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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】喉頭カメラ
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/267 20060101AFI20220608BHJP
   A61M 1/00 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
A61B1/267
A61M1/00 160
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2016022073
(22)【出願日】2016-02-08
(65)【公開番号】P2017140103
(43)【公開日】2017-08-17
【審査請求日】2019-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】518155292
【氏名又は名称】宝来メデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108604
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 義人
(72)【発明者】
【氏名】山本 正男
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-192820(JP,A)
【文献】特表2013-510699(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0179342(US,A1)
【文献】特開2007-117116(JP,A)
【文献】特開2005-205140(JP,A)
【文献】特開2015-027619(JP,A)
【文献】特表2012-506749(JP,A)
【文献】特許第6698348(JP,B2)
【文献】特開2006-326111(JP,A)
【文献】特開2015-16177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
A61M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子及び外部に露出したレンズを含むカメラに加えて照明を有する手持ち可能なスマートフォン又はタブレットである可搬機器との組合せによって喉頭カメラをなす、喉頭カメラユニットであって、
前記可搬機器に対して、所定の相対的な位置関係に位置決めをした状態で着脱自在な固定をなす固定手段を有する本体ケースと、
喉頭である被写体からの像光をその先端側で受けるものであり、喉頭の撮像時に口腔から挿入されその先端が口蓋垂の奥に至るようになっている、その基端が前記本体ケースに取付けられている棒状の棒状部材を有しており、
前記棒状部材は、口蓋の上下方向の湾曲に対応するようにして湾曲させられているとともに、喉頭からの前記像光をその先端から受け入れ、その長さ方向に沿って前記像光を伝達し、その基端から前記レンズを介して前記撮像素子に向けて射出することで、前記撮像素子に撮像を行わせる、その先端が前記棒状部材の先端に略一致する棒状の像光伝達部材と、前記照明からの前記照明光をその基端から受け入れ、その長さ方向に沿って前記照明光を伝達し、その先端から喉頭に前記照明光を照射する、その先端が前記棒状部材の先端に略一致する照明光伝達部材と、を含んでおり、
且つ、前記本体ケースには、前記像光伝達部材の基端と、前記照明光伝達部材の基端とが取付けられており、前記固定手段が前記可搬機器に対して固定されたときに、前記像光伝達部材の基端が前記可搬機器の前記レンズの近接する正面に、前記照明光伝達部材の基端が可搬機器の照明の近接する正面に、それぞれ位置決めされるようになっている
喉頭カメラユニット。
【請求項2】
前記棒状部材は、痰の吸引器が備える柔軟性を有するチューブを、前記チューブの先端が前記撮像素子の撮像範囲の中に位置するような状態で、着脱自在に固定することができるチューブ固定部材を備えている、
請求項1記載の喉頭カメラユニット。
【請求項3】
前記チューブ固定部材は、その曲率が前記棒状部材の曲率よりも大きくなるようにして湾曲しており、前記チューブの先端が痰の吸引箇所に向かうように、前記チューブ固定部材で固定された部分の前記チューブが、前記棒状部材に与えられた曲率よりも大きな曲率で湾曲するようにして、前記チューブを固定するようになっている、
請求項2記載の喉頭カメラユニット。
【請求項4】
前記棒状部材のうち、少なくとも口腔内に挿入されることが予定された部分を覆うものであり、前記棒状部材に対して着脱自在とされた、少なくとも像光と照明光とが通過する部分が透明とされたカバーを備えている、
請求項2記載の喉頭カメラユニット。
【請求項5】
痰の吸引器が備える柔軟性を有するチューブを、前記チューブの先端が前記撮像素子の撮像範囲の中に位置するような状態で、着脱自在に固定することができるチューブ固定部材が、前記カバーに設けられている、
請求項4記載の喉頭カメラユニット。
【請求項6】
前記チューブ固定部材は、前記チューブを曲折させることにより、前記チューブの先端を痰の吸引箇所に向かわせるようになっている、
請求項2又は4記載の喉頭カメラユニット。
【請求項7】
前記照明光伝達部材の先端の更に先に、前記照明光伝達部材の先端から出た前記照明光を、前記照明光伝達部材の長さ方向の延長方向と異なる方向に反射させることにより患者のより下側に導く反射部材が設けられている、
請求項1記載の喉頭カメラユニット。
【請求項8】
前記照明光伝達部材の先端面が、前記照明光伝達部材で伝達されてきた前記照明光を、前記照明光伝達部材の長さ方向の延長方向と異なる方向に反射させることにより患者のより下側に導く反射面とされている、
請求項1記載の喉頭カメラユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喉頭を撮像するための喉頭カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
特に老齢者においては、痰の吸引は避けられない。そのため痰の吸引器が例えば医療機関や介護施設で用いられており、また一般家庭へも普及している。
痰の吸引器は、簡単に言えば小型の掃除機のようなものである。
痰の吸引器は大雑把に言えば、柔軟な素材でできているチューブ、チューブの基端が接続されている容器である吸引瓶、そして吸引瓶を介してチューブ内に負圧を与える空気ポンプである吸引ポンプを備えて構成される。
【0003】
吸引器を用いる場合には、チューブ(正確にはチューブは、その基端側の管状のチューブとそのチューブの先端に接続されるそのチューブよりも細いこれも管状のカテーテルとからなることが一般的であるが、チューブもカテーテルも共に管状であり、本願発明との関係で区別する利益はないから、本願では両者をまとめてチューブと称することにする。)の先端を患者の口腔又は鼻腔に挿入して、チューブの先端を、痰の溜まっているところ(それは一般的には喉頭の近辺であり、例えば声帯の付近である。)に至らせる。その状態で、吸引ポンプで吸引瓶を介してチューブ内に負圧を与えることにより痰をチューブの先端から基端まで導き、吸引瓶に貯留する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸引器は必要不可欠なものであり、痰を吸引するという機能自体には問題がないから広く普及している。しかし、解決すべき点もある。
上述のように吸引器を使用するときには、チューブを口腔又は鼻腔に挿入する。これが患者に苦痛を与えることがある。口腔からのチューブの挿入の場合には、患者には吐瀉反応が生じることがある。鼻腔からのチューブの挿入の場合には鼻腔内の敏感な粘膜とチューブが擦れることにより、患者が口腔からのチューブの挿入の場合よりも更に強い痛みを感じることが多い。しかも、鼻腔からのチューブの挿入の場合には、顔の正中線に沿う平面上における鼻腔の上側の面の上向きのカーブを用いてチューブを案内することにより、チューブの先端を患者の痰の吸引箇所に導くことが比較的容易に行えるが(とはいえ、鼻腔の内側には細かな凹凸があり、それにチューブの先端が引っかかることがあるから、チューブの先端を痰の吸引箇所に至らせるのは実際にはそれ程簡単ではない。)、口腔からのチューブを挿入した場合には口腔内にはチューブを下向きに案内させるに有効なカーブが存在しないし、また、患者の口腔内の下側(なお、本願において患者の身体についての上下の概念は、痰の吸引器の実際の使用の場面とは異なる場合もあるが、患者が直立している状態の上下の方向に倣うものとする。)から上向きに突出する舌が邪魔になるため、チューブの先端を患者の痰の吸引箇所に導くことが難しい。したがって、痰の吸引器を用いる場合には、より強い痛みを患者に与える鼻腔からのチューブの挿入を選択せざるを得ない場合が多くなる。
