(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】パネル体の取付方法
(51)【国際特許分類】
E04B 2/90 20060101AFI20220608BHJP
E06B 1/60 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
E04B2/90
E06B1/60
(21)【出願番号】P 2017078092
(22)【出願日】2017-04-11
【審査請求日】2019-10-24
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 辰雄
【合議体】
【審判長】森次 顕
【審判官】藤脇 昌也
【審判官】前川 慎喜
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-194010(JP,U)
【文献】特開2016-94972(JP,A)
【文献】実公平7-50490(JP,Y2)
【文献】特開平9-49371(JP,A)
【文献】特開平11-324498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/56 - 2/70, 2/88 - 2/96
E06B 1/60
E06B 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程を
順番に行うことを特徴とするパネル体の取付方法。
1.枠組みされた複数のパネル体
同士の縦枠を左右に隣接した状態で各パネル体の上枠及び下枠を躯体に固定
し、パネル体の外周側の屋外側位置に取り付けた乾式シール材でパネル体の縦枠間、上枠と躯体間及び下枠と躯体間をシールする枠固定工程。
2.左右に隣接するパネル体の
外周側の乾式シール材よりも屋内側位置において、
縦枠間、上枠と躯体間及び下枠と躯体間を
屋内側から湿式シール材でシールして当該湿式シール材を連続させるシール工程。
3.左右に隣接するパネル体の縦枠に跨って屋内側から方立を取り付ける方立取付工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル体の取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、左右に隣接して設けたパネル体において、パネル体の周囲に乾式のガスケットを設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】第248頁「三協アルミ ビル建材/カーテンウォール 総合カタログ カーテンウォール」カタログNo.STB0501A 三協立山株式会社 三協アルミ社 2016年 9月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、パネル体の周囲に乾式のガスケットを取り付ける場合、隣り合う縦枠間、上枠と躯体間及び下枠と躯体間での取付誤差によって、パネル体の周囲における水密性の確保が難しくなるおそれがあった。
これに対して、パネル体を左右に隣接して設ける場合に、パネル体周囲の水密性能を安定的に確保できるものが求められていた。
【0005】
そこで、本発明は、パネル体周囲の水密性能を安定的に確保できるパネル体の取付方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、次の工程を順番に行うことを特徴とするパネル体の取付方法である。
1.枠組みされた複数のパネル体同士の縦枠を左右に隣接した状態で各パネル体の上枠及び下枠を躯体に固定し、パネル体の外周側の屋外側位置に取り付けた乾式シール材でパネル体の縦枠間、上枠と躯体間及び下枠と躯体間をシールする枠固定工程。
2.左右に隣接するパネル体の外周側の乾式シール材よりも屋内側位置において、縦枠間、上枠と躯体間及び下枠と躯体間を屋内側から湿式シール材でシールして当該湿式シール材を連続させるシール工程。
3.左右に隣接するパネル体の縦枠に跨って屋内側から方立を取り付ける方立取付工程。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、パネル体の上枠及び下枠を躯体に固定した後、左右に隣接するパネル体の縦枠間、上枠と躯体間及び下枠と躯体間を連続してシールするので、パネル体周囲に連続したシールが可能となり、パネル体周囲の水密性を安定的に確保できる。
