(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】ショベルおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20220608BHJP
【FI】
E02F9/20 C
(21)【出願番号】P 2017556382
(86)(22)【出願日】2016-10-06
(86)【国際出願番号】 JP2016079835
(87)【国際公開番号】W WO2017104238
(87)【国際公開日】2017-06-22
【審査請求日】2019-07-19
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-23
(31)【優先権主張番号】P 2015247017
(32)【優先日】2015-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】岡田 純一
【合議体】
【審判長】森次 顕
【審判官】奈良田 新一
【審判官】西田 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-163155(JP,A)
【文献】国際公開第2011/049079(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショベルであって、
走行体と、
前記走行体に回動自在に設けられる上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられたアタッチメントと、
前記ショベルの運動を検出するセンサと、
前記アタッチメントによる掘削作業中に、前記センサの出力にもとづき、前記アタッチメントの延長方向の前記走行体の滑りを検出し、前記アタッチメントの動作を補正する滑り抑制部と、
を備えることを特徴とするショベル。
【請求項2】
前記センサは、前記上部旋回体に設けられ、前記アタッチメントの延長方向に検出軸を有する加速度センサを含むことを特徴とする請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記加速度センサは、前記アタッチメントのブームの根元と前記上部旋回体の旋回軸の間の領域に配置されることを特徴とする請求項2に記載のショベル。
【請求項4】
前記滑り抑制部は、前記加速度が所定のしきい値を超えると、前記アタッチメントの動作を補正することを特徴とする請求項2または3に記載のショベル。
【請求項5】
前記滑り抑制部は、前記アタッチメントの少なくともひとつの軸のトルクを減少させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のショベル。
【請求項6】
前記少なくともひとつの軸は、アーム軸を含むことを特徴とする請求項5に記載のショベル。
【請求項7】
前記滑り抑制部は、前記少なくともひとつの軸のシリンダ圧をリリーフすることを特徴とする請求項5または6に記載のショベル。
【請求項8】
前記滑り抑制部は、前記少なくともひとつの軸のシリンダへの制御圧を変化させることを特徴とする請求項5または6に記載のショベル。
【請求項9】
前記滑り抑制部は、油圧系統のメインポンプの出力を低下させることを特徴とする請求項5に記載のショベル。
【請求項10】
前記滑り抑制部は、エンジンの回転数を低下させることを特徴とする請求項5に記載のショベル。
【請求項11】
前記滑り抑制部は、前記アタッチメントの少なくともひとつの軸を変位させることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のショベル。
【請求項12】
前記滑り抑制部は、滑りを検出すると、ある補正期間の間、補正を行い、その後、オペレータの入力にもとづく状態に戻すことを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載のショベル。
【請求項13】
前記センサは、角速度を検出する角速度センサをさらに含み、
前記滑り抑制部は、前記角速度センサおよび前記角速度センサの出力にもとづいて、前記走行体の滑りを検出することを特徴とする請求項2または3に記載のショベル。
【請求項14】
アタッチメントを有するショベルの制御方法であって、
アタッチメントによる掘削作業中において、センサが前記アタッチメントの延長方向に沿った前記ショベルの走行体の加速度を検出するステップと、
前記加速度が所定のしきい値を超えると、
前記走行体の滑りが抑制されるように、前記アタッチメントの動作を補正するステップと、
を備えることを特徴とする制御方法。
【請求項15】
ショベルであって、
走行体と、
前記走行体に回動自在に設けられる上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられたアタッチメントと、
前記アタッチメントによる掘削作業中に、前記走行体の位置が変位すると、
前記走行体の滑りが抑制されるように、前記アタッチメントの動作を補正する制御装置と、
を備えることを特徴とするショベル。
【請求項16】
