(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】血管アクセスデバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 25/06 20060101AFI20220608BHJP
【FI】
A61M25/06 500
A61M25/06 554
(21)【出願番号】P 2017556650
(86)(22)【出願日】2016-04-15
(86)【国際出願番号】 US2016027972
(87)【国際公開番号】W WO2016176065
(87)【国際公開日】2016-11-03
【審査請求日】2019-03-15
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-06
(32)【優先日】2015-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509280394
【氏名又は名称】スミスズ メディカル エーエスディー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン エフ.ビアマン
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】栗山 卓也
【審判官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特表平4-504809(JP,A)
【文献】特表2014-526930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用品を体内空間に留置するためのアクセスデバイスであって、前記アクセスデバイスは、
流体室を画成するバレルおよび前記バレル内に摺動可能に配設されたプランジャであって、ガイドワイヤを通すためのサイズおよび形状のチャネルを有するプランジャを備えるシリンジと、
前記チャネル内に少なくとも部分的に配設された内側針部分であって、前記内側針部分の側壁を貫通して前記流体室内に達する開口を備えた内側針部分と、
前記バレルが備える第1の針ハブと第2の針ハブを有するバレルの先端部であって、前記第1の針ハブは、前記第1の針ハブから延在する穿刺点を含む外側針部分を支持すると共に前記内側針部分および前記流体室に流体連通し、前記第2の針ハブは、前記第1の針ハブと前記外側針部分を前記バレルに解放可能に留め付けるように構成され、且つ前記内側針部分および前記外側針部分に流体連通し、前記第1の針ハブと前記第2の針ハブとの間には中間チャネルが形成される、バレルの先端部と、
前記外側針部分の周囲に同軸に配設されて前記外側針部分に沿って摺動可能なシースであって、前記シースの遠位端は前記外側針部分の遠位端より近位に位置付けられる、シースと、
前記外側針部分の周囲に配設され、且つ、前記シース内に配設されるダイレータであって、前記ダイレータはダイレータハブ及びダイレータ本体を有し、前記ダイレータ本体の遠位端は前記シースの前記遠位端より遠位に位置付けられる、ダイレータと、
を備え、
前記第1の針ハブは、前記第1の針ハブの近位部に配置された第1の係止構造であって、前記第2の針ハブに係止できるように構成される第1の係止構造と、前記第1の針ハブの遠位部に配置された第2の係止構造であって、前記ダイレータハブに解放可能に留め付けるように構成される第2の係止構造を備える、アクセスデバイス。
【請求項2】
前記シースは複数の部分に分割可能である、請求項1に記載のアクセスデバイス。
【請求項3】
前記シースは本体とハブとを備え、前記本体は、よじれず
に患者の表皮を貫通して前記患者の血管内に前記患者の血管に沿って延在するために十分な可撓性を有する管状構造であり、前記本体は事前に定められた線を含み、前記線に沿って前記本体を前記複数の部分に分割可能である、請求項2に記載のアクセスデバイス。
【請求項4】
前記事前に定められた線は、前記本体の長手方向軸線に平行である、請求項3に記載のアクセスデバイス。
【請求項5】
前記シースは弁を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のアクセスデバイス。
【請求項6】
前記シースは本体とハブとを備え、前記ハブは内腔を画成し、前記弁は前記内腔内に配設される、請求項5に記載のアクセスデバイス。
【請求項7】
前記弁は、前記外側針部分に密着するべく構成される、請求項5または6に記載のアクセスデバイス。
【請求項8】
前記プランジャは弁を備え、前記弁は前記チャネル内に配置された前記ガイドワイヤに密着するべく構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載のアクセスデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
【0002】
本出願は、合衆国法典第35巻第119条(e)(35U.S.C.§119(e))に基づき、2015年4月30日出願の「血管アクセスデバイス(VASCULAR ACCESS DEVICE)」と題する米国特許仮出願第62/155,368号および2015年8月25日出願の「血管アクセスデバイス(VASCULAR ACCESS DEVICE)」と題する米国特許仮出願第62/209,841号に対する優先権を主張し、これら開示の全体を引用により本願明細書に組み込むものとする。
【0003】
<技術分野>
【0004】
本開示は、全般的には医療用品(例えば、カテーテル、カニューレ、シース等)を例えば、動脈、静脈、脈管、体腔、または排液部位などの体内空間に導入および/または送達するためのアクセスデバイスに関し、より具体的には、このようなデバイスの遠位先端区間に関する。
【背景技術】
【0005】
流体を患者の体内に送達するために、または流体を患者の体内から抜き取るために、さまざまな医療デバイス、例えば、カテーテル、カニューレ、シース等、が患者の体内、例えば動脈、静脈、体腔、または排液部位、に導入されることが多い。例えば、カテーテルまたは血管シースは、ローラーソン手法を用いて患者の血管内に導入可能である。この手法では、ローラーソンシリンジに取り付けられた導入針を患者の血管に挿入し、次にガイドワイヤをシリンジプランジャの後部から血管に挿入する。ローラーソンシリンジおよび針は、ガイドワイヤを患者の体内に延在させたまま、除去される。穿刺部位を拡大するために、ガイドワイヤに隣接する皮膚に切り込みが入れられる場合もある。カテーテルまたは他の医療用品をガイドワイヤに沿って患者の体内に送り込むことができる。カテーテルが所望の位置に達したら、ガイドワイヤは取り出される。
【0006】
上記手法は、ガイドワイヤ上での交換を複数回必要とし、カニューレ挿入の失敗、ガイドワイヤの損失、および汚染の危険を引き起こす。更に、表皮に切り込みを入れる工程中に、ガイドワイヤが露出されているため、ガイドワイヤが切断され得る。この手法は全体として非常に時間がかかり、患者に対して医療用品およびガイドワイヤが移動する危険性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願明細書に記載の各アクセスデバイスは、血管へのアクセスを確認するための、および脈管構造内への医療デバイスの留置を実現するための、改良された機構を好都合に提供する。
【0008】
一部の実施形態において、医療用品を体内空間内に留置するためのアクセスデバイスは、シリンジ、針、および針の周囲に同軸に配設されたシースを含む。いくつかの実施形態において、アクセスデバイスは、針の周囲に同軸に配設されたダイレータをシース内に更に含む。シリンジは、プランジャがその内部に摺動可能に配設された中空バレルを含む。シリンジは、標準的な気密シリンジとして、ならびに患者の脈管構造内へのガイドワイヤのための通路をもたらすデバイスとして、機能する。
【0009】
プランジャは、中心チャネルとこの中心チャネル内に配設された弁要素とを備える。中心に配設される常閉スリットまたは開口が弁要素の中心に形成される。
【0010】
中空バレルは、その先端に取り付けられた針を支持する。針は、中空バレルの先端から外方に延在する外側部分を含む。針は、内側部分を更に含む。内側部分はそこを貫通して形成された開口を中空バレルの先端の近傍に有する。内側部分は、使用中、内側部分の少なくとも一部がプランジャ内の中心に配設されたチャネルの内部に少なくとも部分的に配設されるように、中空バレルの内部に延在する。
【0011】
針の外側部分の周囲に、シースが同心円状に配設される。シースが針の外側部分に沿って遠位方向に患者の体内まで摺動できるように、シースはシリンジに解放可能に留め付けられる。シースを残したまま、シリンジが除去されたら、カテーテルをシースに通して患者の体内に挿入し得る。挿入されたカテーテルの周囲から、および患者から、シースを除去できるように、シースを剥離可能にし得る。
