(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】ケラタン硫酸産生促進剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/882 20060101AFI20220608BHJP
A61K 8/97 20170101ALI20220608BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220608BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220608BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
A61K36/882
A61K8/97
A61P17/00
A61P43/00 105
A61Q19/02
(21)【出願番号】P 2016222523
(22)【出願日】2016-11-15
【審査請求日】2019-07-24
【審判番号】
【審判請求日】2021-01-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載日 平成28年8月25日 ウェブサイトのアドレス http://www.esdr2016.org/esdr-2016/news/programabstract-book
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第46回欧州皮膚科学会議(46th Annual European Society For Dermatological Research(ESDR)Meeting) 開催日 平成28年9月7~10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】生野 倫子
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 優子
【合議体】
【審判長】森井 隆信
【審判官】井上 典之
【審判官】岡崎 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-129267(JP,A)
【文献】特開2000-247897(JP,A)
【文献】特開2015-044788(JP,A)
【文献】特開2013-084081(JP,A)
【文献】再公表特許第2007/108475(JP,A1)
【文献】特開2002-179529(JP,A)
【文献】特開2002-179516(JP,A)
【文献】特開2001-335420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00 - 36/9068
A61K 8/00 - 8/99
A61P 1/00 - 43/00
A61Q 1/00 - 90/00
CAPLUS/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショウブ(Acorus calamus)根茎の極性溶媒抽出液からなる、ケラタン硫酸産生促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラタン硫酸産生促進剤、及びこれを含有する肌色改善用の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ケラタン硫酸は、硫酸基が付加した二糖の繰り返し構造からなるグリコサミノグリカンの一種である。ガラクトースとN-アセチルグルコサミンの二糖の繰り返し構造から成り、ガラクトース残基とN-アセチルグルコサミン残基の両方もしくは片方の6位炭素がO-硫酸化され、様々な鎖長及び硫酸化度の分子が存在する。ケラタン硫酸は、軟骨、角膜、皮膚等の比較的限定された組織に存在することが知られており、細胞表面と細胞外マトリックスの主要成分であるプロテオグリカンの一種であるルミカンの一部としても存在する。
近年、ケラタン硫酸の持つ様々な生理作用が注目されており、ケラタン硫酸を皮膚外用剤に含有させて、バリア機能改善効果や発毛促進効果等が得られることが報告されている(特許文献1~2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-160758号公報
【文献】特開2007-176957号公報
【文献】特開2008-094799号公報
