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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】管理サーバ
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20220608BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20220608BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20220608BHJP
   G06Q 30/06 20120101ALI20220608BHJP
【FI】
H04N1/00 127A
G03G21/00 396
B41J29/38
G06Q30/06 300
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018048987
(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公開番号】P2019161571
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】小井 幸博
【審査官】花田 尚樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-033000(JP,A)
【文献】特開2002-032641(JP,A)
【文献】特開2002-123140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
G03G 15/00
15/36
21/00
21/02
21/14
21/20
B41J 29/00 -29/70
G06F 19/00
G06Q 10/00 -10/10
30/00 -30/08
50/00 -50/20
50/26 -99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置が使用している複数の消耗品のそれぞれの使用状況を示す消耗品情報を1つ以上の画像形成装置から受信する管理部と、
前記複数の消耗品のそれぞれの使用状況の時間的変化に基づき前記複数の消耗品がそれぞれ発注される発注予測時期を計算する予測部と、
1つの画像形成装置について所定期間内に複数の発注予測時期がある場合、又は一定の近隣エリアに含まれる複数の画像形成装置について所定期間内に複数の発注予測時期がある場合、前記複数の発注予測時期に係る消耗品の価格を当該消耗品の配送条件に応じて変更して出力する計画部と、を備え、
前記消耗品の配送条件は、
消耗品の供給元から1つ又は複数の画像形成装置への消耗品の配送経路、配送距離、配送回数、配送手段、配送業者の配送経路、1つ又は複数の画像形成装置の設置場所、仲介者として販売会社若しくは代理店があるかどうか、又は、発注時期がメンテナンス時期と同じであるかどうか、であることを特徴とする管理サーバ。
【請求項2】
前記計画部は、
前記変更した価格が消耗品の予算を超える場合、予算を優先する予算優先と消耗品の発注を優先する発注優先のうちいずれか一方を選択させ、前記予算優先が選択された場合、消耗品の使用を抑制可能な印刷方法を示す印刷方法情報を出力することを特徴とする請求項1に記載の管理サーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理サーバを活用した消耗品の集約発注の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置では多くの消耗品が使用されており、印刷装置の機械寿命が到来するまでに何度も交換が行われる。その一方で多くの企業にとってコスト削減は長期的命題であり、印刷装置の運用コストについても例外ではない。そこで、特許文献1に記載された、トナーカートリッジの需要予測を行い、トナーカートリッジの購入本数に応じてディスカウントを行う方法を用いることが考えられる。これにより、ユーザはトナーカートリッジを必要最小限の数量で発注でき、印刷装置の運用コストを削減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-032641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1ではトナーカートリッジの本数に着目してディスカウントを行うため、発注本数が少ない場合、ユーザは印刷装置に係るコスト削減の効果を十分に得ることができない。