【0012】
いくつかの実施形態においては、ダイレータが針の外側部分の周囲に同心円状にシース内に配設される。ダイレータの遠位端は、シースの遠位端より先まで延在する。ダイレータをシリンジおよびシースのどちらか一方または両方に解放可能に留め付けることができる。シリンジに解放可能に留め付けられたダイレータは、針の外側部分に沿って遠位方向に患者の体内まで、シースと同時に摺動させることができる。ダイレータおよびシースの遠位端が患者の体内に配設され、シリンジが除去されると、ダイレータはシースから係合解除され、その後除去される。シースを残したままシリンジおよびダイレータが除去されたら、カテーテルをシースに通して患者の体内に挿入し得る。挿入されたカテーテルの周囲から、および患者から、シースを除去できるように、シースを剥離可能にし得る。
【0013】
使用中、プランジャの後退によって血管アクセスデバイスは吸引され、流体を内側針部分に形成された開口からシリンジバレルの内部に流入させる。この吸引中、弁室への空気の流入が弁要素によって阻止される。
【0014】
次に、ガイドワイヤをプランジャの中心チャネルと針の内側および外側部分とに通して血管に到達させ得る。ガイドワイヤは弁要素を貫通し、患者の体内へのガイドワイヤの導入中、液体または空気の弁要素通過を阻止するために、弁要素と共に密閉部を形成する。
【0015】
次に、シースを針の外側部分およびガイドワイヤに沿って患者の脈管構造内まで摺動させる。シリンジおよびガイドワイヤは、シースを残したまま、患者から除去される。いくつかの実施形態において、シースは、液体のシース通過を阻止するための弁要素を備える。
【0016】
ダイレータを含む実施形態において、ダイレータは初めにシリンジに解放可能に留め付けられ、シースはダイレータに解放可能に留め付けられる。ダイレータをシースに解放可能に留め付けると、脈管構造への両者の挿入中、ダイレータの遠位端がシースの遠位端より先まで延在することが保証される。次に、ダイレータは、シースに依然として係合されたまま、シリンジから係合解除される。次に、ダイレータとシースとを一緒に針の外側部分およびガイドワイヤに沿って患者の脈管構造内まで摺動させる。次に、シリンジとガイドワイヤとは、ダイレータとシースとを残したまま、患者から除去される。ダイレータをシースから係合解除し、近位方向に摺動させてシースから取り出す。いくつかの実施形態において、シリンジ、ガイドワイヤ、およびダイレータはシースから同時に除去される。いくつかの実施形態において、シースは、液体のシース通過を阻止するための弁要素を備える。
【0017】
一部の実施形態において、シースはシース本体とハブと弁とを含む。弁は、環状部材と密閉部材とを含み得る。シース本体は通常可撓性の管状構造と近位端と遠位端とを含み、長手方向軸線を画定する。ハブはシース本体の近位端に結合され、シース本体およびハブは位置合わせされた開口部をそれぞれ有し、これらを通る通路を形成する。弁の環状部材はシース本体に面するハブの表面に接して配設され、そこを貫通する開口部を含む。弁の密閉部材は、ハブの表面とシース本体の遠位端との間に通常配設されるシースアセンブリの構造に結合される係合部を有する。密閉部材は、密閉部を更に有する。密閉部は、密閉位置においては突出して環状部材の開口部に密閉係合し、開位置においては環状部材の開口部から離れて配設される。
【0018】
一部の実施形態において、医療用品を体内空間に留置させるためのアクセスデバイスは、バレルとこのバレル内に摺動可能に配設されたプランジャとを含む。プランジャは、そこを通ってガイドワイヤを受けるサイズおよび形状のチャネルを有する。バレルは流体室を画成する。アクセスデバイスは、チャネル内に少なくとも一部が配設された内側針部分を更に含む。内側針部分は、内側針部分の側壁を貫通して流体室に達する開口を含む。アクセスデバイスは、外側針部分を更に含む。外側針部分は、バレルから延在し、内側針部分および流体室に流体連通する。アクセスデバイスは、外側針部分の周囲に同軸に配設された、外側針部分に沿って摺動可能なシースを更に含む。シースの遠位端は、外側針部分の遠位端より近位に位置付けられる。
【0019】
一部の実施形態において、医療用品を体内空間に留置するためのアクセスデバイスは、シリンジとこのシリンジから延在する針とを含む。シリンジは、針に通されて延在するガイドワイヤを受け入れるべく構成されたチャネルを有する。アクセスデバイスは、針の周囲に同軸に配設された、針に沿って摺動可能なシースを更に含む。
【0020】
一部の実施形態において、医療用品を体内空間に留置するための方法は、アクセスデバイスによって血管に貫入するステップを含む。アクセスデバイスは、シリンジと、このシリンジから延在する針と、シリンジの周囲に同軸に配設されたシースとを含む。シリンジは、針に流体連通するチャネルを有する。本方法は、ガイドワイヤをチャネル、針に通して血管内に送り込むステップと、シースの少なくとも一部が血管内に配設されるまでシースを針に沿って遠位方向に摺動させるステップとを更に含む。本方法は、シースを残したまま、シリンジ、針、およびガイドワイヤを血管から除去するステップを更に含む。
【0021】
一部の実施形態においては、シースのために患者の脈管構造内への開口部を拡大するために、針の外側部分とシースの内面との間にダイレータが使用される。
【0022】
以下においては、本発明の複数の実施形態の上記および他の特徴、側面、および利点をさまざまな実施形態の図面を参照して詳細に説明するが、これらは本発明の各実施形態を説明するためのものであり、限定するためのものではない。これら図面は以下の図を含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】針がシースなどの医療用品と同軸に位置合わせされたシリンジを有するアクセスデバイスの一実施形態の斜視図である。本アクセスデバイスで使用されるガイドワイヤも示されている。
【
図2】ガイドワイヤのない、
図1に示されている実施形態の平面図である。
【
図5】弁要素を含む
図1のシースの別の実施形態の斜視図である。
【
図6】弁要素を含む
図1のシースの別の実施形態の分解斜視図である。
【
図7】
図5の7-7線に沿ったシースの側断面図である。
【
図8】閉位置にある弁要素を示す
図7のシースの拡大断面図である。
【
図9】開位置にある弁要素を示す
図7のシースの拡大断面図である。
【
図10】環状部材を含むシースの一実施形態の拡大断面図である。
【
図11】弾性板を含むシースの一実施形態の拡大断面図である。
【
図12】密閉要素を含むシースの一実施形態の拡大断面図である。
【
図13】
図5の弁付きシースと組み合わされた
図1のシリンジの断面図であり、前進状態にあるシリンジのプランジャを示す。
【
図14】シリンジのプランジャが後退状態にある以外は、
図13と同様である。
【
図16】身体に貫入している
図13に示されているアクセスデバイスの断面図である。
【
図17A】針が脈管構造に貫入し、プランジャが部分的に後退してシリンジ本体内に負圧を生じさせている以外は、
図16と同様の断面図である。
【
図18A】ガイドワイヤがプランジャおよび針に通されて患者の脈管構造内に送り込まれている以外は、
図17と同様の断面図である。
【
図18B】ガイドワイヤが患者の脈管構造内に更に延在している以外は、
図18Aと同様の断面図である。
【
図19】シースが針の外側部分に沿って患者の脈管構造内まで摺動されている以外は、
図18Bと同様の断面図である。
【
図20】シリンジおよびガイドワイヤが患者およびシースから除去されている以外は、
図19と同様の断面図である。
【
図21】カテーテルが患者の脈管構造への挿入のためにシースに位置合わせされている以外は、
図20と同様の断面図である。
【
図22】カテーテルがシースに通されて患者の脈管構造内に挿入されている以外は、
図21と同様の断面図である。
【
図23】カテーテルを取り囲んでいるシースを除去するために、シースの2つの部分が互いに剥離されている以外は、
図22と同様の断面図である。
【
図24】
図1のアクセスデバイスと併用可能なダイレータの平面図である。
【
図26】針がシースおよびダイレータなどの医療用品に同軸に位置合わせされたシリンジを有するアクセスデバイスの一実施形態の斜視図である。アクセスデバイス用のガイドワイヤも示されている。
【
図27】ガイドワイヤのない、
図26に示されている実施形態の平面図である。
【
図28】前進状態にあるシリンジのプランジャを示す
図26のシリンジの断面図である。
【
図29】シリンジのプランジャが後退状態にある以外は、
図28と同様である。
【
図31】
図30に示されている実施形態の一部分の拡大図であり、針、ダイレータ、およびシースのそれぞれの部分を示す。
【
図32】
図31に示されている実施形態の32-32線に沿った、針、ダイレータ、およびシースが重なり合っている長手方向位置の拡大断面図である。
