転した状態で岩盤等に押し付けられ岩盤等を掘削する部材であり、例えば、現場で一般に多用されているφ45のボタンビットが使用されている。
【0030】
次に、上記した固定治具4bの構成例について図5および図6を参照して説明する。ここで、図5は固定治具の要部断面図、図6は固定治具の伸長動作を示す断面図である。
【0031】
固定治具4bは、相互にユニット化されたパッド部10、ガイド部11、パッド押圧装置(押圧手段)12および筐体部13を備えている。
【0032】
パッド部10は、パッド10aと、このパッド10aを保持する保持部10bとを備えている。
【0033】
パッド10aは、削孔時に岩盤の掘削面に当接されて岩盤に対して押圧力(押し付け荷重)を伝える部材である。パッド10aには、削孔機のガイドセルの先端に取り付けられている一般的なゴム製のフードパッドが用いられており、削孔面に押圧されて弾性変形が可能になっている。なお、本実施の形態では、フードパッドの外周を面取りして先端の面積を小さくし、岩盤の削孔面に接触した際の偏荷重の影響を軽減している。なお、パッド10aは、弾性変形可能になっている限り、様々な部材を適用することができ、本実施の形態に示すものに限定されない。
【0034】
保持部10bはパッド10aの後部外周を囲むようにして当該パッド10aを保持する金属製の部材であり、背面には略円筒状のスリーブ10cが取り付けられている。なお、スリーブ10cについては後ほど説明する。
【0035】
ガイド部11は、パッド部10の背後に設けられており、パッド10aが正面を向いた状態で進退移動するのをガイドする部材であり、筐体部13に固定されたライナ11aと、このライナ11a内を摺動する本体部11bとを備えている。本体部11bは、先端部が保持部10bに固定され、後端部がパッド押圧装置12のプランジャ12a(後述する)に固定されており、プランジャ12aの出没によりライナ11a内を摺動してパッド部10を進退移動させる。
【0036】
パッド押圧装置12は、フィード圧作用時(削孔時)においても固定治具4bが岩盤を押し付ける荷重を常に一定になるようにするための押圧手段であり、筐体部13内に収容されて設けられている。パッド押圧装置12は、例えば油圧シリンダにより構成されており、油圧によりシリンダチューブ12b内を摺動するピストン(図示せず)と、ピストンに取り付けられてシリンダチューブ12bから出没する前述のプランジャ12aとを備えている。
【0037】
したがって、筐体部13内には、前述したパッド押圧装置12に加えて、当該パッド押圧装置12のシリンダチューブ12b内に対して圧油を給排するための給排ポート12cも収容されている。なお、給排ポート12cからパッド押圧装置12を駆動するためのアキュムレータAC(後述する)に至る管路は、筐体部13内および支持体4a内に配置されて外部衝撃から保護されている。
【0038】
また、図示するように、筐体部13は取付プレート(取付部材)14を介して支持体4aの先端に取り付けられている。すなわち、前述のように、パッド部10、ガイド部11、パッド押圧装置12および筐体部13が相互にユニット化されて固定治具4bを構成していることから、固定治具4bが取付プレート14を介してガイドセル4の先端に設置されている。
【0039】
そして、このように、パッド押圧装置12および給排ポート12cを筐体部13内に収容したことにより、掘削時に岩盤が落下してきた場合であっても、衝撃に弱いこれらパッド押圧装置12や給排ポート12cが筐体部13によって保護されることから、不具合の発生が未然に防止される。
【0040】
また、パッド部10、ガイド部11、パッド押圧装置12および筐体部13を相互にユニット化して固定治具4bを構成したことにより、取付プレート14を用いるだけで、固定治具4bをガイドセル4の先端に容易に設置することが可能になっている。
【0041】
パッド押圧装置12のプランジャ12aの先端部は、前述したように、ガイド部11を構成する本体部11bの後端部に固定されている。パッド押圧装置12において、最大荷重は、例えば50kN、プランジャ12aのストロークは、例えば50mmである。このパッド押圧装置12は、蓄圧手段であるアキュムレータACで作動するようになっており、上記したセル押圧装置4cやドリフタ5aのフィード圧を設定するための油圧ユニットの一部を構成している。
【0042】
そして、掘削面に押圧されて図6(a)に示すように後退位置にあるパッド部10は、掘削面に対する押圧力が弱まってシリンダチューブ12b内の圧力が減少すると、アキュムレータACから作動液である油が供給されてプランジャ12aを突出させるようにピストンが摺動する。これにより、図6(b)に示すように、ガイド部11の本体部11bがライナ11a内を摺動するとともに、保持部10bの背面に取り付けられたスリーブ10cがライナ11aの外周を摺動して、パッド部10が前進する。