前記アタッチメントの操作レバーが操作状態にあり、かつ前記走行体および前記旋回体が非操作状態にあることが、前記アタッチメントによる掘削作業中であることの必要条件であることを特徴とする請求項15に記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
ショベルは、主として走行体(クローラ、ロワーともいう)、上部旋回体、アタッチメントを備える。上部旋回体は走行体に対して回動自在に取り付けられており、旋回モータによって位置が制御される。アタッチメントは上部旋回体に取り付けられており、作業時に使用される。
【0003】
ショベルが軟土壌等の弾性係数の低い脆いフィールドで使用される場合、あるいは摩擦係数が小さいフィールドで使用される場合、ショベルの滑りが問題となる。たとえば特許文献1には、走行時の走行体の滑り防止に関する技術が開示される。たとえば特許文献2には、旋回時の走行体の滑り防止に関する技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-64024号公報
【文献】特開2014-163155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、ショベルについて検討した結果、以下の課題を認識するに至った。掘削や破砕、均しなどのアタッチメントを用いた作業中において、走行体はアタッチメントからの反力を受ける。反力が大きくなると、走行体に滑りが生ずるおそれがある。従来では、作業中に走行体が滑ると、滑りを知覚したオペレータが、アタッチメントの動作を停止させる必要があり、これは作業効率の低下を招くという問題があった。あるいはオペレータは、経験に基づいて滑りが生じないようにアタッチメント動作を微調節する必要があったが、滑り防止をオペレータの操作に委ねると、未熟なオペレータが走行体を滑らせる可能性もある。
【0006】
従来の滑り防止は、旋回時や走行時を対象としたものであり、アタッチメント動作については何の配慮もされていなかった。
【0007】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、アタッチメントの動作に起因する滑りの抑制機構を備えたショベルの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様はショベルに関する。ショベルは、走行体と、走行体に回動自在に設けられる上部旋回体と、上部旋回体に取り付けられたアタッチメントと、ショベルの運動を検出するセンサと、センサの出力にもとづき、アタッチメントの延長方向の走行体の滑りを検出し、アタッチメントの動作を補正する滑り抑制部と、を備える。
【0009】
アタッチメントのブーム、アーム、バケットは、同一平面内に位置することから、アタッチメントの動作時に、アタッチメントからの反力は、ショベルの本体(走行体および上部旋回体)に対して、アタッチメントの延長方向に作用する。言い換えれば、この方向への滑りが生じているとき、その滑りは、アタッチメントの動作に起因するものであると推定される。この態様によれば、アタッチメントの動作に起因する滑りを検出し、その結果に応じて、アタッチメントの動作を補正することにより、滑りを抑制できる。
【0010】
アタッチメントのシリンダの圧力検知情報にもとづいて間接的に滑り検出する場合、遅延が生ずる。これに対してセンサによってショベル本体の滑りを直接的に検出することにより、検出遅延を短縮でき、迅速な対処が可能となる。
【0011】
センサは、上部旋回体に設けられ、アタッチメントの延長方向に検出軸を有する加速度センサを含んでもよい。
この場合、上部旋回体の旋回方向(位置)にかかわらず、アタッチメントの延長方向の運動を直接的に検出できる。
【0012】
加速度センサは、アタッチメントのブームの根元と上部旋回体の旋回軸の間の領域に配置されてもよい。
アタッチメントが上部旋回体に及ぼす力の作用点は、ブームの根元である。したがってブームの根元に加速度センサを設けることで、アタッチメントの動作に起因する滑りを好適に検出できる。ここで加速度センサが旋回軸から遠ざかると、加速度センサの出力は、上部旋回体の旋回運動による遠心力の影響を受けてしまう。そこで加速度センサを、ブームの根元の近傍であって、かつ旋回軸の近傍に配置することで、旋回運動の影響を低減し、アタッチメントの動作に起因する滑りを検出できる。
【0013】
センサは、角速度を検出する角速度センサをさらに含んでもよい。滑り抑制部は、角速度センサおよび角速度センサの出力にもとづいて、走行体の滑りを検出してもよい。
加速度センサの出力は、特定方向の滑り(直進運動)だけでなく、ピッチング方向、ヨーイング方向、ローリング方向の回転運動の成分も含みうる。この態様によれば、角速度センサを併用することで、滑り運動のみを抽出することが可能となる。
【0014】
補正部は、加速度が所定のしきい値を超えると、アタッチメントの動作を補正してもよい。
これにより、滑りが生じていないときには、アタッチメントは、オペレータの入力にもとづいて通常動作し、滑りが生じているときにのみ、補正をかけることができる。
【0015】
補正部は、アタッチメントの少なくともひとつの軸のトルク(力)を減少させてもよい。