患者の苦痛が増す更なる要因として、次のことを挙げられる。
吸引器は、患者本人でなく、医療関係者等、或いは家庭であれば、患者を介護する者が使用することが多いが、その使用者が誰であるとしても、患者の体内の痰が存在する位置を知らない点には変わりがない。したがって、吸引器の使用者は、口腔内又は鼻腔内に挿入したチューブを、そのチューブの先端が痰の存在する場所に到達するまでに、何度もチューブを前後させたり、軸周りに回転させたりする。そして、チューブの先端が痰の存在する場所に到達したと思った都度、吸引ポンプを駆動させる。この作業は、痰が吸引されるまで、何度も繰り返される。
このような、いわば当てずっぽうのチューブの操作が、患者の苦痛を増すのである。
【0005】
このような当てずっぽうのチューブの操作を無くすためには、吸引器の操作者がチューブの先端の位置を視認できるようにすれば良い。そのような目的で、医療機関においては、例えば鼻腔に挿入するタイプの内視鏡(かかる内視鏡で見る痰の吸引箇所は喉頭付近なので、かかる内視鏡は事実上喉頭カメラである。)を用いてチューブの先端の位置を視認しながら痰の吸引を行うということもなされている。
しかしながら、鼻腔に挿入するタイプの内視鏡(喉頭カメラ)は、患者に与える負担が口腔に挿入するタイプの内視鏡(喉頭カメラ)に比較して大きい。他方、口腔に挿入するタイプの内視鏡は、鼻腔に挿入するタイプの内視鏡に比して、体内に挿入する場合における患者の苦痛は小さいものの、上側に突出する患者の舌に当接したときに患者に吐瀉反応を生じさせることにより、これにより患者の苦痛が増したり或いは患者の体内への挿入が難しくなることがある。
他方、口腔から挿入するタイプの内視鏡(喉頭カメラ)は、上述の吐瀉反応さえ抑制できれば、その使用時における患者の負担乃至苦痛を小さくできるのではないかと、本願発明者は考えた。
喉頭付近の観察は、喉頭近辺の腫瘍の確認や、喉頭付近の運動機能の確認のために必要であるから、痰の吸引という用途に関わらず喉頭カメラの需要は存在する。そのような喉頭カメラを、口腔から挿入するものとし、且つその使用時における吐瀉反応を抑制できるのであれば、それには大きな意味がある。
【0006】
本願発明は、その使用時における吐瀉反応を抑制できる、口腔から挿入するタイプの喉頭カメラを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するものとして、本願発明者は以下の発明を提案することにする。
本願発明は、手持ち可能な本体部と、喉頭である被写体からの像光をその先端側で受けるものであり、喉頭の撮像時に口腔から挿入されその先端が口蓋垂の奥に至るようになっている、その基端が前記本体部に取付けられている棒状の棒状部材と、前記棒状部材の先端で受けた像光により、前記被写体の撮像を行う撮像素子と、を備えてなる喉頭カメラである。また、この喉頭カメラが備える前記棒状部材は、口蓋の上下方向の湾曲に対応するようにして湾曲させられている。
この喉頭カメラは口腔から患者の体内に挿入されるものとなっている。そしてかかる喉頭カメラのうち患者の口腔内に挿入される棒状部材は、口蓋の上下方向の湾曲に対応するようにして湾曲させられている。したがって、喉頭カメラを口腔内に挿入するとき棒状部材は患者の舌を躱すことができる。これにより、この喉頭カメラは、口腔から患者の体内に挿入するものであるにも関わらず、それが患者の舌に触れることにより患者において吐瀉反応を生じさせにくいものとなる。
本願において、「喉頭を撮像できる」というのは、喉頭カメラを使用する際にその棒状部材を適当に移動させた場合に喉頭の少なくとも一部を撮像することができる、という意味である。喉頭以外の部分、例えば、咽頭や食道を撮像することができるカメラであっても、上述の条件が充足されるのであればそのカメラは、本願発明における「喉頭カメラ」に含まれるものとする。本願発明における喉頭カメラ、より詳細には追って実施形態で説明する喉頭カメラは、喉頭以外に咽頭や食道も撮像することができる。
この喉頭カメラは、痰の吸引器と組合せて用いられるものとなっており、そして喉頭を撮像できるものとなっている。本願の喉頭カメラが喉頭を撮像できるようになっているのは、喉頭を含むその近辺に痰が溜まることが多く、その近辺が痰の吸引箇所となることが多いからである。
【0008】
前記撮像素子は、前記本体部に存在しており、前記棒状部材は、喉頭からの前記像光をその先端から受け入れ、その長さ方向に沿って前記像光を伝達し、その基端から前記撮像素子に向けて射出することで、前記撮像素子に撮像を行わせる、その先端が前記棒状部材の先端に略一致する棒状の像光伝達部材を備えていてもよい。この場合、撮像素子は、喉頭カメラの本体部に存在し、棒状部材に例えば沿う像光伝達部材によって、像光は棒状部材の先端側からカメラの本体部まで導かれる。像光伝達部材は例えばロッドレンズであり、或いはその先端側と基端側とにおける配列の相対的な関係が共通するようにして多数の光ファイバをまとめて構成されたイメージガイドである。像光伝達部材の他に、その先端側と基端側の少なくとも一方に他の光学系が存在していてももちろん構わない。なお、この場合、像光伝達部材が棒状部材そのものであっても良いし、そうでなくても良い。
また、前記撮像素子は、前記棒状部材の先端側に取付けられており、前記撮像素子で生成された動画についてのデータが、前記棒状部材に沿う信号線により前記撮像素子から前記本体部に送られるようになっていてもよい。この場合、カメラの本体部には、撮像素子は設けられない。この場合には、像光を棒状部材に沿って伝達する代わりに、棒状部材の先端側に設けられた撮像素子で生成された動画についてのデータが、信号線により棒状部材の先端側から喉頭カメラの本体部にまで送られることになる。
また、本願の喉頭カメラにおいては、前記棒状部材の先端側から、喉頭に照明光を照射するようになっていてもよい。なお、この場合の先端側というのは、棒状部材の最も先端部分のみを意味するものではなく、その近辺も含む概念である。
喉頭に照明光を照射する喉頭カメラにおいては、前記照明光を発する照明が前記本体部に設けられているとともに、前記棒状部材は、前記照明からの前記照明光をその基端から受け入れ、その長さ方向に沿って前記照明光を伝達し、その先端から喉頭に前記照明光を照射する、その先端が前記棒状部材の先端に略一致する照明光伝達部材を備えていてもよい。この場合、照明光は本体部にある照明から、照明光伝達部材を通じて、棒状部材の先端側にまで送られ、そこから喉頭に照明光を照射する。この場合の照明光伝達部材は、例えばロッドレンズであり、或いは(多数の)光ファイバである。この場合の光ファイバは単に照明光を伝達すれば良いのでイメージガイドである必要はない。照明光伝達部材は、上述する像光伝達部材を用いる場合と、像光伝達部材を用いない場合のいずれとも組合せることができる。
像光伝達部材と照明光伝達部材とを一緒に用いる場合には、像光伝達部材と、照明光伝達部材とは、少なくともその先端側の一定の長さが互いに沿うようになっていても構わない。これは、像光伝達部材と照明光伝達部材とを併せたものを、或いは棒状部材全体を細くするための工夫となる。また、像光伝達部材と照明光伝達部材とは互いに固定されていても構わない。これも、像光伝達部材と照明光伝達部材とを併せたものを、或いは棒状部材全体を細くするための工夫となる。棒状部材等を細くすることはもちろん、この喉頭カメラを用いた場合に吐瀉反応による苦痛を患者に与えにくくなるに寄与する。また、そこから発した像光が像光伝達部材の先端から取り込まれる部位である喉頭は、照明光伝達部材の先端から照射される照明光により照明されている必要がある。そのためには、像光伝達部材の先端と、照明光伝達部材の先端との相対的な位置関係が固定されている方が好ましい。像光伝達部材と照明光伝達部材とを互いに固定することはこの点で特に好ましい。
喉頭に照明光を照射する喉頭カメラにおいては、前記棒状部材の先端に、喉頭に前記照明光を照射する照明が取付けられていても構わない。この場合には、本体部に設けられている照明からの照明光を照明光伝達部材により棒状部材の先端側に送る代わりに、棒状部材の先端側に設けられている照明に、例えば本体部に設けられている電源から電力を供給する。かかる構成も、上述する像光伝達部材を用いる場合と、像光伝達部材を用いない場合のいずれとも組合せることができる。
像光伝達部材と照明光伝達部材との少なくとも一方を用いる場合には、喉頭カメラは、その用いられる像光伝達部材と照明光伝達部材との少なくとも一方を収納するケースを有していても良い。この場合にはそのケース及びその内部が、事実上本願発明における棒状部材となる。この場合、像光伝達部材と照明光伝達部材とのうちの使用される少なくとも一方は、それらの先端と基端とをともに透光させられるような状態でケースに収納される。ケースを用いることにより、後述するカバーを用いやすくなる。また、ケースに像光伝達部材と照明光伝達部材とが共に収納される場合には、像光伝達部材と照明光伝達部材とをケースに固定することにより、像光伝達部材と照明光伝達部材とを互いに間接的に固定するようにしてもよい。