【0005】
また、特許文献1ではトナーカートリッジの需要予測を行うが、各月の需要本数を試算するに留まるため(段落[0119],図8(b))、印刷装置の消耗品に対するユーザの購買意欲を十分に喚起できず、販売者は消耗品の販売を良好に促進できない。
【0006】
また、特許文献1には予算を考慮した一括購入計画を支援できるという効果が示されているが(段落[0171])、実施例ではディスカウントメニューを表示するにすぎない。つまり、予算を超えるか否かの判定はユーザの判断に依拠するため、実質的には予算を考慮できず、ユーザは印刷装置に係る消耗品の予算を超えて発注する可能性がある。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、印刷装置の消耗品を販売する販売側と印刷装置の消耗品を購入するユーザ側との双方に有益な発注方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、本発明に係る管理サーバは、画像形成装置が使用している複数の消耗品のそれぞれの使用状況を示す消耗品情報を1つ以上の画像形成装置から受信する管理部と、前記複数の消耗品のそれぞれの使用状況の時間的変化に基づき前記複数の消耗品がそれぞれ発注される発注予測時期を計算する予測部と、1つの画像形成装置について所定期間内に複数の発注予測時期がある場合、又は一定の近隣エリアに含まれる複数の画像形成装置について所定期間内に複数の発注予測時期がある場合、前記複数の発注予測時期に係る消耗品の価格を当該消耗品の配送条件に応じて変更して出力する計画部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、印刷装置の消耗品を販売する販売側と印刷装置の消耗品を購入するユーザ側との双方に有益な発注方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】印刷システムの構成を示す図である。
図2】消耗品情報を収集する処理シーケンスを示す図である。
図3】消耗品情報の例を示す図である。
図4】発注方法を提案する処理フローを示す図である。
図5】複数の印刷装置における各色インクの発注予測時期の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施する一実施の形態について図面を用いて説明する。本実施形態では、印刷装置で消費される消耗品の例としてインクを用いる。
【0012】
<印刷システムの構成>
図1は、本実施形態に係る印刷システムの構成を示す図である。印刷システムは、管理サーバ1と、複数の印刷装置2と、を備えて構成される。管理サーバ1と複数の印刷装置2は、通信ネットワーク3を介して相互通信可能に接続されている。
【0013】
まず、印刷装置2の機能について説明する。印刷装置2は、企業、役所、個人等のユーザが使用するプリンタである。印刷装置2は、図1に示すように、インクを消費して印刷処理を行うエンジン部201と、エンジン部201で行う印刷処理を管理する印刷管理部202と、を備える。エンジン部201は、吐出量記録部21と、インク循環制御部22と、を備える。印刷管理部202は、システム制御部23と、ネットワーク制御部24と、を備える。
【0014】
吐出量記録部21は、インクの吐出量(ドロップ数又は量)を計測して記録する。具体的には、吐出量記録部21は、印刷装置2にセットされた各色インクのインクカートリッジから吸い上げられ、印字ヘッドのクリーニング時及び被印字媒体への吹き付け時に吐出されたインクの吐出量を、インクの色ごとに計測して記録する。被印字媒体とは、例えば、紙、布、CD、DVD等である。
【0015】
インク循環制御部22は、インク循環機構(不図示)を制御して、印字ヘッドのクリーニング時及び被印字媒体への吹き付け時にインクを吐出させる。インク循環機構とは、インクカートリッジからインク補給管を通じて負圧によりインクを吸い上げ、インク循環管を通じて印字ヘッドにインクを供給する機構である。