また、パネル体を躯体に固定するため、シール工程後にパネル体に取り付ける方立にはそれほど強度を負担させる必要がなく、方立の見付寸法を小さくして意匠性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態にかかるパネル体の取付方法を工程毎に示す横断面図であり、(a)は枠固定工程、(b)は上枠及び下枠のシール工程、(c)は縦枠のシール工程である。
【
図2】方立取付工程における方立の嵌め合いの開始から終了までを順次示す横断面図である。
【
図3】本実施の形態にかかるパネル体の取付方法を工程毎に示す斜視図であり、(a)は枠固定工程、(b)はシール工程、(c)は方立取付工程、(d)はパネル取付工程である。
【
図6】本実施の形態にかかるパネル体の取付方法を用いたカーテンウォールの図であり、(a)は正面図、(b)は(a)に示すC-C断面図、(c)は(a)に示すD-D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図6に示すように、本発明の実施の形態にかかるパネル体の取付方法は、カーテンウォール1の施工に用いられるものであり、カーテンウォール1は、上側躯体3aと下側躯体3bとの間で、パネル体5が左右に連接されている。
図4及び
図5に示すように、各パネル体5は、枠7と、パネル11とで構成されている。
枠7は、上枠13、下枠15、右縦枠17a及び左縦枠17bとで枠組みしてある。また、
図5に示すように、枠7には、枠7の一番右に位置する(
図5において屋外側から見て右)右縦枠17aと一番左に位置する左縦枠17b間に縦骨18が設けてあり、一番右に位置する右縦枠17aと縦骨18間及び縦骨18と一番左に位置する左縦枠17bとの間に各々パネル11が嵌め込まれている。即ち、本実施の形態では、パネル体5は、2スパンで1ユニットとしてある。
隣合うパネル体5、5では、隣り合う左右の縦枠17b、17aに跨って方立9が取付けてあり、縦骨18にも方立9が取付けてある。
【0010】
一方、
図4に示すように、上側躯体3a及び下側躯体3bには、各々ベースプレート19が埋め込まれており、ベースプレート19には、ブラケット21が固定されている。
上枠13には、ボルト23の頭23aを摺動自在に保持するボルト保持溝25が形成されており、上枠13のボルト23は上側躯体3aのブラケット21にナット27で固定されている。
同様に、下枠15にもボルト23の頭23aを摺動自在に保持するボルト保持溝25が形成されており、下枠15のボルト23は下側躯体3aのブラケット21にナット27で固定されている。
【0011】
図5に示すように、隣り合わせに配置したパネル体5、5は、一方のパネル体5の右縦枠17aと他方のパネル体5の左縦枠17bとが対向して配置してあり、対向する右縦枠17aと左縦枠17bとには、各々屋内側に突設した屋内側突設部29が形成されている。各屋内側突設部29の屋内側端部には、各々左方向(
図5の紙面の左方向)に開口した溝状の係合部28が設けてある。
更に、右縦枠17aには、屋内側に突設する断面略L字形状の補助係合部32が形成されている。
縦骨18には、左右の縦枠17b、17aと同様に、係合部28が形成された屋内側突設部29が設けてある。縦骨18には、屋外側からパネル11を止める押縁20が係合されている。
方立9には、係合部28に係合する2つの被係合部30が形成されている。各被係合部30は、各縦枠17b、17a又は縦骨18の係合部28に左側から係合する突起である。更に、方立9の屋外側端には、補助係合部32に係合する補助被係合部34が形成してある。
また、
図1(c)に示すように、右縦枠17aの屋内側突設部29には左連結片31aが設けてあり、左縦枠17bの屋内側突設部29には右連結片31bが設けてあり、右連結片31aと左連結片31bを重合して屋内側から止めるビス33で固定されている。
図5に示すように、左右の縦枠17b、17a間に取り付ける方立9は、その左側面には、方立9と下枠15との間にブラケット35が設けてあり、ブラケット35は方立9に固定した先付けビス37aと下枠15に固定した後付けビス37bとにより固定されている。尚、先付けビス37aは工場でブラケット35と共に方立9に固定してあり、後付けビス37bは施工現場で取り付けてある。
縦骨18に取り付ける方立9内には、方立9の上端部と下端部とに各々補強材22が設けてある。各補強材22は、各上枠13及び下枠15に固定したブラケット24を介してボルト26aとナット26bで方立9内に固定してある。
一方、