【0009】
そして本願の喉頭カメラが備える棒状部材は、痰の吸引器が備える柔軟性を有するチューブを、前記チューブの先端が前記撮像素子の撮像範囲の中に位置するような状態で、着脱自在に固定することができるチューブ固定部材を備えていてもよい。このような喉頭カメラは、柔軟性を有するチューブを持つ痰の吸引器と組合せて用いることを前提とするものであり、痰の吸引の目的で使用されるものとなる。
上述の如きチューブ固定部材を有する喉頭カメラを用いれば、喉頭カメラを用いるユーザは、チューブの先端の位置をその撮像素子により撮像された画像により確認しながら喉頭カメラを操作できる。しかもチューブはその所定の位置を、喉頭カメラが持つ棒状部材に設けられたチューブ固定部材に固定されている。棒状部材は患者の口腔内に挿入されるものであり、それにチューブの先端側の所定の位置が固定されているのであるから、ユーザが喉頭カメラの棒状部材を口蓋垂の奥に至るように、そして棒状部材の先端側で像光を受けられる(これはつまり、痰の吸引箇所を撮像するということである)ように移動させると、それと同時に痰の吸引器の吸引瓶から伸びるチューブの先端も移動することになり、また自然に痰の吸引箇所の方向に向かうことになる。
これにより、この喉頭カメラを用いれば、痰の吸引の際における患者の痛みを減じるとともに、チューブの先端を痰の存在する位置に至らせるのを容易にすることが可能となる。
なお、本願の喉頭カメラが備える棒状部材は、喉頭である被写体からの像光をその先端側で受けるようになっている。この場合の「先端側」というのは、棒状部材の最も先端部分のみを意味するものではなく、その近辺も含む概念である。
また、本願の棒状部材は、上述のように棒状である。ここで、「棒状」というのは、長さ方向に垂直な断面の縦横の長さに対してその長さ方向の長さが大きいという程度の意味であり、一般に線状と表現する程度に細い場合をも含む。
本願の喉頭カメラは、それ自体がディスプレイを備えており、撮像素子で撮像されそのディスプレイに略実時間で表示される動画像をユーザが確認できるようになっているのが好ましい。このようにすることで、ユーザはチューブの先端と痰の吸引箇所の相対的な位置関係を確認しながら、喉頭カメラの、ひいてはチューブの操作を行うことができるようになる。もっとも喉頭カメラにディスプレイを設けずとも、喉頭カメラと有線或いは無線で接続された、喉頭カメラから動画像についての信号を受取るようにされた喉頭カメラとは別の、ディスプレイを備えたディスプレイ装置を準備し、そのディスプレイ装置のディスプレイに撮像素子で撮像された動画像を略実時間で表示するようにすることになれば、ユーザはチューブの先端と痰の吸引箇所の相対的な位置関係を確認しながら、喉頭カメラの、ひいてはチューブの操作を行うことができるようになる。
【0010】
前記チューブ固定部材は、前記チューブを曲折させることにより、前記チューブの先端を痰の吸引箇所に向かわせるようになっていても構わない。この場合、チューブ固定部材は、チューブを固定する役割を担うものと、チューブを曲折する役割を担うものに分割されていても構わないし、これら2つの役割を担う1つの部材がチューブ固定部材とされていても構わない。
また、前記チューブ固定部材は、前記チューブの先端が痰の吸引箇所に向かうように、前記チューブ固定部材で固定された部分の前記チューブが、前記棒状部材に与えられた曲率よりも大きな曲率で湾曲するようにして、前記チューブを固定するようになっていても構わない。このようにすることで、チューブの先端を痰の吸引箇所に向かわせることができるようになる。
いずれにせよこのようなチューブを曲折させるチューブ固定部材を採用することにより、本願発明の喉頭カメラは、その使用時においてより確実にチューブの先端を痰の吸引箇所に向かわせることができるようになる。
【0011】
本願の喉頭カメラは、前記棒状部材のうち、少なくとも口腔内に挿入されることが予定された部分を覆うものであり、前記棒状部材に対して着脱自在とされた、少なくとも像光と照明光とが通過する部分が透明とされたカバーを備えていてもよい。棒状部材は、上述のように、口腔内に挿入される。喉頭カメラが、棒状部材を覆うカバーを備えているのであれば、カバーを特に使い捨てにすることにより、喉頭カメラの特に棒状部材をいつも清潔に保てるようになる。
この場合カバーは、棒状部材のうち、少なくとも口腔内に挿入されることが予定された部分を覆うものであれば足り、棒状部材の全体を覆うものであることを要さない。
前記チューブ固定部材は、前記カバーに設けられていてもよい。つまり、チューブ固定部材は、カバーを介して間接的に棒状部材に設けられていても良い。この場合の効果は、棒状部材に直接チューブ固定部材を設けた場合と同様である。この場合のチューブ固定部材も、チューブ固定部材をケースに設けた場合と同様に、前記チューブを曲折させることにより、前記チューブの先端を痰の吸引箇所に向かわせるようになっていても構わないし、チューブの先端が喉頭に向かうように、チューブ固定部材で固定された部分のチューブが、棒状部材に与えられた曲率よりも大きな曲率で湾曲するようにして、チューブを固定するようになっていても構わないのは当然である。
【0012】
喉頭カメラは、既存の可搬機器と、喉頭カメラユニットとの組合せにより構成することも可能である。ここで言う可搬機器は、被写体からの像光の撮像を行うための撮像素子及びレンズ、及び被写体を照明する照明光を発する照明を備えたものである。このような可搬機器は、例えば、スマートフォンであり、或いはタブレットであり、いずれにせよ汎用されているもので良い。そのような可搬機器と喉頭カメラユニットとの組合せにより喉頭カメラを構成することの利点は、電気的な動作をする部品のすべてを可搬機器側のもので流用することによって、喉頭カメラユニット側には電気的な動作をする部品を一切含めないことも可能となるので、喉頭カメラを使用する場合のユーザ或いは患者のコスト負担を軽減することができる、という点にある。また、可搬機器は、その撮像素子で撮像された動画像を略実時間で表示することのできるディスプレイを備えているのが一般的であり、その点でも本願の喉頭カメラを構成するのに利用するのに都合が良い。
その場合、喉頭カメラユニットは、例えば、喉頭からの像光をその先端から受け入れ、その長さ方向に沿って前記像光を伝達し、その基端から前記像光を前記可搬機器の前記レンズに照射することで、前記撮像素子に撮像を行わせることができるようになっており、喉頭の撮像時に口腔から挿入されその先端が口蓋垂の奥に至るようになっている、棒状の像光伝達部材と、可搬機器の前記照明からの照明光をその基端から受け入れ、その長さ方向に沿って前記照明光を伝達し、その先端から喉頭に前記照明光を照射するようになっており、喉頭の撮像時に口腔から挿入されその先端が口蓋垂の奥に至るようになっているとともに、少なくともその先端側の所定範囲が像光伝達部材に沿うようにされている、棒状の照明光伝達部材と、像光伝達部材の基端と、照明光伝達部材の基端とが取付けられているとともに、可搬機器に対して、所定の相対的な位置関係に位置決めをした状態で着脱自在な固定をなす固定手段を備えているとともに、可搬機器に対して固定されたときに、像光伝達部材の基端が前記可搬機器の前記レンズの近接する正面に、照明光伝達部材の基端が可搬機器の照明の近接する正面に、それぞれ位置決めされるようになっている、本体ケースと、を備えている。そして、その像光伝達部材と照明光伝達部材とを組合せたものが本願発明でいう棒状部材となるのであるが、その棒状部材は、口蓋の上下方向の湾曲に対応するようにして湾曲させられている。
更に、この棒状部材のどこか、例えば像光伝達部材と照明光伝達部材との少なくとも一方に本願でいうチューブ固定部材を設けることもできる。このような喉頭カメラユニットは上述の如きケースを備えていてもよく、その場合にはケース及びそれに収納されたものが本願でいう棒状部材となるが、ケースが存在するのであればケースにチューブ固定部材が設けられていてもよい。更に、ケースには上述した如きカバーを組合せることも可能であり、その場合であればカバーにチューブ固定部材が設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態による喉頭カメラを構成するために、喉頭カメラユニットと組合せて使用される可搬機器の(A)裏側から見た斜視図、(B)表側から見た斜視図。
図2】第1実施形態による喉頭カメラを構成するために、可搬機器と組合せて使用される喉頭カメラユニットの(A)裏側から見た斜視図、(B)表側から見た斜視図。
図3図2に示した喉頭カメラユニットに含まれるケースの透視拡大図。
図4】(A)図2に示した喉頭カメラユニットに含まれる像光伝達部材の先端の拡大図、(B)同照明光伝達部材の先端の拡大図、(C)同照明光伝達部材の先端の他の例の拡大図。
図5】人体の頭頸部の一部を拡大して示した断面図。