【0016】
システム制御部23は、印刷装置2で発生するイベント及び指示を印刷装置2の制御状態に応じてエンジン部201を制御する。具体的には、システム制御部23は、インク循環制御部22によるインク吐出の制御イベント又は制御指示に基づき、各色インクのインク吐出量を吐出量記録部21から読み出して、印刷装置2の消耗品情報として管理サーバ1へ通知する。
【0017】
ネットワーク制御部24は、システム制御部23による消耗品情報の送信命令に基づき、印刷装置2の消耗品情報を通信ネットワーク3を介して管理サーバ1へ送信する。
【0018】
図1に示した複数の印刷装置2は、それぞれ上記機能部を備える。複数の印刷装置2は、インク吐出の制御イベント発生時又は定期的時期若しくは任意の不定期な時期に、インク吐出量を記録した消耗品情報を管理サーバ1へそれぞれ送信する。
【0019】
次に、管理サーバ1の機能について説明する。管理サーバ1は、複数の印刷装置2から消耗品情報をそれぞれ時系列に収集してインクの発注予測時期を計算し、まとめ発注により割引を適用した発注方法をユーザに提案する装置である。管理サーバ1は、図1に示すように、印刷装置管理部11と、消耗品履歴管理部12と、発注タイミング予測部13と、消耗品発注計画部14と、消耗品予算受付部15と、を備える。
【0020】
印刷装置管理部11は、印刷装置2の使用ユーザを識別するテナントID及び印刷装置2の機体を識別する機体番号を用いて複数の印刷装置2をそれぞれ識別し、複数の印刷装置2の稼働状況をそれぞれ管理する。具体的には、印刷装置管理部11は、通信ネットワーク3を介してインク吐出量を記録した消耗品情報を複数の印刷装置2からそれぞれ時系列で受信する。
【0021】
消耗品履歴管理部12は、複数の印刷装置2からそれぞれ受信した消耗品情報を時系列に印刷装置2ごとに記憶する。時間経過に伴うインクの使用状況が分かればよいので、消耗品履歴管理部12は、時系列に記憶するのに代えて、消耗品情報を受信時刻に関連付けて記憶領域内の任意の位置に記憶してもよい。
【0022】
発注タイミング予測部13は、消耗品履歴管理部12から複数の印刷装置2のそれぞれの消耗品情報を読み出して、各色インクのインク吐出量の時間的変化をそれぞれ分析し、各色インクがそれぞれ発注される発注予測時期を印刷装置2ごとに計算する。
【0023】
消耗品発注計画部14は、発注タイミング予測部13から複数の印刷装置2における各色インクの発注予測時期をそれぞれ取得し、1つの印刷装置2について所定期間内に複数の発注予測時期がある場合、又は一定の近隣エリアに含まれる複数の印刷装置2について所定期間内に複数の発注予測時期がある場合、当該複数の発注予測時期に係るインクの数量に応じて値引きし、かつ、当該インクの配送条件に応じて変更したまとめ発注の価格を算出し、所定期間内の適用価格としてユーザ端末(不図示)又は印刷装置2へ出力する。
【0024】
また、消耗品発注計画部14は、計算したまとめ発注の価格と消耗品の予算額とを比較し、まとめ発注の価格が消耗品の予算額を超過する場合、予算内に発注を抑制する予算優先か予算額を超えてでも発注する発注優先かをユーザに選択させ、予算優先が選択された場合、インクの使用を抑制した印刷方法を示す印刷方法情報をユーザ端末又は印刷装置2へ出力する。
【0025】
消耗品予算受付部15は、印刷装置2のインクに係るユーザの予算額の入力を受け付ける。予算額は、ユーザ又は印刷装置の単位で指定可能であり、日、週、月又は年の単位を選択可能である。
【0026】
<印刷システムの動作>
次に、印刷システムで行う動作について説明する。
【0027】
まず、管理サーバ1が印刷装置2の消耗品情報を収集する動作について説明する。図2は、消耗品情報を収集する処理シーケンスを示す図である。
【0028】
ステップS101;
まず、印刷装置2のシステム制御部23が、インク循環制御部22でインク吐出の制御イベントが行われた後、当該制御イベントに基づき吐出された各色インクのインク吐出量を吐出量記録部21からそれぞれ読み出して、インク残量率に換算する。
【0029】
ステップS102;
次に、印刷装置2のネットワーク制御部24は、ステップS101で求めた各色インクのインク残量率に印刷装置2の機体番号を付し、印刷装置2の消耗品情報として通信ネットワーク3を介して管理サーバ1へ送信する。