アタッチメントの発生する力を減少すると、走行体に対してアタッチメントの延長方向に作用する力Fが低減し、滑りが収まる。滑りが収まると、アタッチメントの力を元に戻したとしても、最大静止摩擦力を超えない限り、滑りは生じない。したがってトルクの減少を短い時間スケールで行うことにより、オペレータに違和感やストレスを与えることなく、滑りを抑制することができる。
【0016】
少なくともひとつの軸は、アーム軸を含んでもよい。本発明者が検討したところ、アタッチメントの動作に起因する滑りの主要因は、アームの動作に起因するものであるという知見が得られた。そこでアーム軸のトルク(力)を低減することで、滑りを好適に抑制できる。
【0017】
滑り抑制部は、少なくともひとつの軸のシリンダ圧をリリーフしてもよい。これによりその軸の発生するトルク(力)を低減できる。
【0018】
補正部は、少なくともひとつの軸のシリンダへの制御圧を変化させてもよい。これによりその軸の発生するトルク(力)を低減できる。
【0019】
補正部は、油圧系統のメインポンプの出力を低下させてもよい。補正部は、エンジンの回転数を低下させてもよい。
これにより、すべての軸のトルクを一様に低下させることができる。
【0020】
補正部は、アタッチメントの少なくともひとつの軸を変位させてもよい。
これにより、アタッチメントの姿勢を変えて、アタッチメントが発生する力(ベクトル)の向きを変えることができ、走行体を滑らせる方向の力を低減し、および/または、走行体を地面に押しつけて垂直抗力を増加させることができる。
【0021】
補正部は、滑りを検出すると、ある補正期間の間、補正を行い、その後、オペレータの入力にもとづく状態に戻してもよい。補正期間は、数ms~数百msの時間スケールであってもよい。
【0022】
センサは、画像センサであってもよい。滑り抑制部は、画像センサの出力にもとづき、アタッチメントの延長方向の走行体の滑りを検出してもよい。
【0023】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ショベルの走行体の滑りを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施の形態に係る建設機械の一例であるショベルの外観を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態に係るショベルのアタッチメントの制御ブロック図である。
【
図3】
図3(a)、(b)は、アタッチメントの動作に起因するショベルの滑りを説明する図である。
【
図4】
図4(a)~(d)は、ショベルの滑りを説明する図である。
【
図5】実施の形態に係る滑り補正のフローチャートである。
【
図6】
図6(a)、(b)は、センサの取り付け箇所の一例を説明する図である。
【
図7】第1の補正方式による滑り防止を示す波形図である。
【
図9】第1実施例に係るショベルの電気系統および油圧系統のブロック図である。
【
図10】第2実施例に係るショベルの電気系統および油圧系統のブロック図である。
【
図11】第3実施例に係るショベルの電気系統および油圧系統ブロック図である。
【
図12】第4実施例に係るショベルの電気系統および油圧系統ブロック図である。
【
図13】第5実施例に係るショベルの電気系統および油圧系統ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0027】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0028】
図1は、実施の形態に係る建設機械の一例であるショベル1の外観を示す斜視図である。ショベル1は、主として走行体(ロワー、クローラともいう)2と、走行体2の上部に旋回装置3を介して回動自在に搭載された上部旋回体4と、を備えている。
【0029】
上部旋回体4には、アタッチメント12が取り付けられる。アタッチメント12は、ブーム5と、ブーム5の先端にリンク接続されたアーム6と、アーム6の先端にリンク接続されたバケット10とが取り付けられている。バケット10は、土砂、鋼材などの吊荷を捕獲するための設備である。ブーム5、アーム6、及びバケット10は、それぞれブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によって油圧駆動される。また、上部旋回体4には、バケット10の位置や励磁動作および釈放動作を操作するオペレータ(運転者)を収容するための運転室4aや、油圧を発生するためのエンジン11といった動力源が設けられている。エンジン11は、例えばディーゼルエンジンで構成される。
【0030】
図2は、実施の形態に係るショベル1のアタッチメント12の制御ブロック図である。ショベル1は、油圧アクチュエータ500、駆動手段502、センサ504および滑り抑制部510を備える。各ブロックの機能は、電気的または機械的、もしくはそれらの組み合わせによって実現されるものであり、各ブロックの構成および機能の実現方法は限定されない。
【0031】
油圧アクチュエータ500は、