図6図2に示した喉頭カメラユニットを図1に示した可搬機器と組合せて作られた喉頭カメラの使用状態を説明する図。
図7図6に示した喉頭カメラの動作原理を示す模式的な縦断面図であり、(A)は、痰の吸引箇所の撮像を行うに必要な仕組みを含む部分の、(B)は痰の吸引箇所に照明光を照射するのに必要な仕組みを含む部分の縦断面図。
図8】一変形例による喉頭カメラの動作原理を示す模式的な縦断面図であり、(A)は、痰の吸引箇所の撮像を行うに必要な仕組みを含む部分の、(B)は痰の吸引箇所に照明光を照射するのに必要な仕組みを含む部分の縦断面図。
図9】他の変形例による喉頭カメラの動作原理を示す模式的な縦断面図であり、(A)は、痰の吸引箇所の撮像を行うに必要な仕組みを含む部分の、(B)は痰の吸引箇所に照明光を照射するのに必要な仕組みを含む部分の縦断面図。
図10】更に他の変形例による喉頭カメラの動作原理を示す模式的な縦断面図であり、(A)は、痰の吸引箇所の撮像を行うに必要な仕組みを含む部分の、(B)は痰の吸引箇所に照明光を照射するのに必要な仕組みを含む部分の縦断面図。
図11】更に他の変形例による喉頭カメラの動作原理を示す模式的な縦断面図であり、(A)は、痰の吸引箇所の撮像を行うに必要な仕組みを含む部分の、(B)は痰の吸引箇所に照明光を照射するのに必要な仕組みを含む部分の縦断面図。
図12】第2実施形態の喉頭カメラユニットと組合せて使用されるカバーの斜視図。
図13】第3実施形態による喉頭カメラユニットの(A)裏側から見た斜視図、(B)表側から見た斜視図。
図14】第4実施形態による喉頭カメラユニットの(A)裏側から見た斜視図、(B)表側から見た斜視図。
図15図14に示した喉頭カメラユニットを図1に示した可搬機器と組合せて作られた喉頭カメラの使用状態を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1~第4実施形態を、図面を参照して説明する。
なお、各実施形態と変形例の説明において、共通する対象には共通する符号を付すものとし、共通する説明は場合により省略するものとする。
【0015】
≪第1実施形態≫
まず、この実施形態の喉頭カメラユニットと組合せることにより喉頭カメラをなす可搬機器について説明する。なお、この実施形態の喉頭カメラユニットを可搬機器と組合せて作られる喉頭カメラは、この限りではないが、痰の吸引を補助する目的で用いられる痰吸引用カメラである。他の実施形態の喉頭カメラも特に断りの無い限りは同様である。もっとも、この実施形態の喉頭カメラユニットと可搬機器とを組合せた喉頭カメラは、痰の吸引器と組合せずに、単に喉頭付近を観察するために用いることも可能ではある。
可搬機器100を図1に示す。図1(A)は可搬機器100を裏から見た斜視図、同(B)は表から見た斜視図である。
可搬機器100は、公知又は周知のもので良いので、その説明は簡単に行う。可搬機器100は、可搬な程度に小型であり、いずれも後述する動画を撮像することができるカメラと、照明とを備えているのが必須条件となる。可搬機器100に小型であることが求められるのは、可搬機器100を含めた喉頭カメラをユーザが操作しやすくするため、好ましくは片手で操作しやすくするためである。可搬機器100に動画の撮像が可能なカメラと照明とが求められるのは、それを喉頭カメラのカメラと照明として利用するためである。
また、可搬機器100はディスプレイを備えるのが好ましい。それは、可搬機器のカメラの撮像素子で撮像された動画をディスプレイに表示させることにより、ディスプレイを、喉頭カメラのモニタとして用いることができるからである。もっとも、可搬機器100がディスプレイを備えない場合には、可搬機器100の外部のディスプレイ装置のディスプレイを、可搬機器100のディスプレイに代えて、喉頭カメラのモニタとして用いることが可能である。その場合、可搬機器100からディスプレイ装置に動画像のデータを送る必要があるが、その接続は、例えばUSBケーブル等を用いて有線で、或いはブルートゥース(商標)等を用いて無線で、適当に行えば良い。
【0016】
これには限られないが、可搬機器100はスマートフォン又はタブレットであり、この実施形態ではスマートフォンとされている。スマートフォンは、市販のもので良い。スマートフォンとしては、例えば、Apple Japan合同会社が製造、販売を行うiPhone(商標)シリーズを挙げることができる。タブレットとしては、例えば、同社が製造、販売を行うiPad(商標)シリーズ、iPod(商標)シリーズを挙げることができる。
可搬機器100は、薄い略直方体形状に構成された筐体101を備えている。筐体101は片手で持てる程度に小型である。
可搬機器100は、その筐体101の裏面にディスプレイ102を備えている。ディスプレイ102は画像を表示するものであり、公知又は周知のものでよく、例えば液晶ディスプレイである。
可搬機器100は、また、その筐体101の裏面に、入力装置103を備えている。入力装置103は、可搬機器100を操作するためのものである。入力装置103は物理キーであっても良いが、ディスプレイ102がタッチパネルである場合には、ディスプレイ102に入力装置103の機能の少なくとも一部を兼ねさせることができる。
可搬機器100の筐体101の表側には、レンズ104が露出している。レンズ104は可搬機器100のカメラの一部をなす。よく知られているように、レンズ104の奥には図示せぬ撮像素子がある。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)、或いはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor Image Sensor)であり、動画を撮像できるようになっている。撮像素子で撮像された画像は、公知又は周知の仕組みによりディスプレイ102に略実時間で表示させられるようになっている。
可搬機器100は、また、その筐体101の表面に、照明105を備えている。照明105は、照明光を発するものであればそれで足りる。照明105の例は、LEDである。
【0017】
次に、喉頭カメラユニットについて説明する。
図2に喉頭カメラユニット200を示す。図2(A)は喉頭カメラユニット200を裏から見た斜視図であり、同(B)は喉頭カメラユニット200を表から見た斜視図である。
喉頭カメラユニット200は、本体ケース210を備えている。本体ケース210は、喉頭カメラユニット200の可搬機器100との着脱可能な固定をなすためのものである。可搬機器100と本体ケース210とを組合せたものが、本願でいう本体部となる。
これには限られないが、この実施形態の本体ケース210は、樹脂製である。また、これには限られないが、この実施形態における本体ケース210は、広い面積の略矩形の板である板部211と、板部211の周囲を囲み、板部211の裏面側に突出し、板部211からの高さがそのすべての部分で同じとされた板である側板部212とを備えている。本体ケース210は、板部211と側板部212に囲まれた空間としての窪み213を、その裏側に備えている。
窪み213は、可搬機器100の筐体101に対応した大きさ、形状とされていて、可搬機器100をすっぽり安定した状態で収めることができるようにされている。可搬機器100は、喉頭カメラユニット200との組合せにより喉頭カメラを形成する場合には、その裏面が窪み213から覗くような向きで、窪み213に収納される。
側板部212の窪み213の周囲には、窪み213の中央方向に向かって突出する小さな板状体である係止爪212Aが設けられている。可搬機器100を窪み213に収納すると可搬機器100は係止爪212Aに係止されて、窪み213から抜け落ちないような状態となり、これにより可搬機器100の喉頭カメラユニット200に対する着脱自在な固定が実現されるようになっている。もっとも、可搬機器100と喉頭カメラユニット200との着脱自在な固定は喉頭カメラユニット200の本体ケース210に窪み213を設けることにより実現される必要は必ずしもなく、例えば、本体ケース210に可搬機器100をその長さ方向に平行移動することで挿入でき、且つそれに挿入された可搬機器100が脱落しないような大きさ、形状の溝乃至穴(例えば、断面形状略Cの字形状の溝であり、その溝の両端が溝の底に対して平行に若干突き出しているもの)を設けておき、本体ケース210の溝乃至穴に可搬機器100を、例えば可搬機器100の長さ方向に沿ってスライドさせ挿入することにより、両者の着脱自在な固定を実現することが可能である。もちろん、周知又は公知の他の方法により、両者の着脱自在な固定を実現することが可能である。
可搬機器100を窪み213に収納した場合における可搬機器100のレンズ104に対応する部分の板部211には、第1孔214が設けられている。第1孔214はこれには限られないが円形である。第1孔214は、後に説明する像光の通り道を作るべく、窪み213に収納された可搬機器100のレンズ104を板部211で覆わないようにするためのものであり、そうなっているのであればレンズ104よりも大径であっても構わないし、円形である必要もない。