【0030】
ステップS103;
その後、管理サーバ1の印刷装置管理部11が、印刷装置2の消耗品情報を受信し、消耗品履歴管理部12は、当該消耗品情報を受信時刻に関連付けて記憶する。
【0031】
以降、複数の印刷装置2は、それぞれ、インク吐出の制御イベントが行われるごとにステップS101~ステップS103を繰り返し実行する。複数の印刷装置2は、インク吐出の制御イベント時に代えて、定期的又は不定期のタイミングでステップS101~ステップS103を実行してもよい。
【0032】
これより、管理サーバ1は、複数の印刷装置2におけるそれぞれの各色インクのインク残量率を収集できる。図3は、定期的に収集される消耗品情報を示す図である。機体番号は、印刷装置2の機体を識別するための番号である。機種IDは、印刷装置2の機種を識別するためのIDである。テナントIDは、印刷装置2の使用ユーザを識別するためのIDである。取得日時は、消耗品情報の受信日時である。インク残量率は、印刷装置2における各色インクのインク残量割合である。Kはブラック、Cはシアン、Mはマゼンタ、Yはイエロー、Gはグレイである。
【0033】
次に、インクのまとめ発注を提案する動作について説明する。図4は、インクのまとめ発注方法を提案する処理フローを示す図である。なお、管理サーバ1は、インクに係る印刷装置2ごとの年度予算額を予め受付済みとする。
【0034】
ステップS201;
まず、発注タイミング予測部13は、消耗品履歴管理部12から複数の印刷装置2のそれぞれの消耗品情報を読み出して、各色インクのインク残量率の時間的変化をそれぞれ分析し、各色インクがそれぞれ発注される発注予測時期を計算する。例えば、発注タイミング予測部13は、x軸を時間、y軸をインク残量率とする2次元関数グラフを生成し、消耗品情報の受信時刻に対してインク残量率をプロットし、最小二乗法を用いて回帰直線を求め、y=0となるxの値から発注予測時期を計算する。発注予測時期の精度を上げるため、発注タイミング予測部13は、インク消費速度が早い特定色のインク(ブラックKのインク等)に係る回帰直線の変数(x)に対して1.1倍等の係数をかけてもよい。これにより、発注タイミング予測部13は、各色インクの発注予測時期を計算できる。複数の印刷装置2における各色インクの発注予測時期を図5に例示する。
【0035】
ステップS202;
次に、消耗品発注計画部14は、発注タイミング予測部13から複数の印刷装置2における各色インクの発注予測時期を取得し、それぞれの印刷装置2について所定期間内に複数の発注予測時期があるか否かを判定する。所定期間とは、管理サーバ1の管理者が設定する任意の設定値であり、例えば、日、週、月、年単位で設定可能である。所定期間内に複数の発注予測時期がある場合、ステップS205へ進み、所定期間内に複数の発注予測時期がない場合、ステップS203へ進む。
【0036】
ステップS203;
次に、消耗品発注計画部14は、それぞれの印刷装置2について所定期間内に複数の発注予測時期がない場合、一定の近隣エリアに含まれる印刷装置2を含めるか否かを管理サーバ1の管理者に選択させる。一定の近隣エリアの印刷装置2を含める場合、ステップS204へ進み、一定の近隣エリアの印刷装置2を含めない場合、ステップS210へ進む。
【0037】
ステップS204;
次に、消耗品発注計画部14は、一定の近隣エリアの印刷装置2を含める場合、一定の近隣エリアに含まれる複数の印刷装置2について所定期間内に複数の発注予測時期があるか否かを判定する。一定の近隣エリアに含まれるか否かは、例えば、テナントIDが同一であるか否か、印刷装置2の設置場所が同一であるか否かに基づき判定する。所定期間内に複数の発注予測時期がある場合、ステップS205へ進み、所定期間内に複数の発注予測時期がない場合、ステップS210へ進む。
【0038】
ステップS205;
次に、消耗品発注計画部14は、それぞれの印刷装置2について所定期間内に複数の発注予測時期がある場合(ステップS202でYES)、又は一定の近隣エリアに含まれる複数の印刷装置2について所定期間内に複数の発注予測時期がある場合(ステップS204でYES)、複数の発注予測時期に係るインクの数量に応じて値引きし、かつ、当該消耗品の配送条件に応じて変更したまとめ発注の価格を算出する。