【0043】
なお、スリーブ10cは必ずしも設けられていなくてもよい。但し、ライナ11aと本体部11bとによってもパッド部10の進退機構の構造的な強化を図ることができるが、スリーブ10cが設けられていれば、より一層の強化を図ることができる。
【0044】
次に、本実施の形態の削孔機1を構成する油圧系について図7を参照して説明する。図7図1の削孔機の油圧系の概略構成図である。
【0045】
図7に示すように、本実施の形態の削孔機1では、油圧ユニット(圧力発生手段)Uおよび制御部Cを有している。油圧ユニットUは、ガイドセル用のセル押圧装置4c、フィード圧用のドリフタ5aを往復移動させる油圧装置5d、および固定治具4bのパッド押圧装置12を駆動する油圧ユニットである。また、制御部Cは、削孔機1の電気的な制御を行う装置である。
【0046】
ここで、油圧ユニットUは、エンジン(駆動手段)E、油圧ポンプ(油圧供給手段)P、バルブ(切換手段)Vおよびアキュムレータ(蓄圧手段)ACを備えている。
【0047】
エンジンEは、削孔機1の車輪2aを駆動する装置であり、車両本体2に設けられている。このエンジンEの駆動により油圧ポンプPが作動する構成になっている。
【0048】
油圧ポンプPは、エンジンEによって作動すると油圧タンク(図示せず)から作動油を吸い上げて圧油を生成する装置である。この油圧ポンプPは、バルブVを介してセル押圧装置4cおよび油圧装置5dに接続されるとともに、アキュムレータACおよびパッド押圧装置12に接続されている。
【0049】
バルブVは、油圧ポンプPで生成された圧油を、セル押圧装置4cまたは油圧装置5dのいずれか一方に供給する方向切換バルブである。バルブVの切換動作は制御部Cによって制御される。
【0050】
また、前述のように、アキュムレータACは、油圧ポンプPで生成された圧油の供給を受けてパッド押圧装置12を作動させる。
【0051】
このように本実施の形態においては、セル押圧装置4cおよび油圧装置5dに油圧ポンプPから圧油を供給して直接作動させるとともに、アキュムレータACに油圧ポンプPから圧油を供給して当該アキュムレータACを介してパッド押圧装置12を間接的に作動させている。これにより、単一の油圧ユニットUにより、つまり複数の油圧ユニットを設けることなく、セル押圧装置4cおよび油圧装置5dに対する適正な作動圧と、パッド押圧装置12に対する適正な作動圧(セル押圧装置4cおよび油圧装置5dとは異なる作動圧)とが得られるので、油圧回路を簡素化することができる。
【0052】
次に、発破方式によるトンネルの掘削方法の一例について図8図11を参照して説明する。図8(a)は掘削工程中のトンネルを上方から見た断面図、図8(b)は図8(a)のトンネルを側面から見た断面図、図9(a),(b)は発破孔形成工程中の削孔機の説明図、図10は発破孔形成工程における掘削機の油圧系の出力波形図、図11(a),(b)は図8に続く掘削工程中のトンネルを側面から見た断面図である。なお、図10において、符号t1は、フィード圧の作用開始(削孔開始)の時刻である。また、符号W1はガイドセル4のセル押圧装置4cの出力波形、符号W2は油圧装置5dの出力波形、符号W3はパッド押圧装置12の出力波形である。
【0053】
まず、図8に示すように、削孔機1をトンネルT内の切羽の岩盤Sの近くまで走行させた後、削孔機1の昇降ジャッキ2bを伸ばして削孔機1を固定する。続いて、削孔機1のブーム3の角度や伸びを調節することにより、ガイドセル4を所定の位置に移動する。
【0054】
次いで、図9(a)および図10の波形W1に示すように、削孔機1の油圧ユニットUからガイドセル4の下部のセル押圧装置4cに圧油を供給することによりセル押圧装置4cを伸ばしてガイドセル4の先端の固定治具4bを切羽の岩盤Sに押し当てる。すなわち、図9(a)に示すように、セル押圧装置4cからの圧力F1で、ガイドセル4の先端の固定治具4bに設けられたパッド10aを岩盤Sに押し付け、当該岩盤Sの形状に沿って弾性変形させて固定する。この際、セル押圧装置4cの圧力を、例えば20MPa(削孔機1の最大値)までに上昇させる。
【0055】
続いて、図9(b)および図10の時刻t1の波形W1,W2に示すように、発破孔の削孔のために、油圧ユニットUからのセル押圧装置4cに対する油圧回路を閉じる(バルブVによりセル押圧装置4cに対する圧油の供給を閉じる)とともに、油圧ユニットUからの油圧装置5dに対する油圧回路を開く(バルブVにより油圧装置5dに対する圧油を供給する)ことにより、削孔ビット5cを所定のフィード圧で岩盤Sに押し当てて岩盤Sに発破孔Hを削孔する。