可搬機器100を窪み213に収納した場合における可搬機器100の照明105に対応する部分の板部211には、第2孔215が設けられている。第2孔215はこれには限られないが円形である。第2孔215は、後に説明する照明光の通り道を作るべく、窪み213に収納された可搬機器100の照明105を板部211で覆わないようにするためのものであり、そうなっているのであれば照明105よりも大径であっても構わないし、円形である必要もない。更に言えば、第1孔214と第2孔215とは、一体となっていても良い。
【0018】
本体ケース210には、これには限られないが、ケース220が取付けられている。ケース220は、図3に拡大して示されている。ケース220及びその中に収納される後述するものが、本願発明でいう棒状部材を構成する。
ケース220は本体ケース210と同様樹脂製であり、本体ケース210と例えば一体に形成されている。ケース220は、これには限られないが例えば、細長い略直方体形状であり、その幅は、その基端からその先端まで変わらないが、その厚さは、先端に近づくに連れて徐々に細くなるようになっている。また、ケース220は、その先端に近づくに連れ、喉頭カメラの使用時における下方向に向かうようにして湾曲させられている。ケース220の基端側は開口させられている。
ケース220の長さは、喉頭カメラを使用する際にケース220を口腔内に挿入したときに、ケース220の先端、より詳細にはケース220に設けられた後述する窓を、口蓋垂の奥に至らせることができるような長さとされている。
ケース220の先端付近の下側には、窓221が設けられている。窓211は、後述する像光と、照明光とが、ケース220を、ケース220の影響を受けずに通過できるようにするための、像光と照明光との通り道である。窓211は、ケース220の一部をこれには限られないが矩形に穿ち、その開口に厚さが均一で透明な板を嵌め込んで固定することにより構成されている。透明な板と開口とが接する部分は、喉頭カメラの使用時にケース220内に患者の唾液等が進入するのを防止するために、水密にするのが好ましい。もっとも、窓221を、像光用の窓と、照明光用の窓との2つに分割することも可能である。また、ケース220の全体を透明な樹脂で構成するのであれば、窓221をケース220に設けることを要さない。ただし、その場合には、ケース220がレンズとして機能しないようにするために、ケース220の少なくとも像光が通過する部分は、その厚さが均一であるのが好ましい。
【0019】
ケース220には、これには限られないが、案内部材270が設けられている。案内部材270は、本願でいうチューブ固定部材に相当するものである。これには限られないが、案内部材270は、ケース220と一体に形成されている。
案内部材270は、後述する痰の吸引器が備えるチューブの先端側の所定の位置を着脱自在に固定するためのものである。この実施形態では、断面略Cの字の筒状に案内部材270を構成することで、断面略Cの字型の溝の内側にチューブを変形させながら押し込むことによりチューブの固定をなすことができ、またその内側からチューブを変形させながら引出すことにより、チューブの固定を解除することができるようになっている。案内部材270に固定されると、チューブは後述する患者の喉頭の方に向かうように案内され、この実施形態ではそこで曲折させられるようになっている。
案内部材270は、ケース220が湾曲する方向と同じ方向に湾曲するようになっている。これには限られないがこの実施形態では、案内部材270の湾曲の曲率はケース220の湾曲の曲率よりも大きい。これには限られないがこの実施形態では、案内部材270のケース220における基端側では、ケース220の長さ方向に沿う向きで案内部材270はチューブを固定できるようになっている。チューブは、案内部材270に嵌るとその溝に沿って曲がる。
【0020】
ケース220の内部には、像光伝達部材222と、照明光伝達部材223とが配置されている。像光伝達部材222と、照明光伝達部材223とはいずれも、棒状の長い部材であり、ケース220の基端から先端までの長さと略同じ長さとされている。
【0021】
像光伝達部材222は、その先端から像光伝達部材222の内部に入った像光を、その基端まで伝達するためのものである。かかる像光の伝達は、喉頭からの像光を、可搬機器100に内蔵された撮像素子で撮像できるような状態で伝達するものでなければならない。像光伝達部材222は例えば、GI(Graded Index)型のロッドレンズである。像光伝達部材222は棒状であり、ケース220に沿って湾曲している。像光伝達部材222は、ケース220の内側に設けられた図示を省略のリブなどを用いて、ケース220の内部に固定されている。像光伝達部材222の基端の周囲は、像光の伝達に影響が無いようにしつつ、本体ケース210の板部211に設けられた第1孔214の周囲に固定されるようになっている。可搬機器100が本体ケース210の窪み213に固定されたとき、像光伝達部材222の基端の面は、像光伝達部材222の光軸と、可搬機器100のレンズ104の光軸とが一致するようにして、レンズ104の直前に位置するようになっている。また、像光伝達部材222の先端は、ケース220の窓221に臨むようになっている。つまり、喉頭カメラを使用する際にケース220を口腔内に挿入したときに、像光伝達部材222の先端は、口蓋垂の奥に至ることになる。なお、像光伝達部材222は、ロッドレンズに代えて、多数の光ファイバを束にしてなる公知のイメージガイドにより構成することも可能である。イメージガイドの両端における多数の光ファイバの相対的な位置関係を同じにしておくことにより、可搬機器100の撮像素子で正しく撮像ができるような状態で、像光をイメージガイドの先端から基端に伝送することが可能となる。このようなイメージガイドを採用すれば、像光伝達部材222を湾曲させるのが容易になる。
これには限られないが、この実施形態では、像光伝達部材222の先端側には、図4(A)に示したように、対物レンズ224が設けられている。対物レンズ224は、ロッドレンズである像光伝達部材222の大きくするのが難しい画角を大きく(例えば60°以上、好ましくは70°程度)にする機能を有している。これにより像光伝達部材222で、喉頭の少なくとも一部を含む広い範囲の撮像を、撮像素子が行えるようになる。また、この実施形態の像光伝達部材222の対物レンズ224の更に先端側には、反射部材225が設けられている。反射部材225は、像光を反射させてその角度を変えることにより、患者のより下側からの像光を像光伝達部材222の先端に入射させるためのものである。反射部材225は例えば鏡、或いはプリズムである。像光伝達部材222の先端を、喉頭である声門付近の方向に向けることが可能であれば反射部材225は不要であるが、それが難しい場合には反射部材225を用いることにより、喉頭からの像光を、反射部材225を介して像光伝達部材222の先端面に入射させられるようになる。
なお、像光伝達部材222の基端側には、像光を可搬機器100のレンズ104に適切に入射させるための光学要素が設けられていても良い。かかる光学要素は例えば、レンズ104の瞳の範囲に像光を、レンズ104の画角と同じかそれ以上の立体角で集束させるものとすることができる。この場合の光学要素は例えば、単数又は複数のレンズである。
【0022】
照明光伝達部材223は、その基端から照明光伝達部材223の内部に入った照明光を、その先端まで伝達し、喉頭に照射するためのものである。照明光伝達部材223は例えば、1本、又は複数本をまとめた光ファイバとすることができる。GI型のロッドレンズを、照明光伝達部材223とすることも可能である。また、その内周面が光を反射するように、例えば鏡面加工された金属製の管を照明光伝達部材223として利用することも可能である。照明光伝達部材223は棒状であり、ケース220に沿って湾曲している。照明光伝達部材223は、ケース220の内側に設けられた図示を省略のリブなどを用いて、ケース220の内部に固定されている。つまり、照明光伝達部材223は、ケース220を介して、像光伝達部材222と互いに固定されている。照明光伝達部材223の基端の例えば周囲は、照明光の伝達に影響が無いようにしつつ、本体ケース210の板部211に設けられた第2孔215の周囲に固定されるようになっている。可搬機器100が本体ケース210の窪み213に固定されたとき、照明光伝達部材223の基端の面は、可搬機器100の照明105の直前に位置するようになっている。これにより、照明105からの照明光は、照明光伝達部材223の基端側の面から照明光伝達部材223の中に入るようになっている。また、照明光伝達部材223の先端は、ケース220の窓221に臨むようになっている。つまり、喉頭カメラを使用する際にケース220を口腔内に挿入したときに、照明光伝達部材223の先端は、口蓋垂の奥に至ることになる。