図4に示すように、枠7の内周には屋内側及び屋外側に設けた定型シール材51を介してパネル11が取付けられている。
【0012】
次に、パネル体5の周囲のシールについて説明する。
図4に示すように、上枠13と上側躯体3aとの間は、上枠13の長手方向全域に亘って、屋外側にバックアップ材41、バックアップ材41の屋内側に長手方向シール材42が充填されている。上枠13の左右端部において各縦枠17b、17aに対応する位置には、長手方向シール材42の屋内側に上シール材43が充填されている。長手方向シール材42及び上シール材43は湿式シール材である。上シール材43はその屋内側端が左右の縦枠17b、17aの係合部28に対応する位置まで充填されている。
下枠15と下側躯体3bとの間は、下枠15の長手方向全域に亘って、屋外側にバックアップ材41、バックアップ材41の屋内側にバックアップ材41の屋内側に長手方向シール材42が充填されている。下枠15の左右端部において各縦枠17b、17aに対応する位置には、長手方向シール材42の屋内側に下シール材45が充填されている。下シール材45は湿式シール材である。下シール材45はその屋内側端が左右の縦枠17b、17aの係合部28に対応する位置まで充填されている。
隣り合う左縦枠17bの屋内側突設部29と右縦枠17aの屋内側突設部29との間には、左右の連結片31a、31bの重合部の屋内側に縦シール材47が充填されている(
図1(c)参照)。縦シール材47は、左右の縦枠17b、17aの長手方向に亘って充填されていると共に、上端は上シール材43に、下端は下シール材45に接合されている。
即ち、上シール材43、下シール材45、左右の縦シール材47で、枠7の屋内側部の外周に連続したシールが施されている。
尚、上枠13及び下枠15には、各屋外側に乾式シール材49が各枠13、15の長手方向に亘って取付けてあり、上枠13と上側躯体3aとの間及び下枠15と下側躯体3bとの間の屋外側をシールしてある。また、隣り合う左右の縦枠17b、17a間にも、右縦枠17aの屋外側に乾式シール材49が長手方向に取付けてあり、左右の縦枠17b、17a間の屋外側をシールしている。
即ち、上枠13、下枠15及び左右の縦枠17b、17aの屋外側は乾式シール材49で、枠7の屋外側の外周に連続したシールが施されている。
【0013】
次に、
図1~
図3を参照して、パネル体5の取付方法について説明する。本実施の形態にかかるパネル体5の取付は以下の工程で行う。
1.枠固定工程
図1(a)及び
図3(a)に示すように、上枠13、下枠15、左右の縦枠17b、17a及び縦骨18を枠組みした枠7を、上側躯体3aと下側躯体3bとの間に搬入する。
尚、上枠13、下枠15及び右縦枠17a(
図1(c)に示す左側の縦枠)には、その外側にシール材49が取付けてある。
次に、上枠13のボルト保持溝25にボルト頭23aを係合したボルト23を上側躯体3aのブラケット21にナット27で固定し、同様に、下枠15のボルト保持溝25にボルト頭23aを係合したボルト23を下側躯体3bのブラケット21にナット27で固定する。
このようにして、各パネル体5の枠7を上側躯体3aと下側躯体3bとの間で左右に隣り合わせにして順次固定する。
図1(c)に示すように、隣合う左右の縦枠17b、17a間では、左連結片31aと右連結片31bとを重合して、屋内側からビス33で止める。
【0014】
2.シール工程
図1(b)及び
図3(b)に示すように、各枠7の上枠13と上側躯体3aとの間に屋内側からバックアップ材41を取り付け、その屋内側に長手方向シール材42を上枠13の長手方向に亘って充填し、更に長手方向の左右端部では長手方向シール材42の屋内側に上シール材43を充填する。また、下枠15と下側躯体3bとの間に、屋内側からバックアップ材41を取り付け、その屋内側に長手方向シール材42を下枠15の長手方向に亘って充填して、更に長手方向の左右端部では長手方向シール材42の屋内側に下シール材45を充填する。
このようにして、上枠13と上側躯体3aとの間及び下枠15と下側躯体3bとの間をシールする。
次に、
図1(c)に示すように、隣合う左右の縦枠17b、17a間において、左右の連結片31a、31bとの重合部に屋内側から縦シール材47を充填する。
縦シール材47は縦枠17b、17aの長手方向に亘って充填し、縦シール材47の上端は上シール材43に接合し、下端は下シール材45に接合する。
これにより、
図4に示すように、上シール材43、下シール材45及び縦シール材47で、枠7の四周に連続したシールを施す。
【0015】
3.方立取付工程