【
図33A】身体に貫入している
図28に示されているアクセスデバイスの断面図である。
【
図34A】針が脈管構造に貫入しており、プランジャが部分的に後退してシリンジ本体内に負圧を生じさせている以外は、
図33Aと同様の断面図である。
【
図35A】ガイドワイヤがプランジャおよび針に通されて患者の脈管構造内に送り込まれている以外は、
図34Aと同様の断面図である。
【
図35B】ガイドワイヤが患者の脈管構造内に更に延在している以外は、
図35Aと同様の断面図である。
【
図36】ダイレータおよびシースが針の外側部分に沿って患者の脈管構造内まで摺動されている以外は、
図35Bと同様の断面図である。
【
図37】ダイレータおよびシースを脈管構造内に残したまま、シリンジおよびガイドワイヤが患者から除去されている以外は、
図36と同様の断面図である。
【
図38】ダイレータが患者およびシースから除去されている以外は、
図37と同様の断面図である。
【
図39】患者の脈管構造内への挿入のためにカテーテルがシースに位置合わせされている以外は、
図38と同様の断面図である。
【
図40】カテーテルがシースに通されて患者の脈管構造内に挿入されている以外は、
図39と同様の断面図である。
【
図41】カテーテルを取り囲んでいるシースを除去するためにシースの2つの部分が互いに剥離されている以外は、
図40と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
さまざまな状況において、医師は、流体を患者の体内空間に導入するために、または流体を患者の体内空間から除去するために、カテーテルまたはシースを患者の体内空間、例えば、血管または排液部位、に導入したい場合がある。さまざまなアクセスデバイスが当該技術分野において公知である。改良されたアクセスデバイスの複数の例が2014年2月13日に出願され、2014年7月24日に米国特許出願公開第2014/0207069号として公開された「バルブを有するアクセス装置(ACCESS DEVICE WITH VALVE)」と題する米国特許出願第14/238,832号に記載されており、この内容全体を引用により本願明細書に組み込むものとする。
図1および
図2は、例えば、カテーテルまたはシースを患者の血管に導入するために改良されたローラーソン手法を実施する際に使用可能なアクセスデバイス20の一実施形態を示す。アクセスデバイス20のいくつかの実施形態は、
図24および
図25に示されているように、ダイレータ124を更に含み得る。ダイレータ124を含むアクセスデバイスの一実施形態が
図26~
図41に示されている。
【0025】
アクセスデバイス20は本願明細書においては血管アクセスという文脈で説明されているが、アクセスデバイスは、患者の体内の他の場所(例えば、排液部位)へのアクセスおよび医療用品(例えば、カテーテルまたはシース)の留置のために、および他の目的(例えば、膿瘍ドレナージ)のためにも使用できる。
【0026】
アクセスデバイスの本実施形態は、一体成形された例示的管状医療用品を患者内の体内空間に留置するという文脈で開示されている。留置された管状医療用品は、他の医療用品(例えば、カテーテル、ガイドワイヤ、等々)を受け入れて体内空間へのアクセスを提供するために使用可能であり、および/または流体を体内空間に導入するための、または体内空間から流体を除去(例えば、ドレナージ)するための、通路を設けるために使用可能である。図示の実施形態において、管状医療用品は、主に静脈内への流体通路を提供するべく構成されたシースまたはカテーテルである。ただし、本発明の原理は、一体成形のシースまたはカテーテルの留置に限定されるものではなく、その後のシースまたはカテーテル経由の医療用品の挿入に限定されるものでもない。むしろ、本開示に鑑みて、本願明細書に開示されているアクセスデバイスは、他の1種類以上の医療用品、例えば、他の種類のシース、流体排出および送達管、およびシングルまたはマルチルーメンカテーテルなど、を患者の体内に直接、または別の医療用品を介して間接的に、留置することに関して申し分なく利用可能であることを理解されるであろう。
【0027】
例えば、ただしこれだけに限定されるものではないが、本願明細書に開示されているアクセスデバイスは、中心静脈カテーテル、末梢挿入中心静脈カテーテル、血液透析用カテーテル、外科的ドレナージ管、剥ぎ取り式シース、マルチピースシース、PICCライン、IVライン、スコープ、ならびに外部の、または埋め込まれた、電子デバイスまたはセンサに接続されたワイヤまたはケーブルのための電線用導管、を直接または間接的に留置するべく構成することも可能である。上述したように、先に列挙した医療用品は、アクセスデバイスによって患者の体内に留置された医療用品を介して患者の体内に留置され得る。
【0028】
更に、本願明細書に開示されている各実施形態は、単一の医療用品の同軸挿入に限定されるものではない。例えば、挿入された1つのシースを介して2つのカテーテルを患者の体内に挿入し得る、または挿入された第1のカテーテルを介して第2のカテーテルを患者の体内に挿入し得る。更に、アクセスデバイスを介して挿入された医療用品は、血管または他の体内空間内に導管をもたらすことに加え、ルーメンを形成できる。このルーメンは、その後に挿入される医療用品のルーメンに追加される。当業者は、本願明細書に開示されているデバイスおよびシステムのための更なる用途も見つけることができる。したがって、シースに関連付けられた(例えば、微小穿刺用)アクセスデバイスの図および説明は、本アクセスデバイスの可能な1つの用途の単なる例示に過ぎない。
【0029】
図1は、針22がシース26などの医療用品に同軸に位置合わせされたシリンジ24を有するアクセスデバイス20の一実施形態の斜視図である。アクセスデバイス用のガイドワイヤ28も図示されている。
図2は、
図1に示されている実施形態の平面図である。
図1および
図2を参照すると、アクセスデバイス20の一例示的実施形態は、針22とシリンジ24と管状シース26とを含む。図示の実施形態において、アクセスデバイス20はガイドワイヤ28を更に含む。シース26は針22の周囲に同軸に配設可能である。アクセスデバイス20は、患者の体内へのガイドワイヤ28の導入と、その後のシース26の導入とを可能にする。
【0030】
シリンジ24は、シリンジバレル30と、その内部に摺動可能に配設された略円筒形のプランジャ32とを備える。以下により詳細に説明するように、アクセスデバイス20は、標準的な気密シリンジとして、ならびにカテーテルまたはガイドワイヤ28を患者の身体に導入するためのデバイスとして、機能できる。
【0031】
バレル30は、針22を支持するための中空バレルの先端部38と、その反対側の端部に形成された指掛かり要素40とを有する中空の略円筒状の本体を備える。針22は、中空バレルの先端部38から通常外方に延在して穿刺点44を含む第1の針部分または外側針部分42を備える。針22は、バレル先端部38から内方に略円筒形の中空シリンジバレル30の内部に延在する第2の針部分または内側針部分46を更に含む。第2の部分46を貫通する開口48が流体室34の底部近くに形成される。開口48は、第2の針部分46の壁または側面を貫通して延在する、または経路をもたらす。アクセスデバイス20の使用中、開口48は血液などの流体を流体室34に流入させることができる。流体室34への血液の流入は、外側針部分42の穿刺点44が血管を穿刺したことを医師または医療提供者に示す。開口48は、種々の形状および向きを第2の針部分46に有することができる。例えば、
図15に示されている開口48は、円形の形状を有する。ただし、開口48の形状は図示の実施形態に限定されず、長円形、正方形、または別の形状でもよい。
【0032】
中空バレルの先端部38は、第1の部分42および第2の部分46をそれぞれ作動的に収容して支持する第1のバレル先端区間または針ハブ50と第2のバレル先端区間52とを備える。第1針部分または外側針部分42および第2針部分または内側針部分46に同軸に位置合わせされた中間チャネル54が第1のバレル先端区間50および第2のバレル先端区間52の間に協働的に形成される。プランジャ32をシリンジバレル30内でいっぱいに前進させると、第2または内側部分46の大部分がプランジャ32内の中心に配設されたチャネル56内に配置される。
【0033】
シース26は、通常可撓性の管状構造と、近位端またはハブ60と、遠位端または本体58とを含み、長手方向軸線に沿ってルーメンを画成する。シースハブ60は、シース本体58の近位端に結合され、そこを貫通する通路を有する。シース26のいくつかの実施形態は、ハブ60の遠位面に結合された弁を更に含む。例えば、弁は、隔壁の形態にすることもできる。隔壁は、開口時はルーメンと通路との間に流体連通をもたらし、閉鎖時に密閉するべく構成された近位面を有する。隔壁は、通路、隔壁、およびシース26のルーメン内に配設されたデバイスに密着するべく、および/またはシース26内に配設されているデバイスがないときは密閉するべく構成可能である。シース26のいくつかの実施形態は、以下により詳細に説明するように分割可能である。したがって、アクセスデバイス20の構成要素であるシース26の複数の実施形態は、分割可能にし得る、および/またはシース26を通るルーメンを密閉するための弁構造を含み得る。