図1のアタッチメント12を駆動するアクチュエータであり、具体的には、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9を含む。実際には、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9の制御は独立に行われるが、ここでは簡略化してひとつの制御系として示す。操作装置26は、オペレータの操作入力を受け、油圧アクチュエータ500に対する指令値S1を生成する。実際には指令値S1は、ブーム軸、アーム軸、バケット軸について個別に生成されるが、ここではひとつの信号線として示す。駆動手段502は、指令値S1にもとづいて油圧アクチュエータ500を駆動する。
【0032】
センサ504は、ショベル1の本体の運動を検出する。センサ504は、ショベル1の走行体2の滑りを検出できればよく、その種類や構成は特に限定されない。またセンサ504は、複数のセンサの組み合わせであってもよい。好ましくはセンサ504は、上部旋回体4に設けられた加速度センサや速度センサを含んでもよい。加速度センサや速度センサの検出軸の方向は、アタッチメント12の延長方向(
図3(a)、(b)の方向L1)と一致させることが望ましい。
【0033】
滑り抑制部510は、センサ504の出力S2にもとづき、アタッチメント12の延長方向の走行体2の滑りを検出し、滑りが抑制されるように補正指令S3を生成し、補正指令S3にもとづいて駆動手段502による油圧アクチュエータ500の制御を補正し、これによりアタッチメント12の動作を補正する。なお、センサ504の出力S2には、滑りに起因する成分の他に、振動に起因する成分、旋回に起因する成分、外乱に起因する成分などが含まれうる。滑り抑制部510は、センサ504の出力S2から、滑り運動において支配的な周波数成分のみを抽出し、そのほかの周波数成分を除去するフィルタを含んでもよい。
【0034】
以上がショベル1の基本構成である。続いてその動作を説明する。
図3(a)、(b)は、アタッチメント12の動作に起因するショベル1の滑りを説明する図である。
図3(a)、(b)は、ショベル1を真横から見た図である。τ
1~τ
3はそれぞれ、ブーム5、アーム6、バケット10の各リンクにおいて発生するトルク(力)を示す。
図3(a)は、掘削作業を示しており、アタッチメント12がショベル1の本体(走行体2および上部旋回体4)に及ぼす力Fは、ブーム5の根元522に作用し、この力Fは走行体2をバケット10に近づける方向に作用する。走行体2と地面の間の静止摩擦係数をμとし、走行体2に対する垂直抗力をNとすれば、
F>μN
を満たしたときに、走行体2は力Fの方向に滑り始める。
【0035】
図3(b)は、均し作業を示しており、アタッチメント12がショベル1の本体に及ぼす力Fは、走行体2をバケット10から遠ざける方向に作用する。この場合も、
F>μN
を満たしたときに、走行体2は力Fの方向に滑り始める。
【0036】
図4(a)~(d)は、ショベル1の滑りを説明する図である。
図4(a)~(d)は、ショベル1を真上から見た図である。アタッチメント12のブーム5、アーム6、バケット10は、その姿勢や作業内容にかかわらず常に同一平面(矢状面)内に位置する。したがってアタッチメント12の動作中に、アタッチメント12からの反力Fは、ショベル1の本体(走行体2および上部旋回体4)に対して、アタッチメントの延長方向L1に作用すると言える。これは、走行体2と上部旋回体4の位置関係(回転角度)にも依存しない。力Fの向きは、
図3(a)、(b)に示すように、作業内容によって異なる。言い換えれば、延長方向L1への滑りが生じているとき、その滑りは、アタッチメント12の動作に起因するものであると推定され、したがってアタッチメント12を制御することでその滑りを抑制できる。
【0037】
図5は、実施の形態に係る滑り補正のフローチャートである。はじめにアタッチメントの動作中か否かが判定される(S100)。非動作中であれば(S100のN)、ステップS100に戻る。アタッチメント12の動作が検出されると(S100のY)、アタッチメント延長方向L1のショベル本体の運動(たとえば加速度)が検出される(S102)そして滑りが検出されないとき(S104のN)には、オペレータの入力にもとづく通常のアタッチメント動作(S108)が行われる。滑りが検出されるた場合(S104のY)、アタッチメント12の動作が補正される(S106)。
【0038】
実施の形態に係るショベル1によれば、センサ504によってアタッチメント12の動作に起因する滑りを検出し、その結果に応じて、アタッチメント12の動作を補正することにより、滑りを抑制できる。
【0039】
走行体2が変位する原因は、アタッチメントの掘削反力による滑りの他、走行体による意図的な変位、旋回体の旋回に起因する滑りなどが存在するが、アタッチメントの動作補正が最も有効なのは、掘削反力を原因とする滑りであり、その他の要因による滑りや変位は、却って滑りや変位を増長させる場合もあり得る。そこでより詳しくは、アタッチメントによる掘削作業中において、走行体が変位した場合に、アタッチメント12の動作を補正してもよい。
【0040】
実際に車体が滑ったことを検知する際に、掘削による滑りと、その他の原因による滑りと区別するために、滑り抑制部510は、掘削動作なのか否かを判断する機能を備えていてもよい。滑り抑制部510は、ブーム、アーム、バケットの位置に関する検出情報に基づいて、掘削状態か判断してもよい。ブーム、アーム、バケットの位置は、それぞれ角度センサやストロークセンサにより検出可能である。位置情報の代わりに、アタッチメント、旋回、走行の操作レバーの操作情報を用いることもできる。旋回、走行の操作がされている場合は、掘削による滑りではないと判断することもできる。アタッチメントが備えるシリンダの圧力情報に基づいて掘削中か否かを判断してもよい。