【文献】特開2010-018594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ケラタン硫酸の生理作用を有効に発揮させるに際して、これまでに多く提案されてきたのはケラタン硫酸を生体の外部から適用する手段である。また、生体内でのグリコサミノグリカン産生を促進させてその存在量を増加させる方法についての報告は存在するが、ケラタン硫酸の産生を促進させてその存在量を増加させるかどうかは明らかとされていない(特許文献3~4)。
かかる状況を鑑み、本発明は、ケラタン硫酸産生促進剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ショウブ科ショウブ属に属する植物の抽出物が、真皮線維芽細胞においてルミカン及びケラタン硫酸の産生を促進させることを見出した。また、ショウブ科ショウブ属に属する植物抽出物を配合した化粧料を一定期間皮膚に塗布することにより、sRGB色空間(8bit)における肌色のR値、G値、B値が全て増加し、肌色が健康的に見えることをも見出した。さらに、皮膚においてケラタン硫酸の存在量が増加すると肌色のR値、G値、B値が増加し、肌色が健康的に見えることにつながることをも見出し、ケラタン硫酸産生促進剤が肌色改善用の組成物に好適であることに想到し、本発明を完成させた。
【0006】
本発明の第一の態様は、ショウブ科(Acoraceae Martinov)ショウブ属(Acorus)に属する植物の抽出液からなる、ケラタン硫酸産生促進剤である。
本態様において、前記ショウブ科ショウブ属に属する植物は、ショウブ(Acorus
calamus)であることが好ましい。
【0007】
本発明の第二の態様は、ケラタン硫酸産生促進剤を含有する、肌色改善用の組成物である。
本態様において、前記ケラタン硫酸産生促進剤は、ショウブ科ショウブ属に属する植物の抽出物であることが好ましく、ショウブの抽出物であることがより好ましい。
また、本態様の好ましい形態は皮膚外用組成物又は経口用組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、ケラタン硫酸産生促進剤が新たに提供される。また、ケラタン硫酸産生促進剤を含有する、肌色改善用の組成物が提供され、肌色を健康的に見せることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】参考例1における、溶媒対照(生理食塩水)、陽性対照(カルボキシフルオレセイン(CF))、及び各グリコサミノグリカンに300~600nmの励起光を照射した場合の、310~650nmの蛍光の強度を示す、二次元ヒートマップである。
【
図2】参考例1における、(a)溶媒対照、(b)陽性対照カルボキシフルオレセイン(CF)、(c)ケラタン硫酸(KS)の、特定励起波長における蛍光スペクトルを示すグラフである。
【
図3】参考例2における、各グリコサミノグリカンに可視光を照射した場合の、溶媒対照のR値、G値、B値との差を示すグラフである。なお、本項目のR値、G値、B値はsRGB色空間(8bit)を表す。
【
図4】実施例1における、ショウブ根抽出物による、(a)ケラタン硫酸、及び(b)ルミカンの産生促進効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第一の態様であるケラタン硫酸産生促進剤は、ショウブ科(Acoraceae Martinov)ショウブ属(Acorus)に属する植物の抽出液からなる。
ショウブ科ショウブ属に属する植物としては、ショウブ(Acorus calamus)、セキショウ(Acorus gramineus)、又はこれらの近縁種や変種等が挙げられるが、これらのうちショウブが好ましい。
【0011】
本発明における前記植物の抽出物は、日本において自生又は成育された植物、漢方生薬原料等として販売される日本産の物を用いて抽出物を作製することもできるし、丸善製薬株式会社等の植物抽出物を扱う会社より販売されている市販の抽出物を購入して使用することもできる。
【0012】
抽出に用いる部位としては前記植物の植物体、地上部、根茎部、又は種子のいずれでもよく、抽出に際してはこれらを予め粉砕又は細切することが、抽出効率を向上させる観点から好ましい。
抽出は、前記植物の植物体、地上部、根茎部、及び/又は種子の乾燥物1質量部に対して溶媒を1~30質量部加え、室温であれば数日間、溶媒の沸点付近の温度であれば数時間浸漬することにより行うことができる。浸漬後は、室温まで冷却し、所望により不要物を除去した後、溶媒を減圧濃縮等により除去すればよい。しかる後、シリカゲルやイオン交換樹脂を充填したカラムクロマトグラフィーなどで分画生成して、所望の抽出物を得ることができる。