これには限られないが、この実施形態では、照明光伝達部材223の先端には、図4(B)に示したように、反射部材226が設けられている。反射部材226は、照明光を反射させてその角度を変えることにより、照明光伝達部材223の先端から出た照明光を、患者のより下側へ向かわせるものである。反射部材226は例えば鏡、或いはプリズムである。照明光伝達部材223の先端を、喉頭の方向に向けることが可能であれば反射部材226は不要であるが、それが難しい場合には反射部材226を用いることにより、照明光伝達部材223の先端面から出た照明光を、反射部材226を介して喉頭の方向へ照射することができるようになる。
他方、反射部材226を用いずとも、照明光伝達部材223から出る光を、喉頭の方向に向けることが可能である。照明光伝達部材223が、ロッドレンズ又は光ファイバである場合に、図4(C)に示したように、照明光伝達部材223の先端を鋭角に切断するという方法がそれである。その切断面で、照明光が反射(例えば全反射)するようにすることにより、照明光伝達部材223の長さ方向の延長線とは異なる方向、より詳細には喉頭に向かう方向に、照明光伝達部材223から出た照明光を向かわせることができるようになる。
【0023】
以上で説明した喉頭カメラの動作原理を示す図を図7(A)、(B)に示す。図7(A)、図7(B)はいずれも、可搬機器100と喉頭カメラユニット200とを組合せてなる喉頭カメラの動作原理を示す模式的な縦断面図であり、前者は痰の吸引箇所の撮像を行うに必要な仕組みを含む部分の、後者は痰の吸引箇所に照明光を照射するのに必要な仕組みを含む部分の縦断面図である。
これら図面には、今まで図示を省略してきた撮像素子106が現れており、また制御基板107も示されている。制御基板107は、例えば図示を省略の入力装置からの入力にしたがって可搬機器100を公知又は周知のように動作させるものである。制御基板107は、公知又は周知のものでよく、可搬機器100をスマートフォンとして機能させるために必要な機能を実現できるようなものとされており、また電源としての電池を含んでいる。
撮像素子106は信号線106Aにより、制御基板107に接続され、制御基板107は信号線107Aにより、ディスプレイ102に接続されている。撮像素子106で撮像が行われることにより生成された動画像のデータは、撮像素子106から制御基板107に送られ、制御基板107の制御下でディスプレイ102に表示されるようになっている。制御基板107は、また、電線105Aを介して照明105に接続されており、照明105に電力を供給することでユーザの選択にしたがって照明105を点灯させられるようになっている。
【0024】
以上に説明した喉頭カメラユニット200の使用方法、及び動作を説明する。
喉頭カメラユニット200は、可搬機器100との組合せで喉頭カメラをなす。まず、両者を組合せる。可搬機器100は、喉頭カメラユニット200の本体ケース210の窪み213に挿入される。そのとき、可搬機器100の表面が板部211の裏面に当接するようにする。そうすることで、可搬機器100のディスプレイ102が、喉頭カメラユニット200の本体ケース210の窪み213から露出することになる。また、このとき、可搬機器100のレンズ104と照明105とは、喉頭カメラユニット200の本体ケース210の板部211に設けられた第1孔214と第2孔215のすぐ後ろに、位置決めされた状態となる。
このとき可搬機器100は、その背面の縁を係止爪212Aによって係止されるので、喉頭カメラユニット200から外れることはない。
これにより喉頭カメラユニット200は完成する。
他方、ユーザは、喉頭カメラユニット200の案内部材270に痰の吸引器のチューブT(図6参照)を固定する。案内部材270にチューブTを固定する場合には、案内部材270より先のチューブTの長さが、チューブTの先端を痰の吸引箇所X(図5)に至らせるに十分な長さとなるようにする。
ユーザは、喉頭カメラユニット200の一部をなす可搬機器100のカメラの機能を、動画を撮像させる状態で駆動させるとともに、照明105をONの状態とする。カメラで撮像された動画が、可搬機器100のディスプレイ102に表示される。
なお、喉頭カメラユニット200の組立て、案内部材270へのチューブTの固定、可搬機器100のカメラの機能の駆動は、その順序を問わず、いずれを先に行ってもよい。
【0025】
この状態で、ユーザは、喉頭カメラのケース220を、チューブTとともにユーザの口腔内に差し入れることにより、ケース220とチューブTとを、患者の体内に挿入する(図6)。
図5に人間の頭頸部の一部の断面図を示す。図中1が外鼻、2が鼻腔、3が口腔である。4が舌、5が口蓋垂、6が咽頭(中咽頭)、7が喉頭蓋、8が喉頭、9が声門、10が気管、11が食道、12が歯である。破線で囲んでXの符号を付した辺りが痰の貯留しやすい場所であり、一般的に痰の吸引箇所となる部分である。かかる痰の吸引箇所Xは喉頭8の近辺である。
ユーザは喉頭カメラごとチューブTを操作する。チューブTが喉頭カメラのケース220の先端側の所定の位置に案内部材270を介して固定されているから、それが可能となる。また、案内部材270の曲率がケース220の曲率よりも大きくなっているので、チューブTの先端は、案内部材270の部分で患者の体内のより下方に向かうので、チューブTの先端は、簡単に例えば喉頭8の付近である痰の吸引箇所Xに届く。案内部材270はこのように、喉頭カメラとチューブTとを固定する機能と、喉頭カメラに固定されたチューブTを曲折させ患者の体内の下方に向かわせる機能とを有する。この実施形態で説明する案内部材270は、これら2つの機能を1つの部材で達成するようになっているが、案内部材270はこれら2つの機能を協働して達成する、例えば上記2つの機能をそれぞれ担う2つの部材等、複数の部材から構成されていてもよい。
喉頭カメラでチューブTの先端と痰の吸引箇所Xを撮像する。その際、喉頭カメラユニット200のケース220の先端、より詳細には、その窓221が、口蓋垂5の奥に至るようにする。喉頭カメラユニット200のケース220が湾曲しているため、ケース220の先端は、ケース220が患者の舌に干渉するのを避けつつ、口蓋垂5の奥に至ることができる。
撮像に必要な照明光は、可搬機器100の照明105から照射される。照明105からの光は、喉頭カメラユニット200の本体ケース210の板部211に設けられた第2孔215を通過して照明光伝達部材223の基端から照明光伝達部材223の中に入る。照明光は照明光伝達部材223の中を通過して、照明光伝達部材223の先端側から出る。この実施形態では、照明光伝達部材223の先端側には反射部材226が存在するので、照明光伝達部材223の先端から出た照明光は反射部材226で反射され、患者の体のより下側、つまり喉頭8の方向を含む痰の吸引箇所Xの方向に向かう。これにより痰の吸引箇所Xの照明が実現される。
照明光は痰の吸引箇所XやチューブTで反射されて像光となる。像光は可搬機器100のカメラで撮像される。像光は、この実施形態では、像光伝達部材222の先端に対物レンズ224と反射部材225とが存在するので、反射部材225でまず反射され、対物レンズ224に向かう。対物レンズ224で屈折してその径が小さくなった像光は、像光伝達部材222の先端から像光伝達部材222の中に入る。像光は像光伝達部材222の中を通過して、像光伝達部材222の基端から出る。そして、喉頭カメラユニット200の本体ケース210の板部211に設けられた第1孔214を通過して、可搬機器100のレンズ104に入り、可搬機器100が備える図示せぬ撮像素子によって撮像される。
撮像された動画の画像は、可搬機器100のディスプレイ102に表示される。ユーザは、片手で、可搬機器100の位置、角度を調整しながら、痰の存在する位置とチューブTの先端の位置とを、或いはそれら両位置の相対的な位置関係を確認することができる。ユーザが喉頭カメラを動かすと、チューブTも移動する。ユーザは、喉頭カメラごとチューブTを前後させたり回転させたりして、チューブTの先端の位置を調整することができる。ユーザはチューブTの先端が痰を吸引できる位置に至ったら、痰の吸引器の吸引ポンプを駆動させれば良い。ディスプレイ102により確認をしながらその行為を行えば、痰の吸引を素早く、確実に行うことができる。
なお、この実施形態では可搬機器100がディスプレイ102を備えており、可搬機器100の撮像素子で撮像された画像は略実時間でそのディスプレイ102に表示されるから、ユーザはその画像を確認しながら痰の吸引を行うことができる。可搬機器100がディスプレイを備えないのであれば、上述のように可搬機器100とは別にディスプレイを備えたディスプレイ装置を準備し、可搬機器100からの撮像素子で撮像された画像を、ディスプレイ装置のディスプレイに略実時間で表示することが可能である。それによってもユーザは、痰の吸引を行う際に、痰の存在する位置とチューブTの先端の位置とを、或いはそれら両位置の相対的な位置関係を確認しながら、痰の吸引の作業を行うことができる。