【0041】
アタッチメントによる掘削作業は、基本的には走行停止状態、旋回停止状態で実施され
る。掘削作業中、オペレータは2本のレバーを同時操作し、ブームとアーム、又はアームとバケット、ブームとバケット、のようにアタッチメントが有する少なくとも2つのアクチュエータを操作する。したがって、アタッチメントの操作レバーが操作状態にあり、かつ走行体および旋回が非操作状態にあることを、アタッチメントによる掘削作業中であることの必要条件とすることができる。
【0042】
したがって走行状態、旋回状態だと判断できる場合には、滑りが生じたとしてもアタッチメントによる滑りではないとして制御の判断材料とすることもできる。逆にいうとアタッチメントで土砂を掘削している際に、走行状態ではない、旋回状態ではない、という判断材料を更に考慮して、アタッチメントの動作による滑りだと判断すると、掘削動作による滑りを精度よく抑制することができる。
【0043】
したがって、本願で開示する実施例によれば、アタッチメントの掘削中に走行体の位置が変位すると、アタッチメントの動作が補正され、滑りが抑制される。また、このときの補正の判断材料として、アタッチメントの操作レバーや、走行体、旋回の操作情報や実際の動作を更に考慮して、アタッチメントの動作を補正することにより、掘削動作による滑りを精度よく抑制できる。
【0044】
図4(a)~(d)に示すように、アタッチメント12の延長方向L1は、上部旋回体4の向き(正面方向)と常に一致する。したがってセンサ504(加速度センサ)を、実際の滑りが生ずる走行体2側ではなく、上部旋回体4の上に搭載することで、上部旋回体4の旋回角度(位置)に依存せずに、延長方向L1への滑り運動を直接的にかつ正確に検出することができる。
【0045】
アタッチメント12の動作の補正を高速に行うことで、オペレータが補正を意識せずに滑りを抑制することは理論的に可能である。しかしながら応答遅延が大きくなると、オペレータが、自分自身の操作と、アタッチメント12の動作に乖離を感じる可能性もある。そこでショベル1は、滑りが検出されたときに、アタッチメント12の動作の補正と平行して、オペレータに滑りが生じていることを報知、警報してもよい。これにより、オペレータは、操作と動作の乖離が、アタッチメント12の動作の自動補正によるものであることを認知することができる。またオペレータは、この報知が連続して発生する場合には、自身の操作が不適切であることを認識することが可能であり、操作が支援される。
【0046】
本発明は、
図2のブロック図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置や方法に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や回路動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例を説明する。
【0047】
図6(a)、(b)は、センサ504の取り付け箇所の一例を説明する図である。上述のように、センサ504は、上部旋回体4に設けられた加速度センサ506を含む。加速度センサ506は、延長方向L1に検出軸を有している。ここでアタッチメント12が上部旋回体4に及ぼす力の作用点は、ブーム5の根元522である。したがって加速度センサ506は、ブーム5の根元522に設けることが望ましい。これによりアタッチメント12の動作に起因する滑りを好適に検出できる。
【0048】
ここで加速度センサ506が旋回軸520から遠ざかると、旋回体4が旋回運動するときに、加速度センサ506が、旋回運動による遠心力の影響を受けてしまう。そこで加速度センサ506は、ブーム5の根元522の近傍であって、かつ旋回軸520の近傍に配置することが望ましい。まとめると、加速度センサ506は、ブーム5の根元522と上部旋回体4の旋回軸520の間の領域R1に配置することが望ましい。これにより、加速度センサ506の出力に含まれる旋回運動の影響を低減でき、アタッチメント12の動作に起因する滑りを好適に検出できる。
【0049】
また加速度センサ506の位置が地面から遠すぎると、加速度センサ506の出力が、ピッチングやローリングに起因する加速度成分を含むこととなり好ましくない。この観点から、加速度センサ506は上部旋回体4のなるべく下の方に設置することが好ましい。
【0050】
続いて、アタッチメント12の補正制御について説明する。アタッチメント12の補正制御は、大きく2つの方式に分類される。以下、それぞれを説明する。
【0051】
(第1の補正方式)
第1の補正方式において、滑り抑制部510は、滑りを検出すると、アタッチメント12の可動軸(リンク)の少なくともひとつのトルク(力)を低下させる。さまざまな種類の作業を考慮すると、制御対象の軸としてはアーム軸が好適であり、したがって滑り抑制部510は、滑りを抑制するためにアームシリンダ8の力を低下させることが望ましい。
【0052】
図7は、第1の補正方式による滑り防止を示す波形図である。