抽出に用いる溶媒としては、極性溶媒が好ましく、例えば、水;エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;1,3-ブタンジオール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;及びジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類から選択される1種又は2種以上が好ましく挙げられる。
【0013】
本発明のケラタン硫酸産生促進剤は、生体内、例えば、皮膚、骨、軟骨等においてケラタン硫酸の産生を促進する効果を発揮する。一般にケラタン硫酸には、タンパク質との結合態様によりKS-I及びKS-IIが存在するが、本発明により産生が促進されるものはいずれにも限られない。
【0014】
本発明のケラタン硫酸産生促進剤の適用経路としては、経皮、経口、経鼻、静脈注射等、特に限定されないが、経皮又は経口で摂取されることが好ましい。
本発明のケラタン硫酸産生促進剤の適用量は、特に限定されないが、例えば、前記植物の抽出物の固形分として、1日当たり1~200mgを1回又は数回に分けて摂取されることが好ましい。
【0015】
本発明の第二の態様である肌色改善用の組成物は、ケラタン硫酸産生促進剤を含有する。
前記ケラタン硫酸産生促進剤は、特に限定されないが、ショウブ科ショウブ属に属する植物の抽出物であることが好ましく、ショウブの抽出物であることがより好ましい。なお、本態様におけるショウブ科ショウブ属に属する植物の抽出物については、前述の説明に準ずる。
【0016】
本態様において、「肌色改善」とは、sRGB色空間(8bit)における肌色のR値、G値、B値を全て増加させ、より健康的に見せることをいう。
すなわち、本発明の肌色改善用の組成物は、肌色を適用前よりも健康的に見えるようにする効果を発揮する。
【0017】
本発明者らは、後述の参考例1で示すように、ケラタン硫酸が蛍光作用を有することを新たに見出した。
ケラタン硫酸の蛍光作用は、広範な波長の励起光により蛍光を発し、また、励起波長により最大蛍光波長が変化するという特徴を有する。また、本発明者らの実験によると、ケラタン硫酸の蛍光作用は、励起波長が300nm以上500nm以下の場合に確認され、励起波長が350nm以上450nm以下の場合に強く蛍光を発し、励起波長が350nm以上400nm以下の場合に特に強く蛍光を発する。
【0018】
また、本発明者らは、後述の参考例2で示すように、ケラタン硫酸の蛍光作用により、ケラタン硫酸を含有した試料は、可視光照射時に、sRGB色空間(8bit)におけるR値、G値、B値全てを増加させることができることをも見出した。
【0019】
さらに、本発明者らは、R値、G値、及びB値のいずれもが増大すると、健康的で生き生きとした肌色に見えるようになることをも新たに見出し、特許出願を行った(特願2016-069406)。
ここで、健康的で生き生きとした肌色に見えるRGB値増加の程度は、特に限定されないが、例えば、R値、G値、B値の1つ以上が増大し、かついずれも減少しないことが好ましい。また、R値、G値、B値の全てが256階調(8bit)で表した場合に2階調以上増大し、かついずれかの値の増大を1としたときに他の値の増大が0.5~2の範囲にあることがより好ましい。
【0020】
したがって、ケラタン硫酸産生促進剤は、皮膚におけるケラタン硫酸の存在量を増加させることにより、肌色の改善に寄与するものである。
【0021】
また、本発明の肌色改善用の組成物の形態は、特に限定されないが、皮膚外用組成物又は経口用組成物であることが好ましい。
【0022】
皮膚外用組成物としては、化粧料、医薬部外品、医薬品などが好適に例示でき、日常的に使用できることから、化粧料、医薬部外品がより好ましい。また、その形態としては、ローション、乳化剤型、クリーム、ジェル、スプレー等、特に限定されず、定法により製造することができる。
【0023】
皮膚外用組成物には、通常使用される任意成分を含有させてもよい。かかる任意成分としては、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスなどの炭化水素類、ホホバ油、カルナウバワックス、オレイン酸オクチルドデシルなどのエステル類、オリーブ油、牛脂、椰子油などのトリグリセライド類、ステアリン酸、オレイン酸、レチノイン酸などの脂肪酸、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール、スルホコハク酸エステルやポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤類、アルキルベタイン塩等の両性界面活性剤類、ジアルキルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、これらのポリオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブタンジオール等の多価アルコール類、増粘・ゲル化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤等の紫外線防御剤、色剤、防腐剤、pH調整剤、粉体、各種有効成分等が好適に例示できる。