【0039】
ここまでの処理の具体例を説明する。例えば、開発部の印刷装置で所定期間内に発注予測されるインクの数量が複数の場合、消耗品発注計画部14は、ステップS202から直接ステップS205へ進み、当該複数のインクに対してまとめ発注による価格を算出する。一方、そのインクの数量が1つのみの場合、消耗品発注計画部14は、ステップS202からステップS203,ステップS204へ進み、他の部門が使用する印刷装置で同一の所定期間内に発注予測されるインクがあれば、当該インクもまとめ発注の対象とする。なお、消耗品発注計画部14は、所定期間内に複数のインクの発注予測時期があれば、ユーザの別を問うことなく、まとめ発注の価格を算出可能である。
【0040】
ここで、ステップS205で行うインクの数量に応じた値引き方法について説明する。例えば、図5に示した発注予測時期に対し、所定期間として「2017年12月」が入力された場合、テナントIDが同一である全ての印刷装置2を含める場合には、機体番号が「12340003」のシアンCのインクと機体番号が「12340004」のブラックKのインクが所定期間内に該当するので、消耗品発注計画部14は、この2本のインクの一括発注に対して例えば5%の割引率を適用したまとめ発注価格を算出する。
【0041】
また、所定期間が「2017年12月~2018年1月」の場合、機体番号が「12340003」のブラックKのインクも該当するので、消耗品発注計画部14は、これら3本のインクの一括発注に対して例えば10%の割引率を適用したまとめ発注価格を算出する。
【0042】
その他、消耗品発注計画部14は、過去のインク発注実績からインクの発注周期を求め、当該発注周期を用いてステップS201で求めた発注予測時期を微修正し、微修正後の発注予測時期を用いて確実にまとめられるインク数量を基準に最小~最大のインク数量範囲に対して割引率を適用してもよい。
【0043】
続いて、ステップS205で行う消耗品の配送条件に応じた割引率の増減方法について説明する。消耗品の配送条件とは、例えば、消耗品供給元から印刷装置までの消耗品の配送経路、配送距離、配送回数、配送手段、配送業者の配送ルート、印刷装置2の設置場所等である。その他、販売会社(代理店)を仲介しているか否か、メンテナンス時期と同じであるか否か等を配送条件としてもよい。消耗品発注計画部14は、配送条件の違いに基づき割引率を調整する。
【0044】
例えば、消耗品発注計画部14は、1回の配送で多くの消耗品を配送できる場合、配送時期が印刷装置2のメンテナンス時期と同じ場合等に、割引率を大きくする。ユーザが異なる場合であっても、複数のユーザが地理的に近く、提案予定の複数のインクを他のユーザの発注済みインクと同一の所定期間内で配送できる場合、相乗り配送により配送コストを低減できるので、消耗品発注計画部14は、割引率を大きくする。また、配送時期が印刷装置2のメンテナンス時期と同じであれば、メンテナンス業者による持ち込みにより配送コストを低減できるので、消耗品発注計画部14は、割引率を大きくする。
【0045】
その他、消耗品発注計画部14は、複数のインクの配送先が同一の場合は割引率を大きくし、近隣エリアを考慮したことで配送先が異なる場合は割引率を小さくしてもよい。管理サーバ1の管理者は、配送条件の内容に対して割引率を増加するか否かを任意に設定可能であり、配送先が異なる場合でもユーザの発注を優先したい場合は割引率を大きくしてもよい。さらに、消耗品発注計画部14は、複数のインクを1回の配送ルートで配送できるか否か、当該配送ルートが配送業者の通常用いる最小コストのルートと同一か否か、複数のインクを格納している倉庫が同一か否か等に応じて、割引率を変更してもよい。
【0046】
ステップS206;
次に、消耗品発注計画部14は、ステップS206で算出したまとめ発注の価格をユーザの年度内の発注累計額に仮加算し、仮加算後の発注累計額がユーザの年度予算額を超過するか否かを判定する。ユーザの年度予算額は、管理サーバ1の管理者がユーザから聞いた値でもよいし、ユーザの過去の発注実績を元に分析した凡その値でもよい。年度予算額を超過する場合、ステップS207へ進み、年度予算額を超過しない場合、ステップS208へ進む。
【0047】
ステップS207;