【0034】
図3は、
図1のシース26の近位端の図である。
図4は、
図3のシース26の平面図である。
図3および
図4に示されているように、シース26はシース本体58とシースハブ60とを含む。
図3および
図4に示されている実施形態において、シース本体58および/またはシースハブ60は、必要に応じて1つ以上の分割線68に沿って分割可能にできる。分割可能なシース26は、アクセスデバイス20の使用後に脈管内に挿入されるカテーテルまたは医療用品の種類に応じて、シース本体58の一部または全体を取り出すことができるという利点をもたらす。例えば、カテーテルまたは他の医療用品が脈管に挿入された後、アクセス部位の混雑を減らすために、シース本体58の一部を分離または剥離して除去できる。医師または医療提供者がシース本体58の一部または全体を容易に除去できるように、剥離式シース26は、ミシン目、セレーション、スカイブ、または他の構造を含むことも、他の材料(例えば、ビスマス含有PTFE)を含むこともできる。いくつかの実施形態において、シース26は分割可能でない。
【0035】
シースハブ60は、例えば、外側針部分42の第2の係止構造64に係合するべく構成された係止構造70を含むことができる。ダイレータを含むいくつかの実施形態において、シースハブ60の係止構造70はダイレータに留め付けられ得る。シース本体58は一体成形のシースでもよく、そこを通してカテーテルまたは他の医療用品が血管内に挿入される。このような実施形態において、シース本体58は、カテーテルまたは他の医療用品の挿入用の導管を形成する。シース26またはシース26の一部分は、導管をもたらすと共に、カテーテルのルーメンに追加されるルーメンを形成できる。例えば、デュアルルーメンカテーテルをシース本体58に挿入することによって、トリプルルーメンカテーテルの等価物を形成できる。この場合、シース本体58自体が第3のルーメンを形成する。医師または医療提供者にシース本体58を流れる血液を見せるために、シース本体58は透き通った、または少なくともやや透明の、材料製とすることができる。
【0036】
このようないくつかの実施形態では、シース本体58をアクセスデバイス20の他の部分から容易に解放して除去できるように、シースハブ60は半径方向に延在する翼部、ハンドル構造、またはタブ66を複数備え得る。タブ66は、把持を容易にするためのいくつかの異なる形状および/または表面特徴の何れでも有することができ、図示の略T字形状に限定されるものではない。分割可能なシース26を所定の分割線または分離線68など1本以上の分割線に沿って分離させるために、タブ66は分離可能である。分割線68は、シースハブ60およびシース本体58のどちらか一方または両方に沿って延在可能である。分割線68は、シース本体58および/またはシースハブ60によって画定される1本以上の長手方向軸線に通常平行に延在可能であるが、一部の実施形態において、分割線68はほぼ非平行に延在可能である。
図23に最も明確に示されているように、分割線68に沿ってシース26を分割すると、シース26を2つ以上の対称または非対称部分(例えば、半体)に分離できる。
【0037】
一部の実施形態において、シース26は、係止構造70を形成する分離可能なリップを有する。このリップは、分割線68に沿った分離を可能にしながら、シース26を針22などの上記の他の要素に係合させることができる。シース26と共に使用可能な分割可能なシース本体および/またはハブの更なる実施形態が例えば2011年11月10日に出願され、2012年3月15日に米国特許出願公開第2012/0065590号として公開された「バルブを有するアクセス装置(ACCESS DEVICE WITH VALVE)」と題する米国特許出願第13/319,998号の
図23A~
図23Bおよび対応する関連テキスト(例えば段落[0225]~[0229])に図示および説明されており、その全内容を引用により本願明細書に組み込むものとする。一部の用途において、翼部66は、シースハブ60を分解するための梃子作用を医療提供者に提供する。シースハブ60および/またはシース本体58は、肉薄の(例えば壊れやすい)膜によって接続された2つ以上の部分(例えば半体)を備え得る。この膜は、医療提供者がシースハブ60および/またはシース本体58をアクセスデバイス20から除去しようと決めるまで、シースハブ60および/またはシース本体58の2つ以上の部分を一緒に保持しておく大きさにできる。医療提供者は、膜を破断してシースハブ60の1つ以上の部分を分離した、または部分的に分離した、断片に切り離すために、翼部66を操作する。
【0038】
図5~
図9は、上記のシース26と同様に、本願明細書に記載されている針、ガイドワイヤ、および他の要素と併用可能なシース26Aの別の実施形態を示す。
図5~
図9に示されているシース26Aは、弁要素78を含む。
図5および
図6は、それぞれ
図1のシース26Aの斜視図および分解斜視図である。
図7は、
図5のシース26Aの7-7線に沿った側断面図である。
図8および
図9は、
図7のシース26Aの拡大断面図であり、閉位置および開位置にある弁要素78をそれぞれ示す。
【0039】
シース26Aは、シース本体58Aとシースハブ60Aとを含むことができる。シースハブ60Aおよび/またはシース本体58Aの一部を貫通して、またはシースハブ60Aおよび/またはシース本体58Aの一部に沿って(例えば、これらの1つ以上の長手方向軸線に沿って)、内腔72が延在する。シースハブ60Aは、シース本体58Aの近位端から延在可能である。シース本体58Aおよび/またはシースハブ60Aは、必要であれば、1本以上の分割線68Aに沿って分割可能にできる。一部の実施形態において、シース本体58Aおよび/またはシースハブ60Aは、シースハブ部分74および76など2つ以上の分離可能な部分または半体を形成するために、2本以上の分割線68Aに沿って分割可能にできる。本体58Aとハブ60Aとを含むシース26Aの各実施形態は、本願明細書の他の箇所に記載のシース、シース本体、および/またはシースハブの実施形態と概ね同様にすることができる。
【0040】
図6~
図9を参照すると、シース26Aは、内腔72の一部をほぼ密閉するべく構成された弁要素78を含むことができる。弁要素78は、密閉要素82を支持する弾性板80を含むことができる。弾性板80の一部(例えば、密閉部84)が内腔72内に(例えば、半径方向内方に)延在して内腔72をほぼ密閉できるように、弾性板80はシース本体58Aおよび/またはハブ60Aの一部によって支持可能である。内腔72の近位部分86と内腔72の遠位部分88とが互いに対してほぼ密閉されるように、近位部分86と遠位部分88との間に弁要素78を位置付けることができる。部分86、88は、さまざまなサイズおよび形状の何れでも備えることができるが、例示のためにのみ、略円形の断面形状で示されている。図示の実施形態においては、本願明細書において更に説明するように、弁78を屈曲させて遠位部分88内で遠位方向への移動を可能にしながら、部分86に対する弁78の密閉を容易にするために、内腔72の近位部分86は、遠位部分88より小さい断面積を有する領域を少なくとも1つ備える。この構成において、弁78は、ダイレータまたは針などの医療用品の内腔通過を実質的に阻止しない一方で、内腔72内の近位方向への流れを実質的に阻止するべく構成可能である。
【0041】
弁要素78は、弾性板80の湾曲または屈曲によって、(例えば、
図7および
図8に示されているように)閉じた、またはほぼ密閉された位置と、(例えば、
図9に示されているように)開いた、または実質的に密閉されていない位置との間で屈曲または移動するべく適合化可能である。弁要素78は、流体(またはガス)、デバイス、の通過によって、またはユーザによる操作によって(例えば、外付けレバー、または弾性板80に取り付けられた他のデバイスの使用によって)開位置と閉位置との間で移動できる。閉位置において、密閉要素82の近位面側の密閉面90は、シース本体およびハブ58A、60Aの少なくとも一方の遠位面側の対応する密閉面92に接触、または別様に係合、できる。密閉面90および92の相互作用により、近位方向への内腔72通過を妨げることができる。とりわけ、弁要素78に対する近位方向への圧力が密閉面90および92を更に押し付け合わせることができる。一部の実施形態において、この機構は、人間の血管に関連する圧力に耐えられるほど十分に弾力的であるので、弁経由の血液の損失を防ぐことができる。一部の実施形態において、密閉要素82は、略ドーム状の部分94などの隆起部を含む。デバイス96が内腔72を通って延在しているとき、ドーム状部分94は、密閉面90とデバイス96との間の接触の可能性を防止または低減できる。例えば、内腔72に貫通延在しているデバイス、例えば、本願明細書に記載されているような針22、と共にシース26Aが保管される場合、デバイス96がシース26Aの別の部分に固定または付着される場合、デバイス96は、密閉面90の一部分にではなく、隆起部94に固定または付着される。したがって、隆起部94は、デバイス96との長時間の強力な接触による密閉要素82の密閉面90の損傷を防止でき、ひいては弁要素78の密閉機能および寿命を延ばすことができる。