図7には上から順に、走行体2の延長方向L1の速度vおよび加速度α、アタッチメント12の発生するトルクτ(たとえばアーム軸のトルクτ
2)、アタッチメント12の動作がショベル1の本体に及ぼす延長方向L1の力Fが示される。理解の容易化、説明の簡潔化のために、
図7はショベル1の動作を模式的に示すものである。なお
図7には比較のために、補正制御を行わないときの波形が一点鎖線で示される。
【0053】
初めに、補正制御を行わない場合の動作を説明する。時刻t0より前に、滑りは生じておらず、走行体2は地面に対して静止しており、速度vはゼロである。時刻t0に、オペレータがさらに操作レバーを傾けると、トルクτ2(あるいはそのほかの軸のトルクτ1、τ3)増加する。これにより、ショベル1の本体に加わる延長方向L1の力Fが増加し、時刻t1に最大静止摩擦力μNを超える。そうすると、走行体2は地面に対して滑り初め、速度vは一点鎖線で示すように増加していく。
【0054】
続いて、第1の補正方式を採用したときの動作を説明する。時刻t1に走行体2が滑り始めると、加速度αが増加し始める。言い換えれば走行体2の滑りは、加速度αの増加として現れ、したがって滑り抑制部510は、加速度センサ506が検出する加速度αにもとづいて、滑りを判定する。たとえば滑り抑制部510は、加速度センサ506が検出した加速度αが、所定のしきい値αTHを超えると、滑りが発生したものと判定し、補正制御を有効とする。
【0055】
時刻t2に、加速度αがしきい値αTHを超えると、補正制御が有効となる。第1の補正方式では、補正制御は、補正期間Tの間、有効となり、この補正期間Tにおいてアーム軸のトルクτ2がオペレータの操作入力を無視して低下する。トルクτ2が低下すると、アタッチメント12がショベル1の本体に及ぼす力Fが小さくなる。そして力Fが、動摩擦力μ’Nを下回ると、滑りが収まる。そして補正期間Tの経過後に、補正が解除され、オペレータの入力にもとづく補正前の元のトルクτ2に戻される。補正期間Tは、1ミリ秒~2秒であってもよく、本発明者らが行ってシミュレーション結果を考慮すると、より好ましくは、10ms~200ms程度とするとよい。補正の解除後、力Fも元のレベルまで大きくなるが、走行体2は地面に対して静止しているため、力Fが最大静止摩擦力μNを超えない限り、走行体2は静止状態を維持し、再び滑ることはない。
【0056】
たとえば
図3(a)の掘削作業を例とすると、バケット10に大量の土砂を積載した状態でアーム6を引くと、力Fが発生し、走行体2が前方に滑り始める。そうすると滑り抑制部510は瞬時にアーム6の引き込む力(トルクτ
2)を低下させる。これにより力Fが低下し、動摩擦力μ’Nを下回り、滑りが止まる。滑りが止まった後に、補正が解除され、アーム6のトルクτ
2が元に戻される。このときには最大静止摩擦力μN(>μ’N)が有効であるから、滑りは生じない。この処理を、非常に短い時間スケールで繰り返すことにより、オペレータはレバーの操作量を変えることなく、また、操作感を損なうことなく、滑りを抑制することができる。
【0057】
(第2の補正方式)
次に説明する第2の補正方式は、第1の補正方式と併用してもよいし、単独で用いてもよい。第2の補正方式では、滑り抑制部510は、滑りを検出すると、アタッチメント12の少なくともひとつの軸を変位させ、アタッチメント12の姿勢を微調整する。
【0058】
図8は、第2の補正方式を示す図である。
図8には、真横から見た掘削作業中のショベル1が示される。補正前のアタッチメント12の状態が実線で、補正後のアタッチメント12の状態は一点鎖線で示される。たとえばバケット10に大量の土砂が積載されており、その状態でショベル1がバケット10を抱き込むとする。そうすると、バケット10を中心として、ブームの根元522を作用点とするトルクTが発生する。このトルクTのうち地面と平行な成分が、走行体2を滑らせる力Fとして作用する。
【0059】
補正によって、アタッチメント12の姿勢を変化させると、根元522に作用するトルク(力)の向きが、TからT’に変化する。一例として
図8では、ブームの位置が、実線の5から一点鎖線の5’に修正されている。補正後のトルクT’のうち地面と平行な成分(走行体2を滑らせる力)F’は、補正前の力Fよりも小さくなる。これにより、滑りが抑制される。
【0060】
それに加えてトルクの向きがTからT’に変化すると、地面と垂直方向の成分、つまり走行体2を地面に押しつける力が増加する。これにより垂直抗力Nが補正前に比べて増加し、動摩擦力μ’Nが増加し、滑りが抑制される。
【0061】
図8の例では、力Fを低減させることと、垂直抗力Nを増大させることの二つの効果により滑りを抑制したが、第2の補正方式では、それらの効果の一方のみを使用する態様も有効である。以上が補正方式の説明である。
【0062】
続いて、ショベル1のより詳細な構成を説明する。
図9~
図13は、実施の形態の第1実施例から第5実施例に係るショベル1の電気系統および油圧系統のブロック図である。なお、
図9~
図13では、機械的に動力を伝達する系統を二重線で、油圧系統を太い実線で、操縦系統を破線で、電気系統を細い実線でそれぞれ示している。なおここでは油圧ショベルについて説明するが、旋回に電動機を用いるハイブリッドショベルにも本発明は適用可能である。
【0063】