次に、消耗品発注計画部14は、仮加算後の発注累計額がユーザの年度予算額を超過する場合、予算内に発注を抑制する予算優先か予算額を超えてでも発注する発注優先かをユーザに選択させ、予算優先の場合、ステップS209へ進み、発注優先の場合、ステップS208へ進む。
【0048】
ステップS208;
次に、消耗品発注計画部14は、仮加算後の発注累計額がユーザの年度予算額を超過しない場合(ステップS206でNO)、又は発注優先が選択された場合(ステップS207でNO)、ステップS205で算出したまとめ発注の価格を所定期間内の適用価格として提案する発注提案情報をユーザ端末又は印刷装置2へ送信する。
【0049】
例えば、消耗品発注計画部14は、“「12340003」の印刷装置にセットされているシアンCと「12340004」の印刷装置にセットされているブラックKの2つのインクが2017年12月末に空(から)になる可能性があります。同年12月末までにまとめて発注頂ければ、5%の数量割が適用されて総額□□□円が〇〇〇円となり、かつ、近隣エリア内における他ユーザ様の発注分と同時配送による配送コストの抑制により、更に2%の配送割が適用されて△△△円となります。なお、2018年1月以降に発注される場合、5%の数量割のみとなります。”というメッセージをユーザ端末のモニタ又は印刷装置2の操作パネルに表示する。その後、管理サーバ1は、処理を終了する。
【0050】
ステップS209;
一方、消耗品発注計画部14は、予算優先が選択された場合(ステップS207でYES)、インクの使用を抑制した印刷方法をユーザ端末のモニタ又は印刷装置2の操作パネルに表示する。例えば、消耗品発注計画部14は、濃度を薄くして印刷すること、集約印刷すること、縮小印刷すること、シアンCによる青色印刷することを示す印刷方法情報を送信する。消耗品発注計画部14は、消耗品履歴管理部12が管理している印刷装置2のインク残量率を参照して抑制すべき色を特定して通知してもよい。その後、管理サーバ1は、処理を終了する。
【0051】
ステップS210;
また、消耗品発注計画部14は、一定の近隣エリアの印刷装置2を含めない場合(ステップS203でNO)、又は一定の近隣エリアに含まれる複数の印刷装置2について所定期間内に複数の発注予測時期がない場合(ステップS204でNO)、所定期間内に1つの発注予測時期がある印刷装置2ついては、インクを単品で発注することを価格を含めて提案する発注提案情報をユーザ端末又は印刷装置2へ送信する。単品発注になるので、消耗品発注計画部14は、割引を適用しない。
【0052】
例えば、消耗品発注計画部14は、“「12340003」の印刷装置にセットされているシアンCのインク残量が2017年12月25日に空(から)になる可能性があります。同年12月中にご注文されることを推奨します。”というメッセージをユーザ端末のモニタ又は印刷装置2の操作パネルに表示する。その後、管理サーバ1は、処理を終了する。
【0053】
<効果>
本実施形態によれば、管理サーバ1が、1つの印刷装置2について所定期間内に複数の発注予測時期がある場合、又は一定の近隣エリアに含まれる複数の印刷装置2について所定期間内に複数の発注予測時期がある場合、複数の発注予測時期に係るインクの数量に応じて値引きし、かつ、当該インクの配送条件に応じて変更したまとめ発注の価格を算出するので、販売者は物流コストを下げることができ、ユーザはインクに係るコスト削減の効果を十分に得ることができる。
【0054】
また、管理サーバ1は、まとめ発注の価格を所定期間内の適用価格として出力するので、ユーザは購買意欲を喚起でき、販売者はインクの販売を良好に促進できる。
【0055】
また、管理サーバ1は、まとめ発注の価格がインクの予算額を超える場合、予算を優先する予算優先と消耗品の発注を優先する発注優先のうちいずれか一方を選択させるので、ユーザはインクの予算額に応じて選択的に発注でき、インクの予算額を超えて発注する可能性を防止できる。
【0056】
また、管理サーバ1は、予算優先が選択された場合、消耗品の使用を抑制可能な印刷方法を示す印刷方法情報を出力するので、インクの消費に対するユーザ要求に合った印刷方法を提案できる。
【0057】
<変形例1>