【0042】
一部の実施形態において、弁78が閉位置に予圧されるように密閉要素82の密閉面90が分割可能なシース本体および/またはハブの密閉面92に押し付けられる、または予圧される、ように、弾性板80は構成される。この付勢は、上で説明した近位方向への物質の通過阻止を強めることができる。加えて、この付勢により、弁要素78は、内腔72内の遠位方向(例えば、長手方向)への流体またはガス(例えば、血液または空気)の流れなどの物体の通過、またはデバイスの通過、を阻止し易くなる。例えば、閉位置側への付勢は、弁要素78を開くための遠位方向への力(またはクラッキング圧)に抵抗できるほど十分に強くできる。一部の実施形態において、弁要素78の予圧または付勢は、例えば、正常な脈拍中に人間が生じさせる負圧によってガスが内腔72を通って遠位方向に患者の体内に引き込まれることを防止できるほど十分に強くすることができる。とりわけ、血管内へのガスの引き込みは、塞栓症などの健康への深刻な悪影響を引き起こし得る。
【0043】
弾性板80は、密閉要素82を支持し、内腔72をほぼ密閉するために十分な剛性と、弁要素78を本願明細書に記載されている開位置と閉位置との間で屈曲または移動させることができる十分な可撓性とを有する種々の材料のうちの何れでも備えることができる。弾性板80は、生体親和性金属またはプラスチック、あるいはこれらのさまざまな複合体または組み合わせ、を備えることができる。上記のように弁要素78が開位置にあるときに針、ダイレータ、カテーテル、または他の医療用品を内腔72に通して延在させて、弁の特徴(例えば、その可撓性、および閉位置にあるときに内腔72を密閉する能力)を損なうことなく、一緒にシース26A内に一定期間パッケージングできるように、弾性板80は常温硬化し難い材料を備えることができることが好ましい。一部の実施形態において、弾性板80は、ニッケル、チタン、および/または鋼(例えば、ステンレス鋼、ばね鋼、等々)、あるいはこれらのさまざまな合金または組み合わせを備えることができる。一部の実施形態において、弾性板80はNiTi(ニチノール)、またはNiTi SEを備える。一部の実施形態において、弾性板80は、開位置と開位置との間でのその移動を容易にするために、および2年などの長期間にわたって常温硬化を防止するために、形状記憶合金を備えることができる。
【0044】
密閉要素82は、密閉面92に接触しているとき、または密閉面92に押し付けられているときに、内腔72を実質的に密閉できる種々の材料の何れでも備えることができる。一部の実施形態において、密閉要素82は、金属、プラスチック、ゴム、または他の生体親和性材料、例えば、ポリイソプレン、シリコーン、ポリウレタン、または他の弾性ポリマーなどを備えることができる。一部の実施形態において、密閉要素82のショアA硬度は、約5~90の範囲内、または一部の実施形態においては10~70の範囲内、または一部の実施形態においては約15~50の範囲内、または一部の実施形態においては約30、にすることができる。一部の実施形態において、密閉要素82は、その表面に沿ってさまざまな要素(デバイス96など)が低摩擦で摺動し易くするために、被覆することも、シリコーン処理面など、他の表面処理を含むこともできる。更に、一部の実施形態においては、弁要素78を必要であれば単一の一体部品にできるように、弾性板80および密閉要素82を同じ材料で形成できる。
【0045】
弾性板80および/または要素82は成形(例えば、射出)、型押、等々、いくつかの異なる方法で形成可能であり、個別に、または一体に、形成可能である。弾性板80および密閉要素82は、接着剤、接合(例えば、超音波、熱、等々)、締結具、オーバモールド、等々、種々の方法で互いに取り付け可能である。板80および/または密閉要素82の製造中、これら相互間の取り付けを容易にするために、プライマまたは非粘着塗料または表面処理を板80および/または密閉要素82に適用できる。一部の実施形態においては、複数の板80および/または要素82の個別使用を可能にする切り離し可能な複数のタブを設けることによって、これら板80および/または要素82を単一の成形または型押工程で形成することができる。上記の弾性板80の曲げ特性に関して、一部の実施形態においては、弾性板80を密閉要素82と組み合わせる前に、いくつかの機械的特性を持たせるために弾性板80を前処理できる。
【0046】
弁要素78は、弾性板80によって示されているように、種々の手段でシース26Aに取り付け可能である。一部の実施形態においては、弁要素78をシース26Aに接着または接合できる。他の複数の実施形態においては、成形またはオーバモールドによって弾性板80をシース26Aに取り付けることができる。更なる実施形態においては、弾性板80をシース26A(またはシースハブ半体など、その一部分)と一体に形成できる。一体に形成される場合、ハブ60Aまたは本体58がより高い剛性を維持するように、ハブ60Aまたは本体58Aの厚みを弾性板80より大幅に厚くすることが望ましい場合がある。他の複数の実施形態において、シースハブ60Aまたは本体58Aが弾性板80を受け入れるための溝を含み、所定位置へのその圧入が可能な場合などは、弾性板80は機械的圧縮によってシース26Aに取り付け可能である。
【0047】
弾性板80は、シースハブ60Aおよび/または本体58Aのさまざまな部分に取り付け可能である。一部の実施形態においては、弾性板80の一部がシースハブ60Aおよび/または本体58Aの一部の間に狭着されるように、シースハブ60Aおよび/または本体58Aは、互いに対して位置決めされて取り付けられる2つ以上の個別片を備えることができる。
図6、
図8、および
図9に最も良く示されているように、シースハブ60Aは近位部分98と遠位部分100とを備えることができる。弾性板80の取り付け部102によって弁要素78を(
図9に示されているように)近位部分98と遠位部分100との間の溝または間隙104内に支持または挟持できるように、近位部分98および遠位部分100は互いに係合するべく構成される。部分98、100は、シースハブ60Aおよびシース本体58Aなど、シース26Aおよびシース26Aの他の構成要素について本願明細書に概説されている材料のうちの何れでも備えることができる。1つの実施形態において、部分98はABSプラスチックを含む。1つの実施形態において、部分100はK樹脂を含む。部分98、100は、公知の、または本願明細書に記載の、種々の取り付け手段および方法、例えば、接合、接着剤(例えば、溶剤)、等々、の何れかを用いて、互いに係合可能である。
【0048】
弁要素78および弾性板80は、分割線68Aに沿って分離されるシースハブ60Aおよび/または本体58Aの1つ以上の区画に取り付け可能である。シース26Aの分割中にシースハブ区画76からの弁78の分離を容易にするために、弾性板80は、シースハブ区画74など、シース26Aの単一の分離可能区画に取り付けられることが好ましい。加えて、内腔72内での弾性板80および密閉要素82の屈曲および移動を容易にするために、板80をシース26Aの単一の分離可能区画に取り付けることができる。弁要素78がシースハブ60Aおよび/または本体58Aの複数の分離可能部分に取り付けられる他の複数の実施形態においては、弁要素78を同様の構造によって分離可能にすることもできる。
【0049】
図10、
図11、および
図12は、環状部材106と弾性板80Aと密閉要素82Aとを含むシース26Aの一実施形態の拡大断面図である。板80Aおよび密閉要素82Aは、
図6~