はじめに
図9~
図13に共通する構成を説明する。機械式駆動部としてのエンジン11は、油圧ポンプとしてメインポンプ14及びパイロットポンプ15に接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。なお、油圧アクチュエータに油圧を供給する油圧回路は2系統設けられることがあり、その場合にはメインポンプ14は2つの油圧ポンプを含む。本明細書では理解の容易化のため、メインポンプが1系統の場合を説明する。
【0064】
コントロールバルブ17は、ショベル1における油圧系の制御を行う装置である。コントロールバルブ17には、
図1に示した走行体2を駆動するための走行油圧モータ2A及び2Bの他、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9が高圧油圧ラインを介して接続されており、コントロールバルブ17は、これらに供給する油圧(制御圧)をオペレータの操作入力に応じて制御する。
【0065】
また、旋回装置3を駆動するための旋回油圧モータ21がコントロールバルブ17に接続される。旋回油圧モータ21は、旋回コントローラの油圧回路を介してコントロールバルブ17に接続されるが、
図3には旋回コントローラの油圧回路は示されず、簡略化されている。
【0066】
パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26(操作手段)が接続されている。操作装置26は、走行体2、旋回装置3、ブーム5、アーム6、及びバケット10を操作するための操作手段であり、オペレータによって操作される。操作装置26には、油圧ライン27を介してコントロールバルブ17が接続され、また、油圧ライン28を介して圧力センサ29が接続される。
【0067】
たとえば操作装置26は、油圧パイロット式の操作レバー26A~26Dを含む。操作レバー26A~26Dはそれぞれ、ブーム軸、アーム軸、バケット軸および旋回軸に対応する操作レバーである。実際には、操作レバーは二個設けられ、一方の操作レバーの縦方向、横方向に2軸が、残りの操作レバーの縦方向、横方向に残りの2軸が割り当てられる。また操作装置26は、走行軸を制御するためのペダル(不図示)を含む。
【0068】
操作装置26は、パイロットライン25を通じて供給される油圧(1次側の油圧)をオペレータの操作量に応じた油圧(2次側の油圧)に変換して出力する。操作装置26から出力される2次側の油圧(制御圧)は、油圧ライン27を通じてコントロールバルブ17に供給されるとともに、圧力センサ29によって検出される。すなわち圧力センサ29の検出値は、操作レバー26A~26Dそれぞれに対するオペレータの操作入力θ
CNTを示す。なお
図9~
図11において油圧ライン27は1本で描かれているが、実際には左走行油圧モータ、右走行油圧モータ、旋回それぞれの制御指令値の油圧ラインが存在する。
【0069】
コントローラ30は、ショベルの駆動制御を行う主制御部である。コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、CPUがメモリに格納された駆動制御用のプログラムを実行することにより実現される。
図2の滑り抑制部510は、コントローラ30の機能ブロックとして構成することができる。
【0070】
センサ504は、アタッチメント12の延長方向のショベル1本体の運動(たとえば加速度)を検出し、運動に応じた検出信号S2をコントローラ30に供給する。
【0071】
たとえば
図9~
図13の、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17等は、
図3の駆動手段502に相当する。
【0072】
コントローラ30の滑り抑制部510は、滑りを抑制するためにアタッチメント12の動作を補正する。
図9~
図11には、アタッチメント12の運動を、第1の補正方式により制御するための異なる構成例が開示される。
【0073】
図9は、第1実施例に係るショベル1aを示す。ショベル1aでは、補正対象の少なくともひとつの軸のシリンダへの制御圧を変化させることにより、トルクを低下させる。具体的には
図9のショベル1aは、アタッチメント12の補正のために、補正対象の軸に対応する油圧ライン27上に設けられた流量調整弁512をさらに備える。たとえばアーム軸を対象とする補正を行う場合、アーム軸の油圧ライン27上に、流量調整弁512が設けられる。コントローラ30は、流量調整弁512を制御することにより、アームシリンダ8への制御圧を低下させ、アーム軸のトルク(力)を低下させる。流量調整弁512は、
図2の滑り抑制部510の一部分と把握することができる。
【0074】
図10は、第2実施例に係るショベル1bを示す。ショベル1bでは、コントローラ30の滑り抑制部510は、エンジン11の回転数を低下させることにより、アタッチメント12のトルクを低下させ、滑りを抑制する。この場合、制御対象の軸を選択することはできず、ブーム軸、アーム軸、バケット軸のトルク(力)は一様に低下する。
【0075】
図11は、第3実施例に係るショベル1cを示す。ショベル1cでは、コントローラ30の滑り抑制部510は、メインポンプ14の出力を低下させることにより、アタッチメント12のトルクを低下させ、滑りを抑制する。この構成でも、ブーム軸、アーム軸、バケット軸のトルク(力)が一様に低下する。