【0026】
痰の吸引が終わったら、ユーザは、チューブTを喉頭カメラから外し、また、喉頭カメラユニット200から可搬機器100を取り外せば良い。そうすれば可搬機器100は、その本来期待される使用方法で使用することができる。
【0027】
<変形例>
変形例にかかる喉頭カメラについて、図8図11を用いて説明する。図8図11は、それぞれ別の喉頭カメラの断面図である。図8図11はいずれも、図7と同様の喉頭カメラの動作原理を示す模式的な縦断面図であり、図8図11の(A)は、痰の吸引箇所の撮像を行うに必要な仕組みを含む部分の、図8図11の(B)は痰の吸引箇所に照明光を照射するのに必要な仕組みを含む部分の縦断面図である。
図8に示した喉頭カメラは、殆ど第1実施形態の喉頭カメラと変わらない。この喉頭カメラが第1実施形態の喉頭カメラと異なるのは、第1実施形態による喉頭カメラは、可搬機器100と喉頭カメラユニット200との組合せにより構成されるものとされており、可搬機器100と喉頭カメラユニット200の本体ケース210とを組合せたものが、本願でいう本体部となるようにされていたが、図8に示された喉頭カメラでは、可搬機器100と喉頭カメラユニット200とがそもそも一体とされており、それらが着脱自在とされていないという点にある。この喉頭カメラは、表面にレンズ104と照明105、裏面にディスプレイ102を備えており、その内部に撮像素子106と制御基板107が収納される本体部ケース210Xを備えている。本体部ケース210Xは、第1実施形態における可搬機器100の筐体101と、喉頭カメラユニット200の本体ケース210とを一体としたものに相当する。図8に示した変形例による喉頭カメラでは、この本体部ケース210Xが、本願でいう本体部に相当する。
本体部ケース210Xには、第1実施形態の可搬機器100が備えていたような入力装置103も設けられているが、それの図示は省略している。本体部ケース210Xは、像光を通過させるための第1実施形態における第1孔214に相当する第1孔214Xと、照明光を通過させるための第1実施形態における第2孔215に相当する第2孔215Xがそれぞれ設けられている。これらが一体となっていても良いのは第1実施形態の場合と同様である。
制御基板107は、第1実施形態の場合の制御基板107と基本的には同じで良いが、この実施形態による喉頭カメラは、例えばスマートフォンである可搬機器100を含まず喉頭カメラとしてのみ機能すれば十分なので、それに必要な機能を実現できるようになっていればそれで十分である。
図8に示した変形例による喉頭カメラの使用方法及び動作は、組立てられた後における第1実施形態の喉頭カメラの使用方法に同じである。
なお、この喉頭カメラから案内部材270を除き、第4実施形態に示したのと同様の方法による痰の吸引の用途や、或いは痰の吸引器と組合せず痰の吸引以外の用途にこの喉頭カメラを用いるようにすることもできる。他の変形例でも同様である。
【0028】
図8に示した喉頭カメラは、更に、図9図11にそれぞれ示された各変形例による喉頭カメラのように変形可能である。いずれの変形例の場合においても、特に説明しない部分の構成は、図8に示した変形例による喉頭カメラの構成に同じである。
図9図11に示した各変形例によるに喉頭カメラは、図8に示された変形例による喉頭カメラと同様に、本体部ケース210Xを備えている。本体部ケース210Xは、第1実施形態における可搬機器100の筐体101と、喉頭カメラユニット200の本体ケース210とを一体としたものであり、本願でいう本体部に相当するものである。
図9における変形例による喉頭カメラは、痰の吸引箇所の撮像を行うに必要な仕組みとして、像光伝達部材222を備えていない。第1実施形態の場合には、像光伝達部材222を用いて、ケース220の先端側から本願発明でいう本体部の一部をなす本体ケース210まで、痰の吸引箇所からケース220の先端側に至った像光自体を送るようになっており、本体ケース210と一体となっている可搬機器100に内蔵された撮像素子106によりその像光による撮像を行うことで、撮像素子106が動画像のデータを生成するようになっていた。これに対して、図9に示した変形例による喉頭カメラは、像光自体をケース220に沿って送ることをせず、ケース220の先端側の窓221に相当する部分に撮像素子106を配することにより、ケース220の先端側で撮像素子106による撮像を行うようにしている。撮像素子106は信号線105Aにより、本体部ケース210Xの内部にある制御基板107と接続されており、信号線106Aを介して撮像素子106から制御基板107へと、撮像素子106で生成された動画像のデータが送られるようになっている。つまり、この変形例においては、像光自体をケース220に沿って送る代わりに、像光から作られた動画像のデータをケース220に沿って送るようになっているのである。なお、ケース220の先端側に配置された撮像素子106の前方に、像光を撮像素子106に結像させるための適当な光学系(例えば少なくとも1つのレンズ)を配する等の工夫は、公知或いは周知技術に基づいて適当に行えば良い。
図9における変形例による喉頭カメラは、痰の吸引箇所に照明光を照射するのに必要な仕組みとして、照明光伝達部材223を備えていない。第1実施形態の場合には、本願発明でいう本体部の一部をなす可搬機器100に設けられている照明105からの光を、照明光伝達部材223を用いて、ケース220の基端側から先端側にケース220に沿って送るようになっていた。つまり、図8に示した変形例による喉頭カメラでは、ケース220の基端側から先端側まで、照明光自体を送るようになっていた。これに対して、図9に示した変形例による喉頭カメラは、照明光自体をケース220に沿って送ることをせず、ケース220の先端側の窓221に相当する部分に照明105を配することにより、ケース220の先端側から痰の吸引箇所に向かって照明光を照射させるものとしている。照明105は照明光を照射できるものであればどのようなものでもよく、第1実施形態と同様に例えばLEDとすることができる。照明105は電線105Aにより制御基板107に接続されており、制御基板107から電線105Aを介して電力の供給を受けられるようになっている。照明105は、制御基板107による制御下で点灯と消灯が選択されるようになっている。つまり、この変形例においては、照明光自体をケース220に沿って送る代わりに、電線105Aを介して電力をケース220に沿って送るようになっているのである。なお、ケース220の先端側に配置された照明105の前方に、照明光を適切に照射するのに適した適当な光学系(例えば少なくとも1つの反射鏡)を配する等の工夫は、公知或いは周知技術に基づいて適当に行えば良い。
上述したように、像光に関して言えば、ケース220に沿ってケース220の先端側から基端側に像光自体を送ることが可能である(図8に示した変形例)とともに、ケース220に沿ってケース220の先端側から基端側に像光の代わりに動画像のデータを送ることが可能である(図9に示した変形例)。また、照明光に関して言えば、ケース220に沿ってケース220の基端側から先端側に照明光自体を送ることが可能である(図8に示した変形例)とともに、ケース220に沿ってケース220の基端側から先端側に照明光の代わりに電力を送ることも可能である(図9に示した変形例)。
そして、上述の組合せは、入れ替えが可能である。
例えば、図10に示した変形例では、像光に関して言えば、ケース220に沿ってケース220の先端側から基端側に像光自体を送る構成が採用されるとともに、照明光に関して言えば、ケース220に沿ってケース220の基端側から先端側に照明光の代わりに電力を送る構成が採用されている。また、図11に示した変形例では、像光に関して言えば、ケース220に沿ってケース220の先端側から基端側に像光の代わりに動画像のデータを送る構成が採用されるとともに、照明光に関して言えば、ケース220に沿ってケース220の基端側から先端側に照明光自体を送る構成が採用されている。
図9図11に示した各変形例による喉頭カメラの使用方法、動作は、図8に示した変形例による喉頭カメラの使用方法、動作と変わらない。
なお、各変形例で説明したのと同様の変形を、各実施形態の喉頭カメラで採用することも特にそれが不可能な事情がない限り可能である。
【0029】
≪第2実施形態≫
第2実施形態の喉頭カメラユニット200について説明する。
第2実施形態の喉頭カメラユニット200は、第1実施形態の喉頭カメラユニット200とまったく同じものであるが、更に、図12に示したが如きカバー300を備えている。カバー300は薄い素材でできたカバー本体310と、カバー本体310に設けられた案内部材320とを備えている。この実施形態では、カバー本体310と案内部材320とは、多少の伸縮性を持つ透明な樹脂により、一体に形成されている。なお、後述するように、案内部材320は、第1実施形態の喉頭カメラにおける案内部材270と同様の機能を有するものである。第2実施形態ではカバー300に案内部材320を設けることに伴い、喉頭カメラユニット200における案内部材270を削除している。