図9に示されて本願明細書に説明されている弾性板80および密閉要素82と同様にすることができる。環状部材106は、いくつかの点でOリングのように機能できる。図示のように、環状部材106は、弁が閉位置にあるときに密閉要素82Aのドーム状部分94Aを受け入れるべく構成された中心穴108を含む。環状部材は、穴108に隣接した箇所の方が穴108の外側の箇所、例えば外縁、より薄くなるように、環状部材106の上面にテーパが付けられる。一部の実施形態において、このテーパは上面から下向きにすることもできる。環状部材106の底面は、ほぼ直線状または平坦にすることができる。閉位置において密閉要素82Aが、密閉面92にではなく、環状部材106に密着するように、環状部材106は密閉面92に対して配置される。環状部材106は、相対的に軟質の材料製とすることができ、シース26Aの分割中に裂けるほど肉薄にできる。環状部材106は、例えば、相対的に軟質の可撓性材料から構成されることにより、シースハブの製造および組み立て時に起こり得る成形の欠陥および/または位置ずれを好都合に補償することができる。環状部材106は、密閉要素82Aによって密閉される開口のサイズも、密閉面92に比べ、好都合に小さくする。これにより、閉位置において密閉要素82Aを押し付けるために、弾性板80Aの同じばね予圧力によって、より大きな真空保持を生じさせることができる。加えて、デバイスを収容するために弁78が開位置にあるときに密閉を維持するために、環状部材106はシース26Aを通して患者の体内に導入されたデバイスの周囲で密閉部の役目を果たすことができる。したがって、環状部材106は、密閉要素82Aとは独立に密閉部の役目を果たすことができる。一部の実施形態において、環状部材106は、シース26Aに通して導入可能なさまざまなデバイスを収容するために、および/またはこれらデバイスに適合するために、延伸可能である。
【0050】
一部の実施形態において、密閉要素82Aは、相対的に硬質の材料、例えば、ポリウレタン製またはポリカーボネート製とすることができる。相対的に軟質の環状部材106を含む場合は、密閉要素82Aを相対的に硬質の材料製にできるので都合がよい。その理由は、より可撓性の環状部材106は、相対的に硬質の密閉要素82Aが同じように効果的に補償できない成形の欠陥、位置ずれ、等々を補償できるからである。相対的に硬質の材料は、弾性板80Aに起こり得る損傷を好都合に減らすことができる。加えて、相対的により軟質の材料、例えばシリコーン製の密閉要素82Aの場合、弁が開かれるときに、弾性板80Aはその長さに沿ったどの位置においても或る程度湾曲し得る。相対的により硬質の材料製の密閉要素82Aの場合、弾性板80Aの屈曲は相対的により枢動軸110に限定され得る。これにより、弾性板80Aに起こり得る損傷および/または摩耗を減らすことができる。相対的に硬質の材料は、引裂および/または他の摩耗にもより良好に抵抗できる。このような引裂または摩耗は、密閉の有効性に不利に悪影響を及ぼし得る、または弾性板80Aの尖った部分を露出させ得る。これは、弁78を通してシース26Aに挿抜される、他の器具、例えば本願明細書に記載されているようなダイレータ、を切断または別様に損傷し得る。
【0051】
図13は、
図5のシース26Aと組み合わされた
図1のシリンジ24の断面図であり、前進状態にあるシリンジ24のプランジャ32を示している。
図13に示されているシース26Aは、弁要素78を含む。
図14は、シリンジ24のプランジャ32が後退状態にある以外は、
図13と同様である。
図15は、
図13の15-15線に沿った拡大断面図である。
図13~
図15を参照すると、第2の針ハブ52が内側針部分46の遠位端に配設されている。医師または医療提供者が第2の針ハブ52をバレル先端部38に係止できるように、第2の針ハブ52は、係止構造112を第2の針ハブ52の近位部に含むことができる。勿論、第2の針ハブ52がバレル先端部38に既に係止されているアクセスデバイス20を医師に提供することもできる。
【0052】
同様に、第1の針ハブ50は、外側針部分42の近位端に配設される。医師または医療提供者が第1の針ハブ50を第2の針ハブ52に係止できるように、第1の針ハブ50は、係止構造114を第1の針ハブ50の近位部に含むことができる。医師または医療提供者がシースハブ60など別の医療用品を第1の針ハブ50に留め付ける(例えば、解放可能に留め付ける)ことができるように、第1の針ハブ50は、更に係止構造64を第1の針ハブ50の遠位部分に含むことができる。係止構造112、114は、例えば、ルアーロック式またはルアースリップ式接続にできる。
【0053】
一部の実施形態においては第1の針ハブ50、第2の針ハブ52、および/またはシースハブ60は、ガスの通過を阻止し得る1つ以上のルアー接続を介して接続可能であるが、当該技術分野において公知の、または本願明細書に記載の、追加の機構によって当該構造のうちの1つ以上を取り付けることもできる。例えば、図示の実施形態において、第1の針ハブ50は、シースハブ60の棚部またはリップの係止構造70に解放可能に引っ掛けることができる係止構造64を含むことができる。一部の実施形態において、(針とのルアー接続にも使用される)シース26、26A内のテーパは、シース26、26Aと第1の針ハブ50との間の密閉を容易にすることができる。
【0054】
シリンジバレル30は流体室34を含み、プランジャ32は流体室34内に摺動可能に配設され、前進状態と後退状態との間で移動可能である。中心チャネル56は、流体室34に配設された開口48を含む。中心チャネル56は、中空のシリンジバレル30およびプランジャ32を長手方向に貫通して形成される。アクセスデバイス20のフラッシングまたは吸引中、または中心チャネル56に通したガイドワイヤ28の導入または抜取中、流体の中心チャネル56通過を阻止するために、弁116は中心チャネル56に対して作動的関係に配設される。患者の体内からの流体は、開口48を通って流体室34に流入できる。中心チャネル56は、ガイドワイヤ28が中心チャネル56内に配置されているとき、ガイドワイヤ28をほぼ直線状の形状構成に維持するべく構成される。
【0055】
外側針部分42は、目的の皮下体内空間にアクセスするために十分に長い長さを有すると共に、体内空間へのアクセス時の挿入力に、必要以上の外傷を引き起こさずに、耐えられる十分なゲージサイズを有する。多くの用途のために、針本体は3~20cmの間、より好ましくは3~10cmの間、の長さを有し得る。例えば、成人の胸腔内の体内空間(例えば、血管)にアクセスするために、外側針部分42は、好ましくは7cm以上の長さ、より好ましくは9cm以上の長さ、最も好ましくは9~10cmの長さ、を有する。針のサイズは、微小穿刺(例えば、末梢IV)用に、好ましくは18ゲージ以下、より好ましくは18~28ゲージの間、最も好ましくは18~26ゲージの間、である。新生児用には、外側針部分42の長さおよびゲージは大幅に短く且つ小さくすべきであり、例えば、好ましくは3~4cmの間および26~28ゲージの間にすべきである。一部の実施形態において、所望位置への針の位置決めを助けるために、外側針本体42は、超音波と組み合わせて使用できるエコー源部を含む。
【0056】
プランジャ32は、弁116と、そこを貫通して形成された中心チャネル56とを備える。プランジャ32の内方端部はバレル30内に収容され、反対側の端部は指掛かり要素40を含む。弁116は、1つ以上の一方向弁要素を備えることができる。例えば、これら弁要素は、可撓性の弾性中空半球形部材を備え得る。中心に配設される常閉スリットまたは開口が弁要素の中心に形成される。
【0057】
使用中、
図14に示されているようなプランジャ32の後退によってアクセスデバイス20は吸引され、流体を開口48からバレル30の内部に流入させる。吸引中、中心チャネル56への空気の流入は、弁116によって阻止される。吸引後、アクセスデバイス20はフラッシングされ得る。フラッシング中、弁116は、中心チャネル56から弁116内への液体の通過を阻止する。したがって、アクセスデバイス20は一般的なシリンジとして機能する。
【0058】
図14に示されているようにプランジャ32を後退させたとき、針22の内側部分46は依然として中心チャネル56内に配置されている。この構成において、ガイドワイヤ28をアクセスデバイス20に通して血管または体腔内に到達させ得る。ガイドワイヤ28は、弁116に形成された、中心に配設されたスロットを通る。弁116は、ガイドワイヤ28の導入中、液体または空気が弁116を通らないように、ガイドワイヤ28と共に密閉部を形成する。
【0059】
図16は、
図13に示されているアクセスデバイス20が身体118に貫入している状態の断面図である。
図17Aは、針22が脈管構造に貫入し、プランジャ32が部分的に後退して負圧をシリンジバレル30内に生じさせている以外は、
図16と同様の断面図である。この使用段階において、例えば、血液を流体室34に流入させるためのチャネルが針22とシリンジ24との間に形成される。内側針部分46に設けられた開口48は、血液を針22の側壁を通して流体室34に流入させる。
図17Bは、