【0076】
図12は、第4実施例に係るショベル1dを示す。コントロールバルブ17には、圧力調整弁(リリーフ弁)514が取り付けられる。滑り抑制部510は、滑りが判定されると、圧力調整弁514を利用して、制御対象の軸のシリンダ圧をリリーフする。これによりその軸のトルクが低下し、滑りを抑制することができる。圧力調整弁514は、
図2の滑り抑制部510の一部分と把握することができる。この構成は、他の構成に比べて遜色のない効果が得られる上に、実装が容易であるという利点を有する。
【0077】
たとえば圧力センサ516は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9の各軸のシリンダ圧を監視する。圧力調整弁514は、コントローラ30からの補正指令S3に応じて、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9の各軸のシリンダ圧を独立にリリーフ可能に構成される。シリンダ圧の検出値は、コントローラ30に供給される。滑り抑制部510は、滑りが判定されると、過剰なシリンダ圧が検出された軸の圧力を圧力調整弁514を用いてリリーフしてもよい。つまり過剰なシリンダ圧が生じている軸が、制御対象の軸となる。
【0078】
特定の軸(たとえばアーム軸)を制御対象とする場合、その軸のシリンダ圧をリリーフできるように圧力調整弁514を設けてもよい。
【0079】
図13は、第5実施例に係るショベル1eを示す。このショベル1eは、アタッチメント12の運動を、第2の補正方式により制御する。ショベル1eは、電磁制御弁31を備える。ここでは、第2の補正方式においてブーム軸を補正対象としてその姿勢を制御する場合を例とする。非制御対象のアーム軸、バケット軸については、従来のショベルと同様に、操作レバー26B,26Cの傾きによって変化する油圧ライン27b、27cの制御圧によって制御される。
【0080】
一方、補正対象であるブーム軸のシリンダ7は、電磁制御弁31によって制御される。切換弁(あるいは単なる分岐)32は、パイロットライン25を電磁制御弁31に分岐する。電磁制御弁31の油圧ライン27aの油圧は、ブームシリンダ7の制御に使用される。圧力センサ29は、ブーム軸への操作入力θCNTを検出し、コントローラ30に出力する。そして通常動作中(補正期間以外)においては、コントローラ30は、操作入力θCNTにもとづいて電磁制御弁31を制御する。滑りを防止するための補正期間の間、コントローラ30の滑り抑制部510は、補正後の姿勢が得られるように、電磁制御弁31を制御する。
【0081】
なお、
図9~
図13に示したショベル1の構成は例示であって、当業者によればその他の構成によっても、必要な補正処理が可能であることが理解される。
【0082】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例を説明する。
【0083】
(第1変形例)
センサ504は、アタッチメント12の延長方向に沿ったショベル1の本体の速度を検出する速度センサを含んでもよい。そして検出した速度がしきい値を超えると、補正を有効としてもよい。
【0084】
(第2変形例)
センサ504は、角速度を検出する角速度センサをさらに含んでもよい。滑り抑制部510は、角速度センサの出力にもとづいて、加速度センサ506の出力を補正してもよい。加速度センサ506の出力は、特定方向の滑り(直進運動)だけでなく、ピッチング方向、ヨーイング方向、ローリング方向の回転運動の成分も含みうる。この変形例によれば、角速度センサを併用することで、回転運動の影響を除外して、滑り運動のみを抽出することが可能となる。
【0085】
(第3変形例)
実施の形態では、センサ504を、上部旋回体4に設けたが、走行体2に設けてもよい。この場合、上部旋回体4の旋回角(位置)を検出することで、センサ504の出力から、アタッチメント12の延長方向に沿った運動を検出し、その方向への滑りを検出することができる。
【0086】
(第4変形例)
センサ504は、走行体の滑りを直接的に検出可能であれば、加速度センサや速度センサに限定されず、その他のセンサを用いてもよい。たとえばセンサ504は画像センサであってもよく、滑り抑制部510は、画像解析処理によって、走行体のアタッチメントの延長方向への滑りを検出してもよい。
【0087】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0088】
1…ショベル、2…走行体、2A,2B…走行油圧モータ、3…旋回装置、4…旋回体、4a…運転室、5…ブーム、6…アーム、7…ブームシリンダ、8…アームシリンダ、9…バケットシリンダ、10…バケット、11…エンジン、12…アタッチメント、14…メインポンプ、15…パイロットポンプ、17…コントロールバルブ、21…旋回油圧モータ、26…操作装置、L1…延長方向、500…油圧アクチュエータ、502…駆動手段、504…センサ、506…加速度センサ、510…滑り抑制部。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は産業機械に利用できる。