図2(a)に示すように、方立9には、ブラケット35が先付けビス37aで止めてある。
図3(c)及び
図2(a)に示すように、枠7の屋内側から、方立9を左右に隣接する左右の縦枠17b、17aに向けて配置する。
図2(b)に示すように、左右の縦枠17b、17aの屋内側突設部29に被せるようにして方立9の屋外側部を配置し、屋内側突設部29の係合部28に方立9の被係合部30を左右に対向させる。
次に、
図2(c)(d)に示すように、方立9を右方向(
図2の紙面において右)にスライドさせて、左右の縦枠17b、17aの係合部28に方立9の被係合部30を係合する。同時に右縦枠17aに設けた補助係合部32に方立9の補助被係合部34が係合する。
その後、方立9の上側と下側では、上側に先付けビス37aで止めてあるブラケット35は後付けビス37bで上枠13に、下側に先付けビス37aで止めてあるブラケット35は後付けビス37bで下枠13に固定する(
図5参照)。
【0016】
4.パネル取付工程
図3(d)に示すように、屋外側から枠7の内周側で縦骨18の左右にそれぞれパネル11を搬入し、
図4に二点鎖線で示すように、パネル11をけんどん方式で枠7内に嵌め入る。その後、
図5に矢印Tで示すように、縦骨18の左右に配置した各パネル11は、縦骨18から離れる方向にスライドし、縦骨18に押縁20を止めた後、左右の縦枠17b、17a及び縦骨18の室外側に定型シール材51を取り付ける。尚、枠7の室内側に設けてあるバックアップ材52はパネル11を嵌め入れる前に取り付けておく。
その後、パネル11の四周において、上枠13、左右の縦枠17b、17a及び下枠15の屋内側に湿式シール材53を充填する。
【0017】
次に、本実施の形態にかかる作用、効果について説明する。
図1(a)に示すように、上述した実施の形態にかかるパネル体の取付方法によれば、枠7の上枠13を上側躯体3aに下枠15を下側躯体3bに固定した後、
図4に示すように、上枠13と上側躯体3a間及び下枠15と下側躯体3b間と、左右に隣接する枠7の縦枠17b、17a間を連続して上シール材43、下シール材45、縦シール材47でシールするので、枠7の周囲に連続したシールが可能となり、枠7の周囲の水密性を安定的に確保できる。
また、枠7を上側躯体3aと下側躯体3bとに固定するため、シール工程後に枠7に取り付ける方立9にはそれほど強度を負担させる必要がなく、方立9の見付寸法を小さくして意匠性を向上させることができる。
【0018】
図1(c)に示すように、隣り合うパネル体5、5の縦枠17b、17a間は、縦枠17b、17aの屋内側部にある連結片31a、31bどうしを重合して屋内側からねじ止めした後、重合部に屋内側からシールしている。このように、隣り合う縦枠17b、17a間で、縦枠17a、17bの屋内側部どうしを重合する為、方立9の見付寸法を小さくできる。また、重合した部分をシール材47でシールするため、水密性を高めることができる。
【0019】
図2(c)(d)に示すように、方立9は、隣り合う左右の縦枠17b、17aにスライドにより係合して取り付けているので、取り付けが容易にできる。
また、方立9は係合部28を縦枠17b、17aの被係合部30に係合し、補助係合部32を一方の縦枠17aの補助被係合部34に係合して3箇所で係合しているので、簡易な構成で、縦枠17a、17bと方立9との取付強度を高めることができる。
縦シール材47は湿式シール材としているので、パネル体5の四周に密着性の高い連続したシールを施すことができる。
パネル体5は、左右の縦枠17b、17a間に縦骨18を配置した枠7を用いて、2スパン1ユニットとして、取り付けるユニット数を軽減しているので、組立コスト及び施工コストを軽減できる。
パネル11は、縦骨18には押縁20で取り付け、左右の縦枠17b、17aには押縁20を用いないで取り付けているので、見付の外観がシャープで良好な外観を得ることができると共に部品点数の削減を図ることができる。
【0020】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
例えば、パネル11は、
図1(a)に示す枠固定工程後で、
図1(b)に示すシール工程前に枠7に取り付けても良いし、枠固定工程前に枠7に取り付けても良い。
【符号の説明】
【0021】
3a 上側躯体(躯体)
3b 下側躯体(躯体)
5 パネル体
7 枠
9 方立
13 上枠
15 下枠
17a 右縦枠
17b 左縦枠
43 上シール材
45 下シール材
47 縦シール材