【0024】
これらの皮膚外用組成物に含有されるケラタン硫酸産生促進剤の量は、特に限定されないが、ケラタン硫酸産生促進剤がショウブ科ショウブ属に属する植物抽出物である場合は該抽出物の固形分として、組成物全体に対して0.001~5質量%であることが好ましく、0.01~0.5質量%であることがより好ましい。
【0025】
経口用組成物としては、飲食品、サプリメント(栄養補助食品)、医薬部外品、医薬品等が好適に例示でき、日常的に利用できることから、飲食品、医薬部外品がより好ましい。また、その形態としては、菓子類、パン類、麺類等の一般食品の他、ドリンク製剤、カプセル剤、錠剤、加硫剤、粉末剤、液剤等種々の剤型とすることができ、定法により製造することができる。
【0026】
経口用組成物には、生理的に許容できる任意成分を含有させてもよい。かかる任意成分としては、飲食品であれば、塩、砂糖、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、酢等の調味成分、着色成分、フレーバー等の矯臭成分、増粘剤、乳化・分散剤、保存料、安定剤、各種ビタミン類等が好適に例示できる。また、サプリメント、医薬部外品、医薬品であれば、結晶セルロースや乳糖等の賦形剤、アラビアガムやヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤、クロスカルメロースナトリウム、でんぷん等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、矯味・矯臭剤、着色剤、各種ビタミン類、pH調整剤等が好適に例示できる。
【0027】
これらの経口用組成物に含有されるケラタン硫酸産生促進剤の量は、特に限定されないが、ケラタン硫酸産生促進剤がショウブ科ショウブ属に属する植物抽出物である場合は該抽出物の固形分として、組成物全体に対して0.01~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましい。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例等により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
<参考例1:ケラタン硫酸の蛍光作用の評価>
ケラタン硫酸(KS)(PGリサーチ社製)を、生理食塩水に1質量%溶解させた試料を調製した。また、陽性対照として蛍光物質カルボキシフルオレセイン(CF)(Kodak社製)を用い、蛍光強度が検出閾値内に収まるよう生理食塩水で希釈した。溶媒対照としては、生理食塩水(NaClを蒸留水で0.9質量%に溶解したもの)を用いた。
調製した各試料を分光蛍光光度計 FP-8600(日本分光社製)に入れ、以下の条件で蛍光強度を測定した。
PMT電圧:1100V
励起波長:300~600nm
蛍光波長:310~650nm
【0030】
各試料の、励起波長及び蛍光波長の二次元ヒートマップを
図1に、特定励起波長における蛍光スペクトルを
図2にそれぞれ示す。
溶媒対照では蛍光作用は見られず、陽性対照では蛍光作用が確認された。ケラタン硫酸は蛍光作用を示し、またその蛍光波長の範囲が広いことが確認された。また、ケラタン硫酸は陽性対照と異なり、励起波長の変化に伴い、最大蛍光波長が変化する蛍光作用を有することも確認された。
【0031】
<参考例2:ケラタン硫酸の可視光照射時の反射光の評価>
参考例1と同様の試料を調製し、分光測色計CM-700d(コニカミノルタ社製)を用いて、D65標準光源下における、各試料の分光スペクトル及びXYZ色空間におけるX値、Y値、Z値を取得した。取得されたX値、Y値、Z値を、一般的な変換式(A Standard Default Color Space for the Internet - sRGB Version 1.10 November 5,1996参照)を用いて、sRGB色空間(8bit)におけるR値、G値、B値に変換した。各試料のR値、G値、B値から、溶媒対照のR値、G値、B値をそれぞれ減じ、R値、G値、B値の各差分(ΔR、ΔG、ΔB)を算出した。結果を
図3に示す。
図3に示される通り、ケラタン硫酸はR値、G値、B値の全てを増大させる作用を有することが分かる。
【0032】
<実施例1:ショウブ根抽出物のケラタン硫酸産生促進作用の評価>
ショウブ根抽出物によるケラタン硫酸産生促進作用を、以下の手順で評価した。