【0056】
ここで、セル押圧装置4cに対する油圧の供給を閉じると、油圧が2MPa程度まで低下するため、ガイドセル4の先端が岩盤Sから離れて拘束力が無くなるため、削孔ビット5cが削孔位置に拘束された状態でガイドセル4が左右または上下に動いてしまう結果、削孔ビット5cを支持する削孔ロッド5bが曲がり、発破孔の削孔位置が目標位置からずれてしまう。
【0057】
このようにセル押圧装置4cによるガイドセル4の先端の拘束力が無くなったとき、本実施の形態においては、パッド部10における岩盤Sに対する押圧力が弱まってシリンダチューブ12b内の圧力が減少する。すると、図9(b)および図10の時刻t1の波形W3に示すように、アキュムレータACから固定治具4bのパッド押圧装置12に対して圧油が供給され、パッド押圧装置12の油圧が例えば20MPaまで増加してピストンが摺動してプランジャ12aが突出し、パッド部10が前進してパッド10aが切羽の岩盤Sに押し当てられる。
【0058】
すなわち、図9(b)に示すように、固定治具4bのパッド押圧装置12からの圧力F2でガイドセル4の先端の固定治具4bに設けられたパッド10aが岩盤Sに押し付けられ、当該岩盤Sの形状に沿って弾性変形して固定される。これにより、削孔時にガイドセル4の固定治具4bの位置を固定することができるので、削孔時におけるガイドセル4の変位を抑制または防止することができる。このため、発破孔の削孔位置精度を向上させることができる。
【0059】
そして、本実施の形態では、ガイドセル4を削孔面に固定するための固定治具4bとして、岩盤S(削孔面)に押圧されて弾性変形して削孔時の衝撃を緩和するパッド10aを有するパッド部10を備えており、当該パッド部10がガイド部11を介してパッド押圧装置12に直結されている。したがって、固定治具4bの強度の向上を図ることができ、押し付けた岩盤等が固い場合であっても強度不足で固定治具4bが損傷してしまうリスクが軽減される。
【0060】
なお、発破孔の削孔のために削孔ビット5cのフィード圧を増加させるとガイドセル4が後方に移動して、固定治具4bのパッド押圧装置12の押圧力が低下する場合がある。その場合もアキュムレータACから瞬時に固定治具4bのパッド押圧装置12に対して圧油が送られ、パッド押圧装置12のプランジャ12aのストロークを伸ばすことにより、ガイドセル4の先端の固定状態を維持することができる。
【0061】
さて、このようにして岩盤Sに発破孔Hを削孔した後、その発破孔H内に爆薬を仕掛けた後、図11(a)に示すように、爆薬を爆破することにより、図10(b)に示すように、トンネルTを掘削する。この際、本実施の形態によれば、発破孔の削孔位置精度を向上させることができるので、削孔位置精度の確保が難しい長孔発破であっても安定した発破を実現することができる。このため、例えば、B~CI級相当の硬い岩盤であっても効率的にトンネルTを掘削することができるので、トンネルTの掘削工期を短縮することができる。
【0062】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0063】
例えば、前記実施の形態においては、2ブーム、2ケージの削孔機を用いた場合について説明したが、ブームの数やケージの数は、これに限定されるものではなく種々変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、前記実施の形態においては、本発明に係る削孔機を、発破孔の削孔機に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく種々適用可能であり、例えば、アンカ打設用の孔を削孔する削孔機にも適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 削孔機
2 車両本体
3 ブーム
4 ガイドセル(案内手段)
4a 支持体
4b 先端固定治具(固定治具)
4c セル押圧装置
5 削孔ユニット(削孔手段)
5a ドリフタ
5b 削孔ロッド
5c 削孔ビット
6 ケージ
10 パッド部
10a パッド
10b 保持部
10c スリー
11 ガイド部
11a ライナ
11b 本体部
12 パッド押圧装置(押圧手段
12a プランジャ
12b シリンダチューブ
12c 給排ポート
13 筐体部
14 取付プレート(取付部材)
AC アキュムレータ(蓄圧手段)
C 制御部
E エンジン
G 大地
H 発破孔
P 油圧ポンプ
S 岩盤
U 油圧ユニット
V バルブ
図1
図2
図3
図4
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