図17Aの針22の遠位端の拡大部分断面図である。使用中、穿刺点44は血管122に入る。動脈に入ると、血液が開口48から流体室34に入るに伴い、動脈血圧がプランジャ32を後退させる。血管122へのカニューレ挿入時、プランジャ32の後退によってアクセスデバイス20は吸引されて流体室34内に真空または負圧を生じさせ、流体を開口48からバレル30に流入させる。いくつかの実施形態において、医師または医療提供者は、当該技術分野において公知のように、トランスデューサプローブをシリンジ24の後部に挿入し、弁116に通すことができる。医師または医療提供者は、静脈アクセスが実現されたかどうかを判定するために、プローブに対応付けられた波形を観察できる。
【0060】
図18Aは、ガイドワイヤ28がプランジャ32、弁116、および針22に通されて患者の血管122内に送り込まれている以外は、
図17と同様の断面図である。医師または医療提供者が針22を目標血管122内に位置付けた後、医師または医療提供者は、バレル30に対するプランジャ32の位置を維持しながら、ガイドワイヤ28をプランジャ32に通して送り込む。ガイドワイヤ28がシリンジ24に通されて患者の体内に送り込まれているとき、針22は静止状態に保持されていることが好ましい。挿入手順中、流体室34内に負圧を維持するために、弁116はガイドワイヤ28に密着し、中心チャネル56への空気の流入を阻止する。ガイドワイヤ28をシリンジ24に通して送り込むとき、当該技術分野において公知のガイドワイヤアドバンサが使用されてもよい。例えば、ガイドワイヤ28が湾曲またはJ字状の先端を有する場合は、ガイドワイヤ28の先端を真っ直ぐにしてプランジャ32の中心チャネル56内へのガイドワイヤ28の送り込みを容易にするために、アドバンサが使用され得る。
図18Bは、ガイドワイヤ28が患者の脈管構造内まで延びている以外は、
図18Aと同様の断面図である。
【0061】
図19は、シース26Aが針22の外側部分42に沿って患者の脈管構造内まで摺動されている以外は、
図18Bと同様の断面図である。針22およびガイドワイヤ28に沿ってシース26Aを血管122内に挿入しているとき、シリンジ24内に存在する負圧により、シース26Aの内径と針22の外径との間に存在する空気は、血管122内ではなく、針22に引き込まれることが保証される。必要であれば、針22に隣接する穿刺部位を拡大するために、表皮に切り込みを入れることができる。
【0062】
図20は、シース26Aが血管122内に適正に挿入されたまま、シリンジ24とガイドワイヤ28とが患者から除去されている以外は、
図19と同様の断面図である。除去プロセス中、針22とガイドワイヤ28とが除去されるに伴い、静止状態のシース26Aの内容積が増える。これにより、シース26A内に負圧が生じるので、除去中、血管122内への空気の引き込みが確実に阻止される。
【0063】
上記手順は、ローラーソンシリンジ手法より時間がかからず、複数の医療用品が使用される場合にガイドワイヤに沿って行われる交換(例えば、ガイドワイヤ上のダイレータ、ガイドワイヤ上のシース、ガイドワイヤ上のカテーテル)を複数回必要としない。このような交換がガイドワイヤに沿って複数回実施された場合、このような操作はカニューレ挿入の失敗、ガイドワイヤの損失、および汚染の危険を引き起こす。更に、表皮に切り込みを入れる段階中、針22はガイドワイヤ28の偶発的切断を防止する。この手順中、上記手法は、患者に対するシース26、26Aおよびガイドワイヤ28の移動の危険を減らす。上記手順は、特に弁付きシース26Aが使用される場合、出血が少なく、血液への医師または医療提供者の暴露を減らす。
【0064】
図21は、患者の脈管構造への挿入のためにカテーテル120がシース26Aに位置合わせされている以外は、
図20と同様の断面図である。
図22は、カテーテル120がシース26Aに通されて患者の脈管構造、特に目的の血管122、に挿入されている以外は、
図21と同様の断面図である。
【0065】
図23は、カテーテル120を取り囲んでいるシース26Aを除去するために、シース26Aの2つの部分が互いに剥離されている以外は、
図22と同様の断面図である。シース26Aは、1本以上の分割線68、68Aに沿って分割可能である(
図4および
図5を参照)。分割可能なシース26Aは、アクセスデバイス20の使用後に血管に挿入されるカテーテルまたは医療用品の種類に応じて、シース本体58の一部または全体の除去を可能にするという利点をもたらす。例えば、カテーテル120が血管122に挿入された後、アクセス部位の混雑を減らすために、シース本体58の一部が分離または剥離されて除去される。剥離式シース26Aは、初めに、シース26Aが患者から取り出されるまで、シース26Aをカテーテル120に沿って近位方向に摺動させ、次に分割できる。あるいは、シース26A全体が患者から取り出される前に、初めにシース26Aを分割することもできる。シース26Aの残りの部分が患者から取り出された後、医師または医療提供者はシース26Aの分割を継続できる。勿論、
図23に示されているように、患者からのシース26Aの取り出しと同時に、シース26Aを分割することもできる。いくつかの実施形態において、シース26Aは分割可能でない。
【0066】
図24は、脈管構造へのより大きなシース26、26Aの挿入を容易にするために
図1のアクセスデバイス20と併用可能なダイレータ124の平面図である。このような実施形態において、ダイレータ124は、針22とシース26、26Aとの間に配設される。
図25は、
図24の25-25線に沿った断面図である。
【0067】
図26は、アクセスデバイス200が
図24および
図25に示されているダイレータ124を含む以外は、アクセスデバイス20と同様のアクセスデバイス200の一実施形態の斜視図である。ダイレータ124は、針22とシース26、26Aとの間に配設される。したがって、アクセスデバイス200は、針22がシース26およびダイレータ124と同軸に位置合わせされたシリンジ24を有する。アクセスデバイス200と併用されるガイドワイヤ28も図示されている。
図27は、
図26に示されている実施形態の平面図である。
図26および
図27を参照すると、アクセスデバイス200の一例示的実施形態は、針22と、シリンジ24と、ダイレータ124と、管状シース26とを含む。図示の実施形態において、アクセスデバイス200はガイドワイヤ28を更に含む。ダイレータ124は、針22の周囲に同軸に配設可能である。シース26は、ダイレータ124の周囲に同軸に配設可能である。ダイレータ124は、針22によって形成された開口部または通路を拡張する。拡張された通路は、その後のシース26の導入を容易にする。アクセスデバイス200は、患者の体内へのガイドワイヤ28の導入、その後のダイレータ124の導入、最後にシース26の導入を可能にする。シリンジ24およびシース26は、
図1に関して説明したシリンジ24およびシース26と同じである。いくつかの実施形態において、シリンジ24およびシース29は、ダイレータ124に解放可能に結合する結合構造を含む。
【0068】
図24~
図27を参照すると、ダイレータ124が示されている。ダイレータ124は、通常可撓性の管状構造と、近位端またはハブ128と、遠位端または本体134とを含み、長手方向軸線に沿ってルーメンを画成する。ダイレータハブ128は、ダイレータ本体134の近位端に結合され、その内部に貫通路を有する。
【0069】
ダイレータハブ128は、外側針部分42の係止構造64に係合するための第1の係止構造130と、シースハブ60に係合するための第2の係止構造132とを含む。いくつかの実施形態において、ダイレータハブ128は係止構造を含まない。例えば、ダイレータハブ128の近位面がシリンジ24の外側針部分42の遠位面に当接する一方で、ダイレータハブ128の遠位面はシースハブ60の近位面に当接し得る。
【0070】
ダイレータ本体126の遠位部分134は、シース本体58の遠位端を越えて延在するテーパ付きの外面を含むことができる。これにより、シース本体58が表皮および脈管構造に入る前に、遠位部分134が表皮および脈管構造に入る。シース本体58の遠位端を収容するために、遠位部分134のテーパ付き外面は、針22によって形成された穿刺部位を徐々に拡張してより大きなサイズにする。勿論、ダイレータ124はアクセスデバイスを使用するために必須ではない。
【0071】
図28は、
図26のシリンジ24の断面図であり、前進状態にあるシリンジ24のプランジャ32を示す。
図29は、シリンジ24のプランジャ32が後退状態にある以外は、
図28と同様である。
図31は、
図28の31-31線に沿った拡大断面図である。
図28~
図30を参照すると、医師または医療提供者がバレル先端部38に対してダイレータ124を係止する(例えば、解放可能に留め付ける)ことができるように、ダイレータハブ128の第1の係止構造130は外側針部分42の係止構造64に係合する。ダイレータハブ128の第2の係止構造132は、医師または医療提供者がシース26、26Aに対してダイレータ124を留め付ける(例えば、解放可能に留め付ける)ことができるように、シースハブ60に係合する。勿論、ダイレータ124が既に外側針部分42およびシースハブ60に係止されているアクセスデバイス200を医師に提供することもできる。係止構造130、132は、例えば、ルアーロック式またはルアースリップ式接続にできる。