DMEM培地(SIGMA社製)を用い、正常ヒト真皮線維芽細胞を4ウェルチャンバープレートに5000 cells/ウェルで播種し37℃、5%CO
2環境下で培養した。翌日、培地を除去し、PBSにて細胞を洗浄後、ショウブ根抽出物(丸善製薬社製)又は溶媒対照(40%エタノール水溶液)を0.1質量%含むDMEM培地を加え、37℃、5%CO
2環境下にて16日間培養した。この間、2~3日間に1回培地交換を行った。以下、ショウブ根抽出物を添加した細胞をショウブ根抽出群、溶媒対照を添加した細胞を溶媒対照群と記す。
培養後の各群の細胞に対して、抗ケラタン硫酸抗体(メルクミリポア社製)又は抗ルミカン抗体(アブカム社製)を一次抗体として用いて、定法に従い免疫蛍光染色を実施した。染色後の各群の正常ヒト真皮線維芽細胞に対して、共焦点レーザースキャン顕微鏡を用いて視野の異なる複数の蛍光画像を取得した。画像編集ソフトにて各画像に二値化処理を施し、判別されたケラタン硫酸又はルミカンを発現しているエリアについて、各細胞あたりの発現ピクセル数を算出した。各群の全画像について、細胞あたりの発現ピクセル数の平均値を算出し、それを細胞あたりのケラタン硫酸またはルミカンの発現エリアとした。結果を
図4に示す。
図4に示される通り、ショウブ根抽出物により、ケラタン硫酸及びルミカンの産生が有意に促進されたことが分かる。
【0033】
<実施例2:ショウブ根抽出物の肌色改善作用の評価1>
ショウブ根抽出物の連用による塗布部位の肌色のR値、G値、B値の変化を、以下の手順で評価した。
男女計10名の被験者の前腕内側に1.5cm×1.5cmの試験部位を2箇所設けた。該試験部位の肌色を、分光測色計 CM-700d(コニカミノルタ社製)を用いて測定し、XYZ空間におけるX値、Y値、Z値を取得した。ショウブ根抽出物(丸善製薬社製)を40%エタノール水溶液で1%に希釈し、被験試料とした。各被験者は、該被験試料及び溶媒対照(40%エタノール水溶液)を1ヶ月間、1日2回(朝・夜)、各試験部位に塗布した。1ヶ月後に各試験部位の肌色を、連用前と同じ分光測色計を用いて測定し、XYZ空間におけるX値、Y値、Z値を取得した。連用前後のX値、Y値、Z値をそれぞれ、一般的な変換式(A Standard Default Color Space for the Internet - sRGB Version 1.10 November 5,1996参照)を用いて、sRGB色空間(8bit)におけるR値、G値、B値に変換した。連用後の肌色のR値、G値、B値から、連用前の肌色のR値、G値、B値をそれぞれ減じ、R値、G値、B値変化量(ΔR、ΔG、ΔB)を算出した。ΔR、ΔG、ΔBについて、被験者10名の各平均値を算出したものを表1に示す。
表1に示されるとおり、ショウブ根抽出物を連用した場合は、ΔR、ΔG、ΔBのいずれも2以上であり、R値、G値、B値が、塗布前の皮膚に対して何れも減少することなく、かつ塗布前の皮膚に対して何れか1種以上を増大させ、肌色をより健康的に見せる作用(肌色改善作用)を有することが分かる。
【0034】
【0035】
<実施例3:ショウブ根抽出物の肌色改善作用の評価2>
ショウブ根抽出物の連用による塗布部位の肌色の変化を、以下の手順で評価した。
表2に記載の処方に従って、本発明の組成物である化粧料を作製した。すなわち、全成分を80℃に加熱し、撹拌し、溶解させた後、撹拌冷却してローションを得た。
男女各3名を被験者とし、それぞれの顔全体を、デジタルカメラD100(ニコン社製)を用いてマニュアルモードで撮影した。各被験者は、前記ローションを1ヶ月間、1日2回(朝・夜)、顔全体に塗布した。1ヶ月後に連用前と同条件で顔全体を撮影した。連用前後の顔画像をパソコンディスプレイに並列表示させ、連用前後のいずれの画像が、肌色がより健康的に見えるかを3名の評価者が判定した。評価者全員が、連用後の方がより健康的に見えると判定した場合に○、評価者のうち1名以上が連用前の方がより健康的に見えると判定した場合に×とした結果を、表3に示す。
表3に示されるとおり、ショウブ根抽出物を連用した場合は、6名全ての顔面の画像について、連用後により健康的に見えるという評価結果になった。したがって、本試験からもショウブ根抽出物は、肌色をより健康的に見せる作用(肌色改善作用)を有することが分かる。
【0036】
【0037】
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明により、ケラタン硫酸産生促進剤が新たに提供される。また、ケラタン硫酸産生促進剤を含有する、肌色改善用の組成物が提供され、肌色を健康的に見せることが可能となる。該組成物は、化粧料やサプリメント等に好適に利用できるため、産業上有用である。