印刷装置2は、ステップS102において、消耗品情報に送信時の日時情報を付与して管理サーバ1へ送信し、管理サーバ1は、ステップS201において、消耗品情報に付与された送信時の日時情報を用いてインク残量率の時間的変化をそれぞれ分析してもよい。これにより、例えば通信ネットワーク3で通信異常が発生し、管理サーバ1に対する消耗品情報の通知順が入れ替わったとしても、管理サーバ1は、複数の消耗品情報を消耗品の消費時間に沿って並び替えることができ、その後の発注予測時期を正しく計算できる。
【0058】
<変形例2>
管理サーバ1の発注タイミング予測部13は、ステップS201で用いた最小二乗法の回帰分析法に代えて、例えば、複数のプロット点のうち2点を抽出し、当該2点を通過する直線を用いて発注予測時期を予測してもよい。これにより、発注予測時期の精度が低下する可能性がある反面、発注予測時期の計算コストを低減できる。発注タイミング予測部13は、他の計算方法を用いて発注予測時期を計算してもよい。
【0059】
<変形例3>
印刷システムは、消耗品として印刷用紙を用いてもよい。複数の印刷装置2は、それぞれ、A4等の各サイズの印刷用紙のそれぞれの残数を管理サーバ1に通知する。管理サーバ1は、複数の印刷装置2における各サイズの印刷用紙の残数をそれぞれ時系列で管理する。管理サーバ1は、インクを用いた場合の動作と同様の動作を行うことにより、印刷用紙についてもまとめ発注を提案できる。
【0060】
<変形例4>
印刷システムは、消耗品として印字機構の形成部材を用いてもよい。例えば、各色インクをそれぞれ吐出する複数の印字ヘッド、複数の印字ヘッドのノズル面をそれぞれクリーニングする複数のワイパ等である。例えば印字ヘッドは、インクや印刷用紙のように交換頻度の高いものではないが、一定以上のインクを吐出するとインクの目詰まりが発生して長期的周期での交換が必要とされる。この場合、管理サーバ1は、インクの吐出量の累積値を印字ヘッドの使用量(≒インク残量率)とみなすことで、印字ヘッドについてもまとめ発注を提案できる。
【0061】
<変形例5>
印刷システムは、種類の異なる消耗品をまとめ発注の対象に含めてもよい。例えば、管理サーバ1は、インク、印刷用紙、印字ヘッド、ワイパの全てについて使用状況を管理して発注予測時期を計算してもよい。これにより、所定期間内に発注予測時期のある消耗品の数量が多くなるので、まとめ発注の価格をより低減できる。
【0062】
<その他>
最後に、本実施形態で説明した管理サーバ1は、メモリ及びCPUを備えたコンピュータにより実現できる。また、管理サーバ1の処理をプログラムとして構築し、コンピュータにインストールして実行させ、通信ネットワーク3を介して流通させることも可能である。また、印刷装置2は、印刷対象データの画像を形成する画像形成装置の例である。印刷装置2に付随する封入封緘装置等についても対象装置に含めることができる。
【0063】
<付記>
本出願は、以下の発明を開示する。
【0064】
(付記1)
画像形成装置が使用している複数の消耗品のそれぞれの使用状況を示す消耗品情報を1つ以上の画像形成装置から受信する管理部と、
前記複数の消耗品のそれぞれの使用状況の時間的変化に基づき前記複数の消耗品がそれぞれ発注される発注予測時期を計算する予測部と、
1つの画像形成装置について所定期間内に複数の発注予測時期がある場合、又は一定の近隣エリアに含まれる複数の画像形成装置について所定期間内に複数の発注予測時期がある場合、前記複数の発注予測時期に係る消耗品の価格を当該消耗品の配送条件に応じて変更して出力する計画部と、
を備えることを特徴とする管理サーバ。
【0065】
(付記2)
前記計画部は、
前記変更した価格が消耗品の予算を超える場合、予算を優先する予算優先と消耗品の発注を優先する発注優先のうちいずれか一方を選択させ、前記予算優先が選択された場合、消耗品の使用を抑制可能な印刷方法を示す印刷方法情報を出力することを特徴とする付記1に記載の管理サーバ。
【符号の説明】
【0066】
1…管理サーバ
11…印刷装置管理部
12…消耗品履歴管理部
13…発注タイミング予測部
14…消耗品発注計画部
15…消耗品予算受付部
2…印刷装置
21…吐出量記録部
22…インク循環制御部
23…システム制御部
24…ネットワーク制御部
201…エンジン部
202…印刷管理部
3…通信ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5