【0072】
一部の実施形態においては、ガスの通過を阻止し得る1つ以上のルアー接続を介して第1の針ハブ50、第2の針ハブ52、ダイレータハブ128、および/またはシースハブ60を接続可能であるが、当該技術分野において公知の、または本願明細書に記載の、追加の機構によって上記構造のうちの1つ以上を取り付けることもできる。例えば、図示の実施形態において、第1の針ハブ50は、ダイレータハブ128の棚部またはリップに解放可能に引っ掛けることができる係止構造136を含む。一部の実施形態において、ダイレータ124内のテーパは、ダイレータ124と第1の針ハブ50との間の密閉を容易にすることができる。
【0073】
図32は、
図31に示されている実施形態の32-32線に沿った、針22と、ダイレータ124と、シース26とが重なり合っている長手方向位置の拡大断面図である。
図33Aは、身体118に貫入している
図28に示されているアクセスデバイス200の断面図である。ダイレータ124およびシース26Aは未だ身体に貫入していない。
図33Bは、
図33Aの針22の遠位端の拡大部分断面図である。
【0074】
図34Aにおいて、針22は脈管構造に貫入しており、プランジャ32は部分的に後退してシリンジバレル30内に負圧を生じさせている。ダイレータ124およびシース26Aは未だ脈管構造に貫入していない。この使用段階において、例えば、血液を流体室34に流入させるために、針22とシリンジ24との間にチャネルが形成される。内側針部分46の開口48は、血液を針22の側壁を通して流体室34に流入させる。
図34Bは、
図34Aの針22の遠位端の拡大部分断面図である。使用中、穿刺点44は血管122内に入る。動脈内に入ると、血液が開口48から流体室34に流入するに伴い、動脈血圧がプランジャ32を後退させる。カニューレが血管122に挿入されると、プランジャ32の後退によってアクセスデバイス20が吸引され、流体室34内に真空または負圧を生じさせるので、流体は開口48からバレル30内に入ることができる。いくつかの実施形態において、医師または医療提供者は、当該技術分野において公知のように、トランスデューサプローブをシリンジ24の後部に挿入して弁116に通すことができる。医師または医療提供者は、静脈アクセスが実現されたかどうかを判定するために、プローブに対応付けられた波形を観察できる。
【0075】
図35Aは、ガイドワイヤ28がプランジャ32、弁116、および針22を通して患者の血管122内に送り込まれている以外は、
図34Aと同様の断面図である。ダイレータ124およびシース26Aは未だ脈管構造に貫入していない。医師または医療提供者が針22を目標血管122内に位置付けた後、医師または医療提供者は、バレル30に対するプランジャ32の位置を維持したまま、ガイドワイヤ28をプランジャ32に通して送り込む。ガイドワイヤ28がシリンジ24に通されて患者の体内に送り込まれているとき、針22も静止状態に保持されていることが好ましい。挿入手順中、流体室34内の負圧を維持するために、弁116はガイドワイヤ28に密着して中心チャネル56内への空気の流入を阻止する。ガイドワイヤ28をシリンジ24に通して送り込むとき、当該技術分野において公知のように、ガイドワイヤアドバンサを使用してもよい。例えば、ガイドワイヤ28が湾曲またはJ字状の先端を有する場合、先端を真っ直ぐにしてプランジャ32の中心チャネル56内へのガイドワイヤ28の送り込みを容易にするために、アドバンサを使用し得る。
図35Bは、ガイドワイヤ28が患者の脈管構造内に更に延びている以外は、
図34Aと同様の断面図である。ダイレータ124およびシース26Aは未だ脈管構造に貫入していない。
【0076】
図36は、シース26Aおよびダイレータ124が針22の外側部分42に沿って患者の脈管構造内に摺動されている以外は、
図35Bと同様の断面図である。シース26Aおよびダイレータ124を針22およびガイドワイヤ28に沿って血管122内に挿入しているとき、シリンジ24内に存在する負圧は、シース26Aの内径と針22の外径との間、および/またはダイレータ124の外径とシース36Aの内径との間、に存在する空気が血管122内にではなく、針22に引き込まれることを保証する。いくつかの実施形態においては、ダイレータ124の使用に加え、針22に隣接する穿刺部位を拡大して患者の体内へのダイレータ124の挿入を容易にするために、表皮に切り込みを入れることができる。
【0077】
図37は、ダイレータ124およびシース26Aを脈管構造内に残したまま、シリンジ24およびガイドワイヤ28が患者から除去されている以外は、
図36と同様の断面図である。この除去プロセス中、針22およびガイドワイヤ28が取り出されるに伴い、静止状態のシース26Aの内容積が増えてシース26A内に負圧が生じるため、除去中、血管122内への空気の引き込みが確実に阻止される。
【0078】
図38は、ダイレータ124が患者およびシース26Aから除去されている以外は、
図37と同様の断面図である。シース26Aは血管122内に適正に挿入されたままである。ダイレータ124の除去は、シリンジ24およびガイドワイヤ28の除去後、またはシリンジ24およびガイドワイヤ28の除去と同時に、行い得る。この除去プロセス中、ダイレータ124が除去されるに伴い、静止状態のシース26Aの内容積が増えるので、シース26A内に負圧が生じ、除去中、血管122内への空気の引き込みが確実に阻止される。
【0079】
上記手順は、ローラーソンシリンジ手法より時間がかからず、複数の医療用品が使用されるときにガイドワイヤに沿って行われる交換(例えば、ガイドワイヤ上のダイレータ、ガイドワイヤ上のシース、ガイドワイヤ上のカテーテル)を複数回必要としない。このような交換がガイドワイヤ上で複数回行われた場合、このような操作はカニューレ挿入の失敗、ガイドワイヤ、の損失、および汚染の危険を引き起こす。更に、表皮に切り込みを入れる段階中、針22はガイドワイヤ28の偶発的切断を防止する。上記手法は、当該手順中、患者に対するシース26、26Aおよびガイドワイヤ28の移動の危険を減らす。上記手順は、特に弁付きシース26Aが用いられる場合、出血が少なく、血液への医師または医療提供者の暴露を減らす。
【0080】
図39は、患者の脈管構造への挿入のためにカテーテル120がシース26Aに位置合わせされている以外は、
図38と同様の断面図である。
図40は、カテーテル120がシース26Aを通して患者の脈管構造、特に目的の血管122、に挿入されている以外は、
図39と同様の断面図である。
【0081】
図41は、カテーテル120を取り囲んでいるシース26Aを除去するために、シース26Aの2つの部分が互いに剥離されている以外は、
図40と同様の断面図である。シース26Aは1本以上の分割線68、68Aに沿って分割可能である(
図4および
図5を参照)。分割可能なシース26Aは、アクセスデバイス200の使用後に血管に挿入されるカテーテルまたは医療用品の種類に応じて、シース本体58の一部または全体除去できるという利点をもたらす。例えば、カテーテル120が血管122に挿入された後、アクセス部位の混雑を減らすために、シース本体58の一部が分離または剥離されて除去される。剥離式シース26Aは、初めに、シース26Aが患者から取り出されるまで、シース26Aをカテーテル120に沿って近位方向に摺動させ、その後に分割できる。あるいは、シース26A全体が患者から取り出される前に、シース26Aを初めに分割することもできる。シース26Aの残りの部分が患者から取り出された後、医師または医療提供者はシース26Aの分割を継続できる。勿論、
図41に示されているように、シース26Aを患者から取り出すと同時に分割することもできる。いくつかの実施形態において、シース26Aは分割可能でない。
【0082】
本開示はいくつかの実施形態および実施例の文脈で説明されているが、本開示は具体的に開示されている実施形態を越えて他の代替実施形態および/または用途、およびそれらの自明な変更物および均等物、にまで及ぶことを当業者は理解されるであろう。加えて、本開示の各実施形態のいくつかの変形例が図示され詳細に説明されているが、当業者には本開示の範囲内に含まれる他の変更が容易に明らかになるであろう。上記実施形態の特定の特徴および側面のさまざまな組み合わせまたは部分組み合わせが行われ、これら組み合わせまたは部分組み合わせは依然として本開示の範囲内に含まれることも考えられる。本開示の実施形態のさまざまなモードを形成するために、開示されている各実施形態のさまざまな特徴および側面を互いに組み合わせることも置き換えることも可能であることを理解されたい。したがって、本願明細書に記載されている開示の範囲は上記の特定の実施形態によって限定されないものとする。