カバー本体310は、例えば、薄くその全体の厚さが一様となるように構成されており、喉頭カメラユニット200のケース220の外形に応じた内形を有している。カバー本体310の後端は開口しているが、それ以外の部分ではカバー本体310は水密に構成されている。カバー本体310の内側にケース220を挿入することでカバー300によってケース220の全体を覆うことができるようになっている。カバー本体310の長さは、ケース220のうち口腔内に挿入されることが予定された部分をカバー本体310によって覆うことができるようになっていればよく、必ずしもケース220の全長をカバー本体310が覆うことまでは要さない。この実施形態では、ケース220の全長をカバー本体310が覆うことが可能となっている。
ケース220をカバー本体310で覆ったとき、ケース220に設けられた窓221もカバー本体310で覆われる。つまり、この実施形態の喉頭カメラユニット200と可搬機器100とを組合せて作った喉頭カメラを使用する場合には、像光と照明光とがカバー本体310を透過する。それを可能とするために、カバー本体310の少なくとも窓221を覆う部分は透明である必要がある。カバー300全体を透明な樹脂で形成すればそれを容易に実現できる。また、特に像光については、カバー300を通過するときに像光がその部位により異なる屈折を生じるなどすると、可搬機器100の撮像素子で得られる画像に例えば歪みが生じる等することがある。それを防ぐためにはカバー本体310の少なくとも窓221を覆う部分はその厚さが一様であるべきである。カバー本体310全体の厚さを一様とすれば、それを容易に実現できる。
【0030】
案内部材320は、チューブTを着脱自在に固定するためのものである。この実施形態では、断面略Cの字の筒状に案内部材320を構成することで、その内側にチューブTを変形させながら押し込むことでチューブTの固定をなすことができ、またその内側からチューブTを変形させながら引出すことで、チューブTの固定を解除することができるようになっている。
案内部材320は、喉頭カメラユニット200のケース220にカバー300が取付けられた場合に、ケース220が湾曲する方向と同じ方向に湾曲するようになっている。ただし、これには限られないがこの実施形態では、案内部材320の湾曲の曲率はケース220の湾曲の曲率よりも大きい。
【0031】
この喉頭カメラユニット200の使用方法、及び動作について説明する。
第2実施形態の喉頭カメラユニット200も、可搬機器100との組合せで喉頭カメラをなす。その組合せ方は第1実施形態の場合と同様である。
ただし、可搬機器100と喉頭カメラユニット200との固定との先後は問わないが、第2実施形態の場合には、喉頭カメラユニット200のケース220にカバー300を固定し、またカバー300の案内部材320に痰の吸引器のチューブを固定する。案内部材320にチューブを固定する場合には、案内部材320より先のチューブの長さが、チューブの先端を痰の吸引箇所Xに至らせるに十分な長さとなるようにする。
これ以降は、第2実施形態の喉頭カメラユニット200の使用方法、動作は第1実施形態の場合と変わらない。つまり、この喉頭カメラを使用する場合には、チューブは、より患者の負担が小さい口腔から喉頭カメラのケース220とともに患者の体内に挿入される。
ユーザは喉頭カメラごとチューブを操作する。案内部材320の曲率がケース220の曲率よりも大きくなっているので、チューブの先端は、患者の体内のより下方に向かうので、チューブの先端は、簡単に例えば喉頭8の付近である痰の吸引箇所Xに届く。
第2実施形態でも可搬機器100の照明105からの照明光によって患者の痰の吸引箇所Xを照明できることは第1実施形態と同じである。また、第2実施形態でも可搬機器100のカメラで痰の吸引箇所X及びチューブの先端を撮像することができることは第1実施形態と同じである。
ユーザは、ディスプレイ102に表示された画像を確認しながら、患者の痰の吸引を行えば良い。
【0032】
痰の吸引が終わったら、ユーザは喉頭カメラユニット200から可搬機器100を取り外すとともに、喉頭カメラユニット200のケースからカバー300を、またカバー300の案内部材320からチューブをそれぞれ取り外せば良い。カバー300は大して高価なものではなくすることも可能なので、そうすることにより使い捨てにすることもできる。
第2実施形態の場合においても、可搬機器100は、痰の吸引を行わないときには、その本来期待される使用方法で使用することができる。
【0033】
≪第3実施形態≫
第3実施形態の喉頭カメラユニット200について説明する。
第3実施形態の喉頭カメラユニット200は、第1実施形態の喉頭カメラユニット200と略同じである。第3実施形態の喉頭カメラユニット200が第1実施形態の喉頭カメラユニット200と異なるのは、像光伝達部材222と照明光伝達部材223とを覆うケース220が存在しないということである。
第3実施形態の喉頭カメラユニット200は、像光伝達部材222と照明光伝達部材223とがいわば剥き出しとなった状態となっている。像光伝達部材222と照明光伝達部材223は、本体ケース210の板部211に固定された支持ブロック250を貫通した状態で支持されている。像光伝達部材222と照明光伝達部材223の基端側の板部211に対する位置関係は第1実施形態と同じであり、板部211に第1孔214と第2孔215が存在することも第1実施形態と同じである。
第3実施形態における像光伝達部材222と照明光伝達部材223とが側面視した場合に、第1実施形態において存在したケース220と同じように湾曲している点は第1実施形態のそれらの場合と同様である。
しかしながら、第3実施形態における照明光伝達部材223は、平面視した場合に、その先端側の所定の範囲が像光伝達部材222に沿うようになっており、その途中の一部が緩やかに曲折している。照明光伝達部材223の曲折の程度は、例えば照明光伝達部材223が光ファイバである場合にはその光の伝達の性能に影響がでない範囲とする。そして、像光伝達部材222と照明光伝達部材223の先端側の互いに沿っている部分は、例えば接着などの適当な方法で互いに固定されている。
そして、第3実施形態の喉頭カメラユニット200では、像光伝達部材222と、照明光伝達部材223の少なくとも一方の先端側の所定の位置に案内部材270が取付けられている。
第3実施形態の喉頭カメラユニット200を用いて構成された喉頭カメラは、ケースがない分、患者の口腔内に挿入される部分(像光伝達部材222と照明光伝達部材223を併せたもの)を細くすることができるので、患者の負担をより軽減するに向く。ただし、像光伝達部材222と照明光伝達部材223の剛性が不足することも考えられるので、その場合には、像光伝達部材222と照明光伝達部材223の少なくとも一方に沿う剛性の高い細い部材により、像光伝達部材222と照明光伝達部材223の剛性を上げることも考慮すべきである。
かかる喉頭カメラユニット200の使用方法及び動作は、第1実施形態の場合と同様である。
【0034】
≪第4実施形態≫
第4実施形態の喉頭カメラは、第2実施形態の喉頭カメラからカバー300を除いたものである。カバー300を除いた喉頭カメラは案内部材320を有さない。したがって、喉頭カメラを用いてチューブを患者の体内の下方、例えば痰の吸引箇所に案内することができない。そのような喉頭カメラを可搬機器との組合せにより構成する喉頭カメラユニットを図14に示す。
かかる喉頭カメラは、例えば図15に示したようにして用いることができる。
この例による喉頭カメラは、痰の吸引を痰の吸引器を用いて行うにあたって、痰の吸引器が備えるチューブTと、痰の吸引箇所との相対的な位置関係を観察するために用いられる。この例では、鼻腔2からチューブTを挿入し、痰の吸引箇所までチューブTの先端を至らせるものとする。そのチューブTの先端を喉頭カメラで撮像して、痰の吸引箇所とチューブTの先端の位置を確認するのである。このときチューブTは、喉頭カメラとは独立して移動させられることになる。
なお、痰の吸引器とともに用いない場合、この喉頭カメラは単に、喉頭乃至その周辺を観察する用途に用いられることになる。
【符号の説明】
【0035】
100 可搬機器
102 ディスプレイ
104 レンズ
105 照明
106 撮像素子
107 制御基板
200 喉頭カメラユニット
210 本体ケース
211 板部
214 第1孔
215 第2孔
220 ケース
221 窓
222 像光伝達部材
223 照明光伝達部材
224 対物レンズ
225 反射部材
226 反射部材
270 案内部材
300 カバー
310 カバー本体
320 案内部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15